いまさらだけど「ネットは広大だわ」 サイバー攻撃がもたらす世界の危機

新型コロナウイルスによるパンデミックが広がるなか、コンピュータ・ウイルスによる脅威にも人類はさらされている - -。 本書「サイバーグレートゲーム 政治・経済・技術とデータをめぐる地政学(千倉書房)」によると、軍事や選挙、サプライチェーンなどにかかわるサイバーセキュリティの問題が、地政学的なリスクを反映したものになりつつある、と警告している。

「サイバーグレートゲーム 政治・経済・技術とデータをめぐる地政学」(土屋大洋著、千倉書房)
著者の土屋大洋さんは、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科兼総合政策学部教授。 博士(政策・メディア)。

冒頭、さまざまなサイバー攻撃の例を紹介しているなかで、新型コロナのワクチン開発をめぐるサイバー攻撃は興味深い。 米国司法省は 2020 年 7 月、米国や日本の企業・団体にサイバー攻撃を仕掛け、情報を盗み出していたとして 33 歳と 34 歳の中国人男性がワシントン州の連邦地裁で起訴されたと発表した。 ワクチンや治療薬に関する情報を含む知的財産を狙っていた、という。 また同じ頃、英国、米国、カナダの 3 カ国は、ロシア政府とつながりのあるハッキング・グループ APT29 もまたワクチンに関連してサイバー攻撃を行っていた。

米国に「サイバー軍」がつくられた!

ほかに、大規模なサイバー攻撃として、2017 年に「ワナクライ」と呼ばれる悪性プログラムによるものが知られている。 150 カ国、20 万件とも 30 万件ともいわれる被害が出た。 感染すると、コンピュータの中身が暗号化され、鍵を手に入れないと元に戻せなくなる「ランサムウェア」と呼ばれる悪性プログラムが使われた。 データを元に戻す鍵を手に入れるためにはランサム(身代金)を犯人に払わなくてはならない。 一連の事件で、身代金を払ったのは 300 組程度と見られている。 しかし、犯人が引き出したビットコインの総額は 1,500 万円程度だとされ、金銭目的のサイバー攻撃としてはほとんど失敗だった、と土屋さんは見ている。

では、何が目的だったのか。 北朝鮮やロシアが業務妨害を目的にしたという説もあるが証拠はないという。 そうしたなか、米国の国防計画は陸、海、空、宇宙に次いで、サイバースペースが第 5 の作戦領域である、と考えている。 2010 年にはサイバー軍が創設された。 未来の戦争はクロスドメイン(領域横断)になる、というのは、ハリー・ハリス前米国太平洋軍司令官。 本書では、以下の言葉も紹介している。

「例えば、陸軍が、船を沈め、人工衛星を無力化し、ミサイルを打ち落とし、部隊を指揮統制する能力をハックしたり、妨害したりできなければならない。」

つまり、陸軍の敵は陸軍ではなく、敵の海軍であり、空軍であり、宇宙軍であり、サイバー軍であり ...、軍種を超えた戦闘が未来の戦争になるというのだ。 北朝鮮のミサイル実験が何度か失敗したのは米国のサイバー攻撃が功を奏した、というニューヨーク・タイムス紙の報道を取り上げている。 土屋さんは「北朝鮮に対するサイバー攻撃はすでに終わったか、あるいは新たな段階に入ったと考えるべきである」と書いている。

米国大統領選挙にロシアがサイバー攻撃?!

第 3 章「選挙介入とフェイク・ニュース」では、2016 年の米国大統領選挙を揺さぶった 2 つのサイバーセキュリティ問題に触れている。 クリントン候補の私用電子メール問題と民主党に対するサイバー攻撃である。 フェイク・ニュースを組織的に流したり、データを盗んで暴露させたりしたのはロシアの GRU (ロシア軍参謀本部情報総局)であると米国政府は非難。 ロシアの外交官 35 人を追放し、ロシア政府が米国内で使っていた 2 つの拠点を封鎖した。

上述のことはよく知られているが、2018 年の米国中間選挙で、ロシアのサイバー攻撃を米国のサイバー軍が食い止めたことはあまり知られていないだろう。 これは、米国大統領選挙をめぐるネット世論工作部隊として知られるロシアの IRA (インターネット・リサーチ・エージェンシー)を米国サイバー軍がインターネットから追い出した、というものだ。 そこまで米軍が出来た理由について、土屋さんはこう書いている。

「国政選挙に外国が介入することで、米国が奉じる民主主義の根幹が損なわれれば、国家安全保障上の危機であるという認識があったからだ。 2016 年の介入後、米国政府は選挙システムの保護を、重要インフラのひとつ『政府施設』に含めることにした。 そのため、サイバー軍が選挙防衛に従事できるようになった。」

ちなみに、日本ではサイバー軍も、それを可能にする法制度もないし、日本の選挙に外国が介入したと報じられたこともないが、土屋さんは「巧妙な介入に備えるべきだ」と提言している。 米軍は現在、サイバー軍を軍種のひとつではなく、統合軍のひとつとして格上げして位置づけている。 また、「イスラム国 (IS)」へのサイバー攻撃を公に認めるなど、サイバー攻撃を隠さなくなった。

