洋上風力発電で三菱商事が全勝 「価格破壊」に広がる波紋

再生可能エネルギーの導入拡大の切り札とされる洋上風力発電をめぐり、エネルギー業界に波紋が広がっている。 昨年 12 月に国が発表した 3 海域の公募結果で、三菱商事を中心とする事業体がライバル陣営を寄せ付けない低価格で全勝したからだ。 想定外の「価格破壊」を受け、国は審査基準を見直す検討を始めた。 平地が少ない日本では太陽光発電の適地は限られるため、再エネを主力電源にするには洋上風力の拡大がカギを握る。 政府は 2040 年までに原発 45 基分にあたる最大 4,500 万キロワットを整備する計画だ。 19 年に施行された再エネ海域利用法に基づき、30 年にわたり海域を使える事業者を公募で選んでいる。

今回の公募は、秋田県沖の 2 海域(能代市・三種町・男鹿市沖と由利本荘市沖)と千葉県銚子市沖の計 3 海域で、発電規模は約 170 万キロワットにのぼる。 初めての案件として昨年 6 月に戸田建設などの事業体が選ばれた長崎県五島市沖(1.68 万キロワット)の 100 倍の規模で、事実上の第 1 ラウンドとして注目されていた。 これを三菱商事を中心とする事業体が「総取り」した。 決め手となったのが圧倒的な価格の安さだった。 三菱商事の売電価格は 1 キロワット時あたり 11.99 - 16.49 円。 政府が設定した上限価格 29 円を大きく下回り、欧州では一般的な「10 円未満」に迫る水準だ。

3 海域の公募には、洋上風力の世界最大手オーステッド(デンマーク)と組んで本命視されていた東京電力を含め、大手電力や再エネ事業者などの 9 陣営も参加したが、多くが 20 円台を提示した。 敗れた陣営からは「信じられない価格。 利益を出せるのか。」、「リスクを甘く見積もっていないか」などの声が上がる。 国内での実績がほとんどない洋上風力で、なぜ他社を寄せ付けない価格を示せたのか。 三菱商事エナジーソリューションズの岩崎芳博社長は「設計や建設だけでなく運用・保守までの全工程で 1,700 超のリスク項目を洗い出し、コストを適正化した」と説明する。

役に立ったのは欧州で蓄えたノウハウだという。 三菱商事は 10 年ほど前から欧州で洋上風力のプロジェクトに社員を派遣してきた。 20 年にはオランダのエネルギー企業を中部電力と約 5 千億円で買収した。岩崎氏は「洋上風力の勘所が分かる人材を日本に戻し、入札の段階から詳細な設計を作り込んだ。 決して『えいや』でつくった数字ではない」と自信を見せる。

三菱商事が今回の公募で「協力企業」として挙げた、米アマゾン、NTT アノードエナジー、キリンホールディングスの存在も、関係者の臆測を呼ぶ。 協力企業に再エネの電気を売って収益増につなげるとの見方だ。 岩崎氏は「現時点で決まったことはない」としつつ、「再エネを求める需要家(企業)が本当に多くなっており、必要に応じて検討したい。 再エネを競争力ある形で世の中に届けるのは使命だ。」と語る。

三菱商事の「価格破壊」は、何をもたらすのか。 価格が安いことは朗報だ。 今回の公募では、発電した電気は固定価格で大手電力が買い取る制度 (FIT) が適用される。 買い取り費用は電気料金に上乗せされるしくみで、標準的な家庭の負担額は年間 1 万円を超える。 売電価格の低下は国民負担の抑制につながる。 経済産業省幹部は「日本の再エネが安くなるのは望ましいが、健全な競争環境が生まれ、産業育成につながるかどうかも重要だ」と話す。 洋上風力の設備は部品が 1 万 - 2 万点と多く、太陽光発電と比べて周辺産業への波及効果が大きい。 発電開始後のメンテナンスでも雇用が増えると見込まれ、地域経済の活性化にもつながる。

政府は洋上風力を成長産業と位置づけ、国内のサプライチェーン(部品の供給網)の構築をめざす。 だが、風力発電の普及で先行する欧州に比べると日本は「周回遅れ」だ。 電源構成に占める風力発電の割合は 0.7% (2019 年度)で、日立製作所など国内メーカーは風車の生産からすでに撤退した。 国や企業でつくる官民協議会は、部品などの国内調達比率を 40 年に 60% にする目標を掲げるが、実現は簡単ではない。 三菱商事は落札した 3 海域で、米ゼネラル・エレクトリック (GE) の風車 134 基を使う。 「部品製造や保守などのサービスで多くの日本企業、地域の企業に参加してもらい、サプライチェーンを作っていきたい(岩崎氏)」とする。

今後の公募では三菱商事が示した「10 円台」が目安になるため、「関連企業が十分な利益を確保できない。 産業としての裾野が広がるか疑問だ。(電力関係者)」との見方がある。 国は審査基準の見直しに乗り出した。 現在は、売電価格を競う価格点(120 点)と、地元対応を含めた事業の実現性に関する得点(120 点)の合計で事業者を決める。 価格点では最も安い価格を提示した事業者が満点を取る。 一方で、ほかの項目は満点になりづらいため、価格がより重視される。 経産省は配点の見直しや評価基準の明確化などを検討している。 (長崎潤一郎、新田哲史、友田雄大、asahi = 3-1-22)


