偽造半導体が国内に流通、どの国から? ロシア侵攻などで供給不足
ロシアの侵攻でウクライナにある半導体関連メーカーが操業を停止した影響などで、世界的に半導体不足が続いている。 そんな中、中古の半導体を新品と偽ったり、メーカー名や型番を書きかえたりした「偽造半導体」が出回っている。 ある調査では、持ち込まれた半導体の 4 分の 1 に偽造品の疑いがあった。 誤って電子機器に組み込まれると故障や事故を起こしかねず、業界も対策を練っている。
「国内で戦争が起こったことを受け、生産工場を停止することを決めた。」
半導体の製造に欠かせない気体ネオンを生産するウクライナのクライオイン社は 3 月上旬、SNS にこう投稿した。 ロイター通信によると、同様に操業を止めた別のウクライナ企業とあわせて世界シェアのほぼ半分を占めるという。 半導体は、新型コロナウイルスの感染拡大などで、世界的な供給不足が続いていたが、さらに影響が広がると懸念されている。 半導体は家電やスマホ、ゲーム機、車などあらゆる機器に組み込まれる「産業のコメ」とも呼ばれる産業の必需品だ。 以前から、廃棄された規格外品を横流ししたり、リサイクルした中古品を新品と偽ったりした偽造品は知られていたが、電子商取引 (EC) の普及もあって流通が広がっている可能性がある。
「変な動きをする半導体があるから調べて欲しい。」
電子機器の受託製造をしている古賀電子(神奈川県平塚市)には、顧客が海外の業者から購入したという半導体が検査に持ち込まれることがある。 外見は正規品とそっくりだったが、X 線で調べると、内部の配線の形や大きさが微妙に違っていた。 最近は正規代理店を通さずに調達し、偽造半導体をつかまされる例が増えているという。 古賀徹也常務取締役は「正規品が入手しづらくなっており、困ったところにつけこむ商売ではないか」と話す。
こうした半導体は正規品と違って品質が保証されていないだけでなく、中途半端に動く半導体が組み込まれれば製品のリコールにもつながりかねない。 そこで電機大手 OKI の子会社、沖エンジニアリング(東京)は昨年 6 月、半導体の真偽を判定するサービスを始めた。 X 線で内部を観察するだけでなく、中身を露出させて顕微鏡で配線を追う。
工場で使う産業用の製造装置のほか、家電製品や装着型(ウェアラブル)機器などに組み込む半導体について、月 70 - 80 件ほどの判定依頼があり、うち 4 分の 1 ほどに偽造かその疑いがあるという。 高森圭事業部長は「中に半導体が入っていないという雑な偽造品もあるが、目立つのはメーカー名や型番を高性能品に書きかえるケース。 外見は本物そっくりのため、消されたロゴの痕跡や配線などを正規品と比べないと見抜けない。」と話す。
こうした偽造品はどこで作られるのか。 中国の知的財産に詳しい分部悠介弁護士は 10 年ほど前、広東省で業者が大量の廃家電を集めて解体し、半導体を取り出す現場を調査した。 視察当時は中国国内向けのリサイクルだったが、半導体不足による需要の高まりを背景に、こうした中古品をきれいにしたり、型番を書き換えたりして流通させる業者がいる可能性があると指摘する。
各国の業界でつくる世界半導体会議 (WSC) は対策を協議中で、日本の窓口である電子情報技術産業協会 (JEITA) の半導体部会 WSC・政策専門委員長の三井豊興氏は「欧米メーカーの工場が進出するなど、中国は世界で最も半導体を必要とする国でもある。 近年存在感を増している中国の半導体メーカーにとっても、偽造半導体は悩ましい問題のはずだ。」と話す。
半導体に詳しい神戸大の永田真教授は「偽造半導体が車や医療機器に使われれば、大事故につながる可能性がある。 情報を盗むような悪意ある半導体『ハードウェア版トロイの木馬』が流入するかも知れない。 国が第三者的な試験機関を設けて流通する半導体を調べるなど、本格的に対策を議論するべきだ。」と語った。 (小堀龍之、asahi = 3-28-22)
半導体 : 一般的に、シリコンで作った集積回路 (IC) などの電子部品を指す。 損傷や腐食を防ぐため、黒い樹脂などで覆われている。 あらゆる電子機器に使われ「産業のコメ」とも呼ばれる。 コロナ禍による電子機器の「巣ごもり需要」、物流網の停滞、半導体工場のトラブルなどで世界的な供給不足が続いており、国内でも車や給湯器、ゲーム機などの品薄につながっている。