日本の自衛隊にもサイバー部隊はあるが、権限、能力、規模ともに米国サイバー軍には及ばない。 とはいえ、能力の向上は必須だ、と指摘している。 本書の先見性に感心した箇所がある。 「今後、大きな戦争が起きるとすれば、その際は海底ケーブルが切断され、サイバースペースが分断される危機があることに目を向けるべきである」と警鐘を鳴らしているのだ。 2022 年 1 月、海底火山の噴火によって海底ケーブルが切断され、情報が遮断されてしまったトンガのことを思った。 (渡辺淳悦、J-cast = 1-30-22)


インターネットが「文化資本の格差」を拡大させるわけ

文化資本の格差とは

記事コピー (1-20-22)


インターネットで徹底集客、2022 年のホテル旅館業界の予測

ここでは、これからのホテル旅館業界について述べたいと思う。 例年通り多分に主観が入った内容ではあるが、ご容赦いただきたい。 キーワードは今年も 3 つに絞り、「付加価値化」、「SNS」、「直販化」としたい。

まず付加価値化であるが、端的に言えば「ホテル旅館に付加価値(= 魅力)を付けて価格競争から抜け出して、旅行者に選ばれる施設になろう」ということである。 当たり前のことであるのだが、このことの重要性が増す。 再三述べてきたが、アフターコロナでは個人旅行 & オンライン旅行が主役となるため、旅行者に選ばれる施設になることが極めて大事になる。

昨年度からの観光庁の支援策を見ても、「高付加価値化」という文言がそこかしこで使われている。 来年度も同様の支援策が行われるので、自施設の高付加価値化に向けて、何が有効になるのかを改めて考えることが重要である。

次に SNS であるが、20 代や 30 代の方にとっては当たり前のツールであるが、ご年配の旅館ホテル経営者にとっては未知の領域となる部分もあるかもしれない。 しかしながら、今後の消費者動向としては外せないので、ぜひともご理解をいただきたい。 既に 20 代や 30 代の中では、Google や OTA ではなく、Instagram から旅行を探すという層が存在している。 従って、SNS マーケティングをきちんと実施しないと若い世代を取り込めない可能性が生まれてくる。

また、SNS は付加価値化とも相性が良い。 魅力的な付加価値化に成功した宿は、旅行者自身が発信者となり、そのコンテンツについて SNS を通じて発信してくれるようになる。 すると、拡散効果により集客することができるようになるという好循環になる。 最後に直販化であるが、その名の通り自社直接販売の強化である。 これまでにもホームページでの予約取り込みなど多くの施設が取り組んできた事項であるが、前述の SNS と組み合わせてさらなる強化が可能となる時代が到来する。

各項目については追って詳細は掘り下げていきたいと思うが、アフターコロナを迎えるにあたり新たな局面を迎えていることは疑いようがない。 (内藤英賢、観光経済新聞 = 1-10-22)


分身キャラへの中傷、「現実の自分が傷ついた」 V チューバーが提訴

自分の分身としてネット空間で活動させるキャラクターへの中傷は、本人への非難と同じだ - -。 キャラの姿を借りて動画を投稿する「バーチャルユーチューバー(V チューバー)」の女性が、そんな主張で東京地裁に訴訟を起こしている。 仮想(バーチャル)のキャラに、現実(リアル)の人間の権利は及ぶのか。

原告の女性が V チューバーとして活動を始めたのは 2019 年。 女性自身は動画に映らず、代わりにキャラの少女が登場する。 女性が手足を動かすとキャラも同じように動き言葉や表情も連動するため、キャラを通じて歌ったりトークをしたりして視聴者を楽しませてきた。 動画投稿チャンネルの登録者は数十万人に及ぶ。 だが 20 年、別の V チューバーを「(女性のキャラが)いじめた」との情報がネットで広がり、女性のキャラに対して「辞めろ」、「首つれ」など 1 万件以上のメッセージが届いた。

V チューバーの女性 「人生がぐちゃぐちゃになった」

思い出すたびに息苦しくなったという女性の動画投稿は 1 年以上止まったまま。 このため、「いじめ」の情報を最初に投稿した V チューバーの個人情報の開示を求める訴訟を提起することに決めた。 実名などが特定できれば、法的責任を追及するという。 30 日夜、提訴していることをネットで報告した。 幼い頃に母と死別して頼れる家族がいないという女性にとって、V チューバーの活動は「収入源」でもあり「居場所」。 配信すると「おかえり」とコメントをくれるファンに元気づけられてきたという。

女性は取材に「私の分身のキャラへの中傷でも、現実の自分が傷つき人生がぐちゃぐちゃになった」と訴えた。 国内には 1 万 6 千人超の V チューバーがいるとされる。 V チューバーのキャラを使って、行政情報や商品を PR する自治体や企業も増えている。

