3 都結んでゆったり旅気分を 近鉄の観光特急「あをによし」デビュー

近畿日本鉄道は 21 日、京都、奈良、大阪を結ぶ新たな観光特急「あをによし」の報道関係者向け試乗会を開いた。 29 日から運行を始める。 「新スナックカー」の愛称で親しまれた 12200 系電車を全面リニューアルした。 かつて、英国のエリザベス女王も乗車し、昨年に引退した編成を改造した。 車体は奈良で栄えた天平時代の高貴な色とされる紫色で、4 両編成の定員を新スナックカー時代の約 250 人から 84 人に減らし、家具メーカーに特注したシートをゆったりと配置した。 限定スイーツやアルコール類などを提供するカウンターを設けたほか、沿線に関する書籍を並べた「ライブラリー」もある。

1 日 3 往復のうち、2 往復は京都と奈良を結ぶ。 ゆったりくつろげる豪華な車内が売りだが、奈良までの所要時間はわずか 35 分。 京都を発車して、車窓を流れる田園風景を眺めていると、あっという間に奈良に到着してしまう。 全国に数ある観光特急の中でも、所要時間は最短級と言えそうだ。 近鉄の担当者は「30 分ほどなので食事は出さず、スイーツや飲み物だけを提供するようにした。 もったいない、と言う声は確かにあるが、短時間だけに、何度でも楽しんでもらえれば。」と話す。

一部の木曜日を除き毎日運行する。 乗車券と特急券のほか特別車両料金 210 円が必要で、運行日の 2 週間前からインターネット予約サービスや主要駅の窓口などで販売する。 5 月 5 日までの便は全席が完売となっている。 (河原田慎一、asahi = 4-21-22)

前 報 (11-20-21)


東北新幹線にネット予約集中? 「えきねっと」つながりにくい状態に

福島県沖を震源とする最大震度 6 強の地震で脱線した東北新幹線が 14 日、最後の不通区間だった福島 - 仙台間で運転を再開する。 JR 東日本が再開を前に 13 日午前 5 時から、予約サイト「えきねっと」で東北新幹線の指定券の発売を開始したところ、アクセスが集中し、サイトにつながりにくい状態が続いているという。 発売対象の期間は大型連休を挟む 5 月 10 日まで。 約 1 カ月ぶりに全線の運転が再開することから、予約が集中しているとみられる。

同社によると、駅の券売機などでの予約は通常通り可能だという。 えきねっとのホームページ上には 13 日午前 10 時半時点で、「ただいま混み合っております。 ご迷惑およびご不便をおかけしまして誠に申し訳ございませんが、しばらく時間を空けてからあらためて操作していただきますようお願いいたします。」と表示されている。 (小川崇、asahi = 4-13-22)

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東北新幹線、14 日に全線運転再開へ 脱線から 1 カ月ぶりに復旧

JR 東日本は 5 日、福島県沖を震源とする最大震度 6 強の地震で脱線した東北新幹線について、14 日に全線で運転を再開すると発表した。 一部区間で徐行運転が必要なため、当面は臨時ダイヤで運行する。 再開後は通常の 8 - 9 割程度の本数を確保するが、通常ダイヤに戻るのは 5 月の大型連休明け以降という。

東北新幹線は 3 月の地震後、那須塩原 - 盛岡間で電柱や高架橋などの損傷が約 1 千カ所見つかり、運転を見合わせていた。 復旧作業を進め、安全が確保できた区間から順次、運転を再開。 2 日には郡山 - 福島間、4 日には仙台 - 一ノ関間が再開し、東京 - 福島間や仙台 - 盛岡間を通常の 5 - 6 割程度の本数で走っている。 最後の不通区間となっている福島 - 仙台間は損傷箇所が多いため 20 日前後の再開予定と説明していたが、安全確保の見通しが立ったことから、予定が早まったという。 また同社は、今回の地震の影響で、予定通りの再開の場合でも約 120 億円の減収となり、復旧費用は 150 億 - 200 億円となる見通しを示した。 (小川崇、asahi = 4-5-22)

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東北新幹線、福島まで再開 山形新幹線は東京直通に

JR 東日本は 2 日、最大震度 6 強の地震で脱線し、一部運休している東北新幹線の郡山 - 福島の運行を再開した。 臨時ダイヤで本数を通常の 5 割ほどに抑え、同区間は平常時の最高時速 320 キロを 160 キロに落として運転する。 再開に伴い、福島 - 新庄で折り返し運転をしていた山形新幹線は東京までの直通運転が可能となった。 JR 東によると、4 日に仙台 - 一ノ関を再開する予定。 残る福島 - 仙台を含む東北新幹線の全線再開は 20 日前後を見込む。 応急処置的な方法で修繕した箇所もあり、全線再開後も当面は臨時ダイヤでの運行となる見込み。 本来の速度や本数に戻るには、さらに時間がかかるとしている。 (河北新報 = 4-2-22)

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脱線した東北新幹線、月内の全線復旧難しく

16 日深夜の地震で、東北新幹線下りのやまびこ 223 号が福島 - 白石蔵王間で脱線した。 乗客 75 人と乗務員 3 人は 17 日午前 3 時 35 分ごろ、車両から避難し、けが人はいなかった。 JR 東日本は同日、設備被害が集中した福島 - 仙台間について、今月中の全線復旧は困難との見通しを示し、那須塩原 - 盛岡間は終日運休を 21 日まで継続すると発表した。

