実習生なしでは「街がなくなる …」 被災地に国際競争の渦

「移民政策」のゆがみが東日本大震災の被災地に影を落としている。 人口が減り、働き手の外国人頼みが強まっている。 ただ、いまの仕組みでは定住を促すのは難しく、コロナ禍がもろに響く。 そんな状況は日本全体の縮図でもある。 人口 6 万人ほどの宮城県気仙沼市に、イスラム教の礼拝所がある。 漁業や水産加工に携わるインドネシア人の技能実習生のため、地元の有力企業、菅原工業が一昨年夏に設けた。 菅原渉社長 (46) は「インドネシアでは中間層が増え、日本に来てくれる人は減っていく。 それでも選ばれる街でありたい。」 礼拝所のとなりには豚肉を使わない料理店を開いた。

地元の努力は教育面にも及ぶ。 実習生向けの日本語教室を月に 2 回、教員免許を持つ住民らが開く。 「漢字が難しいけど、覚えると楽しい。」 来日 3 年目のレギタさん (22) は話す。 宮城県は、日本語学校を設ける検討に入った。 村井嘉浩知事は「人口の減少は(津波被害にあった)沿岸部で最大の課題。 新たな人に移り住んでもらうことは非常に重要。」と話す。 働き手世代である 15 - 64 歳の人口(生産年齢人口)はこの 10 年、全国で 6% 減ったのに対して、岩手、宮城、福島の被災 3 県では 11% 減。 気仙沼など三陸沿岸部の減少は著しく、実習生への依存度が高い。

三陸沿岸部で水産加工を営む「かわむら」は、従業員約 300 人のうち 70 人ほどを実習生が占める。 18 年にはインドネシアに合弁会社を設けた。 実習後の就職先として勧めており、すでに 1 人を送り出した。 そんな人の流れをコロナ禍が直撃した。 昨夏に予定していた実習生 40 人の来日が遅れ、うち 18 人はまだ来れない。 ワカメの旬を控え、人繰りの不安が募る。 実習生は昨年 6 月の時点で全国に約 40 万人。 似た事態は各地に及んでいるとみられる。 引き金はコロナだが、背景には技能実習制度のひずみがある。

技術を学んでもらうことを名目とし、日本に滞在できるのは 5 年まで。 一昨年春に施行された改正出入国管理法で「特定技能」を新設したが、導入が進む「1 号資格」で日本にとどまれるのは通算で 5 年までだ。 この資格での家族の帯同は認めていない。 「外国人がいなくなれば街がなくなる。 定住できるように見直すべきだ。」 三陸でかわむらを営む川村賢壽会長 (71) は訴える。

働き手の誘致は国際的な競争になっている。 「次は、韓国に行きたい。」 宮城県石巻市の中小企業で実習生として働くベトナム人女性 (20) はそう話す。 手取りは月 12 万円ほど。食費など 2 万円を手元に残し、母国の家族に送る。来日するために借りた 100 万円を返す必要もあり、近隣国の待遇は気になる。 韓国の最低賃金は、日本円に換算すると 820 円ほど。 宮城は 825 円で、岩手は 793 円だ。 790 円台の県は、山陰や四国、九州などにもある。 韓国では採用の手続きを国が担い、ブローカーを排除している。 渡航の準備費用などを考えると日本よりいい、との声がある。

神戸大の斉藤善久准教授(労働法)は「日本の最低賃金は先進国としては低く、政府は外国人を労働力の補填としか見ていない。 このままでは、外国人から選ばれなくなる。」と指摘。 「家族の帯同や長期の在留資格を広く認め、日本人と支え合って暮らせる社会をつくるべきだ。」と訴える。 経営者もさらなる企業努力が求められる。 商品やサービスの付加価値を高め、従業員の待遇も引き上げることができれば、職場としての魅力は高まる。 (徳島慎也、asahi = 1-24-21)


技能実習生は使い捨てか コロナ失職よそに大量受け入れ

新型コロナウイルス禍で働けずに国内にとどまる技能実習生が、昨年末時点で少なくとも 1 千人超いる一方、昨夏以降に新たに 4 万人超の実習生が入国したことが朝日新聞のまとめで分かった。 実習生は昨春からコロナ特例で「転職」も認められたが、再就職が十分に進まないまま、次の実習生を大量に受け入れている状況が浮き彫りになった。 厚労省によると、コロナ禍による倒産や解雇などで職を失った実習生は、昨年 11 月末時点で国内に約 3 千人いる。 このうち 1 月時点で、約 100 人が次の仕事に就けていない。 また法務省によると、受け入れ期間が終わったのに母国の入国制限などで帰国できない実習生は、昨年末時点で約 3 万 6 千人おり、うち約 1 千人は明らかに働き先がない状態だ。 実習生の失踪なども多い。

実習生は従来、来日時に決められた職場や職種でしか働けなかった。 法務省は昨年 4 月、コロナで失職したり帰国できなくなったりした実習生らを支援するため、介護や農業など新設された在留資格「特定技能」の対象 14 業種であれば、1 年限定で新たな受け入れ先で働けるようにした。 しかし、この支援策で「転職」できた人は今月 12 日時点で 1,716 人にとどまり、仕事のない約 1,100 人の救済には至っていない。

