1 - 2

SHEIN、アメリカで「パクリ」訴訟が続発する事情
大半の訴訟で和解決着、早期解決を優先か

ファッション EC 「SHEIN (シーイン)」をめぐっては、国内外でデザイン盗用などの疑惑が相次ぐ。 事業規模がグローバルに拡大するにつれて、コンプライアンスや ESG (環境・社会・企業統治)など企業の社会的責任への対応を求める声が強まっている。 「(シーインのビジネスモデルは)オリジナル作品を創作する独立したアーティストやデザイナーの権利と利益を故意に侵害することを前提としている。」

アメリカ・フロリダ州で活動するアーティスト、マギー・スティーブンソン氏は、シーインの運営会社やアメリカ現地法人を相手取り、1 億ドル(約 130 億円)の損害賠償を求めた裁判の訴状の中でこう訴えた。 訴状によると、スティーブンソン氏は「One is good, more is better」と題したアート作品を制作。 2019 年にウェブサイト上で公表し、原画を 19 - 300 ドルで販売していた。 それをシーインが盗用してプリントした作品を 1 枚当たり 4 ドルで許可なく販売し、著作権を侵害されたとしている。

シーインはコピー品を「額縁なしの抽象模様の壁絵」という説明で販売。 しかも作品から作者のサインを削除し、パッケージに自社のブランドロゴを入れることで作品の著作権者であると偽ったと原告側は主張している。 裁判は現在も係争中だ。

アメリカで抱える訴訟は数十件以上

有名ブランドも訴訟に次々と踏み切っている。 日本でも人気があるイギリスのシューズブランド「ドクターマーチン」はその一つだ。 ドクターマーチンの運営会社は 2020 年 11 月、シーインがドクターマーチンのブーツの模倣品を製造・販売したことが商標権侵害などに当たるとして提訴した(2022 年 2 月に和解)。 訴状によると、シーインは商品を「マーチンブーツ」と名付けて販売。 「本物のドクターマーチンの靴の写真を使用して、偽のコピー靴を購入するように顧客を誘引している。 これは模倣品を販売する明確な意図があることを示している。」と主張していた。

記者がアメリカの裁判記録を調べたところ、シーインが被告となった訴訟はカリフォルニア州の地方裁判所だけで少なくとも数十件確認できた。 ただ、大半の訴訟で和解に至っており、提訴から 1 年以内で決着しているものも多かった。 裁判記録には具体的な和解内容は記載されていないが、問題を早期に解決するために、一部ではシーイン側が解決金を支払って示談に持ち込んだ可能性もある。 日本国内では現時点で著作権侵害関連の訴訟は確認されていない。 ただ、インターネット上では「パクリ」疑惑が取り沙汰されている。

ファミリーマート限定のアイスクリーム「赤城 たべる牧場ミルク」のイラストを手がけたイラストレーター、しばたまさんは 2022 年 11 月、自身のツイッターに「SHEIN … 堂々とやってくれてますな」と投稿した。 投稿には、しばたまさんのイラストに非常に酷似している、シーインの商品画像が添付されている。 国内外でのデザインの模倣疑惑への対応について、シーイン日本法人は東洋経済の取材に対して「一部報道機関及び SNS 上において、弊社商品に関する知的財産権侵害に言及されている件に関して、現在正確な情報を把握するため調査を進めている」と回答した。

そのうえで「私たちはデザイナー、アーティスト、およびいかなる知的財産権も尊重しており、弊社商品に関するすべての知的財産権侵害等のご意見を真摯に受け止めている。 また、弊社に関わるサプライヤーも第三者の知的財産権を侵害していないことを明らかにする必要があり、万一コンプライアンス違反が発見された場合には適切な措置を講じる」と説明した。

ソフトバンクの前 COO を招聘

アメリカや中東、東南アジアなどを中心に拡大してきたシーインだが、最近では南米などにエリアを広げ、さらなる成長に向けてアクセルを踏み込んでいる。 ブラジルでは、加盟ブランドがシーイン EC サイト上に出店して商品を販売できるマーケットプレース型ビジネスに参入した。 体制を強化するため、2022 年 1 月までソフトバンクグループの最高執行責任者 (COO) を務めていたマルセロ・クラウレ氏をラテンアメリカ事業の会長に招聘した。

ビジネス SNS のリンクトインには、ブラジル・サンパウロで勤務するバイヤーを募集するシーインの中途採用案件が複数掲載されている。 募集要項には「現地のサプライヤー事情に精通し、サプライヤーの開拓・管理ができる」ことが条件として記載されている。 南米など中国からの距離が遠い地域では、配送時間を短縮させるため、現地でサプライチェーンを構築しようとしている可能性がある。 一方で、グローバル企業として次なるステップに踏み出すために、避けて通れないのが ESG への対応だ。

シーインに関しては「パクリ」疑惑以外にも、取引先工場の従業員が長時間、極端な低賃金で働かされていると英国のテレビ局に報道されるなど、企業姿勢やビジネスモデルに対する批判や疑義が噴出している。 そうした疑義は、高騰を続けてきたシーインの企業評価額にも影を落としている。 英フィナンシャル・タイムズによると、シーインの評価額は 2022 年 4 月の 1,000 億ドル(約 13 兆円)から足元では 650 億 - 850 億ドル(約 8.5 兆 - 11 兆円)まで低下しているという。

現状のまま上場しても買い手がつかない?