JR 東によると、17 日午後 3 時までに、那須塩原 - 盛岡間で電柱が折れたり傾いたりした被害が少なくとも 17 カ所見つかった。 高架橋の一部破損、レールのゆがみなども確認された。 常磐線を早期再開した上で特急列車を増便し、仙台と首都圏を結ぶ代替手段とすることを検討する。 同日、現地調査に入った国の運輸安全委員会の加藤剛鉄道事故調査官 (48) は「停止か停止の直前に脱線したと思われる。 1 回目の地震でブレーキをかけて 2 回目で脱線したことは考えられる。 揺れと脱線の因果関係を検討したい。」と説明。 乗務員の聞き取りや音声データなどの調査を進め、1 年以内を目標に結果を公表する考えを示した。

JR 東は、比較的被害の少ない那須塩原 - 福島間、仙台 - 盛岡間を 22 日以降の早期に、通常より運行本数を減らして再開させる。 東北、常磐両線はできるだけ早く全面復旧させる方針。 市川東太郎副社長は「まだ被害の全容がつかめていない」とした上で、「一両日中には在来線を再開させたい。 常磐線の東京と仙台の間で臨時列車を計画している。」と述べた。 (河北新報 = 3-18-22)

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東北新幹線、脱線しても横転はせず 過去の事故教訓に導入された装置

「車両ごと倒れそうなぐらい、縦にも横にも揺れがひどかった。 ひじかけをつかんでいないと投げ出されてしまいそうだった。」 仙台へ向かう東北新幹線「やまびこ 223 号」に乗っていた女性会社員は、脱線直前の車内の様子をこう証言する。 16 日深夜に発生した最大震度 6 強の地震で、車両は 17 両のうち 16 両が脱線した。 だが、車両は倒れず、乗客・乗員 78 人にけがはなかった。 JR 東日本によると、車両は初期微動を検知して非常ブレーキをかける「早期地震検知システム」が作動し、白石蔵王駅の手前約 2 キロの付近で止まった。 脱線区間の福島 - 白石蔵王間の最高速度は時速 320 キロだったが、白石蔵王駅に停車するため減速したとみられる。

同社によると、脱線した車両の車輪付近には「逸脱防止ガイド」と呼ばれるL字形の装置がついていた。 脱線してもこの装置がレールに引っかかるため、大きな逸脱による車体の転覆などを防ぐ仕組みだ。 今回の脱線で車両が大きく傾くことはなかったが、同社の市川東太郎副社長は「装置がどう効果を発揮したのか、調査の結果を待ちたい」と話した。 2004 年の新潟中越地震では、時速 200 キロで走行中の上越新幹線「とき 325 号」が脱線し、全面再開までに 2 カ月ほどかかった。この事故を教訓に、JR 東は 08 年までにすべての新幹線車両に逸脱防止装置を導入した。

地震のリスクが高い区間を中心に、レールの転倒防止装置の整備も進めた。 21 年 3 月時点で、同社管内の約 2,200 キロの線路のうち約 1 千キロに設置している。 国土交通省によると、鉄道の地震対策では、高架橋やトンネルなどの鉄道構造物には耐震性の目安が示されているが、逸脱・脱線を防ぐ装置や地震を早期に検知して停止させるシステムの基準は定められておらず、自主的な取り組みに任されている。

新幹線を運行する JR 各社の中には、脱線自体を防ぐ「脱線防止ガード」をレールに設置している社もあるが、JR 東は「地震の規模によっては脱線を防ぐのは難しい。 脱線しても重大事故が起こらないようにする。」という考えに基づき、大きな逸脱を防ぐことに力点を置いてきたという。 ただ、今回横転は防げたものの、電柱が折れたりレールがゆがんだりするなどの被害も確認された。 17 日午後 3 時時点で電柱は 17 カ所の被害が確認され、その中には東日本大震災以降に耐震化されたものも含まれていた。 同社は、現場での調査継続や車両の撤去などの理由から、年度内の全面復旧は難しいとみている。 (小川崇、磯部征紀、asahi = 3-17-22)


豪華寝台列車「ななつ星」初リニューアル 茶室やサロン、バーを新設

九州を周遊する豪華寝台列車「ななつ星」の車両内装や運行コースが、10 月にリニューアルされる。 JR 九州が 8 日発表した。車両の改装は 2013 年 10 月に運行を開始して以来初めてで、富裕層への訴求力を高めるねらいだ。 コロナ禍が長期化するなか、少人数での旅行に需要があるとみて、部屋数を現在の 14 室(定員計 30 人)から 10 室(同 20 人)に減らす。 空いたスペースに、客が歓談できるサロンや茶室、工芸品を買えるギャラリーショップを新たに設ける。

3 泊 4 日のコースは季節に応じて、2 種類を設定する。 九州各県を回り、鹿児島県霧島市の温泉旅館などに泊まる霧島コースと、フェリーに乗り継ぎ、長崎県雲仙市や大分県別府市など九州北部を中心に巡る雲仙コース。 これまでは路線が被災した場合を除き、ほぼ 3 年間は 1 コースに固定して運行していた。 料金は 115 万円から。 65 万円からの 1 泊 2 日コースもある。 いずれも現在の料金より引き上げる。 改装工事は 6 月から始め、約 3 カ月間は運休する。