1,100 人が仕事ない一方、新規来日 4 万人

その一方で、外国人の入国拒否が段階的に緩和された昨年 8 月以降、今月 3 日までに新たに実習生 4 万人が入国。 特に、原則拒否が解除された昨年 11 月以降に急増している。 日本で暮らす外国人の状況に詳しい NPO 法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は、「実習生の受け入れ窓口を担っている監理団体は、新たに入国させた方が(手数料で)稼げる」と指摘。 「それだけ人手が必要な仕事があるのに、いったん来日して働けなくなった実習生は十分な再就職支援などがなされておらず、使い捨てともいえる状況。 国が救済策を強めるべきだ。」と指摘する。

四国から東京の寺へ「仕事がしたい」

1 月 13 日夕。 仕事を失ったベトナム人を支援する東京都港区の寺を、20 歳のベトナム人技能実習生の女性 2 人が訪れ、口をそろえて訴えた。 「何でもいい。 仕事がしたい。」 2019 年春から四国のスーパーで働いていたが、昨年末、コロナ下で会社が禁じていた県外移動をしたという理由で辞めさせられた。 まだ日本で働きたいと、受け入れ時の窓口となった監理団体に相談。 この寺を紹介された。

寺には今、二人のように日本で働き続けたいと希望しながらかなわない、20 - 30 代のベトナム人の男女約 35 人が暮らす。 寺を拠点に支援にあたる NPO 「日越ともいき支援会」吉水慈豊(じほう)代表は、やってきたベトナム人に日本語指導や生活支援をしながら、自身が社長と面談して信頼できると感じた全国数十社への紹介を進めている。 これまでに実習生らから数千件の相談があり、約 200 人を保護して、100 人弱の再就職につなげたという。

マッチングの責任主体が不在「仕事あるのに」

困った実習生の次の仕事が見つからない原因について、移民政策に詳しい日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は「(仕事探しの)責任主体が決まっていない」ことを挙げる。 法務省は昨秋、次の受け入れ先を探す実習生と働き手を探す事業者の情報のウェブサイト掲載を始めたが、「役所なので直接あっせんはできず、情報掲載しかできない。(担当者)」 実習生は自分でハローワークで仕事も探せるが、現実には十分な情報が行き渡らない上、日本語の壁などもあって難しい。

外国人問題に詳しい指宿昭一弁護士は「基本的には監理団体まかせになっている」と指摘した上で、「監理団体には動くインセンティブ(動機)がない」と話す。 国の許可を得て非営利で受け入れ事業にあたっている監理団体は、実習生に特定技能 14 業種での転職先が見つかり、在留資格が切り替わってしまうと、国から監理団体に払われる管理費が出なくなるためだ。

一方で、外国人の働き手を探している職場は少なくない。 特定技能の働き手を探す企業などに外国人を紹介しているフォースバレー・コンシェルジュ(東京)は昨年以降、コロナで実習生を解雇せざるを得ない企業の依頼で北海道の農家らにつないだことはあるが、まだ依頼は数件どまりという。 担当者は「人手不足の業界はあり、累計 200 件ほどの案件はあるが、実習生に情報が十分に届いていない。」 「ともいき支援会」の吉水代表は、「監理団体に代わって、専門的にマッチングする団体に委託するなどの仕組みをつくるべきではないか」と話す。

「コロナ後を見据えた抜本対策・ビジョンを」

NPO 法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は、「本当に『実習』ならば、実習が出来なくなった以上は将来の再開を保障した上で、チャーター便を出してでも帰国させるべきだ」とした上で、救済策として実習生がどんな仕事にも転職できるようにすべきだと指摘。 「実習」の名のもとに外国人を労働力として活用してきた技能実習制度の問題点は長年指摘され続けてきただけに、「コロナを機に、きちんと労働者としての在留資格への転換を図るなど、抜本的な対策をとるべきだ」とも主張する。

日本国際交流センターの毛受執行理事は「技能実習制度に対する海外メディアの関心は極めて高く、その改革のあり方は、日本が本当に『選ばれる国』になるかどうかの試金石だ。 コロナ禍での喫緊のコロナ対応と同時に、コロナ後の外国人材の獲得競争を見越したビジョンづくりも進める時だ。」と警鐘を鳴らす。 (藤崎麻里、asahi = 1-19-21)


外国人の入国全面制限前に技能実習生が到着 関西空港

政府は 14 日から特段の事情がある場合などをのぞき、外国人の日本への入国を全面的に制限することにしています。 入国のためのビザの期限は今月 20 日までで、関西空港では 14 日、入国できた技能実習生や受け入れ団体の関係者の姿が見られました。 政府は、中国や韓国など 11 の国・地域を対象としたビジネス関係者らの往来は継続していましたが、国内の感染状況が深刻化していることなどを踏まえ、14 日から原則として、外国人の日本への入国が全面的に制限されています。

ただ、入国のためのビザは今月 20 日まで有効としていて、14 日、関西空港には駆け込みで中国やベトナムからの技能実習生が到着しました。 入国には、出発地での陰性証明とともに空港での抗原検査で陰性である必要があり、受け入れ団体の担当者たちが何時間も到着ロビーで実習生たちを待つ姿が見られました。 ベトナム人の実習生 2 人を迎えた受け入れ団体の甲斐優里さんは「2 人が入国できるか心配しましたが無事到着し、ほっとしました。 計画を早めに作ったことで間に合ってよかったです。」と話していました。 また、ベトナム人の男性は「入国までに時間がかかり心配でしたがやっと日本に来られたので家族のために頑張りたい」と話していました。 (NHK = 1-14-21)


