パナソニック、持ち株会社に移行 事業分野ごとに 8 子会社体制

パナソニックは 1 日、持ち株会社制に移行した。 新たに持ち株会社の「パナソニックホールディングス (HD)」の下に、家電や空調事業の「パナソニック」など事業分野ごとに 8 つの子会社がぶらさがる形になった。 今後 3 年間累計の営業利益を直近 3 年間から 1.6 倍に増やす新たな経営計画も示した。 パナソニック HD の下にはほかに、車載電池を手がける「パナソニックエナジー」や自動車部品の「パナソニックオートモーティブシステムズ」などの子会社が置かれる。 HD 本社は、これまでどおり大阪府門真市に置くが、パナソニックの一部の本社機能などは東京に移した。

パナソニック HD をめぐっては、成長戦略がうまく描けていないと指摘されてきた。 持ち株会社化によって子会社に権限を持たせ、成長につなげたい考えだ。 この日公表した中長期戦略では、今後 3 年間の累計の営業利益は 1 兆 5 千億円をめざすとした。 車載電池や水素エネルギーなどの成長分野に 3 年間で計 6 千億円を投じる方針も示した。 楠見雄規社長は同日開いた説明会で「意欲的な目標を掲げたと見えるかもしれない。 これぐらい目線を上げて、改善につぐ改善をやっていこうということだ。」と話した。 一方、ウクライナ情勢などによる原材料価格高騰の影響については「十分に盛り込めているというわけではない」とも述べた。

この日の説明会では、同社が 2050 年までに、全世界で排出されている二酸化炭素 (CO2) の約 1% にあたる 3 億トン以上を実質削減することも表明した。 これまでにも、自社事業での CO2 排出量を 30 年までに「実質ゼロ」にすると表明していた。 今後、車載電池や空調、水素エネルギーの普及などによる効果とあわせ、3 億トンの削減をめざすという。 (栗林史子、asahi = 4-1-22)


偽造半導体が国内に流通、どの国から? ロシア侵攻などで供給不足

偽造半導体

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キオクシア、岩手の北上工場に新棟建設へ 1 兆円規模投じて増産態勢

半導体大手キオクシアホールディングス (HD) は 23 日、NAND (ナンド)型フラッシュメモリーを生産する北上工場(岩手県北上市)で 2 棟目の製造棟を建てると発表した。 追加の投資総額は 1 兆円規模になる。 社会のデジタル化が進み、半導体の市場規模が中長期的に大きくなることを見越して、増産態勢を整える。 新棟は 4 月に建設を始め、2023 年中に完成させて操業する予定。 協業する米ウエスタンデジタルと共同で投資する方針だ。 人工知能 (AI) を使って生産システムの効率化を目指すという。

北上工場はキオクシア HD にとって四日市工場(三重県四日市市)に次ぐ第 2 の製造拠点で、19 年に 1 棟目の製造棟が完成した。 16 日夜に起きた福島県沖を震源とする地震で一部の製造装置が止まったが、19 日に通常稼働に復旧している。 NAND 型フラッシュメモリーは、スマートフォンなどのデータの記憶に使われる。 高速通信規格「5G」やクラウドサービスの広がりを受け、データセンター向けの需要も増えている。 韓国サムスン電子など海外大手とのシェア争いも激しい。 キオクシア HD は四日市工場でも新棟を 4 月に完成させるなど、年間数千億円の設備投資を続けている。 (鈴木康朗、asahi = 3-23-22)


自動車メーカー、地震で部品調達難 トヨタは 21 日から 11 工場停止

16 日夜の地震の影響で、大手自動車メーカーの生産に影響が広がる。 部品会社の工場が被害を受け、十分に供給できなくなったためだ。 どのような部品が不足しているのかなど、詳しい状況は公表されていない。 トヨタ自動車は 18 日、部品の調達が難しくなったとして、国内 11 工場 18 ラインの稼働を 21 日から最大 3 日間停止すると発表した。 約 2 万台分が減る見込みだ。 24 日以降に再開できるかどうかも現段階では未定だという。

地震では、トヨタ自動車東日本の宮城大衡工場(宮城県大衡村)や岩手工場(岩手県金ケ崎町)が、17 日に一時止まった。 今回はこの 2 工場のほかに、主力の元町工場(愛知県豊田市)や高岡工場(同)なども止まる予定だ。 トヨタ自動車は「部品不足に対するあらゆる対策を図り、一日でも早く、多くのお客様のもとに車をお届けできるように尽力する」としている。

ダイハツ工業は、滋賀第 2 工場(滋賀県竜王町)と京都工場(京都府大山崎町)を 21 日から 3 日間止める。 約 3,900 台分が減る見込みだ。 日野自動車もトラックなどを製造する羽村工場(東京都羽村市)を、21 日から最大 3 日間止める。 スバルは、群馬製作所の計 3 工場について、18、21 日の 2 日間操業を停止する。 22 日以降については「取引先の工場が復旧し、操業を再開する見込みだ」としている。

