ガソリンと同じ成分作る植物プランクトン発見 ガソリンと同じ成分を体内で作る植物プランクトンを海洋研究開発機構の研究グループが北極海で発見し、新たなバイオ燃料の開発につなげられないか注目されています。 海洋研究開発機構の研究船「みらい」が 8 年前(2013 年)に北極海で行った調査で、採取した植物プランクトンを培養して詳しく調べたところ、体内にガソリンやディーゼル燃料と同じ成分を作り出して蓄える藻類を発見したということです。 これまで特定の油の成分を作るものは知られていましたが、ガソリンやディーゼル燃料と同じ成分を蓄える植物プランクトンが報告されたのは初めてだとしています。 体内に蓄えられている量はわずかだということですが、量を増やす改良などをして、新たなバイオ燃料の開発につなげられないか注目されています。 海洋研究開発機構の原田尚美部門長は「当初は石油が混入したと思い、何度も分析をやり直したほどで、予想外で驚いた。 油田の中には比較的短時間でできたとされているものがあり、こうした生物が関わっているかもしれない。」と話していました。 (NHK = 7-26-21) 製造業、脱炭素へ投資 洋上風力で新工場、国内初 2050 年に二酸化炭素 (CO2) など温室効果ガスの実質的排出ゼロを目指す政府方針を受け、製造業が脱炭素に向けた設備投資を進めている。 JFE エンジニアリングは 20 日、国内で初となる洋上風力発電の基礎部分を製造する新工場を、岡山県に建設すると発表。 政府が 40 年までに洋上風力の発電能力を 3,000 万 - 4,500 万キロワットへ高める目標を掲げる中、需要の取り込みを図る。 JFE エンジの新工場は、グループ会社の JFE スチール西日本製鉄所福山地区の敷地内(岡山県笠岡市)に整備。 組立工場の設備増強も合わせた投資額は 400 億円で、24 年の生産開始を目指す。 東芝も 20 - 22 年度の 3 年間で、洋上風力を中心とする再生可能エネルギー分野に 1,600 億円を投資。 米ゼネラル・エレクトリック (GE) と組み、秋田県や千葉県沖の洋上風力開発計画への参加を目指す。 脱炭素では、電気自動車 (EV) の普及拡大も見込まれる。 東芝はリチウムイオン電池の生産強化に向け、162 億円を投じて横浜事業所(横浜市)内に新工場を建設。 今年 9 月にも生産を開始する。 住友金属鉱山は 470 億円を投資し、愛媛県新居浜市の新工場整備など、車載電池用電極の増産を進める。 素材メーカーではこのほか、信越化学工業も群馬事業所(群馬県安中市)の設備拡充に 100 億円を投資。 省エネルギーや軽量化した樹脂製品の供給能力を増強し、脱炭素に貢献する方針だ。 (jiji = 7-21-21) 総発電量を 1 割減、脱炭素電源を 6 割に 経産省が新計画 経済産業省は省エネを進め、電力の需要を抑えようとしている。 2030 年度の総発電量の見通しは、いまのエネルギー基本計画から約 1 割減らす。 発電量の約 6 割は、再生可能エネルギーや原発などの「脱炭素電源」でまかなうことをめざす。 21 日にも示す新たな計画の原案に盛り込む方針だ。 政府は温室効果ガスの排出量を 30 年度に 13 年度比で 46% 減らす目標を掲げる。 3 年ぶりに改定する計画では目標実現のため、再生エネの大量導入や省エネの徹底などを検討している。 30 年度の省エネ量は、いまの計画の 1.2 倍に引き上げる方針だ。 鉄鋼や化学など産業界のほか、家庭にも省エネの徹底を求める。 経済成長率の鈍化も考慮し、30 年度の総発電量はいまの計画の 1 兆 650 億キロワット時から 1 割程度下げる。 総発電量が減れば、太陽光など再生エネの比率を引き上げやすくなる。 30 年度の電源構成については、再生エネの比率はいまの計画の「22 - 24%」から「36 - 38%」にするとみられる。 原発の比率は「20 - 22%」を維持するようだ。 脱炭素電源を約 6 割にするため、燃焼時に二酸化炭素が出ない水素やアンモニアによる発電も促す。 再生エネの比率「36 - 38%」は 19 年度の実績(約 18%)の 2 倍に相当し、達成は簡単ではない。 30 年度まで 9 年しかなく、比較的短期間で運転を始められる太陽光発電をいかに増やすかが課題だ。 原発の「20 - 22%」の達成には、電力会社が再稼働を申請した 27 基すべてを動かす必要がある。 現時点で再稼働したのは 10 基にとどまる。 (長崎潤一郎、新田哲史、asahi = 7-19-21) 発電コスト、最安は原発から太陽光に 経産省が試算発表 経済産業省は 12 日、2030 年時点の電源別の発電コストについて新たな試算を公表した。 原発は安全対策費の増加などを受けて、15 年の前回試算より上昇し、最も安い電源は太陽光発電となる。 太陽光は技術革新や大量導入などでコストが下がる見通しだ。 