石巻の津波伝承館、評判さんざん 監修者語る「盛大な失敗」の決定打

宮城県石巻市に 6 月、国と県が整備した「みやぎ東日本大震災津波伝承館」が開館した。 震災の記憶と教訓を伝え継ぐ展示施設のはずが、映像が見づらい、他県施設に比べ見劣りするなどと、評判はさんざんだ。 展示を監修した山内宏泰さん (50) = リアス・アーク美術館長 = 自身が「盛大な失敗だ」と認める。 なぜこんなことに?

- - ガラス張りの円形の建物は、外光が注ぎ込み、中で展示をするのは不向きに思えます。

「建物をつくった国は、祈りの空間と位置づけ、式典に使うことを想定した。 建物の設計が終わったところ(2017 年度)で、県が伝承の展示をすることになり、あとづけで検討が始まった。 そこに決定的なボタンの掛け違えがあった。」

- - 山内さんはどう関わったのですか。

「県が展示設計のプロポーザルを募集し、その審査員を頼まれた。 18 年 8 月に審査で選ばれたのが、業界大手の乃村工芸社。 建物の半周分のガラス窓を可動式のスクリーンで覆い、そこに映写するなどの提案で、私も評価していた。」 「ところが県が国(所管する国土交通省・東北国営公園事務所)に乃村の案を示したところ、窓をふさぐのはダメだといわれた。 ほかにも条件があり、案を一からつくりなおすことに。 県の依頼で 19 年 11 月、展示制作の監修アドバイザーを引き受けた。」

- - 国側はどんな条件を出してきたのですか。

「乃村は窓に代わり、中央部の横長の壁を映像に使うことを考えた。 だが壁にモニターを埋め込むのも、映写が見えやすい高反射率の塗料を塗るのもダメ。」 「展示物を置くのも、高さ 115 センチまでと制限された。 外にある献花台や日和山を見通せるよう、視線確保のためだ、と。人の視線の高さ 140センチを中心に展示するのが、博物館の常識なんだが …。」 「展示を想定していなかった建物を展示空間に変えるための工夫が、却下される繰り返し。 誰のための、何のための施設なのか。」

「決定的なのは、展示内容が固まったところで、国交省東北地方整備局が、役所の震災時の対応などについて展示させてほしいと、県に言ってきたこと。 『いい加減にしてくれ』と思った。 いずれ伝承団体の企画展示にも使えると考えていたミーティングスペース(19 平方メートル)を、明け渡すことになった。」

- - 相当腹にすえかねている様子です。

「これまでも似た例はある。 好景気の頃、『○○ミュージアム』などと呼ばれる箱物が各地にできた。 行政がビジョンもないまま予算をつぎこみ、業者が電気仕掛けなどでつくりこんだ展示をつくり、結果、何のためかわからない、維持費だけが高くつく施設がたくさんある。」 「大災害の被災地でも復興予算がつくため、同じことが繰り返されている。」

- - せっかくできた伝承館。 これからどうすればいいですか。

「石巻は最大の被災地なのに、住民の声を十分聞かずに計画が進められた。 地域の住民が足を運び、こんな展示でいいかどうか、考えてほしい。」 )聞き手 = 編集委員・石橋英昭、asahi = 9-6-21)

みやぎ東日本大震災津波伝承館〉 石巻南浜津波復興祈念公園内にあり、1,520 平方メートルの建物のうち展示面積 765 平方メートル。 建物に 10 億円、展示に 3.5 億円をかけた。 岩手県の同種施設(陸前高田市)や福島県施設(双葉町)に比べ規模は小さい。

失われた街の記憶や津波の教訓を伝えるシアター、パネル展示、被災者や語り部の証言映像などがある。 県復興支援・伝承課は「国が整備した施設で、国のコンセプトの制約の下でできるものをつくった」としている。 この伝承館とは別に、国として震災ミュージアムをつくってほしいと要望を続けているという。


ラーメン店ゼロの町ついに返上 切実な訴えに「究極の名店」が出店へ

ラーメン専門店が一軒もない栃木県茂木町に、茨城県土浦市の有名店「特級鶏蕎麦 龍介」が出店することが 31 日、決まった。 ツイッターでラーメン店の誘致を進めてきた町幹部は「究極の一杯を出す名店」と大喜び。 今後も出店意欲があるラーメン店を呼び込むという。 「鶏白湯(ぱいたん)の究極のラーメンが茂木でも食べられるなんて、夢のようですよ。」 31 日、町商工観光課の滝田隆課長 (53) は記者に興奮気味に語った。

人口約 1 万 1 千人、65 歳以上の町民が 4 割を超える過疎の町。 周囲も認めるラーメン党の滝田課長は、町内の交流人口の増加と地域活性化を図るため、ラーメン店の誘致を仕掛けた。 「茂木町にはラーメン屋が 1 軒もありません。 ラーメン好きは日々の楽しみを失い、仕事が手につかない人もいるとか …。 そこで、このような人々を救うため、町内でラーメン屋を始める方を募集します。」 6 月下旬、町の切実な思いをつづった募集告知は、町の公式ツイッターなどから全国に拡散されて話題となった。 5 事業者が計画書などを提出し、町長面談や書類審査を経て、役場近くの空き店舗に入居するラーメン店が決まった。