ななつ星の予約の平均倍率は 14 年に 37 倍を記録し、現在もほぼ満席が続いている。 福永嘉之常務は都内で開いた発表会で「(豪華寝台列車)のトップランナーとして誇りがあるが、同じ所にとどまっているわけにはいかない。 進化を続けていく。」と意気込んだ。 (松本真弥、asahi = 4-8-22)


新車が深刻な品薄、納車半年待ちも 中古車平均額は初の 100 万円台

記事コピー (3-28-22)


函館線の余市 - 小樽間も廃止へ 長万部 - 小樽間は全線バスに

2030 年度の北海道新幹線の札幌延伸に伴い JR 北海道から経営分離される函館線の余市 - 小樽間(約 20 キロ)について、北海道小樽市と余市町は 26 日、鉄路の維持を断念し、バス転換を容認する考えを表明した。 これで長万部 - 小樽間(約 140 キロ)の沿線の全 9 市町がバス転換を容認したことになり、同区間は廃止が確実になった。 長万部 - 余市間(約 120 キロ)は 2 月、沿線 7 町がバス転換を容認。 余市 - 小樽間については余市町が存続を求め、小樽市は態度を保留していた。

26 日は小樽市役所で、道と小樽市の迫俊哉市長、余市町の斉藤啓輔町長らが非公開の会合を行い、その後に取材に応じた。 鉄路存続を求めてきた斉藤町長は、道からバスが高速道路を走ることによる速達性の確保と、町内にバスターミナルのような拠点の整備を確約されたとし、「鉄道が廃止されても、住民や来訪客の利便性を向上させることが可能ではないかと判断した」と話した。

重い財政負担もバス転換を容認した理由だ。 道の試算では、30 年度以降に余市 - 小樽間の鉄路を第三セクター方式で存続させた場合、初期投資に 45 億 4 千万円かかる。 単年度の赤字額は 5 億円前後と見積もられていて、30 年間の累積赤字は 206 億 1 千万円に達するとされる。 一方、昨年 12 月の「並行在来線対策協議会」の後志ブロック会議で、国土交通省の担当者は鉄道を残した場合の国による鉄路の保有や、運行経費への支援を否定した。 このため迫市長は 26 日、「鉄道施設を保有する負担は重く、併せて国の支援がないなかで鉄路を維持することは難しい」と語った。

バス転換に向け、道の柏木文彦・交通企画監は「バス会社とルートを具体化していかなければならない。 また、冬の停留所は屋根が必要。 停留所を作るために駅舎など建物の譲渡についてJRと詰めなければならない。」と話した。 そのほか、車両や運転手の確保なども今後の課題になる。 長万部 - 小樽間の鉄路廃止は、道と沿線自治体が 27 日に開く後志ブロック会議で正式に決まる予定だ。 (鈴木剛志、asahi = 3-26-22)


スズキ、インドに EV・電池工場建設へ 約 1,500 億円投資

スズキは 20 日、電気自動車 (EV) や EV 用の車載電池を生産する工場の増強や建設に、約 1,500 億円(約 1,044 億ルピー)を投じると発表した。 2025 - 26 年の稼働を目指す。 スズキは、インド最大手の自動車メーカー。 西部グジャラート州の工場の能力を増やして 25 年に EV 生産に乗り出すほか、隣接地には車載用電池の工場を新設し、26 年に稼働させる。 岸田文雄首相のインド訪問に合わせてニューデリーで開かれた日印経済フォーラムで、同州と投資について覚書を交わした。

スズキは 25 年をめどに、日本とインドで EV を投入する計画だ。 資本提携するトヨタ自動車の協力も得ながら、低価格の EV 開発を加速させる考え。 インドのモディ首相は昨年 11 月、国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP26) で、70 年までにカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)達成を目指すと発表した。 インドの二酸化炭素排出量は、中国と米国に次ぐ世界第 3 位。インドの自動車市場は今後も拡大を続けるとみられ、環境対策が急務となっている。 (大平要、asahi = 3-19-22)


地震で高速道路に 50 メートルのひび、1 日で復旧できてしまうわけは

最大震度 6 強を観測した 16 日深夜の地震では、東北道や常磐道など各地でひび割れなどの被害が相次いだ。 東北新幹線も脱線の影響で那須塩原 - 盛岡間が不通になっており、東北の「大動脈」が途切れた形だが、高速道路の通行止めは 1 - 2 日足らずで全面解除に。 SNS などでは「めちゃくちゃ早い!」、「どうやって直したの?」と驚く声が上がる。 どうしてそんなに早いのか。

