時給 200 円で服を作らせていたケースも
高級百貨店などと取引もある、米カリフォルニア州「労働搾取工場」の実態

アメリカでは、労働省が無作為に選んだ南カリフォルニアのアパレル会社 50 社を調査した。 その結果、80% の企業が労働法に何らか違反していることが分かった。 ある衣料品メーカーは、労働者に時給 1.58 ドル(約 206 円)しか払っていなかった。 賢い消費者は "メイド・イン・アメリカ" の服を購入すれば、自動的に開発途上国よりもきちんとした賃金が支払われているだろうと思っているかもしれない。

ところが、現実は必ずしもそうとは限らない。 アメリカの労働省が国内にある衣料品メーカーを無作為に調査したところ、その大半が法律に違反していることが分かった。 中には、高級百貨店のノードストロームやその他ブランドの服を作っているにもかかわらず、従業員に時給 2 ドルも払っていない企業もあった。 "メイド・イン・アメリカ" のタグが付いた服がアメリカ市場の売り上げに占める割合は少なく、値段も高いことが多い。 ただ、当局がアメリカの衣料産業の中心である南カリフォルニアにある請負業者や製造業者 50 社を調べると、80% の企業が労働法に何らか違反していることが分かった。

3 分の 1 以上の衣料品メーカーが給与記録を改ざんし、4 分の 1 以上のメーカーが全く記録していなかった。 そして、2021 年にはカリフォルニア州が出来高払い - 従業員の生産量に基づいて報酬を払う - を禁止したにもかかわらず、今回調査したメーカーの 32% が出来高払いを続けていて、手取りが法定最低賃金を下回るケースもあることが分かった。

労働省が「特にひどいケース」として挙げたのは、ノードストロームやニーマン・マーカス、スティッチ・フィックスやフォン・マウアーといったブランドの服を作っているメーカーで、この企業では一部の従業員に時給 1.58 ドルしか払っていなかった。 また、仕事を外注しているメーカーは大抵、労働者が連邦最低賃金以上の収入を得るために必要な 1 アイテムあたりの金額を支払っていないことも分かった。 これほどの低賃金にもかかわらず、雇用主による搾取が大きな問題であり続けている。 2017 年から 2022 年にかけて、労働省は未払い賃金と罰金で 1,040 万ドルを徴収していて、このうち 920 万ドルは南カリフォルニアの企業が占めている。

「南カリフォルニアの衣料品業界の雇用主に責任を負わせるべく取り組んでいますが、全米有数の小売業者が販売する衣料品を作る人々が "労働搾取工場" で働く姿をわたしたちは目にし続けています」と労働省賃金時間部のルーベン・ロサレス氏はコメントしている。 「店舗やオンラインで服を買う多くの人は、自分が買っている "メイド・イン・アメリカ" の商品が実はアメリカの法律で定められているよりもはるかに低い収入を得ている人々によって作られていることに気付いていない可能性があります。」

労働省の広報担当マイク・W・ピーターソン氏は、従業員に時給 2 ドル弱しか支払っていないことが分かったのはロサンゼルスの中心街から 15 マイル(約 24 キロメートル)ほど離れた郊外のエルモンテにある企業だと Insider に語った。 最終的に労働省は 13 人の従業員に対する 9 万 8,000 ドル以上の未払い賃金と残業代を回収したと、ピーターソン氏は明かした。 カリフォルニア州に労働者を搾取する "労働搾取工場" があることは、新しいニュースではない。 1995 年にはエルモンテにある工場で何十人というタイからの移民が彼らの意に反して拘束されているという許されない状況があったことから、人身売買を撲滅するための厳しい措置が新たに制定された。

約 4 万 5,000 人 - その多くは移民だ - が衣料品業界で雇用されていると考えられているロサンゼルスに拠点を置く労働者支援団体の Garment Worker Center は、労働省の調査結果は連邦政府レベルでの対応につながるべきだと話している。 同団体はニューヨーク州選出のカーステン・ギリブランド上院議員(民主党)が提出した、アメリカ全土で出来高払いを禁止し、法律に違反したメーカーの行為に対する責任をその製品を購入したブランドにも拡大する法案 "織物法" の成立を強く求めている。

労働省の調査結果について、ギリブランド上院議員は「憂慮すべきもの」だと Insider に語った。 「アメリカの衣料品製造業における虐待的な賃金相場を変えるために、連邦政府の強力な行動が必要」だとギリブランド上院議員は話している。 (Charles R. Davis、Business Insider = 3-28-23)