太陽光のコストが原発を将来下回ることを経産省が試算で認めるのは、初めてとみられる。 経産省はこの日の総合資源エネルギー調査会の作業部会で、試算を示した。 原発は 1 キロワット時あたり 11 円台後半以上で、前回試算より 1 円ほど高くなった。 政府や大手電力会社は東京電力福島第一原発事故後も原発のコスト面の優位性を強調してきたが、前提が崩れることになる。 政府が近く改定をめざすエネルギー基本計画にも影響しそうだ。 原発のコストは、04 年の試算では 1 キロワット時あたり 5.9 円だった。 11 年には廃炉や除染の費用なども加わり 8.9 円以上に上昇した。 15 年には安全対策費の増加も踏まえ 10.3 円以上となったが、それでも電源別では最も安いとされていた。 太陽光は、2030 年時点で事業用が 8 円台前半 - 11 円台後半、住宅用が 9 円台後半 - 14 円台前半となった。前回 15 年時は事業用が 12.7 円 - 15.6 円、住宅用が 12.5 円 - 16.4 円だった。 想定より導入が進み、設置費用が下がっていることを反映させた。 試算は 2015 年以来 6 年ぶり。 電源を新設し数十年稼働させて廃棄するまでにかかる費用を総発電量で割って算出した。 経産省の担当者は「モデルを置いた試算で前提を変えれば結果は変わる。傾向をつかみ政策の参考にするものだ」という。 太陽光は夜間は発電できないこともあり、経産省は原発を安定的に電力供給できる「ベースロード電源」だとして重視している。 (新田哲史、asahi = 7-12-21) 北米の異常熱波 49.6 度の原因 日本の豪雨にも影響か カナダ西部や米国北西部を 6 月末に襲った記録的な熱波について、国際研究チームは 8 日、気候変動の影響がなければほぼありえない現象だったとするシミュレーション結果をまとめた。 カナダ国内でこれまでの最高気温を 4.6 度上回る 49.6 度を記録するなど、これまでの観測から大きく外れていて、1 千年に 1 回ほどの頻度で起きる事象だったという。 チームはオランダ王立気象研究所や米プリンストン大学、カナダのビクトリア大学などの研究者 27 人で構成。 過去の気象観測とコンピューターによるシミュレーションで、1800 年代後半以前の状況と、その後平均気温が 1.2 度上昇した現在の状況を比較し、極端な気象に気候変動がどの程度影響したかを調べた。 その結果、気候変動によって熱波が発生する可能性が少なくとも 150 倍高まって、今回の熱波は人類の影響がなければ発生がほぼ不可能な現象だったという。 このままのペースで温室効果ガスの排出が続くと 2040 年代には平均気温がさらに 0.8 度上がり、今回のような 1 千年に 1 回の熱波が、5 - 10 年おきに起きることになるという。 研究チームは「今回の結果は、急速な温暖化によって未知の領域に入り、健康や生活に重大な結果をもたらすという警告だ」と指摘している。 北米では 6 月末、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州リトンで 49.6 度を記録し、山火事も発生した。 米国北西部のオレゴン州ポートランドでも観測史上最高の 46.7 度を記録。 米メディアによると、この熱波で数百人が死亡したという。 北米の熱波が日本にも? 今回の北米の熱波が日本の天候にも影響を与えている可能性もある。 北米の熱波の直接の原因は、米大陸の北西に大規模な高気圧が停滞したことだとみられる。 温暖で乾いた空気が吹き込むため「ヒートドーム」とも呼ばれる。 「ブロッキング高気圧」といい、通常は西から東に吹く偏西風が南北に大きく蛇行した場合に作られ、異常気象につながる。 日本の気象庁によると、北半球全体で偏西風の蛇行が大きくなっており、北米以外でもロシア東部や欧州など、偏西風が北に蛇行している地域で極端な高温になったという。 偏西風の蛇行は珍しい現象ではないが、さらに地球温暖化による気温上昇が加わり、記録的な高温になった可能性がある。 この間、日本付近の偏西風は南に蛇行していた。 このため、北からの寒気が入り込み、6 月下旬の梅雨前線の南下や、豪雨などの不安定な天候につながった可能性があるとしている。 (合田禄 = ワシントン、香取啓介、asahi = 7-9-21) 太陽光発電、災害リスク高い区域の規制検討 小泉環境相 記事コピー (7-6-21) 海を耕し環境再生へ 海の呼吸を改善する 熊本 有明海の環境再生のため「海の呼吸」を改善する、海底耕うんの作業に密着しました。 熊本港の沖合で行われた「海を耕す」作業。 海の栄養を回復するため、有明海沿海の 15 の漁業組合が参加しました。
特殊な爪がついた器具を海底に落として船で引っ張ると、海底に溜まった泥をかくはんさせ、酸素を送り込みます。 引き上げられた器具には、ヘドロがべっとりとついていて、厳しい環境が分かります。 また別の器具には、海底で暮らすカニやコチなども一緒に引き上げられました。 海底耕うんを続けると、こうした生物が暮らす環境が改善され、獲れる魚介類の種類や量が大幅に増えるということです。