RPF 製造業で外国人技能実習生の受け入れ可能に 廃棄物関係で初の職種追加

日本 RPF 工業会(東京都千代田区)は 1 月 8 日、外国人技能実習制度において、廃棄物由来の固形燃料「RPF」を製造する職種(RPF 製造職種)が認定職種に同日付で追加されるとともに、その「技能実習評価試験機関」として同工業会が認定されたと発表した。 同工業会によると、廃棄物関係の職種では初の職種追加だという。 今回の決定により、「海洋プラスチック」、「都市浮遊ごみ」等で大きな環境問題を抱えているアジアの開発途上国からの使用済みプラスチックの処理方法と、RPF 製造技術の移転要望に応えることができるようになったという。 同工業会は「単なる環境機械・設備の応援のみならず、技能実習を通じて広く技術移転が実現され、将来的な海外の人材育成、社会貢献に資することができることは大きな喜び」だとコメントした。

国内では年間約 160 万トン製造・自家発電設備で利用

RPF (Refuse derived paper and plastics densified Fuel)」は、主に産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙と廃プラスチック類を主原料とした固形燃料をいう。 RPF 製造職種は、この RPF を製造する職種。 RPF は、石炭燃料代替・CO2 削減効果のある高品位な産業用燃料として国内では年間約 160 万トン製造され、製紙業界をはじめとする自家発電設備で利用されているという。

同工業会は、RPF の特徴として、(1) 固形で密度が高いため、石炭やコークスと同等の利便性をもち、運搬性、貯蔵性に優れていること、(2) JISZ7311 で規格化され使用用途に応じた品質区分が規定されていること、(3) ボイラー等の燃料スペックに応じ、古紙と廃プラスチックの配合比率を変えるだけで容易に熱量調整が可能であること、(4) 石炭と比較して約 2/3 の CO2 排出量で新たな化石燃料が削減され地球温暖化対策に寄与できること、をあげる。

業界の「新しい歴史を開いた」

日本 RPF 工業会では、統一された品質基準のもと高品位の RPF の安定供給とその拡大に取り組む。 RPFをマテリアルリサイクルが困難な古紙と廃プラスチックの再資源化の受け皿として活用することを提案している。 同工業会では、2019 年より RPF 製造職種を外国人技能実習制度に追加する申請作業を進めてきたが、2021 年 1 月 8 日付で職種追加の省令改定が行われた。 同工業会は、今回の職種の追加決定について、「日本が誇る環境意識、廃棄物処理技術が、一貫した製造基準、生産工程として規格化され、公に認可されたことは、業界の新しい歴史を開いたと言っても過言ではない」とコメントしている。 また、申請にあたっては、環境省、経済産業省の業所管省庁の全面的な支援・助言を受けたことを報告している。 (環境ビジネス = 1-13-21)


帰国できず転職した技能実習生も、今日仕事始め

多くの職場で仕事始めとなった 4 日、新型コロナウイルスの影響で実習期間を終えたものの帰国できず、別の職場に「転職」したベトナム人の技能実習生も、ことし初めての仕事に臨みました。 ベトナム人の実習生、ディン・ミン・ホアンさん (23) は、大阪市の鉄筋加工会社での技能実習を終えて去年 4 月に帰国する予定でした。 しかし、新型コロナの影響で帰国できず、去年 9 月に始まった別の職種への「転職」の制度を利用して大阪・富田林市の農園で働き始めました。

新年の仕事始めの 4 日、ホアンさんは従業員全員の前で「ことしもお世話になります」とあいさつしたあと、農業用ハウスで年末に収穫し終わったきゅうりのつるの後片づけを慣れた手つきで行っていました。 出入国在留管理庁によりますと、帰国できない実習生は去年 11 月末の時点でおよそ 3 万 5,000 人に上るということです。 ホアンさんは、「去年はコロナで帰国ができず、家族に会えなくてさみしかったです。 ことしは農業でさまざまなことができるように頑張りたいです。」と話していました。 (NHK = 1-4-20)


コロナ影響? 「技能実習 3 号」急増 在留外国人、特定技能への移行敬遠か

3 年間の実習期間を終えた外国人技能実習生が最長 2 年間延長できる在留資格「技能実習 3 号」の取得者が急増している。 制度創設は 2017 年だが、今年 6 月末現在の取得者は 3 万 3,022 人。 国内の実習生が新たな在留資格「特定技能」ではなく、3 号に移行している実態をうかがわせている。 専門家は「人手不足をなお実習生で補っている業界は多い。 企業も外国人もコロナ禍で手っ取り早い 3 号に流れている。」と指摘する。

在留資格「技能実習」は 1 年目を 1 号、2 - 3 年目を 2 号としている。 3 号はこの 3 年間の実習修了後、技能検定 3 級相当試験に合格するなどすれば取得できる。 法務省の統計によると、3 号在留者は導入当初の 17 年は 8 人だったが、18 年は 7,398 人、19 年は 2 万 6,356 人と一気に増え、新型コロナウイルスの影響で海外との往来が途絶えた 20 年も伸び続けている。