東日本高速道路や国土交通省によると、東北道では地震が起きた 16 日以降、国見インターチェンジ (IC) - 白石 IC 間の下り線で長さ約 50 メートル、幅約 30 センチ、段差約 10 センチのひび割れが発生するなど、17 日時点で計 8 カ所のひび割れや亀裂などが確認された。 当初、同社は 18 日中の復旧を見込んでいたが、それよりも 1 日早い 17 日午後 3 時半には通行止めが解除された。 同社東北支社の担当者は「東北新幹線も止まる中、何とか早期の復旧をという思いでやった結果だ」と話す。 計 42 カ所のひび割れが起き、南相馬 IC - 新地 IC 間の約 23 キロが通行止めとなっている常磐道も、予定を 1 日前倒しして 18 日午後に解除された。

では、なぜそんなに早く復旧させることができるのか。 災害が発生すると、まずは道路を東日本高速道路の社員らが自ら車で走って被害を確認する。 被害状況はすぐグループ会社などと共有され、対応を検討する。 対応方針が決まれば、すぐに復旧作業に移る。 復旧が必要な区間を受け持つ支社管内にある各事務所は、日ごろから地元建設業者などと協力関係を築き、災害など有事の際には必要な人員や資材を確保できる体制をつくっている。 だから、地震後もすぐに人員や資材が集まり、ひび割れ部分にアスファルトや土を流し込むなどの方法で応急修復し、地元の警察などと安全を確認した上で早期の再開につなげることができる。

工事契約などの煩雑な手続きも、ある程度は弾力的に運用できるといい、利用者の利便性が優先されるという。 それだけではない。 早期復旧の背景には、過去の災害の経験もある。 東北支社管内では、2011 年の東日本大震災や、それ以降も震度 6 強の地震を経験した。 過去の経験を元にした復旧や対応方法を蓄積しており、災害時はこの経験を元にすぐに対応を判断するという。 道路の特性は地域ごとに違うため、本社や支社だけでなく各事務所単位で復旧方法のノウハウを持つ。

細かな契約事項や見積もりよりもスピードが重視される。 東北支社管内の事務所の元所長によると、東日本大震災では本来なら支社や本社の決裁が必要な工事も現場で判断したという。 (山本孝興、asahi = 3-18-22)


ガソリン 174.6 円、9 週連続値上がり 来週は実質過去最高値へ

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ガソリンの値上がりが止まらない。 日本エネルギー経済研究所石油情報センターは 9 日、7 日時点のレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は 1 リットルあたり前週より 1.8 円高い 174.6 円だったと発表した。 値上がりは 9 週連続で、約 13 年半ぶりの高値となっている。 政府は石油元売り各社への補助金について、10 日からの 1 週間は 1 リットル = 17.7 円を出すと発表した。 補助金がなければ、来週のガソリン平均価格は 189.7 円程度になると見込まれる。 2008 年 8 月の過去最高値 185.1 円を超える水準だ。

石油情報センターによると、灯油も 7 日時点で 18 リットルあたり前週より 27 円高い 2,060 円で、9 週連続の値上がりとなった。 政府は 4 日に補助金の上限を 1 リットルあたり 5 円から 25 円に引き上げることを決めた。 ガソリンの平均価格が 172 円程度になるよう毎週支給額を決める。 原油の高騰は長引きそうで、来週の支給額は早くも上限の 25 円に達する可能性がある。

原油価格は足元で一段と上がっている。 指標となる米国産 WTI 原油の先物価格は、先週は 1 バレル = 110 ドル前後で推移していたが、今週は 120 ドル台で推移している。 7 日には一時、約 13 年 8 カ月ぶりに 130 ドル台をつけた。 世界 3 位の原油生産国であるロシアからの供給が滞る懸念が高まっているためだ。 日本政府は補助金の上限を 25 円に上げれば、当面はガソリンを 172 円程度に維持できるとみていた。 予想を超える原油の高騰で、25 円でも値上がりを十分抑えられないことが予想される。 ガソリンなどの価格上昇は家計や企業の重荷になっており、景気が落ち込むリスクが高まっている。 (新田哲史、asahi = 3-9-22)

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ガソリンへの補助金、大幅拡充へ ウクライナ侵攻受け原油価格が高騰

ガソリンや灯油の高騰を抑える補助金について、政府は 25 日、大幅に拡充すると発表した。 詳細は来週明らかにするとしている。 1 リットル = 5 円という上限額の引き上げなどが念頭にあるとみられる。 ロシアのウクライナ侵攻を受けて原油価格は高騰しており、暮らしや企業への影響を抑える。 岸田文雄首相は 25 日午前の会見で、補助金事業について「大幅に拡充強化し、小売価格の急騰を抑制する」と述べた。

補助金は 1 月 27 日からガソリン、灯油、軽油、重油を対象に、石油元売り各社に出している。 ガソリンの店頭価格(全国平均)を 1 リットル = 170 円に維持しようとするものだ。 2 月 10 日からは上限の 5 円を出しているが、原油の高騰は政府の想定を上回っている。 21 日時点のガソリンの平均価格は 172.0 円で 7 週連続の値上がりとなった。

「上限 25 円超にすべきだ」提言も

原油価格は一段と上がり、指標となる米国産 WTI 原油の先物価格は 24 日に一時、約 7 年半ぶりに 1 バレル = 100 ドルを超えた。 高騰が長引く可能性もある。 政府は補助金の上限額の引き上げを検討している。 自民党からは上限を 25 円超にすべきだとの提言も出されている。 ガソリン高騰時にガソリン税の旧暫定税率分の 1 リットル = 25.1 円を減税する「トリガー条項」を意識したものだ。 政府は 3 月末までとしている補助金の期限の延長も検討している。 補助金の財源には 2021 年度当初予算と補正予算で計 893 億円を計上しているが、いまのペースだと 3 月上旬で尽きる見通しで、財源確保も課題となる。 (新田哲史、asahi = 2-25-22)