小泉環境相、脱原発鮮明に 自民党内から不満も 政府の中長期的なエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の改定を前に、小泉進次郎環境相が脱原発の姿勢を鮮明にしている。 菅義偉(すが・よしひで)首相とのパイプも使い、エネルギー関連の政府方針で原発の活用に関わる表現ぶりを弱めることに成功した。 ただ、温室効果ガスの削減を訴えながら、二酸化炭素 (CO2) を排出しない原発の活用に否定的な小泉氏に対しては、自民党から「現実を見ていない」との不満も強まっている。 「『まずは再生可能エネルギー(の活用)、そして原発の依存度を下げる』と首相はずっと言っている。 それが守られるかどうかを見ている。」 小泉氏は 25 日の記者会見で、こう強調した。 最近は持論である脱原発を政府のエネルギー政策に反映させるべく精力的に動いてもいる。 経済産業省などが 18 日に決定した温室効果ガス削減に向けた「グリーン成長戦略」の改定をめぐっては、昨年 12 月時点では入っていた「(原発を)最大限活用していく」との表現が削除された。 18 日に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太の方針」でも、電力部門の脱炭素化に関し「再エネ最優先」との文言が盛り込まれた一方、原発は「可能な限り依存度を低減」するとされた。 いずれも小泉氏が首相らに働きかけた方針に一致する。 自民党内ではエネルギー基本計画改定に向け、電力の安定供給や脱炭素化のため原発の活用を求める声が強まっていただけに、小泉氏が機先を制した形だ。 エネルギー基本計画は 10 月末までに政府が決定する 2030 年度の温室効果ガスの国別排出削減目標の裏付けとなるため、早期に策定する必要がある。 ただ、改定時期が秋までに行われる衆院選後となれば党内の原発推進派が勢いを盛り返しかねない。 小泉氏は衆院選前に改定すべきだと首相に訴えており、グリーン成長戦略や骨太方針に続き、脱原発の方針をエネルギー基本計画にも色濃く盛り込みたいとの思惑が透ける。 とはいえ、エネルギー政策はもともと経産省の所管であり、自民党内には小泉氏への不満も募る。 党中堅は「首相は梶山弘志経産相よりも小泉氏の言うことを聞いてしまう。 環境相がどんな権利で原発政策に口を出すのか。」と指摘。 党重鎮も小泉氏がエネルギー問題の現実を直視していないとして、「目の前の課題に向き合わない政治家は大成しない」と不快感を示している。 (奥原慎平、sankei = 6-27-21) アボカドは「悪魔の果実」か? - - ブームがもたらす環境破壊と難民危機 記事コピー (6-21-21) 「環境分野のノーベル賞」 日本の NGO の平田仁子さんが選ばれる 「環境分野のノーベル賞」とも呼ばれる「ゴールドマン環境賞」に、石炭火力発電所の温暖化への影響などを訴えてきた日本の NGO の平田仁子さんが選ばれました。 日本人の女性が受賞するのはこれが初めてです。 ゴールドマン環境賞とは アメリカの財団が 1989 年に設けた「ゴールドマン環境賞」は、環境保護活動で功績があった人に贈られる国際的な賞で、毎年、世界の 6 つの地域で 1 人ずつが受賞します。 15 日、ことしの受賞者 6 人が発表され「島嶼国部門」の受賞者として京都市の環境 NGO 「気候ネットワーク」の理事、平田仁子さん (50) が選ばれました。 日本人の受賞は 23 年ぶり 3 人目で、女性としては初めてです。 平田さんの活動 平田さんは、大学時代に地球温暖化の問題に関心を持ち、日本の環境 NGO で 20 年以上活動して、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所の問題などを発信してきました。 東京電力福島第一原発の事故のあと、50基の石炭火力発電所の新設や増設が計画されると、ウェブサイト上にこれらの発電所の計画書や環境影響評価の資料を公開するとともに、地域の住民が公聴会に参加するよう働きかけました。 今回の受賞理由では、平田さんの活動がきっかけとなり、2019 年までに 50 基のうち 13 基の計画が中止となったとして「40 年間にわたって毎年 750 万台分の自家用車による二酸化炭素の排出を削減したことに相当する」とされています。 受賞について平田さんは「私だけではなく、この問題に声をあげる人たちがいて協力し合ってきたからこそ、大きな動きにつなげることができたと思う。 社会や経済をどうやってクリーンな方向にシフトしていけるのかを考え、これからも提言を続けていきたい。」と話しています。 平田さんが選ばれた理由は 今回の受賞理由には、金融機関の「脱石炭」につなげるため、平田さんが株主提案を行ったこともあげられています。 