龍介は、全国のラーメン店を紹介する「ラーメンデータベース」の通算ランキングで、鶏白湯部門の全国 1 位に輝く人気店。 鶏のうまみを凝縮した濃厚スープが特徴で、極太麺で味わうつけそばもある。 新たに「茂木店」を営むのは、栃木県益子町で建設会社を営む塚田竜也さん (45)。 龍介の運営会社の協力を取り付け、町の募集に手を挙げた。 「龍介」の名を冠した初のフランチャイズ店として年末までの開業を目指す。 塚田さんは「売り上げが一日 10 万円だと人気店。 その自信はあります。」と気合十分。 茂木町特産のゆずやアユを使ったメニューも考案中という。

龍介の運営会社は、栃木県内では宇都宮市と壬生町で同じく鶏白湯のラーメン店をプロデュースしているが、同社によると、麺は龍介と異なる。 運営会社代表の浅野明仁さん (48) は「本店を開業して 10 年目の節目。 本店と同じ味でぜひ成功したい。」と意気込む。 (池田拓哉、asahi = 9-1-21)

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町に 1 軒もないから … ラーメン専門店「急募」 予想以上の反響に悲鳴

ラーメン専門店が町内に 1 軒もない栃木県茂木町が出店を呼びかけ、全国から熱い視線が注がれている。 SNS で町の「急募」の告知が拡散し、町が用意した空き店舗に下見希望者が相次いでいる。

「茂木町にはラーメン屋が 1 軒もありません。 ラーメン好きは日々の楽しみを失い、仕事が手につかない人もいるとか …。 そこで、このような人々を救うため、町内でラーメン屋を始める方を募集します。」

切実な思いをつづった募集告知は 6 月下旬、町の公式ツイッターなどから全国に拡散した。 FM ヨコハマ(横浜市)の DJ もツイートし、大きな反響を呼んだ。 ツイッターの閲覧数は 3 万 2 千超。 「仕掛け人」の町商工観光課の滝田隆課長 (53) は「小さな町の情報がこんなにバズるなんて、だんだん怖くなってきました」と、うれしい悲鳴をあげる。 町は役場近くの元居酒屋の空き店舗を準備。 55 歳以下の人を対象に出店を募っている。 家賃は 2 年間、月 6 万円を 1 万円に値下げする。 開店費用は 150 万円を上限に半分を町が補助する。 金土日を含む週 5 回以上は店を開け、1 日 6 時間以上の営業が条件だ。

遠くは福岡からも問い合わせがあり、空き店舗の内覧予定はすでに 8 件決まった。 東京からの希望者が半分という。 反応もよいため、町は募集期限を当初の 8 月末から 7 月末に前倒しした。 町によると、5 年ほど前に最後のラーメン専門店が閉店したという。 ただ、専門店はないが、そば店や食堂がラーメンも提供し、「道の駅もてぎ」でも「ゆず塩らーめん」が人気を集めている。

なぜ専門店にこだわるのか。 ラーメンを食べるため週 2 回は町外に遠征している滝田課長は「その店ならではの究極の味で、命をかけて勝負する姿が専門店ならではの醍醐味なんです」と熱く語る。 茂木町は人口約 1 万 1 千人。 65 歳以上の町民が 4 割を超える。町役場周辺の商店街は昼間でもシャッターを下ろした店が目立つ。 「町外の人たちを呼び込みたい。 おいしいラーメンを食べた後は町内のお店やツインリンクもてぎ、道の駅にも立ち寄ってもらいたい。 町内に消費を生み出したいんです。」 (池田拓哉、asahi = 7-15-21)


八王子より人口少ない鳥取県が狙う移住の勝ち組

全国最少の鳥取県人口が 7 月の推計で 55 万人を割り込んだ。 少ないながらも長らく「60 万県民」を維持してきたが、東京一極集中などの影響を受けて人口が減り続けた。 一方で、昨年の移住者数は 2 千人を超え、新型コロナウイルスの感染拡大下にあってもほぼ目標をクリア。 テレワーク(リモートワーク)の普及により「仕事は都会、居住は地方」というライフスタイルが現実になる中、同県は移住者受け入れ拡大に一段と力を入れている。

60 万県民時代の終焉

54 万 9,941 人。 これが 7 月 1 日現在の鳥取県推計人口だ。 1 年間で 4,621 人減った。 全国 46 位で鳥取県の次に人口が少ない島根県(約 66 万 6,600 人)より 12 万人弱少なく、市部との比較では東京都八王子市(約 56 万 2,500 人)と兵庫県姫路市(約 52 万 6,300 人)の中間くらいの人口規模だ。 鳥取県人口は、終戦直後の昭和 20 年の人口調査で 56 万 3,220 人だった。

以降、5 年に 1 度の国勢調査をベースに人口の変遷をみると、昭和 63 年(国勢調査の補間補正人口)には 61 万 6,371 人と最多となったが、平成 22 年に 60 万人の大台を割り込んだ。 60 万人から 59 万人まで 1 万人減少するのに要した月数は 43 カ月だったが、55 万人から 54 万人までは 30 カ月と減少ペースが上がっている。 国勢調査ベースで昭和 55 年から 25 年間、人口 60 万人時代が続いており、中高年の県民にとっては「鳥取県人口は 60 万人」が共通認識。 それだけに、鳥取市の 60 代の元公務員は「60 万人を割ったときはショックだった。 それが、55 万人も割り込むとは。」と嘆く。

人口減は悪いこと?

