スリランカ女性のビデオ映像、地裁で開示 遺族ら視聴し「ショック」

名古屋出入国在留管理局の施設で死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時 33)を施設内で撮影した監視カメラのビデオ映像の一部を、出入国在留管理庁が遺族と弁護団に見せた。 遺族側の申し立てを受けて名古屋地裁が証拠保全を決定。 入管庁が 1 日、地裁内で映像を再生した。 遺族側が 5 日に記者会見し明らかにした。

決定は 9 月 6 日付。 入管庁は 2 月 22 日からウィシュマさんが死亡した 3 月 6 日までの 13 日間、計約 295 時間分を DVD 39 枚に収録。 日本滞在中の妹ポールニマさん (27) と弁護団に対し、今月 1 日に地裁内で映像の一部を約 2 時間半かけて見せたという。 入管庁は 8 月 12 日、2 時間に編集した映像の一部を遺族に見せたが、遺族が求める弁護士の立ち会いや映像データの引き渡しは拒んでいた。

映像を見た駒井知会弁護士は「3 月 3 日、職員がスプーンでウィシュマさんの口に食べ物を含ませるが、すぐ吐いてしまう。 職員は間を置かず『はい次』と言って与え、また吐いてしまう。 口から食べるのが難しい状態なのに食べさせようとすること自体、きわめて残酷に見えた。」と語った。 指宿昭一弁護士は「3 月 5、6 日は職員が目の前で手を振り、名前を呼んでも反応がない。 上半身を起こしても首がすわらない。 なぜすぐ救急車を呼ばなかったのか。」と憤った。

ポールニマさんは「最終報告に書かれていないことがビデオに出ていると確信した。 ビデオでの姉の姿が頭から離れず、眠れない。 みなさんが見てもショックを受けるような映像だと思うが、ぜひ全面開示してほしい。」と語った。 遺族らは、ウィシュマさんの病死は入管の取り扱いに問題があったためだとして、日本政府の責任を問う国家賠償請求訴訟を近く起こす方針。 ただ映像について指宿弁護士は「裁判で半年も 1 年もかかってようやく出すのではなく、法務省と入管は一日も早くすべての映像データを渡してほしい」と求めている。 (鬼室黎、編集委員・北野隆一、asahi = 10-5-21)

◇ ◇ ◇

スリランカ女性死亡、関連文書 1 万 5 千枚ほぼ黒塗り開示

スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時 33)が名古屋出入国在留管理局の施設で死亡した問題で、遺族側は 17 日に会見を開き、名古屋入管が開示した関連の行政文書 1 万 5,113 枚のほとんどが黒塗り状態だったと明かした。 「入管はすべてブラックボックスに入れ、何も情報を出さない。 まったく反省していない。」と批判した。 遺族側によると、開示されたのはウィシュマさんに関する看守勤務日誌や健康状態を示す診療結果報告書、被収容者面会簿など。 4 月 9 日に代理人の弁護士が名古屋入管に文書の引き渡しを求めたが拒否され、5 月 12 日付で開示請求したところ、8 月 2 日に段ボール 3 箱分が届いたという。

不開示とした部分の理由について、名古屋入管は 7 月 15 日付の通知書で、▽ 個人情報の開示により個人の権利が害される、▽ 保安・警備体制の記録公開で公共の安全と秩序維持に支障を及ぼす、▽ 行政機関の意思決定の中立性が損なわれる - - などの恐れがあると記している。 ウィシュマさんの妹ポールニマさん (27) は 17 日の会見で、「文書がこんなに黒塗りされたら、報告書の内容も信用できない。 入管は姉が殺されたことを隠したいのではないか。」と不信感をあらわにした。

また、同日に会見した外国人人権法連絡会やヒューマンライツ・ナウなどの人権団体は 17 日に記者会見し、入管庁が 10 日公表した最終報告について「死亡事件の原因究明・再発防止の検討としてまったく不十分」などと批判する声明を発表した。 「人間としての尊厳を傷つける取り扱いが多数認められる。 死亡は憲法や国際人権法に反する恣意的な収容がもたらした結果。」と強調した。 (編集委員・北野隆一、asahi = 8-17-21)

◇ ◇ ◇

入管が無期限に収容できる日本 海外は審査や上限ルール

名古屋出入国在留管理局の施設に収容されていたスリランカ人女性が病死した問題で、出入国在留管理庁が 10 日、経緯などをまとめた調査報告書を公表した。 今回の事案は、不透明な裁量による処遇や長期の収容など入管行政の問題を改めて浮き彫りにしたが、海外では収容期間に上限を設けるなど、人権に配慮した仕組みも導入されている。 日本の入管行政は、在留資格がない外国人を原則として収容する「全件収容主義」をとる。 ただ、収容期間に上限の定めがなく、裁判所など入管以外の機関が収容が必要かを審査する仕組みも設けられていない。 事実上、入管の裁量で無期限に収容でき、国連の人権機関から繰り返し改善を求める勧告がなされてきた。

昨年 9 月には、元被収容者 2 人の訴えを受け、国連人権理事会の作業部会が日本の入管収容について「国際人権法に違反している」との意見書を出した。 日本の出入国管理法が収容期間を定めず、収容の必要性や合理性も検討されていないと指摘した。 3 月末には、国会に提出されていた入管法改正案について国連人権理事会の特別報告者らが日本政府に連名で書簡を出し、「国際的な人権基準を満たしていない」と再検討を求めた。 ここでも司法審査や収容期間の上限が無い点が指摘された。 同法案をめぐっては、国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) も「重大な懸念」を表明した。