半導体工場や製油所、復旧に時間

宮城、福島両県で最大震度 6 強を観測した地震では、生産を止める工場が相次いだ。 再開する動きもあるが、設備が壊れて復旧まで時間がかかりそうなところもある。 自動車部品などの供給が滞り、トヨタ自動車などの全国的な工場の停止につながっている。 東北地方には自動車や半導体など、幅広い業種の生産拠点がある。 自動車や電子製品をつくるには多くの部品が必要だ。 一つでも欠けるとサプライチェーン(供給網)が途切れ、影響が広がっていく。

トヨタ自動車やスバルなど大手自動車メーカーの各社は 18 日、工場の停止を発表した。 どのような部品の供給が滞っているかなど、詳しい状況は明らかになっていない。 日立製作所の傘下の自動車部品メーカー「日立アステモ」は 18 日も宮城県と福島県にある 6 工場を止めた。 サスペンションをつくる福島県桑折町の工場では配管の破損などが確認された。 来週にも一部のラインを再開するが、全面復旧の時期は見通せていない。

ほかにも、自動車向け半導体大手のルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県ひたちなか市)は 18 日までに生産を一部再開したが、全面復旧には 23 日ごろまでかかるという。 「被害状況を精査しており出荷への影響も調査中だ」としている。 微細なものをつくっているため、いったん停電すると製造装置の再設定に時間がかかる。 クリーンルームの再立ち上げも大変だ。 半導体の工場は電力を大量に消費するため、自家発電設備などで停電に対応するのは難しい。

キオクシアホールディングスの北上工場(岩手県北上市)も一部の装置は止まっており、全面復旧には至っていない。 電子部品大手の村田製作所では、宮城県登米市と仙台市の 2 拠点が停止している。 どちらも、シェアが高い部品をつくっている。 石油元売り最大手の ENEOS ホールディングスでは、仙台製油所(仙台市)の一部製品が出荷できていない。 川崎製油所(川崎市)でも一部で装置が停止中だ。 いずれも復旧の見通しは立っていない。

ビール大手では、「スーパードライ」などをつくるアサヒビール福島工場(福島県本宮市)が止まっている。 倉庫の一部で商品が散乱し、保管場所を十分に確保できていない。 「黒ラベル」などのサッポロビール仙台工場(宮城県名取市)では設備の一部が壊れ、倉庫で荷崩れが起きた。 停電の影響で稼働を停止した重工大手 IHI の相馬事業所(福島県相馬市)も再開時期は未定だ。 日本製紙は、出版用紙などをつくる石巻工場(宮城県石巻市)と新聞用紙をつくる岩沼工場(同県岩沼市)の稼働を止めている。 工場内に材料などが散乱し、点検を慎重に進めている。 (近藤郷平、神山純一、山下裕志、若井琢水、千葉卓朗、asahi = 3-18-22)


JX 金属、2 千億円かけ茨城県に工場新設 半導体向け先端素材を生産

エネオスグループの非鉄金属大手、JX 金属は 16 日、茨城県ひたちなか市に新工場を建設すると発表した。 約 2 千億円をかけて、2025 年に操業をはじめる。 世界的に需要がふくらむ半導体向けの先端素材などをつくる方針だ。 500 人を超える規模の雇用も見込まれる。 JX 金属は 24 万平方メートルの用地を新たに取得した。 半導体の配線材料になる「スパッタリングターゲット」や、スマートフォンなどの回路基板になる圧延銅箔(どうはく)などの生産拠点にする。

JX 金属は、資源開発や精錬中心から「技術立脚企業への転身」をめざす方針を 19 年に出している。 昨年 12 月には、同県日立市に計 480 億円をかけて 2 工場を新設し、先端素材の生産能力を強化することも発表していた。 茨城県庁でこの日会見した村山誠一社長は、先端素材のいまの供給能力では需要増に対応できないとの認識を示した。 投資額は大きいとしつつ、「先端素材の安定的な供給の責任に呼応していく」と述べた。 同席した大井川和彦知事は「地元には雇用や税収などのインパクトがある。 自治体として最大限のサポートをしていく。」とした。 (藤田大道、渡辺淳基、asahi = 3-16-22)


「全固体リチウムイオン電池」向け量産へ 高伝導で低温焼結するスゴい物質の全容
キヤノンオプトロンが酸化物系固体電解質を開発

キヤノンオプトロン(茨城県結城市、奥浩志社長)は、産業技術総合研究所との共同研究で、全固体リチウムイオン電池 (LIB) 用の酸化物系固体電解質を開発した。 高い伝導性を有しながら、従来の固体電解質より低い温度で焼結し、抵抗物質の形成を抑制する。 本社工場内に酸化物固体電解質の生産ラインを設置し、2023 年前半に量産・販売する計画。 酸化物系固体電解質を使用した全固体 LIB は、高い安全性が期待されている。

