人間国宝の備前焼がふるさと納税に 寄付額は 334 万円

岡山県備前市は「ふるさと納税」の返礼品に、人間国宝ら名工の備前焼作品を加えた。 「コロナに負けるな!備前焼特集」と銘打った年末まで限定の「特別返礼」で、コロナ禍で催事が減り苦境にある備前焼業界を支援し、若い世代に魅力を感じてもらう狙いだ。 目玉は人間国宝・伊勢崎淳さん (84) の大皿(寄付額 334 万円)と万年花生(まんねんはないけ、同 234 万円)。 吉本正作さんら県重要無形文化財保持者 7 人の作品 12 点も含め、計 54 品目 823 点が並ぶ。 予定寄付額は計約 3,400 万円で、返礼品代や手数料などの経費を除く約 1,600 万円を備前焼振興などに充てるとしている。

かつて備前市は、高額な家電製品などの返礼品を並べ、2016 年度は 27 億円超と全国トップクラスのふるさと納税を集めた。 だが、総務省から資産性の高い返礼品を廃止するよう求められ、17 年夏に見直した結果納税額は激減し、19 年度は 1 億円台にとどまる。 総務省は返礼品の額は寄付額の 3 割以下にするよう各自治体に通知している。 今回の伊勢崎さんの作品に設けた寄付額「334 万円」は、この通知に従って定めたそうだ。 田原隆雄市長は「人間国宝、新進気鋭の若手作家らの作品で備前焼と備前市の魅力を再発信し、応援してくれるファンを増やしたい」と話している。 (高橋孝二、asahi = 10-18-20)


ふるさと納税からの除外取り消し 大阪・泉佐野市、逆転勝訴

ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の決定は違法だとして、市が取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第 3 小法廷(宮崎裕子裁判長)は 30 日、除外決定を違法として取り消した。 新制度に参加する要件を定めた総務省のルールは違法で無効だと判断。 国勝訴とした大阪高裁判決を破棄し、泉佐野市の逆転勝訴が確定した。 裁判官 5 人全員一致の結論。 泉佐野市は今年から改めて新制度に参加できる道が開けた。 高市早苗総務相は「判決内容を精査した上で、判決の趣旨に従い、できるだけ早く必要な対応を行う」とコメントした。 (kyodo = 6-30-20)



ふるさと納税の和牛「ほとんど脂身」 SNS で批判殺到

宮崎県美郷(みさと)町のふるさと納税返礼品として送られた宮崎県産和牛について、SNS 上に「ほとんど脂身」とする投稿がアップされ、ネット上で町への批判が広がっている。 町はホームページ (HP) におわびを掲載した。 批判が集まった返礼品は、宮崎市の食肉加工販売会社が扱う「宮崎県産黒毛和牛薄切り 800 グラム」。 返礼品を受け取った男性は「ほとんど脂身の物が送られてきました」などと返礼品の写真を付けて 5 日夜、ツイッターに投稿。 ネットには町などへの批判が相次いだ。

町によると、本来ミンチ肉に使うものを間違えて梱包(こんぽう)した可能性があるといい、工場の人手不足からチェック態勢が十分でなかったことが原因とみられるという。 町は HP で「到底ふるさと納税返礼品として相応しくない品質のものをお届けし、誠に申し訳ありませんでした。 宮崎県民の皆様及び宮崎県内で畜産業を営まれている皆様におかれましても、大変なご迷惑をおかけして、申し訳ありません。」と謝罪した。

この和牛を受け取った投稿者の男性にも電話し、謝罪した。 町によると、男性に送った品は、7 月から 41 件の注文があった。 町はほかの注文者にも、電話やメールで品物の状況を確認し、希望に応じて代替品の送付や、寄付金の返還などの対応を取るという。 また、原因究明や品質の確保ができるまで、この業者が扱う返礼品の寄付受け付けを停止するとした。 町のふるさと納税の返礼品は、牛肉のほか、鶏肉や栗のスイーツなどを扱っている。 昨年度は 2,103 件、4,451 万円の寄付が集まった。 (大山稜、asahi = 10-7-19)


ふるさと納税の泉佐野除外「地方分権守るため」 総務相

ふるさと納税制度の対象自治体から大阪府泉佐野市を除外する判断を総務省が維持したことについて、高市早苗総務相は 4 日の閣議後会見で「地方分権を守るための対応だ」と述べ、妥当性を強調した。 高市氏は「一部の団体が制度の趣旨に沿わない方法により募集を継続して、多額の寄付金を獲得したという状況が生じた」と指摘。

「返礼品の価格は寄付額の 3 割以下」などとする地方税法改正に至った経緯を説明した上で、「新制度の下で制度趣旨に沿った運用を実現したい」と話した。 総務省と泉佐野市の対立をめぐっては、国地方係争処理委員会が 9 月、同市を制度から除外した根拠に問題があるなどと再検討を勧告。 総務省は 3 日、除外の判断を維持する方針を明らかにした。 (asahi = 10-4-19)


