女子テニスツアー統括の WTA、中国での大会を凍結 性被害告発問題

中国共産党の元高官から性被害を受けたと告発した中国出身でプロテニス選手の彭帥(ポンショワイ)さん (35) と自由に連絡が取れない問題で、女子テニスツアーを統括する WTA のスティーブ・サイモン最高経営責任者 (CEO) は 1 日、「香港を含めた中国で開催予定の大会をただちに凍結する」と声明を出した。 彭帥さんの告発を受け、WTA は透明性のある形での調査を中国側に再三要求してきた。 状況が進展しないため、理事会と相談した上で決めたという。

「残念だが、中国側は信頼できる形で向き合ってくれていない。 どこにいるかは分かったものの、彼女が自由かつ安全で、検閲や強制、脅迫の対象になっていないかの疑いがぬぐえない。」 決断した理由の背景には、ほかの選手やスタッフへの影響もあったという。 「彭帥が自由に発言できず抑え込まれている場所で競うことを選手たちに頼むことはできない。 現状を考えれば、2022 年に中国で大会を開いた場合、選手やスタッフが直面するリスクについても大きな懸念を抱いている。」

凍結する期間など詳細には触れていない。 WTA の姿勢は世界から多くの支持を受けていることを強調し、「どのような経済的な影響があろうとも、彭帥や全女性の正義のために、我々がしたように世界のリーダーたちにも声を上げ続けてほしい。」とした。 国際社会にも公正で透明性のある調査を希望するよう訴えた。 今回の問題は 11 月 2 日夜に投稿された彭帥さんのものとみられる SNS の投稿が発端だった。 党最高指導部の一員だった張高麗(チャンカオリー)前副首相から性的関係を強制され、その後は不倫関係が続いたという内容で一時 SNS で拡散した後、間もなく削除されている。

その後、彭帥さんの消息がつかめなくなった。 テニス選手だけでなく、国際社会からも心配する声が上がっていた。 本人の居場所に関しては国際オリンピック委員会 (IOC) が 11 月 21 日に確認したと表明。 トーマス・バッハ会長らが 30 分ほどオンラインで直接会話したとし、「北京の自宅にいて元気で安全だと説明している」と発表した。 音声や動画などはなく、本人の口から告発した問題についての発言がなかったため、WTA は「懸念は解消できていない」とスタンスを変えてこなかった。 北京では来年 2 月から冬季五輪とパラリンピックが開催される。 WTA の声明は国際社会に大きな反響を呼びかねない。(ロンドン=遠田寛生、asahi = 12-2-21)

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彭帥さんと張高麗氏、中国では同時に検索できず NHK 海外放送も遮断

【北京 = 比嘉清太、ロンドン = 岡田浩幸】 中国の女子プロテニス選手、 彭帥(ポンシュアイ) さん (35) が元政府高官から同意のない性的関係を迫られたと SNS で告発した後、消息不明となった問題を巡り、 習近平(シージンピン)政権が事態収拾へ向けた宣伝工作を活発化させている。 来年の北京冬季五輪への影響を避ける狙いだが、国際社会の疑念は解けておらず、思惑通りに進むかは見通せない。

国際オリンピック委員会 (IOC) は 21 日、トーマス・バッハ会長が彭さんとテレビ電話で約 30 分間通話したと発表した。 彭さんは、「北京の自宅にいる。 安全で健康だ。」と説明し、「今はプライバシーを尊重してほしい。 友人や家族と過ごしたい。」と求めたという。 ただ、通話の場には中国出身の IOC 委員も同席しており、彭さんの言動に影響した可能性もある。

テレビ電話がどのような経緯で実現したかは不明だが、中国当局には、彭さんの安否を巡る国際社会の懸念を打ち消す狙いがある。 IOC にも、北京冬季五輪開催に影響しかねない不安定要素を取り除いておきたい思惑があったとみられる。 ロイター通信によると、女子テニス協会 (WTA) の報道担当者は、「彭さんが検閲や強制なしにコミュニケーションできるかどうかという懸念を解消させるものではない」との見解を示した。

国外向け投稿

習政権は 18 日以降、国内では接続できないツイッターを使い、国外向けの宣伝工作を本格化させている。 最初に中国の海外向け放送・中国国際テレビが 18 日、彭さんが WTA に送ったとする告発否定の英文メールを投稿した。 21 日には、中国共産党機関紙系の報道機関幹部が、彭さんが 21 日朝に北京で開かれたテニスイベントに出席したとする動画を、やはり英文で投稿した。

彭さんが告発した 張高麗(ジャンガオリー)前筆頭副首相(今月 75 歳)は、習政権 1 期目の 2012 - 17 年、最高指導部メンバーを務めた有力者だ。 彭さんの SNS での訴えは即座に削除され、中国の主要官製メディアも一切報道していない。 国内では、彭さんを巡る一連の騒動は存在しないことになっているため、政権側の反論も国外向けに限定されているのだ。