これまで固体電解質として注目されることがなかった結晶性材料に、特定の異種元素を添加。 電池出力に影響を及ぼす伝導性を大幅に向上することに成功した。 同社の固体電解質は大気雰囲気下 600 - 700 度 C 程度で焼結する。 活物質との化学反応を抑制し、リチウムイオンの出力を向上できる。 従来の固体電解質は電池製造時に 1,000 度 C 以上で焼結する必要があった。 高温で加熱すると混合している活物質が化学反応し、リチウムイオンの移動を阻害する抵抗物質となり、十分な出力が得られない電池となる問題があった。 (NewSwitch = 3-13-22)


トヨタ向け鋼材値上げ、強気で交渉の日本製鉄 脱炭素で力関係に変化

基幹産業の戦略転換

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アマゾン x ヤマダ電機 スマートテレビを共同開発

自宅での時間がより充実しそうなテレビです。 ヤマダホールディングスとアマゾンジャパンは、インターネットに接続して動画などを楽しめるスマートテレビを開発しました。 このテレビは、ネットフリックスやアマゾンプライムなどの動画配信サービスを地上波や BS 番組などと同じ画面から選択できます。 アマゾンはテレビに差し込んで動画視聴できる外付けの「ファイア TV スティック」を世界で 1 億 5,000 万台以上出荷しましたが、家電量販店とテレビの共同開発をするのは国内で初めてです。 (テレ朝 = 2-18-22)


政府が急ぐ半導体支援 高専にコース新設、工場への補助金には条件も

政府は半導体産業を支援する具体策をまとめた。 工場の新設に補助金を出す条件として、最低 10 年間は生産を続けるように求める。 人材育成に向けて、全国の国立高等専門学校(高専)にコースを設ける方針だ。 半導体が不足すればスマホや自動車など様々なものの生産が滞る。 いまは需要の急増で世界的に不足しており、企業が「争奪戦」をする状況だ。 米国は中国への対抗を念頭に半導体産業を支援し、重要物資の供給を安定させる法案を可決。 日本も「経済安全保障」のかけ声のもと、巨額の補助金を出そうとしている。

半導体

電流や電気を制御するのに使われ、電気をよく通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」の中間的な性質を持つため半導体と呼ばれる。 スマホやパソコンだけでなく自動車など多くの製品に欠かせないため「産業のコメ」ともいわれる。 単純な機能のものから、複雑な計算ができる CPU (中央演算処理装置)まで様々だ。 生産するには空気中のほこりを防ぐクリーンルームが必要なものもあり、工場建設には巨額の費用がかかる。 日本では半導体の工場などを支援するための関連法が昨年 12 月に成立した。 政府が法律をつくってでも誘致したかったのが、世界的な半導体メーカーの台湾積体電路製造 (TSMC) だ。 ソニーグループ子会社とともに熊本県につくる工場について、建設費の約半分の約 4 千億円を出す。

韓国・台湾に遅れ 効果検証にも懸念

地元の自治体や企業も協力している。 九州では支援の産官学のコンソーシアム(共同組織)を立ち上げる。 県や半導体企業に加え、九州大や熊本大など計約 30 機関・団体が参加する。 7 日に福岡市で準備会合を開いた。 政府は補助金を出す代わりに、工場の稼働後 10 年間は生産を続け、撤退しないように条件をつける。 短期間で操業をやめる場合は認定を取り消し、返還を求める。 半導体の需給が逼迫した場合には増産に応じることや、技術を海外に流出させないことも要請する。 経済産業省は、認定基準などを盛り込んだ省令改正案のパブリックコメントを今月 12 日まで募集している。

政府は、すでにある国内の工場についても増設や設備更新費の 3 分の 1 を補助し、先端半導体の生産を促す。 公募は締め切っていて、複数の企業から応募があった模様だ。 半導体の設計や製造などには多くの専門家が必要だ。 2024 年に稼働する TSMC の工場では約 1,500 人を雇用する予定で、人材不足も懸念される。 政府は熊本をはじめ、福岡や鹿児島など九州 6 県の高専に、半導体の技術が学べる課程をつくる。 原則 5 年間の専門教育を行う国立の高専は全国に 51 あり、すでに半導体の課程を設けているところもある。 将来的にはすべての高専に広げ技術者を育てる。

半導体は「産業のコメ」とも呼ばれ様々な製品に組み込まれている。 不足によって自動車や家電の工場では、生産の一時停止に追い込まれたところもある。 政府は国内で供給網をつくり、低迷する半導体産業の復活につなげたい考えだ。 ただ、TSMC が熊本の工場でつくる半導体は、回路幅が 22 - 28 ナノメートル(1 ナノメートル = 1 ミリの 100 万分の 1)の前世代型だ。 先端分野で日本勢は韓国や台湾メーカーに遅れている。 政府は経済安全保障も持ち出して税金投入を正当化しようとしているが、巨額の補助金に見合う効果がどこまであるのか検証しにくいなど課題もある。