一方、外国人労働者の受け入れ拡大を目的に 19 年 4 月に新設された在留資格「特定技能」は低調だ。 人手不足が深刻な 14 分野が対象で、技能実習からも移行できるが、9 月末時点で 8,769 人にとどまっている。 福岡県内にある実習生の受け入れ監理団体の関係者は「技能実習の方が慣れていて安心感がある。 特定技能はなじみがなく(実習生に移行を勧めるのは)抵抗がある。」と明かす。

企業からも「コロナ禍で人の往来が止まった。 国内にいる実習生が 3 号に移行する方が便利だ。」との声が上がる。 ただ、勤務先(実習先)を選べない技能実習は人権上の問題も指摘される。 特定技能には職業選択の自由があり、資格取得者はその分野の範囲内で就職先を選ぶことができる。 在留期間を最大限に延ばすため、3 号が利用されている側面も浮かぶ。 介護事業関係者は「技能実習 3 号まで 5 年滞在して特定技能に移れば、計 10 年在留できる。 雇う側も雇われる外国人にもその方がありがたい。」という。

移民問題に詳しい国立社会保障・人口問題研究所の是川夕氏は「恒常的な人手不足から技能実習は増加基調が続き、特定技能の様子見も続くだろう。 ただ、グローバルな人材獲得競争は激しく、世界経済の動向次第で今後の人材の流れがどうなるかは予断を許さない。」と指摘する。 (古川幸太郎、西日本新聞 = 12-30-20)


在留期限切れた元実習生ら派遣の疑い 人材派遣会社を書類送検

在留期限が切れたベトナム人の元技能実習生らを工場に派遣したとして人材派遣会社の千葉県内の営業所の社員らが逮捕・起訴された事件で、警察は違法な派遣について把握しながら十分な是正措置を取っていなかったとして、不法就労を助長した疑いで法人としての会社を書類送検しました。 東京・新宿区に本社がある人材派遣会社「ソシアリンク」の千葉営業所の所長ら 4 人は、在留期限が切れたベトナム人の元技能実習生らを千葉県市川市の食品工場に派遣したとして、出入国管理法の不法就労助長の疑いで逮捕・起訴されました。

警察によりますと、その後の捜査で本社が去年 11 月、80 人ほどを違法に派遣していることについて千葉営業所から報告を受けていたことがわかったということです。 本社はこのとき契約を解除するよう指示したものの、営業所で対応が徹底されず、違法な派遣が続けられたということで、警察は十分な是正措置を取っていなかったとして、法人としての会社をきょう不法就労助長の疑いで書類送検しました。 警察によりますと人材派遣会社の社長は調べに対し、「報告を受けてからの対応が不十分だった」などと話しているということです。 「ソシアリンク」は「書類送検の事実が確認できていないため、現段階ではコメントできない」としています。 (NHK = 12-18-20)


技能実習生へ「みんな待ってます」 タイ語の手紙に SNS 上で反響

「スタッフみんなベンツ君が日本に来てくれることを、心待ちにしています。」 短文投稿サイト「ツイッター」に投稿された、タイ語と日本語の手紙が反響を呼んでいる。 筆をとったのは奈良県橿原市の自動車整備会社「瀬川オート」の社長、瀬川英孝さん (49)。 今年 10 月に受け入れ予定だったタイ人の技能実習生が、新型コロナウイルスの感染拡大で来日できず、「ベンツ君と家族の不安が少しでもなくなれば」という思いで手紙を書いた。

「瀬川オート」の従業員は瀬川さんと妻を含め、計 5 人。 人手不足に悩んでいたとき、「タイの若者たちが技能実習生として日本で技術を学び、その後、母国で活躍している」という話を耳にした。 「これも何かの縁。 力になりたい。」 瀬川さんはタイ人の技能実習生を受け入れようと決意。 今年 2 月、日本オートビジネス協同組合(東京)が主催する合同面接会に参加するため、タイ・チェンマイへ飛んだ。 採用試験には、タイの専門学校などで自動車整備技術を学んだ 40 - 50 人が集まった。 3 人一組の面接は通訳を介して行われ、「みんな技術も受け答えもしっかりしていたが、そのうちの 1 人の笑顔がすごくよく、うちに合うと思った。」 それが「ベンツ」というニックネームのカムセーン・ティラパットさん (18) だった。

瀬川さんによると、タイでは名前にニックネームを付けるのが一般的だと聞いたといい、「子供にお金持ちになってほしいなら『ゴールド』。 車好きなら車に関係する名前をつけるようで、ベンツ君の両親は車好きなのかも。」と笑う。 面接後、合格を告げ、名刺に「スタッフ一同心待ちにしています」と調べたタイ語を添えて手渡すと「本当に喜んでくれて」と振り返る。