ふるさと納税「仮免許」市町村、総務省が制度対象に認定

総務省は 19 日、北海道森町や和歌山県湯浅町など 43 市町村をふるさと納税制度の対象自治体として認める、と発表した。 43 市町村は 6 月に同制度が認可制に移行した際、同省の通知に反したり、基準を超える額の寄付を集めていたりしたとして、4 カ月間の「仮免許」扱いになっていた。 高市早苗総務相が同日、地方税法に基づく指定を行った。 他の市町村と同様に、10 月から来年 9 月まで制度を使える。

同省は今年 6 月の制度変更にあたり、「返礼品は寄付額の 3 割以下の地場産品に限る」などとした通知への違反度合いを調査。 43 市町村は通知への違反があったうえで、2 億円超 50 億円以下の寄付を集めたとして、制度を利用できる期間を 9 月末までに限定していた。 今回、「仮免許」期間中の寄付や返礼品の状況などを確認し、「指定基準を満たした(同省の担当者」)と判断した。

ふるさと納税制度をめぐっては、通知に違反し、50 億円超の「著しく多額の寄付を集めた」として、同省は静岡県小山町や大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の 4 市町を制度対象外にした。 このうち、泉佐野市は「除外は無効」と主張。 同省の第三者機関・国地方係争処理委員会が今月 2 日、総務相に除外の内容を見直すよう勧告を出している。 (asahi = 9-19-19)

19 日に指定をされた 43 市町村は以下の通り。

北海道森町・八雲町 / 宮城県多賀城市・大崎市 / 秋田県横手市 / 山形県酒田市・庄内町 / 福島県中島村 / 茨城県稲敷市・つくばみらい市 / 新潟県三条市 / 長野県小谷村 / 岐阜県美濃加茂市・可児市・富加町・七宗町 / 静岡県焼津市 / 大阪府岸和田市・貝塚市・和泉市・熊取町・岬町 / 和歌山県湯浅町・北山村 / 岡山県総社市 / 高知県奈半利町 / 福岡県直方市・飯塚市・行橋市・中間市・志免町・赤村・福智町・上毛町 / 佐賀県唐津市・武雄市・小城市・吉野ケ里町・上峰町・有田町 / 宮崎県都農町 / 鹿児島市・鹿児島県南さつま市


ふるさと納税、泉佐野など 4 市町除外 6 月から総務省

総務省は 6 月に始まるふるさと納税の新制度で、静岡県小山町、大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の 4 市町の参加を認めない方向で調整に入った。 これまで過度の返礼品で多額の寄付を集めてきたためだ。 6 月 1 日からは4市町に寄付しても同制度の税優遇が受けられない。 4 市町と参加を辞退した東京都を除く 1,783 自治体は参加を認める方針だ。 地方財政審議会(総務相の諮問機関)の意見を聴いたうえで来週、最終的に判断する。

新制度では返礼品の調達費を寄付額の 3 割以下とすることや地場産品に限るといった基準を設け、適合した自治体を総務省が指定する。 昨年 11 月以降の寄付集めの状況をみて判断する。 4 市町は基準に合わない過度な返礼品を贈り、著しく多額の寄付を集めていた。 ほかの自治体に迷惑をかけたことを重くみた。

ふるさと納税は好きな自治体に寄付すると住んでいる自治体の住民税などが減る。 本来の趣旨は寄付を通じて故郷や世話になった自治体を応援したり感謝したりすることだが、一部の自治体が趣旨を逸脱して高額返礼品による寄付集めをするようになった。 これを規制するため、改正地方税法が 3 月に成立し、6 月に新制度に移行する。 (nikkei = 5-8-19)



ふるさと納税、偽サイト乱立 大幅「割引」うたい返礼品届かず 福岡県警が捜査

自治体に寄付すると税が軽減される「ふるさと納税」を巡り、寄付金の詐取を目的とする複数の偽サイトが存在することが明らかになった。 正規サイトの画像などを無断使用し、寄付金額の大幅な割引をうたうのが特徴だ。 福岡県では実際に金銭をだまし取られる被害も発生し、県警が詐欺容疑で捜査を始めた。 偽サイトに返礼品が掲載された自治体は全国に広がっており、正規サイトの運営者も対策に乗り出している。 ただ偽だと気付かれると閉鎖し新たなサイトを作っているとみられ、いたちごっこが続いている。 (山下俊輔、柿崎誠、蓬田正志、mainichi = 12-6-18)


返礼に iPad、ふるさと納税が急増 市は「地場産品」

福岡県行橋市へのふるさと納税による寄付額が飛躍的に伸びている。 8 月からタブレット端末「iPad」を返礼品に加えたことが後押ししており、市は今年度の寄付額を過去最多の 8 億 4 千万円だった昨年度の約 3 倍に上る 25 億円と見込んでいる。

市は 4 日開会の 12 月定例市議会に 19 億円を追加する一般会計補正予算案などを提案する。 今年度の寄付額について当初予算で 7 億 5 千万円と見込んだが、予想を超える寄付の増加に伴い、6 月定例会で一度修正。 ところが寄付の入金額は既に 16 億円を超え、見込み額を大きく上回った。 このため 19 億円をさらに加えることにした。 内訳は 13 億円を積立金とし、6 億円を返礼品などの経費に充てる。

