iPhone や Android スマホの「デジタル断捨離」 大掃除のカンタンな方法

大掃除をするべきなのは、何も現実世界だけではない。 2021 年も残りわずか。新年は清々しい気持ちで迎えたいもの。 家の中もそうだが、ビジネスや生活に直結するスマートフォンや Web サービスの整理 … いわゆる「デジタル断捨離」も重要な年末行事だ。 この記事ではカンタンにできるツールや機能、チェックポイントを紹介するので、ぜひ年末年始の空いた時間に試してみてほしい。

写真の断捨離 : Google フォトで整理

多くの人にとって、年間を通してスマホの中に最も蓄積されるデータと言えば、やはり写真だ。 写真の整理に Android ユーザー、iPhone ユーザーともにおすすめなのは「Google フォト」アプリだ。 Google フォトといえば、2021 年 5 月末に無制限バックアップが終了し、使用しなくなった人も多いかもしれない。 ただ現状でも、圧縮設定でアップロードすれば、1 枚の写真が 1 - 2MBほどになるので、Google アカウントの標準容量 15GB には 7,000 枚以上の写真が保存できる。 とはいえ、Google アカウントの容量は Google ドライブや Gmail など、他のサービスでも消費する。 メンテナンスは必須と言える。

Google フォトに写真をアップし、ユーティリティーを使えば不鮮明な写真や容量の大きすぎる動画や写真、スクリーンショットをチェックできるので不要なものは削除もしくは PC などにバックアップしよう。 なお、「Amazon Photos」は現状でもアマゾンのプライム会員向けに無制限バックアップを機能を提供しているが、グーグルがそうであったように「無制限」は永遠に続くわけではないと思っていた方がいい。 もしくは、いっそのこと紙に印刷してアルバムにするのもいい。今はコンビニのプリンターで、スマホから高精細な写真プリントもできる。

アプリの断捨離 : OS 標準ツールを使おう

使っていないゲームやアプリもスマホのストレージ容量を圧迫する。 各 OS の機能や純正に近いアプリには「普段使っていないアプリ」をリストアップしたり自動で取り除く機能がある。

iPhone の場合 : App Store の設定から自動で

  1. 「設定」アプリを開く
  2. 「App Store」メニューをタップ
  3. 「非使用の App を取り除く」をタップ

この設定をオンにすると使っていないアプリは自動で取り除かれる(必要なら、App Store で再インストールも可能)。 なお、iPhone/iPad 端末でどのデータが最もストレージを圧迫しているかは、「設定」アプリの「一般」から「iPhone (もしくは iPad)ストレージ」から確認できる。

Androidの場合 : 純正アプリを使う

  1. グーグル純正の「Files by Google」をインストールする(最初からインストールされている場合もある)
  2. アプリを起動して「削除」タブから、「使用していないアプリの削除」をタップ - メニューがない場合は無駄な「使わないアプリ」がないと判断されている。
  3. 削除したいアプリをタップして、画面下部の「アンインストール」をタップ - 無事に削除されれば、削除したアプリの合計値が表示される。

Files by Google は、アプリの他にも重複する画像や古いスクリーンショット、ユーザーが意図しないジャンクファイルの削除にも対応。 年に 1 度の大掃除にはぴったりのアプリだ。

時間があれば個人情報の大掃除も

最後に、スマホ自体だけではなく、各種サービスに蓄積された「個人情報」も年末年始を機会に整理するのもいい。 Twitter、LINE、Google、Facebook では各社のサーバーからユーザー自身の個人情報を削除したり、バックアップしたりする手段が提供されている。 (小林優多郎、Business Insider = 12-30-21)


ゲオの 2021 年中古スマホ年間ランキング 販売/買取で「iPhone 8」がトップ 3 を独占

ゲオは、12 月 10 日に「2021 年ゲオ年間中古スマートフォン販売/買取数量ランキング」を発表した。 1 月 1 日 - 11 月 30 日の期間、全国のゲオショップ/ゲオモバイル約 1,600 店舗で取り扱った中古スマートフォンのデータを集計したものとなる。