瀬戸内海「きれいで豊か」に 環境保全の基本計画改定

政府は 25 日、瀬戸内海の環境保全に関する基本計画を改定した。 プランクトンの養分となる窒素など「栄養塩」の濃度を調節する管理制度の運用で「きれいで豊かな海」を目指すと掲げた。 今後運用の実務を担う地元 13 府県が各地域の保全計画を策定する。 改定は 4 回目で計画期間は 10 年。 管理制度は水質改善の結果、栄養塩が減り、漁獲量や養殖ノリの品質が低下したことなどへの対策として、4 月施行の改正特別措置法で創設された。 各府県が必要に応じ、排水に含まれる栄養塩の濃度調節を工場などに求める。 基本計画は「環境保全と水産資源の持続可能な利用確保の調和・両立を図る」とした。 (kyodo = 2-25-22)


政府、有機農業に認定制度を創設 環境配慮推進へ税軽減

政府は 22 日、環境に配慮した農林水産業の推進を目指し、「みどりの食料システム法案」を閣議決定した。 化学農薬を使わない有機農業に取り組む生産者や、環境負荷が少ない技術開発を進める食品事業者の認定制度を創設し、税金を軽減するなどして支援することが柱。 農林水産分野の生産性向上も掲げた。 開会中の通常国会で成立させ、年内に施行したい考えだ。 農林水産省は昨年 5 月に「みどりの食料システム戦略」をまとめ、農林水産分野の二酸化炭素 (CO2) 排出量ゼロや化学農薬使用量の半減を 2050 年までに達成する目標として掲げた。 (河北新報 = 2-22-22)


排ガス対策、5 年後見直しへ 8 都府県で大気改善 環境省

環境省は、国が実施している自動車の排出ガス対策の在り方を 5 年後をめどに見直す方針だ。 対策地域に指定されてきた東京、愛知、大阪など 8 都府県の約 240 市区町村で車種規制などが進み、大気環境が改善。 排ガスが出ない電気自動車 (EV) の普及も見込まれることが理由だ。 3 月下旬に有識者会議が環境相に見直しを提言する見通しで、同省はこれを踏まえ対応を進める。

1992 年に施行された自動車窒素酸化物 (NOx) 法に基づき、当初は東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫の 6 都府県の市区町村が対策地域に指定された。 2001 年の法改正で愛知、三重両県も加わった。 対策地域では、国の基準に適合しない重量車やディーゼル車の車両登録を行わない車種規制を実施。 対象のトラックなどを 30 台以上使用する事業者には、都道府県知事に排ガス抑制の計画や状況報告を提出するよう義務付けた。 8 都府県も排ガス削減に関する計画を策定し、対策を講じている。

こうした取り組みの結果、大気環境は大幅に改善。 ただ、一部エリアでは、汚染物質の濃度が今後も基準超過の可能性が低いと言えるレベルまでは下がっていないため、環境省は現行の規制を当面続ける。 一方で、EV など排ガスが出ない車両が普及して大気の改善が一層進むとみられるため、5 年後をめどに規制の廃止を含めて検討する。 環境省は、愛知、三重両県が対策地域の指定解除を希望していることを踏まえ、都府県が解除を環境相に申請する際の要件も明示する。 解除から 5 年後も大気環境が基準を満たすとシミュレーションで確認することや、住民らの理解を得ることを求める方針だ。 (jiji = 2-13-22)

◇ ◇ ◇

温室ガス排出、過去最少を更新 コロナ影響 5.1% 減 環境省

環境省は 10 日、国内の 2020 年度の温室効果ガス排出量が二酸化炭素 (CO2) 換算で前年度比 5.1% 減の 11 億 4,900 万トン(速報値)となり、過去最少を更新したと発表した。 前年度比マイナスとなるのは 7 年連続で、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞が影響したとみられる。 (jiji = 12-10-22)


「太陽光で電気代安くなった」 創業 129 年デニムメーカーは驚いた

工場やオフィスで使う電気を再生可能エネルギーに切り替える動きは地方の企業にも広がる。 「高い」とされてきた太陽光発電のコストが下がり、電気料金が安くなるケースもある。 創業 129 年、国内シェアトップのデニム生地メーカー「カイハラ産業(本社・広島県)」。 2021 年 6 月、綿から糸や布をつくる自社工場の屋根に太陽光パネル約 6 千枚を設置し、「自家消費」を始めた。 発電容量は約 2,200 キロワットで、24 時間稼働する工場の電気の約 12% をまかなう。 昼間の不足分や夜間はこれまで通り地元の中国電力から買う。

導入の決め手は「安さ」だった。 寺田康洋・施設環境管理部長は「無料でパネルを設置でき、電気代も安くなった」と驚く。 同社の生地はユニクロやリーバイスなどのジーンズに使われる。アパレル各社が取引先を含めた脱炭素化を進めるなか、数年前から再エネの調達を検討してきた。 だが、電力会社の専用プランでは電気料金が 2 倍近くになり、なかなか踏み出せなかった。