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ガソリン 170 円維持に異例の補助金 効果発揮は 1、2 週間後か

政府は 25 日、ガソリンなどの価格上昇を抑えるためだとして、異例の補助金を出すことを決めた。 燃料費が負担になっている家計や企業にとっては期待が高まるが、かつてない政策でもあり効果は未知数だ。

政府はいまの価格からの「値下げ」を狙ったものではないと説明している。 目的は、いま以上の急激な価格上昇を抑えることだとしている。 具体的には、1 リットルあたりの全国平均でガソリンが 170 円、灯油が約 110 円、軽油が約 150 円という価格を超えないことをめざす。 石油元売り各社に 1 リットルあたり最大 5 円の補助金を出し、卸売価格を抑える。 それを受けて、ガソリンスタンドには小売価格を抑えてもらう仕組みだ。 価格はそれぞれの店が自主的に決めるため、補助金分がすべて価格抑制にまわるかどうかははっきりしない。

仮に小売価格の上昇が抑えられたとしても、全国すべての店で一律に 170 円になるわけではない。 価格は輸送費など様々な条件で決まり、店ごとに異なっている。 全国平均価格が 170 円を超えないよう補助金の支給単価は設定されるが、すでに多くの店が170円を超えている地域もある。 その場合は、補助金が出ても 170 円を超える店は多いとみられる。

店によっては、来週や再来週は値上げする可能性もある。 これまでの卸売価格の上昇分を価格に十分に転嫁できていない店もあるためだ。 高い卸売価格で仕入れた在庫が残っているところもある。 経済産業省は価格抑制の効果が表れてくるのは、1 - 2 週間後とみている。 消費者にとっては恩恵をどれだけ受けたのかわかりにくい面もある。 政府は 2021 年度当初予算と補正予算に計 893 億円を計上しているが、政策の費用対効果が問われる。

原油の高騰を受けて卸売価格の上昇は続いており、1 リットルあたり 5 円を補助しても、全国平均が 170 円を超える可能性もある。上限額の引き上げについて具体的なことは決まっていないが、萩生田光一経済産業相は「国民生活への影響を最小限にできるように引き続き検討していきたい」とした。

支給額を決める基準額であるガソリン 170 円は、発動から 4 週ごとに 1 円ずつ切り上げられる。 4 週間後の 2 月 23 日には基準額が 171 円となり、全国平均が176円を超えないよう支給単価が設定される。 さらに 4 週間後の 3 月 23 日には基準額が 172 円になるといった具合だ。 経産省は「急激な値上がりを抑制するのが制度の趣旨のためだ」としている。 補助金は 3 月末までの時限措置だ。 原油価格が高止まりすれば、ガソリンの高騰は続く可能性がある。 新年度以降の補助金の継続について、経産省は「検討はする」としている。 (新田哲史)

補助金には「短期的な効果しかない」

日本政府のガソリンなどへの補助金政策は、主要国では異例といえる。 事実上の価格維持政策とも指摘されており、効果については懐疑的な声もある。 米投資情報会社プライス・フューチャーズ・グループのフィル・フリン氏は、政府による価格への介入は一時的な混乱の場合は有効だとしつつ、「いまの価格上昇は需給のひっぱくが原因で、(補助金には)短期的な効果しかない。 むしろ、節約意欲をそいで裏目に出る可能性もある。」という。

原油市場は高止まりしている。 国際指標となる「米国産 WTI 原油」の先物価格の 24 日の終値は 1 バレル = 83.31 ドルで、1 年前の約 52 ドルと比べて 6 割高い。 コロナ禍からの世界経済の回復を反映し、需要が増しているためだ。 昨年 12 月初めには新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が広がり、WTI は一時、60 ドル台前半まで値を下げた。 欧米が厳しい規制を避け、影響は限定的だとの見方が強まると、1 カ月半で 20 ドルほど値上がりした。

米国や日本などの消費国はガソリンの高騰にあえぐが、世界の石油供給の半分を担う石油輸出国機構 (OPEC) プラスは、大幅な増産に慎重な姿勢を貫いてきた。 昨夏から月ごとの小幅増産を繰り返し、この 1 月の会合でも大幅な増産は見送った。 コロナ禍が完全に終息していないことへの警戒感を理由にするが、産油国の財政のためだとみる専門家もいる。

国際エネルギー機関 (IEA) が 19 日に出した最新のリポートによると、2022 年の石油需要は日量 9,970 万バレルで、コロナ禍前の 19 年の水準(日量 9,950 万バレル)を上回ると予測している。 これに対し、世界供給は日量 1 億バレルを超えると予想している。 サウジアラビアや米国による増産が、供給を増やすカギになると見ている。 (ニューヨーク = 真海喬生、ロンドン = 和気真也、asahi = 1-25-22)