偽造品はどこから? 専門家に聞いた
偽造半導体はどのように作られるのだろうか。 中国で模倣品の調査をしている「IP FORWARD」代表、分部悠介弁護士に聞いた。
- - どのような調査をしているのでしょうか
IP FORWARD は中国における模倣品(正規品の違法コピーなどの偽造品)対策や訴訟、調査をするコンサルティンググループです。 経済産業省に 2004 年、模倣品対策室がつくられ、中国政府との知的財産に関する交渉が進められました。 私も 06 年から 3 年、経産省に出向して仕事をしました。 どの業界も中国関連の模倣品や知的財産に関心が高く、経産省から戻ったあと、自分でやるしかないと、中国の調査員を雇ってスタートしました。 現在は日系企業向けの調査をしています。
- - 偽造半導体についての相談は増えていますか
中国の知財に関するセミナーを定期的に開いていますが、ここ最近、半導体関連の方の受講が増えています。 偽物はニーズがあるところに出やすい。 世界的な半導体不足のなかで、出る可能性が高まっています。
- - 偽造半導体はどこから来るのでしょう
模倣品の半導体について、約 10 年前に中国で調査をしました。中国の国内市場向けに廃家電から半導体をリサイクルする業者がいました。明確に偽物を売っているわけではありませんでしたが、そうした中古の半導体が加工されて新品と偽られ、海外に出る可能性があります。 あくまで以前の話ですが、広東省の汕頭(スワトウ)市には、中古家電や廃家電が多く集められ、基板を取り出してそこから半導体を取りだし、きれいに加工する業者がいました。 そうやってリサイクルした中古の半導体を、IT企業や電子製造業が多い深セン市に出荷して、中国各地に流れるというルートがありました。
- - 現在は違うのでしょうか
中国はニセモノ対策大国でもあります。 中国は先進国の仲間入りをしようとしており、半導体製造にも投資しています。 知的財産を守らないと、自国の利益を守れなくなってきました。 世界でこんなに偽造品対策の法律をつくっている国は、中国のほかにはないといってもいいでしょう。 ただ、中国に「上に政策あれば、下に対策あり」ということわざがあります。 政府が一生懸命偽造半導体の対策をしても、すり抜ける業者もいるでしょう。 また、中国政府も食品や薬といった被害が見えやすい偽造品の対策から進めている面があると思います。
- - 実際に偽造半導体の被害は出ているのでしょうか
具体的な被害があればニュースになっていると思いますが、知られていません。 半導体の被害はわかりにくい面もあります。 例えばテレビが壊れたとしても、それが半導体のせいなのかどうかはわかりにくいです。 また、偽造品による弊害には、正規品の売り上げが下がる、苦情が来るという2パターンがありますが、いま日本の企業から寄せられる相談の中では、そういった被害はありません。 一方、電子商取引 (EC) が進み、電子機器のメーカーがネットで海外の業者から半導体を簡単に買えるようになりました。 偽物が出回りやすくなった面もあると思います。 コロナ禍も EC を加速させており、今後も注意は必要でしょう。
「猛毒だから食べると危険!」は本当か? 中国産ピーナッツの真実
週刊文春記者が見た! 危険すぎる中国産食品 #8
先日、友人がスナックで、おつまみとして出された柿ピーを食べていると、「中国産のピーナッツは毒まみれだからやめておいたほうがいい!」と親切なお客さんに忠告されたという。 カウンターにいた他のお客さんは怖くなったのか、ピーナッツを避けて柿の種ばかり取り始めた。 店のママは豆だけ残っている小皿を見て迷惑そうな表情を浮かべ、なんとなく場の空気が悪くなったらしい。 その客が出されたピーナッツを中国産と断定した根拠は分からない。 しかも、"毒まみれ" とは穏やかじゃないが、中国産ピーナッツにはそう思い込まれてしまう事情がある。
自然界最強の発がん性物質