「わたしも鳥取県出身で、人口減に寂しい思いはある。 ただ、自分自身はここ数年、鳥取で暮らし、住みやすさを感じている。 そもそも人口減は悪いことなのか。 今はオンラインでいろいろなことができる。 主体的に楽しんで生きればよいのでは。」

こう話すのは、平成 29 年 10 月、東京から鳥取市鹿野町に家族 3 人で移住した吉井秀三さん (43)。 東京の IT (情報通信)会社のサラリーマンだった吉井さんが地方での生活を決めたのは、「元々、いつかは地方で暮らしたいと思っていた。 結婚して住んだ東京の家が 1 DKと狭く、広い家、一軒家に住みたいと思ったから。」 自分の出身地の鳥取か、妻の出身地の兵庫、両方の実家に近い岡山の中から鳥取市鹿野を選んだのは、知人に勧められたのが理由だった。 移住を機に会社をやめた。

新型コロナ禍で今や当たり前になったパソコンを使ったリモートワークだが、4 年前はまだ一般的ではなかった。 吉井さんがこの仕事スタイルを先取りできたのは、培った IT スキルでマーケティングや経営・企画、プロジェクト推進などの仕事の需要が見込め、リモートで行えたから。 移住後は自宅 2 階に仕事場を設けて 1 日 7 - 8 時間、パソコンに向かう。 その合間に、1 週間に 1 度は近所に借りている畑で、ジャガイモや玉ねぎ、ショウガ栽培の農作業をする。 地域の猟友会に所属してイノシシやシカの食害を防ぐためのパトロールは日課で、地域の学校運営協議会に入ったり、要請を受けて公民館で SNS 講座を開いたりと、積極的に地域とつながっている。

吉井さんは「あまり行く機会はないが、東京に行こうと思えば車で 30 分程度で鳥取空港まで行け、そこから飛行機で約 80 分で東京に着く。 大阪から東京に行くより早い。 料理が好きだが、鳥取では新鮮な魚や野菜が手に入り、農業体験もできる。」と、移住生活を満喫している。

移住者めぐり「競争」

地方への移住希望者にとって、地域のもつ魅力とは別に、受け入れ先の自治体や民間団体のサポートも重要な選択ポイントだ。 奥大山の麓に I ターンし起業した首都圏出身の 60 歳代の男性は、拠点となる事業所を町に斡旋)してもらい、事業開始のための資金の一部に県の補助金を充当した。 また、倉吉市のフィギュア製造工場で働きたいと移住してきた男性は、市から住宅を紹介された。

「住みたい田舎」として鳥取市や倉吉市などは毎年、子育て世代を中心に高い評価を得ている。 背景には、県や市などが移住前後のフォローアップ体制充実に注力し、他県との差別化を図っていることもある。 県が総勢 70 人に委嘱している「とっとり暮らし(移住)アドバイザー」は鳥取への移住者らでつくる組織で、実体験をもとに新規移住者の相談にのる。 県内各地に 17 団体ある移住者支援団体は、移住者同士や地元民らとの交流機会をつくり、空き家情報の提供なども行っている。 移住者の相談を受け付ける移住定住サポートセンターは仕事も住まいもワンストップで支援している。

平成 27 年度から令和元年度までの 5 年間で計 1 万 427 人が全国から鳥取県に移り住んだ。 新型コロナウイルス禍の昨年度は、2,136 人(1,548 世帯)にとどまったが、都道府県をまたぐ移動が一定程度緩和された下半期は 1,280 人と 27 年度以降で過去最多の移住者数となった。 令和 2 - 6 年度の 5 年間に 1 万 2,500 人(年間 2,500 人)の移住を目標に掲げる県ふるさと人口政策課は「最終的にはこれまでと同水準の移住者数となった。 新型コロナの影響で地方での暮らしや新たなライフスタイルに関心が高まっており、各県が競争だ。 まず、移住希望者に鳥取県の情報を届けることが大切。」としている。 (松田則章、sankei = 8-28-21)