平田さんは去年、海外の環境団体などの協力を得て、みずほフィナンシャルグループに対し、石炭火力発電事業のリスクを指摘したうえで今後の方針の開示などを求める株主提案を行いました。 気候変動関連の情報開示についての株主提案は海外で増えていますが、日本ではこれが初めてとみられ、株主総会では 34.5% の賛成を集めました。 平田さんは、今月開かれる三菱 UFJ フィナンシャル・グループの株主総会でも同じような提案を行っていて、どの程度の賛成を得られるかが焦点となっています。 ゴールドマン環境賞の受賞理由では、平田さんの一連の取り組みが、多くの日本企業が石炭から脱却するための大きな機運を作り出したと評価しています。 平田さんは「ほかの国の政府や企業が脱石炭へと方針を変えてきているが、日本は石炭の問題にようやく気付き始めたという状況だ。 日本企業の中でも石炭から転換しなければという認識は広がってきたが、本腰を入れて経営計画を変えることに足踏みしている企業もあると感じる。 気候変動との戦いに沿うスピードで覚悟と行動ができるのか、いま問われていると思う。」と話しています。 過去の日本人受賞者は ゴールドマン環境賞は、これまでに 2 人の日本人が受賞しています。 1 人目は 1991 年に受賞した、環境保護団体「熱帯林行動ネットワーク」の事務局長、黒田洋一さんで、アジアの熱帯林の保護に取り組み、政府や企業に木材の輸入量の削減を訴えたことが評価されました。 2 人目は長崎県諌早湾の国の干拓事業に反対し、干潟の保護に取り組んだ山下弘文さんで、1998 年に受賞しています。 世界で加速する脱石炭の動き 温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が 2015 年に締結されて以降、世界で「脱炭素」、「脱石炭」への取り組みが加速しています。 特にここ数年は、投資先を選ぶ際に環境問題や社会的な課題への取り組みを重視する「ESG 投資」が広がり、石炭火力発電などに関連する方針を見直す動きが世界中で相次いでいます。 2017 年にはフランスの BNP パリバが、2018 年にはイギリスのスタンダードチャータード銀行が、今後新たに作られる石炭火力発電への融資の停止などを発表しました。 また、世界最大規模のアメリカの資産運用会社ブラックロックは去年、石炭事業からの収入が多い企業の株を放出すると発表しました。 さらに、気候変動の対策強化を求める株主の声も高まっています。 去年からことしにかけて、機関投資家などがイギリスの金融大手、バークレイズや HSBC に対して、気候変動対策についての方針を開示することや、化石燃料に関する融資を減らすことなどを相次いで求めました。 先月行われたスーパーメジャーと呼ばれるアメリカの巨大石油企業、エクソンモービルの株主総会では、0.02% の株式しか持たない新興の投資会社が、経営陣の気候変動対策が不十分だと主張し、みずからの推薦する取締役を選任するよう求める議案が提出されました。 会社側の反対にもかかわらず、推薦された 4 人のうち 3 人が選任され、現地メディアでは「石油の巨人の歴史的な敗北」と伝えられました。 こうした中、日本でも、銀行や保険、商社などで新規の石炭火力発電事業の融資や開発を行わないことが発表されるなど、環境に配慮する動きが広がっています。 企業の情報開示に詳しい大和証券 ESG リサーチ課の大澤秀一さんは「これまで株主は、株主総会で経営者への報酬について意見を言ってきたが、最近では気候変動に対してものを言う時代に変わってきている。 これからは金融だけでなく、化石燃料を多く使う鉄鋼やエネルギー、化学などの分野でも企業と投資家の対話の中で気候変動が大きな役割を持っていくだろう。」と話しています。 日本の石炭火力は世界で批判の対象に 日本の発電量全体に占める石炭火力発電の割合は、福島第一原発事故のあと原子力に代わる形で増加し、2012 年度以降は 30% 以上の状況が続いています。 IEA = 国際エネルギー機関のまとめによりますと、日本は 2019 年度、石炭火力発電の割合が G7 = 主要 7 か国の中で最も高くなっています。 また、G7 の中で国内での石炭火力による発電をゼロにする目標を掲げていないのは、日本とアメリカだけです。 さらに日本は効率の高い施設にかぎっているものの、石炭火力発電所の輸出に公的な融資を認める方針を示していて、ヨーロッパを中心に石炭火力発電所を段階的に廃止していく動きが広がる中、国際社会では日本に対する批判の声も出ています。 (NHK = 6-15-21) 「レジ袋を買って複数回使うほうがエコ」専門家が指摘 実はエコバッグ使用で環境負荷に レジ袋有料化が始まって間もなく 1 年。 エコバッグを持参して買い物に行く人は多い。 だが、それは本当にエコなのだろうか。 AERA 2021 年 6 月 14 日号の記事を紹介。 * * * レジ袋有料化で実際にポリ袋の使用量は減らせているのだろうか。 サステナビリティコンサルタントの安藤光展さん (39) は悲観的だ。 「有料化以降のプラスチックごみ発生量について、データはまだ出ていないのですが、エコバッグの使用が広まってもポリ袋を使う機会は相変わらず多く、『何割かは減っている可能性があるが、正直あまり期待できない』が私の見解です。」 さらに安藤さんは、「エコバッグを持つこと自体」にも警鐘を鳴らす。 環境省の調査では、エコバッグを「複数持っている」と回答した人は 7 割以上。 英国の環境庁が 2011 年に発表した調査では、「地球温暖化の可能性」をレジ袋より少なくするには、エコバッグを 131 回使う必要があるとの報告もあるという。 安藤さんは言う。 「つまり、100 回以上使ってやっと『元がとれる』ということです。 理由は、エコバッグを作ること自体の環境負荷です。」 ■ 環境コストの回収 製造し、運び、そのために人が動き … というサプライチェーンの環境負荷。 これは私たちの多くが知らない大きな「落とし穴」だと安藤さんは言う。 加えて、いまはコロナの感染対策で、エコバッグを頻繁に洗う人も多い。 その洗浄による水の汚染や、水を運ぶ際のエネルギーによる CO2 排出などでも、環境負荷がさらに高まっているはずだと指摘する。 「実際には 131 回どころではないでしょう。 皆さん、知らず知らずのうちに、エコバッグという環境負荷を自分の生活にため込んでいるんです。(安藤さん)」 では、「レジ袋は辞退してエコバッグ」と「レジ袋をもらい続ける」。 どっちがエコなのか? 安藤さんは即答だった。 「レジ袋を買ったほうがエコだと思います。 エコバッグを作って、洗って、捨ててとなると、環境コストを回収するのは本当に大変。 レジ袋は買って、必ず『複数回』使い、廃棄する。 その方がトータルで見れば絶対に環境負荷は低いです。」 エコバッグを持っていればエコ。 その考えもまた、近視眼的なのだ。 「視野を広げ、トータルでエコを考えること。」 その大切さを指摘するのは、日本総合研究所・創発戦略センターシニアマネジャーの村上芽さんだ。 ■ 個人のささやかな行動 有料化でエコバッグ持参が増えることは、プラスチックごみに興味を持つ「きっかけ」として悪くない。 ただ、それだけでエコを達成しようと思う必要もないとして、こう続ける。 「レジ袋をもらい続けている人も、『私はこういう理由で、最低何枚か生活でごみ袋が必要なので、もらいます。 一方で車の利用を減らし自転車にしたり、別のエコの努力をします』など、『トータルでエコを意識できているか』が大事です。 そこを見直し、意識を広げるきっかけになるなら、モヤモヤするのはとてもいいことだと思います。」 すっきりとした「正解」はなかなか出ない。 ただ確かなことは、いまがプラスチック削減に向けた大切な岐路だということだ。 作家で生活史研究家の阿古真理さん (52) は言う。 「有料化からの 1 年は、期せずしてコロナ禍と重なりました。 職場にも行けず、人とも会えず、結果、自分の生活にいままで以上に関心を向けるようになっています。 感染の危機も身近にあり、一人ひとりのささやかな行動が大事だということをこれほど身に染みて認識しているときはありません。 いまは本当にチャンスだと思います。」 もうしばらく、レジ袋にモヤモヤしてみますか! (小長光哲郎、AERA = 6-13-21) 環境関連投融資、30 年までに 10 兆円規模 りそな HD 気候変動対策などに取り組む中堅中小企業向けに、りそなホールディングス (HD) は 2030 年までに計 10 兆円規模の投融資をめざす。 20 年度末の約 5 千億円から増やす。 南昌宏社長が朝日新聞のインタビューに答えた。 南氏は「日本が成長を維持するには中堅中小が時代の変化に適応していくことが不可欠だ」と発言。 取引先の中堅中小 50 万社に気候変動などへの対応を促すという。 条件に合う融資かどうかは、りそなが独自の定義を設けて判断する。 個人顧客にも、資産運用を担う子会社などを通して環境分野への投資を勧める方針。 南氏は「経済合理性だけがあればといいという世界ではなくなった」と語った。 脱炭素の動きが世界で広がり、日本政府は 50 年までに温室効果ガス排出実質ゼロの目標を掲げる。 メガバンクグループでも関連融資額の目標を高める動きが相次ぐ。 (細見るい、asahi = 6-3-21) 国連、環境への投資「50 年までに 4 倍必要」 【パリ = 白石透冴】 国連環境計画や世界経済フォーラムなどは 27 日、環境への投資を 2050 年までに現状の 4 倍にしなければ、気候変動や生物多様性維持の問題に対応できなくなる恐れがあると発表した。 同年までに環境対策に 8 兆 1 千億ドル(約 890 兆円)が必要になると試算している。 世界は 18 年に約 1,330 億ドルを環境関連に投じ、そのうち公共投資が 86%、残りは民間が占めた。 