タイ語調べて … ツイッターに反響

しかし、その後世界的に新型コロナが蔓延。 10 月に予定されていたベンツ君の受け入れも当面延期となった。 「ベンツ君は自分がどうなるか不安な気持ちでいっぱいではないか …。」 瀬川さんの息子はベンツ君と年が近いこともあり、心配になって手紙を本人と家族へ送ることにした。 少しでも安心してもらいたい一心だった。 タイ語を学んだことはなかったが、インターネットの翻訳機能を使い、一つ一つの単語や文章を調べながら、手紙をつづった。 日本語で書いた同じ内容の手紙も添えた。

11 月に完成した手紙を会社のツイッターに投稿。 すると、大きな話題となった。 「世の中の技能実習生を迎える社長がみんなこうだったらいい」、「とてもあたたかい気持ちになりました」。 ツイッターのコメント欄にはこうした声が寄せられたほか、会社にも「感動した」というメールが届いた。 瀬川さんは「深い考えなく投稿したが、反響に驚いている」と話す。

来年来日へ「力になりたい」

技能実習生をめぐっては、受け入れ先で賃金や残業代の未払いといったトラブルや、実習生自身が失踪するなどの問題も起きている。 瀬川さんは、実習生を取り巻くこうした問題を今回初めて知ったといい「受け入れるからにはいいかげんなことはできない」と表情を引き締める。 入国制限の緩和によりベンツ君は、来年早々に来日する予定。 「コミュニケーションの不安をなくし、1 年で覚えるものを半年でも早く覚えてもらいたい」と専門用語をタイ語に訳した単語帳を作成しようと考えている。

手紙は日本オートビジネス協同組合の関係者を通じて届けられ、ベンツ君は「大変喜んでいた」という。 瀬川さんは「技術を少しでも覚えて帰ってもらって、母国で商売ができるようにしてあげたい。 微力でも、その力になりたい。」と来日を心待ちにしている。 (田中一毅、sankei = 12-15-20)


団交応じず、ベトナム人実習生に労組脱退迫る 不当労働行為を認定し再発防止命令 京都府労働委

京都府労働委員会は 9 日、福知山市の縫製加工会社「ヨーク」が労働組合との団体交渉に応じず、ベトナム人技能実習生の女性を労組から脱退させようとしたのは不当労働行為に当たると認定し、女性が加入していた個人加盟労組「きょうとユニオン(京都市南区)」に対して今後、同様の行為を行わないよう誓約することを同縫製加工会社に命じた。

命令書によると、女性は 2017 年 7 月に同社で働き始め、18 年 6 月に未払い賃金などを相談するため労組に加入した。 しかし同社は、労組側が弁護士以外に認められない業務を請け負った「非弁行為」を犯しているとして団交に応じず、女性に対し労組へ脱退届を送るための封筒に宛名などを書かせようとした。

府労働委員会は「労組側に非弁行為は認められず、団交を拒否する正当な理由がない」と違法性を指摘。 女性から脱退届を労組に送ってほしいと頼まれたとする会社側の主張を否定し、労組を脱退させようとしたと判断した。 きょうとユニオンが 19 年 3 月、府労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てていた。 代理人の塩見卓也弁護士は「技能実習生の弱みにつけ込んだ行為の違法性が認められたことは一つの先例として価値がある。 ほかの技能実習生に同じ行為が繰り返されないでほしい。」と話した。

ヨークの代理人は「命令書を受け取ったばかりでコメントできない」としている。 女性は最低賃金未満で長時間働かされたとして 19 年 3 月、会社側に未払い賃金などを求める労働審判を京都地裁に申し立て、同年 5 月に和解が成立した。 (京都新聞 = 12-10-20)


知人の在留カードでなりすまし コロナ給付金詐取容疑

ベトナムに帰国した知人女性に在留カードを日本へ郵送させ、その女性になりすまして新型コロナウイルス対策の特別定額給付金などをだまし取ったとして、ベトナム国籍の女が逮捕、起訴された。 なぜ審査をすり抜けたのか。出国の事実が在留カードに記録されないことが一因という。 詐欺と出入国管理法違反(他人名義の在留カード行使)などの罪で起訴されたのは神戸市中央区のグェン・ティ・ハン被告 (30)。 公判での検察側の冒頭陳述や兵庫県警の捜査関係者によると、2016 年に留学資格で来日。 コロナ禍で帰国できなくなり、在留期限が切れた今年 4 月以降は不法残留の状態だった。

ハン被告は今年 6 月、ベトナムにいる知人女性に「仕事がしたい」と SNS でメッセージを送り、在留カードを貸してくれるよう頼んだという。 この知人女性は 17 年に留学資格で日本に入国したが、出産準備のため今年 1 月に帰国。 一時的な出国であれば在留カードを返納しなくてもよい制度を利用し、持ったまま出国していた。 女性はハン被告の求めに応じ、自分名義の在留カードとキャッシュカードを国際郵便で送ったという。 出入国管理法は、在留カードの常時携帯を罰則付きで義務づけているが、一時出国中は適用されない。

ハン被告は 7 - 9 月、この在留カードを身分証代わりにして知人女性になりすまし、神戸市内の工場で働いた。 だが、「生活費が足らなかった」という。 ハン被告は在留カードを申請窓口で提示し、7 - 8月には知人女性が住民票を置いていた千葉県習志野市から特別定額給付金 10 万円を詐取。 同様に在留カードを本人確認に使って住民票を神戸市に移し、8 月に兵庫県社会福祉協議会が貸し付けを行う緊急小口資金 20 万円をだまし取ったとして、逮捕、起訴された。