H & M など外資ファストファッションが苦戦に転じた 3 つの理由

「H & M」や「フォーエバー 21」といえば、欧米発のファストファッション(流行の衣料品を短サイクル・低価格で大量生産・販売するブランド)として日本でも人気を博してきたが、H & M の日本進出 1 号店だった銀座店が 7 月 16 日に閉店した。 昨年にはフォーエバー 21の日本 1 号店だった原宿店も閉店するなど、"黒船ファストファッション" の勢いに陰りも見え始めている。 その要因は何か。 ジャーナリストの南充浩氏が分析する。

* * *

「ファストファッション」という通称で呼ばれる、複数の外資系低価格グローバル SPA (製造小売り)ブランドが日本に上陸して早くも 10 年が経過しました。 しかし 10 年も経つと上陸当初のブームは少し変質してきています。 上陸当初のブームは去り、ブランドごとの業績格差が生まれつつありますが、全般的に共通しているのは当初のブームは沈静化したという点です。 定着したり、場合によっては衰退したりしていて、ブランドごとに置かれている状況こそ異なっていますが、揃いも揃ってブームに沸いた 10 年前はすっかり過去の光景になりました。

「H & M」の日本 1 号店だった銀座店が 7 月 16 日で閉店することが発表されました。 2017 年 2 月から 2 代目の H & M ジャパン社長を務めるルーカス・セイファート氏は、

〈10 年前は、日本を代表する好立地でいい形のスタートが切れた。 ただ時代が変わり、状況が変化したので、10 年間のリース契約が切れるのに伴い更新せず、閉店することを決めた。〉

と説明しています。 売れ行きが好調なら契約を更新したはずですが、更新しなかったことを見ると、「捨てても惜しくはない」という状況だったのではないでしょうか。 報道によれば、H & M の業績は、国内店舗数は 82 店舗(2017 年 11 月期末)で、売上高は約 629 億円。 新規出店や EC の業績も加わり売上高こそ前期比でプラスですが、既存店売上高はマイナスの状況。 上陸当初の勢いは完全になくなっていることがわかります。

これに先駆けて「フォーエバー 21」の日本 1 号店だった原宿店も 2017 年 10 月 15 日に閉店しています。 原宿店だけではなく、その他の店舗もいくつも閉鎖しており、全店舗数は 20 店舗を割り込んでいます。 フォーエバー 21 は不良在庫を多数抱えているのか、頻繁に「2 点目無料」というセールを開催しています。 2 点目半額という売り方は国内ブランドでも時折見かけますが、2 点目無料というのは聞いたことがありません。

「タダでもいいからもう 1 枚持って帰ってくれ。産業廃棄物として廃棄料を支払うより安上がりだ」という心理が透けて見えるようです。 実際、大阪・ミナミの道頓堀店でも 2 点目無料という売り方が今年されていました。 1,600 円に値下がりしたサンダルを買って、2 足目無料になって 1 足当たり実質 800 円で買ってきた知り合いの女性がいました。 それほど在庫がダブついているということなのでしょう。

また、2017 年 1 月には、「オールドネイビー」が全店閉店し、日本から撤退してしまいました。 オールドネイビーは「GAP」傘下のブランドで、GAP よりも安い価格帯の商品を販売しており、米国本国では停滞する GAP の業績をしり目に、業績を伸ばしている好調ブランドですが、日本では不振続き。 2012 年 7 月に 1号店が上陸してからわずか 4 年半で全店撤退となってしまいました。

これらのブランドは、当初の熱狂が嘘のように苦戦に転じてしまいましたが、それにはいくつかの理由が考えられます。 大きくは次の 3 つだと考えられます。

  1. 価格が安いだけで品質が劣っていた
  2. 日本独自のトレンドに対応できなかった
  3. 日本独自の低価格トレンドブランドが成長した

まず、1. から見てみましょう。 ここでいう品質とは使用素材や縫製仕様のことです。 低価格ブランドの中で品質が群を抜いているのは「ユニクロ」です。 H & M、フォーエバー 21、オールドネイビーはもちろん、ユニクロの品質の足元にも及びませんが、それどころか「ジーユー」にも及びません。 米国だと安い服はこの程度で良いのでしょうが、日本にはなまじユニクロがあったためにどうしても同等の価格帯のブランドは、ユニクロの品質と比較されてしまいます。