市は好調な要因について返礼品を見直したことなどを挙げ、現在の返礼品の種類は約 1,100 件という。 10 月末現在の今年度の寄付額による返礼品人気ベスト 3 は、@ iPad (寄付額 4 億 4 千万円)、A アップルウォッチ(1 億 2 千万円)、B アップル TV (3,300 万円)と、行橋の特産品ではないアップル製品が独占。 特に iPad は 2 カ月ほどでトップに躍り出た。

返礼品については、総務省が「寄付額の 3 割以下」、「地場産品」を自治体に求めている。 豪華返礼品を見直す自治体もあり、佐賀県みやき町は 8 月に iPad などを取り下げた。 行橋市では 3 割以下は守ってきたが、地場産品の見直しは保留。 田中純市長は「我々は市内の企業や個人が業として扱っている物は地場産品というくくりでやってきた。 ルールが明確化されたら、それに従う。」と説明している。 上位を占めたアップル製品は市内業者が取り扱っている。 (久恒勇造、asahi = 12-2-18)


ふるさと納税に「裏メニュー」 監視逃れ? 週末だけ出没

ふるさと納税をめぐり、総務省が見直しを求めた「過度な返礼品」を、一部の自治体が「裏メニュー」のような形で用意していたことが、朝日新聞の調べでわかった。 鹿児島県南種子町は、ふるさと納税サイトには載せずに、寄付額の 5 割にあたる旅行券を返礼品として用意していた。 電話で問い合わせた寄付希望者にだけ、受け取り方法を指南していた。

静岡県小山町は、特定のふるさと納税サイトに時間限定で、寄付額の 4 割にあたるクオカードやアマゾンギフト券などを掲載。 主に土日に表示され、「10 月末で終了」としていた。 その神出鬼没ぶりから、ツイッターなどでは「闇ふるさと納税」、「総務省の目を逃れるためでは?」といった書き込みが相次いだ。 佐賀県みやき町も同様の返礼品を週末に掲載していた。 総務省は昨春以降、返礼品について、寄付額の 3 割超のものや、地場産品といえない家電や金券をやめるよう自治体に再三求めている。 しかし金券類は寄付者の人気が高いうえ、「なぜ 3 割なのか」と不満を抱く自治体も多い。 (asahi = 11-1-18)


返礼品 3 割超の自治体、ふるさと納税「対象外」 総務相

野田聖子総務相は 11 日午前の閣議後記者会見で、ふるさと納税で「過度な返礼品」を送っている自治体を制度の対象外とすることを検討すると表明した。 与党の税制調査会での議論を経て、来年の通常国会に地方税法改正案を提出する。 返礼品について「寄付額の 3 割以下」、「地場産品」とするよう求めた総務相通知を受け入れない自治体を対象外とする方向だ。

ふるさと納税は地域活性化を支援する目的で始まったが、家電製品や金券など豪華な返礼品を売りに寄付を募る自治体が増えたことから、総務省は昨春と今春、返礼品競争の是正を求める大臣名の通知を出した。 通知に強制力はなく、同省がこの日公表した実態調査の結果では、9 月 1 日時点で「3 割超の返礼品」を送っている自治体は全体の 13.8% の 246 市町村。 このうち 174 市町村は返礼品を見直す意向がなかったり、見直しの時期が未定だったりした。 「地場産品以外の返礼品」を送っている自治体は少なくとも 190 市町村だった。

ふるさと納税は、納税者が寄付先の自治体を自由に選ぶことができ、寄付額のうち 2 千円を超える分が住民税や所得税から控除される。 制度の対象外になると、その自治体に寄付をしても税控除が受けられなくなる。 野田氏は会見で「大変残念だが、見直し要請を行うだけでは自発的な見直しが期待できない」と指摘。 そのうえで「過度な返礼品を送付し、制度の趣旨をゆがめている団体は、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう見直しを検討する」と述べた。 (大久保貴裕、asahi = 9-11-18)


ふるさと納税、17 年度 28% 増 返礼抑制でも伸び続く

総務省は 6 日、2017 年度のふるさと納税による寄付額が 3,653 億円に達したと発表した。 前年度に比べて 28% 増えた。 増加は 5 年連続で、過去最高を更新した。 総務省が豪華な返礼品の自粛を要請した初年度で対応を見直す自治体も多かったが、制度自体の人気は根強い。 ふるさと納税は故郷や応援したい自治体に寄付できる制度として 08 年度に始まった。

町おこしや地域経済の活性化などに役立てるのが本来の趣旨だが、寄付を集めたい自治体が高額な返礼品を用意する競争が過熱。 総務省が 17 年 4 月に返礼品の価格を寄付額の 3 割以下にすることなど「良識のある対応」を求めた。 総務省によると、返礼割合が 3 割を超える市区町村は 17 年 8 月時点で約 840。 18 年 6 月には約 330 に減った。 16 年度に全国 2 位の 72 億円を集めた長野県伊那市は家電による返礼をやめた結果、17 年度の寄付受け入れ額が 4 億円台に減った。