経済産業省の「半導体・デジタル産業戦略検討会議」の座長で、半導体製造装置大手の東京エレクトロンの東哲郎元社長 (72) は、日本勢の復活に向けて 10 年間、10 兆円は必要になると指摘する。 「最初の 5 年で人材を含めて技術をそろえ、後半 5 年で軌道にのせる。 最初は政府が中心になって支援し、その後は民間の資金を呼び込む流れをつくるべきだ」という。 経済安全保障の観点については、「政府が、ただ危機感を強調しても国民は動かない。 半導体の技術がどういう産業に生かされ、雇用がどう増えて国が豊かになっていくのか。日本の産業が競争力を維持するには基盤技術の核となる産業が必要だということも、丁寧に説明しないといけない。」と話す。 (編集委員・堀篭俊材、asahi = 2-7-22)

政府の主な半導体支援策

  • 半導体の工場の建設に最大半額の補助金 → TSMC の熊本工場に約 4 千億円を出す
  • 既存の工場の設備更新に 3 分の 1 の補助金 → 公募を締め切り。複数社が応募
  • 次世代情報通信向けの研究開発に補助金 → TSMC などの国内研究拠点に190 億円出す
  • 九州6県の8高等専門学校(高専)に半導体課程 → 将来的に全国の国立高専に拡大
  • 人材育成に向けて産官学のコンソーシアム設置 → 準備会合を福岡市で 7 日に開催

スイッチ 1 億台超え、発売から 5 年でも快進撃のわけ 生かされた失敗

任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の世界販売台数が 1 億台を超えた。 3 月で発売から 6 年目を迎えるが、販売ペースは高水準を保っている。 2000 年代半ばに発売した「ニンテンドー DS」や「Wii (ウィー)」以来のヒット作となり、同社の業績を V 字回復させた。 なぜ快進撃が続くのか。 スイッチは 2017 年 3 月に発売された。 21 年 12 月末時点の販売台数が 1 億 354 万台に達し、「Wii」やソニーグループの「プレイステーション (PS)」を抜いた。 任天堂の古川俊太郎社長は 3 日の 2021 年 4 - 12 月期決算会見で「従来のハードウェアのライフサイクルを超えて成長する基盤は整っている」と話した。

スイッチの販売台数は発売以来、年々伸びている。 20 年度はコロナ禍による巣ごもり需要もあって、前年比 37% 増の 2,883 万台に達した。 21 年度の販売予想は、半導体不足などの影響で昨年 1 1月時点の予想より 100 万台少ない 2,300 万台に引き下げたものの、19 年度を上回る高水準を維持している。 任天堂のこれまでのゲーム機は、発売から 3 - 4 年で販売数のピークを迎えることが多かった。 その後値下げをするなどして、6 - 7 年ほどたつと次世代のゲーム機を投入するのが一般的なパターンだった。 まもなく 6 年目を迎えるスイッチが値下げをせずに売れ続けていることは異例だ。 古川社長は「スイッチに関しては、これを打ち破るようなライフサイクルを達成したい」と意気込む。

なぜ長く好調を維持できるのか。 一番の強みは、小型画面を備えた「携帯型」ゲーム機でありながら、テレビにつなぐ「据え置き型」としても遊べることだ。 SMBC 日興証券の前田栄二シニアアナリストは「据え置き型が人気の欧米と、携帯型が人気の日本で分け合っていた市場を 1 台でしっかり取れた」と話す。 もともと任天堂は携帯型と据え置き型のゲーム機を発売し、それぞれに対応したソフトを出していた。スイッチは両方を統合したことで、自社でのソフト開発も一本化し、投資を集中できるようになった。

その結果、携帯型向けの人気ソフト「ポケモン」本編のシリーズをスイッチ用に開発するなど、質の高いソフトを出し続けることに成功。 20 年 3 月発売のソフト「あつまれどうぶつの森」は 3,762 万本を売る大ヒットとなった。 過去の失敗を教訓に、他社からのソフト提供を受けやすくする工夫もした。 スイッチの一つ前のゲーム機として 12 年に発売した「Wii U (ウィーユー)」は、複雑化したハードに合わせて、ソフトを開発するのが難しかった。 そのため外部の開発会社から提供を受けるソフトが少なくなり、本体の世界販売も 1 千万台程度と不振に終わった。

その反省を踏まえ、スイッチはソフト開発のプログラムを他社のゲーム機と共通にすることで、ソフトの提供をしてもらいやすくした。 ゲーム情報誌「ファミ通」によると、21 年は国内の年間販売本数の上位 10 作品をスイッチ向けソフトが独占した。 任天堂はこの日、22 年 3 月期のソフトの販売予想を、昨年 11 月時点の予想より 10% 多い 2 億 2 千万本に引き上げた。 さらに今年は「スプラトゥーン 3」や、「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」の続編など、人気シリーズの新作ソフトが相次いで発売される予定だ。

ただ、業界内の競争は激しく、「ここからどうなるかが見もの(アナリスト)」との指摘もある。 ソニー・インタラクティブエンタテインメント (SIE) は「プレイステーション 5」、マイクロソフト (MS) は「Xbox (エックスボックス)シリーズ X、S」といった高性能な次世代ゲーム機を 20 年に発売した。 いずれも半導体不足などの影響で生産が滞っているが、十分な量が販売されるようになれば、ソフト会社が開発の軸足を移す可能性もある。 世界的にはパソコン向けのゲームも根強い人気があり、カプコンはゲーム機向けからパソコン向けに開発をシフトしていく方針を掲げている。