この水準を 30 年までに3倍に、50 年には 4 倍に当たる約 5,360 億ドルまで引き上げる必要があると報告した。 新型コロナウイルス感染拡大後の経済対策でも環境関連には全体の 2.5% しか割り当てられていないとして、対策の強化を呼びかけている。 具体的には環境を破壊する恐れのある農業や化石燃料への補助金を別の目的に振り替えることや、市民が環境対策を取りやすくための奨励金を増やすことなどを提言した。 現状では民間の資金が十分に環境に向かっていないとして「今後数年間の課題になる」と指摘した。 (nikkei = 5-28-21) 主要企業 4 割、脱炭素目標 ソニーは調達先にも要請 日本の主要企業の間で温暖化ガス排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」を経営目標に加える動きが広がっている。 日経平均採用銘柄 225 社中少なくとも 4 割の 85 社が 4 月末までに目標を定めた。 投資家の圧力が強まるなか、環境配慮を徹底し、関連技術を磨いて競争力につなげる狙いがある。 化石燃料に頼る電源構成の見直しなど、企業のニーズにこたえる態勢整備が不可欠だ。 国内で出る温暖化ガスの 8 割を企業・公共部門が占める。 2050 年のカーボンゼロという政府目標の達成には企業の取り組みが欠かせない。 日本経済新聞が 225 社を調べたところ、カーボンゼロ目標を掲げた企業は 20 年末の約 40 社から倍増。 菅義偉首相が 20 年 10 月に脱炭素目標を宣言したのを受け、新たに目標を定めたり従来目標を引き上げたりした。 ソニーグループは 50 年のカーボンゼロに向け、30 年に米国で、40 年に全世界で電力を再生可能エネルギー由来に替える。 欧州と中国では導入済み。 温暖化ガスの 8 割を出す日本での排出削減が最難関だ。 原材料や部品の調達先企業や製造委託先の排出削減を促す。 キリンホールディングスは 30 年に排出量を 19 年比 5 割減らし 50 年に実質ゼロにする。 足がかりとして子会社キリンビールの名古屋など 4 工場の電力の一部を太陽光発電に転換する。 専門事業者に工場専用の太陽光発電所を設置・運用してもらう PPA (電力購入契約)という枠組みを使い、すべての電力をキリンが直接買い取る。 国内ではまだ前例が少ない取り組みだ。 丸井グループは 30 年までに排出量を 16 年度比 4 割、50 年に 8 割減らす。全店舗の電力を再生エネ由来に替える。 テナントの外食店に生ごみのリサイクルを促し、焼却に伴う排出を減らす取り組みもしている。 ただ、取引先を含むサプライチェーン(供給網)全体で排出削減に動くソニーや丸井のような企業は、4 月末にカーボンゼロ目標を持っていた企業の中でも 4 社に 1 社にとどまる。 子会社や取引先に環境負荷の高い事業を移すといった抜け穴がなくなる一方、達成へのハードルは上がる。 先を行くのは欧米大手だ。 30 年のカーボンゼロを掲げる米アップルは、製造委託先 110 社以上で工場の電力をすべて再生エネに替える。 二酸化炭素 (CO2) 排出を年 1,500 万トン、車換算で 340 万台分減らす。 米アマゾン・ドット・コムは 40 年の脱炭素を掲げる。 米マイクロソフトや独ダイムラーも 40 年目標に賛同している。 削減目標の設定を促す国際組織「SBT イニシアチブ」の参加企業は 21 日時点で 1,445 社。 国別では米国の 239 社が首位で英国の 217 社が続いた。 日本は 131 社と、やや水をあけられての 3 位だった。 英政府によると 3 月末時点で、英主要株価指数を構成する 100 社の 3 割がサプライチェーン全体での実質ゼロ目標を持つ。 日本では「サプライチェーンの排出量を計るのは難しい。 どこまで責任を負うのか線引きもできていない。(大手製造業)」との声も上がる。 さらに日本企業に共通の障害となっているのが、化石燃料への依存度が 7 割を超える国全体の電源構成だ。 英では 4 割以下だ。 発電時に温暖化ガスを出さない電源が増えれば、産業界は脱炭素に動きやすくなる。 政府は 20 年末にまとめた「グリーン成長戦略」で、50 年には再生エネ比率を 50 - 60% と、現在の 3 倍近くに引き上げるとした。 低炭素技術の開発や普及を後押しする政策支援も必要だ。 欧米企業の積極策の背景には投資家や消費者からの圧力がある。 米資産運用最大手ブラックロックは脱炭素への活動が不十分と評価した投資先企業の株主総会で、会社側の取締役選任議案に反対したり、環境対応を求める株主提案に賛成したりし始めている。 日本の機関投資家も変わりつつある。 第一生命ホールディングスは自社の排出を 40 年度までに実質ゼロにする一方、25 年までに投資先の企業や不動産からの排出を 19 年度比 25% 減らす目標を打ち出した。 