総合ランキングでは、販売/買取共に「iPhone 8」がトップ 3 を独占。 販売は 1 位 - 6 位まで上半期ランキングと同様の結果になり、8 位に「Galaxy A21 SC-42A」、9 位にSIM ロックフリーの iPhone 8 もランクインした。 Android の販売ランキングでは前年 10 位中 8 機種だった Xperia が 5 機種になり、Galaxy や AQUOS が台頭している。 買取も iPhone 7/8 が上位を占めた一方、上半期ランキングで 9 - 10 位の「iPhone 6s」が圏外となり「iPhone SE (第 2 世代)」が順位を上げた。 また、格安 SIM との同時販売端末ランキングでは 9 位以外 iPhone 8 となった。 (ITmedia = 12-10-21)


シャープの新スマホ「AQUOS wish」発表
「シンプルで飾らないライフスタイル」に寄り添うコンセプトとは

シャープは、5G 対応の Android スマートフォン「AQUOS wish」を発表した。 「性能や機能で尖った点はない」製品ながら、価格のみにフォーカスしたベーシックモデルではなく、ボディ素材に再生プラスチックを用いるなど、いわゆる SDGs などに通じる価値観を重視したモデルだ。 どういった経緯で、どんな体験を追求した製品なのか。 シャープ通信事業本部パーソナル通信事業部の小林繁事業部長や、「AQUOS wish」のコンセプトをリードした海外事業統括部マーケティング推進部の福永萌々香氏、パーソナル通信事業部商品企画部の亀山紘一氏に聞いた。

「AQUOS wish」のスペック

Android 11 搭載の「AQUOS wish」は、約 5.7 インチ、HD + (1,520 x 720 ドット)液晶ディスプレイや、約 1,300 万画素のアウトカメラと約 800 万画素のインカメラを備える。 チップセットは Snapdragon 480 5G で、メモリー (RAM) は 4GB、ストレージ (ROM) は 64GB となる。 いわゆるエントリーモデルと言えるスペックだが、おサイフケータイや、防水防塵耐衝撃、指紋認証をサポート。

ディスプレイの解像度が HD サイズという点は、アプリなどスマートフォンを利用する上で、大きな負荷を発生させず、手軽に使える格好となっている。 ソフトウェア面では、決済アプリなど指定したアプリをすぐ起動できる「Pay トリガー」が用意される。 そして本体の素材には、再生プラスチックが 35% 用いられている。 パッケージも、紙の使用量を削減し、薄くシンプルなものとなる。

「シンプルで飾らないスマホ」

シャープでは、ハイエンドの「AQUOS R シリーズ」、軽量さを追求する「AQUOS zero シリーズ」、必要十分というコンセプトを打ち出して国内でも多くのユーザーに支持されたミドルレンジの「AQUOS sense シリーズ」をラインアップしてきた。 今回発表された「AQUOS wish」は、「シンプルで飾らないスマホ」を標榜し、既存モデルではなく、新たなラインアップとして登場することになった。

小林氏は「性能面、機能的にサプライズはない。 ただ、急速に広がる新しい価値観に向けた製品として提供することになった。」と語る。 その価値観とは、モノを持ちすぎず、気に入ったモノを長く大切に使い続けるというもの。 その価値観にマッチするよう、わけ隔てなく、誰にとっても使いやすいことを目指したのが「AQUOS wish」だ。 価格でアピールするのではなく、「引き算したことが新しい社会的価値につながる。 価値があるような商品にしていきたい。(小林氏)」という考えが示されている。

AQUOS wish のシンプルさ

そんな「AQUOS wish」の背景にある、新たな価値観のひとつが「シンプル」だ。 「AQUOS wish」では今回、性別や年齢の違い、ジェンダーレスやエイジレスにマッチするよう、シンプルで落ち着いたカラーバリエーションがラインアップされることになった。 一般的に、商品として販売されるアイテムは、携帯電話に限らず、ユーザーの性別や年齢層などを意識してマッチするかたちで提供されることがあるが、そうした違いを意識せず、「自分好みの色」、「多くの人にとって持ちやすく、手触りのよい質感」を感じられる。