国内は統制

当局は彭さんの「安全」を国外にアピールしつつ、国内では情報統制を続ける。 北京では 22 日、NHK の海外放送がバッハ氏と彭さんのテレビ電話について報じると、放送が遮断された。 中国の検索サイトでは、彭さんと張氏の名前を同時に検索すると、結果は表示されない状態になる。 習政権は、彭さんの問題に新疆や香港での人権問題が加わり、米国が検討する北京五輪の「外交ボイコット」への支持や、外国人選手の出場拒否が広がる事態を恐れる。 今後も官製メディアを動員し、火消しを図る動きが当面は続きそうだ。

欧米では中国当局に説明求める声

彭帥さんの問題を巡り、欧米では中国当局に説明を求める声が上がっている。 来年の北京冬季五輪への批判も一層強まりそうだ。 米国のジェン・サキ大統領報道官は、彭さんの消息が不明となっていた 19 日の記者会見で「深い懸念」を表明し、「中国は批判を一切許容せず、声を上げた人を黙らせてきた。 我々はそうした行為を非難し続ける。」と強調した。

20 日付の米紙ニューヨーク・タイムズは社説で、中国の対応を厳しく批判した。 北京冬季五輪についても、「中国が開催することの適正さに根本的な疑問を抱かせる」と指摘した。 米国では、五輪スポンサーへの撤退要求も議論されている。 英 BBC などによると、英外務省の報道官は 20 日、「性的暴行の訴えは、世界のどこであろうと調査されるべきだ」と指摘した。 元保守党党首のイアン・ダンカンスミス氏ら対中強硬派の国会議員は、北京冬季五輪をボイコットすべきだと主張している。 国連人権高等弁務官事務所の報道官は 19 日、「彭さんの申し立てについて、完全な透明性を持った調査を行うよう強く求める」と訴えた。 (ワシントン・蒔田一彦、ジュネーブ・森井雄一、yomiuri = 11-23-21)

◆ 彭帥さん = 中国湖南省出身。 2013 年ウィンブルドン選手権と 14 年全仏オープンの女子ダブルスで優勝。 ダブルスでは元世界ランキング 1 位。 強いショットに定評があり、「中国テニス界の希望の星(中国メディア)」と呼ばれた。

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中国テニス選手行方不明 米政府 "強く懸念している"

中国の前の副首相に関する告白をしたのち行方が分からなくなったとされている女子テニス選手をめぐって、アメリカ政府は強い懸念を表明し、中国に対し選手の所在や安否を証拠を示して明らかにするよう求めました。 中国の女子プロテニスの彭帥選手をめぐっては、中国共産党の最高指導部のメンバーだった張高麗前副首相から、性的関係を迫られたり一時は不倫関係にあったりしたことを告白したとされる文書が SNS 上に投稿され、その後、行方が分からなくなったと海外のメディアが伝えています。

これについて、アメリカ・ホワイトハウスのサキ報道官は 19 日の記者会見で「強く懸念している」としたうえで、「中国当局に対し、彭帥選手の所在や安否について検証可能な証拠を示すよう求める」と述べました。 そして「アメリカは言論の自由を引き続き擁護していく。 中国は批判を一切容認せず、声をあげた人々を沈黙させてきたが、われわれはそのような行為を非難する」として中国政府の対応を批判しました。

この問題では、これまでに国連人権高等弁務官事務所の報道官が透明性のある調査が必要だと述べているほか、WTA = 女子テニス協会のトップが適切な調査が行われなければ中国での大会開催などを見送ることも辞さないという考えを示すなど、中国政府に対応を求める声が相次いでいます。

セリーナ・ウィリアムズ選手「沈黙してはいけない」

彭帥選手をめぐって、新たにアメリカのセリーナ・ウィリアムズ選手も自身の SNS で問題の調査を求めました。 テニスの四大大会の女子シングルスで 23 回の優勝を誇るウィリアムズ選手は日本時間の 19 日、自身のツイッターに「打ちのめされている。 彼女が無事に早く見つかることを願っている。」と投稿しました。 投稿には英語で「彭帥はどこ」という意味のハッシュタグがつけられていて、ウィリアムズ選手は「この問題について調査がされるべきで、私たちは沈黙してはいけない」と訴えています。 すでに大坂なおみ選手やノバク・ジョコビッチ選手からも彭帥選手の無事を祈る声が上がっていて、この問題で選手らは大きな衝撃を受けています。 (NHK = 11-20-21)

〈編者注〉 間違いなく中国国内のニュースなのですが、一般の中国人には知る術はありません。 中国外では SNS でも情報が飛び交っているのですが、中国ではそれすら見ることができない何とも空しいニュースです。


手を出した「禁断」の電気ショック漁法 中国の湖から消えた漁師たち

記事コピー (11-9-21)


三峡ダムが 175m 貯水、全面竣工以来初

中国中部の湖北省にある世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」の水位が 10 月 31 日、目標値の 175 メートルに達しました。

三峡ダムが 175 メートルの貯水目標を達成したのは 12 年連続のことで、全面的に竣工し、正常運行期に入った去年以来、初めてのことです。 175 メートルという貯水量は三峡ダムにとって正常な水位で、各種の機能を全面的に発揮する上で重要な指標です。 今回の貯水は 9 月 10 日から始まり、52 日間にわたる貯水期間の平均放水量は 1 秒あたり 2 万 1,700 立方メートルに達しました。 今年秋の洪水防止や電力需要の確保、中流・下流地域の水の供給をサポートしてきました。