理由はアフラトキシン。 「自然界最強の発がん性物質」とも呼ばれ、急性毒性よりはむしろ、慢性的に摂取すれば肝臓がんを発症するリスクが高くなると、国際的なリスク評価機関の FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議 (JECFA) でも注意を呼びかけている。 実際、平成 27 年度から平成 29 年度における厚生労働省の輸入食品等の食品衛生法違反事例を確認すると、大粒落花生や炒ったピーナッツなど、中国から輸入されたピーナッツ製品で 87 件の違反があった。 全ての違反理由が、国が定めた基準値を超えるアフラトキシンが検出されたことによるものだ。
しかも、平成 27 年度は 20 件、平成 28 年度は 43 件、平成 29 年度は 34 件と過去 3 年で増加傾向にあるから心配だ。 違反の目立つ大粒落花生は、殻付きのまま販売される商品が多い。 粒の大きなものは柿ピーなどにも使われ、小粒や揚げたピーナッツは、主に菓子類に使用されるという。
中国の一大生産地・山東省の落花生農家と工場へ
なぜ中国のピーナッツに猛毒が発生するのか。 そのワケを探るべく、中国・山東省の日本向け落花生の生産地を訪れた。 同省は中国の落花生生産量の約 25% を占めると言われている一大生産地。 ここでは、4 月に種をまき、10 月ごろに収穫を行う。 栄成市を訪れたのは、9月下旬だったため、農家にいた中年女性と老女の親子は加工用の落花生を先に収穫して、殻付きの落花生を弦から取り除く作業をしていた。
「とれたての落花生は生で食べても美味しいのよ。 これは納品しないといけないから、地面で 10 日ほど天日干しするわ。 栄成は落花生農家がたくさんあるのよ。 見渡す限り畑だからね。 農薬は 4 月に少しだけ使うわ。 だから、ほとんど無農薬なの。 だって、広大な畑にいちいち農薬を使うようなお金を田舎の農家が持っているわけないじゃないの。 ここらへんの落花生は、ほとんど日本の製菓会社に買い取ってもらう分だから、最初に少しだけ農薬を支給してもらって使うのよ。 農薬を買うお金がある農家なら、収穫量があがるからたくさん農薬をまくはずだわ。(笑)」
芸能人の誕生日をよく知っている漫談家とそっくりな中年女性は、そう言って笑った。 中国の畑では、家庭ゴミから農薬の空瓶、点滴パックなどありえないものが捨てられているが、栄成市の落花生畑はどこもキレイだったことが驚きだった。 落花生農家のすぐ近くに、日本の製菓会社へ落花生を輸出している企業があった。 総経理(社長)に話を聞くと、この会社は栄成市内でも最大の落花生工場を所有しているという。 本格的な収穫時期の前に訪れたこともあって、工場はあまり稼働していなかった。 ちょうど良いので、工場を見学させてもらうことにした。
カビ毒が中国産ピーナッツに発生する本当の理由
「この工場では年間 1 万 2,000 トンのピーナッツ製品を世界へ輸出しています。 日本の企業にも毎年 4,000 トンのピーナッツを送っています。」 落花生を選別する機械や、バターピーナッツの製造機を見学しながら、中国人社長は親切に教えてくれた。 中国で様々な食品工場を見てきたが、このピーナッツ工場はすごく清潔だ。 カビが生えるような不衛生な要因は全く見受けられない。 この工場では、日本向けのバターピーナッツも落花生から殻を取って加工しているという。 商品はキレイに袋や段ボールに詰められ、衛生的な問題は見当たらなかった。 畑や加工場に問題がないのに、なぜ、アフラトキシンのようなカビ毒が、中国産のピーナッツに発生するのか。 中国人社長はこう答えた。
「それは収穫してから乾燥させる期間の問題です。 落花生は畑で収穫してから天日で干しますが、その期間が長いほど落花生の殻は白くなる。 乾燥の度合が足りないと黒ずんでしまう。 乾燥の足りない落花生はカビます。 これがアフラトキシンを発生させる原因です。 我々の会社では、契約の落花生農家へ規定の農薬を与え、収穫した落花生の乾燥もきちんと管理しています。 さらに全て市内で収穫したものを使用しています。 山東省の青島あたりでは、様々な農家の落花生をかき集めてきて日本へ輸出しているそうですが、そうした管理の行き届かない落花生にカビが生えています。」
船での輸出中にカビが発生しやすい
社長の熱弁は止まらない。 「日本への輸出手段は主に船です。 船内は湿気も多く、カビが発生しやすい環境です。 だから、きちんと中国国内で落花生を乾燥させる必要があるのです。 我々は独自の検査機器でアフラトキシンや残留農薬のチェックをしている。 自社のチェックで問題が出たときはその農家からのピーナッツの購入はしません。 これくらいしないと、安全な商品を日本へ送ることができないからです。」