「ファミ通ゲーム白書 2021」によると、20 年の世界のゲームコンテンツ市場は初めて 20 兆円を超えた。 MS や SIE はソフト会社を積極的に買収するなどゲーム事業の強化に動いているが、任天堂の古川社長は「(スイッチは)ゲーム機としての位置づけも対象となるお客も異なる。 年代、ゲーム経験問わず多様なユーザーがいる状況だ。 来期以降も新しいソフトの提案をして、スイッチの稼働を高めてビジネスを展開していきたい。」と語った。 (井東礁、asahi = 2-3-22)


テスラ向け新型電池量産へ パナソニック、航続距離を 2 割長く

パナソニックは 2 日、米電気自動車 (EV) 大手テスラ向けの新型車載電池を、和歌山工場(和歌山県紀の川市)で量産する方針を明らかにした。 新型電池は、EV の課題である航続距離を約 2 割伸ばせるという。 試作ラインを 2022 年度の早い時期に立ち上げる予定だ。 同日の会見で梅田博和・最高財務責任者 (CFO) が明らかにした。 製造する新型電池「4680」は、従来のテスラ向け電池と比べ、1 本あたりの容量を 5 倍に大型化させる。 EVの生産コストの削減にもつながる見通しだ。 試作品はすでに完成している。 量産開始の具体的な時期は言及しなかった。

この日発表した 21 年 4 - 12 月期決算(国際会計基準)は、テスラ向けの車載電池が好調を維持し、増収増益となった。 売上高は前年同期比 11.3% 増の 5 兆 4,233 億円、営業利益は 20.9% 増の 2,741 億円、純利益は 50.3% 増の 1,956 億円だった。 コロナ禍が長引き、テレワーク対応などで情報通信機器の整備が加速したことで、サーバーなどの関連部品の販売が伸びた。

一方、足元では、調理機器など家電の国内販売が、前年の巣ごもり需要の反動などで低調だ。 車載機器も半導体不足による自動車減産の影響を受けている。 22 年 3 月期の通期業績予想は据え置いた。 売上高が 7 兆 3 千億円(前年比 9.0% 増)、純利益が 2,400 億円(同 45.4% 増)と増収増益を見込んでいる。 (野口陽、田中奏子、asahi = 2-2-22)


ソニー、米ゲーム開発会社「バンジー」を買収へ 約 4,100 億円で

ソニー・インタラクティブエンタテインメント (SIE) は 1 月 31 日、米国のゲームソフト開発会社「バンジー」の全株式を取得すると発表した。 買収額は 36 億ドル(約 4,100 億円)で、SIE としては過去最大となる。 バンジーは、シューティングゲームの「ヘイロー」や「デスティニー」といった人気ソフトを開発してきた。 買収完了後も現在の経営陣が残り、SIE の「プレイステーション」以外の他社のゲーム機やパソコンなど複数のプラットフォームにもゲームの供給を続ける。 SIE の親会社ソニーグループの吉田憲一郎社長は「バンジーのさらなる進化を強力に後押ししていく」とコメントしている。

業界では、ゲーム機の販売会社が、ソフト開発会社を傘下に収める動きが広がる。 SIE は昨年 6 月以降に欧米企業の買収を次々と発表しており、今回が 6 社目。 ゲーム機「Xbox」を手がける米マイクロソフトは 1 月 18 日に、米ソフト開発大手アクティビジョン・ブリザードを 687 億ドル(約 7.9 兆円)で買収すると発表している。 (鈴木康朗、asahi = 2-1-22)


自動車の電球が幻のキノコになった? 大井川電機のチャレンジ

100 年に一度の変革と言われる自動車業界、さまざまな変化がさまざまな場所に訪れている。 自動車用電球を製造・販売する大井川電機製作所(本社 : 静岡県島田市)は 1 月 18 日、シンガポール、香港、マレーシアへ、同社が生産する "幻のキノコ" はなびらたけ「ホホホタケ」の輸出を開始したと発表した。 大井川電機では 1967 年の創業以来、国内外の自動車メーカーに、ウィンカーやテールランプ用などの照明用電球を月間約 1,000 万個生産・販売し、累計約 50 億個の電球を出荷、近年は年間約 20 億円を売上げてきた。

その大井川電機が新規事業として開始したホホホタケの生産・販売は、2021 年 9 月までに月間 1 万パック(80g/1 パック)に達し、現在は約 3 万パックに増産、2022 年度末までには約 6 万パックに拡大する見込み。 スーパー、料理店、カフェ、給食などでの採用が進んでいる。 輸出は毎月計約 400 パックをアジア三か国向けに開始したもので、シンガポールでは日本料理店、マレーシアではフランス料理、香港では高級食材を取り扱う「City'super (シティスーパー)」で、ホホホタケが取り扱われる。