投資家の変化に対応できないと、企業は資金調達などで不利になりかねない。 ESG (環境・社会・企業統治)投資に詳しいニューラル(東京・品川)の夫馬賢治最高経営責任者は「環境対応が不十分なら役員選任案に反対票が入る世界になる」と指摘する。 (nikkei = 5-25-21) 太陽光パネル普及、期待は屋根 小泉環境相「徹底的に」 政府は 2030 年度に再生可能エネルギーの発電を、いまより倍増させようとしている。 太陽光は発電所が増え、パネルが設置されるビルや住宅が増えるなど身近になりそうだ。 原子力も温室効果ガスを出さない重要な電源だとしており「脱原発」には否定的だ。 住宅への太陽光パネル設置「義務も含めて」 菅義偉首相は「脱炭素社会」の実現を政策目標として掲げる。 「まずは再エネを優先する」としており、太陽光や風力による発電を増やすことが重要課題となっていた。 固定価格買い取り制度 (FIT) で再生エネは急拡大したが、買い取り価格が下がったことなどで導入ペースは鈍化している。 環境省は「ポテンシャル(潜在力)はいまの全電力供給量の 2 倍はある」と主張する。 エネルギー基本計画で、30 年度の再生エネの割合をいまの 2 倍の 30% 台後半に引き上げるため、対策を強化する。 残り 9 年で再生エネを大幅に増やすには、比較的短期間で設置できる太陽光がカギとなる。 大規模な電源として期待される洋上風力発電は、環境影響評価や工事などに時間がかかり、早期の導入は難しい。 小泉進次郎環境相は、太陽光パネルの設置場所を広げようとしている。 住宅やビルのほか、耕作放棄地やため池の水面などあらゆる未利用地を挙げて、「使えるところは徹底的にやる。 世の中の景色を変えていく。」と意気込む。 中でも増やせる余地が大きいとみているのが住宅の屋根だ。 小泉氏は住宅への太陽光パネル設置について、「義務も含めて強化していく方向になる」と話す。 初期費用がかからずに太陽光パネルなどを設置でき、自分の家で発電した電気を使える仕組みを広げる。 蓄電池にためて使ったり、電気自動車を走らせたりする生活が、一般的になりそうだ。 大規模な太陽光発電所の建設も進めるが、景観や自然環境を損ねるおそれがあるとして、住民とのトラブルも起きている。 環境省は、再生エネの「促進区域」を自治体が設け事業を始めやすくする仕組みをつくる。 今国会に出した地球温暖化対策推進法の改正案に、具体的な対策を盛り込んだ。 自治体が住民らの意見を聴く場を設け、環境保全や地域貢献などの条件を満たせば計画が認められる。 太陽光の普及を急ぐ環境省に対し、政府内では異論もある。 内閣官房のある幹部は「空いている土地を太陽光パネルだらけにしないと実現は難しい」と懸念する。 経済産業省の有識者会議では「30% を超えて引き上げるのは困難」といった意見もあった。 消費者にとっては電気料金が心配だ。 再生エネを増やせば、値上がりするとの見方は多い。 いまの FIT の上乗せ額は標準的な家庭で年 1 万円を超える。 再生エネの普及拡大のために、地域間の送電網を最大 4.8 兆円かけて整備する計画もある。 こうした費用の一部も、電気料金に上乗せされる可能性がある。 とはいえ温暖化がさらに進み台風や豪雨などの自然災害が増えれば、被害者や損失額は膨大になる。 脱炭素社会は世界的な潮流だ。 政府が表明した温室効果ガスの排出量削減は、国際社会における約束でもある。 (川田俊男、戸田政考) 勢い増す原発推進派 「2050 年のカーボンニュートラルの実現に向け、原子力を継続的に活用していく。」 梶山弘志経済産業相は 4 月 27 日、福井県の杉本達治知事とオンラインで会談し、こう述べた。 関西電力は福井県にある美浜原発 3 号機と高浜原発 1、2 号機を、原則 40 年とされる期間を超えて再稼働させようとしている。 美浜 3 号機は 6 月下旬にも動く見通しで、東京電力福島第一原発事故後では、国内初の 40 年超運転になる。 経産省は再稼働を後押ししており、梶山氏は杉本知事に原子力の継続活用を約束した。 14 年と 18 年に改定されたエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード電源」としつつ、「依存度は可能な限り低減」するとした。 今回の改定で、原子力の位置づけがどうなるかも焦点だ。 経産省は 30 年度の総発電量に占める原子力の割合について、いまの 2 割程度の目標を維持するとみられる。 これまで再稼働した原発は全体の 4 分の 1 の 9 基だ。 19 年度の割合は約 6% で 2 割程度まで上げるには、いまある原発をほとんど動かす必要がある。 世論の反発が根強い新増設に踏み込むのは容易ではなく、梶山氏は「現時点では新増設、建て替えは想定していない」とする。 一方で、自民党内では原発推進派の勢いが増す。 新増設や建て替え(リプレース)を計画に明記するよう求める声も強まっている。 