ただ全体として「裾野が広がった」と同省は分析する。 17 年度の寄付件数は 36% 増の 1,730 万件で、件数の伸びは金額の増加幅を上回る。 募集段階で寄付金の使途を選べるようにしたり、活用実績を公表したりする自治体が増え「制度が浸透してきた」とみている。 一方、返礼割合が 3 割を超えたり、地場産品以外の返礼品を送ったりと、見直す意向のない自治体も一部で残る。 ふるさと納税の募集や受け入れにかかる経費も、全自治体合計で 2,027 億円と寄付額の 55.5% と高止まりしている。 (nikkei = 7-6-18)



返礼品見直すと … ふるさと納税 9 割減 岡山・備前市

全国トップクラスのふるさと納税の寄付額があった備前市が、高額な返礼品などを 8 月から見直した結果、件数・金額ともに大幅に減る見通しであることが分かった。 年間で 9 割程度減るとの事前予測があったが、8 月の 1 カ月は過去の月平均と比べて 9 割ほど減っていた。

14 日の市議会 9 月定例会の一般質問で、橋本逸夫議員らがふるさと納税について質問した。 市によると、2015、16 年度の 2 カ年とも、ふるさと納税への申込件数は年間 3 万件台で、寄付額は年間約 27 億円超に達した。 だが市は今年 8 月から国の指導などを受け電子機器や自転車といった「資産性の高いもの」や、返礼品の調達割合(送料別)が寄付額の 3 割を超える「調達割合の高いもの」を見直した。

その結果、制度の見直しが始まった 8 月 2 - 31 日に受け付けた件数は 480 件で、寄付額は 2,389 万円になった。 クレジットカードなどの決済が済んでいない「見込み」であるため単純比較はできないが、見直し前の 2 カ年の月平均と比べると、件数・金額とも 9 割ほど減少したかたちだ。 田原隆雄市長は答弁で 8 月の暫定値に関して「今後も制度の変更がなければこの程度で推移する」との見通しを示した。 市は見直しに伴い寄付金の使途に「旧閑谷学校の魅力発信」や「八塔寺ふるさと村の活性化」などを加え、市民らが市外に手紙を送る際に納税への協力を呼びかける「レター作戦」をしている。 (雨宮徹、asahi = 9-16-17)


ふるさと納税に真珠、見直しへ 鳥羽市「苦渋の選択」

三重県鳥羽市は、ふるさと納税の返礼品として提供している真珠製品の取り扱いを 11 月末で取りやめることを決めた。 中村欣一郎市長が 24 日の記者会見で明らかにした。 除外を求める総務省の指摘に「地場産品の振興につながる」と反発してきたが、一転、見直す。 志摩市も 11 月をめどに真珠製品を除外する方針だ。 中村氏は「真珠は返礼品としてうってつけと考えているが、総務省の指導が非常に強いので、苦渋の見直しをする」と述べた。 代わりに、真珠玉をブローチに加工するといった体験型の返礼を検討しているという。

鳥羽、志摩両市はアコヤ真珠のネッレスやピアスなどの真珠製品を返礼品とし、総務省から「資産性の高い宝飾品」と直接指摘され、見直しを求められた。 これに対し、中村氏と志摩市の竹内千尋市長は 6 月に同省を訪れ「真珠は地場の重要産品」と主張し、返礼品として認めるよう要請した。 だが、同省は「ふるさと納税の趣旨に反する」と真珠の除外を強く求めていた。 三重県では伊勢市や南伊勢町も真珠製品を返礼品としているが、県を通じて同省から除外を求められ、「ほかの自治体と足並みをそろえる(同町)」などと 9 月以降に応じることを決めている。 (荻野好弘、asahi = 7-24-17)

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返礼品に真珠「ダメ」、志摩・鳥羽が反発 ふるさと納税

ふるさと納税の返礼品として、真珠は是か非か。 返礼品競争を抑えるため、総務省が「資産性の高い宝飾品」として除外するよう通知したが、全国 3 位の生産地・三重県の自治体は「地場の特産品だ」と反発する。 他の生産・加工地にも波紋が広がっている。 「地場産業の活性化のため真珠製品は外せない。」 29 日、志摩市の竹内千尋市長と鳥羽市の中村欣一郎市長が総務省を訪れ、真珠の返礼品を認めるよう要請した。 だが、総務省は「ふるさと納税制度の存続のため趣旨に沿った対応を」と譲らなかったという。

総務省は寄付額が全国上位で金券類や貴金属などを扱う自治体を調査。 5 月下旬、「制度の趣旨に反する」と具体的な返礼品を示して 100 以上の自治体に通知し、見直し時期などの報告を求めた。 志摩、鳥羽両市の真珠製品もやり玉に挙げられた。 志摩市は 2 万円以上の寄付に、養殖漁協を通じて調達するペンダントやピアスなどのアコヤ真珠製品を贈っている。 50 万円以上には特選品を用意している。

同市は英虞湾の真珠養殖で知られ、県内生産の大半を占める。 昨年度の寄付総額 7 億 8 千万円のうち、返礼に真珠製品を選んだ人の寄付額は 3 割強を占めた。 竹内市長は「真珠は地域伝統の水産物。 1 次産業の振興につながる返礼品だ」と主張する。 (荻野好弘、asahi = 6-30-17)