被告は不開示を主張 「バーチャル世界のコミュニケーションだ」

「V チューバーとしての女性の活動を現実社会で知る人が多く、本人の名誉が侵害されたといえる。」 原告側代理人の小沢一仁弁護士は、仮想キャラへの批判と本人への中傷が同じと訴える理由をそう話す。 ただ、投稿者情報の開示訴訟では、裁判所が、@ 名誉毀損といった権利侵害、A 訴訟提起など正当な目的 - - などがあると認めなければ開示されない。 特に、自分の分身といえるキャラへの中傷が女性本人へのものと裁判所が認定するかが焦点だ。 一方、ユーチューブを運営する被告のグーグルは情報の不開示を主張。 「バーチャル世界のコミュニケーションで示された事実を視聴者は信用しないと考える」と反論する。

同様の訴訟、ツイッターでも

同じ構図はツイッターをめぐっても起きている。 知財高裁では、匿名アカウントでの投稿に対する批判が、匿名アカウントを管理する男性の名誉を毀損したかどうかを争う訴訟が続く。 被告側は「一般の人からみて、匿名アカウントと男性は結びつかない」と主張する。 過去の裁判では、ハンドルネーム(ネット上の名前)への名誉毀損を認めた例もある。 このときの東京地裁判決(2016 年)は、芸名やペンネームを例示して、戸籍上の名前でなくても権利侵害は認められると指摘した。 (新屋絵理、asahi = 12-30-21)


グーグル検索ワード、今年の上位は? なぜか「生姜焼き」も

グーグルは 2021 年の検索ランキングを発表した。 1 - 11 月に日本語版で昨年より検索回数が上昇した言葉のランキングで、夏の「東京 2020 オリンピック」が 1 位だった。 2 位は投打の二刀流が評価され、米大リーグのアメリカン・リーグ最優秀選手 (MVP) を受賞したエンゼルスの「大谷翔平」選手。 3 位には人気マンガをテレビアニメ化や映画化した「東京リベンジャーズ」が入った。

「話題の人」に絞ったランキングは、「大谷翔平」選手が 1 位。 ともに今年結婚を発表した俳優の「小松菜奈」さんと元フリーアナウンサーの「夏目三久」さんが続いた。 全世界で検索回数が多かった言葉では、理由は不明だが「食べ物」部門の 5 位に「生姜(しょうが)焼き」、「ゲーム」部門の 4 位にカプコンが今年発売した「モンハンライズ(モンスターハンターライズ)」と日本関連の言葉が入った。 (平井恵美、asahi = 12-24-21)

グーグルの 2021 年検索ランキング 2021年1-11月に日本語版で昨年より検索回数が増えた言葉
1位東京 2020 オリンピック
2位大谷翔平
3位東京リベンジャーズ
4位モンスターハンターライズ
5位呪術廻戦
6位ウマ娘プリティーダービー
7位新型コロナウイルスワクチン
8位小松菜奈
9位夏目三久
10位小山田圭吾


ネットの速度重視なら「光」一択 古い契約は見直しも検討

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インスタにあふれる「虚構」の姿 もっと、もっと … 気付けば摂食障害

メタ(旧フェイスブック)傘下の写真投稿アプリ「インスタグラム」が、若者に悪影響があると批判されている。

10 歳でスマートフォンを手にしてから長く利用してきた米国在住の高校生はソーシャルメディアが「両刃の剣」だと実感したという。 ロサンゼルス近郊に住む高校生ケルシー・ウーさん (16) は 8 歳のころ、太っていたことでいじめを受けた。 「身体が大きいことは社会では悪いことだという思いが植え付けられた」という。 その後ダイエットを始め、中高と続けた。 カロリー計算機を常に見て、油や塩が入ったものを取らず、1 カ月で 10 キロ近くやせたこともあったという。 「体重が増えることが怖くて、やめられなかった。」 そして昨年、14 歳の時に自分が摂食障害だと気づいた。

「毎日 1,000 回、悪いイメージが脳に植え付けられる」

ウーさんは 10 歳の時にスマートフォンを買ってもらい、すぐにインスタを使い始めた。 まわりの友人もみんな使っていた。 1 日 5、6 時間はスマホをみていた。 「ほとんどの人が自分たちの最高の写真だけ投稿していた」とウーさん。 インスタでみる投稿は加工などにより、よりやせて、よりかわいく、実物とは異なる写真が多くあった。 「不可能な美の基準に合わせようとする、極限のプレッシャー」があったという。

ウーさんは「摂食障害になって初めて、ソーシャルメディアがいかに悪い影響を持っているか気づいた」という。 「私たちの世代では、1 日に千枚の写真を見ているといわれる。 悩みを抱えていると、毎日千回、悪いイメージが脳に植え付けられる。」 ウーさんはその後、症状が回復に向かい、摂食障害を持つ若者らを支援する団体を立ち上げた。 同世代の外国の若者と連携し、悩みを持つ若者向けのワークショップなどを開いている。 「ソーシャルメディアは両刃の剣だと思う。 なくすことはできないし、これからさらに大きくなる。 私たちや政治家も含め、社会全体でソーシャルメディアのいい面を促せる道を考えないといけない。」