大井川電機がホホホタケのブランドで栽培・販売するはなびらたけは、標高 1,000 メートル以上の高山で自生し、採取することが困難なため「幻のきのこ」と呼ばれる。 見た目は白い花びらのようで、長く加熱しても食感が残り、フリルも形崩れせず、免疫機能を促進するベータグルカンが多く含まれる。 すき焼き、アヒージョ、炊き込みご飯、天ぷら、鍋、サラダなどで使用される。

昨今、世界の自動車産業は急激に変化し、自動車の多くの部品が入れ替わり、部品を生産するサプライヤーにも変革が求められている。 大井川電機では、自動車電球の発光ダイオード (LED) 化に伴い、売上が減少傾向にあったため、自動車産業で長年培ってきた電球製造の厳格な品質管理と生産体制のノウハウを活かした新規事業への参入を検討し、2015 年からはなびらたけの栽培方法の研究を開始した。

新たな中核事業を立ち上げるために、社内では電球にとらわれない事業を模索、アイディアを募る新規事業検討会を定期的に開催した。 そこで出てきたアイディアは、静岡ならではのお茶、大井川の地を活かしたわさびや、チョウザメ、トラフグ、ナマズの養殖、学習塾、介護などあらゆる方面にわたったという。 そんな中、当時の総務部長からはなびらたけのアイデアが出た。 はなびらたけは市場にはほとんど出回らず(競合がない)、栽培が難しい(技術者としてチャレンジの面白さと達成感がある)こと、電球事業から培ったノウハウが活かせると考えられ、2015 年から、それまで電球に携わってきた技術者たちがはなびらたけの人工栽培を開始した。

はなびらたけの温湿度管理、二酸化炭素濃度のコントロール、雑菌繁殖予防などの研究を重ね、2018 年に独自の栽培ノウハウを確立、市場にはなびらたけを安定供給できるような体制を整えた。 2015 年から川根生産拠点(島田市川根町)で栽培を開始、さらに総額 2 億円を投じて落合生産拠点(島田市落合)を開設、2020 年 8 月に稼働を開始するとともに農業事業に本格参入した。 落合は川根の約 10 倍にあたる月間最大 6 万パックのはなびらたけの安定出荷が可能だ。 延面積 1,300 平方メートル、はなびらたけの菌床生産設備、接種室、栽培室、収穫室、冷蔵庫などで構成される。

また 2021 年 2 月、はなびらたけをブランド名「ホホホタケ」に刷新、新たなウェブサイトも開設し、ブランド戦略も強化した。 「はなびらたけは食べた人々を "ホホホ" と笑顔にする」を理念に「ホホホタケ」と名付けた。 根部分の花托(かたく)は「ホホホの子」とされた。 大井川電機では、品質、安全衛生、納期遵守を重視しながら電球の生産管理を行なってきた。 同じノウハウを活かし、ホホホタケ栽培においても衛生・温湿度・手順・品質・発送などの管理基準を設け、天候や農作物の生育環境などに左右されることなく、一年を通じての安定供給を可能とした。 そのため、市場、仲卸業者、食品スーパー、料亭などから評価されているという。

2018 年度に 150 万円だったホホホタケ(当時ははなびらたけ)の売上は、2020 年度に 2,000 万円弱まで伸び、2021 年度の売上は 3,000 万円を、2022 年度で 1 億円の売上をめざす。 2025 年までに売上高を 10 億円に引き上げ、中核事業になることを期待している。 1967 年創業の大井川電機製作所は、電球製造を基本の事業として、クリスマス球の製造から始まり、懐中電灯、自動車の小形電球を製造・販売し、照明部品を国内外の自動車産業に供給してきた。 2020 年、新たな事業としてはなびらたけの生産・販売を本格的に開始した。 従業員数 : 130 人(2022 年 1 月現在)。 (Response = 1-23-22)


コロナ禍で電機各社、空調に軸足 ダイキン、パナ、三菱電 … 市場成長に期待

国内の電機メーカーでエアコンや空気清浄機といった空調事業を重視する動きが鮮明になっている。 新型コロナウイルス禍で「きれいな空気」への関心が高まり、世界的に持続的な市場成長が期待されるためだ。 世界トップを走る専業のダイキン工業を、パナソニックなどの総合家電メーカーが追い上げる。

昨年 11 月上旬、パナソニックエコシステムズ(愛知県春日井市)のモデルルーム。 寝室の天井に設置された仕切り板の隙間から、柔らかい風が送り出される。 除菌や脱臭に加え、香りを心地よく整える機能も備えた。 常に快適な室内環境を保つ次世代の空調システムと位置付ける。 同社は空気にまつわる技術の幅広さを強みとする。 山内進常務は「技術を組み合わせて付加価値を高め、他社に差をつけたい」と話した。

パナソニックの空気清浄機や換気扇を含む空質空調事業は、令和 3 年度の売上高が 7,190 億円、営業利益は 390 億円となる見通し。 家電部門を率いる品田正弘専務執行役員は、将来的に利益を 1,000 億円程度まで引き上げる目標を示し「ナンバーワン、ナンバー 2 にならないと生き残れない」とハッパを掛ける。