収穫量が多すぎて、十分に乾燥させないままピーナッツを売ってしまう農家も
工場を後にして、別の落花生農家の男性にも取材したが、やはり中国産ピーナッツでカビが発生する原因は、乾燥不足だと語っていた。 全ての落花生農家がきちんと乾燥させるわけではないという。 収穫量が多すぎて、決められた納期までに十分に乾燥させることができないまま、業者へ落花生を売ってしまう農家も少なくないそうだ。 それは、中国が日本をはじめとした国へ大量の落花生を輸出しているため、農家に求める量も多くなるからだ。 こうした事情によって、船積みされた中国産ピーナッツは移送途中でアフラトキシンが発生してしまう。
FAO (国連食糧農業機関)の統計(2014 年)によると、世界の落花生生産量(殻付き)は、約 4,232 万トン。 生産量第 1 位は中国の約 1,570 万トン。 2 位のインドは約 660 万トンなので、中国はダントツの生産量を誇っている。 日本はどうか。 一般財団法人「全国落花生協会」の HP を見ると、日本の生産量は 1 万 5,500 トン(2016 年)。 千葉県産が 8 割近くを占め、次に茨城県が多い。 この 2 県で約 9 割の国産落花生が生産されているという。 同協会の統計では、日本は 2016 年に 3 万 1,769 トンのピーナッツ(むきみ)を輸入している。 内訳は中国が 1 万 2,126 トン。 米国が 1 万 1,865 トンで、ほとんど米中からの輸入に頼っているのが現状だ。
収穫前や加工中よりも後に生じる問題の危険性こそ、中国産ピーナッツが怖い本当の理由だろう。 実は、輸入食品等の食品衛生法違反事例をよく見ると、米国産のピーナッツや木の実類もアフラトキシンが検出されており、積み戻し措置になっているケースが多い。 恐らく、中国同様、船による輸送でカビが生えてしまったことが原因と推測できる。 国民の安全を守るためにも、政府が中国や米国に、輸送時における衛生管理も呼びかけて欲しいものだ。
中国の市場で見たものには、ところどころ、黒ずんでいる部分もあるため、カビが生えている可能性がある。 とにかく、殻付きの落花生を選ぶ際は、できるだけ殻の白い商品を選んで欲しい。 黒っぽい殻は避け、あとは虫食い痕のある落花生もカビが生えやすいので選別して食べないようにしたほうが安全だ。 アフラトキシンは熱に強く、炒りピーナッツやバターピーナッツでもアフラトキシンは検出されている。 素人が見分けるのはほぼ不可能に近い。 濃い緑など、変色しているピーナッツは食べないことだ。 いくらなんでも変色しているピーナッツを食べ続けるモノ好きも少ないだろう。
ただ、国産ピーナッツでアフラトキシンが検出された例はないという。 中国産ピーナッツは、安価で美味しいものも多いが、抵抗力の高い成人はともかく、子どもやお年寄りは控えたほうが賢明かもしれない。 (徳山大樹、文春オンライン = 3-13-18)
「JAのコメ」に産地偽装の疑い、魚沼産に中国産混入
「週刊ダイヤモンド」は JA グループ京都の米卸が販売するコメの産地判別検査を実施した。 その結果、「滋賀産」や「魚沼産」として販売されていたコメに中国産が混入している疑いがあることが分かった。(週刊ダイヤモンド 2017 年 2 月 18 日号特集「儲かる農業」より)
JA グループ京都の米卸「京山(きょうざん)」が販売する複数のコメに産地偽装の疑いがあることが本誌の調べで分かった。 専門の検査機関に産地判別を依頼したところ、「滋賀産」や「魚沼産」として売られていたコメに中国産が混入しているとの結果が出たのだ。 JA グループは農家が組織した農業団体だ。 「農家がつくった組織なら産地偽装はしないはずだ」と信じてコメを買ってきた消費者もいるだろう。 しかし、京山のコメを調べると、そうした消費者の信頼を裏切る疑惑が次々と飛び出して来た。
本誌は、京山が精米・販売したコシヒカリ 4 袋(各 5 kg)を「京都ひがしやまいちば楽天市場店」で購入し、産地判別において実績がある同位体研究所に検査を依頼した。 2 週間後、検査結果を見て目を疑った。 「滋賀こしひかり」の 10 粒中 6 粒が中国産と判別されたのだ。 仮に、行政検査で同様の結果が出たとすれば、通知なしの立ち入り検査が行われ、取引伝票から不正の実態が調べ上げられるはずだ。