各国で事情は異なるものの、正規の在留資格を持たない移民や移住を望む人々への対応は、国際的な課題の一つになっている。 人権に配慮し、収容は最終的な手段として必要最低限にしようという流れの中で、期間に上限を設けたり、定期的に審査する仕組みを設けたりする国も少なくない。 日本の難民支援団体や研究者らでつくる「難民研究フォーラム」のまとめや、各国政府の資料などによると、欧州連合 (EU) には「各構成国は、6 カ月を超えない範囲の期限で収容期間を設定しなければならない」というルールがある。 フランスは国内法で 90 日、ドイツは原則として 6 カ月を上限として定めている。

英国やカナダは上限は定めていないが、収容の要否について定期的な審査がある。 韓国も上限はない一方で、3 カ月ごとに法相の承認が必要とされる。 米国は原則 90 日で、延長された場合も定期的な審査がある。 豪州は上限、定期的な審査ともに設けていない。 2018 年に国連が採択した文書では、収容について「最終手段としてのみ行い、代替措置を追求する」と明記されている。 米国など 5 カ国が反対し、豪州やイタリアなど 12 カ国が棄権する中、152 カ国が賛成した。日本も賛成したうちの 1 カ国だ。

10 日の記者会見で、入管庁の佐々木聖子長官は「収容は最後の手段だということが国際的に指摘されている」と述べ、「日本の入管法の根本には全件収容主義があり、(本来は)収容施設は退去強制までの一時的な滞在施設だが、ここ 10 年ほどで長期収容や収容者数の増加という状況があった」と認めた。 07年以降、今回のスリランカ人女性を含めて17人が収容中に亡くなっていることにも触れ、先の国会で成立しなかった入管法改正案を念頭に「運用ではなく制度を考えなくてはいけない。一つの答えが全件収容主義と決別することだと思う」と述べた。 (荒ちひろ、asahi = 8-10-21)

◇ ◇ ◇

入管の体制不備を指摘 スリランカ女性死亡で最終報告

スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさん(当時 33)が 3 月、収容中の名古屋出入国在留管理局の施設で病死した問題で、出入国在留管理庁は 10 日、調査の最終報告を公表した。 体調の悪化を組織で共有できていなかったことや、対応にあたった職員に「人権意識に欠ける」発言があったとし、医療体制や情報共有、職員教育への取り組みが組織として不十分だったと指摘した。

最終報告の公表にあわせ、入管庁は名古屋入管局の当時の佐野豪俊局長と渡辺伸一次長を訓告、幹部 2 人を厳重注意の処分とした。 この日の記者会見で佐々木聖子長官は、施設での死亡を招いたことや自身の監督責任について謝罪し、「人の命を預かる行政機関としての緊張感が不十分だった」と述べた。 近く最終報告の内容を来日中の遺族に直接説明し、施設での処遇の様子が記録された監視カメラ映像の一部も開示する考えを明らかにした。

ウィシュマさんは 2017 年 6 月、留学のため来日。 一時所在がわからなくなっていたが、20 年 8 月、自ら出頭して施設に収容された。 今年 1 月から次第に体調が悪化し、3 月 6 日に亡くなった。 入管庁は施設での対応の経緯や問題点について調査し、医師や弁護士、国連機関職員ら有識者の意見を聴きながら最終報告をまとめた。

それによると、体調の悪化が進んだ 2 月下旬、ウィシュマさんから外部病院の受診を再三求められたが、すでに受診予定が決まっていたことなどからそれ以上の対応を取っていなかった。 死亡当日の土曜日朝には、血圧と脈拍が測定できなかったのにそのまま放置されていた。 最終報告はこうした対応について、組織として現場の状況を的確に把握し対処する体制や、医師や看護師がいない休日でも相談できる体制が整備できていなかったと問題視した。

また、ウィシュマさんに対し職員が、食事の介助中にうまく飲み込めなかった様子を見て「鼻から牛乳や」と言ったり、死亡当日、処方された抗精神病薬の服用後ぐったりしているところに「ねえ、薬きまってる?」と話しかけたりしていたことを確認。 職員は調査での聞き取りに、介助の負担が重くなるなか「職員の気持ちを軽くしたかった」などと述べたという。 こうしたことを踏まえ、職員の意識改革に向けた、▽ 「使命と心得」の策定、▽ 医療体制の強化、▽ 入管庁本庁への監察指導部署の設置 - - などに取り組む再発防止策が盛り込まれた。 (伊藤和也、asahi = 8-10-21)


多額の借金抱えて来日 … 外国人技能実習生の人権を守るため、日本企業がはじめた取り組み

「人権侵害の温床」と言われる外国人技能実習制度。 企業がとるべき方策を、勉強会で考えました。 「技術移転」の名目で来日してもらいながら、人手不足を補うため劣悪な環境で働かせている - -。 日本の外国人技能実習制度は、国連の人種差別撤廃委員会から「虐待的かつ搾取的な慣行」と非難されています。 法務省のまとめでは、2018 年には実習生全体の 2% に相当する約 9 千人が失踪。 来日時に背負った多額の借金が要因とされ、指宿昭一弁護士は「債務労働という意味での奴隷労働だ」と指摘します。

「ビジネスと人権」を特集してきたハフポスト日本版は、外国人労働問題に詳しい指宿弁護士と、同制度を利用している企業の担当者を招いて勉強会を開催。 企業はどうすれば実習生の人権を守ることができるのか、人権デューデリジェンス (DD) の観点から考えました。