今回の貯水目標の達成は今年冬から来年春にわたる水の供給、発電、水運などの確保につながるとみられています。(鵬、星、中国・CRI = 11-2-21)

〈編者注〉 これが、中国の言う「まっとうなニュース」なのでしょう。 21,700m3 の放水量/秒が、下流域にどのような結果をもたらしているのか全く言及がありません。 下記のニュースは黄河流域ですが、こちらの長江流域でも、問題を抱えているはずです。 持続性 (sustainable) の視点が欠如しているのではないかと考えます。

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黄河のダム、増水で高水位続く 中国河南省

【洛陽】 中国の黄河では 9 月 27 日以降、降り続いた雨と増水の影響で、3 度の増水ピークが観測された。 中下流区間は長時間にわたる高水位、高水量が続いている。 黄河本流の重要な水利施設、小浪底ダムの水位(標高水位)が 9 日、273.5 メートルとなり、保証水位(ダムの安全水位)の 275 メートルに近づき、ダム建設後の最高水位となった。 珍しい秋の増水期に備え、中下流の圧力を軽減するため、小浪底ダムでは全力で洪水防止に取り組んでいるが、現在も高水位が続いている。 (中国・新華社 = 10-15-21)

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中国・山西省で洪水 200 万人近くに影響

中国の北部・山西省で大規模な洪水が発生し、176 万人以上が影響を受けている。 現地メディアが 10 日、報じた。 山西省の 70 以上の地域・都市では、先週の豪雨による洪水で多くの家屋が破壊され、土砂崩れも起きている。 当局は、大雨の影響で救助活動が困難になっていると話した。 中国では中央部・河南省で 7 - 8 月、豪雨被害で 300 人以上の死者が出た。

警官 4 人死亡

中国の気象当局は現地メディアに、大量かつ長期にわたる降雨と暴風が救出活動を妨げていると説明した。 山西省は、古代遺跡が多い土地としても知られる。 それらの遺跡も、豪雨のため危険な状況に置かれている。 当局は新華社通信に、山西省で住民 12 万人以上が緊急避難と新たな土地での定住を求められていると話した。 また、住宅 1 万 7,000 戸以上が倒壊したと述べた。 国営紙・環球時報によると、土砂崩れにより警官 4 人が死亡した。 それ以外の被害者に関する情報は発表されていない。 同紙はさらに、今回の山西省の洪水は、今夏の河南省の洪水より被害が大きい可能性があると伝えた。

山西省の省都・太原市では、先週の平均降雨量が 185.6 ミリに達した。 1981 - 2010 年 10 月の平均降雨量は 25 ミリだった。 報道によると、太原市の救助当局はメガホンを使い、取り残された住民らに対し、「子どもたちをあなたの頭より高い位置で抱えてください。高齢者と女性を優先的に陸地に避難させてください。 パニック状態にならないでください。 全員救助されます。」と呼びかけた。

山西省は中国の主要な石炭生産地。 大雨の影響で中国政府は、鉱山や化学工場の稼働を停止せざるを得ない状況となっている。 中国はすでにエネルギー不足に見舞われ、停電が発生している。 政府は港湾や工場での電力使用を制限してきた。 山西省当局は、省内の炭鉱 60 カ所、石炭以外の鉱山 372 カ所、危険な化学工場 14 カ所の生産を停止したと明らかにした。 この他の炭鉱 27 カ所では、今月 4 日にすでに操業が停止された。 (BBC = 10-11-21)


中国、「超高層ビル」の建設を規制 高さ 250 メートル超は禁止に

中国政府は 26 日、国内の比較的小規模な都市における「超高層ビル」建設に関する規制を発表した。 虚栄心を満たすことが目的の建設プロジェクトを減らすのが狙い。 中国の住宅都市農村建設部と応急管理部は 26 日に発表した共同声明の中で、人口 300 万人以下の都市で高さ 150 メートル以上の超高層ビルを建設する場合、特別な承認が必要になると説明した。 ただし、いかなる場合でも高さ 250 メートルを超えるビルの建設は認められない。 また、人口 300 万人以上の都市では、一定の条件下で高さ 250 メートル以上のビルの建設を申請できる。

高さ 500 メートル以上のビルの建設はすでに禁止されている。 これらの新ルールに違反したプロジェクトを承認した者は「生涯にわたる説明責任」を負うことになると、声明は警告している。 中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」ではほとんどの人が今回の発表に賛同している。 多くの人が、超高層ビルは「必要ない」、「超高層ビルは人目を引くためのものに過ぎない」などと指摘している。

高層ビルの取り締まりを強化

中国には上海タワー(高さ 632 メートル)や深セン市の平安国際金融中心など、世界有数の高層ビルが複数ある。 現地の報道は、上海や深センのような人口が密集した都市では超高層ビルが必要かもしれないが、他の都市では土地が不足しているわけではないと指摘。 そうした場所の高層ビルはほとんどが虚栄心のために建てられたものだとしている。 5 月には、深セン市にある高さ約 300 メートルの「賽格広場(SEG プラザ)」が揺れ出し、中にいた買い物客らが逃げ出す出来事があった。