カイハラ産業が選んだのは、発電事業者と直接契約する「コーポレート PPA」と呼ばれるしくみだ。 太陽光パネルはオリックスが設置するため、初期費用はゼロ。 カイハラ産業が 18 年間、電気を買い取るなど一定の制約はあるものの、太陽光による電気は中国電力より 25% ほど安いという。 契約期間が終われば、太陽光パネルなどの設備を譲り受けることもできる。 工場の屋根など敷地内に太陽光パネルを置くのは「オンサイト型」と呼ばれる。 同じ PPA でも、遠く離れた発電所から電気を送る「オフサイト型」と違い、新たに土地を確保する必要がなく、送電線の使用料(託送料金)などもかからない。

オリックス「商談の件数、前年の 2 倍以上」

オリックスによると、カイハラ産業のように大規模に発電できれば、電力会社から買うより安くなるという。 堀内拓也・電力事業第二部長(現グループ人事部長)は「太陽光のコストが下がって経済的なメリットが出てきた。 投資余力が十分でない中小企業にも再エネは広がる。」とみる。 企業の関心は高まっており、商談に入っている件数は前年の 2 倍以上という。 25 年度までに全国で 1 千件の契約をめざす。

政府は再エネを主力電源と位置づけ、30 年度の総発電量に占める比率を現在の約 2 倍の「36 - 38%」に高めようとしている。 ただ、普及を後押ししてきた固定価格買い取り制度 (FIT) は曲がり角だ。 買い取り費用は電気料金に上乗せされるため、一般家庭の負担額は 21 年度に年 1 万円を超えた。 負担を抑えようと政府は買い取り価格を年々下げており、高値で買い取られなくなった再エネは導入ペースが鈍っている。 FIT に頼らない PPA なら、国民負担を抑えながら再エネを増やせる。 これまでは政府による支援頼みだったが、脱炭素を急ぐ企業のニーズが、再エネ普及の新たな原動力になり始めている。 (長崎潤一郎、asahi = 2-9-22)


「安い再エネは国際競争力につながる」 ソニーが国に迫った値下げ

再生可能エネルギー由来の電気を求める企業が増えている。 国内外で強まる脱炭素への対応が遅れれば、取引先や投資家からそっぽを向かれ、ビジネスが立ちゆかなくなるおそれが出てきたからだ。 2021 年 11 月、あるオークションが企業関係者の注目を集めていた。 取引されたのは、太陽光などの再生可能エネルギーの電気であることを示す証書だ。 新たにできた「再エネ価値取引市場」。電力会社だけでなく、再エネを求める一般企業も初めて参加し、電気の量にして約 19 億キロワット時の証書が落札された。 一般家庭約 700 万世帯の 1 カ月間の使用量に相当する。 旧来の市場で取引された 20 年度分の 4 回の落札量(約 15 億キロワット時)を早くも上回った。

再エネの電気は、火力や原子力の電気と一緒に送られる。 企業や家庭が使う際には見分けがつかないが、証書を買った分は再エネの電気とみなされる。 「再エネ 100%」とアピールすることもできる。 証書の取引は 18 年に始まったものの、利用は広がらなかった。 最大の理由は価格の高さだ。 1 キロワット時あたりの最低価格(1.3 円)は企業向けの電気料金の約 1 割にあたり、電気を多く使う企業には大きな負担だった。 そこで経済産業省は、最低価格を 0.3 円に下げたうえで、電力会社以外の企業も参加できる新たな市場をつくった。 21 年 11 月の初のオークションでの価格は平均 0.33 円となり、これまでより安く再エネが手に入るようになった。

背景には、企業側の強い要望があった。 「合理的なコストで十分な再エネ電力を調達できることは、日本の製造業の国際競争力維持という観点で重要だ。」 新たな市場ができる 9 カ月前の 21 年 2 月、再エネに関する規制緩和を話し合う政府の会議。 ソニーグループの神戸司郎執行役専務は、国内の調達コストは海外の「10 倍以上」と訴えた。

中国は再エネ 100% 達成 日本は「最も遅れている」

ソニーは世界各地の拠点で電気を再エネに切り替えている。 すでに欧州は 08 年度、中国は 20 年度に再エネ 100% を達成し、北米も 30 年度をめざす。 最も遅れている地域の一つが日本だ。 工場の屋根に太陽光パネルを置くなどの取り組みも進めるが、すべての電気はまかなえない。 再エネ調達を担当する総務部の井上哲シニアマネジャーは「証書は再エネ調達の大きなツール。 国内のものづくりを維持するためにも必要だ。」と強調する。 ソニーが危機感を募らせるのは、サプライチェーン(部品の供給網)の脱炭素化が国際的に加速しているからだ。 米アップルは 30 年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げ、取引する部品メーカーに再エネ 100% を求める。

生産の海外シフトが進んだとはいえ、ソニーは国内で多くの製品をつくる。 世界シェアトップで、アップルの iPhone にも供給する画像センサー(半導体)はその代表例だ。 主力事業の一つとして設計から生産までをほぼすべて自社で担い、国内で 2 万人の従業員が働く。 半導体の製造には大量の電気が必要で、ソニーの国内の電力消費の 8 割近くを占める。 再エネを安く、大量に調達できなければ、海外のライバル企業との競争で不利になる。 国際的な取引から外されるのを避けるため、最悪の場合、生産拠点を海外に移さざるを得なくなるおそれもある。