批判にさらされたシーインは最近、ESG を意識した動きを矢継ぎ早に打ち出している。 2022 年 2 月には、「持続可能性と社会的責任に関する報告書」を初めて公表した。 報告書によると、監査した約 700 社のサプライヤーのうち 83% が緊急時の備えや労働環境などにおいて 1 つ以上の重大なリスク要因を抱えていた。 強制労働や深刻な環境汚染、未成年者の労働などに違反し、最低ランクに格付けされたサプライヤーも 12% あった。

シーインは重大な違反を犯したサプライヤーについて「期限内に違反を是正しない場合は、契約を打ち切るなどの措置をとる」と明記した。 違反を繰り返すサプライヤーには毅然とした態度を示すことで、自浄作用が働く健全な企業であることをアピールする狙いだとみられる。 ほかにも、シーインは英語サイトで人権指針やサプライヤー行動規範などを公表した。 こうした対応を打ち出すのは、将来的な株式上場を見据えていることが背景にある。

ブルームバーグは昨年、シーインが早ければ 2024 年にもアメリカで新規株式公開 (IPO) を計画していると報じた。 アメリカと中国との間で政治的な緊張が高まる中、シンガポールに「ロードゲットビジネス」という会社を設立して中国から本社機能を徐々に移しているのも、上場準備の一環とみられる。 ただ、ある国内のアパレル関係者は「現状のままでは、仮に上場しても欧米の機関投資家などには買い手がおらず、価格がつかない可能性もある」と指摘する。 ファッション業界で進むサステナビリティ重視の流れに反し、「安ければそれでいい」という消費者を取り込んで急成長を達成してきたシーインも、経営方針を転換していく姿勢をさらに明確にする必要がありそうだ。 (岸本 桂司、東洋経済 = 2-26-23)



中国発「SHEIN」 若者人気も有名ブランド "パクリ疑惑" で訴訟相次ぐ … 日本のデザイナーも訴え

東京・原宿。 若者たちの間で大きな話題となっているのが、11 月に常設店がオープンした中国発のファストファッションブランド「SHEIN (シーイン)」だ。

圧倒的にコスパがいい。(客 A)
(アクセサリーは)5個セットとかでも200円しないぐらい。(客 B)
(値段が)手頃で、デザインもすごいオシャレ。(客 C)

"格安" を武器に、若者たちの心をつかむ SHEIN。 しかし、ネット上では今、あるキャラクターの "パクリ疑惑" が浮上している。 コンビニで限定販売されているアイス「たべる牧場ミルク」の、ふっくらとした牛のイラストを手がけた人気のデザイナーが「SHEIN の商品の中に牛のキャラクターにそっくりなものがある」と SNS で訴えているのだ。

まんまだから、パクリ?ってなっちゃう。(客 D)
衝撃的でした。 ほとんど一緒ですもんね。(客 C)
ライセンス取らずにって感じですかね。 中国だなという感じ。(客 E)

"パクリ疑惑" は複数 … アメリカでは訴訟も

SHEIN の公式通販サイトでは他にも、世界的高級ブランドそっくりのロゴを使ったカードケースも売られていた。 さらには、どこかで見たことがあるパッケージデザインの文房具や、「ひよこのキャラクター」のキーホルダーなどもあった。

SHEIN を利用する若者たちは …

そういうのは買わないようにというか、選ばないですね。そうではない商品はいいのではないかと。(客 A)
本物を買えるくらいのお金があったらいいけど、やっぱり若い子たちはどうしても高いものが欲しいし、似てればいいかなという感じで手を出してしまいますね。(客 D)

150 以上の国などに展開しているSHEIN。 アメリカでは商標権侵害などの訴訟が相次いでいた。 ロゴマークが有名なラルフローレンも、SHEIN で売られていたものが似ているとして訴えをおこしている。

絶対にラルフローレンのコピーね。 これは SHEIN でしょ。 彼らは多くの偽物を作っているわ。刺繍が整ってないし細かくない。 (本物は)馬の脚が真っすぐのはずなのに、SHEIN は曲がっている。 ジョッキーの頭やヘルメットがない。

SHEIN は他にも、シューズブランドのドクターマーチンや、アパレルブランドのステューシーなど、名だたる有名ブランドと商標権侵害などで裁判沙汰となり、その後和解している。 SHEIN JAPANはキャラクターを模倣されたと訴えたデザイナーに対し「ご指摘頂いた内容をとても重視しており、現在調査を進めています」と SNS 上で返信している。 (FNN = 11-22-22)