補助金のポイント

  • 対象はガソリン、軽油、灯油、重油。 石油元売り会社に出すので、消費者は手続きなどはいらない。 期間は今年 3 月末まで。
  • 1 リットルあたりの全国平均価格でガソリンが 170 円、灯油が約 110 円、軽油が約 150 円を超えないよう支給単価を設定
  • 支給単価は最大 5 円で毎週見直す。 27 日からの 1 週間は 1 リットルあたり 3.4 円。
  • ガソリン 170 円の基準額は発動から 4 週間ごとに 1 円ずつ引き上げる
  • 値下げではなく、さらなる価格上昇を抑えるのが目的。 価格は店舗や地域ごとに異なり、値上げする店やガソリンが 170 円を超えるところもあり得る。

大手自動車部品メーカーのマレリ、私的整理を検討 負債総額 1 兆円

大手自動車部品メーカーのマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)は、経営再建に向けて金融機関から支援を受けるべく協議に入った。 私的整理の一つである事業再生 ADR (裁判外紛争解決手続き)の申請も検討されている。 金融機関や取引先などの関係者が明らかにした。 負債総額は約 1 兆円で、今後はみずほ銀行など主力行と交渉するとみられる。 マレリによると事業は通常通り継続しており、雇用も維持されているという。 事業再生 ADR を用いずに協議で資金繰りを確保して再建をめざす案もある。

マレリは空調機器や熱交換器などをつくっていて、主に日産自動車に納めている。 販売が伸び悩んでいたところにコロナ禍の影響もあり、抜本的な再建策が必要だと判断した模様だ。 みずほ銀などは、1 千億円規模の金融支援を検討している。 日産も再建に向け協力する方針だ。 マレリの前身のカルソニックは日産の系列会社だった。 日産は 2017 年に保有株式を米投資ファンドコールバーグ・クラビス・ロバーツ (KKR) に売却。 カルソニックは KKR の傘下に入り、イタリア部品大手マニエッティ・マレリと 19 年に経営統合していた。

マレリによると、世界に約 170 の拠点があり、従業員はグループ全体で約 5 万 8 千人。 国内では群馬や埼玉、神奈川などに工場があり、従業員は 21 年 11 月時点で約 6,300 人。 調査会社の東京商工リサーチ (TSR) によると、マレリは近年、赤字が続いていた。 KKR や銀行から資金を調達し、さいたま市の本社ビルを売却するなど再建に取り組んでいた。 事業再生 ADR は銀行や取引先などと話し合い、借金の一部免除などの支援を受けるものだ。 民事再生法の申請といった法的整理より手続きが早く進み、事業活動への影響を抑えられるのが利点とされる。 (神山純一、江口英佑、asahi = 2-15-22)

マレリ〉 カルソニックカンセイ(さいたま市)と、マニエッティ・マレリ(イタリア)が 2019 年 5 月に経営統合した自動車部品メーカー。 ライトや空調機器、熱交換器などをつくる。 20 年の売上高は約 1 兆 2,660 億円で、部品会社としては世界でも大手だ。 欧州やアジアを中心に国内外に約 170 の拠点があり、そのうち工場は約 140。従業員数はグループ全体で約 5 万 8 千人、国内では約 6,300 人。 カルソニックは日産自動車の子会社だったが、17 年に米投資ファンドコールバーグ・クラビス・ロバーツ (KKR) の傘下に入っていた。 経営再建に向け本社ビルを売却し、23 年には本社を移転する予定だ。

マレリ(旧カルソニックカンセイ)をめぐる主な経緯
1938年日本ラジエーター製造(のちのカルソニック)創立 ラジエーター生産開始
54年日産自動車のラジエーター全てを受注
56年関東精器(のちのカンセイ)創立 計器の生産開始
88年カルソニックに社名変更
91年カンセイに社名変更
2000年カルソニックとカンセイが合併しカルソニックカンセイ設立
05年日産への第三者割当増資で日産の連結子会社に
08年東京・中野区からさいたま市に本社移転
15年15 年度の売上高が 1 1兆円を超える
16年日産が米投資ファンド KKR に全株式売却を発表
17年株式公開買い付けが完了し KKR の完全子会社に
19年栃木、山形の 4 工場を閉鎖すると発表
KKR が伊自動車部品大手マニエッティ・マレリを買収
カルソニックカンセイと経営統合し、社名をマレリに変更
独立系の自動車部品会社としては売上高世界 7 位に


ジェットエンジン、泡洗浄で CO2 削減 JAL が国内初導入

日本航空 (JAK) は 7 日、航空機のジェットエンジンを泡で洗浄する国内初の取り組みを、大阪(伊丹)空港の格納庫で公開した。 水で洗うより汚れをしっかり落とせるので、燃費が改善し、二酸化炭素 (CO2) の排出量を減らせるという。 泡洗浄する機体は、JAL グループ「ジェイエア(大阪府豊中市)」が保有する「エンブラエル170 (E170)」。 もともと水洗浄だったが、昨年 12 月からは泡を併用している。 JAL によると、加温した特殊な洗浄剤を泡状にして使うことで、エンジン内部に付着したちりやほこりの粒子をよりよく取り除けるという。 これにより削減できる燃料は年間最大 8 万 2 千リットルで、CO2 排出量で約 285 トンに相当する。 水の使用量も年間 2,160 リットル減らせるという。