ソフトウェア面でも、たとえばカメラ機能も起動すればシャッターボタンひとつが表示され、ユーザーを迷わせない。 タフネスで、防水防塵といった性能は、ユーザーに寄り添う携帯電話だからこそ、気兼ねなく使える状況につながる。 また OS バージョンアップは 2 年間、最大 2 回サポートするとのことで、一定期間、最新性能が担保されるかたちだ。

開発担当者の想い

シンプル、そしてソーシャルグッドという価値観は、徐々に広まりつつある。 多くの人は賛意を示すだろうが、それでも日常生活のなかで強く意識して行動しているか、と問われれば、筆者自身はややまごついてしまう。 そんな「高い意識」に距離感を覚えた筆者にシャープの小林氏は「日常生活で、エコバッグを持っていくようになった人が増えた、というデータはあるが、そうした意識の変化がある一方で、『本質的にこういう考えが格好良い』と感じる人も増えている」と説く。

新たな価値観そのものに格好の良さを感じ、機能が盛りだくさんな製品よりも飾らず持ちすぎず、責任感を抱く層が増えてきた - -。 製品開発をリードした福永氏は、まさに「そうした価値観にマッチするスマホが必要だ」と商品化を目指したと語っていた。 (関口聖、ケータイ Watch = 12-6-21)


スマホから消えた「ワンセグ」、2021 年は搭載機種ゼロに その背景を探る

高齢者向けスマホ市場

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「スマホでマンガ」定着、拡大する電子コミック市場

いつでもどこでも、スマホひとつでマンガを楽しめる - -。 そんな電子コミックの市場規模が拡大中だ。 コロナ下の巣ごもり需要に加え、「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」などのヒット作も追い風になっている。 電子コミックはデジタル版のマンガで、買った作品はスマホやタブレット端末、パソコンで読める。 インプレス総合研究所によると、2020 年度の電子コミックの市場規模は 4,002 億円。 前年度から 1 千億円超も拡大し、13 年度の 5 倍以上になった。

電子書籍の市場そのものも引っ張っている。 文芸や雑誌なども含めた電子書籍全体の市場規模は、20 年度で 4,821 億円。 その 8 割超を電子コミックが占める。 総合電子書籍ストア「ブックライブ」もマンガを中心に伸び、20 年度の売り上げは前年度より 35% 増えた。 21 年度上期の売り上げも前年を上回っており、運営する「BookLive (東京)」は「一時的な売り上げ増にとどまらない」とみる。

そのぶん競争は激化している。 「キンドルストア」、「ピッコマ」、「コミックシーモア」など電子コミックを扱うサービスは多く、コンテンツは横並びになりがちだ。 そこで各社は、使いやすさやクーポンなどで利用者の囲い込みを狙う。 ブックライブの場合、他人に見られたくない本を非表示にする「鍵付き本棚」機能や、1 日 1 回限定の「クーポンガチャ」を売りにする。 クーポンは 10 - 50% オフまであり、割引価格で買える。 オリジナルのマンガも制作しており、なかでも女性向けの「花嫁未満エスケープ」はブックライブのランキングで一般マンガと上位争いを繰り広げるほどの人気ぶりだという。

ブックライブの浅井善行・ストア本部長は「若い層を中心に、スマホでマンガを読むことが一般的になってきた。 ただ、消費者目線では配信サービスごとの違いが見えにくい。 独自の施策によって、どれだけ存在感を示せるかが問われている、」と話している。 (中島嘉克、asahi = 10-31-21)