多額の手数料で借金、奴隷的な労働に

2 回目となる「ビジネスと人権」勉強会は 9 月 6 日にオンライン形式で開き、企業や大学、メディアなどから参加者が集まりました。 長年、外国人労働問題に取り組み、7 月にはアメリカ国務省から「人身売買と闘うヒーロー」に選ばれた指宿弁護士。 制度の問題点としてまず指摘したのが、実習生が来日前に支払う手数料でした。 「実習生は多額の手数料を本国の送り出し機関に徴収されます。 そのため、日本では、借金を返しながら働くという債務労働的な状況になっています。」

ベトナムの場合、その額は年収の数倍に相当する 100 万円前後。 他国でも数十万円はかかるため、借金を抱えた状態で来日する実習生が少なくなく、結果的に「奴隷的な労働状況」にならざるを得ないといいます。 さらに、送り出し機関が実習生に対し、日本で労働基準監督署や労働組合などに相談することや、妊娠・出産を禁止するルールを押し付け、違約金も科す事例があるそうです。

厚生労働省のまとめでは、実習生を雇う日本企業で、労働時間や安全基準などの法令違反が 2019 年に 6,796 件確認されたにもかかわらず、実習生本人からの申告は 107 件(同年)だけでした。 指宿氏は「ほとんどの実習生がものを言えない状況」と問題視しています。

手数料を企業が肩代わり

技能実習制度のこうした問題をふまえ、対策に乗り出した企業の一つが、繊維商社「帝人フロンティア(本社・大阪市)」です。 環境安全・品質保証部長の岡本真人さんは、「手数料」をめぐる独自の取り組みを紹介しました。 同社はグループ内の複数の繊維工場で実習生を雇用していますが、5 年前に聞き取り調査をしたところ、実習生の約 4 割が借金を抱えていることが判明しました。

同社は「そもそも手数料はリクルートにかかるフィー(費用)であり、日本では求人する側が負担している。 実習先が払うべきだ。」と判断。 借金が失踪などのトラブルにつながる可能性もあることから、2020 年から同社側で手数料を負担するようにしたといいます。 また、母国での仕事に活用できるよう、丁寧な技術指導を心がけ、居住環境や健康管理にも気を配っているといいます。 岡本さんは「実習生に満足して帰国してもらえれば、またいい人材が来てくれる。 好循環にもつながります。」と語りました。

工場労働者向けに相談アプリも

一方、子ども服「ミキハウス」を展開する三起商行(本社・大阪府八尾市)は、実習生を直接雇用していませんが、取引先で働く実習生の労働環境に配慮した取り組みを行っています。 企画本部品質管理部長の上田泰三さんによると、同社は 2016 年にミャンマーにある取引先の工場が、国際人権 NGO から指導を受けました。 その後、国内外のサプライチェーンを調べたところ、国内では 25 の取引先の工場で技能実習生を雇っていることがわかり、18 - 19 年に聞き取り調査を実施したそうです。

それを機に導入したのが、一般社団法人「ASSC (アスク)」が開発したスマホ用アプリでした。 英語、ベトナム語、中国語、タイ語など計 8 言語に対応し、実習生など工場労働者に利用してもらうことで、困り事や悩み事を第三者の窓口に連絡できるようにしました。

実習生は「重要なパートナー」

同社では今のところ、大きな問題は見つかっていないと言いますが、上田さんは実習生をめぐる人権侵害の問題について「どの企業にも起こりうる。 『対岸の火事』ではない」と指摘します。 「実習生たちは重要なパートナーであり、彼らを尊重し、日本が選ばれることが大切です。 帰国したあとも、消費者や旅行者として私たちに恩恵を与えてくれることもあります。 行政の力を借りながら、これからも問題の解決に取り組んでいきたい。」と話しました。 (小林豪、HuffPost = 9-25-21)


外国人技能実習生の事業所 約 70% で違反や違法な時間外労働

外国人技能実習生を受け入れている事業所に労働基準監督署が去年、立ち入り調査を行った結果、およそ 70% の事業所で安全管理に関する違反や違法な時間外労働などが確認されたことが厚生労働省のまとめでわかりました。 出入国在留管理庁によりますと企業などで日本の技術を学びながら働く外国人技能実習生は去年 12 月の時点で全国で37 万人あまりに上っています。 厚生労働省は実習生などから相談や通報を受け去年 1 年間に全国 8,124 の事業所に労働基準監督署による立ち入り調査を行いました。

その結果、労働基準法などの違反が確認されたのは 5,752 の事業所、全体の 70.8% に上ったことがわかりました。 このうち、職場の安全管理などに関する違反が 24.3% (1,974 事業所)、労使で決めた上限を超えて違法に時間外労働をさせるなど労働時間に関する違反が 15.7% (1,275 事業所)、残業代の未払いが 15.5% (1,261 事業所)などとなっています。 一方、残業代の未払いなどの是正を求めて実習生が労働基準監督署に申告した件数は 192 件で前の年より 85 件増えました。

厚生労働省によりますと最低賃金を大幅に下回る時給 400 円ほどで残業をさせられていたケースもありました。 厚生労働省は、「新型コロナウイルスの感染拡大による企業の経営悪化で残業代の未払いなどが増えた可能性がある。 違法な働き方をなくすために労働基準監督署による立ち入り調査や是正指導を引き続き進めたい。」としています。 (NHK = 9-12-21)