中国発格安ブランド「SHEIN」、"工場の過酷な労働環境" 報道に
Twitter 上でコメント 「現在調査を進めています」

中国発の人気ファストファッションブランド「SHEIN (シーイン)」。 その工場の労働環境について「しばしば 1 日 18 時間働き、休日は月に 1 日しかない」、「労働者は、1 着につきわずか 4 セント(約 6 円)しか得ていない」との報道が。 Twitter 上で物議を醸すなか、SHEIN JAPAN は「現在調査を進めています」などのコメントを発表しています。 SHEIN は近年、世界的に EC サイトを展開しているファストファッションブランド。 日本には 2021 年に本格進出し、安さと品ぞろえの良さから「Z 世代の若者を中心に人気を集めているブランド」として知られています。

その一方で、工場の労働環境を問題視する報道も。 Business Insider Japan は、イギリスの報道機関の潜入調査により「SHEIN の服を作っている中国の工場の労働者は、1 日に 18 時間働くことが頻繁にあり、週末はなく、休日は月にたった 1 日」、「(ある工場では)基本給がなく、服 1 着を作るごとにわずか 0.27 元(約 4 セント : 約 6 円)」であることが判明した、との翻訳記事を 10 月 18 日に公開しています。

Twitter 上で「炎上要素満載」、「こうして出来た安くてお洒落? な服を着たいと思いますか?」など批判の声が。 SHEIN JAPAN はそれらに対しリプライを送る形で、11 月 9 日ごろから繰り返し同様のコメントを発表しています。 労働時間の問題については「重大な懸念を持って注視しており、現在調査を進めています」と説明。 工場の賃金の低さについては「労働者が衣服を完成させるたびに 1 ペンスしか稼いでいないという報道は事実とは異なり、彼らの賃金構造を誤って伝えています」と否定しています。 (ねとらぼ = 11-19-22)


初のリアル店舗「SHEIN TOKYO」が原宿にオープン 開店行列 100 人あまり、穏やかなスタート

11 月12 日午前 11 時、中国発のファッション EC 「SHEIN (シーイン)」が東京・原宿に日本初となる常設のリアル店舗「SHEIN TOKYO」をオープンした。 同店は常設といっても展示のみ。 最近、出店例が増えつつある、いわゆる「売らない店舗」だ。 アパレル店が集まる「キャットストリート」に位置し、午前 11 時のオープンには目視で 100 人余りが集まった。

午前 11 時、「SHEIN の世界観をぜひお楽しみください」のかけ声とともに、ドアが開いた。 先頭に並んでいた若い男性グループは歓声をあげながら入店していった。 現場には、中国の国営放送 CCTV のレポーターの姿もあった。 SHEIN といえば、10 月 22 日に大阪の心斎橋にポップアップストア「SHEIN POPUP OSAKA」が期間限定オープンし、初日のオープン時には 400 - 500 人の行列ができたとも報じられている。

心斎橋がポップアップだったのに対して、原宿の SHEIN TOKYO は国内初の「常設店」。 話題性、若者カルチャーの街・原宿という立地を考えると、開店時の滑り出しは、想定よりも穏やかな印象は否めない。 開店直後に入店し、11 時 20 分ごろに店舗を体験して出てきた 20代の二人連れは、開店に合わせた到着だったという。 女性は前日のレセプションにも足を運んだとのことで、オープニングの様子を見たくてやってきたと語った。 「売らないリアル店舗」のメリットとしては、サイズ感がたしかめられることを挙げた。 (伊藤有、Business Insider = 11-13-22)


米でアマゾンを抜きトップに … 謎の EC アパレル「シーイン」の正体

アパレル業界人もその存在に気付かなかった「SHEIN (シーイン)」

ここ10年、世界的に急成長したアパレル企業は生まれず、同じような顔ぶれで拡大競争が繰り広げられてきたわけですが、コロナ禍が始まった 2020 年から突如として急成長ブランドが現れ、注目を集め始めました。 それが「SHEIN (シーイン)」です。

アメリカでは昨年 5 月に最もダウンロードされたECアプリとして Amazon を抜きトップになり、日本国内でも 2021 年ごろから盛んに経済系メディアやアパレル業界メディアで報じられるようになりました。 これは、自分が知る限りにおいては、中国メディアによって 5 兆円規模の巨額の資金調達があったことが報じられたのを受けてのことです。 それまでは国内のアパレル業界人、業界メディア人でも自分も含めてその存在すら知りませんでした。

「SHEIN」とは …

この媒体は業界メディアでも経済メディアでもないので、SHEIN など聞いたこともないという読者もたくさんおられるでしょうから、SHEIN というブランドについてかなり大雑把にまとめておきます。

SHEIN は 2008 年に中国で設立されたとされるブランドで、実店舗を持たずインターネットのみで衣料品を販売しています。 我が国も含めた世界中の国に向けて販売していますが中国国内では販売していないとされています。 2008 年に創業され、当初はウェディング事業など、現在とは異なる事業を手掛けていたとされます。 しかし上手く行かず事業転換を重ねた後、SNS 経由の「アパレル直販事業」にシフトし、2015 年に SHEIN を立ち上げ、現在の事業となったといわれています。