携帯用「電波オークション」の検討を開始 総務省、需要増で見直し

携帯電話用の周波数の割当先を競売で決める「電波オークション」を導入するかどうか、総務省の有識者会議が 21 日、検討を始めた。 これまでも検討しては見送ってきたが、スマートフォンの普及などで電波の需要が急速に増える中、改めて是非を議論する。 この日の「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会(座長 = 柳川範之東大院教授)」の初会合で、中西祐介副大臣は冒頭、「電波の経済的価値をいっそう反映するなど、新しい割当方式の検討をしっかり行っていきたい」と議論を求めた。

電波オークションは英米など多くの主要国が導入している。 検討会は今後、各国の事例を調査・分析したうえで、新たな割当方式を検討し、2022 年夏ごろに報告書をまとめる。 この日は、導入した国での料金への影響の分析を求める声や、事業者間の規模の差を考慮して新規参入枠を設けるなど、仕組みを工夫するべきだとの意見があった。 スマホの普及や企業のデジタル化などで、電波の需要は増え、限られた電波をいかに公平に、有効に利用するかが大きな課題となっている。 総務省によると、免許を受けた無線局は国内に約 2 億 7,700 万局あり、10 年間で約 2 倍となった。

電波の利用は電波法に基づく免許制で、携帯電話用の電波も、安全性の確保や通信エリアの範囲などの項目を比較審査し割当先が決まる。 一方、オークションは比較審査よりも早く決定でき、透明性も高いと評価され、各国が、通信エリアの範囲を義務づけるなどの一定の条件をつけて導入している。 国内でも議論されてきたが、導入を盛り込んだ電波法改正案が 12 年に閣議決定された後に廃案となったほか、18 年にまとめられた有識者会議の報告書でも、慎重な意見もあり、導入は見送られた。 (asahi = 10-21-21)


ドコモが「格安スマホ 2 社と提携」狙いは何なのか?

NTT ドコモは、格安スマホ事業者 2 社と提携して「エコノミー MVNO(= 仮想移動体通信事業)」という取り組みを始める。 低容量・低料金のプランを広げるのが目的だ。 ケータイジャーナリスト・石野純也のリポートです。

ドコモと提携するのは、NTT コミュニケーションズと、通信やインターネットプロバイダーなどを手がけるフリービット社の 2 社。 10 月 21 日から、NTT コミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」がドコモショップで契約できるようになる。 また 12 月には、トーンモバイルを展開するフリービット社が新たに「トーンモバイル for docomo」の販売を始める。 トーンモバイルは、子供やシニア向けのサービスが強い。 2 社のサービスはドコモショップで契約できるが、利用者は格安スマホ事業者と直接契約を結ぶ形になる。

ドコモの店舗サービスが使える

OCN モバイル ONE の料金は、新設する 500 メガバイト (MB) コースで月 550 円から。 ドコモが提供する「5G ギガライト」は 1 ギガバイト (GB) の料金がファミリー割引適用でも月 2,178 円で、大幅に安い。 3GB で比較すると、OCN モバイル ONE は 990 円、ドコモの 5G ギガライトは 2,728 円で、1,700 円ほどの開きがある。

低容量の料金プランをどう充実させるかはドコモの課題だ。 KDDI は UQ mobile、ソフトバンクはワイモバイルをサブブランドとして展開している。 この 2 社と異なり、ドコモの低容量はギガライトの一択で料金が割高になっていた。 ドコモの野田浩人営業本部長によると、他社に移る利用者の中で、データ利用量が 3GB 未満の割合が徐々に高くなっていたという。 3GB 未満のドコモ利用者は、他社に比べて満足度が低くなっていたのがその理由だ。

エコノミー MVNO は、ドコモ自身が提供するプランではないが、店舗でのサポートを充実させることで、ドコモに近い位置づけにする。 全店舗でドコモの回線と同じように契約できるのはもちろん、端末の初期設定など各種サポートを受けることもできる。 スマホは、ドコモの利用者用に提供しているものを選べる。 端末の下取りで実質支払額を抑えて機種変更できるアップグレードプログラムにも対応する。 格安スマホ事業者は、端末のラインアップに偏りがあったが、ドコモが販売することで、アップルの iPhone や、サムスンの Galaxy、ソニーの Xperia、シャープの AQUOS など人気のスマホを契約と同時に購入できる。