ふるさと納税「豪華返礼品」見直しを 自治体に個別通知

ふるさと納税の返礼品として豪華な品を送り続けている約 100 自治体に対し、総務省は改めて見直しを求める通知を個別に出した。 通知は 24 日付で、6 月 5 日までに今後の方針などを回答するよう求めている。 高市早苗総務相は 26 日の会見で「返礼品競争が過熱しているという認識が浸透しつつある。 さらに認識を広げるため、対応を個別に確認する。」と述べた。

総務省は 4 月 1 日付の通知で、@ 家電や家具といった資産性の高い返礼品のとりやめ、A 返礼品の金額を寄付額の 3 割以下に抑える - - などを求めた。 強制力はなく、対応は各自治体の判断次第だった。 同省はこの通知後、全自治体の対応を調査。 通知の趣旨にそぐわないと判断した約 100 自治体に再考を求めている。

ただ、自治体には戸惑いも広がる。 2 度目の通知を受けた福岡県大川市は、返礼品として地元産の家具を扱っている。 担当者は「家具づくりは 480 年の伝統があり、自慢できる特産品。 地域の事情も理解してほしい。」と説明。 26 日時点で見直しは検討していないという。 (久永隆一、asahi = 5-28-17)


ふるさと納税、国通知に従う自治体・止まれない自治体

「ふるさと納税」の返礼品をめぐり、各地の自治体が困惑している。 返礼品の価格を寄付額の 3 割以下に抑えるよう、総務省が 4 月に通知したためだ。 豪華な返礼品などで過熱する自治体間競争の沈静化を狙ったものだが、「突然止まれと言われても、止まれない」と従わない自治体もある。 ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい自治体に寄付すると、寄付額から 2 千円を引いた額が所得税や住民税から控除される仕組みだ。 2015 年度の寄付額は前年度の 4 倍を超える 1,653 億円に膨らんだ。 大きな要因は寄付した人に自治体が贈る返礼品だ。

総務省の集計では、15 年度に自治体が返礼品の調達に充てた費用は計 632 億円。 寄付額の約 4 割にのぼる。 総務省は、ふるさとを応援するという本来の趣旨に基づく対応を徹底させるため、資産性の高い返礼品をやめて、返礼品の価格を寄付額の 3 割以下とするよう 4 月 1 日に通知した。

通知に強制力はないが、自治体は対応に追われている。 15 年度に全国 1 位の寄付額 42 億円、16 年度は 73 億円を集めた宮崎県都城市。 宮崎牛や黒豚といった返礼品の「質と量」が注目を浴びたが、6 月から肉の種類を変更するなどして返礼品の価格割合を約 6 割から 3 割に下げる。 池田宜永市長は「いろいろな思いはあるが、国の方針なので受け入れる。 これを機に賛否両論の議論が落ち着き、制度として安定してほしい。」と話す。

マグロやカツオの返礼品が人気で寄付額が全国 2 位だった静岡県焼津市も、中野弘道市長が「3 割に下げる」と宣言した。 頭を悩ませているのが少額寄付への返礼品。 5 千円以上の寄付への返礼品に「マグロたたき身セット」などがあるが「3 割の 1,500 円分だと見劣りしてしまう。(ふるさと納税課)」 寄付額を上げるか量を減らすか、見直し作業は早くても 7 月までかかるという。

長野県伊那市は通知を受けて、液晶テレビといった 10 万円以上の家電などを返礼品から外したが、10 万円未満の家電は「資産性は高くない」として残した。 しかし、高市早苗総務相から「通知の趣旨にそぐわない」と記者会見で指摘され、今月 9 日、返礼品から家電を外すことを表明した。 「すべて納得したわけではないが、あそこまで指摘を受けたからには、見直すしかなかった」と担当者は話す。

15 年度の寄付額上位 10 自治体のうち、9 自治体が返礼品の価格を見直すか、見直す方針を固めている。 4 位の鹿児島県大崎町の担当者は「うちはこのままでいきたい」と話す。 マンゴーなど約 400 種類の返礼品の仕入れ値は寄付額の 3 割余りという。

一方で、総務省の通知に従わない自治体もある。 地元産の米を返礼品にしている長野県南部の阿南町では、寄付額に対する米の価格は 5 割を超える。 しかし、担当者は「地元産の米は価格を下げるつもりはない。」 理由は農業支援だ。 町が米の買い取りを決めた際、新たに田んぼを借りたり作付面積を広げたりした農家がいるという。 「農家を苦しめるような変更は考えられない」と訴える。 (asahi = 5-13-17)


ふるさと納税 返礼品に「高齢者の見守り活動」 栃木・小山

ふるさと納税の返礼品をめぐる議論が活発になるなか、栃木県小山市は、市内の高齢者の住宅に定期的に乳酸菌飲料を届けて見守り活動を行う取り組みを新たな返礼品とすることになりました。 ふるさと納税に対する栃木県小山市の新たな返礼品は、乳酸菌飲料の販売会社と連携して行うもので、25 日小山市の大久保寿夫市長と販売会社の間で覚書が取り交わされました。