中国は、目を引く建物を建てることに執着する地元のディベロッパーを批判し、高額で見栄を張ったプロジェクトを取り締まる傾向が強まっている。 今年初めには、「醜い建築物」を禁止すると発表した。 同済大学建築都市計画学院の張尚武教氏は、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに対し、「私たちは今、人々があまりにも性急に、歴史に残るようなものをつくることに躍起になっている時代にいる」と述べた。 「全ての建物が、ランドマークをつくることを目的として建設され、ディベロッパーや都市計画者は斬新さや奇抜さを極めることで、その目標を達成しようとしている。」 (BBC = 10-28-21)


中国・瀋陽、飲食店で大規模なガス爆発 3 人死亡、30 人以上けが

中国東北部、遼寧省瀋陽の飲食店で 21 日、大規模なガス爆発が起き、これまでに 3 人が死亡、30 人以上がけがをしました。 国営の中国中央テレビなどによりますと、遼寧省瀋陽にある飲食店で 21 日午前、大規模なガス爆発が起きました。 この爆発について、地元当局は、これまでに 3 人が死亡し、30 人以上がけがをしたとしています。

現場は、市内中心部にある瀋陽駅から 1 キロ余り離れた飲食店や商店などが立ち並ぶ繁華街です。 爆発の瞬間をとらえた車載カメラなどの映像では、大きな煙が立ち上がるとともに、現場付近の建物が 3 階あたりまで大きく壊れ、路上にがれきが散乱している様子が確認できます。 また、爆発の被害がバスや車にも及んでいる様子が確認できます。 中国メディアは、近くにいた人の話として「爆発当時、地震のような揺れを感じた」と伝えています。 これまでのところ、爆発の詳しい原因は分かっていないということで、警察や消防が、救助活動を進めるとともに、当時の状況を調べています。 (NHK = 10-21-21)


中国「世界最長の海上大橋」が期待外れの閑散ぶり、背景にあるしがらみとは

世界最長・港珠澳大橋が人々の期待外れだった理由

香港・珠海・マカオを結ぶ大型海上自動車道である港珠澳大橋は、2018 年 10 月、15 年の歳月と 1,000 億元(約 1 兆 7,300 億円)以上の資金をつぎこんで建設したこの海上橋が、ついに完成した。 橋・人工島・トンネルが一体となり、全長 55km と世界最長を誇る大橋に、人々は大きな夢を抱いた。 香港・珠海・マカオだけではなく、さらに、珠江デルタエリアを含むグレーター・ベイエリアの交通環境の大幅な改善を熱く嘱望したのだ。

しかし、そう時間がかからずに、人々は失望した。 鳴り物入りで開通した同橋は、当初は 1 日数万台の利用はあるだろうと見込んでいたが、車両通行量が最初から伸び悩んでいるのだ。 開通してから約半年たった 2019 年 5 月の通行量は 14 万 8,546 台で、1 日当たりの平均は 4,792 台にとどまった。 1 時間当たりの平均は 200 台にも及ばなかった。 「バスに乗ると海の上を走っているような壮大な景色を楽しめるが、道はガラガラ。 すれ違う車を見かけるのもまれだ。」と揶揄する声も出ている。

世界最長の橋はなぜ交通量が増えないのか

交通量が増えない最大の原因は、海上橋を利用するには中国本土と香港の両方の運行ライセンスを保有する車両しか認められないということにある。 橋の建設が始まる前から「開通後、利用率が低い可能性が大きい」という心配の声があった。 「中国本土と香港の両方から認可されたナンバープレートをもつ車両は、数万台にすぎない。 物流目的での利用がまったく広がらなくなる」と指摘されていた。 開通後、半年間の統計によると、通行車両の 53% が自家用車、42% が観光バスやシャトルバス。 トラック利用はわずか 5% 程度にすぎない。 3 年たった今でも、劇的な改善は見られていない。

交通量を思うように増やせないもうひとつの原因は、その橋の構造にある。 地図から見ると、港珠澳大橋は Y という文字を左へ倒したような形になっている。 2 本の脚の方はそれぞれマカオと珠海につながっている。 残りの 1 本は香港に連結している。 広東省では、この設計は「シングル Y 型」と呼ばれている。 そこで、今年 10 月に入ってから、広東省発展・改革委員会は、「広東省総合交通運輸体系『第 14 次 5 カ年計画』発展計画」を発表した。 同計画では香港・マカオとの交通アクセスを強化するため、広東省は港珠澳大橋の交通量を効果的に増やすために、同大橋を「シングル Y 型」から「ダブル Y 型」に改造する企画を明らかにした。