疑惑のコメの流通経路の特定は行政による検査を待たねばならないが、知らないうちに中国産米を食べさせられていたことになる消費者、自身が生産したコメに中国産を混ぜて売られていた農家の怒りはいかばかりか。 消費者庁のルールでは、大豆などの食品に「遺伝子組み換え作物ではない」と表示することを許されるのは、遺伝子組み換え作物の混入割合が「5%」までのものだ。 そこまでなら "意図せざる" 混入として許容される。
今回のように、「10 粒中 6 粒」という混入割合を、"意図せざる" 混入とするのはかなり無理がある。 同位体研究所は問題のコメについて、「外国産米と判別される」と検査報告書に明記した。 コメの検査は、生育地で異なる安定同位体(同じ元素でありながら、わずかに重さの違うもの)の構成比から産地を調べる手法で行った。 この手法は「安定同位体比による産地判別」と呼ばれ、ヨーロッパではチーズやワインの原産地の特定に使われている。 世界的に信頼性が担保された検査技術だ。
本誌が検査を依頼した同位体研究所は、2009 年以降、行政検査や司法鑑定などで 1,000 件以上の精米の産地判別を行ってきた。 行政から検査を受託するには産地判別で 9 割以上の検査精度がなければいけない。 同研究所のコメの産地判別の精度は 92.8% だ。 今回の検査ではコメ 10 粒のうち 6 粒を中国産と判別したが、これが間違いで、実は 6 粒とも国産だったという確率は 7.2% の 6 乗であり、事実上 0% である。
"偽装米" を食べ比べ、セットで販売する大胆不敵
しかも、京山による産地偽装が疑われるコメは 1 種類ではなかった。 日本一のブランド米「魚沼産こしひかり」の 10 粒中 4 粒、「京都丹後こしひかり」の 10 粒中 3 粒が中国産と判別された。 さらに疑惑は、中国産米のブレンドだけにとどまらない。 「魚沼産こしひかり」のうち国産と判別されたコメも、「他府県産である可能性が高い」との検査結果が出たのだ。 驚くべきことに、この「魚沼産こしひかり」は、格下の「新潟産こしひかり」と共に「食べ比べセット」として販売されていた。
消費者が高級米と信じて食べていたコメは、中国産や他府県産が混じったデタラメなコメだった疑いがある。 それでいて、味の違いを食べ比べてみてとは、大胆不敵以外の何物でもない。 疑惑のコメが 3 商品も発覚したことからも、何らかの意思が働いて、表示とは異なるコメが混入したと考えるのが自然だろう。 新潟県のある農家は、「かつて魚沼産コシヒカリの流通量は、生産量の 10 倍もあった。 いまだに、偽装まがいが横行しており、しかもその仕業が JA グループによるものだとすれば、怒りを通り越して悲しくなる。」と話す。
京山は、JA 全農京都が集めたコメの大部分を精米、販売する米卸だ。 京山の法人登記によれば、株式の 55% を JA 京都中央会が、23% を JA 全農京都が保有する。 つまり、京山株式の 8 割は JA グループ京都が保有しているということだ。 JA グループ京都がどんな組織なのか、また、今回の偽装疑惑が起きる背景などは、2 月 13 日発売の「週刊ダイヤモンド 2 月 18 日号」で詳報するが、ここでは JA グループ京都が、03 年に全国に先駆けて稼働させたコメの産地などを公開する米トレーサビリティーシステムについて書いておきたい。
A 全農京都と京山は、現在もインターネット上に米トレーサビリティーのページを設け、消費者が生産履歴を知るためにコメの製品情報を入力できるようにしている。 しかし、実は 1 月末現在、流通しているコメで「産地を公開しているコメはない。(京都府農産課)」 消費者への情報公開は見せ掛けで、安全・安心のシステムは、"開店休業" 状態なのである。
本誌は、産地偽装の有無や組織的な指示があったのかを確認するため、JA 京都中央会に質問状を送った。 同会は「京山が、中国産米をブレンドしたコメを国産のコシヒカリとして販売した事実はありません」と回答し、偽装の疑いを否定した。 京山関係者は本誌の取材に対し「国家貿易の枠組み (SBS) でコメを輸入したが他社に転売した。 精米工場には入れていない。」と答えた。 疑惑のコメの仕入れ先を京山に聞いたところ、「滋賀こしひかり」は滋賀県愛荘町産で JA 東びわこから、「魚沼産こしひかり」は新潟県南魚沼市産で JA 魚沼みなみから、ということだった。