新たな返礼品は小山市内に高齢の親などがいる人を主な対象と想定していて、2 万 7,000 円以上の寄付があった場合、指定された高齢者の住宅に販売員が 1 週間か 2 週間に一度訪ねて、商品を届けるとともに問題が起きてないかなどを確認するということです。 販売員は、見守り活動の結果を毎回、寄付をした人にメールで報告するほか、異変があった場合には市にも連絡する仕組みです。

ふるさと納税の返礼品をめぐっては、今月 1 日、総務省が自治体間の競争を抑えようと全国の自治体に通知を出したことを受けて議論が活発になっていて、小山市の大久保市長は、「この返礼品を活用すれば、離れて暮らす両親などの安否確認ができるので、多くの人に利用してほしい」と話していました。 (NHK = 4-25-17)


ふるさと納税、返礼品は寄付金の 3 割まで 総務省通知へ

ふるさと納税の返礼品をめぐり、総務省は全国の自治体に対し、寄付額に対する返礼品額の比率を 3 割までとするよう要請する方針を固めた。 自治体間で返礼品の競争が過熱しているため、初めて上限の目安を示す。 4 月 1 日付で通知を出す。 ふるさと納税は、一部の自治体がより多くの寄付を集めようと金券や高額な家電などを返礼品に加えている。 総務省によると、2015 年度の寄付総額 1,653 億円のうち、4 割超の約 675 億円が返礼品調達などに使われているという。

総務省は、調達コストが高いため、必ずしも地域活性化という本来の目的に充てられていない事例があると判断。 改善に向けて専門家や自治体の担当者から聞き取りを重ねてきた。 その上で、▽ 返礼品額の上限の目安を 3 割とする、▽ 宝飾品や時計、カメラなどを返礼品に加えない、▽ 高額な物品は返礼品にしない - - の 3 点を盛り込んだ通知を出す方向だ。 通知に強制力はないが、大幅に上回る自治体には個別に働きかけるという。 (笹川翔平、asahi = 3-23-17)


ふるさと納税の返礼品、まだ問題あり 高市総務相

高市早苗総務相は 14 日の閣議後の記者会見で、ふるさと納税の返礼品として、一部の自治体が換金性の高い金券などを出していることについて、「ふるさと納税の趣旨に反するような返礼を行わないよう要請しているが、通知に照らして適切でない事例もある」と述べ、こうした自治体に見直しを促す考えを明らかにした。

総務省は昨年4月、全国の自治体に対して、金券や家電など転売しやすいものは返礼品としないよう求める通知を出した。 ただ、千葉県勝浦市が寄付金額の 7 割分の額面の商品券を用意するなど、換金性の高い返礼品の例は今なおある。 高市氏は「地方団体が自らの判断と責任のもとで、良識ある対応を行っていただくことが重要だ」と指摘。 「地方団体からも実情や意見を伺いたい。 あらゆる課題を一度洗い出し、どのように改善できるか検討していく。」と語った。 (笹川翔平、asahi = 2-14-17)


ふるさと納税、4 倍超の 1,653 億円に 寄付額 1 位は?

2015 年度に全国の自治体が受け取った「ふるさと納税」の寄付額が、前年度の 389 億円の 4 倍を上回る 1,653 億円となった。 14 日、総務省が発表した。 自治体が豪華な返礼品を競い、国も 15 年度から制度を使いやすくしたため、寄付が急増している。 ふるさと納税は、自治体に寄付すると、2 千円を超える分が所得税と住民税から減税されるしくみ。 事実上「2 千円で豪華な返礼品がもらえる制度」となっている。 返礼品をカタログ感覚で選べる民間業者のサイトや、ガイド本などが普及し、ブームに火がついた。

寄付額の上位には、返礼品が注目を集めた自治体が並んだ。 首位は、高級和牛や焼酎が売りの宮崎県都城市で 42 億 3,100 万円。 2 位は、魚やタブレット型端末「iPad」が話題を集めた静岡県焼津市で 38 億 2,600 万円。 5 位の岡山県備前市も家電が人気を集めた。 返礼に金券を贈っていた千葉県大多喜町は 18 億 5,500 万円で 12 位だった。 (asahi = 6-15-16)


控えめ返礼品あだに … ふるさと納税赤字、地方自治体でも

自治体に寄付すると大半が減税される上に特産品などを受け取れる「ふるさと納税」で、寄付の受け入れ額から減税額を差し引いた地方自治体の収支を集計したところ、2014 年度分は上位の 10 自治体に「黒字」の約 24%、100 自治体に黒字の 7 割が集中した。 「地方を応援する」ねらいで導入されたが、赤字だった地方都市もある。

朝日新聞が情報公開請求で、14 年のふるさと納税に伴う自治体ごとの住民税の減税額を入手。 総務省が昨年秋に公表した自治体ごとの 14 年度の寄付受け入れ額から差し引いて、収支を集計した。 返礼品にかかる費用は含めていない。 全国 1,741 自治体のうち黒字は 1,271 自治体で計約 330 億円。 1 位は魚介類の返礼品が人気の長崎県平戸市で約 14 億 6 千万円。 佐賀県玄海町、北海道上士幌町など地元の肉や魚を贈る自治体が続いた。