すべて伝聞調で書いているのは、SHEIN という会社は何一つとして公表されているものがないためです。 また創業者のインタビュー記事どころか顔写真すら出回っていない謎のブランドなのです。

リブランディングからわずか 7 年間で「ユニクロ超え」

そして、ついに 2022 年秋には世界売上高が 2 兆 8,000 億円に達したともいわれており、ユニクロを展開するファーストリテイリングの 22 年 8 月期連結の売上高が 2 兆 3,011 億円だったため、我が国のメディアは今秋こぞって「ユニクロ超え」という見出しで記事を掲載することとなりました。

ただ、この 2 兆 8,000 億円という売上高も公式に発表されたものではありませんので、伝聞という形にならざるを得ないのですが、2015 年のリブランディングからわずか 7 年間で到達したことが事実だとしたら驚異的な成長速度だと言わねばなりません。 それゆえに国内の経済メディア、業界メディアからも注目が集まっているというわけです。

TikTok など若者世代向けの SNS を中心にステルス的に急成長

SHEIN の特徴は圧倒的な低価格にあります。 それとトレンド商品を企画してから投入するまでの速さです。 一口に低価格と言っても様々なレベルがあるのですが、ジーユーと同等か少し安いくらいでしょうか。 さらに言うなら、値引き品は激安になります。 価格はジーユー並みでトレンド商品の投入速度は ZARA 並みというのが最も一般の方々にもわかりやすい比喩なのではないかと思います。

一説には、デザイン作成から商品投入まで 3 日間しかかからないという報道もあります(これも事実かどうか不明)が、通常の洋服作りだと、デザインしてからパターン(型紙)作り、それに基づいたサンプル製作、サンプルの修正を経て量産に入るので、3 日間で完了することは考えられません。 しかし、他社ブランド製品のいくつかをそのまま盗用しているとしたら不可能ではないでしょう。 圧倒的な規模成長が取りざたされる SHEIN ですが、著作権の違反で訴えられることも増えています。

SHEIN が 2020 年まであまり注目されないままに急速にブランド規模を拡大できたことはこれまでのファッションブランドと異なり、ほとんどの販促・告知を TikTok やインスタグラムをはじめとする若者世代が好む SNS のみに集中していたことが理由だと考えられています。 例えば、オジサン・オバサン世代が愛用しているフェイスブックには SHEIN の告知や広告はほとんど登場しません。

またこれまでの国内衣料品ブランドと異なり、ファッション雑誌にも掲載されませんでしたし、テレビコマーシャルもほとんど流れていませんでした。 このため、ステルス的に主に国内外の若者の間に広がっていったのです。 SHEIN の急成長の源泉は日本国内での売れ行きよりもアメリカでの売れ行きが主でしょう。

筆者はこれまで断続的に 8 年刊ファッション専門学校で非常勤講師をしてきましたが、昨年あたりから SHEIN で買っている学生が増えてきました。 ただ、学生たちの認識としては SHEIN というブランドを買っているというよりは、SHEIN というネット通販モールでノーブランドの低価格衣料品を買っているという認識の方が強い感じです。 言ってみれば、ZOZO や楽天というモールで、そこにネット出店している低価格ノーブランド衣料品を買うというイメージに近いといえます。

日本でもポップアップストアをオープン

そんな SHEIN ですが、今年 10 月 22 日から大阪のユニクロ心斎橋旗艦店跡地に 3 ヵ月くらいのポップアップストア(期間限定店)をオープンすることが明らかとなりました。 すでに心斎橋旗艦店跡地にはその告知が貼り付けられています。 ユニクロ心斎橋旗艦店は昨年 8 月に閉店したままずっと放置されていた物件ですが、初めて活用されます。 建物は地下 1 階から地上 4 階までの 5 層構造ですが、SHEIN は地上 1 階のみを使用するとのことです。

SHEIN はすでに大阪に先駆けてアメリカでも期間限定店をオープンしており、ネット通販のみの売り方から実店舗の取り組みも模索し始めています。 ネット通販大手が実店舗を開始することは、Amazon がアメリカで常設実店舗を開設していることからも明らかなように相乗効果が見込めます。 また ZARA も実店舗こそが最大の広告価値があるとしています。

目指しているのは Amazon のような総合小売りサイトか

SHEIN がユニクロ跡地に期間限定店を出店という内容だけを見ると何やらメディアの「ユニクロ超え」報道に拍車がかかりそうですが、SHEIN とユニクロは商品企画からビジネスモデル、目標などすべてが異なるため、日本国内でユニクロの客が大幅に奪われるということは考えにくい状態です。

SHEIN は先ほど書いたようにトレンド商品を高速で投入することに対して、ユニクロは比較的ベーシックなデザインの商品を扱い、デザイン開始から店頭投入までおよそ 1 年間 - 半年かかるのが特徴です。 またネット通販がほとんどの SHEIN に対して、ネット通販もありますが実店舗販売が大半以上のユニクロとでは、客層も客数も大きく異なります。 SHEIN と競合が激しくなるのはユニクロではなくトレンド商品を高速投入する ZARA ではないでしょうか。