コメの偽装は米卸にとって手っ取り早く利益を上げられる麻薬のようなものだ。 農水省によれば、日本の米卸は中小零細が多く、上位 263 社の 14 年度営業利益率は 0.8%。 最大 3 社でも同 1.1 - 2.7% と青息吐息の状態だ。 スーパーからの価格下げ圧力と過当競争によって業績が悪化し、「産地偽装に手を染めている米卸が他にもいることは十分に考えられる。(業界関係者)」 まして今回の疑惑の発震源は、コメの適正表示で範を示すべき JA グループだ。 行政、当事者の JA グループも含めて実態解明に全力を上げる必要がある。 (DiamondonLine = 2-13-17)
虚偽メニュー 3 社に措置命令 … 消費者庁
阪急阪神ホテルズなど
全国で相次いだメニューの虚偽表示問題で、消費者庁は 19 日、阪急阪神ホテルズ(大阪市)と、ザ・リッツ・カールトン大阪を運営する阪神ホテルシステムズ(同)、旅館・奈良万葉若草の宿三笠(奈良市)などの運営を子会社に委託している近畿日本鉄道(大阪市)の 3 社に対し、景品表示法違反で再発防止などを命じる措置命令を出した。 この問題での行政処分は初めて。
発表によると、不当表示は遅くとも 2006 年 4 月に始まり、3 社のホテルや旅館など 15 施設、計 57 のメニュー・料理に違反が認定された。 大半が、著しく良いものと誤解させる「優良誤認」と判断され、メニュー上は「芝エビ」なのに実際は安価なバナメイエビだったり、成形肉なのに「加工肉」と表示せず、「牛フィレ肉ステーキ」と記載したりしていたケースなど。
3 社は 10 月の問題発覚当初、同庁に不当表示を自主的に申告したが、それ以外の事実も判明。 三笠では今年 2 月 - 11 月、地鶏の「大和肉鶏」の鍋が食べられるかのようにネット上の旅行情報サイトに掲載していたが、地鶏を仕入れた事実はなく、客寄せ行為の可能性がある「おとり広告」と判断された。 千里阪急ホテル(大阪府豊中市)では 07 年 1 月 - 今年 10 月、スパークリングワインなのに「シャンパン」として提供していた。
解凍後のジュースを「フレッシュジュース」、冷凍魚を使いながら「鮮魚の天ぷら」などと表示したケースは違反とされなかったが、同庁は分かりやすい表示にするよう指導したという。 一方、奈良県も 19 日、近鉄に再発防止などを指示する行政指導を行った。 近鉄は来年 1 月 20 日までに再発防止策を報告する。 3 社は「お客様や関係者に深くおわびし、再発防止に向けて取り組む」などのコメントを出した。
再発防止へ チェック強化
措置命令を受けた 3 社は、再発防止に向けた取り組みを進めている。 近畿日本鉄道は、虚偽表示の原因を究明し、経営を見直すため有識者委員会を設置しており、来年 2 月末までに提言を受ける予定だ。
多くの優良誤認表示があった旅館・奈良万葉若草の宿三笠では、調理部門任せだった食材の発注やメニュー作成を支配人らがチェックする方式に改めた。 料亭・百楽荘(奈良市)や、あやめ館(同)、橿原観光ホテル(奈良県橿原市)では今月から、従業員らがコンプライアンス(法令順守)について学ぶ研修を取り入れるなどしている。
阪急阪神ホテルズは今月上旬以降、新しい料理のメニューを作る際に、「『地鶏』と表記する場合、原産地証明書があるか」など 30 項目の注意点を記したチェックリストで確認。 各ホテルの総支配人や調理責任者、サービス責任者らがそれぞれ印を押す確認書を作成するなどしている。 阪神ホテルシステムズは「従業員教育の徹底や、メニュー決定のプロセスの改善に取り組んでいる」としている。 (yomiuri = 12-20-13)
不当表示に課徴金新設へ 消費者庁、食材偽装受け方針
【小泉浩樹】 ホテルや百貨店で相次いだ食材偽装問題を受け、消費者庁は、景品表示法を改正し、商品やサービスの不当表示をした事業者に課徴金の支払いを命じる制度を新たに設ける方針を固めた。 同庁幹部が明らかにした。 早ければ来年の通常国会に同法改正案を提出する。