コウノトリの生育環境が生んだ、兵庫・但馬発のブランド米 「冬の田んぼに水を張る」生産者の心配りも

兵庫県北部、但馬地方は、山と海に囲まれた自然豊かな地域。 その自然から生まれるお米が魅力の 1 つで、県内有数の米どころでもある。 その但馬から生まれたお米が、「コウノトリ育むお米」。 その生産の背景には、国の特別天然記念物で、現在は但馬の地で生息・繁殖しているコウノトリと大きく関わりがあるという。 劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬(ラジオ関西)』に、JA たじま営農生産部米穀課の木谷和喜課長、住吉良太係長がゲスト出演。 国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰の様子や、ブランド米「コウノトリ育むお米」生産のエピソードなど、放送のなかでトークを展開した。

日本における野生のコウノトリは 1971 年に姿を消したが、最後のコウノトリが豊岡市に生息していたことから、人工繁殖に取り組むことに。 ロシアから健康なヒナを 6 羽譲り受け、人工飼育を試みるが、なかなかふ化しないなど苦労も経験。 その際に卵を調べてみると、農薬に含まれる有機水銀が影響していることが判明したという。 そこで行政・JA・生産者が一体となり「人間と自然が共生できる環境を作ろう」と田んぼをめぐる環境を改善。 すると 1989 年には待望のヒナが誕生し、現在では 200 羽を超えるコウノトリが観測されている。

コウノトリがのびのびと育つ環境で栽培されたお米は「コウノトリ育むお米」として今や海外 8 か国でも食されるブランド米に。 番組パーソナリティーの平田さんも「ネーミングがいいですよね。 最初に食べて驚いたのが『冷めてもおいしい』こと。 子どものお弁当でも好評です。」と感想をコメント。 肉食であるコウノトリのエサを安定供給するために、冬場も田んぼに水をはったり、強い稲を作るために重要な夏の「中干し」もあえて 1 か月遅らせるなど、生産者の心配りもあるとのこと。 JA たじまでは、これまで田植え体験や生き物観察会など消費者との接点も作りながら普及に努めてきたという。

平田さんは「オリンピックのボートチームが合宿場として豊岡を選んだのは無農薬の食事が安定的に供給される、というのも一因。 健康志向の人々にとってこれは観光の面においても強みになる」と述べた。 最後に JA たじまの木谷さんは「但馬には他にも生産者が真心こめてつくったお米がたくさんあります。 ぜひ、食べ比べてみてほしい。」と呼びかけていた。 (ラジオ関西、ラジトピ = 8-16-21)


イオンモール豊川、23 年春に開店 スズキ工場跡地に

イオンモールは 16 日、愛知県豊川市白鳥町兎足(うたり)で開発中の商業施設「イオンモール豊川(仮称)」が、2023 年春に開店すると発表した。 三河地域ではイオンモール岡崎(岡崎市)を超えて最大の敷地面積を擁するイオンモールとなる。

計画では地上 3 階建ての敷地面積約 12 万 8 千平方メートル、延べ床面積約 10 万 8 千平方メートルの施設となる。 約 200 の専門店が入り、駐車台数は約 3 千台。 場所は 18 年に撤退したスズキ豊川工場の跡地で、豊川市の中心部から西に約 3 キロ。 名鉄八幡駅から徒歩圏内にあり、幹線道路からのアクセスも良好で、東三河全域から幅広い集客が期待できるという。 県内へのイオンモールの出店は、今秋に開業するノリタケカンパニーリミテド本社工場跡地(名古屋市西区)の店舗に次いで 14 店目となる。 敷地面積は三河地域で最大、愛知県内全体では 4 番目に広いという。 (根本晃、asahi = 8-16-21)


終わり見えない記録的大雨 広い範囲で災害おきる可能性

日本付近で停滞する前線の影響で 13 日、九州では記録的な雨量となり、北陸や中国でも大雨となった。 広島市には一時、大雨特別警報が出された。 気象庁によると、前線の停滞は 1 週間程度は続く見込み。西日本を中心に東北から九州の広い範囲で「いつどこで大雨による災害がおきてもおかしくない」状況が続く。 総務省消防庁によると、13 日夕時点で、長崎県雲仙市小浜町での土砂崩れにより、1 人が死亡、2 人が行方不明になっている。

13 日午後 7 時 10 分までに、48 時間雨量の最大値として雲仙市で 743.0 ミリ、佐賀市で 470.5 ミリ、富山県氷見市で 250.5 ミリを記録するなど、九州と北陸の 8 地点で観測史上最多に。 広島市では 13 日朝、発達した雨雲が次々と流れ込む線状降水帯が発生して「経験したことのないような大雨」になり、昼過ぎまで大雨特別警報が出された。 気象庁によると、日本の南にある太平洋高気圧の北方への張り出しが弱いため、熱帯域の暖かく湿った空気が日本付近に流れ込み、停滞する前線を活発化させている。 「梅雨末期と似たような気圧配置(同庁の担当者)」という。

すでに記録的な大雨が降った九州北部では、14 日午後 6 時までの 24 時間でさらに 300 ミリの雨量が予想され、その後の 24 時間でも 200 - 300 ミリの見込み。 東北から九州にかけて少なくとも 15 日までは広い範囲で大雨が続き、豪雨災害をもたらす線状降水帯がどこで発生してもおかしくない状況が続く。 終わりの時期もはっきりと見えていないという。 (山岸玲、asahi = 8-13-21)