また、エコノミー MVNO に加わる格安スマホ事業者は、d ポイントのポイントプログラムにも加盟する。 ドコモの回線と同じように、通信料金に対してポイントがつくほか、ためたポイントで料金を払うこともできる。 利用者にとっては、サービス面でドコモとの差が小さくなる。

販路拡大が大きなメリット

単に安いだけでなく、特定の利用者に合ったサービスを提供しやすいのも、格安スマホ事業者と組む理由だ。 12 月に販売を始めるトーンモバイルは、子供やシニア世代の利用者に特化した見守りサービスを提供し、かつ月額料金も抑えている。 トーンモバイルの機能は、大手通信事業者より優れているものもあり、ドコモショップで提供できれば、ドコモのサービス強化につながる。

格安スマホ事業者にとっては、販路やサポート拠点を大幅に拡充できるのがメリットだ。 販路はネットや家電量販店などに限定されていることが多く、利用者に届きづらかった。 全国約 2,300 店のドコモショップを活用できれば、こうした課題を解決できる。 一方で懸念は、ドコモショップで扱うサービスが増え、料金プランが複雑に見えてしまう点だ。 また、大手通信事業者と格安スマホ事業者では、回線混雑時の速度など通信品質の差が大きい。 こうした点は、利用者側も理解しておく必要がありそうだ。 (mainichi = 10-16-21)


卸値引き下げ、ノルマ緩和 … 携帯大手 3 社、公取委に改善報告

スマホ使用料

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「シェア自転車」仕掛けたドコモ 畑違いどころか随所に「らしさ」

街なかで赤い車体が目を引く、NTT ドコモのシェア自転車が事業開始から 10 年を迎えた。 直営エリアでの利用回数は、開始初年度の 350 倍に成長。 スマホの運用ノウハウを積み重ねてきた携帯電話会社が、なぜ「自転車」で事業に挑み、どんな課題が見えているのか。 街で見かける機会も増えてきた「シェアリング自転車」。 どうやって予約・解錠し、貸し出し拠点ごとの台数の偏りは、どう解消しているのでしょうか。 今後の展開は。そんな疑問や課題を、ドコモのシェア自転車事業に密着して解き明かします。

高層ビルや商業施設が広がる、都心に程近い東京都江東区の豊洲駅前。 周辺には、「docomo」のロゴ入り電動アシスト自転車がずらりと並ぶ一角があちこちにある。 NTT ドコモの子会社「ドコモ・バイクシェア」が運営する、ポートと呼ばれる自転車貸し出し拠点だ。 料金は 30 分 165 円、以降は 30 分ごとに 110 円。返却するポートは自由で、目的地での乗り捨ても OK だ。 「コロナで減った利用者が戻ってきた。 平日のビジネス利用に加え、休日の家族連れの利用も増えている。」 地場企業などが運営主体になる形も含め、全国 35 地域で約 1 万 6 千台を走らせる、バイクシェア社の武岡雅則社長 (48) は手応えを口にする。

形は自転車、でも中身は …

一見、畑違いに見える「ドコモ」の「自転車」。 両者を結ぶのは、ネットにつながった「動く通信端末」である点だ。 移動しても所在場所や利用状況がリアルタイムで分かるため、スマホアプリから空車検索や予約ができる。 サドル下の操作パネルに、アプリに送られた 4 ケタの数字を入力したり、2 次元コードをかざしたりすると鍵が開く。 利用手続きが、スマホで完結できる。

ドコモが横浜市で事業を始めたのは 2011 年。 携帯市場が頭打ちになるなか、新事業を開拓する試みだった。 江東区や仙台市にも展開した後、15 年に専業のバイクシェア社を設立。 区をまたいで返却できる「広域連携」が都内で始まると利用が加速した。 20 年度の利用回数は、東京都心を中心とした直営分だけで年 1,400 万回と、16 年度の 220 万回から倍々ゲームに近い勢いで急成長してきた。