水洗浄はエンジンを動かす必要があり、屋外で作業しなければいけなかった。 泡洗浄は格納庫内で作業でき、作業時間は水よりも約 2 倍かかるが、人員を半減できる利点もあるという。 JAL は 2025 年に、グループ全体の CO2 排出量を 19 年並みに抑え、50 年に実質ゼロにするという目標を掲げている。 泡洗浄は、他の機種への導入も検討していくという。 (朝倉義統、asahi = 2-7-22)

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退役したボーイング 737-500 に会えるツアー ANA が販売

全日空 (ANA) は、2018 年に退役したボーイング 737-500 を使い、羽田空港の格納庫での撮影ツアーと、操縦席の見学などができる航空教室を販売した。 3 月 5 日に行われる 60 人限定の撮影ツアー(1 人税込み 1 万 5,800 円)は発売から 1 日で完売した。 同 6 日にある、子ども(6 - 12 歳)と大人の計 56 組限定(ペアで同 3 万 5 千円)は 2 月 7 日午前の時点でまだ空きがあるという。

この機体は、エンジンカバーにイルカが描かれ「スーパードルフィン」の愛称で親しまれ、地方路線で活躍した。 他社の国内線からもすでに引退しており、国内で見られるのはこの 1 機だけという。 実は退役後、ひそかに同空港の格納庫で新人整備士のための訓練専用機として活躍していたのだ。 広報担当者は「整備の質の向上だけでなく、もう一肌脱いでもらおうと思います。」。 申し込みは 専用サイト で 2 月 26 日まで。 (朝倉義統、asahi = 2-7-22)


連続事故のボーイング 737MAX、世界の主要市場に 3 年ぶり復帰へ

連続墜落事故を起こした米ボーイングの小型旅客機「737MAX」について、中国の航空当局が近く、ほぼ 3 年ぶりに運航を認める見通しになった。 中国は事故直後、世界に先んじて同型機の運航停止に踏み切っていた。 中国での運航再開が認められれば、米国、欧州を含めたほぼ全ての主要市場に、737MAX が復帰することになる。 737MAX は 2018 年 10 月にインドネシアで、19 年 3 月にはエチオピアで墜落事故を起こし、計 346 人が死亡した。 2 度目の事故の翌日、中国は真っ先に領空内での同型機の運航を禁じ、アジアや欧州、中東などの当局がそれに続いた。

中国で航空機市場が拡大していたのを背景に、航空行政でも中国当局が存在感を発揮し始めたものと受け止められた。 なお、米国と日本が運航停止に踏み切ったのは事故から 3 日過ぎてからで、主要国では最後だった。 中国民用航空局は昨年 12 月、737MAX の運航再開に向けた指針を各航空会社に示した。 今月 9 日には海南航空が乗客を乗せない試験飛行を行っている。 米ブルームバーグ通信は関係者の話として、今月内にも737MAXの運航が再開される見通しだと報じた。

ボーイングは事故後、墜落の原因となった飛行制御システムを改修するなどの再発防止策を講じた。 これを受け、米連邦航空局 (FAA) など各国の航空当局は 2020 年 11 月以降、運航再開を順次認めており、すでに 180 カ国以上で運航が許されている。 日本の国土交通省も 21 年 1 月に運航再開に向けた申請を受け付け始めた。 ただ、日本の航空会社はもともと 737MAX を運航していない。

737MAX はボーイングの受注残の大半を占める主力機。 昨秋の時点で抱えていた 737MAX の在庫約 370 機のうち、ほぼ 3 分の 1 は中国向けとされる。 連続墜落事故とコロナ危機で経営難に陥ったボーイングにとって、最大市場・中国での運航再開は再浮上に向けた重要な一歩となる。 (江渕崇、asahi = 1-20-22)

B737MAX、事故後の経過 (10-29-18〜5-28-20)


米国の 5G が機体に影響? ANA が計 20 便を欠航

全日本空輸は 18 日、米国で高速通信規格 5G のサービスが始まるのに伴い、ボーイング社から 777 型機の運航見合わせを求められたとして、米ロサンゼルス・ニューヨーク・シカゴなどと羽田・成田の国内 2 空港を結ぶ当面の計 20 便を欠航すると発表した。 旅客は 10 便、貨物が 10 便で約 650 人に影響するという。

全日空によると米国の航空当局が昨年 12 月、5G が航空機の電波高度計に影響を与えるおそれを指摘し、今月 13 日には影響を受ける可能性がある空港を示していた。 ボーイング社は 777 型機を運航する全航空会社に、着陸時の機体制御に影響を及ぼす可能性があるとして運航制限を求めたという。 日本航空も欠航が生じるとしている。 全日空によると、既に 5G サービスが始まっている日本や欧州では、機体への影響例は報告されていないという。 (松本真弥、asahi = 1-18-22)