「電力まで五島産」広がる再エネ ふるさと納税でも復活

再生可能エネルギーの「産地」を売りにする動きが広がっている。 地域の太陽光や風力などでつくった電気をブランド化して地域振興につなげる狙いだ。 ふるさと納税の返礼品として PR する自治体もある。 「電力まで五島産。」 レシピカードには、こんな言葉が記されていた。 東京や大阪の百貨店で開かれた物産展で、長崎県五島市の水産加工会社「しまおう」が魚のすり身に昨年から添えた工夫だ。

原料の安全・安心は当たり前

しまおうは地元でとれるアジやアゴ(トビウオ)ですり身やかまぼこを作る。 昨春、地元の新電力会社と契約し、工場の電気はすべて地元の再エネでまかなっている。 カードには「島の風と太陽から生まれた電気で製造しています」と記し、風車のイラストも描いた。 山本善英社長 (51) は「原料の安全や安心は当たり前。 地元の電気が注目されるようになれば。」と話す。

五島市では太陽光や風力発電など再エネの普及が進み、使う電気の約半分は市内でつくっている計算だ。 沖合に巨大な風車を新たに 8 基浮かべて発電する計画も進んでおり、2023 年ごろには 8 割まで上げる予定だ。 電気は、大手電力会社には売らず、できるだけ「地産地消」に生かす。 今夏には、使う電気をすべて地元の再エネでまかなう企業を独自に認定する「五島版 RE (アールイー)100」という取り組みを始める。 五島と政府の景気刺激策をもじった「GOTO RE100」というロゴマークも作り、認定された企業はロゴを使って取り組みをアピールできる。

地元の福江商工会議所の清瀧誠司会頭 (81) は「人口減少の著しい離島は、他ではできないことをしなければ生き残れない。 島の電気を活用して生産段階から差別化を進め、地元企業の価値を高めたい。」と話す。

スタバも関心「お店で知って」

電気の産地には、企業も関心を示す。 スターバックスコーヒージャパンは 10 月までに、約 350 店舗ある直営路面店すべてで、使う電気を地域の再エネに切り替える。 富山や鹿児島の店では地元の水力発電所の電気を使う。 徳島では地元の木質バイオマス発電所から調達し、近くの森林の維持・管理にも役立てる。 広報担当者は「ビジネスを続けるには、地域活性化への貢献は欠かせない。 お店を通じて、地元の再エネも知ってもらいたい。」と話す。

アウトドア用品大手、スノーピークも 7 月、新潟県三条市の本社などで使う電気を市内の木質バイオマス発電所に切り替えた。 電気代は少し高くなる見込みだが、「地元に根ざした事業をしており、地産地消に貢献したい(広報)」としている。

ふるさと納税の返礼品として地元の再エネを提供する動きもある。 阿蘇山のふもとにある熊本県小国町は 8 月初旬、地元の電気を返礼品に加えた。 町には地熱発電所が立地し、太陽光や水力を含む発電出力は約 3 万 7 千キロワット。 町内で使う電気の約 2.6 倍に及ぶ。 特産のあか牛や馬刺しなどの肉類には知名度で劣るが、「町の新電力会社の経営安定にもつながる。 町外からの問い合わせも多い。(町の担当者)」

ふるさと納税もお墨付き

地元の電気を返礼品として提供して寄付者の電気代を割り引く自治体は数年前からあった。 しかし、総務省が今年 4 月、「電気は地場産品に当たらない」との見解を出した。 一般の送配電網で供給される電気は様々な地域で発電されたものが混ざってしまうためだ。 再エネの普及をめざす政府の方針を受けて、総務省は一転して 6 月に一定の条件下でこれを容認した。 政府のお墨付きを得たことで、返礼品をきっかけに再エネ普及が進む、との期待も出ている。

電気の返礼品は今春まで福島県楢葉町や愛知県豊田市、大阪府泉佐野市など全国 9 市町が提供していた。 地元の太陽光や水力で発電した電気をもとに 17 年から返礼品を提供している群馬県中之条町は 10 月再開をめざす。 担当者は「またぜひ使ってもらいたい。」 ただ、寄付者が返礼品としての電気を受け取るには、自治体の指定する新電力会社と契約を結ぶ必要がある。 手続きの煩雑さが寄付額の伸び悩みにつながっているとの見方もある。 (北川慧一、asahi = 8-10-21)


青森・風間浦で 700 人孤立の恐れ 北海道・東北で大雨

台風 9 号から変わった低気圧の影響で 10 日、北海道や東北を中心に大雨となった。 青森県七戸町では河川で洪水が起きたとして、避難情報の中で最も危険度が高い「緊急安全確保(レベル 5)」が出された。 気象庁によると、10 日午前 9 時までの 24 時間降水量は北海道函館市で 289.5 ミリと、観測を始めた 2003 年以降で史上最多に。 岩手県普代村で 226.5 ミリ、青森県平内町は 167.0 ミリと 8 月では観測史上最多となった。 低気圧は 10 日に東北を通過して日本から遠ざかるとみられるが、同庁は土砂災害への警戒を呼びかけている。