品質の順位でいえば、「ユニクロ > ジーユー > H & M > オールドネイビー > フォーエバー 21」という順になります。 ユニクロは別格として置いておいても、同等の価格帯なら間違いなくジーユーがもっともお買い得ですから多くの消費者はジーユーに流れてしまった可能性があります。

次に 2. です。 これが顕著になったのは 2015 年のことです。 2015 年にはジーユーが 100 万枚を販売したという「ガウチョパンツ」が一大トレンド商品となりました。 ファッションのトレンドは毎年様々あり、世界的トレンドのものからローカルトレンドのものまで幅広くあり、それが市場で混在しています。 3 年前のガウチョパンツというトレンドは、グローバルトレンドではなく、日本国内だけの地域限定トレンドだったのです。

そのため、商品企画をグローバル体制で行っているブランドがあまり対応できず、国内で日本向けに商品企画を行っているジーユーだけがガウチョパンツに対応し、大きな売り上げを得ました。 ガウチョに限らず、各国にはそれぞれ独自のトレンドがありますが、グローバル展開をしていると、どうしてもそこへの対応が手薄になってしまいます。

最後に 3. ですが、10 年前の外資系ファストファッション上陸時には、日本には、低価格かつ高トレンド対応ブランドは存在しませんでした。 ユニクロはある程度のトレンドは意識していますが、基本的にはベーシック寄りです。 「しまむら」はようやく、この頃「ファッション」として注目され始めたところでした。 ジーユーはどうかというと、もともと「ユニクロの廉価版」として2006 年にスタートしていたので、この頃はまだ「安くて品質の低いユニクロ」に過ぎませんでした。 ですから、ファストファッションが消費者から支持を集めたのです。

しかし、ジーユーは 2010 年に大変身します。 それまでの「廉価版ユニクロ」を捨てて「トレンド対応ブランド」へと変身したのです。 これが効を奏して、ジーユーはついに 2,000 億円ブランドにまで成長しました。 低迷していたジーユーの売上高がそこから急激に伸び始めるのです。 2012 年度は 586 億円、2013 年度は 837 億円、2014 年度は 1,075 億円となり、2018 年 8 月期では 2,000 億円を越える見通しとなっています。

またジーユー以外にも他の低価格・高トレンドブランドが日本国内で数多く成長したことも挙げられます。 アダストリアホールディングスやストライプインターナショナルの各ブランドや、ウィゴー、アーバンリサーチの「センス・オブ・プレイス」、ユナイテッドアローズの「コーエン」などが成長したため、外資ブランドから売上高を奪ったとも考えられます。

外資ブランドよりもこれら国内ブランドが支持を集めた理由は、それぞれのブランドがユニクロには及ばないまでも外資ブランドよりは品質が高く、日本人の好みに応じた商品を提供できていたことになります。 それらの理由を見ると、グローバルファストファッションは敗れるべくして敗れたといえますし、相次ぐ閉店も当然の結果といえるでしょう。 (ポストセブン = 7-18-18)



北朝鮮制裁 中国が衣料禁輸で先行か 8 月から停止

【ソウル = 鈴木壮太郎】 国連安全保障理事会の 11 日の制裁決議で禁輸が決まった北朝鮮の衣料品貿易について、中国が決議採択前の 8 月下旬から停止していた可能性があることが中朝貿易関係者の話でわかった。 中国当局が通関手続きを止め、北朝鮮からの積み荷が降ろせずにいるという。 米領グアム沖への弾道ミサイル発射計画に国際社会が警戒を強めていた時期と重なり、中国が挑発阻止へ北朝鮮に独自の圧力をかけていた可能性がある。

「2 週間前から中国の税関が北朝鮮からの貨物の通関手続きを止めている。」 北朝鮮に衣料品の加工を委託している企業の関係者は 13 日までに、日本経済新聞の取材にこう語った。 「通関できないので北朝鮮側も船積みを止めている。 他の業者も状況は同じで、衣料品の中朝貿易は事実上、止まった状態だ。」 通関手続きを止めた理由について中国税関からは「何の説明もない」という。

中朝貿易の約 7 割を占める中国の国境都市、遼寧省丹東や吉林省延辺朝鮮族自治州にある琿春には繊維工場が点在し、世界中のメーカーから発注を受けた洋服を受託生産している。 一定部分の生産を、北朝鮮の加工工場に再委託している。 関係者によると、北朝鮮側は国策商社「銀河貿易総会社」傘下の「繊維産業連合会」が中国からの受注窓口となって賃加工料を決め、北朝鮮内の工場に仕事を割り振る。 およそ 8 割が北朝鮮側の経営で、2 割は中国企業と合弁という。 中国から繊維や素材を輸入し、洋服に仕立てて中国に輸出。 中国から世界に輸出される。 「欧州の有名ブランドも生産している(同)」という。