ホーゲン氏の内部告発により、巨大 IT 企業の地元でも規制強化の期待が高まった。 カリフォルニア州議会のクリスティナ・ガルシア議員は今年、「ボディーイメージ法案」を提案した。 SNS 上の広告で身体が写った写真を加工した場合、加工写真だと明示することを義務づける内容だ。 フィルターなどで加工された、身体の一部を強調した写真が、若者の摂食障害などに悪影響を与えるとの調査結果があるためだ。 ホーゲン氏の公聴会での証言や内部告発を見て、ガルシア氏は「とても勇気づけられた」という。

法案を出した当初、ツイッターや FB などの SNS 企業の担当者と会ったが、企業側は「法案は難しすぎる」、「問題はない」などと取り合わなかった。 それが今、「『解決策を探しましょう』と協議を持ちかけてくるようになった。」 同僚の議員は、SNS 企業のアルゴリズムについてより多くの情報を共有するよう求める法案も検討しているという。 ガルシア氏は「SNS 企業に影響を与える多くの法案が、州と連邦議会の両方で今後出てくる」としたうえで、「FB 文書から大量の情報が出てきた。 我々は問題を無視できないし、彼らも無視するべきではない。」と話した。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 12-9-21)


公文書管理、紙から電子へ ルール見直しの意見公募 8日に締め切り

公文書の作成・保存などのルールの見直しを内閣府が進めている。 文書管理の基本を紙媒体から電子媒体に改めるのが大きな柱だ。 一方で、メールやツイッター、LINE、note などで交わされる情報の扱いについては原則が不透明なままだ。 政府は、来年 1 月に公文書管理法の施行令やガイドラインを改定する予定で、国民の意見を募るパブリックコメントを 8 日に締め切る。

公文書管理法の施行から 10 年がたち、デジタル化への対応などが必要だとして、内閣府が公文書管理委員会(委員長・小幡純子上智大大学院教授)に見直し案を 11 月に示していた。 新しいガイドライン案では、「電子媒体による文書の作成・取得」や「電子文書による保存」を基本とする。 紙で入手した文書も、スキャナーなどでデジタル化したものを「正本」とし、もとの紙は1年未満で廃棄できる。 スキャンの過程で改変されていないという真正性の担保が課題になりそうだ。

メールについては、これまでのガイドラインでも、意思決定過程や事業の合理的な跡付けや検証に必要となるものは行政文書に該当するとし、原則として保存するよう求められていた。 これは残る。 しかし、情報ツールの多様化で、省庁内や外部とのやりとりはメールにとどまらない。 こうした電子情報の網羅的な扱いは、新しい案に記されていない。 SNS やウェブサイトでの発信の扱いについては、ガイドラインとは別に「課長通知」で細目を記述するとしている。

このほか、▽ 公文書の保存期間を、施行令よりもあらかじめ長くできるようにする、▽ 公文書の保存期間を延ばす際に必要だった首相報告をなくす - - などが盛り込まれている。 公文書管理に詳しい龍谷大の瀬畑源・准教授は「国立公文書館に移管しないまま、役所が長期にわたって公文書を持ち続けることが、さらに常態化してしまうのではないか」と懸念を示す。 (編集委員・谷津憲郎、asahi = 12-6-21)

公文書管理法の施行令・ガイドライン改定案の主な変更点

施行令

・ 法律や閣議決定に関する文書の保存期間を 30 年から 20 年に改め、その後は国立公文書館に移す
・ 公文書の保存期間を、あらかじめ施行令より長くできるようにする
・ 公文書の保存期間を延ばす際に必要だった首相報告をなくす

ガイドライン

・ 電子文書による作成保存を基本とする
・ 内容を整理し、細目は「課長通知」にうつす
・ 年度をまたぐ事業の公文書を一つのファイルにまとめられるようにする


インスタや FB から一斉に撤退 化粧品メーカー LUSH の「覚悟」

イギリス発祥の化粧品メーカー・LUSH (ラッシュ)が 11 月 26 日、フェイスブック (FB) やインスタグラムなど五つの SNS の利用を全世界で一斉にやめた。 SNS は今や企業にとって必須ともいえる広報ツール。 なぜ、やめたのか。 26 日という選択にも、ある狙いがあったという。 同社はオーガニックなど自然派を掲げ、化粧品のほかにせっけんなども手がける。 同社は 48 の国と地域の店舗や法人が公式アカウントを使って、新商品の宣伝などをしてきた。 SNS ができた頃から活用してきたという。

日本法人の FB は約 7 万人のフォロワーを抱える。 日本法人の 75 の全店舗がそれぞれインスタグラムのアカウントを持ち、週に 3 回程度投稿するなど SNS を顧客との対話に使ってきた。 しかし、11 月 26 日以降、これらのアカウントによる新たな投稿は一斉に停止した。 LUSH は停止の理由の一つとして、FB 社(現メタ社)の元社員による内部告発とその後の報道を挙げる。