大雨の影響で、青森県むつ市では 10 日朝、小赤川にかかる小赤川橋が崩落したほか、風間浦村の国道 279 号で土砂崩れが数カ所発生。 県によると、村民約 700 人が孤立している恐れがあるという。 同県七戸町は午前 8 時 40 分ごろ、倉岡川目地区の一部(96 世帯計 225 人)に緊急安全確保を出した。 岩手県では 10 日朝時点で、洋野町で 2 棟、宮古市で 1 棟が床下浸水した。 JR 東日本盛岡支社によると、八戸線の久慈 - 階上間で線路に土砂が流れ込み、10 日は終日運休することを決めた。

気象庁によると、11 日午前 6 時までの 24 時間雨量の予想は多いところで、▽ 北海道 200 ミリ、▽ 北陸 180 ミリ、▽ 東北 150 ミリ。 最大風速は北海道で 25 メートル、東北と北陸で 23 メートルが予想されている。 (山岸玲、土肥修一、大西英正、asahi = 8-10-21)


岐阜・多治見で気温 40.6 度を記録 今年の国内最高に

気象庁によると、8 日午後 1 時 34 分、岐阜県多治見市で気温 40.6 度を記録した。 国内で今年、40 度を超えたのは初めてという。 8 日は西日本を中心に猛暑となっており、午後 1 時現在、全国の 85 地点で 35 度以上になっていることから、気象庁は熱中症への警戒を呼びかけている。 (asahi = 8-8-21)


川辺川ダム巡り市民ら抗議 町長に「自分の考えない?」

線状降水帯下の九州

記事コピー (7-4-20 〜 8-1-21)


星野リゾート、パルコ跡にホテル新設 パルコ再出店も 熊本

国内外でリゾートホテルなどを運営する星野リゾート(本社・長野県)が、熊本市中央区の下通エリアで新たにホテルを運営することになった。 2023 年春の開業を予定しており、同社が県内で初めて運営する施設となる。 同社の発表によると、昨年 2 月に営業を終了した「熊本パルコ」の跡地(同区手取本町)に建設される地上 11 階のビルのうち、3 - 11 階でホテルを運営する。 客室数は 160 室。 星野リゾートは、観光客を対象に展開する「OMO」やカジュアルなホテル「BEB」など五つのサブブランドをもつが、新設されるホテルのブランドは未定だという。

熊本市役所で今月 7 日に記者会見した同社の瀬尾光教(みつのり)・国内企画開発グループディレクターは「熊本は、熊本城に象徴されるような歴史や文化、ご当地グルメもあり、観光のコンテンツとしては魅力がたくさんある場所。 立地としてもすばらしいところにご縁をいただいた。」と話した。 また、パルコは、同じビルの地下 1 階から地上 2 階に商業施設を再出店すると発表した。 施設の概要やテナントなどは決定していないが、ホテルと同じ 23 年春の開業を目指すという。 (大木理恵子、asahi = 7-30-21)


21 年産の主食用米、生産量初の 700 万トン割れへ

農林水産省は 29 日、2021 年産の主食用米の作付面積が、前年より 6.2 万 - 6.5 万ヘクタール減るとの集計結果(6 月末時点)を公表した。 減少幅は前年の作付面積の約 5% にあたり、平年並みの作況なら 21 年産の生産量は 694 万 - 696 万トンとなる。 主食用米としては、比較可能な 08 年以降で初めて 700 万トンを下回る見通しだ。 人口減や食生活の変化による構造的な消費減に加え、コロナ禍で外食需要も落ち込んでいる。 農水省によると飼料用米などへの転作を支援することで、コメ余りに伴う米価の急落は回避できるという。 (長崎潤一郎、asahi = 7-29-21)


長崎市、自然石の石積みで護岸 景観や環境に配慮した川作り

毎年夏休みになると、子供たちが元気に水しぶきを上げて遊んでいた川が様変わりです。 長崎市南部を流れる鹿尾川(かのおがわ)が生まれ変わろうとしています。 景観や環境に配慮して、自然石の石積みが進められています。 長崎市三和町の鹿尾川です。 1982 年の長崎大水害を受けて、上流にはダムが建設され、下流はコンクリートの護岸で固められました。 ホタルの生息場所であり河畔林が残る中流域は、住民と長年、何度も話し合って水害を防ぐ治水目的だけに偏らない拡幅計画を立てました。 コンクリート護岸部分も石積みに作り変えます。

「どうしても石積みなので工期的に長くかかったり、金額面でも高くなるが。特に地元の人たちの親しみを持てる河川だと、それだけ愛着も持って、この川をきれいにしたいとか、そういう思いも出てくると思うので、親しみを持てる河川があることは地元の方にとって、いいことだと思います。(長崎振興局河川課河川防災班・今泉慎哉さん)」