新米を子ども食堂で使って 外国人実習生が栽培

宮崎市と国富町で育苗事業などを手掛けるジェイエイファームみやざき中央(代表取締役・栗原俊朗 JA 宮崎中央組合長)は 2 日、子ども食堂の運営などを支援しようと、新米 300 キロを同市に寄贈した。 同社で農業技術を学ぶ外国人技能実習生が育てたもの。 実習生たちは「愛情込めて育てたお米を子どもたちに食べてほしい」と話している。

それまで廃棄していた予備の販売用の苗を有効活用しようと、インドネシアからの実習生 3 人に日本式の米作りを体験してもらい、子ども食堂などへ寄付することを企画。 4 月上旬から、同社の敷地にある 7 アールの水田で栽培を始めた。 実習生たちは職員の指導を受けながら田植えや水の管理方法などを学び、8 月中旬に米 300 キロを収穫。 田植え機やコンバインなどの農業機械を初めて操作した実習生たちは、作業の速さに感動した様子だったという。

実習生のアリピン・セティア・アディ・サプトラさん (24) は「みんなで一生懸命育てたので、おいしいお米ができた。 子どもたちにおなかいっぱい食べてほしい。」と話していた。 新米は今後、市内の子ども食堂を運営する団体や困窮家庭などに配布される。 (宮崎日日新聞 = 9-8-21)


帰国困難な外国人の就労を支援 道と人材会社が協定

新型コロナウイルスの影響や国内情勢などで帰国が困難となった技能実習生などの外国人の就労を支援するため、北海道は 2 日、人材サービス会社「キャリアバンク(札幌市)」と連携協定を結んだ。 道によると、こうした協定は全国で初めてという。 協定は、コロナによる往来停止や母国の政情不安などで帰国が困難となり、在留期限が迫るなどして今後の就労に不安を持つ技能実習生などから、道外国人相談センターが相談を受けた場合、キャリアバンクと連携して新たな就労先の確保を支援するもの。

法務省の特例措置により帰国困難な実習生らは引き続き同じ仕事を続けることが可能になったが、新しい仕事を希望する人がいる場合に備え体制を整えた。 道によると、2019 年 10 月時点で道内には約 1 万 3,400 人の技能実習生がいるという。 締結式に参加した鈴木直道知事は「道内に住む人へのサポートだけでなく、海外の方に『安心して働ける北海道』というメッセージを発信することにつながる」と述べた。 (中野龍三、asahi = 9-3-21)


広島市の事業所の寮でクラスター、技能実習生 9 人感染
広島県で 253 人感染、31 日の新型コロナ

広島県内で 31 日、253 人の新型コロナウイルスの感染が発表された。 居住地別は、▽ 広島市 118 人、▽ 福山市 54 人、▽ 呉市 25 人、▽ 尾道市 16 人、▽ 東広島市、廿日市市各 9 人、▽ 三原市 5 人、▽ 府中町 4 人、▽ 安芸高田市、坂町各 3 人、▽ 大竹市 2 人、▽ 竹原市、三次市、海田町、熊野町、県西部保健所管内各 1 人。 症状は中等症 2 人、軽症 224 人、無症状 27 人。

クラスター(感染者集団)は、広島市内の事業所の寮で認定され、20、30 代の技能実習生計 9 人が感染。 呉市内の事業所でも確認され、6 人に感染が広がった。 福山市は、従業員 5 人が感染した市内の事業所をクラスターと認定した。 (中国新聞 = 8-31-21)


コロナ禍で帰国困難の実習生らに宿泊研修 JICA など

国際協力機構 (JICA) などが今夏、技能実習生の外国人らに対する宿泊型の研修を実施している。 コロナ禍で仕事を失って生活費などの捻出に困り、帰国もできずに困窮している人々の支援だ。 参加したのは、ネット上での募集に応じたベトナム人の技能実習生ら男女 22 人。 元実習生の男性 (32) は関東地方で 3 年、金属塗装の仕事をしていた。 研修で日本語を学び、在留資格を特定技能に切り替えて再び職に就くことを望む。 「お弁当作りなどの仕事で働きたい」と話す。

研修は 7 月下旬から 8 週間で、仕事に必要な日本語や日本文化の講座、キャリアセミナーなどを受講してもらう。 農業や飲食料品の製造などの技術も学ぶ予定だ。 宿泊先は JICA 東京センターで、食事などの生活は NPO が支援する。 取り組み全体を主催するのは、昨秋に発足した官民連携の枠組み「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム (JP-MIRAI)」だ。 JICA と、ビジネスと人権に取り組む一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(アスク)が共同事務局をつとめる。

JICA は、開発途上国の支援が目的の組織で、国内での支援は「所管外」との批判もある。 ただし、国内での支援は民間頼みが多く、政府系機関のサポートの充実を求める声もある。 JICA には、滞在場所に関係なく必要な支援をする「内外一元化」を唱えた故・緒方貞子理事長のもとで、リーマン・ショック後に失職した日系ブラジル人らの支援を時限的におこなった実績もある。 今回の研修も結果を検証し、今後の事業の検討をするという。

国の認可法人「外国人技能実習機構」にも監理団体の支援を受けられなくなった実習生の保護を担う役割があり、そのために提携した施設が全国にある。 18 年 4 月から 20 年 3 月まで相談のあった 71 人を受け入れ、宿泊および食事などの生活や、仕事の転籍支援をしたという。 (藤崎麻里、asahi = 8-22-21)