深センの圧倒的な自動車数、おののく周辺都市

しかし、そもそも、建設前から「シングル Y 案」と「ダブル Y 案」をめぐって激しい論争があった。 大橋が東では香港と深セン、西では珠海とマカオを結ぶのは「ダブルY案」。激論の結果、深センを外した「シングル Y 案」が採用され、いまの大橋の形になっている。 当時「ダブル Y 案」を採用しなかった理由は非常に複雑だが、一つには、建設コストが高いことが挙げられる。 さらに、他の都市、とくに香港が急速な発展を遂げている深センに対して根強い警戒心をもち、ライバル意識があまりにも強かったことも大きな要因になった。

しかし、在来のビジネスモデルにあぐらをかき、イノベーション意識が低い香港をしり目に、躍進し続ける深センはいつの間にか、グレーター・ベイエリアのエンジンとなった。 深センは GDP が香港、広州を上回っただけでなく、都市部の人口も香港、広州を上回り、いまやグレーター・ベイエリアでは規模が最も大きく、しかも最も活気と影響力を持つ大都市となった。 一方、珠江デルタで君臨していた香港は、深センの後塵を拝する地位に後退してしまった。

深センの自動車保有台数を見ても、「香港+マカオ+珠海」の 2 倍超となっている。 加工製造業が集中する東莞(広東省中部にある都市)でさえ、車の保有台数は、「香港+マカオ+珠海」の約 2 倍なので、それを超す自動車の数なのだ。

世界港湾ランキング、この 40 年で香港は急降下

貨物物流に着目すると、東アジアを中心とする経済発展により、東アジアを発着する貿易量、国際物流が猛烈に拡大してきている。 さらに東アジアエリア内を観察すると、すさまじいスピードで発展し続けている東アジアの港湾地図も大きく塗り替えられている。 1980 年と 2020 年の世界港湾ランキングを比較すれば、香港の衰退は一目瞭然だ。 統計からもわかるように、広東省側から見れば、港珠澳大橋を通じて導入できる「香港資源」はすでにそれほど多くはないのだ。 一方、これまであまり眼中になかった深センは、活況を呈しており、魅力的だ。

「ダブル Y 型」に変わると経済的効果は高い

しかし、今、深センと東莞で合わせて 700 万台以上の自動車は、中国本土と香港・マカオに行ける両地のナンバープレートを持っていないため、港珠澳大橋をまったく使用できない。 そこで、専門家は「ダブル Y 案」で深セン接続線を建設することを新たに提起しているのだ。

深センを港珠澳大橋につなげ、少なくとも 400 万代近くの深センの自動車が、珠海に来られるようになれば、閑散とした港珠澳大橋も本来の効果を発揮できるようになるだろう。 港珠澳大橋が「ダブル Y 型」に変身すれば、深セン市の南山区、蛇口、前海と香港北部にとってはたいへんなメリットが出る。 香港と深センを結ぶ新しいルートがさらに一つ増えることになるのだ。

珠海とマカオにとっても大きな利益となり、400 万台の車が深センの市民を運んできて、ショッピング、住宅購入、マカオへの旅行がより便利になり、これらの地方の経済が大きく刺激される。 いまや宝の持ち腐れになっている港珠澳大橋も「ダブル Y 型」になれば、今後は大きく期待できそうだ。 (莫邦富、Diamond = 10-8-21)

前 報 (10-23-18)


中国の詐欺グループ容疑者、東南アジアから続々帰国 戻らなければ …

東南アジアを拠点とする中国の詐欺グループに加わって指名手配された容疑者が続々と帰国している。 公安省によると、今年の帰国者は少なくとも 5 万人超。 習近平(シーチンピン)国家主席の指示のもとで当局が摘発を強化しているためとみられ、「戻らなければ親戚の家を破壊する」といった極端な措置をとる地域もある。 公安省や中国メディアなどによると、詐欺グループは国外から SNS のやりとりなどで恋愛感情を抱かせ、架空の投資話に勧誘するなどしている。 拠点はカンボジアやフィリピン、ベトナムなど各地に及ぶが、特にミャンマー北部に集中し、人集めのために陸路国境の違法な出入国の手引きもしているという。

習氏が 4 月に「この種の犯罪を断固として抑えよ」と取り締まり強化を指示。 各地の警察当局が「帰国を促す」として、指名手配を受けても期限までに出頭しない容疑者の銀行口座の凍結などを次々に通知。 福建省●(= 草冠に甫)田市内では、▽ 「違法な金で建てた」容疑者の家族や親戚の家を破壊する、▽ 住居地にペンキなどで詐欺犯罪者だとする印を付ける、▽ 子どもの都市部の学校への進学を禁じる、などが通知された。

こうした措置で帰国して当局に出頭する容疑者が急増し、今年のミャンマー北部からの詐欺容疑に関連する帰国者は 5 万 4 千人に上っている。 中国メディアによると「楽に月 1 万元(約 17 万円)稼げるし、食事や住まいも保障される」、「コールセンターのような仕事だ」などの誘い文句で詐欺に関わるとは知らずに出国した人も多いといい、帰国者らの「出国後すぐに身分証を奪われて自由に動けなくなった」、「逃げようとして殴られたり銃で撃たれたりした人がいる」などとの声が報じられている。 (瀋陽 = 平井良和、asahi = 10-4-21)