ユニクロを展開するファーストリテイリングの売上高が世界 3 位であることに対して、ZARA のインディテックス社は世界 1 位の売上高を誇りますから、SHEIN がわざわざ世界 3 位打倒を目標とすることは考えづらく、世界 1 位を目標として設定するでしょう。 さらにいえば、衣料品と靴、バッグ類くらいまでしか取扱い品目を拡大していない ZARA、ユニクロに対して SHEIN はコスメにも手を広げ始めたため、ゆくゆくは Amazon のような総合小売りサイトを目指すのではないかと指摘する識者もいます。 SHEIN の今後の動向と、果たして現在報道されている内容が事実なのかどうか、注目する必要があるでしょう。 (Friday = 10-22-22)


中国発ファッションEC 「SHEIN」、GMV が H & Mと ZARA 超え 1 - 6 月

中国発の人気ファストファッションEC「SHEIN(シーイン)」は、今年上半期の流通取引総額 (GMV) が前年同期比 50% 増の 160 億ドル(約 2 兆 3,100 億円)に達したという。 年300 億ドル(約 4 兆 3,300 億円)という販売目標が 1 年前倒しで達成される可能性もある。 SHEIN との比較データとして ZARA を運営するインディテックス(スペイン)の上半期の販売額をみると、前年同期比 7% 増の 128 億 2,000 万ユーロ(約 1 兆 8,300 億円)だ。 主力ブランドの ZARA は同 7% 増の 88 億 9,500 万ユーロ(約 1 兆 2,700 億円)で、いずれの数字も SHEIN のほうが大幅に上回っている。

SHEIN の業績は過去 3 年、爆発的に伸びている。 2020 年に GMV が初めて 100 億ドル(約 1 兆 4,400 億円)の大台に乗ると、21 年には 200 億ドル(約 2 兆 8.800 億円)を達成した。 SHEIN アプリのダウンロード数は 2022 年第 2 四半期の米国市場で前四半期比 13% 増の 680 万回となり、再びアマゾンを超えた。 MAU (月間アクティブユーザー数)でみるとアマゾンは SHEIN の 3 倍だが、両者の差は縮まり続けている。 ある関係者によると、SHENの第 2 四半期の DAU (デイリーアクティブユーザー数)は 3,000 万人を超え、伸び率は 15% に達したという。

世界的なインフレの影響を受け、SHEIN は今年の中核目標を以下の 2 つに定めた。 1 つは客単価を伸ばすこと、もう 1 つは利益率を改善することだ。 複数の関係者によると、SHEIN のグローバル市場における平均客単価は今年上半期時点で 75 ドル(約 1 万 800 円)。 一昨年は 50 ドル(約 7,200 円)、昨年は 60 ドル(約 8,600 円)だった。 客単価が伸びた理由は 2 つ。 1 つは商品カテゴリーを拡充し続けたことで、現在 GMV の約 6 割を占めるレディースファッション以外に、シューズ、バッグ、コスメ、インテリア用品などのカテゴリーもこの 1 年で販売額全体に占める割合を伸ばした。 サイト全体の取引 1 件あたりの購入点数は昨年同期の 6.9 - 7 点から 7.5 - 7.8 点に増えている。

ただし、客単価が上がったからといって利益率が顕著に改善したわけではない。 ある業界レポートによると、昨年の SHEIN の純利益率は約 6% で、今年上半期は前年同期よりやや下がっている。 主な理由は、コストの大半を占める仕入れコストが 35% 前後にまで上がったことだ。

仕入れコストが改善できなかった理由は、インフレが原材料コストを押し上げたこと以外に、SHEIN が主要サプライヤーの利益保護を強化したからだ。 SHEIN は各商品をまず少量生産・販売し、売れ行きを見てから追加生産量を決める方式を採用しており、SHEIN のサプライヤーは常に生産力・良品率・納期・特急対応などに関して厳しい査定を受け続けているような状況に置かれている。 これらの対応力に応じて SHEIN はサプライヤーを S・A・B・C・D の 5 段階にランク付けしている。

SHEIN のある社員は「仕入れコストを抑えれば、サプライヤーからの反発は必至だ。 上位の S ランク、A ランクのサプライヤーに対しては利益も守らなければならない」と述べる。 加えて競合からのプレッシャーもあり、より一層サプライヤーの利益を保証しなければならない状況となっているという。

というのも、中国の格安 EC 「?多多 (Pinduoduo9」が米国進出を決めたと報じられて以降、多くの SHEIN のサプライヤーが?多多から引き きに遭っているのだ。 ?多多側は支払いまでの期間がより短い、納期に余裕を持たせるなど、SHEIN 以上の好条件を提示してきているという。 ?多多から引き合いのあった SHEIN のサプライヤーによると、?多多は取引業者に対し、越境コマースの経験があることや独立系 EC サイトとの取引経験があることを条件とし、北米市場向けの取引経験がある業者を優先するなど、あらゆる条件が SHEIN との取引経験と合致するという。