知人女性が一時出国中にもかかわらず、本人の住民票が神戸市に移されたことに大阪出入国在留管理局が気づき、なりすましが発覚した。 兵庫県警は、知人女性にも出入国管理法違反(在留カード提供)の疑いがあるとみている。 在留カードには、偽造対策の IC チップが内蔵されているが、名義人が日本を出国したことは記載も記録もされない。 申請の窓口で、ハン被告自身と在留カードの写真との違いに気づけば、なりすましは防げたはずだ。 だが兵庫県警によると、どちらの申請窓口の担当者も、ハン被告がマスク姿だったため「見分けられなかった」と話しているという。 迅速な給付のため審査が簡素化されていた時期でもある。 ある県警幹部は「同じベトナム人ということもあって、見抜くのは難しかっただろう」と話す。

なりすまし → だまし取りの手口、他にも?

在留カードは、在留期限を迎えて出国する際は返納しなくてはならない。 ただ在留期限内に一時出国して再び日本に戻る場合は、各地の出入国在留管理局に申請して事前に再入国許可を得れば、在留カードを持ったまま出国できる。 再発行の手間を省くためだ。 さらに、12 年に外国人登録証から在留カードに切り替わった際、1 年以内の再入国なら手数料も申請書の提出も不要となり、空港での簡単な手続きに制度が簡略化された。 今回の事件でベトナムに一時帰国した知人女性が利用したのも、簡略化された新制度だった。

在留カードを使ったなりすましについて、出入国在留管理庁の担当者は「把握している限り初めてのケース。 在留カードには名義人が出国中かどうか分かる記載がなく、チェックしても見抜けないのは問題だ。」と話す。 捜査関係者によると、ハン被告以外の複数の人物も、同様のなりすまし手口で社協の緊急小口資金をだまし取っていた疑いがあるという。出入国手続きの代行を手掛ける兵庫県内の行政書士は、「出国中を示す刻印や記載欄を設けるなどの対策が必要だ」と話す。 (足立優心、asahi = 12-3-20)


コロナと実習生 制度の矛盾が露呈した

コロナ禍に伴う解雇などで外国人技能実習生らが苦境に陥っている。 「国際貢献」の美名とはかけ離れた「雇用の調整弁」としての技能実習制度の本質が露呈した。 制度の廃止を検討すべきだ。 北関東で家畜や果物が大量に盗まれた事件に関連し、群馬県警は 10 月、入管難民法違反などの疑いでベトナム人の技能実習生ら 10 数人を逮捕した。 大半は県外の実習生で「コロナで仕事がなくなり、群馬のコミュニティーに身を寄せた」と話しているという。 外国人実習生の人数は昨年末時点で約 41 万人。 その約半分がベトナム人だ。 コロナ解雇に加えて、祖国と結ぶ定期便は運休。 多くの実習生が来日のため、祖国で多額の借金をしており、手ぶらでは帰れない事情も抱えている。

かねて技能実習制度は賃金の未払いや不当な労働条件など問題が多く、政府は改善のため、2017 年に技能実習法を施行した。 3 条で「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と定めたが、実態は有名無実。 コロナ解雇はその典型といえる。 祖国の送り出し団体と日本の派遣先をつなぐ監理団体、それを統括する「外国人技能実習機構」も設立した。 しかし、実習生の窮状に対応しているとは言い難い。 政府は 4 月、コロナ禍で解雇された実習生らの他業種への就労を特例として認めた。 従来は本国で経験した技術を日本で磨くという制度の趣旨から、他業種への転職は許されなかった。 「出稼ぎ」の実習生には朗報だが、技能向上という建前はここでも崩れた。

加えて、特例には政府の弥縫(びほう)策という側面もある。 昨年 4 月に施行された特定技能制度は農業や介護などの単純労働を外国人に認めるものだが、送り出し国には不評で応募が予想を大幅に下回っている。特例でその不足の穴埋めに解雇された実習生を回した形だ。 結局、「技術移転」などの名の下、安価で都合のよい労働力を集めるという制度の本質がコロナ禍で浮き彫りになったといえる。

国の制度で受け入れた以上、政府には実習生を守る責任がある。 まずは雇用助成金などで解雇を防ぎ、健康相談などの充実も図るべきだ。 そのうえで技能実習制度を廃止し、当面は特定技能制度を拡充する必要がある。 菅義偉首相は官房長官時代の昨年 12 月、外国人受け入れの関係閣僚会議で「外国人が国を選ぶ時代」と発言した。 それにふさわしい対応を求めたい。 (東京新聞【社説】 = 11-26-20)


「本当はやりたくない」 摘発風俗店で働く実習生の構図

外国人技能実習制度の理想と現実

記事コピー (8-5-20 〜 11-22-20)


妊娠 … 言えない 外国人実習生「解雇が怖い」

新生児 2 人の遺体を自室に放置したとして、熊本県芦北町で働くベトナム国籍の外国人技能実習生の女 (21) が 19 日、死体遺棄の疑いで県警に逮捕された。 容疑者は雇用主らに妊娠の事実を隠していたが、「妊娠すれば帰国させられる」と技能実習生が相談しないケースは全国的に多い。 県内でも実習生が増えており、支援団体は正しい情報の周知と環境整備を急ぐよう訴える。 外国人技能実習生には日本の労働法が適用され、結婚や妊娠、出産を理由にした解雇が禁止されているほか、産前産後の休暇や育児時間も保障される。 妊娠・出産の場合も企業の加入する健康保険が適用され、出産育児一時金が支給される。