利便性の高さや運営ノウハウへの期待から、自前でバイクシェアを手がけてきた地域にも、導入の動きが広がる。 20 年 3 月に採り入れた金沢市の「まちのり」事業も、その一つだ。 市内にポート 69 カ所、電動アシスト自転車 500 台をそろえ、月 3 万回近い利用がある。 「仕組みの新しさに加え、首都圏から来る方に、普段のアプリで使ってもらえるのがポイントだった。」 市から事業運営を受託する「日本海コンサルタント」の片岸将広さん (44) は、語る。

以前は観光客の利用が 9 割だったが、今は半分を地元市民が占めるようになった。 利用者アンケートでは「また使いたい」が 99%、「他の人に勧めたい」が 95% に上った。 「市民の外出機会も、観光客のまちめぐりの機会も増やすことにつながるシェア自転車は、消費活性化など地方の課題解決の鍵になる」と片岸さん。 「まちのり」事務局長の井上雅さん (47) は「利用が手軽で、坂道も楽に走れる。コロナで減った観光客が戻ると、台数が足りなくなるかも」と、うれしい悲鳴を上げる。

雨の日も雪の日も 「人」の力で 365 日

「自転車回収・配置作業中」 そう車体に書かれた 2 トントラックの荷台から、赤いシャツ姿の男性 2 人が、スロープを使って電動アシスト自転車を 1 台ずつ路上に降ろしていた。 9 月下旬、新橋駅にほど近い東京都港区の複合ビル前。 自転車シェア事業を手がける NTT ドコモの子会社、ドコモ・バイクシェア社が業者に委託する自転車の再配置作業だ。

自転車の貸し出し拠点「ポート」は、都内だけで約 950 カ所。 一定の区域内ならどこで借りてどこに返してもいいため、利用者による移動に任せていては、エリアや時間帯により各ポートの台数の偏りが大きくなる。 そこで運営側が自転車を動かし、自転車不足やスペース不足で借りたり返したりできなくならないようにするのが再配置の狙いだ。 作業員たちはポートの空きスペースに自転車を並べると、充電の減った電池も手際よく交換。 10 分ほどで次の場所へ走り去った。

「ポートごとの偏り解消は、サービスの心臓部分。 『使いたい時に使えない』ことがないよう、雨の日でも雪の日でも 365 日休めません。」 バイクシェア社の広報、山口恵さん (32) は力を込める。 都内では「相当なコスト」をかけながら、トラック十数台で手分けし、各ポートを巡回。 多い日は約 2 千台を再配置する。

作業負担は軽くない。 自転車は小ぶりな 20 インチだが、電動アシストのため重さは約 20 キロもある。何より難しいのは、どのポートに、いつ何台置くかの判断だ。 人流データに基づいた AI (人工知能)の予測も参考にするが、まだまだベテランスタッフの経験則に頼る面も大きい。 武岡社長は「泥臭いアナログからデジタルに進化しないと」と、さらなる AI 活用なども視野に入れる。

「電池切れた」 利用者の不満でアプリが進化

それでも、現状をリアルタイムで把握して機動的に再配置できるのは、ドコモの事業らしく自転車 1 台 1 台がネットにつながっているからこそ。 その特性を生かし、ユーザーの利便性を高めようと、予約や支払いに使うアプリの改善も進める。 従来のトップ画面は、地図上にポートの位置が表示されるだけだった。 予約した自転車の電池残量も分からず、「すぐに電池が切れた」などの声も寄せられていた。

そこで昨年 6 月にアプリを一新。 地図上のポート位置に、色つきのリングで囲われた数字が表示されるようになった。 ポートの位置と貸し出し可能台数が一目でわかる工夫で、台数に余裕があればリングは青、ほどほどなら黄、残りわずかなら赤、ゼロなら灰色になる。 自転車ごとに電池残量も表示できるようになった。