これはソニーに限った話ではない。 多くの企業にとって、再エネの調達は重要な経営課題になっている。 電気を再生エネ 100% にする国際的な取り組み「RE100」にはグーグル、マイクロソフトなど 300 社以上が参加する。 日本からもソニー、リコー、富士通、パナソニック、NEC など64社が名を連ねる。 (長崎潤一郎、asahi = 2-7-22)


国内トップの火力発電会社 JERA、太陽光参入 全国 7 千カ所で開発

東京電力と中部電力の火力発電部門を統合した国内首位の JERA は 2 日、国内の太陽光発電事業に参入すると発表した。 太陽光の開発を手がけるウエストホールディングス(広島市)と業務提携し、今後 5 年ほどで大型の原発 1 基分に相当する計 100 万キロワット以上の発電所をつくる。 国内では大規模発電所の適地が減っているため、小規模のものを中心に 7 千カ所ほど開発する。 休廃止した火力発電所の跡地や荒廃農地も活用する。 投資額は 1 千数百億円の見通しだ。

JERA は 2025 年までに、国内外で再生可能エネルギーを 500 万キロワットほど開発しようとしている。 海外では太陽光発電を手がけているが国内は初めてで、ウエスト社と関係を深めて開発を強化する。 JERA はウエスト社に数 % 程度出資する方向だ。 脱炭素の流れを受けて、再生エネを求める企業が増えており、JERA は太陽光の電気を企業に直接販売することも検討する。 事業開発本部の矢島聡・副本部長は会見で「日本最大の火力発電事業者に加え、日本最大の太陽光発電事業者をめざす」と話した。 (長崎潤一郎、asahi = 2-2-22)


EV 用蓄電池、CO2 排出量を「見える化」へ EU の輸入規制念頭

経済産業省は 21 日、電気自動車 (EV) 用の蓄電池について、製造から廃棄までに排出される二酸化炭素 (CO2) の総量を「見える化」する取り組みを始めた。 世界的な脱炭素の流れの中で、日本企業に不利が生じないよう、国際的なルールづくりを主導する狙いだ。 6 月ごろに中間とりまとめを公表する予定。

商品の原材料の調達から廃棄までの CO2 排出量を表示する仕組みは「カーボンフットプリント」と呼ばれる。 消費者にとっては環境負荷の少ない商品選びの基準になる。 原材料の種類や使用量などから算出するが、計算方法は国や企業ごとにばらつきがあるのが現状だ。 EV は走行時に CO2 を出さないため、脱炭素を追い風に需要の拡大が見込まれる。 ただ、EV 用蓄電池の製造過程では大量の電気が必要で、CO2 を排出する。 欧州連合 (EU) はカーボンフットプリントが基準を超えた蓄電池は域内で使えなくする方向で、ルールづくりで後手に回れば日本企業が締め出される恐れがある。 (若井琢水、asahi = 1-21-22)


原発活用へ透ける思惑 首相が「クリーンエネルギー戦略」策定を指示

岸田文雄首相は 18 日、脱炭素社会の実現にむけた「クリーンエネルギー戦略」の策定を関係閣僚に指示した。 自身の看板政策「新しい資本主義」の柱と位置づけ、再生可能エネルギーだけでなく、原子力の技術開発を推進する考えだ。 欧州では原発を脱炭素の電源として再評価する動きがあり、国内でも推進派の期待が強まっている。

首相官邸で開かれた有識者会議で、岸田首相は「持続可能性の欠如など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題だ。 炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野の投資を早急に少なくとも倍増させる」と述べた。 政府は 2050 年の脱炭素化を掲げるが、多くの化石燃料を使う産業では事業の見直しなど負担が増える。 新たな戦略で脱炭素への道筋を示すことで投資をしやすい環境を整え、経済成長との両立をめざす。

経済産業省によると、重要な論点と位置づけるのが、再生エネを大量導入するための送電網の増強や、燃やしても二酸化炭素 (CO2) を出さない水素・アンモニア、国民の生活スタイルの転換などに加え、原子力だ。 日本メーカーも参加して米国で開発が進む小型モジュール炉 (SMR) や、高レベル放射性廃棄物が出ないとされる核融合といった次世代技術の研究を推進するという。

CO2 に価格をつけて排出の削減を促す「カーボンプライシング」の方向性も示す。 産業界の負担に配慮し、排出量取引や炭素税の本格導入を先送りしてきたが、この日の会議で三菱 UFJ 銀行の平野信行特別顧問(経団連副会長)が「導入・拡大に向けた結論を早期に得るべきだ」との意見書を出した。 経産省が環境省、国土交通省など関係省庁と協力し、6 月をめどに戦略をまとめる。

海外では脱炭素に向け、原発を活用しようという動きが強まっている。 発電量の約 7 割を原発が占めるフランスは昨年 11 月、原発の建設を再開すると表明。 英国も 10 月、SMR などの原発開発のために 1 億 2 千万ポンド(約 180 億円)の基金をつくると発表した。 欧州連合 (EU) の行政を担う欧州委員会も今月、脱炭素につながるエネルギー源に原発と天然ガスを位置づける方針を公表した。 背景には、欧州で昨年、風力などの再生エネの発電量が落ち込み、電気料金が高騰したことがある。