元社員は、数千枚の文書を入手し、FB 社が若者への心理的な影響を把握しながら公表せずにいたなどと主張し、ウォールストリート・ジャーナルなど米国や欧州の報道機関が問題を相次いで報じた。 LUSH の共同創立者で商品開発担当のマーク・コンスタンティン氏はプレスリリースで「私は生涯をかけて、人に害を与えるような原材料を商品に入れないようにしてきた。 SNS の利用時に私たちが危険にさらされている証拠が今や数多くある。」とコメントしている。

LUSH が停止した他の SNS は、メタ社の傘下にあるメッセージアプリの「ワッツアップ」のほか、動画投稿アプリの「TikTok」、写真・動画共有アプリ「スナップチャット」。LUSH はこれらの SNS についても FB と同種の問題があると判断したと説明している。 LUSH は、今回の一斉停止により顧客への情報提供が減り商品の売れ行きに悪影響が出るなどして、全世界で 15 億円の経済的損失を想定しているという。

日本法人の広報担当者は「SNS による投稿を楽しみにしていた顧客には申し訳ないが、企業としても SNS に依存しすぎない顧客との対話のあり方を考えるきっかけにしたい」と説明する。 一斉停止の日程は、欧米を中心に企業が購買を喚起しようとして SNS の利用が活発になる「ブラックフライデー」である 11 月 26 日を選んだ。 他の企業への波及効果を狙ったという。 ただ、顧客との接点を確保するという点でネットは有効とみており、ユーチューブやツイッターについては、利用者への悪影響を防ぐ一定の対策が取られていると判断し、利用を継続するという。

店頭にきていた客に聞いてみた。 LUSH の新宿店(東京都新宿区)に来ていた東京都中野区、大学生・小松いつかさん (22) は「すっごく賛成。 普通の企業ならできないと思う。」と話す。 自身も SNS の弊害を感じてきた。 インスタグラムでは自分と他人の外見を比較して落ち込んでしまうことがあり、「写真を全て消したことがある。」 友人は匿名の人から「前より太った」といったメッセージや攻撃的なコメントを書かれた。

長野県から訪れていた高校生の永井美紅さん (18) は「これまで SNS で商品の情報を見ていたので、ちょっと残念」と話す。 県内には LUSH の店舗が無く東京の店などに行く際の参考にしていたといい、「これからは LUSH のユーチューブを見ます」と話していた。 日本法人には、SNS 停止を残念がる声もあるが、多くは「SNS の利用を考え直すべきだと思っていた」、「SNS は情報の信頼性が低いと考えていた」などと賛同する声が寄せられているという。

イタリアの高級ブランド「ボッテガ・ヴェネタ」も今年 1 月にインスタグラムやツイッターなどの SNS から撤退した。 35 歳のクリエーティブ・ディレクター(当時)は英大手紙ガーディアンに SNS について、「私には膨大な考えがあるのに、単純化してしまう」と問題点を指摘。 「私があまり好きではない遊び場でのいじめのムードがある」とも話した。 ボッテガは SNS からの撤退後、代わりにウェブサイトを新たに立ち上げた。 文章がほぼなく音楽と写真をつなげることで映画のように商品を紹介している。 ただ、同社の広報担当者によると、このディレクターは 11 月に退任したという。 「今後の動きが変わってくる可能性もある。 具体的なコメントは控える。」としている。

専門家はどうみるのか。 SNS や若者の動向に詳しいマーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.(ラボ)」所長の長田麻衣さん (30) は、「情報収集もコミュニケーションも SNS で行う若者にとって世界の中心は SNS。 そこから撤退するのは大きなリスクで、相当な覚悟が必要です。 ブランドの世界観を確立している LUSH やボッテガだからこそできた。」 長田さんによると、若い世代は企業が社会課題に取り組む姿勢や商品の背景にあるストーリーに共感し、商品を選ぶ傾向があるという。

LUSH はこれまでも動物実験に反対するなど、現代社会が抱える課題に向き合ってきた「エシカル(倫理的)な企業」というイメージが定着している。 長田さんは「今回の判断は LUSH の世界観と一貫している。 より多くの共感を生むことにつながるかもしれない。」 ただ、「脱 SNS」の動きが他の企業に広がるかについては懐疑的だ。 「より多くの人が SNS をめぐるストレスやダメージを自覚するようになったら変わるのかもしれないが、数年以内にはないと思う。 国内の現状では SNS が企業と消費者にとって不可欠なツールになっている。」 (宮野拓也、江戸川夏樹、伊木緑、asahi = 12-3-21)

〈編者注〉 上の "Dappi" の記事と併せて読むと、SNS のマイナスの面がよく分かります。 たとえば、中国を代表する「人民網」、独自の十分な取材力を持ち合わせているはずなのに、他の報道機関の記事を引用した記事が多く目につきます。 己の都合のよい記事を羅列することにより、それがメインストリームであるかのように、読む人をミスリードしていく! ナチスの宣伝戦と変わらない手法が未だまかり通っているのです。 とりわけ、昔の苦い経験を知らない世代には、それがすんなりと受け入れられていく怖さを、筆者も実感しています。