解錠の仕組みも改善中だ。 従来は、アプリに送られた 4 ケタの番号をサドル下のパネルに入力して解錠していたが、パネルの液晶表示が劣化すると、どの数字を入力したか判読しづらくなる難点があった。 新型でパネルは液晶をなくし、予約時にスマホに送られる 2 次元コードを読み取って鍵を開くセンサーを搭載。 さらに日英 2 カ国語での音声案内機能もつけた。

こうした地道な作業や改善も背景に利用は急伸しており、バイクシェア社は 20 年度、売上高 24 億円・純利益 4 千万円と初の黒字化を遂げた。 ただ、まだまだ人手に頼ったり、ユーザーの不満が先行してから改善したりしている面もある。 「(利用の)伸びに運用が追いついていない。 質をもう一段、進化させたい。」と武岡社長。 そのための模索は日々続く。

さらなる進化へ、「非電動」も AI も

東京・永田町の NTT ドコモ本社。 その 7 階の会議室で 9 月下旬、マスク姿の 7 人が議論を交わしていた。 一同の前に置かれていたのは、子会社のドコモ・バイクシェア社が貸し出す自転車に取り付ける通信端末や操作パネルと、その試作品だ。 バイクシェア社が自転車シェアリング事業で貸すのは、電動アシスト自転車。 その充電池を通信端末などの電源にも使うことで、ドコモグループの事業らしく自転車を「動く移動端末」にして、スマホで予約したり解錠したりできるようにしている。 目下の課題は、電動アシストではない普通の自転車にも、こうした通信端末や操作パネルを取り付けることだ。

「普通の自転車でもドコモ方式が使えれば、より安価にサービスを実現できる。」 モビリティビジネス担当課長の浜本健太郎さん (37) は、そう話す。 試みの一つが、JR 西日本子会社と西明石駅(兵庫県)で進める実証実験。 普通の自転車で、電動アシストの充電池に頼らずに通信端末や操作パネルを動かす仕組みを検証している。 うまくいけば、より多くの地域に事業を広げられる可能性がある。

ドコモグループの自転車シェア事業では、バイクシェア社が日々の事業運営を担う一方、アプリ・システム・通信端末など基盤部分の開発を担うのはドコモ本体だ。 さらに事業を育てるには、ドコモの技術力が欠かせない。 両社のメンバーは週 1 度はオンライン会議で顔をそろえ、ドコモのモビリティ事業担当部長も兼務するバイクシェア社の武岡社長が連携を取りもつ。 いま武岡社長がドコモ部長として指示していることの一つが、「ポート」と呼ばれる貸し出し拠点ごとの台数の偏りをならすための自転車再配置に活用している、AI (人工知能)の性能向上だ。

どこに何台を移動させるかは、まだまだスタッフの経験則に頼る面が大きい。 そこで、通信端末を介して得られる移動や電池残量のデータを分析して、ポートの状況予測の精度を高められないかを探る。 ドコモの担当主査の前畠大さん (37) は「待ち時間ゼロで自転車を使ってもらうのが理想。 システムでお客さんの行動を予測して、再配置のコストも下げたい。」と意気込む。

脱炭素・まちづくりへの貢献に挑戦

走行データをメンテナンスに生かす構想もある。 自転車は年 2 回整備するが、それでも 1 台 10 万円ほどの車両が 4 - 5 年でボロボロになる。 より自転車を長持ちさせるため、走行データの分析から乗り方が丁寧な利用者を見極め、貸出時間の延長などの特典を付けられないかも検討中だ。

東京や大阪では 9 月から、グーグルマップで経路検索するとバイクシェアのポートや待機台数が表示されるなど、移動手段としての存在感はさらに高まっている。 「新たなモビリティサービスを提供することで健康で環境に優しい日本の『まちづくり』に貢献する。」 NTT グループの「脱炭素」戦略の一翼も担う、ドコモ・バイクシェアが掲げる目標だ。 次の挑戦に向けて、11 年目もこぎ出している。 (山本知弘、asahi = 10-3-21)