線路と道路を走る DMV、「世界初」の運行スタート 徳島 - 高知間

線路と道路の両方を走る DMV (デュアル・モード・ビークル)の営業運行が 25 日、徳島県南部と高知県東部の 16.1 キロを結んで始まった。 両県などが出資する第三セクターの阿佐海岸鉄道(本社・徳島県海陽町)が運行する。 同社によると、本格的な営業運行は世界でも初めてだという。 マイクロバスを改造した車両の前後には、鉄輪が 1 ペアずつ格納されている。 線路を走る時は鉄輪をレールに下ろし、前のゴムタイヤは浮いた状態に。 後ろのゴムタイヤが駆動輪となり、鉄輪と合わせて6輪で走行する。「バスモード」から「鉄道モード」への「モードチェンジ」は 15 秒ほどで、座席数 18 で旅客定員は 21 人。

鉄道区間は、従来はディーゼル車が走っていた阿波海南(海陽町) - 甲浦(かんのうら、高知県東洋町)の 10 キロで他はバス区間。 16.1 キロを毎日往復し、土日祝日は室戸岬(高知県室戸市)まで 54 キロの 1 往復が加わる。 この日は、始発バス停の「阿波海南文化村(海陽町)」前で発進式があり、乗客 18 人が乗り込んだ初便が午後 0 時 36 分に出発。 初便に乗った兵庫県西宮市の会社員中原子龍さん (25) は「車内は完全にバスで、窓の外は線路というギャップに驚いた。 世界でここでしか味わえないというのが一番いいところだと思う」と話した。

鉄道、道路両用車の開発は、旧国鉄や欧州などで古くから試みられてきた。 DMV は JR 北海道が 2002 年から開発に着手。 試験的な営業運行も行ったが、会社全体の安全対策に専念するなどとして 14 年に導入を断念した。 徳島県と阿佐鉄が技術を引き継ぎ、「観光の目玉」にしようと開発を続けてきた。 阿佐鉄社長を務める三浦茂貴・海陽町長は「感無量の思い。 観光の起爆剤にして観光客に来ていただいて公共交通を維持し、持続可能な地域住民の足として運行していけるよう頑張っていきたい。」と話した。

発進式のテープカットには JR 北海道の島田修社長も参加し、「19 年を経て DMV が実用化され、大変うれしい。 地域の足として親しまれることを期待している。」と語った。 (斉藤智子、asahi = 12-25-21)

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鉄道? バス? DMV、四国で運行開始 阿佐海岸鉄道が 12 月 25 日

線路と道路の両方を走る車両「DMV (デュアル・モード・ビークル)」の運行が、徳島県海陽町と高知県室戸市の間で 12 月 25 日に始まることになった。 10 日の関係自治体による協議会で決まった。 両県などが出資する第三セクター阿佐海岸鉄道(本社・海陽町)が運行し、本格的な営業運行は「世界初」とされている。 DMV は、もとはディーゼル車両が走っていた路線を、マイクロバスを改造して線路用の鉄輪を付けた車両が走り、線路を下りた後はバスとして道路を走る。

運行開始時期を巡っては、2020 年 7 月開始を当初目標にしていたが、コロナ禍で関係機関との協議や必要な認可手続きがずれ込み、工事の着手が遅れるなど延期を繰り返してきた。 今年 6 月の国土交通省の技術評価検討会で、鉄輪と車体をつなぐアーム部分の補強が必要と指摘され、7 月の予定を年内に延期していた。 その後、強度を高めたアームに付け替え、今月 4 日の技術評価検討会で安全性に問題ないことを確認。同日付で四国運輸局から阿佐鉄のバス区間の運送事業も許可された。

運行開始日が決まり、阿佐鉄社長で海陽町の三浦茂貴町長は「世界初が誕生する日に、クリスマスはふさわしい。 町民一同大いに盛り上がり、効果が沿線に波及していくよう期待をふくらませ、カウントダウンしていきたい。」、高知県東洋町の松延宏幸町長は「いよいよ、やっと、と感慨深い。 住民のみなさんの関心、期待は大きいと感じている。」と喜んだ。 飯泉嘉門・徳島県知事は「ゴールではなく世界に向けてのスタート」と語った。

今後、習熟訓練や国の監査があり、営業運行開始前には地元向けの内覧・試乗会を実施する予定という。 DMV は「海南宍喰線(16.1 キロ)」と「海南室戸線(54 キロ)」の 2 路線で営業し、このうち阿波海南駅(海陽町) - 甲浦(かんのうら)駅(東洋町)間の 10 キロは鉄道運行区間。 両駅で鉄道とバスのモードを切り替える。 座席数 18。 ネットでの事前予約を 12 月 2 日から受け付ける。 徳島県によると、阿佐鉄の利用者はこれまでの年間約 5 万人から約 7 万 5 千人に増え、約 1,400 万円の経営改善が見込まれると試算している。

「海南宍喰線」は、阿波海南文化村(海陽町)から道の駅宍喰温泉(同)までを結び、平日 13 往復、土日祝日 11 往復(当面は臨時便を含め 14 往復)。 道の駅宍喰温泉までの運賃は 800 円。ディーゼル車で 450 円だった阿波海南 - 甲浦間は 500 円となるが、地元の利用者向けに 1,200 円分を千円で買える回数券を販売する。 「海南室戸線」は、阿波海南文化村から海の駅とろむ(室戸市)まで結び、土日祝日に 1 往復する。 海の駅とろむまでの運賃は 2,400 円。 (斉藤智子、asahi = 11-10-21)