長野でベトナム人技能実習生の男女切られ重傷 殺人未遂容疑で男の行方追う

18 日午後 8 時 35 分ごろ、長野県川上村の農家から「男性が血だらけになっている」と 119 番があった。 いずれも近くに住むベトナム人技能実習生で農業に従事する男性 (22) と女性 (26) が腹を切られるなどして重傷を負っているのを地元消防が見つけ、病院に搬送した。 女性は「男に刃物で切りつけられた」と話しており、佐久署が殺人未遂容疑で男の行方を追っている。 同署によると、被害者の男女は知り合いで、別々の農家で実習をしている。 女性は「事件直前に男と被害者の男性がトラブルになっていた」と話しているという。 現場付近の屋外で刃物が見つかっており、犯行に使われた物か調べている。 (kyodo = 8-19-21)


インドネシア実習生が支える沖合底びき網漁 下関を出港

沖合底びき網漁の船団が 15 日、山口県下関市の下関漁港から一斉に出港した。 漁の解禁は 16 日で、恒例の出港式はコロナ禍で昨年に続いて中止。 頼みの綱のインドネシア人乗組員を 23 人確保したが、操業する漁船は減る一方だ。 取り巻く環境は厳しいが、岸壁に集まった乗組員の家族らは手を振って、大漁旗がはためく漁船を見送った。 漁船 2 隻が 1 組となり、萩市見島沖から長崎県対馬周辺の海域で来年 5 月まで操業。 アンコウやノドグロ、カレイ類などを中心に昨年の水揚げ量は 4,093 トン、金額にして 25 億 3,100 万円だった。 下関漁港の基幹漁業だが、廃業が後を絶たず、2 年前まで 14 隻だったのが昨年は 12 隻、今年は 10 隻に減った。

操業に欠かせないのは、インドネシアから毎年受け入れてきた技能実習生だ。 ところがコロナ禍で昨年から、新たな実習生は入国できずにいる。 このため今年は初めて、3 年間の実習を終えて特定技能の在留資格を取得した 7 人を市内の水産会社が雇用。 3 年目の実習生 12 人、実習後に特定活動で在留を延長している 4 人を含め、20 代の若者ばかりという。

出港時のあいさつで、県以東機船底曳網(いとうきせんそこびきあみ)漁協の宮本洋平組合長 (45) は特定技能で雇用した 7 人を「救世主のような存在」と紹介。 水産大学校との連携で開発した漁獲量などが効率よく確認できるアプリの活用にも触れ、「安全操業第一で、たくさんの魚を水揚げしたい」と話した。 (貞松慎二郎、asahi = 8-18-21)


中国実習生死亡で書類送検 今治の塗装会社

今治労働基準監督署(愛媛県今治市)は 13 日、建造中の船舶で、転落の恐れがある区域に立ち入りを禁止する措置を講じなかったとして、労働安全衛生法違反の疑いで今治市の塗装会社「石山塗装有限会社」と同社代表取締役 (41) を書類送検した。 塗装作業の中国人技能実習生 = 当時 (40) = が約 10 - 15 メートル下の貨物スペースに転落し、死亡した。 書類送検容疑は 4 月 27 日、今治市大西町新町の造船所内で通路床面の開口部に転落の危険があったのに立ち入りを禁止していなかった疑い。 (sankei = 8-13-21)


豊前市でベトナム人男女 2 人が死亡「無理心中」か

31 日未明、豊前市の住宅でベトナム人の男女が血を流して倒れているのが見つかりました。 2 人の左胸には刺し傷があり、警察は無理心中の可能性があるとみて調べています。 警察によりますと、午前 3 時半すぎ豊前市六郎の 2 階建て住宅の 1 室で、大量の血を流してベッドで横たわるベトナム人の男女 2 人が発見されました。 2 人はいずれも技能実習生で、男性がチャン ヴァン ヴィエンさん (29) 、女性はヴー ティ フェンさん (26) でいずれも病院で死亡が確認されました。

2 人は会社の同僚で、事件があった家には、女性が同僚の外国人女性 4 人と住んでいました。 2 人とも左胸に刃物で刺されたような傷があり、室内には血のついた包丁のようなものが落ちていました。 警察は、男女のどちらかが殺害した後に自殺したとみて、同居の女性らに話を聞くなど 2 人の間にトラブルが無かったか調べを進めています。 (九州朝日放送 = 7-31-21)


ベトナム人技能実習生が福岡高裁に控訴

双子の赤ちゃんの遺体を遺棄した罪に問われ有罪判決を受けたベトナム人技能実習生の女性が福岡高裁に控訴しました。 ベトナム人技能実習生のレー・ティ・トゥイ・リン被告は去年 11 月、芦北町の実習先の寮で出産したばかりの双子の赤ちゃんの遺体を段ボール箱に入れて放置した死体遺棄の罪に問われ、熊本地裁で懲役 8 ヵ月執行猶予 3 年の有罪判決を受けました。

裁判では「遺体を隠そうとした放置にあたる」とする検察側と「埋葬を前提とした安置」とする弁護側で対立。 熊本地裁は「正常な埋葬のための準備ではない」などとして死体遺棄罪は成立するとしていました。 これに対しレー被告は「判決は全部不服である」とし、きのう付で福岡高裁に控訴しました。 (KAB 熊本朝日放送 = 7-29-21)