「『原発依存度の可能な限りの低減』との文言は削除する。 カーボンニュートラルを見据え、ただちにリプレースに向けた取り組みを進めるべきだ。」 原発のリプレースを推進する自民党の議員連盟が 11 日に開いた会合で、会長の稲田朋美元防衛相はこう訴えた。 会合には最高顧問の安倍晋三前首相をはじめ約 50 人が出席。 「原子力の人材・技術を維持するために将来像をしっかり示すべきだ」などの意見が出た。 原発の規制を緩和し、最長 60 年の「寿命」を延ばそうという働きかけもある。 自民党の別の議連は、梶山氏や加藤勝信官房長官に 4 月 23 日に、運転期間の見直しを求める提言を出した。 福島第一原発事故後の長期停止中は原子炉などの劣化が進んでおらず、最長 60 年の運転期間に入れるべきではないと主張している。 (平林大輔、長崎潤一郎) コスト 4 倍、試算も 政府は 50 年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルをめざす。 13 日の経産省の有識者会議では、50 年の電源構成の複数のシナリオや達成の条件が示された。 公益財団法人「地球環境産業技術研究機構 (RITE)」が分析した。 政府が昨年末に示した参考値をもとに、再生エネ 54%、原発 10%、二酸化炭素 (CO2) を回収する火力発電 23%、水素・アンモニア発電 13% とする案を軸にした。 七つのシナリオのうち六つで、再生エネの導入拡大により送電線や蓄電池の整備費などがかさんで、電力コストが現状の 2 倍程度になるという。 再生エネを 100% にするものでは、電力コストは約 4 倍になるとした。 会議の有識者からは「どのシナリオでもコストが上がり大変だ」、「製造業が日本から立ち去ってしまう」といった声が上がった。 原発については、建設中を含めいまある 36 基を全て動かしたとしても、順次最長 60 年の運転期限を迎えるため、50 年の発電割合は 10% 程度になるという。 原発を活用して 20% にする案では、リプレース(建て替え)や新増設による新規炉が約 20 基分は必要だとしている。 (新田哲史、asahi = 5-14-21)
トヨタと ENEOS、ウーブン・シティで水素利活用へ トヨタ自動車と石油大手の ENEOS (エネオス)は 10 日、トヨタが静岡県裾野市で建設している実験都市「ウーブン・シティ」で、水素エネルギーを活用するための検討を始めたと発表した。 「脱炭素」社会のカギとなる、水素の製造から供給、利用までの実証を進める。 ENEOS は、商用の水素ステーションを全国 45 カ所に展開。 水素製造の技術開発にも取り組んでいる。 両社の合意によると、ENEOS が、ウーブン・シティ近郊に水素ステーションを建設し、再生可能エネルギー由来の水素をつくる。 この水素を、自動運転などの実証実験をするウーブン・シティの電力源の一つにする。 このほか、燃料電池車 (FCV) の水素の需要を調べたり、物流車両の FC 化を進めたりする。 一連の実証は、トヨタの子会社でウーブン事業を手がける「ウーブン・プラネット・ホールディングス(東京)」とともに進める。 トヨタは、通信最大手の NTT と、スマートシティのプラットフォームづくりに取り組み、ウーブン・シティで実装していく。 ウーブン・シティのパートナーは公募もしており、4 月末までに、4,500 を超える個人や企業から、ウーブンのパートナーとして応募があったという。 (三浦惇平、asahi = 5-10-21) 前 報 (2-27-21) 独、45 年に温室効果ガス実質ゼロに 違憲判断で前倒し ドイツ政府は 5 日、温室効果ガスの排出量の削減計画を見直し、植林などでの吸収分と相殺して実質排出ゼロにした「カーボンニュートラル」を 2045 年までに達成すると発表した。 従来目標から 5 年前倒しとなる。 ショルツ財務相とシュルツェ環境相が記者会見で明らかにした。 30 年までに 1990 年比で 55% 削減する目標を 65% に引き上げ、40 年までに 88% 削減する。 来週の閣議で正式に決め、議会に諮る。 ショルツ氏は「野心的だが達成可能だ」と語った。 連邦憲法裁判所が先月、温室効果ガスの削減目標を定めた気候保護法について、31 年以降の削減措置が十分盛り込まれていないとして、「一部違憲」との判断を示し、22 年末までに議会が対処するよう求めていた。 9 月に予定されている連邦議会選(総選挙)では環境対策が争点のひとつになる見込み。 最近の世論調査では環境政党の緑の党が支持率で首位になるケースが多く、支持率が落ち込んでいる与党キリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU) は連立を組む社会民主党 (SPD) とともに「環境重視」の姿勢を打ち出す必要があった。 (ベルリン = 野島淳、asahi = 5-6-21) |