韓国政府によると、北朝鮮は毎年、繊維製品の輸出で推定 7 億 6,000 万ドル(約 836 億円)を稼いできた。 輸出全体の 26% に相当し、石炭に次ぐ稼ぎ頭だった。 今回の国連安保理の制裁決議で輸出ができなくなり、北朝鮮には打撃だが、中国企業も影響は避けられない。 石油の全面禁輸という劇薬には反対したとはいえ、中国が自国企業への影響を犠牲にしてでも衣料品の禁輸に踏み切ったのであれば、北朝鮮へのいらだちが相当に強いといえそうだ。

一方で、中国が制裁を完全に履行せず、抜け穴となっているとの指摘はいまだに多い。 中国は国連安全保障理事会の制裁決議に基づかない北朝鮮の単独制裁に反対してきた。 中国は北朝鮮の挑発行為を抑え込みたいとの思いがある半面、10 月に 5 年に 1 度の共産党大会という最大の政治イベントを控え、北朝鮮で混乱が起きて国内に波及することを恐れている。 (nikkei = 9-13-17)


北朝鮮製の衣料品が支える「メイド・イン・チャイナ」

[丹東(中国)] 中国の衣料品メーカーは、より安い労働力が享受できる北朝鮮での製造を増やしており、「メイド・イン・チャイナ」のタグが付けられた北朝鮮製商品が、世界中に輸出されている。 世界で販売する安価な衣料品を製造するため、国際的孤立を深める隣国を利用する中国企業の実態が、国境沿いにある中国遼寧省丹東の貿易業者らに対するロイターの取材によって明らかになった。

これは、北朝鮮のミサイル・核プログラムに対する国連制裁強化が同国へのドアを次々と閉ざしている一方で、開かれた扉もあることを示している。 国連制裁には、繊維輸出の禁止は含まれていない。 「世界中から注文がきている。」 中朝貿易のほとんどの物資が経由する丹東で、韓国系中国人ビジネスマンはそう語った。 他の多くの人々と同じく、神経質な話題であることから、匿名を条件に取材に応じた。

丹東には数十の代理業者が存在し、中国の衣料品サプライヤーと米国、欧州、日本、韓国、カナダ、ロシアのバイヤーのあいだを仲介しているという。 「中国のサプライヤーに、顧客に正直に話す気があるかを問い合わせている。 衣料品を購入した消費者が、北朝鮮で作られたものだと気づかないこともある。 とても慎重を要する。」 昨年の北朝鮮輸出において、繊維製品は石炭や他の鉱物に次いで 2 番目に大きく、計 7 億 5,200 万ドル(約 834 億円)に上った、と大韓貿易投資振興公社 (KOTRA) のデータは示している。 輸出全体の総額は、前年比 4.6% 増の 28 億 2,000 万ドルだった。

今月採択された新たな国連制裁決議では、石炭の輸出を全面的に禁止している。 北朝鮮の盛んな繊維産業は、困窮する同国が 2006 年に初めて核実験を実施して以来、国連から科されてきた一連の制裁措置に対し、市場改革の進展も限られるなか、いかに適応してきたかを物語っている。 同時に、トランプ米大統領が中国に対し、北朝鮮の兵器プログラム抑制に向けた努力を要請しているにもかかわらず、いまだ北朝鮮が経済的ライフラインとして中国に依存している実態も示している。

中国の対朝輸出は、国連の禁輸リストに含まれていない織物材料や他の労働集約財などがけん引し、今年上半期でほぼ 3 割膨らみ 16 億 7,000 万ドルに達した、と中国関税当局の報道官が語った。 中国のサプライヤーは、衣料品が集められ輸出される丹東を経由して、北朝鮮の製造工場に布地や他の原材料を送っている。

活況を呈する工場

豪スポーツブランド、リップカールは昨年、「メイド・イン・チャイナ」とタグ付けされた同社のスキー用品の一部が、実際には北朝鮮の工場で製造されていたとして謝罪。 「未認可の下請け」に外部委託した不正な卸売業者を非難した。 だが丹東の取引業者や代理業者は、それは広く行われている慣行だと口をそろえる。 北朝鮮で衣料品を製造することにより最大 75% 節約できる、と首都平壌に住む中国人取引業者は主張する。