こうした動きについて、大手電力でつくる電気事業連合会の池辺和弘会長は 14 日の会見で「非常に地に足の着いた議論だ。 EU 以外の国にも影響してくる。 その中には日本も含まれるだろう」と期待を寄せた。 岸田政権は原発を使いながら脱炭素を実現させたい考えで、クリーンエネルギー戦略を中長期的な原発活用の足がかりとしたい思惑がある。

それには安倍・菅政権で棚上げしてきた新増設やリプレース(建て替え)の判断が避けられない。 だが、夏の参院選を控え、複数の政府関係者は「選挙前に争点になるものは盛り込まないだろう」とみる。 山口壮環境相も 18 日の会見で「新増設という議論にいく段階ではない」と語った。 首相周辺からは「(選挙後には)リプレースについて、何らかの形で言っておかないといけない」との声が漏れる。 (長崎潤一郎、新田哲史、戸田政考、関根慎一、asahi = 1-18-22)

◇ ◇ ◇

原発は「グリーン」産業 欧州委がリスト認定方針 投資呼び込みに弾み

【パリ = 三井美奈】 欧州連合 (EU) 欧州委員会は 1 日、地球温暖化対策に貢献する事業として、原子力発電を認定する方針を発表した。 EU が独自に作る環境産業のリストに加えるよう、加盟国に提案した。 実現すれば、原発開発への投資に大きな弾みがつく。 EU は、2050 年までの温室効果ガス排出量「実質ゼロ化」を目指しており、目標達成に合致する経済活動を「EU タクソノミー(分類)」という制度でリスト化している。 環境産業にお墨付きを与えることで投資を促す狙いがあり、EU の「グリーン・リスト」と呼ばれる。

欧州委は 1 日の発表で、原子力発電と天然ガスについて、「再生可能エネルギーを基盤とする将来に向け、移行を促す手段」だと位置付けた。 リスト認定では、期間設定などの条件を課す可能性にも触れた。 ロイター通信によると、新規原発は、2045 年までに建設が認可されたものを対象にする方針という。

EU では、原発の温室効果ガス削減効果に注目が集まる一方、核廃棄物や事故被害の環境への影響を懸念する声も強く、グリーン・リスト認定をめぐって是非論が二分している。 原発開発を進めるフランスやフィンランド、ポーランドなど東欧諸国は「温暖化対策とエネルギーの安定供給には不可欠」として、リスト認定を要求。 一方、ドイツ、オーストリア、デンマークなど脱原発派は反対を表明していた。 リストについては欧州委の今回の方針を受けて、EU 加盟国で作る理事会、欧州議会が審議する。 (sankei = 1-2-22)


環境保護団体「地球の友」、大手 30 社に温暖化ガス削減要求

[アムステルダム/ロンドン] 環境保護団体「地球の友」のオランダ支部は 13 日、大手企業 30 社に温暖化ガスの排出削減を求めた。 航空の KLM、銀行の ABN アムロ、小売りのアホールド・デレーズなどオランダに本社を置く企業に書簡を送り、温暖化ガスを 2030 年までに 19 年比で 45% 削減する計画を提示するよう要求。 計画を提示しなければ提訴する可能性があるとしている。

同支部はこれに先立ち、温暖化ガス削減を巡り、ロイヤル・ダッチ・シェルを提訴。 オランダ・ハーグの裁判所は昨年、30 年までに 19 年比で 45% 削減するよう命じる判決を言い渡した。 シェルは上訴する意向を示している。 KLM は正式に書簡を受け取るまでコメントできないが、持続可能な航空燃料の利用を拡大する計画だと表明。 ABN は地球温暖化に歯止めを掛ける取り組みを支持していると述べた。 (Reuters = 1-13-22)


脱炭素へ再生エネ、EV、省エネ住宅を支援 来年度の各省当初予算案

2050 年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素」の実現に向け、関係省庁がさまざまな支援策を用意した。 太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を加速し、電気自動車 (EV) の購入や省エネ住宅の整備を支援する。 経済産業省は、太陽光発電設備を設けて電気を自家消費する企業向けの新たな補助制度に 125 億円を盛り込んだ。 21 年度補正予算にも 135 億円を計上しており、再生エネを求める企業の動きを後押しする。 電気料金の上昇につながる再生エネの固定価格買い取り制度を利用しないことなどを条件とする。

EV などの購入補助金はこれまでの 2 倍の最大 80 万円に増やす。 燃料電池車向けの水素ステーションの整備支援と合わせて 245 億円を計上した。 政府は 35 年までに乗用車の新車販売をすべて電動車(ハイブリッド車を含む)にする目標を掲げ、21 年度補正予算にも 375 億円を盛り込んでいる。 補助金を大幅に増やして普及を促す。

環境省は、脱炭素に取り組む地域を支援する自治体向けの交付金制度に 200 億円を盛り込んだ。 「脱炭素先行地域」を 25 年度までに少なくとも 100 カ所選定。 自治体などが太陽光や風力などの発電設備を導入する際に、最大 75% を補助する。 民間の脱炭素事業を支援する新たな官民ファンド「脱炭素化事業支援機構(仮称)」も設立する。 財政投融資資金から 200 億円を出し、金融機関や企業からも 200 億円を上限に出資を募る。