ただ、県内で外国人支援に取り組む「コムスタカ - 外国人と共に生きる会(熊本市)」代表で、行政書士の中島眞一郎さん (66) は「制度が実習生や現場に十分周知されていない。 制度を知らない実習生に一部の企業や監理団体が中絶や帰国を強いることもある。」と明かす。 「コムスタカ」には県内の技能実習生や留学生らから年 300 件ほどの相談がある。 妊娠・出産に関しても今年に入って 5、6 件寄せられている。 「解雇されることが怖かった。」 予期せぬ妊娠をし、昨年相談をした技能実習生は中絶できない時期になっても一人で抱え込んでいたという。 本人が出産と就労の継続を希望したため、中島さんが実習生の所属企業や監理団体、出入国在留管理庁などとやりとりし、出産や子どもの在留資格の取得を支援した。

中島さんは「妊娠を理由に帰国させるのは違法。 制度上は日本で出産し、就労を続けることは可能。」とする一方、「産休中の収入だけでは生活費を賄えず、出産後の暮らしの手助けも必要。 支援者なしでは制度は機能しない。」と指摘する。 逮捕された容疑者は、雇用主が 13 日に八代市の監理団体に「10 月から体調が悪そうだ」と相談。 同団体は容疑者に尋ねたが、妊娠のことは話さずに出勤を続け、病院にも行っていなかったという。

東広島市でも生後間もない赤ちゃんを遺棄したとして技能実習生のベトナム人の女 (26) が 12 日逮捕されている。 中島さんは「借金を背負って働きに来る実習生が多く、解雇を恐れて相談につながりにくい。 自分たちとつながっていれば。」と悔やむ。 「今回の事件は氷山の一角。」 24 時間対応の妊娠相談窓口を設置する慈恵病院(熊本市西区)にも、過去に技能実習生の望まない妊娠に関して相談があった。 同市外国人総合相談プラザ(中央区)は 19 言語で相談に応じ、弁護士らにつなぐ支援もしている。 県外国人サポートセンターは「外国人の妊娠や出産の相談については病院を紹介したり、通訳を派遣したりもできる。 悩みごとがあれば気軽に相談してほしい。」としている。 (深川杏樹、豊田宏美、山本文子、熊本日日新聞 = 11-21-20)


都内の風俗店を摘発 コロナで生活苦の技能実習生ら雇用

技能実習生として来日したベトナム国籍の女性を雇い、男性客に性的なサービスをさせたとして、警視庁は 10 日までに、東京都荒川区の派遣型風俗店「美・ワンダフル」を出入国管理法違反(不法就労助長)容疑で摘発し、経営者の男女 2 人を同容疑で逮捕した。 逮捕されたのは、いずれも住所不詳の川口宣之 (48) と張維君 (34) の両容疑者。 技能実習や留学目的で来日し、コロナ禍で職を失って生活苦になったり、希望しても帰国できなかったりした女性ら約 30 人を雇用し、4 月以降だけで約 1 億円を売り上げたという。

警視庁は 9 日以降、女性らの待機場所だった雑居ビルや接客用のレンタルルームを捜索。 これまでに 24 - 35 歳のベトナム籍の女 3 人を同法違反(単純資格外活動)などの容疑で逮捕した。 調べに対し、女らは「コロナ禍で帰国できなかった」、「コロナの影響で経済的に困窮した母国の家族にお金を送るため、風俗店で働いた」などと話しているという。 技能実習は外国人に日本の技術を学んでもらう制度だが、労働条件の悪さを理由に逃げ出す人も少なくない。 コロナ禍で解雇や給与減により苦境に陥る人も出ているという。 一方、留学生は飲食店などでのアルバイトができるが、多くの人が同様の理由で経済的に厳しい状況になり、帰国したくてもできない人もいるという。 (田中紳顕、asahi = 11-10-20)


埼玉の豚盗難、ベトナム人元実習生を逮捕へ 群馬での被害と関連捜査

食用目的で豚を自宅で違法に解体したとして、埼玉県警はベトナム国籍の無職の男 (29) = 同県上里町 = を 1 日にも、と畜場法違反の疑いで逮捕する。 県警は売却目的だった可能性もあるとみて、北関東で相次いだ家畜などの大量窃盗や、群馬県警が同容疑で逮捕したベトナム人らとの関連を調べる。捜査関係者への取材でわかった。

捜査関係者によると、男は今年 7 月ごろから 8 月 13 日までの間、食用目的で自宅アパートの風呂場で豚 1 頭を解体した疑いがもたれている。 近隣住民から「住人が豚や梨を盗んだり売ったりしている」との情報提供があり、県警は 10 月 11 日にアパート付近で男を職務質問。 17 日に男の自宅を捜索し、21 日に出入国管理法違反(不法残留)容疑で男を逮捕していた。 男は 2018 年に技能実習生として来日していた。