ヤフコメ書きまくった人が語る「快感」 丸ごとの非表示には問題点も

ヤフーが、ヤフーニュースの記事にユーザーが意見や感想を書き込めるコメント欄(ヤフコメ)を記事単位で丸ごと非表示にする措置に乗り出した。 誹謗(ひぼう)中傷への対策を強化したという。 ただ、健全な投稿も読めなくなるなど、利用者の多いサイトだけに課題も指摘されている。 ヤフー広報室は、実際にコメント欄が非表示となった記事は 100 超と説明する。 10 月下旬に朝日新聞社などが配信した小室眞子さんと圭さんの結婚に関する複数の記事や、共同通信が同月に配信した韓国漁船転覆に関する記事など。 小室さん夫妻に関して 1 万 3 千件超のコメントがついた TBS の記事も含む。

ヤフコメをめぐっては、虚偽の内容を書き込み、名誉を傷つけたとして、罰金命令が出たケースもある。 大阪府高槻市の男性は、市議を中傷する投稿をしたとして名誉毀損罪で略式起訴され、茨木簡裁が今年 5 月に罰金 10 万円の略式命令を出した。 コメント欄は 2007 年に導入。 ネットの双方性を生かし、様々な意見を通じて多角的な視点を提供するのが狙いだ。 ヤフーのアカウントがあれば誰でも投稿でき、ID の一部が表示される。 読んだ人が「そう思う」か「そう思わない」を選ぶ機能もある。

ヤフーニュースはテレビや新聞など約 650 媒体が記事を提供し、月間 233 億ページビューを誇る。 コメント欄は 1 日約 32 万件の投稿がある。 だが誹謗中傷など不適切な投稿が問題になり、ヤフーは 14 年から人工知能 (AI) による監視を始めた。 18 年以降、「建設的かどうか」、「記事との関連度が高いか」、「読んだ人が不快に感じないか」といった基準で AI が点数化する仕組みを導入。 コメントの表示位置に反映させ、「関連度」や「不快」の点数が特に低い投稿や、過度な批判や誹謗中傷を含むコメントは削除もしており、1 日あたりの削除件数は 2 万件に及ぶ。

今回はより踏み込んだ。 不快度を判定する AI を活用して、過度な批判や誹謗中傷、差別、わいせつ、暴力的などの項目に該当する「違反コメント」が一定数を超えた時点で、その記事のコメント欄を丸ごと非表示にする。

専門家「安易に踏み切ったようにみえる」

ヤフーは導入にあたり、自社が設けた有識者会議のメンバーに相談。 慎重な意見も複数出たが、大筋では理解を得られたという。 メンバーで、IT 分野のルールに詳しい森亮二弁護士は「個々のコメントは誹謗中傷でなくても、大量に集まると集団リンチのようになるケースもあり、丸ごと非表示にするのもやむをえない」と理解を示す。 ただ、問題ないコメントも一緒に非表示にされるため、表現の自由の観点から「あくまでも例外的な緊急の対応」と指摘する。

ヤフーは、非表示と判断する詳しい基準を公表していない。 有識者会議の別のメンバーで、ネットの誹謗中傷の問題に詳しい国際大学 GLOCOM の山口真一准教授は「詳細を公表するとすり抜けて問題のあるコメントを投稿する人がいる可能性があり、今の対応はやむをえない。 ただ、透明性の確保は重要だ。 可能な範囲で非表示にいたった経緯を公表し、過剰な規制になっていないか検証できるようにする必要がある。」と指摘する。

外部の専門家はどう見るのか。 東京都市大学の奥村倫弘教授(ネットメディア論)は「個別の違反コメントへの対策が結局、追いついていないのではないか。 コメント欄を健全な議論の場にできなかったことから安易に閉じる措置に踏み切ったようにみえる。」と話している。(赤田康和、貞国聖子)

投稿者「自分なりの正義ゆえ」

誹謗(ひぼう)中傷対策のため、記事についたコメント欄を丸ごと非表示にする機能をもうけたヤフーニュース。 コメント欄で投稿者の ID をクリックすると、過去の投稿の内容や日時、「そう思う(いいね)」の総数を見られる。 数時間おきに投稿するユーザーもいる。 ユーザーはどんな動機で投稿しているのか。 ヤフコメに年間 150 本超を投稿してきたという男性会社員 (43) は「自分が議論を呼び起こしているという快感がある」と語る。 自身の投稿に返信が寄せられ、議論が交わされることもあるからだ。 政治や国際問題の記事にコメントすることが多い。 投稿についた「いいね」の数は計2万を超えるという。

最近は小室眞子さんと圭さん夫妻に関する記事にこう投稿した。 司法試験不合格のニュースについては、〈名誉職で生きて行くのだろう。〉 米国出発前に夫妻が都内で住んでいた部屋の家賃は〈全部税金 - -。〉 「名誉職」につくとか、家賃に税金が充てられたという内容はいずれも男性の推測だ。 「不確かな情報ではないか」と尋ねると、言葉を濁した。