中国 大型連休で "6 億人" 移動へ 海外旅行は制限

延べ 6 億人が移動する、中国の大型連休がスタートした。 国慶節の初日となった 1 日、北京首都空港には、非常に多くの観光客が訪れていて、空港全体が活気にあふれている。

旅行客「青島市に行きます。 コロナは不安ですが、国内では感染対策できています。」

ゼロコロナの方針を続ける中国では、2020 年に続き、2021 年も海外旅行が制限され、連休中の移動は国内がほとんどで、旅行会社などによると、この連休中に移動するのは、延べ 6 億人と見込まれている。 5 月の連休の時は、柵の中に行列ができていたが、今回はそこまでには至っていない。 一方で、依然として多い日で、1 日に 10 人程度の国内感染者が出ていることや、デルタ株への警戒感などから、2020 年に比べても、人出は多くないとみられている。 中国政府は、引き続き、厳格な健康チェックを続け、感染防止に神経をとがらせている。 (FNN = 10-1-21)


中国各地で停電や電力制限、信号や水道ポンプ動かず 習氏政策も影響

中国各地で電力不足が深刻化し、電力の使用制限や停電が起きている。 石炭価格の高騰に加え、温暖化対策で石炭火力発電所の発電を抑制したためとみられるが、習近平(シーチンピン)指導部が掲げる二酸化炭素 (CO2) 排出量の削減目標に地方政府が過剰に対応していることも背景にあるようだ。

中国メディアによると、電力の使用制限と停電は 31 の省、自治区、直轄市のうち、20 以上の地域で発生。 特に東北地方は影響が大きく、遼寧省瀋陽市で、23 日信号機が動かず大渋滞になった。 吉林省吉林市は 26 日、停電で水道施設のポンプが動かず、来春まで断水が頻発すると発表した。 南部の広東省や安徽省も電力の使用制限の開始を通知。 日本政府関係者によると、広東省などに工場を構える製造業関連の日系企業は電力不足から操業を停止したり、減産したりするなど影響が出ているという。 またロイター通信は、米アップルやテスラに部品を供給する中国企業が一部工場の稼働を停止したと報じた。

北京市や上海市でも 27 日から 10 月 3 日まで一部地域で計画停電があるとの情報がネット上で流れた。 国有企業の送電会社、国家電網は中国メディアに対し、改修や点検のためで計画停電ではないと火消しに走るなど、混乱が広がっている。 中国では石炭火力発電が主力電源だが、国内の石炭価格の指数が 1 年前に比べて 6 割ほど上昇。 28 日には発電用石炭の先物価格は過去最高を記録した。

電力不足の背景には、貿易摩擦を抱える豪州からの石炭輸入が減っていることが影響しているほか、政治的な思惑を指摘する声もある。 習指導部は昨年、CO2 排出量について 2030 年までに減少に転じさせ、60 年までに実質ゼロにする目標を打ち出した。 さらに今年の政府活動報告で、国内総生産 (GDP) を創出するのに必要なエネルギー量を 3% 減らす目標も盛り込んだ。 中国政府関係者は「地方政府の幹部にはいかにグリーン経済を発展させるかが重要な評価ポイントになっている」と説明。 このため CO2 排出量の多い石炭火力の発電抑制に踏み切ったとみられる。 (北京 = 西山明宏、asahi = 9-28-21)


中国で「ユニバーサル スタジオ 北京」オープン 規模は世界最大

新型コロナのデルタ株を抑え込みつつある中国では、本家アメリカをしのぐ規模をもつ「ユニバーサル スタジオ 北京」が先ほど開業した。 現地時間の正午にグランドオープンを迎えた「ユニバーサル スタジオ 北京」は、ホテルなどの施設を合わせると世界最大の規模を誇る。 入場には新型コロナへの感染対策として、マスクの着用とスマートフォンで陰性を証明するコードを提示する必要があるという。 感染拡大で開業が春から延期されたが、きょうは 1 日で 2 万 6 千人の入場を見込んでいる。 (ANN = 9-20-21)


動画削除、脱税摘発も 「特権階級」の中国芸能界、締め付け強まる

中国で芸能人や関連事務所に対する取り締まりが相次いでいる。 俳優の高額な出演料や反道徳的な作品が社会を乱すとして、共産党指導部が文化統制を強めた形だ。 習近平(シーチンピン)国家主席が旗を振る「共同富裕」を進める標的にされたとの見方もあるが、「保守」への傾斜と懸念する声も出ている。 取り締まりは 8 月下旬から強まり、日本でも公開された映画「レッドクリフ」などに出演した俳優・趙薇さんの作品が動画配信サービスから一斉に削除された。理由は明らかにされていない。 ほかにも脱税が指摘された俳優や芸能事務所経営者の摘発が相次いだ。 中国メディアによると、8 月末までに取り消された事務所は 660 に上る。

党宣伝部は 2 日、「文化娯楽の総合管理業務に関する通知」を公表。 ドラマ 1 シーズンで 1 億元(約 17 億円)とも言われるトップ俳優の高額な出演料、ランキング方式で競争をあおるファンサイトの低俗化、未成年者のバラエティー番組への出演、事務所の脱税などが社会に悪影響を与えているとし、改善とともに社会主義価値観の堅持を求めた。 腐敗を取り締まる党規律検査委員会も「芸能界の資本拡大が中国の特色ある社会主義の発展を阻害することは、あってはならない」とする文書を発表した。