男のスマートフォンには今年 8 月中旬に SNS で別のベトナム人に毛などを処理した豚の画像を送信した履歴が残っており、「買ってくれる人がいたら教えてほしい」などとメッセージが添えられていたという。 男はこれまでの調べに「ベトナム人 5 人くらいで部屋に住んでいた」と話し、画像の豚は「SNS を通じて別のベトナム人から買い、解体して知人と食べた」などと述べているという。 (山口啓太、宮脇稜平、黒田早織、asahi = 11-1-20)

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「仕事きつい」各地で失踪 元実習生 10 人、群馬に集う

北関東で相次いでいた家畜と果物の大量窃盗に絡み、群馬県警が出入国管理法違反の疑いで逮捕したベトナム国籍の男女 13 人のうち元技能実習生の 10 人は、県外の実習先から失踪するなどして同県太田市の貸家に集まっていたことが捜査関係者への取材で分かった。 「仕事がきつかった」などと話しているという。 捜査関係者によると、元実習生 10 人以外の 3 人も群馬県外から来ていた。

東京、埼玉、茨城、静岡、岐阜、島根、熊本といった地域の受け入れ先などを頼って来日後、実習生は、仕事内容や人間関係を理由に実習先から失踪するなどしたとみられるという。 技能実習は日本の技術を学んでもらう名目の制度だが、低賃金や長時間の労働が問題視され、コロナ禍でさらなる労働環境の悪化も指摘されている。 法務省によると 2019 年、実習生 41 万人のうち半数の約 22 万人がベトナム人で、同年に失踪した実習生約 8,800 人の半数以上がベトナム人だという。 SNS から情報を得て、ベトナム人コミュニティーのある群馬に集まったと県警はみている。 (asahi = 10-31-20)


「技能習得」矛盾あらわ 実習生、相次ぐコロナ解雇 … "転職" 解禁も

新型コロナウイルスの影響で、外国人技能実習制度の矛盾が改めて浮き彫りになっている。 日本の技術を習得してもらう目的で企業などに受け入れられている実習生が「解雇」されるケースが相次ぎ、国は救済措置として人手不足の別の産業に振り向ける形での「転職」を解禁した。 実習生が労働力として扱われる実態がコロナ禍でさらに鮮明となっており、専門家は「実習制度はただちに廃止すべきだ」と指摘する。

昨夏に「とび」の実習生として来日したベトナム人のアインさん (25) = 東京 = の職場は、建設現場ではなく関東のテーマパークだった。 ぬいぐるみの修理や清掃の仕事で、20 万円と聞いていた月給は 5 万 - 11 万円。 感染拡大を受け、2 月にテーマパークが休園すると待機を命じられ、5 月に解雇された。 実習先の変更を監理団体に申し出ても取り合ってもらえなかった。

日本の技術を習得させ、相手国の発展につなげることが目的の技能実習制度。 実習生は指導を受ける立場のため別業種への転職はできず、実習先を変わることも自由にできない。 法律には「実習は労働力の需給調整の手段として行われてはならない」とあるが、実際には安価で都合の良い労働力として扱う行為が横行している。 アインさんを保護した NPO 法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊代表理事は「実習生は母国で借金して来日する。 働ける期間も限られ、理不尽な仕打ちを受けても声を上げられない。 立場の弱さがコロナによる『解雇』で露骨に出た。」と話す。

厚生労働省によると、新型コロナの影響で実習が中止された実習生は 9 月 11 日時点で 3,515 人に上る。 一方で、予定通りに来日できない実習生が相次いだことで、受け入れ側にも農産物の減産を余儀なくされるなどの悪影響が出ており、監理団体が破産に追い込まるケースも出ている。 このため出入国在留管理庁は 4 月、解雇された実習生らを対象に人手不足の産業での就労を可能とする特別措置を実施。 9 月には、航空便の運休で帰国が困難になった元実習生にも対象を拡大した。 感染収束が見えない中、措置は当面継続される見込みだ。

入管庁によると、この措置で転職した人は 9 月 7 日時点で 991 人。 約 7 割が実習生で、農業や食品加工分野への転職が大半を占める。 アインさんもその一人で、今夏、食品加工会社に就職が決まった。 「借金が 80 万円残っている。 また仕事ができてうれしい。」と屈託なく話す。 少子高齢化による労働力不足を見据え、政府は外国人の就労拡大を推進。 昨年 4 月の改正入管難民法施行で「特定技能」の在留資格が新設され、人手不足の農業や介護など 14 業種で外国人が働けるようになった。

だが、今年 6 月末時点の特定技能外国人の受け入れは 5,950 人にとどまり、政府が想定する「2024 年までに最大約 34 万 5 千人」は遠い。 相手国との調整に時間を要していることなどが低調の理由とされる。 そうした中、今回の「転職解禁」は人手不足の 14 業種に就くことが前提で、滞在が認められた 1 年間で働きながら日本語などを学び、試験に合格すれば特定技能に移行できる。 外国人の労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「特別措置は、受け入れが進まない特定技能の分野に、国内で余った労働力を回すその場しのぎの対応にすぎない。 実習制度は廃止し、特定技能の受け入れが進む体制を早急に整備すべきだ。」と指摘する。 (久知邦、西日本新聞 = 10-26-20)