国土交通省は、省エネ性能の高い断熱材や空調を取り入れた住宅や、二酸化炭素 (CO2) をため込む木造建築物の普及を進める補助金などに、21 年度より 96 億円多い 1,113 億円を計上した。 従来より省エネ性能が高い「ZEH (ゼロエネルギーハウス)」基準の住宅に改修する費用を最大約 51 万円補助するほか、商業施設や中高層住宅を木造でつくる際に最大 3 億円を補助する。

太陽光発電や環境に優しい建材などを使い、建設から居住、解体のときに出る CO2 を実質マイナスにする「LCCM (ライフサイクルカーボンマイナス)」住宅を建築する場合も、最大 140 万円を補助する。 農林水産省は、畜産や酪農での温室効果ガスの排出を減らすため、飼料の生産などで一定の要件を満たす農家に交付金を出す事業に 70 億円を計上。 植樹に取り組みたい企業や民間団体と森林のマッチングなどを支援する「国民運動展開対策」にも 2 億円をつけた。 (長崎潤一郎、関根慎一、高木真也、asahi = 12-24-21)


秋田・千葉 3 海域の洋上風力、三菱商事などが事業者に

事業者が決まり、国内の洋上風力発電の導入が本格化する

経済産業省と国土交通省は 24 日、秋田県沖と千葉県沖の 3 つの海域で洋上風力発電を担う事業者の公募結果を発表した。 いずれも三菱商事を中心とする企業連合を選定した。 3 海域は再エネ海域利用法で促進区域に指定されており、事業者は最大 30 年間占有できる。 促進区域では長崎県五島市沖で事業者が既に決まっているが、大規模な洋上風力としては初めて。

今回、事業者が決まった秋田県能代市、三種町、男鹿市沖は 38 基(出力 48 万キロワット)の計画で 2028 年 12 月の運転開始をめざす。 同県由利本荘市沖は 65 基(82 万キロワット)で開始予定時期は 30 年 12 月。 千葉県銚子市沖は 31 基(39 万キロワット)を計画し、28 年 9 月の運転を予定する。 いずれも風車を海底に固定する着床式で導入する。

売電価格は 1 キロワット時あたり 11.99 - 16.49 円。 この価格で 20 年間、大手電力が買い取る。 従来の固定価格買い取り制度では 21 年度の着床式の洋上風力は 32 円で、これより大幅に安い。 大規模太陽光の 10 - 11 円を数円上回る水準となった。 3 つ全ての案件を落札した三菱商事は「エネルギーの安定供給と脱炭素の両立という課題の解決をめざす」とコメントした。 三菱商事は 30 年度に温暖化ガス排出量を 20 年度比半減にする目標を掲げる。 3 つの洋上風力の合計出力は最大約 170 万キロワットと、中規模の原子力発電所 2 基分にあたる。 洋上風力を脱炭素戦略の柱に据え、目標達成へ投資を重ねていく方針だ。

協力企業には米アマゾン・ドット・コムと NTT アノードエナジー、キリンホールディングスが名を連ねた。 各地域で環境保護や景観保全に取り組む。 三菱商事はアマゾンなどと再生エネの開発などでも手を組む。 両省は 6 月、長崎県五島市沖の洋上風力の事業者に戸田建設などで作る企業連合を選定した。 1.7 万キロワットで風車を海に浮かべる浮体式の導入をめざしている。 (nikkei = 12-24-21)


21 年の平均気温、過去最高 20 年と並ぶ、気象庁発表

気象庁は 22 日、2021 年の天候まとめ(速報値)を発表した。 全国の年平均気温は、平年値(20 年までの 30 年平均)より 0.65 度高くなり、1898 年の統計開始以降、最高値を更新した 20 年に並ぶ見通しとなった。 同庁は地球温暖化が主な要因とみている。 気象庁によると、年平均気温は、北日本で 0.9 度、東日本で 0.7 度、西日本で 0.6 度、沖縄・奄美で 0.3 度、それぞれ平年を上回った。 同庁は今年の台風の状況も公表した。 発生数は平年より少ない 22 個で、日本への接近は平年並みの 12 個、そのうち 3 個が上陸した。 (kyodo = 12-22-21)


再生エネ活用へ火力発電抑制 経産省、供給超過時に

経済産業省は発電能力があるのに活用しきれていない太陽光や風力発電を減らす対策を強化する。 地域内で電力供給が需要を上回り停電が懸念される際に、火力発電所の出力を 20 - 30% まで下げるよう電力会社などに求める検討に入った。 現在は 50% 以下まで抑えればよいルールだが、火力をさらに絞ることで再生可能エネルギーの発電余地を広げ、脱炭素化につなげる。

火力発電などを重視してきた政策から、再生エネの「主力電源化」に向けた転換の一つとなる。 地域間で電気を融通する連系線を含む送電網の整備など、再生エネを有効活用するための全体的な対策も重要になる。 電気は需給が一致しないと停電がおきる。 太陽光発電の多い九州では需要を上回りかねないとして 2020 年度に 60 日間、太陽光などの発電を止める「出力制御」を実施した。 脱炭素に向け、太陽光発電は全国で増える見込みだ。 他地域でも同じ状況になりかねず、対策を強めることにした。