「赤字」の自治体は都市部に多く、横浜市が約 5 億 2 千万円で首位。 東京都世田谷区、港区や名古屋、大阪、福岡各市が上位に入った。 地方でも、返礼品競争に慎重な自治体が赤字となり、宮崎市は約 90 万円しか寄付が集まらず、約 2 千万円の赤字。 平戸市のある長崎県では、県内の 3 割にあたる 6 市町が赤字だった。 (青山直篤、asahi = 4-13-16)


中トロにイチジク … ふるさと納税の返礼品をリニューアル 和歌山市

出身地など応援したい自治体に寄付すると、税金が控除される「ふるさと納税制度」について、和歌山市は 1 万円以上を寄付した市外在住者への返礼品を大幅に増加した。 今回のリニューアルで生マグロや旬の食材が増え、返礼品総数は 105 品目となった。

ふるさと納税は、都会への税収の偏りを是正する目的で創設され、同市では平成 20 年度から導入。 当初は明治後期から昭和初期の市内を写真などで紹介した本「あの頃の和歌山」シリーズの 1 冊を贈っていたが、昨年 4 月に肉や和歌山ラーメンなどを追加し、同 8 月にも品目を追加。 今回は計 68 品目を増やす 3 度目の大幅なリニューアルとなった。

今回のポイントは、▽ 梅やイチジク、ミカンなどの旬の食材を期間限定で提供、▽ 無縫製ニットや、ふくらみながら焼き上がる冷凍パンなど市内企業の技術を使った商品、▽ 宿泊券などの新たなジャンルの商品 - などの追加。 市財政課によると、これまでの寄付は 24 年度には 21 件 100 万円、25 年度には 20 件 230 万円、26 年度には 40 件 81 万円。 初めてリニューアルした昨年度は 1,166 件 2,510 万円の申し込みがあったという。

担当者は「市の良さを市外の人に知ってもらうきっかけになってほしい。 今後も返礼品を増やす方針なので、市内の技術や商品の応募を呼びかけたい。」としている。 問い合わせは同課ふるさと納税担当 (073・435・1300)。 (sankei = 4-12-16)


ふるさと納税で起業支援を = 地域おこし隊が事業発表

総務省は 11 日、都市から過疎地に移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の起業を支援するため、ふるさと納税を通じて寄付を募る仕組みを導入した。 東京都内でこれを PR するイベントを開き、愛媛県西予市など 3 市町の隊員らが空き店舗を活用したカフェの開店といったプロジェクトを発表し、協力を求めた。 同省などは同日、隊員を受け入れる自治体に寄付すると、隊員の起業資金に充てられるサイトの運用を始め、3 市町の事業を掲載した。 資金不足に陥りがちな隊員を支援し、現地に定住しやすくする狙いだ。

西予市の協力隊員、藤川朋宏さん (32) は、にぎわいの拠点となるカフェの改装費用 300 万円を集めたいと提案。 「寂れた街並みを元気づけたい」と訴えた。 岡山県真庭市の隊員は海外の若者が里山生活を体験できるシェアハウス、高知県越知町の元隊員は観光客が宿泊できるゲストハウスの開設をそれぞれ説明した。 (jiji = 4-11-16)


返礼品のヘラクレスオオカブト品切れ ふるさと納税

三重県名張市は、ふるさと納税の返礼品に加えたばかりのヘラクレスオオカブトの受け付けを 1 週間で終了した。 申し込みが予想以上に多く、繁殖が追いつかないと判断した。

市内の繁殖業者が育てたオスを 5 万円以上の寄付で体長約 14 センチ、3 万円以上で体長約 13 センチを贈る。 1 日に受け付けを始めたところ、7 日までに計 18 件の申し込みがあり、「月数件程度」との市の想定を大きく上回ったという。 申し込み済みの分は、発送する。 やはり 1 日に返礼品に加えた同じ業者のオオクワガタも近く取りやめるという。 市の担当者は「変わり種として注目され、名張市の名前を知ってもらえたとは思う」と話す。 (asahi = 4-9-16)


ふるさと納税事業を拡大する JTB、マーケティング戦略に期待できる効果とは?

大手旅行会社の JTB が、ふるさと納税に関連する事業を拡大させている。 同社は 2014 年からふるさと納税の情報サイト「ふるぽ」を運営しているが、これに加えて先月には、全国 1,788 自治体のふるさと納税に関する情報を掲載するウェブサイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクとの業務提携を発表。 今後同社は様々な協業を予定し、また同社のマーケティング戦略においてふるさと納税関連事業がどのような位置づけにあるのか。 今回の協業の責任者である JTB 西日本 ふるさと納税事業推進室 室長の西田匡志氏にお話を伺った。

体験型の返礼品を生み出すことで、地方への人口流入を増やす

ふるさと納税は、希望する地方自治体を選んで寄付を行うと、寄付額の一部が所得税、住民税から控除できるほか、返礼品として寄付先の自治体から特産品などをもらうことができるという仕組みだ。 総務省がまとめたデータによると、2014 年は利用者数 13 万人、寄付総額 142 億円と利用者が急増している。 返礼品には地元で生産された食品にとどまらず、地元の工場で生産されたパソコンなど高価な返礼品も増加傾向にあり、そのお得感から注目が年々高まっているのが現状だ。