複数の関係者によると、SHEIN のサプライヤーは現在約 3,000 社に上り、S ランク、A ランクのサプライヤーが 10 - 15% を占めるという。 ?多多は海外事業「Temu」を今月 16 日にも本格スタートする。 評価額 1.000 億ドル(約 14 兆 4,000 億円)クラスの SHEIN と?多多はまもなく全面対決することになるだろう。 ?多多の海外事業部は約 200 人で構成され、そのうち 150 人近くは SHEIN などの越境コマースプラットフォームの 2 - 3 倍の報酬で引き抜かれたメンバーだという。

?多多は全商品カテゴリーとも出品手数料ゼロで出品業者を募集している。 ただし出品業者には商品価格を決める権限がなく、主に?多多が価格を決定する。 これはアマゾンなどのプラットフォーマーとも、SHEIN などの独立系サイトとも異なるやり方だ。 業界関係者の予想では、?多多はまず市場を開拓するために、最初は「多売戦略」を採る可能性が高い。 SHEIN のフェイスブック経由での顧客獲得コストは今年上半期、約 35 ドル(約 5,040 円)だったが、?多多が自社のプラットフォームにユーザーを引き入れるにはその 2 - 3 倍、あるいはそれ以上の費用がかかるだろう。

しかし、?多多の今年上半期の売上高は 550 億元(約 1 兆 1,400 億円)、純利益は 150 億元(約 3,100 億円)を超えた。 海外市場に打って出るには十分な自信もつけている。 反対に、SHEIN は昨年から試験的に開始した外部プラットフォームとの提携事業が順調ではないようだ。 電子機器や家電などを取り扱う「AUKEY (傲基)」もわずか数カ月で SHEIN への出品を取りやめた。 ライバルがますます増える中、事業の安定に揺らぎが見えている。 (36Kr Japan = 9-8-22)


中国電子商取引シーインが資金調達検討、12 兆円超の価値評価 - 関係者

→ 約 10 億ドル調達でゼネラル・アトランティックなど投資家候補と協議
→ 昨年は米ショッピングアプリのダウンロードでアマゾン抜く

ファストファッション電子商取引スタートアップ、中国のシーインが約 1,000 億ドル(約 12 兆 2,500 億円)の企業価値評価で資金調達ラウンドを検討している。 事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 非公開情報だとして匿名を条件に話した関係者によると、シーインは 10 億ドル前後の調達に向け、ゼネラル・アトランティックなど投資家候補と協議を進めている。 データ提供の CB インサイツによれば、企業価値が 1,000 億ドルに達すると、未上場のスタートアップとしては中国のバイトダンス(北京字節跳動科技)、米スペース X に次ぎ世界で 3 番目に価値が高い企業となる。

シーインは昨年 5 月、資金調達や上場に関するメディア報道を巡り、自社の価値が数十億ドルと評価されているとし、短期的には新規株式公開 (IPO) の計画はないと回答していた。 協議は進行中で、資金調達やバリュエーションの規模など詳細はなお変わり得ると同関係者は語った。 シーインの担当者に通常業務時間外にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。 ゼネラル・アトランティックの担当者はコメントを控えた。

10 代に大人気「シーイン」 - 米中貿易戦争のおかげで世界的ブランドに

シーインはサプライチェーンに精通し、データに基づいた服飾デザイン、米中貿易対立で表面化した税制面の抜け道を生かして台頭。 昨年には米ストアのショッピングアプリのダウンロードで米アマゾン・ドット・コムを抜いた。 (Bloomberg = 4-4-22)


アパレル初! 謎の 1 兆円未上場企業「SHEIN」の正体
中国発! Z 世代を引きつける「理由」と「課題」は

コロナ禍で日本のアパレル市場が大きな打撃を受けている。 特に、デジタルシフトが遅れている企業や、百貨店やショッピングセンターといったリアルチャネル頼みのアパレルは、度重なる休業要請も重なり苦しい。 感染状況の収束はいまだに見通せず、苦闘の日々が続いている。 他方、中国やアメリカでは、完全な終息には至っていないものの、積極的な経済活動を再開しており、アパレル企業の業績も上向きだ。 特に、感染状況が落ち着き、かつ海外旅行に行けないため内需が上向きの中国アパレル市場は好調である。

そのような中、いま中国発でアメリカを中心にグローバルで急成長している「SHEIN (シーイン)」というブランドがある。 謎に包まれたスタートアップだが、セコイアキャピタルなど名立たる VC が投資し、その企業価値は 150 億ドルを超えるともいわれる。 アパレル業界では珍しい「デカコーン(企業価値が 100 億ドルを超える巨大未上場企業)」だ。 『2030 年アパレルの未来 日本企業が半分になる日』を上梓したコンサルタントの福田稔氏が、「アパレル初のデカコーン『SHEIN』の正体」について解説する。