課徴金は、悪質な違法行為の抑止をめざし、違反者から多額の金銭を没収する行政罰。 独占禁止法や金融商品取引法、公認会計士法などに設けられている。 独占禁止法では、2012 年の車部品カルテル事件で最大 96 億円の課徴金が命じられた例がある。
同庁は食材偽装などへの対応を強化するため、不当表示の中止などを命令する権限を都道府県に与えることを柱とする法改正案づくりを進めている。 さらに課徴金を導入することで、自民党から出ていた厳罰化の要望にも応える形になる。 課徴金導入は消費者団体も以前から要望してきた。 (asahi = 12-4-13)
食材偽装の監視強化へ、法改正検討 都道府県に命令権限
【小泉浩樹】 ホテルや百貨店でメニューの食材偽装が相次いだことを受け、消費者庁は景品表示法改正の検討を始めた。 19 日の自民党消費者問題調査会で明らかにした。 不適切な表示の中止や再発防止などの措置命令を出す権限を都道府県に与えることなどを検討するという。
同法では、不適切表示などに対する措置命令を出す権限は国にあり、従わない場合は 2 年以下の懲役か 300 万円以下の罰金を科すことができるが、違法行為を直接罰する規定はない。 また、同庁には地方の出先機関などはなく、違法行為の監視態勢は不十分だ。 自民党の調査会は、執行体制強化や罰則強化を促す緊急提言をまとめた。 同庁は提言にそって執行体制の強化を目指す。 その上で、直罰規定を設けるべきかを検討する方針。 (asahi = 11-19-13)
食材偽装、ホテルオークラも エビや牛脂注入肉
ホテルオークラ(東京都)は 7 日、運営する13ホテルのレストランや宴会場、ルームサービスなどで、バナメイエビを「芝海老(エビ)」と表記するなど、メニュー表示と異なる食材を使っていたと発表した。 牛脂注入肉を使っていたのに「加工肉」と表示していないケースもあった。 消費者庁に報告したという。 「信頼と期待を裏切ったことをおわびする」としている。 (asahi = 11-7-13)
三越伊勢丹でも表示と異なる食材 レストラン 14 カ所
メニュー表示と異なる食材を使う「偽装表示」が各地で明るみに出る中、百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス (HD) は 6 日、グループで運営する 9 施設に入るレストラン 14 カ所で、52 品目のメニューで表示と異なる食材を使っていたと発表した。 不適切な表示があったのは、新宿伊勢丹、日本橋三越、府中伊勢丹、浦和伊勢丹、相模原伊勢丹、札幌三越、仙台三越、高松三越の 8 百貨店とグループ企業の伊勢丹会館に入るレストラン。
「大正えび」、「芝えび」と表示する商品にバナメイエビを使っていたり、「ステーキランチ」に脂肪を注入した牛肉を使っていたりしていた。 「宮崎県産」の豚肉が「岩手県産」だったり、結着剤で接合して四角く整形した牛ヒレ肉を使っていたが、「加工肉」と表示していなかったりした例もあったという。 (asahi = 11-6-13)
高島屋や東急ホテルズも … 食材偽装問題、全国に拡大
メニューと異なる食材を使う「偽装表示」問題が、広がっている。 食材を点検する動きが広がる一方、風通しが悪い業界の構造を指摘する声もある。 外食のメニュー表示をめぐる規制はあいまいで、消費者からは怒りの声も上がっている。
メニュー表示と異なる食材を使う「偽装表示問題」が 5 日、大手百貨店に広がった。 高島屋は直営の総菜店「フォション」などで、表記とは異なる食材を使っていた。 東急ホテルズなど、全国の有名ホテルでも偽装表示が次々に見つかっており、外食産業全体に広がる勢いだ。 高島屋は 5 日、百貨店 5 店舗とショッピングセンター 1 施設のレストランや食品売り場、計 10 カ所で、表示と異なる 62 品目の食材を使っていたと発表した。
日本橋店では、高島屋が直営する総菜店「フォション」で 2006 年 10 月 - 今年 10 月に売っていた「車海老(えび)のテリーヌ」でブラックタイガーを使っていた。 同店に入るレストラン「麦星 by グリル満天星」では、04 年 4 月 - 今年 11 月 1 日に提供した「牛テキ丼」などで、ブロック肉を結着材でつなぎあわせていたが、「加工肉」と表示していなかった。 (asahi = 11-5-13)