習氏は 8 月の党の重要会議で、社会全体を豊かにする「共同富裕」へ注力することを宣言し、公平な富の分配のために税制や寄付制度を整えていく方針も示した。 特権階級や成功者といったイメージが強く、社会への影響力も大きい芸能界は、共同富裕の理念と相いれない。 こうした富裕層への引き締めの動きを「重大な変化」と礼賛する動きも起きている。 8 月末、著名なブロガーである李光満氏が「経済、金融、文化、政治分野などで起きている『深い変革』は党の初心、社会主義の本質への回帰だ。 (共産党のシンボルカラーである)紅色が戻っている」との文章を発表すると、主要メディアが次々にネットに転載した。

だが、党が「正しい文化」を主導し、押しつけようとする動きには警戒もある。 1960 年代に始まった文化大革命は、上海紙に掲載された文芸評論がきっかけとなった。 東北地方のある大学教授は「保守派の声が強まりすぎている。 危うい傾向だ。」と語る。 共産党機関紙・人民日報系の環球時報の胡錫進編集長は 2 日、李氏の文章を「情勢の理解を誤ったものだ。 いまの中国に運動的な変革は必要ない。」と SNS で批判した。 (北京 = 冨名腰隆、asahi = 9-10-21)

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中国共産党、エンタメ業界の締め付け強化 俳優の動画配信やファン活動を規制

香港 : この 1 週間、中国のエンターテインメント業界は同国共産党政府からの厳しい締め付けにさらされた。 習近平(シーチンピン)国家主席は政治的な反対意見や社会運動、イデオロギーとしてのリベラリズムに対する取り締まりを強化。 民間企業にも圧力をかけている。

中国を代表する女優の一人、趙薇(ヴィッキー・チャオ)さんはこのほど、国内のインターネットのほとんどから自らの存在が一夜にしてかき消えるのを目の当たりにした。 大手 SNS 「微博(ウェイボー)」にあった自身のファンページはアクセス不能となり、出演した映画やテレビ番組はストリーミングサイトで視聴できなくなった。 出演者から趙さんの名前も削除されている。 これらの作品の中には 20 年前にさかのぼるものもあった。 趙さんが当局の標的にされた理由は現時点で明確ではない。 CNN は趙さんの代理人にコメントを求めている。

また各放送局や動画サイトは、同じく人気女優の鄭爽(ジェン・シュアン)さんの出演作も放映・公開の中止に踏み切った。 鄭さんには 27 日、税務当局から脱税などによる 4,600 万ドル(約 51 億円)相当の罰金支払いが命じられた。 こうした措置が取られる中、ソーシャルメディア上では 26 日に、「不適切にふるまうセレブリティー」のリストが公開されていた。 リストは中国のメディア当局が作成したと言われており、そこには趙さんと鄭さんのほか、今月強姦容疑で逮捕された中国系カナダ人の人気ポップスター、クリス・ウー(中国名・呉亦凡)容疑者の名もあった。

中国の芸能人が政府の標的となる事例はこれまでにもあったが、今回の締め付けはより範囲が広く、国内のインターネットから存在がほぼ一掃されるといった一段と厳しい措置が取られている。 さらに当局の矛先は、若年層の間で人気の高まるファンカルチャーにも向けられる。 中国国家インターネット情報弁公室 (CAC) は 27 日、10 の施策を発表し、「混沌」状態と形容する芸能人のファンクラブを「浄化」すると発表した。 これには人気をもとにした芸能人のランク付けを禁じたり、タレント事務所やファンクラブへの規制を強化するといった内容が盛り込まれている。

この前日には、人気の高い動画サイトが「不健康」との理由からアイドルタレントの出演する全動画の配信を停止する措置もとっていた。 中国共産党はかねてエンターテインメント業界に厳しい検閲を行う一方、産業自体の成長は促進し、映画や番組の制作を支援し続けてきた。 そこにはハリウッド映画をはじめとする外国の作品を上回る人気を国産のコンテンツで獲得したいとの思惑があった。

しかし習国家主席の下、党が思想や文化の統制に一段と力を入れるようになった結果、圧倒的人気を誇るスターの存在やファンの熱狂はますます危険視され、とりわけ若者に悪影響を及ぼすとみなされるようになった。 中国のソーシャルメディア上では、芸能界を狙った今回の締め付けについて、1966 年から 76 年まで続いた文化大革命を想起させるとの見方も出ている。 政治と社会が大混乱に陥ったこの時期、芸術や文化は党のプロパガンダを促進するものに制限されていた。 (CNN = 8-31-21)

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「第 2 のファン・ビンビン」人気俳優が脱税罰金 51 億円