年内に方向性を出して来春にも新たなルールに移行し、新設の火力発電所に適用する。 既設の発電所は設備更新などが必要になることも考慮し、2 - 3 年の適用猶予を設ける方針だ。 引き下げが困難な場合は原則として稼働停止を求める。 ルール変更の指針改定に伴い、再生エネの発電を止めていた時に稼働していた火力発電所の名前や出力値、発電理由を公表する制度も始める。

経産省の資料をもとに首都圏、関西、中部をのぞく地域で「電源 III」と呼ばれる火力発電の出力を 50% から 20% に下げる効果を試算したところ、再生エネの発電余地が 150 万キロワット前後あるもようだ。 火力や原子力も含めた国内の発電容量は約 2 億 7,000 万キロワットで、再生エネは 2 割強の 6,700 万キロワットを占める。 150 万キロワットは再生エネの 2% 強に相当する。

太陽光の発電を止める出力制御は発電事業者の損失になる。 今回の対策で経営のリスクを軽減し、脱炭素化に向けて投資を呼び込みやすくする。 出力制御は春や秋に起きやすい。 天候が良く太陽光発電量が多い一方で、冷暖房による電力需要が少ない時などに発動される。 東北電力や四国電力も発動例はまだないが、可能性があるとみて準備を進めている。

送電網の整備も課題に 地域結ぶ連系線を増強

再生可能エネルギーによる電気の有効活用には火力発電所の出力制御のほか、送電網の整備も課題となる。 経済産業省は地域と地域を結ぶ連系線と呼ばれる送電線を増強する方針だ。 太陽光や風力の発電に適している北海道や東北、九州から、電力需要が大きい首都圏や関西に電気を送る狙いがある。 日本では地域の電力会社ごとの送電網で、原則として電力の需給を一致させる必要がある。 太陽光の発電量が多く、供給過多になりそうな時は、@ 火力発電の出力を抑制、A 他地域への融通、B バイオマス発電の出力制御 - - の対策をとる。 それでも調整がつかないときに再生エネの出力制御を実施する。

北海道と本州を結ぶ新北本連系線

経産省は、@ について、出力を 50% 以下にする現行ルールを来春にも 20 - 30% 以下にする。 経産省がメーカーに聞き取ったところ、最近の大型の石炭火力は出力を 30% まで抑えられる設備が多い。 20% 前後までの引き下げが可能な発電所もあるという。 液化天然ガス (LNG) 火力発電所は出力を変えやすい。 出力を大きく落とすのが難しい高効率を重視した設備や自家発電設備については一定の配慮も検討する。

A の連系線の増強も進める。 電力広域的運営推進機関の参考試算によると、再生エネの発電比率を 5 - 6 割に高めるには、主要な送電網に最大 2.6 兆円の投資が必要という。 このうち九州と中国地方を結ぶ送電網の増強には 3,600 億円、北海道から東京へ運ぶ海底送電線の新設などは 1 兆円前後にのぼる。 財源は電気料金から賄う方向で、実際の増強には時間がかかる。

2021 年度補正予算案では、送電線につなぐ蓄電池の設置費用を半額まで補助するため 130 億円を計上した。 出力制御の回避策になるが、まだ高い蓄電池のコスト軽減が課題となる。 こうした対策を講じてもなお再生エネの出力制御が必要になった際には、発電事業者の収入を補填することも検討している。

政府は 30 年度までに温暖化ガスの排出量を 13 年度比で 46% 以上減らす目標を掲げている。 再生エネの導入拡大は不可欠だが、火力を絞れば電力会社の採算は悪化する。 世界的な脱炭素の流れから火力への投資がさらに落ち込む可能性もある。 今冬も首都圏などで電力の供給懸念が生じた。脱炭素と安定供給の両立がこれまで以上に重要になっている。 (nikkei = 12-8-21)


「100% 植物由来」ペットボトル開発 サントリー、製品化へ

世界に広がるマイクロプラスチック

記事コピー (4-25-18〜12-3-21)


大気から CO2 の回収 川崎重工が商用化、25 年にも

二酸化炭素の直接回収と貯留

記事コピー (9-13-21 & 12-3-21)


日立と GE、カナダで小型原子炉を受注 「脱炭素」の利点強調

日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック (GE) の原子力事業合弁会社の「GE 日立ニュークリア・エナジー」は 2 日、従来の原発よりも小規模な小型モジュール炉 (SMR) をカナダの電力会社から受注したと発表した。 日系企業が商用の SMR を受注するのは初めてという。 2028 年の完成をめざしている。 カナダ・オンタリオ・パワー・ジェネレーションから受注した。 出力 30 万キロワット級の「BWRX-300」と呼ばれるタイプを、オンタリオ州に最大 4 基建設する見通しだ。 22 年末までにカナダ当局に建設許可を申請する。 受注額は非公表としている。

通常の大型炉の出力は 100 万キロワット前後あるが、SMR は小型化し抑えている。 燃料から出る熱が少ない分、冷やしやすく非常時の安全性を高めやすいとされる。 工場で組み立てたものを運んで設置することで、建設コストも大型炉より小さくなると企業側は主張している。 主に欧米で開発が進む。 日本企業では GE 日立のほかに三菱重工業が開発しようとしている。 IHI も米国の新興企業の事業に参加している。