メニュー虚偽表示、各地で続々発覚 JR 四国系ホテルも
JR 四国は 29 日、徳島市、愛媛県宇和島市、高知県四万十市で子会社が運営するホテルや宿泊施設計 3 カ所で、メニュー表示と異なる食材を使うなどの問題が見つかったと発表した。 阪急阪神ホテルズ(本社・大阪市)系のレストランなどで発覚した事態を受け、調査を進めていた。 メニューの虚偽表示が各地のホテルで常態化している疑いも出てきた。
JR 四国などによると、「ホテルクレメント徳島(徳島市)」のレストランで昨年 11 月 1 日以降、「和風ステーキ膳」の食材に牛脂注入肉を使いながら明記していなかった。 1,229 人に提供し、返金に応じるとしている。 広報担当者は「牛脂注入肉を明記する必要があると知らなかった」と話す。
「ホテルクレメント宇和島(愛媛県宇和島市)」のレストランでは昨年 1 月以降、朝食の漬物 2 種類のうち 1 種類が既製品なのに「自家製」と表示。 また遅くとも 2005 年 4 月以降、市販の牛乳を「フレッシュ」と表示していた。 漬物は 1 万 4 千 - 1 万 5 千人、牛乳は少なくとも 1 千人に提供し、いずれも 500 円ずつを返金する。
「四万十いやしの里(高知県四万十市)」のレストランでは 2010 年 4 月以降、「地元朝とれ有機野菜」や「地場野菜」とメニューに記しながら、市場から仕入れた野菜を使っていた。 返金を検討している。 同施設の支配人は「途中で料理長が交代したこともあり、チェックが行き届かなかった」と話す。
一方、遠州鉄道系の「ホテルコンコルド浜松(浜松市中区)」の喫茶店では 2009 年以降、「遠州カレー」と表示しながら、メニュー通りの調達が難しい時は地元産以外のタマネギを使うなどしていた。 返金に応じる。 阪急阪神ホテルズによると、徳島と浜松の 2 施設は「阪急阪神第一ホテルグループ」に加盟するが、経営には関わらず、サービスのノウハウ提供などを行っている。 (asahi = 10-29-13)
「大正エビ」、「芝エビ」に別のエビ 札幌のホテルでも
「ルネッサンスサッポロホテル(札幌市豊平区)」で、直営の中華料理店がメニューには「大正エビ」、「芝エビ」と記しながら、実際には安価な「バナメイエビ」など別のエビを使っていたことが 29 日、わかった。 同ホテルが明らかにした。 阪急阪神ホテルズ(大阪市)の食材偽装問題をうけて調査を始め、発覚したという。 他のレストランについても問題がなかったか調べている。
同ホテルは今月 25 日の問題発覚後、メニューを訂正したという。 担当者は「『大正エビ』の定義が難しい」としながらも「誤表示であったことには間違いない」といっている。 同ホテルは 1991 年開業。 外資系のマリオットグループが展開する高級ホテル「ルネッサンス・ホテル」の一つで、客室数は 323。 (asahi = 10-29-13)
12 ホテルで食材確認体制なし 阪急阪神「部門間に壁」
阪急阪神ホテルズ(本社・大阪市)がホテルのレストランなどでメニュー表示と異なる食材を使った料理を提供していた問題で、飲食店がある同社の 12 ホテルすべてで、メニュー表示と食材の合致をチェックする仕組みがなかったことがわかった。 虚偽表示について、消費者庁は景品表示法違反(優良誤認)の可能性があるとみて調査を開始。 同社の出崎弘社長は 24 日に記者会見して謝罪する方針を決めた。
同社は全国に 17 ホテルを経営し、レストランやバーが 12 ホテルにある。 同社直轄のレストランも含め、111 の店舗や宴会場があり、これまでに 23 カ所で虚偽表示が見つかった。
同社によると、各ホテルで新メニューを作成する際、食材を発注する調理担当とメニュー表示をするサービス担当らが打ち合わせて詳細を決定していた。 だが各担当を束ねる管理職は新メニュー作成の報告を受けても、会社全体でメニュー表示の正確性をチェックする仕組みはなかった。 表示方法はサービス担当に、調理や食材の選定は調理担当にそれぞれ任せられ、内容の変更があっても、担当間での情報交換がなかったという。 仕入れ業者が食材を変更してもほとんど情報共有されていなかった。 (asahi = 10-23-13)
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