ただ、こうした返礼品の大部分を占めるは "モノ" であり、旅行やアクティビティといった体験型の返礼品はわずか 1% しかないのが現状。 ふるさと納税が拡大しても地方への人口流入に直接的な効果が期待できないという課題がある。 地方自治体にとっては、寄付の増加によって税収は確保できても、街に人が集まらないのだ。

西田氏によると、今回 JTB とトラストバンクが協業するポイントのひとつは、こうした課題にあるのだという。 「地方自治体からは、地産品に注目してもらいたいというニーズのみならず、"わが町に来てほしい" というニーズは高い。 今回の協業では、トラストバンクや地方自治体と共同で、ふるさと納税の返礼品としてオリジナルの旅行商品や地域限定の旅行クーポンなどを企画・開発していきたい。」と西田氏は語る。

具体的には、既に「ふるさとチョイス」では多数の自治体で旅行商品やクーポンを返礼品として掲載しているほか、今後は同社が法人向けに提供しているパックツアー「地恵のたび」を、地方の魅力を再発見する旅行商品として消費者向けに展開していきたいとしている。

確かに、食品をはじめとした "モノ" の返礼品は、受け取って消費すればそれで終わり。 寄付先の地方自治体との関係もそこで途切れてしまう。 しかし、寄付先である地域を旅するという返礼品であれば、旅行の中で生まれる消費から様々な経済効果が生まれ、また地域の魅力に触れることでエンゲージメントが生まれ、長く関係を築いてくれるファンを醸成することが可能になる。 ふるさと納税の税収額以上の効果が期待できる。 JTB の狙いは、ふるさと納税の返礼品をきっかけに、日本国内の移動人口を増加させることで地域を活性化させることなのだ。

西田氏によると、今後は返礼品としての旅行商品開発だけでなく、ふるさと納税の利用促進を目的として、都市部の JTB 店舗にふるさと納税の窓口を設置するなど店舗ネットワークの活用を進めていくほか、寄付先となる地方自治体には、ふるさと納税で生まれた税収の使い道として地域活性化に繋がる企画の提案などを行っていくという。

地方の魅力を再発見することで、プロダクトマーケティングに付加価値が生まれる

では、JTB は今回のふるさと納税事業を同社のマーケティング戦略の中でどのように位置付けているのだろうか。 西田氏はこの点について、「地域の持つ付加価値を伝えていくことは、旅行会社の使命。 ふるさと納税事業を通じて地方自治体と深く繋がっていくことで、これまでにない付加価値を持つ魅力的な旅行商品を開発できるのではないか。」と期待を語る。

競争が厳しい旅行業界にとって、付加価値のある旅行商品を生み出すことによる差別化、競争力の強化は大きな命題だ。 ふるさと納税事業から得られた知見をプロダクトマーケティングに活かすことによって他社にはできない旅行商品の企画ができるというのだ。

同社のこうした姿勢は、今回のふるさと納税事業が最初ではない。 同社は地方の人々と共同で地域の魅力を再発見し、旅行商品の開発やイベント企画などによって地方への人口流入を増加させることで地域経済を活性化させるという DMC (デスティネーション・マネジメント・カンパニー)戦略を掲げており、ここにふるさと納税事業を加えることで国内旅行のさらなる活性化を目指している。

西田氏は、「都市部や人気観光地と比べて地方には賑わいがなくホテルの稼働率も悪い。 しかし、行ってみることで気付く魅力、行かないとわからない魅力はたくさんある。 ふるさと納税がこうした地方の知られざる魅力に気づいてもらうきっかけになれば。」と語る。

企業のマーケティング活動にとって、消費の前提となる興味関心を喚起したり、文化を醸成したりすること、そして高まった興味関心に応える商品を開発することは、商品やサービスを売り込むこと以上に重要なことだ。 JTB がふるさと納税事業を通じて目指しているのは、体験型返礼品の拡大を通じて日本国内に眠る様々な未知の魅力への興味を喚起し、その関心に応える商品を開発すること。 都市部や人気観光地といった既存の旅行市場とは異なる、新たな市場を生み出すための挑戦だと言えるだろう。 (MyNavi = 4-8-16)


ふるさと納税、転売可能な返礼品の自粛要請へ 総務省

総務省は、お礼の品物をめぐって自治体間の競争が過熱している「ふるさと納税」について、転売しやすい商品券や家電などを返礼品としないよう求めることを決めた。 4 月 1 日、高市早苗総務相が自治体に通知する。 総務省は以前から「換金性の高いプリペイドカード」などを贈らないよう求めてきたが、判断は自治体任せになっている。

千葉県大多喜町は 2014 年 12 月、金券の「ふるさと感謝券」を返礼品に加えたところ寄付が急増。 町税収入は年 10 億円程度だが、15 年度は今年 2 月末までに 18 億円超のふるさと納税を集め、うち 96% が金券を求める寄付だった。 金券はネットオークションで売買され、東京に本店を置く業者から通販でブランド時計などを買うのにも使える。 (青山直篤、asahi = 4-1-16)