企業側は「脱炭素」にもつながると SMR の利点を強調するが、放射性廃棄物が出ることは従来の原発と同じだ。 建設費が大型炉よりかからないといっても、出力の規模は小さく発電コスト全体で見ると安くなるとは限らない。 廃炉にも巨額の費用が想定される。 国のエネルギー基本計画には、次世代の原発開発への「積極的支援」が盛り込まれた。 SMR の開発などを見据えたものだ。 基本計画には原発の新増設や建て替えは明記しておらず、国内導入の見通しは立っていない。 (伊澤健司、asahi = 12-3-21)

◇ ◇ ◇

ルーマニアが米製小型原子炉導入 中国メーカーとの協定破棄

|【グラスゴー(英北部) = 塩原永久】 バイデン米政権は 2 日、ルーマニア政府と協力し、同国に次世代原子炉である「小型モジュール炉 (SMR)」を導入する計画を進めると発表した。 海外で米国製の導入実績を作り、SMR 開発の国際競争で先行する狙いだ。 米政権は 2050 年の脱炭素化に向けた長期戦略で、原発を有力な温室効果ガスの無排出電源と位置づけ、導入を増やすシナリオも示した。 米政権が英グラスゴーの国連気候変動枠組み条約第 26 回締約国会議 (COP26) に合わせ、温暖化対策の一環として明らかにした。

ルーマニアが導入予定の SMR は米ニュースケール・パワー製の 12 基。 米国とルーマニアで当初 6 千人規模の雇用創出が見込まれるとしている。 米政府が発表した文書は「SMR の導入が電力部門の脱炭素化に重要な貢献をする」とした。 欧州で中国資本への警戒が強まる中、ルーマニアは昨年、原子炉導入で中国メーカーとの協定を破棄していた。 中国は途上国への原発輸出に力を入れていた。 米国は 50 年に温室効果ガス排出の実質ゼロを実現するため、同年までの包括的な施策をまとめた長期戦略を 1 日公表した。 その過程で電力部門を 35 年までに脱炭素化する目標だ。

長期戦略は、原子力発電をめぐり「既存原発の稼働を維持し、30 年代から 40 年代に(電源構成比を)増やす可能性がある」と明記した。 50 年に向けて導入比率がもっとも増えるのは、太陽光や風力による再生可能エネルギーとした。 二酸化炭素 (CO2) を取り出して地下に埋める「CCS」も積極的に活用する。 原子力に関しては、SMR の開発に積極的に投資する方針を打ち出している。 SMR をめぐっては、フランスのマクロン大統領が先月中旬、原子力産業への投資を増強し、SMR 開発を目指すと表明した。 (sankei = 11-3-21)


生態系破壊で回復が不可能な炭素 1,391 億トン 熱帯林や泥炭湿地

気候変動の進行を食い止めるため「絶対に壊してはいけない生態系」を国際研究チームが分析した。 こうした場所は世界各地に広がり、貯留する炭素は約 1,391 億トンと推計。 ここから大量の炭素を放出してしまうと、対策が急がれる 2050 年までの間には回復させられないという。 温室効果ガスの二酸化炭素 (CO2) は、化石燃料の燃焼などだけでなく、森林破壊や火災、乾燥化に伴って、森や土壌からも放出される。 特に、原生林や泥炭湿地、マングローブは炭素が集中。 ここを壊すと回収まで数世紀かかるという。 チームは、こうした地域を優先的に保護する必要があるとしている。

米 NGO 「コンサベーション・インターナショナル」やドイツの「ポツダム気候影響研究所」などのチームは、人工衛星による測定などで、こうした「回復不可能な炭素」を推定。 南米アマゾン(約 315 億トン)、東南アジア(約 131 億トン)のほか、アフリカのコンゴ盆地や、北米の北西部、西シベリアなどに多かった。 CO2 に換算すると、18 年の世界の排出量の 15 倍以上にもなった。 一方で、11 年から 19 年の 9 年間に森林の農地転換や伐採、火災で、推定約 40 億トンの回復不可能な炭素が放出されていた。 森林が消えた原因は主に、牛肉や大豆、パーム油、木材製品の商品を生産するため、と指摘している。

対策を取らなければ、今後 50 年まで、10 年ごとに回復不可能な炭素が、少なくとも 45 億トンずつ放出される恐れがあるという。 チームは、炭素を多く含む生態系の破壊を中止し、それら地域を、保護区に組み入れることなどを求めている。 専門誌「ネイチャー・サステイナビリティー」で発表した。 コンサベーション・インターナショナルは、各地域の地図を 専用サイト で公表している。 (神田明美、asahi = 11-30-21)


十六銀、中島化学(岐阜県美濃市)に環境関連融資

十六銀行は再生プラスチック原料製造の中島化学(岐阜県美濃市)に対し、環境関連融資のひとつ「サステナビリティ・リンク・ローン」を実行した。 中島化学がプラスチックのリサイクル材を活用する新製品の売上高目標を設定し、達成度合いに応じて金利引き下げなどの措置を取る。 国などが定める環境基準に整合していると格付投資情報センター (R & I) から評価を受けた。 (nikkei = 11-25-21)