三菱電機は、空調関連事業の 7 年度の売上高を 2 年度の約 1.6 倍に当たる 1 兆 2,600 億円に拡大する計画だ。 研究開発や生産強化に 5 年間で約 3,800 億円を投じる。 同社はテレビ事業の縮小を表明しており、京都府内にあるテレビ開発拠点の従業員に空調部門への異動を打診するなど経営資源を振り向ける。 シャープは独自の空気清浄技術「プラズマクラスター」を成長の切り札とする。 技術の核となるイオン発生装置の外販に注力し、自動車やエレベーターなどにも搭載するよう提案する。 (sankei = 1-12-22)


ブリヂストン「中国企業への事業売却」を叩くムードが、日本の衰退につながったワケ

基幹産業の戦略転換

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中国に代わって東南アジアが「世界の工場」に? 工作機械メーカー絶好調の背景

基幹産業の戦略転換

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軽くて大容量、リチウム空気電池を開発 5 - 10 年で実用化めざす

物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市)とソフトバンクが、現在のリチウムイオン電池の約 2 倍の性能を持つ「リチウム空気電池」を開発したと発表した。 次世代電池のひとつとして注目されており、5 - 10 年後の実用化をめざす。 論文が 15 日、学術誌に掲載 された。 リチウム空気電池は、負極にリチウム金属、正極側に空気中の酸素を使い、化学反応を起こして充放電する。 正極側を簡素化できるため、同じ容量の電池を作る場合もサイズを小さく、軽くできる。

今回試作した電池は、材料を均一にする技術などを用いて性能を高めた。 性能を示す値のひとつ「重量エネルギー密度」が、現在のリチウムイオン電池のおよそ 2 倍にあたる 500 ワット時毎キロだった。 理論上は、同じ重さで容量が2倍の電池を作れることになる。 世界中の論文 100 本以上を調べたところ、重量エネルギー密度の高さは最高レベルだったという。 ただ、試作段階では約 10 回の充放電で寿命になり、充放電にもそれぞれ 10 時間かかる。 今後、材料を改良して実用化を目指す。

NIMS の松田翔一主任研究員は「リチウム空気電池で世界最高レベルのエネルギー密度が達成できた。 実用化に向け大きな一歩になる。」と話している。 リチウム空気電池は、理論的な性能が現在のリチウムイオン電池の数倍に達することから、「究極の二次電池」とも呼ばれる。 全固体電池や、高性能化したリチウムイオン電池などとともに、電気自動車やドローンなどで使う次世代電池のひとつとして注目されている。 (小堀龍之、asahi = 12-15-21)

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全固体より新規投資抑えられる「半固体電池」、22 年度に販売開始

大阪ソーダは山形大学の森下正典産学連携准教授、同大発スタートアップの BIH (山形県米沢市)と共同で、半固体電池を開発した。 リチウムイオン電池の液体電解質を大阪ソーダのゲル化剤で半固体化することで、液漏れや発火のリスクを低減した。 半固体電池は実用化の一例として BIH が補助電源付きのスマートフォンケースを商品化し、2022 年度内に販売開始を目指す。

従来のリチウムイオン電池は引火性の電解液が使われており、液漏れや発火など安全性に課題がある。 3 者は大阪ソーダの電解液用ゲル化剤「特殊ポリエーテル」を用いて電解液をゲル化し、半固体電池を開発した。 特殊ポリエーテルは、大阪ソーダのエーテルの化合物を重合する技術を応用して開発した。 半固体電池は基本的に、リチウムイオン電池と同じ設備を使用して製造できるため、全固体電池と比べて新規の投資を抑えられるメリットがある。 (NewSwitch = 12-12-21)

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オール酸化物の全固体ナトリウム電池、負極にガラスで世界初の駆動

日本電気硝子は、オール酸化物の全固体ナトリウム (Na) イオン二次電池を開発した。 結晶化ガラスを用いた負極材を新たに開発し、すでに開発していた結晶化ガラス正極と固体電解質とを一体化。 同社によると、負極にガラスを使った同電池の駆動に世界で初めて成功したという。 小型・大型、特殊・汎用など幅広い用途を想定し、2025 年ごろの製品化を目指す。

新開発した電池は、正極に鉄系結晶化ガラス、負極に Na リン酸塩系結晶化ガラス、固体電解質に酸化物セラミックスを用いた。 これらを焼成するとガラスが溶けて一体化し、電極として機能する。 出力電圧は 3 ボルトで、現行のリチウムイオン二次電池に匹敵する。 資源量が豊富な Na を活用でき、安定な物質である酸化物材料で構成されているため、クギなどが刺さっても発火や有害ガスが発生しない高い安全性が特徴。 今後は他社との協業や電池メーカーに素材供給することも想定する。 (NewSwitch = 11-21-21)