「Z 世代」のアメリカ人にはポピュラーな「SHEIN」

・ 世界 56 カ国の iOS アプリのショッピングカテゴリー部門において、ダウンロード数 No. 1 を獲得
・ ファッション EC のトラフィック数において、ナイキや ZARA を上回り、世界 No. 1 を獲得
・ Web での平均顧客滞在時間 8 分 36 秒は、全米のアパレル EC の中で No. 1
・ 業績もコロナ禍を追い風に、2020 年の売り上げは前年から 3 倍近く伸び約 7,425 億円にまで成長

これらを聞いた読者は、どんなファッションブランドを想像するだろうか。 驚くかもしれないが、これが本記事で取り上げる「SHEIN (シーイン)」が昨年成し遂げたことである。

SHEIN は、2008 年に許仰天(クリス・シュー)氏により創業された「南京希音電子商務」という会社が母体となっている。 当初はウェディング事業など、現在とは異なる事業を手掛けていたがあまりうまくいかず、事業転換を重ねて SNS 経由の「D2C アパレル事業」にシフト。 2015 年に SheInside から現在の SHEIN にリブランディングされ、現在の事業が本格的に立ち上がった。

SHEIN は、「Z 世代」のアメリカ人にはポピュラーなブランド(アプリ)である。 2021 年第 1 四半期の実績では、アメリカのショッピングアプリにおいて 3 番目のダウンロード数となった。 同年 2 月から 4 月にかけては一時的にダウンロードランキングで Amazon を抜いたとも話題となったが、多くの若者は「SHEIN が中国企業」だとは知らずにダウンロードし利用している。

SHEIN は、なぜ多くの Z 世代の若者を引きつけるのだろうか。 SHEIN の特徴は、「デジタルネイティブ」の Z 世代にフォーカスしたファストファッションモデルを、アプリ上で確立したことにある。 2020 年の売り上げは前年比 279% 増の 68 億 1,200 万ドル(約 7,425 億円)にまで成長し、売り上げの約半分をアメリカで稼いでいる。 アメリカだけでなく、欧州、中東、アジアと広くグローバル展開する一方、母国である中国ではほとんど知られていない。

「アイテム数」や「SNS」を駆使したアプローチで大反響

SHEIN が多くの Z 世代の若者を引きつける理由は、大きく分けて 2 つある。

【理由 @】 「UX (ユーザーエクスペリエンス)」の高さ

第 1 に、毎日 3,000 - 5,000 点発表される新作アイテムの圧倒的な量をベースとした「UX (ユーザーエクスペリエンス)の高さ」にある。 「ウルトラファストファッション」として有名なイギリスの boohoo でさえ数百種類であり、それを超える圧倒的な量を低価格で展開。 アプリの完成度も非常に高く購買体験もスムーズだ。 10 - 20 代前半が中心のユーザー満足度は高く、毎日開いてしまうアプリとなっている。 まさに「デジタル上でのファストファッションの王様」である。

【理由 A】 圧倒的な「デジタルマーケティング」

第 2 に、「SNS 上での圧倒的なデジタルマーケティング」である。 2019 年では、年間 Instagram で 3,240 回、Facebookで 2,456 回、Twitter では 1,936 回投稿。 Instagram 上の公式サイトのフォロワー数は、2021 年 8 月現在 2,142 万フォロワーまで成長した。 また、TikTok では、2020 年最も話題となったファッションブランドとして認知されている。 これらの SNS 上で自ら発信するだけでなく、Addison Rae、Katy Perry、Lil Nas X、など強力なインフルエンサーと契約し、さらに KOC (Key Opinion Customer) を活用。 メガインフルエンサーからナノインフルエンサーまでフル活用することで、デジタル上での「バズり」を作り、新規客を獲得しつづけている。

このように、デジタルネイティブである Z 世代にフォーカスしたアプローチにより支持されている SHEIN だが、裏で支えている「独自のサプライチェーン」はさらに示唆深い。 まず、SNS やグーグルトレンドを活用した「トレンド分析」と、企画・デザインにおける「AI の活用」により、毎日 3,000 点以上の新商品をローンチする。 これらの商品は、すべて「ミニマムロット(約 100 着)」で生産される。

生産は、「世界のアパレル工場」といわれる中国の広州において、約 300 の協力工場で生産されており、すべての工場には SHEIN オリジナルの「SCM システム」がインストールされている。 ローンチした商品の売れ行きがよければ、システム上で在庫調整や生産指示が自動的に入る仕組みとなっており、デジタル上でつながった協力工場が、すぐさま増産に着手する。 まさに「C2M (Consumer to Manufacturer)モデル」を実現している。

なお、上記の企画から生産・販売までに要するリードタイムは最短で 3 日となっており、最短 2 週間の ZARA、1 週間の boohoo を上回る最短モデルとなっている。 このような特徴を持つ SHEIN のモデルは、昨今「リアルタイムファッション」と呼ばれている。 これは、商品の企画からリードタイムまでの長さでファストファッションを分類する見方で、2000 年代に成長した ZARA や H & M の「ファストファッション」が第 1 世代、2010 年代に登場した boohoo や ASOS といった EC ベースの「ウルトラファストファッション」を第 2 世代、SHEIN の「リアルタイムファッション」が第 3 世代となる。