男性は、他の投稿について通勤中や仕事の休憩時間などに熟読することが多い。 小室さん夫妻に対する他のユーザーの過熱気味の投稿については「不快だし、当事者は気の毒。」 それでも「しがらみのないネットだからこそ活発に議論できる。 コメント欄の非表示はやめてほしい。」と注文した。 自分の投稿は「国を良くしたいという自分なりの正義ゆえ」と力をこめる。 これまで自身の投稿は削除や非表示にされたことはないとも強調した。 (江戸川夏樹、asahi = 11-17-21)


フェイスブック、社名を「メタ」に変更 仮想空間「メタバース」に力

SNS 世界最大手の米フェイスブック (FB) は 28 日、社名を「メタ」に変更すると発表した。 同社は「メタバース」と呼ばれる仮想空間分野への巨額の投資を発表しており、メタバースに注力する姿勢を鮮明にした。 FB は投稿の扱いなどで批判が強まっており、ブランドイメージを改善する狙いもあるとみられる。 同社によると、従来の FB や写真投稿アプリ「インスタグラム」などのサービス名は残し、新たな「メタ」という社名の下に置くという。 FB は「我々の会社の構造は変わらない」としたうえで、今後はアプリ部門と、仮想空間分野を手がける「リアリティーラボ」の二つの部門に分けて業績を公表するという。

マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者 (CEO) は同日のイベントで社名変更を発表し、「メタバースはインターネットの新たな章だと信じている。 それは私たちの会社にとっても新しい章になる。」と話した。

ザッカーバーグ氏「将来、数十億人が買い物する場に」

「メタバース」は、仮想現実 (VR) 端末などを使って、買い物やゲームができる仮想空間を指す。 ザッカーバーグ氏はメタバースについて「FB を創業する前から作りたかった」と語っており、将来は「数十億人が、数千億ドルのデジタル買い物をする場になるだろう」と強調した。

同社は今年、メタバースに 100 億ドル(約 1.1 兆円)規模を投資するとしており、その後数年でさらに投資を増やすという。 FB は 2014 年、VR 会社「オキュラス」を買収し、積極的な投資を続けてきた。 FB は 17 日、VR 強化のため、欧州連合 (EU) で高いスキルをもった技術者らを今後 5 年間で 1 万人採用する方針を明らかにしている。 批判の高まりも意識してか、ザッカーバーグ氏は 28 日、メタバースの製品を展開していくうえで、プライバシーや安全性にも配慮する点を強調した。 (サンフランシスコ = 五十嵐大介、asahi = 10-29-21)


10 月 29 日はインターネットの誕生日 2021 年で 52 歳に

今や生活には欠かせないインフラとなったインターネット。 10 月 29 日は、そんなインターネットが生まれた誕生日であり、2021 年で 52 歳を迎える。 インターネットの原型とされているのは、「ARPANET」と呼ばれる米国の国防総省の軍事ネットワークだ。 ARPANET は、世界初のパケット通信ネットワークとして誕生し、その最初の通信を実施したのが 1969 年 10 月 29 日であるため、この日がインターネットの始まりといわれている。

初めてのインターネット通信は、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) とスタンフォード研究所(現在の SRI インターナショナル)の間で実施した。UCLA からスタンフォード研究所に対し、「LOGIN」という文字を送ろうとしたが、最初の 2 文字を送った直後にシステムがクラッシュ。 そのため、「LO」の 2 文字がインターネットが初めて表示したメッセージであるという。

この誕生日に際して、Twitter 社は「インターネットさん、お誕生日おめでとうございます!! あなたがいないと生きていけません!」と投稿しており、他にもクロス新宿ビジョンにて放映中の「新宿東口の猫」やインターネットを使った事業社たちなど、多くの人が祝福のメッセージを送っている。 (松浦立樹、ITmedia = 10-29-21)


東京オリンピック・パラへのサイバー攻撃 4.5 億回 ロンドンの 2 倍

NTT と東京五輪・パラリンピック組織委は 21 日、今夏の大会運営に関わるネットワークシステムが大会期間中に 4 億 5 千万回のサイバー攻撃を受けたと明らかにした。 一部のスポーツ団体のウェブサイトが改ざんされる事例などはあったものの、システム全体で「実害はほぼなかった」という。 五輪・パラリンピックそれぞれについて、開会式から閉会式までの大会期間中の集計。 競技関連や大会事務、公式ウェブサイトなどに対して確認された攻撃回数を合計した。

比較可能な2012年のロンドン大会と比べると2倍強の多さだとしている。 東京大会はコロナ禍で開催が 1 年延期された。 この間、パソコンやサーバーのデータを暗号化して復元の引き換えに身代金を要求する「ランサムウェア」攻撃が広がるなどの環境変化があったという。 NTT は東京大会で国内最上位スポンサーの「ゴールドパートナー」で、通信サービス分野で大会運営を支えた。 協力会社を含め、総勢 1 万人が関わったという。 (山本知弘、asahi = 10-21-21)