長崎県側は改修工事による生き物への影響を極力少なくするため、15 メートルの短い区間に分けて、工事を進めていますが、よく見ると川底には泥がたまっています。 排水ポンプや汚濁防止のシートなどを設置したものの、思うような効果は得られず、今後、沈砂池を設けて様子を見ることにしています。 水質汚濁防止法などの網にはかかりませんが、よりよい川作りだけでなく、工事中の環境保全までもが求められる時代、そのためのノウハウがこれからの課題といえます。 (KTNテレビ長崎 = 7-29-21)


北海道の旭川・江丹別で 37.6 度 全国一の暑さ

北海道内各地では 28 日も猛暑となり、旭川市江丹別では午後 7 時現在で全国で最も高い気温となる 37.6 度を記録した。 江丹別は冬場には零下 38.1度の最低気温を記録したことがあり、夏と冬の気温差は 75.7 度となった。 28 日の最高気温の全国トップ 10 は、4 位の大分県日田市を除き、すべて北海道だった。 札幌管区気象台は、道内での暑さはしばらく続くとして、熱中症への注意を呼びかけている。 気象台によると、太平洋高気圧の影響で道内に暖かい空気が流れ込み、内陸部で気温が上昇。 幌加内町と下川町で 37.3 度、札幌市手稲区で 37.1 度、北見市常呂や斜里町、佐呂間町で 36.7 度を記録した。

江丹別の 37.6 度は、前日更新した同地点の観測史上 1 位の 36.9 度を、さらに上回る暑さ。 一方で江丹別は、道内でも寒冷地として知られ、最低気温は 1978 年に零下 38.1 度を記録したほか、昨年も同 36.0 度まで下がった日がある。 また、JR 北海道は 28 日、高温でレールに膨張やゆがみが発生する恐れが生じたため、富良野線と石北線で普通列車計 5 本を運休した。 レールが変形し、列車の運行に支障が生じる可能性が出たという。 (本田大次郎、井上潜、asahi = 7-28-21)


活断層上のアリーナに防災事業債 50 億円 国知らず同意

佐賀県が建設中の大型公共施設「SAGA アリーナ」について、防災や減災のために使うと決められた地方債約 50 億円を建設費に充てることが関係者への取材でわかった。 アリーナは、活断層を示す地図上で活断層のほぼ真上に位置しているが、国は活断層の存在を知らないまま、この地方債の発行に同意していた。 「防災拠点にふさわしいかどうか検証すべきだ」という意見も出ている。 アリーナは 4 階建て約 8,400 席規模で、総工費は 257 億円。 県は昨年、本格着工し、2024 年開催の国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会の主会場に予定されている。

ただ、政府の地震調査研究推進本部が作った活断層を示す地図上で、アリーナの建設場所は佐賀平野にのびる活断層「佐賀平野北縁断層帯」のほぼ真上にあたる。 推進本部は、推定でマグニチュード 7.5 程度の地震が起きる恐れがあると評価している。 県は、この活断層が動いた場合の大規模な被害想定も出していたが、アリーナ建設にあたっては活断層について検証していなかった。

「国が止める権限はない」

山口祥義知事は 20 年 2 月の県議会で、アリーナを防災拠点としても利用すると説明。 「平時は自主防災組織の活動の場、災害時は避難所として活用できるよう機能を強化した。 対象事業費約 52 億円の財源として、『緊急防災・減災事業債』を活用できる見込みだ」と紹介していた。 この事業債は、国が東日本大震災後に制度化した地方債。 総務省によると「緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災のための地方単独事業」などが対象となっている。 地方自治体が発行し、返済の 7 割は国からの地方交付税交付金でまかなえる。

県によると、山口氏が 19 年に総務省を訪れた際に発行について協議し、翌年に総務相が同意したという。 ただ、総務省によると、知事との協議で、県から活断層についての説明はなかった。 朝日新聞の取材を受けて改めて県とやりとりし、県側から「活断層が存在する恐れはあるが、施設がそれによって壊れることはない」との回答を受けたという。

アリーナ建設を担当する県文化・スポーツ交流局の幹部は取材に対し、「緊急防災・減災事業債の発行に関する総務省との協議時点では、活断層が直下だとは認識していなかった。 総務省には伝えていない。」と説明。 総務省地方債課の担当者は「防災拠点としての使い方や機能が、制度の目的と基準に合っていれば、起債の対象にはなる。 活断層の存在については、あくまでも佐賀県が判断することで、県が事業を進めるのであれば、国が止める権限はない。」と話す。 山口知事はこれまで「震度 7 程度の地震でも倒壊しない設計で、むしろ我々は防災拠点として生かしていきたい」と主張している。

専門家「理由、後付けでは …」 検証訴え

一方、この活断層を調査したことがある国立研究開発法人「産業技術総合研究所」の吉見雅行主任研究員(地震工学)は「活断層の真上に施設を建てる場合は、揺れだけでなく、活断層のずれで建物や基礎が壊れる可能性も考慮すべきだ」とし、詳細な調査の必要性を指摘している。