一部の北朝鮮の工場は、丹東から国境を渡ってすぐの新義州市にある。 平壌郊外にも工場がある。 完成品は北朝鮮から中国の港へ直接輸送され、そこから世界各地に輸出されることが多いと中国人の取引業者らは話す。 北朝鮮には約 15 の衣類を手掛ける大手輸出企業が存在し、それぞれが国内数カ所に工場を稼働しているほか、中規模企業も数十社ある、と外国企業の北朝鮮ビジネスを手助けするオランダのコンサルタント会社 GPI は説明する。

北朝鮮にある工場は全て国有で、なかでも繊維工場は活況のようだ。 「われわれの衣料も北朝鮮で製造しようと試みているが、現在、工場に全く空きがない」と、丹東から列車で 2 時間の場所にある港湾都市大連の工場で、韓国系中国人の女性は話す。 「北朝鮮の工員たちは中国人と比べ、1 日当たり 3 割多く製造できる」と説明。 「北朝鮮では、工員は行きたいときにトイレに行くこともできない。 製造ライン全体が遅れてしまうと考えるから。」 「彼らは、ただカネのために働く中国の工員とは違う。 北朝鮮人は異なる姿勢だ。 国のため、指導者のために働いていると信じている。」

また、彼ら北朝鮮工員の賃金は、他のアジア諸国のそれをはるかに下回っている。 韓国との国境付近にあり、現在は閉鎖されている開城(ケソン)工業団地で働く北朝鮮人の賃金は、月に最低約 75 ドル、平均で約 160 ドルだった。 一方、中国の平均的な工員の賃金は同 450 - 750 ドル。 ケソンは韓国との協力事業であり、北朝鮮での一般的な水準よりかなり高い給与体系となっているが、これは韓国との取り決めによるものだ。

中国で働く北朝鮮人

中国の衣料メーカーは、バングラデシュやベトナム、カンボジアに自社工場を移転させる一方で、北朝鮮工場の利用を加速させている。 「中国の賃金はもう高過ぎる。 非常に多くの発注が北朝鮮に向かうのも無理からぬことだ。」と、丹東の繊維産業で働く韓国系中国人女性は言う。 中国の繊維企業はまた、国内で労働単価の安い北朝鮮人を数多く雇っている。

北朝鮮は、とりわけ国連制裁によって輸出収入源の一部が断たれて以来、外貨獲得の手段として海外で働く北朝鮮人に頼っている。 彼らの賃金の大半は政府に送金され、同国の野心的なミサイル・核プログラムの資金として使われると、国連は指摘している。 北朝鮮に対して今月科された新たな国連制裁は、国外で働く北朝鮮人の数を増やすことを各国に禁止している。

中国は国内工場や飲食店で働く北朝鮮人の数を公表していないものの、2 - 3 年前のピークからは減少している、と北京にある中国人民大学の北朝鮮専門家、成曉河氏は指摘する。 「北朝鮮人を雇うのは面倒なこと」と語るのは、前出の大連でビジネスを行う韓国系中国人女性だ。 「正しい段取りが必要だ。 居住スペースは完全に隔離されなくてはならず、毎日授業が受けられる教室も提供しなければならない。 彼らは医師や看護師や料理人、そして毎日北朝鮮のイデオロギーを教える教師を連れてくる。」

ロイターが訪れた丹東のある衣料品工場では、北朝鮮人 40 人を雇っていた。 彼らは、サプライチェーンに厳しく、北朝鮮国内での製造をはっきりと拒否する顧客向けの、比較的小さな注文に対応している。 中国工場で働く北朝鮮人の賃金は、中国人の平均額の半分程度となる約 2,000 元(約 3 万 3,000 円)だと、工場主は語った。 北朝鮮人の工員は、賃金の約 3 分の 1 を手元に置くことを許されるが、残りは北朝鮮の政府関係者に渡されるという。 工場の一般的な勤務時間は、午前 7 時半から午後 10 時ごろまでだ。

工員は全員が女性で、ピンクと黒の制服を着て、4 列あるミシンの前に座り、委託された冬用のジャケットを作っている。 頭上には、青い太字で「清潔」、「整頓」と中国語で書かれている。 工場のメインフロアは、ミシンが動くけたたましい音以外、静まり返っていた。 (Sue-Lin Wong、Philip Wen、Reuters = 8-20-17)