「投票します」二階堂ふみさん、小栗旬さんらの動画 発起人の思いは

19 日公示、31 日投開票の衆院選を前に、二階堂ふみさん、菅田将暉さんら 14 人の俳優やミュージシャンらが投票を呼びかける動画がユーチューブに投稿され、話題を集めている。 「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」と題した 3 分半ほどの動画で、16 日に投稿された。 冒頭、まっすぐこちら側を向いた二階堂さんが「これは広告でも政府の放送でもなく」と語りだし、続いて仲野太賀さんが「僕たちが僕たちの意思でつくった映像です」、さらに滝藤賢一さんが「僕たちの投票への思いを話します」と続ける。

ほかの参加者たちも次々と画面上に現れ、「若者の、わたしたちの世代の投票率がすごく低い」、「こんだけしか投票率ないのに決まっちゃうんだ」、「まず、意思を示さないと」、「その世代が軽んじられるっていうことだから」などとメッセージを続ける。 そして、それぞれが「投票します」と宣言した上で、最後は全員で声をあわせて「投票はあなたの声だ」と結ぶ。 ほかに参加しているのは、秋元才加さん、安藤玉恵さん、石橋静河さん、小栗旬さん、コムアイさん、Taka さん、橋本環奈さん、前野朋哉さん、ローラさん、渡辺謙さん。

「政治について普通に話せる世の中に」

この動画は「いっさいの政党や企業に関わりのない、市民による自主制作プロジェクト」として、映像作家ら 3 人が発起人となって企画。 このうち映像作家の関根光才(こうさい)さん (45) と映像プロデューサー菅原直太さん (56) が 18 日、朝日新聞の取材に応じた。 2 人は数年前から、投票率の低さに問題意識を持っていたという。 「影響力のある俳優やミュージシャンと動画を発信したらより多くの人に伝わるかもしれない」と 7 月下旬ごろから、衆院選を見据えて構想してきたという。

今回の衆院選は特に「自分たちの生活と政治が地続きであると多くの人が感じた」コロナ下の選挙で。「今やるべきアクションだと思いました。(関根さん)」 応じてもらえそうな俳優やミュージシャンらに声をかけ、約 1 カ月で出演者が固まった。 関根さんが約 10 分ずつインタビューし、出演者本人の言葉を尊重することにこだわった。 誰かを批判したり説得したりするのではなく、大事なのは、自分がなぜ投票するのか。 全員の言葉をつなぎ合わせ、一つのメッセージを紡いだ。

好意的な反響が想像以上に寄せられているという。 菅原さんは「それでもまだ、元々政治に関心があった人のコメントが多いのかもしれない。 今後は関心がなかった人たちにも考えてもらえたら。 そして、政治について普通に話せる世の中になってほしい。」と話す。 動画 は 18 日夕までに 30 万回以上再生されている。 共感した人には「#わたしも投票します」のハッシュタグをつけて SNS でシェアするよう呼びかけている。

日本では政治的発言を批判されるケースも

今回の動画について、遠藤薫・学習院大教授(社会情報学)は「多くの芸能人が投票しているのだとネットで発信した意味はある」としつつ「『市民プロジェクト』という形は従来と違うが、主張は(選挙管理委員会の啓発などと)大きく変わらない」と指摘。 日本では芸能人の政治的な発言が批判されたケースもあるが、「政治的な立場を明示しなくても『コロナで困っているから改善してもらおう』といった出演者の実感が入っていたら良かった」と話した。 (野城千穂、asahi = 10-19-21)

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ヤフコメ、誹謗中傷対策を強化 違反コメント繰り返すと警告強めに

IT 大手ヤフーは 19 日、ニュースサイト「Yahoo! ニュース」のコメント欄の誹謗中傷対策を強化すると発表した。 違反コメントを繰り返すユーザーへの警告を強め、投稿停止になりやすくするほか、違反コメントの状況によっては記事のコメント欄自体を自動的に非表示にする。 ヤフーは 2007 年にコメント欄を始めたが、誹謗中傷などが相次いだため、18 年 6 月からは違反コメントを複数回投稿した人は投稿停止にしている。 平均で一日約 32 万件のコメントが投稿されるが、人の目のほか独自開発した AI (人工知能)も活用して 24 時間体制で監視しており、今も約 2 万件を違反コメントとして削除しているという。

対策強化として今回、違反コメントを複数回投稿した人に表示するメッセージを強める。 従来は「乱暴な言葉づかいや他の人が傷つく内容がないか考えてみましょう」だったが、「コメントの投稿ができなくなる可能性があります」に変える。 投稿停止にする対象も広げる。 19 日に公示された衆院選の期間中は、政治ジャンルの全ての記事のコメント入力欄に、公正な選挙を阻害しないように求めるメッセージも表示する。 (中島嘉克、asahi = 10-19-21)