一橋大の佐藤主光(もとひろ)教授(財政学)は「アリーナの主たる目的はスポーツとイベントで、計画段階から防災関係の有識者を交えて活断層について検証していないのであれば、佐賀県の事業債活用は事業費を補うための『後付け』の理由ではないか。 総務省も防災拠点にふさわしいかどうか検証するべきだ。」と指摘。 「人口減少の時代に、ハコモノで地方創生を考えるべきではない。 巨額の建設費がかかる施設が佐賀県の身の丈に合っているか、妥当性が問われる。」と話している。 (平塚学、asahi = 7-20-21)


倒壊から 5 年、阿蘇神社の拝殿が復活 熊本地震で被災

2016 年の熊本地震で倒壊した阿蘇神社(阿蘇市一の宮町)の拝殿が再建され、12 日に竣工祭があった。 参列者らはヒノキの香りが漂う拝殿で 5 年 3 カ月ぶりの復活を祝った。 一般の祈願は 8 月 1 日の「月次(つきなみ)祭」後から受け付ける。 熊本地震では楼門など国の重要文化財 6 棟などが被災。 今回、拝殿とその両側の翼廊などが再建され、残る主な復旧工事は 2023 年 12 月完工予定の楼門のみとなった。

新拝殿の再建用材には地元阿蘇中央高校の学校林をはじめ県産材を約 8 割使用。 耐震補強のため大きな柱の下に鉄筋コンクリート製の地中梁(はり)を設置、鋼管でつなぐ形で柱を固定した。 拝殿正面を飾る大注連(しめ)縄(長さ 7.5 メートル、重さ約 160 キロ)は氏子らでつくる「一の宮町大注連縄伝承会」が練り上げた。

旧拝殿の解体撤去を含む事業費 7 億 2,558 万円は、地震に関わる指定寄付金制度などでまかなわれた。 竣工祭を終えた阿蘇惟邑(これくに)宮司は「地震直後はぼうぜんとするばかりで、復興をどうしたらいいか思い悩んだ。 この 5 年間、多くの皆さまから受けたご支援とご協力、励ましに感謝しております。」と話した。 (城戸康秀、asahi = 7-18-21)


87 市区町村、人口減脱す 交流深め外国人定住

持続可能な社会の構築

記事コピー (7-17-21)


NEC はスーパーシティで売上高 500 億円へ 100 人体制の新推進組織の全貌
防災・観光、街の進化サポート

NECは、国家戦略特別区域「スーパーシティ」構想への取り組みを自治体やパートナー事業者と連携して推進する専門組織として「スーパーシティ事業推進本部」を 100 人体制で新設した。 NEC グループの全国 114 拠点とも連携し、地域密着型で取り組む。 実績を持つスマートシティー(次世代環境都市)や海外展開も含め、2025 年度までに約 200 都市への展開、売上高 500 億円を目指す。(編集委員・斉藤実)

新組織を率いる受川裕執行役員クロスインダストリーユニット担当が同日会見し、「スマートシティーは 10 年先のあるべき姿を見据えた "まるごと未来都市" であり、世界に誇れる『地域らしい』街の進化に向けて、グループ一丸で取り組む」と意気込みを語った。 現在、スーパーシティに公募している自治体は 31 あり、NEC は 17 自治体に参画している。 このうち NEC は北海道更別村、神奈川県小田原市、和歌山県・すさみ町(共同)、高松市の 4 自治体で取りまとめ役を担っている。

政府はスーパーシティへの投資と成果を踏まえ、2025 年度までに 100 都市でスマートシティーも実現する計画。 すでに NEC は 13 自治体でスマートシティーに参画している。 今後はクロスインダストリーユニットとして注力することで、従来型の自治体向けビジネスに留まらず、スーパーシティの目玉である複数領域にまたがるデータ連携や、地元の事業者、大学などとのパートナー連携を生かし、新たな事業機会を生み出す方針だ。

具体的には、社会・公共分野でのデータ活用の共通基盤を担う「都市 OS (基本ソフト)」として、「FIWARE (ファイウェア)」を中核に据え、分野間データ利活用を促進する。 ファイウェアは欧州連合 (EU) が官民連携で開発したオープンな基盤ソフトで、NEC は開発時から中心メンバーとして参画してきた。 スーパーシティ構想の実現に向けて、受川執行役員は「都市を経営の目線でとらえ、優先順位をつけて、課題を解決する」と強調。

まずは防災や旅行・観光に注力する考え。 例えば防災向けは、人工知能 (AI) やスーパーコンピューターなどを活用し、河川の変化の分析・予測や、地震発生後の津波発生の判定・被害予測などが可能。 観光向けは生体認証や非接触・混雑回避を実現するサービスを提供し、感染防止と利便性向上の双方で旅行・観光業を支援する。 代表例として、高齢化が課題の更別村と、都市のスマート化で連携する富山市の取り組みなどを紹介した。 (NewSwitch = 7-14-21)