それぞれ第 1 世代が最短 2 週間、第 2 世代が 1 週間、第 3 世代はわずか 3 日でまさにリアルタイムだ。 いずれにせよ、受発注と生産がデジタルでリアルタイムにつながっていないと不可能なモデルだ。 まさに生産から販売までデジタル化で先行する中国から登場した画期的なモデルといえよう。

「上場の報道」がある一方で、大きな「課題」も

さて、一部では「SHEIN が近々上場する」とも報道があり、上場時の時価総額はアリババの 2014 年ニューヨーク証券取引所上場時を超えるとの期待さえある。 しかしながら、筆者の視点では、SHEIN が上場、そしてサステナブルな成長を遂げるためには、「3 つの課題」も垣間見える。

筆者の視点で見える「課題」とは、次の 3 つである。

【課題 @】 「新疆綿の使用」に関するウイグル問題

第 1 に、「『新疆綿の使用』に関するウイグル問題」だ。 ユニクロがアメリカ向けの商品を税関で差し止められたように、ウイグル問題は欧米では深刻な人権侵害と捉えられ、対応が強化されている。 中国企業である SHEIN は多くの新疆綿を使用していると思われるが、アメリカ人の多くは SHIEN がアメリカで数千億円規模のビジネスを展開していることに気づいていない。 おそらく当局もまだ動いていないだろう。 店舗があるわけでもなく、Z 世代にデジタル上で静かに浸透している通販なので目立たないのだ。

ところが、上場するとなると話は変わる。 さまざまな観点で透明性が求められるし、新疆綿の使用についても言及がなされるだろう。 したがって、ウイグル問題や米中摩擦がもう少し落ち着かないと、少なくとも SHEIN のアメリカでの上場は難しいのではないかと思われる。

【課題 A】 「意匠権」の問題

第 2 に、「『意匠権』の問題」だ。 SHEIN は企画・デザインにおいて AI やデジタルをフル活用し、毎日数千点の商品をローンチしていることはすでに述べた。 しかしながら、結果として、他社のデザインと類似した「グレーゾーンの商品」が見受けられる。 ファストファッションの世界では、過去 ZARA が意匠権の侵害で訴訟され、日本やイタリアで敗訴してきた歴史がある。 SHEIN はアイテム数も多いので、上場に向けては対策の強化が必要ではないだろうか。

第 3 に、より中長期の視点になるが、SHEIN のようなファストファッションモデルが、「そもそもサステナブルなのか」という疑問が残る。

【課題 B】 「そもそもサステナブルなのか」という問題

アパレル業界は、産業別にみると、温室効果ガス排出における世界の全産業の 8% を占めるともいわれる。 そして、その多くが素材および製品の生産段階で生まれる。 例えば、T シャツを 1 枚生産するのに消費する資源は水が約 2,500L、CO2 は約 4kg 排出される。 反芻動物からうまれるウール、アルパカ、カシミヤなどの素材となると、より多くの温室効果ガスが生産過程で出てしまう。

すなわち、アパレル業界において環境負荷を下げるためには、リペアして長く使ったり、二次流通やリサイクルを増やしたりして、新品の生産・販売は可能な限り減らしていくしかない。 大量生産・大量消費を止め、適量生産・適量消費に切り替えていくことが必要なのだ。 その点 SHEIN のようなファストファッションは、大量生産・大量消費と相性がよく、安価で耐久性の低い商品も多いことから、「サステナビリティ」の観点で疑問が残る。

EU では、欧州グリーンニューディール政策の中で繊維分野での循環型経済モデルが現在検討されているが、ファストファッション的なアプローチには早晩規制が入っていく可能性もある。 このような「カーボンニュートラル、グリーン化」の流れに対し、SHEIN が今後どのような対応をとっていくのか注視したい。

今後も、「さまざまな観点」からの見極めが重要

さて、中国のファストファッション、D2C ブランドといえば、2019 年にナスダックに上場した「如涵(ルーハン)」が思い浮かぶ。 同社は、KOL ファシリテーターとしてインフルエンサーを活用した D2Cブランドを次々ローンチし売り上げを拡大、大きな話題となった。 しかしながら、ビジネスが焼き畑的でサステナブルではなく収益が悪化。 2021 年 4 月 20 日に非公開化に踏み切り上場廃止となった。 上場廃止時の時価総額は 2 億 8,100 万ドル(約 304 億円)と、上場時に比べ 7 割以上減少。 投資家は痛手を被ったのが記憶に新しい。

SHEIN のような「デジタル系のデカコーン」は一見派手さもあり、上場した場合、市場の熱狂が予想される。 ただ、「本当に『持続的な成長』が可能なのか」、「サステナブルなビジネスなのか」など、さまざまな観点からの見極めが、今後にさらに必要になるだろう。 (福田 稔、ローランド・ベルガー、東洋経済 = 9-7-21)

1 - 2