◇ ◇ ◇

実習生守る法律、当事者に届かず 「妊娠分かれば帰国」思い込みから孤立へ 双子死体遺棄で有罪判決

自室で 1 人きりで双子を死産したベトナム人技能実習生の被告 (22) に対し、熊本地裁は 20 日、2 人の死体を遺棄したとして執行猶予の付いた有罪判決を言い渡した。 裁判では「妊娠が周囲に分かれば帰国させられる」と被告が思い込み、孤立出産に追い込まれたことが判明。 日本は法律で実習生が妊娠や出産で不利益な取り扱いを受けることを禁止しているが、当事者たちには届いていないことが浮き彫りになった。

弁護側によると、被告は 2018 年 8 月に来日。 芦北町の農家で働き、収入の多くをベトナムの家族に仕送りしていた。 SNS などを通して「妊娠や出産をすると、帰国せざるを得なくなる」との間違った情報に接し、周囲に相談することができなかった。 技能実習生の受け入れ方法などを定めた 17 年施行の技能実習適正化法は、実習生の私生活の自由を不当に制限することを禁じる。 法務省は、妊娠や出産を理由にした不利益を禁じる男女雇用機会均等法について「実習生にも適用される」と通知。 実習生の受け入れ手続きをする監理団体や受け入れ側へ注意を促している。

しかし、外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表の指宿昭一弁護士 (59) = 東京 = は、「実習生に法律の知識は十分に伝わっていない」と指摘する。 被告も、監理団体から法律があることを知らされていなかった。 「外国人を日本に送り出す送出機関が妊娠しないよう約束を強要する事例も横行しており、取り締まる必要がある」と強調。 「日本で働く間は妊娠と出産はできないということが実習生の "常識" になっている」という。 厚生労働省の調査では、妊娠・出産で実習継続が困難になったという受け入れ側の届け出は、17 年 11 月から 20 年 12 月までに 637 件あった。 中には解雇や帰国を迫られた違法なケースもあるとみられている。

判決を受けた実習生を支援する「コムスタカ - 外国人と共に生きる会」代表の中島眞一郎さん (66) = 熊本市 = は、今回のケースを「氷山の一角」と強調。 「実習生に不利益な扱いをしたとして、実際に処分された監理団体や雇い主の例は聞いたことがない。 結局は自己都合での帰国とされてしまう。」と現状を批判し、「適正な処分を行う強い制度が必要だ」と指摘した。 (隅川俊彦、熊本日日新聞 = 7-22-21)

初 報 (11-21-20)


外国人技能実習生、相談窓口につながるアプリ開発 厚労省など

外国人技能実習生が長時間労働をさせられたり暴力の被害を受けたりするケースが相次いでいることから、厚生労働省などは相談窓口につなぐことができるスマートフォン用のアプリを開発し、潜在的な被害やトラブルへの対策を強化することになりました。 「外国人技能実習制度」は外国人が日本で働きながら技術を学ぶ制度で、去年 12 月末の時点で 37 万人余りが働いています。 制度を運営する「外国人技能実習機構」は母国語の電話相談の窓口を設けていて、長時間労働を強制されたり職場で暴力を受けたりしたなどの相談は 2019 年度、およそ 7,400 件に上っています。

厚生労働省などは実習生が入国した時に冊子を配布し、この窓口の電話番号などを周知し相談を呼びかけています。 しかし支援団体からは「実習生が相談窓口の存在を知らずに誰にも相談できないケースが多い」として潜在的な被害やトラブルについて対策を求める声が出ています。 このため厚生労働省と出入国在留管理庁、外国人技能実習機構は相談窓口につなぐことができるスマートフォン用のアプリを共同で開発しました。 スマートフォンは技能実習生の多くが持っていて、このアプリではベトナム語や中国語など 10 か国語での対応が可能です。

外国人技能実習機構が設置している相談窓口の電話番号が紹介され、ボタンを押すだけでつながるようになっています。 また新型コロナウイルスの感染状況や、気象や災害に関する情報、それに最低賃金の引き上げなど、日本で働くうえで知る必要がある法律や制度の変更点について、それぞれの母国語で随時、通知します。 厚生労働省などはホームページや SNS などでアプリの周知を進めるとともに、入国時などに登録を呼びかけます。 「外国人技能実習機構」は「悩みがあっても相談できない技能実習生を 1 人でも減らしていきたい」と話しています。 (NHK = 7-18-21)


実習生の失踪 現場調査不足 会計検査院調べ

2019 年 4 - 9 月に発生した外国人技能実習生の失踪事案のうち約 2 割で、受け入れ先企業の労働環境などを調べる実地検査が半年以上実施されていなかったことが会計検査院の調べでわかった。 検査院は 16 日、検査を担う国の認可法人「外国人技能実習機構(東京)」に改善を求めた。

事案の 2 割 半年以上なし

日本の企業で働きながら技術を学ぶ外国人技能実習生を巡っては、受け入れ先企業などから失踪する事案が相次いでおり、出入国在留管理庁によると、19 年は 8,796 人で 14 年の 1.8 倍に増えた。 賃金の不払いや長時間労働などが原因であることも多く、国は 17 年に外国人技能実習機構を設置し、実習先の企業に出向く実地検査を行うなど監督を強化してきた。

検査院は、増加する失踪事案への機構の対応状況を調査するため、19 年 4 - 9 月に発生した失踪事案 3,639 件の実地検査状況を調査。 その結果、失踪から半年以上が経過した 20 年 3 月末時点で、機構が企業に対して実地検査を行っていなかった件数は 21% の 755 件にのぼった。 このうち 74% の 557 件では、賃金台帳やタイムカードなどの資料も取り寄せていなかった。