中国の人気俳優鄭爽さん (30) が脱税したとして、上海市の税務当局は、鄭さんに罰金を科し、追徴課税することを決めた。 罰金などの総額は 2 億 9,900 万元(約 51 億円)に上るという。 27 日、国営新華社通信が伝えた。 2018 年に巨額脱税が発覚した人気俳優の范冰冰(ファン・ビンビン)さんの事件と手口が似ているため、「第 2 のファン・ビンビン事件」などと注目されていた。 鄭さんは中国で 1990 年代生まれを代表する俳優の一人。 中国版「花より団子」など多くのテレビドラマに出演するほか、高級ブランド「プラダ」のキャンペーンキャラクターなどを務めていた。

上海の税務当局や現地の報道によると、2019 - 20 年にかけて、約 1.9 億元(約 32 億円)の個人所得の申告漏れ、約 4,500 万元(約 8 億円)の脱税、約 2,700 万元(約 4.5 億円)の過少申告があった。 鄭さんや関連する芸能事務所は、ニセの契約書を作成して出演料を少なく見せかけるなどの手口を使ったという。 さらに放送当局は、鄭さんが出演した全ての作品の放送禁止を決めた。 娯楽市場の急拡大で、中国の映画・テレビ業界では俳優らの出演料が高騰。 俳優の脱税や芸能事務所の不正経理が横行したため、税務当局がここ数年管理を強化している。 (上海 = 井上亮、asahi = 8-27-21)


中国ゲーム規制、党や政府が運営会社に厳命 通報窓口を設置、厳罰も

中国共産党中央宣伝部や政府の国家新聞出版署などは 8 日、テンセントや網易など国内のオンラインゲームを運営する IT 大手側に、未成年がゲーム中毒になることを防ぐ措置を講じるよう厳命した。 通報窓口を設けて大規模な検査を行い、対応の甘い会社は厳しく罰するという。 国営新華社通信が伝えた。 党や政府は先月、オンラインゲームが未成年の心身の健康に深刻な影響を与えているとして、運営会社側にサービスの制限を求める通達を出した。 関係部門が会社側と面会して直接伝えることで、指示を徹底させる強い姿勢を示した形だ。

党と政府は運営会社に「未成年がゲーム中毒に陥るのを防ぐ重要性と緊急性を深刻に認識する」よう求め、▽ 未成年へのサービス提供時間短縮の徹底、▽ アカウントのリースや売買の禁止、▽ 性的な表現や残酷なシーンを含む不適切な内容の審査 - - などを指示。 ユーザーを中毒にさせるルールや設計の変更を求めた。 党や政府の関係部門が監督や検査を強化することも伝え、通報窓口も設けて違反があれば厳しく罰するとした。 共産党政権は、受験産業や芸能界など政府の意図を超えて肥大化した業界への統制を強めており、オンラインゲームの摘発もそうした流れの一環とみられている。 (北京 = 林望、asahi = 9-9-21)

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中国、ゲームは「週末 1 日 1 時間」 強まる青少年管理

【広州 = 比奈田悠佑】 中国のメディアやゲーム産業を管轄する国家新聞出版署は 30 日、未成年者(18 歳未満)によるネットゲームの利用を厳しく制限する方針を発表した。 ゲーム企業に対し、未成年者へのサービス提供を週末や祝日などに限定して時間も 1 日 1 時間までとするよう求める。 学校での教育内容に加え、家庭の生活でも青少年の管理が強まる。

未成年者のネットゲーム利用は金曜、土曜、日曜と祝日の夜 8 時から 9 時までに限定する。 実名による利用登録も厳格化するよう求める。 国家新聞出版署は 2019 年に未成年者のネットゲーム利用に関して、祝日に 1 日 3 時間、それ以外の日は 1 時間半を超えてはならないとするといった規制を打ち出していた。 その規制をさらに厳格化する。 中国政府は青少年に対する思想教育を進めている。 上海市では 9 月の新学期から習近平(シー・ジンピン)国家主席の思想を題材にした教材を使う授業を小・中・高生の必修科目として新設する。 北京市も今月、当局の認可を受けていない外国教材を義務教育で使用することを禁ずる方針を打ち出した。

教育内容に加え、しつけなど家庭内の教育を充実させる法律についても政府は議論しており、子供の生活を細かく管理する方向に動いている。 生活面の管理や思想教育の強化を通じて、若者の共産党への関心を高める狙いがある。 ゲーム企業は当局方針をくみ、先手を打って未成年者の利用時間や課金の制限など自主規制を敷いていた。 例えばネット大手の騰訊控股(テンセント)は今月 3 日にも未成年者のゲーム利用を祝日は 1 日 2 時間まで、それ以外は 1 時間までに順次制限する方針を発表していた。 国家新聞出版署の新ルールはさらに厳格なものだ。

テンセントは 30 日、日本経済新聞の問い合わせに対し「当局の最新の要求を厳格に順守する」とコメントした。 テンセントは今月実施した 2021 年 4 - 6 月期決算の発表の場で、同社の中国におけるゲーム売上高のうち 16 歳以下の利用者の比率は 2.6% だと明かした。 各社ともゲーム事業の収益における子供の比重はそれほど大きくはないとみられるが、当局の監視の目が厳しくなる中で難しい対応を迫られる。 (nikkei = 8-30-21)