世界首位サムスンを追うキオクシア、「NAND」増産工事が急ピッチ

キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)は NAND 型フラッシュメモリーを生産する北上工場(岩手県北上市)第 2 製造棟 (K2) の建設を 2022 年春に始める。 23 年稼働に向けて土地取得なども順調で、建屋の大きさが主力の四日市工場(三重県四日市市)を含めて同社最大規模になる見通し。 ライバルで世界首位の韓国・サムスン電子を追走する。 キオクシアの北上工場は第 1 製造棟 (K1) が 20 年前半から生産を始めており、その隣で土地の造成と追加の用地取得を進めてきた。 K2 は K1 の 2 倍以上の大きさになる見通しで、導入する製造設備は四日市工場からの移管が中心となる。

四日市工場への設備補充を含めた総投資額は 2 兆円規模に上る見込み。 政府が 6 日に臨時国会に提出した関連法案に盛り込んだ国内半導体工場建設支援の対象に K2 も入る可能性がある。 キオクシアは四日市工場でも新製造棟を建設中で、2 期に分けた第 1 期分の完成は 22 年春を予定。 両工場はそれぞれ急ピッチで増産工事を行う。 ただ、最近の半導体市場が未曽有の活況なため、半導体製造装置や工場用部材の納期が従来と比べて長くなっている。 特に、米中対立のさらなる激化を見越した中国半導体メーカーの買い占めが横行し、品不足が深刻化しているという。

日本国内では今後、キオクシアに加えて米マイクロン・テクノロジーや台湾積体電路製造 (TSMC) も新工場建設を見込むが、装置・部材不足は今後の計画に支障を来す恐れがある。 (NewSwitch = 12-13-21)


TSMC・ソニー合弁の半導体新工場に早くも「難所」の理由

半導体工場の新設ラッシュで全国的な人材争奪戦が始まりそうだ。 台湾積体電路製造 (TSMC) がソニーグループと合弁で熊本県に予定するロジック半導体工場は建設への準備が進むが、目下最大の課題は 1,500 人以上の人員確保。 複数の新工場計画と時期が重なる。 加えて新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大による世界的な移動制限の厳格化も計画の逆風だ。 巨大プロジェクトは早くも難所に差し掛かる。(編集委員・鈴木岳志)

「新工場の人員確保は大丈夫なのか。」 11 月後半、TSMC からソニー G など関係各所に心配の連絡が入ったという。 2022 年にソニー G のイメージセンサー工場近くで着工し、24 年末までの生産開始を目指す。 準備期間は長いようで短い。 ソニー G の台所事情も厳しい。 「ソニーは自社の熊本工場だけでなく、新棟を建てたばかりの長崎工場も人手不足で困っている。 他人を助ける余裕はないだろう。(関係者)」と人員確保のめどはまだ立っていないようだ。

「本当に人を採用できない」と九州地方に拠点を持つ半導体関連企業幹部は嘆く。 人手不足は今後さらに深刻化する恐れがある。 NAND 型フラッシュメモリー世界大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)が三重県四日市市と岩手県北上市でそれぞれ新棟建設を進めているほか、米マイクロン・テクノロジーも広島県に DRAM の新工場をつくる見込み。 各社の計画は今後 2 - 3 年内と時期が重なる。

「工場を建てるだけで終わりではない。 (TSMC を誘致した)政府は人手不足対策を考えているのか。(半導体関連企業首脳)」と疑問視する向きも出始めた。 民間企業の自助努力だけでは解決が難しい。 育成を含め、国の積極的な関与を求める声が増えそうだ。 TSMC は米国アリゾナ州の工場建設当初から数百人規模の技術者らを台湾から派遣しているもよう。 熊本の工場立ち上げ支援でも同様に進めるとみられるが、日本政府が 11 月 30 日から実施した外国人入国停止措置が長引けば計画に支障が出かねない。 全てのカギは人材が握っている。 (NewSwitch = 12-4-21)

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半導体大手の台湾 TSMC が熊本に新工場検討 日本政府が巨額支援か

半導体の受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造 (TSMC) が、新しい工場を熊本県に建設する案が浮上している。 半導体の工場の新設には巨額の費用がかかり、日本政府が数千億円を支援する可能性がある。 半導体は重要性が高まっており、政府は経済安全保障の観点からも工場を誘致したい考えだ。 新工場の場所は、熊本県菊陽町にあるソニーグループの半導体工場の隣接地が検討されている。 ソニーは TSMC から大量の半導体を調達しており、新工場の運営でも協力することが想定される。 建設費や政府の支援額などは、これから調整が進むとみられる。

半導体はコロナ禍で需要がふくらみ、世界的に不足が続く。 経済産業省は 6 月に半導体・デジタル産業戦略をまとめた。 安定した供給体制をつくるため、TSMC などの工場誘致をめざしていた。 TSMC は、研究開発の拠点を茨城県つくば市につくることが決まっている。 経産省は投資額の約半分にあたる約 190 億円を補助する方針だ。 TSMC の魏哲家・最高経営責任者 (CEO) は 7 月の会見で、日本での工場建設を検討していることを示唆していた。 (若井琢水、asahi = 10-8-21)