国は機構に迅速な検査を求めたうえで、人手不足などで難しい場合は、資料を企業などから入手するよう要請していた。 機構の担当者は「失踪事案が相当数にのぼる一方、検査担当者は約 220 人で、即時に対応するのは難しい。 実習生を受け入れる企業や団体に対し、失踪事案の報告時に資料提出を求めることも検討する」としている。 (yomiuri = 7-17-21)

外国人技能実習生 = 1993 年、発展途上国への技術移転を目的に受け入れが始まった。 実習期間は最長 5 年間で、対象職種は農漁業や建設など85にのぼる。 実習生数は 2020 年末時点で約 38 万人。


外国人技能実習延長も
長野・小諸の介護施設協組 「優良」取得

技能実習生監理団体の介護施設協同組合(長野県小諸市)は介護専門では全国で初めて、優良な団体の要件を満たす「一般監理事業」の許可を外国人技能実習機構(東京・港)から取得した。 一定の条件を満たした実習生は 3 年間の実習期間を 5 年間に延長できる。 通常、技能実習生は 3 年間で介護福祉士の国家試験に合格しないと帰国しなければならないが、実習期間の延長により合格確率が高まる。 特定技能制度を活用すれば最長で 10 年の滞在が可能になる。 介護福祉士試験に合格し在留資格「介護」を取得することで家族の帯同や日本での永住も認められる。

同組合はまた、コロナ下でも海外の人材送り出し機関での事前研修をリモートで進められるよう、介護の日本語デジタル教材を開発した。 将来は他の監理団体にも有料で提供していく。 同組合は 2018 年以降にインドネシア、ベトナム、フィリピンから 211 人の介護技能実習生を受け入れて研修を実施し、各地の介護施設に人材を供給してきた。 しかしコロナ禍で昨年から受け入れができず、115 人が入国待ちとなっている。 状況が改善すればミャンマーからも受け入れを始める計画だ。 (nikkei = 7-13-21)


ベトナム実習生、不当解雇で和解 監理団体と実習先が解決金 - 広島地裁支部

技能実習生として働いていたベトナム人女性 (29) が不当解雇されたなどとして、約 520 万円の損害賠償を求めた訴訟が広島地裁福山支部(東根正憲裁判官)であり、実習先企業の代表と、実習生の受け入れ窓口となる「監理団体」が不当解雇の責任を認め、計 200 万円の解決金を支払う条件で 4 月に和解したことが 6 日、分かった。 女性の代理人弁護士によると、実習生と直接雇用関係のない監理団体が不当解雇の責任を認めるのは異例。 実習生が多額の借金をして来日したという事情も解決金で考慮されており、画期的という。

女性は 2016 年 6 月、総菜製造会社「ホーユー(広島市)」の実習生として来日した。 3 カ月に約 3 万円しか支払われないなど、最低賃金以下で働かせられ、同 11 月に待遇改善を求めた直後に解雇されたと主張。 監理団体「協同組合 TTK (広島県福山市)」の関係者に空港まで連れて行かれ、強制帰国を迫られたとも訴えていた。 17 年には同社が女性に 35 万円を支払う内容で調停が成立。 女性は 18 年に帰国したが、約 100 万円の借金をして来日しており、19 年に同社代表と監理団体を相手に訴訟を起こした。 裁判所は不当解雇だったことを認めたが、帰国を強制したかは判断しなかった。

訴訟では、同社と監理団体の連名で女性が行方不明になったとする虚偽の書類が作成され、監理団体がベトナムの送り出し機関から違約金名目で 2,000 米ドル(約 22 万円)を受け取っていたことも判明。 監理団体は 18 年に解散したが、後継とみられる団体が現在も活動している。 取材に対し、この団体は「うちとは関係ない」と説明。 同社は「裁判で話し合いは終わっている」としている。 (jiji = 7-6-21)


外国人実習生受け入れ団体 アイム・ジャパンに是正勧告 内閣府

外国人技能実習生の国内最大の受け入れ団体である公益財団法人「アイム・ジャパン = 国際人材育成機構」が、前の会長の知人が経営する会社に 6 億円近くの物品などを優先的に発注していたとされる問題で、内閣府は特定の企業への利益供与を禁じた公益法人認定法に違反する疑いがあるとして、徹底した原因の究明などを行うよう勧告しました。

公益財団法人「アイム・ジャパン」は、退任した前の会長で旧労働省 OB の柳澤共榮氏 (77) の知人が経営する会社などに対し、おととしまでのおよそ 9 年間に合わせて 6 億円近くの物品などを優先的に発注していた疑いがあることが、第三者委員会の調査で明らかになりました。 これを受けて、公益法人を監督する内閣府も立ち入り検査を行うなどして調査を進めてきましたが、1 日、特定の企業への利益供与を禁じた公益法人認定法に違反する疑いがあるとして、法律に基づき、アイム・ジャパンに対し必要な措置をとるよう勧告しました。

具体的には、問題の取り引きについて徹底した原因の究明を行うことに加え、関わった役職員の処分や退職金の返還などについて検討すること、そしてその結果を詳細に公表することなどを求めたということです。 内閣府は今後、アイム・ジャパンの取り組みの状況を確認したうえで、必要に応じて命令などのより強い措置についても検討することにしています。

国内最大の受け入れ団体 2011 年に公益財団法人に

「アイム・ジャパン = 国際人材育成機構」は、1991 年に設立された外国人技能実習生の国内最大の受け入れ団体で、10 年前の 2011 年に公益財団法人に移行しました。 ホームページなどによりますと、職員は 300 人余りで、海外を含めて合わせて 20 の拠点があります。 常勤の理事は現在、会長を含めて 6 人で、この中には外国人技能実習制度を所管する厚生労働省の OB も含まれています。 アイム・ジャパンは、インドネシアやベトナムなどアジアの 5 か国の政府と協定を結び、日本で唯一、各国の政府から直接派遣された実習生を受け入れているということです。

実習生はおよそ 5 か月にわたり日本語などの研修を受けたうえで、全国のおよそ 2,000 の会員企業に配属されます。 これまでに受け入れた実習生は合わせて 6 万人を超え、現在はおよそ 1 万人が日本に滞在しているということです。 財源は会員企業から集める実習生の指導費などで、決算報告によりますと、2020 年度の収益は 34 億 5,000 万円余りに上っています。 公益財団法人は税制上の優遇措置があり、公益目的の事業については非課税となっています。

内閣府「公益認定の取り消しに至り得る重大な問題」

今回「アイム・ジャパン」に勧告した理由として、内閣府は、本来、不特定多数の利益のために活動する公益法人が、長年にわたり特定の企業に物品などを優先的に発注するという形で「公益法人認定法が定める規律をないがしろにしてきた」ことを挙げています。 第三者委員会の調査で、アイム・ジャパンは、退任した前の会長で旧労働省OBの柳澤共榮氏の知人女性が経営する会社や、この知人が紹介した会社との取り引きについて、一般競争入札を原則とする内部規程に反して、すべて随意契約にしていたことなどが明らかになりました。

こうした実態を踏まえ内閣府は「公益認定の取り消しに至り得る重大な問題と言え、勧告の内容について法人がどのように対応していくか、注視していく必要がある」としています。 また、柳澤前会長の知人が経営する会社には、前会長が一時、350 万円を出資していたほか、今の会長で弁護士の金森仁氏 (66) も 50 万円を出資し、株主となっていたことが分かっています。

内閣府はこうした事実関係にも触れ「特別の利益の供与が行われていた特定の事業者の株式を、みずから保有してきた者が、現在も役員として在任していることは、公益法人に対する国民の信頼を損なうものと考えられる」と指摘しています。 このため勧告では、株主となっていた役員を中心にその適格性について厳格な検討を行うとともに、役員報酬や退職金の引き下げなども含めて検討するよう求めています。

アイム・ジャパン「求められている内容 期日までに報告」

内閣府から勧告を受けたことについて、アイム・ジャパンは「勧告を真摯に受け止め、求められている内容について、指定された期日までにご報告申し上げます」とコメントしています。 (NHK = 7-2-21)

アイム・ジャパン HP にコメント掲載

内閣府から勧告を受けたことについてアイム・ジャパンは 2 日、ホームページ上にコメントを掲載しました。 この中では、「この度、当機構に対して監査官庁である内閣府から、本件不祥事案に関し、徹底した原因究明と責任追及を行うこと、再発防止策を改めて策定すること等を内容とする『勧告書』の交付がなされました」としたうえで、「当機構としましては、本勧告を真摯に受け止め、公益法人として国民の信用を損なうことがないように改善に努めてまいる所存であります」とコメントしています。

〈編者注〉 一瞬、どこか後進国からのニュースかと見まがうほどの不祥事です。 当然、「公益財団法人」の資格を剥奪されるべきでしょうし、実に 9 年間も、それを見逃していた監督官庁「内閣府」も責を負うべきでしょう。


米、日本の技能実習を問題視 国務省が人身売買報告書

【ワシントン】 米国務省は 1 日、世界各国の人身売買に関する 2021 年版の報告書を発表した。 日本については国内外の業者が外国人技能実習制度を「外国人労働者搾取のために悪用し続けている」として問題視。 政府の取り組みは「最低基準を満たしていない」として 4 段階評価で上から 2 番目のランクに据え置いた。 日本の外国人技能実習制度では政府当局の監視強化などが必要だと明記。 人身売買が軽微な処分で済まされ「十分な抑止ではない」として、厳罰化も求めた。 人身売買と闘う「ヒーロー(英雄)」の 1 人に同制度の問題に取り組む東京の指宿昭一弁護士を選んだ。 (kyodo = 7-2-21)


営利目的で実習生監禁 ベトナム人男女 12 人逮捕

広島県警は 29 日、借金を返済させる目的でベトナム人の技能実習生の男性 (24) を監禁したとして、営利目的略取や監禁致傷などの疑いで広島県福山市、無職、グエン・フウ・チュン容疑者 (31) ら、いずれもベトナム人の男女 12 人を逮捕したと発表した。

県警によると、逮捕した 12 人のうち大阪市浪速区の無職、ファム・ティ・ヒエウ容疑者 (28) だけが男性と面識があり、男性に貸した金を返済させる目的でチュン容疑者に依頼、共犯者を集めたとみられる。 逮捕容疑は昨年 12 月 29 日午後 7 時 10 分ごろ、広島県江田島市の路上で男性を車に押し込み、同県福山市内の共犯者の自宅に連行し、殴るなど暴行して負傷させ、30 日午後 3 時 10 分ごろまで監禁。 車内で男性を脅し、男性の知人 2 人に計 31 万円を振り込ませたとしている。 (sankei = 6-29-21)


コンテナで命を落とした 26 歳ベトナム人女性

あるベトナム女性の夢

記事コピー (6-16-21)