インターステラテクノロジズのロケット「えんとつ町のプペル MOMO 5 号機」、打ち上げ実施も宇宙空間に到達ならず

堀江貴文氏が出資する宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は 6 月 14 日、小型ロケット「えんとつ町のプペル MOMO 5 号機」を打ち上げた。 同機は午前 5 時 15 分に打ち上げられたものの、およそ 1 分後にエンジンを緊急停止させ、海上に落下。 同社によれば到達した高度はおよそ 11 キロで、高度 100 キロの宇宙空間には到達しなかった。

「MOMO」 5 号機は 2019 年末に打ち上げを予定していたものの、電子機器の不具合などが原因で延期した。 原因究明と対策を終え、MOMO 3 号機以来、2 度目の宇宙空間の到達を再度目指していたが、4 月には新型コロナウイルスの影響によって、5 月に予定していた打ち上げも延期を余儀なくされていた。

6 月 3 日に同社が開いた記者会見で、取締役の堀江貴文氏は記者の取材に対し「定常的に観測ロケットが打ち上がるのはわれわれのビジネス上、非常に意義のあること。 連続して打ち上げが成功するようになると商用的、実用的に使えるという評価を受けることになる。」と答えていた。 同社はこのあと午前 9 時よりインターステラテクノロジズ公式 YouTube にてオンライン記者会見を開催する。 (今野大一、ITmedia = 6-14-20)

前 報 (7-27-19)


中国の工場を日本から管理、加速するリコーの DX

リコーは 2021 年 6 月までに中国新工場に生産の遠隔管理を可能とするシステムを導入する。 その後にタイ工場でも導入を計画。 さらに部門横断型の標準 RPA (ソフトウエアロボットによる業務自動化)開発に着手するなど、社内のデジタル変革 (DX) を推進する。 新型コロナウイルス感染拡大で主力の事務機器の国内市場が弱含む中、社内 DX をデジタルサービス事業拡大にもつなげる。

中国広東省で 7 月稼働する新工場に、遠隔で生産管理できるシステムを構築する。 カメラやセンサーなどを設置し、工程内の検査結果を人工知能 (AI) で分析。 日本で品質などを確認できるようにする。 数年内にタイの工場でも同様のシステムを構築。 主要量産工場となる中国とタイの工場の生産管理を日本に一元化、生産効率を高める。 生産管理に携わる駐在員を減らし人材配置も最適化する。

社内の標準 RPA の開発にも取り組む。 これまでは部門ごとに異なる RPA を運用していたため、事業計画策定時に部門間の連携がうまくいかないなど課題もあった。 リコーが 4 月に新設した約 70 人規模の組織「ワークフロー革新センター」を軸に、部門横断的な仕事の連携や生産工程を効率化を進める。 同社はこれら社内 DX で 20 年度は 90 億円の効果を見込んでいる。 社内 DX で培ったノウハウや技術は実際のビジネスにも展開。 まずはデジタルものづくり分野で、中小企業向けに生産現場の DX を促進するコンサルティングサービスに乗り出す。 秋頃までにリコージャパン内に「製造ソリューションチーム」という事業部を立ち上げた上で、サービスを始める。 (NewSwitch = 6-9-20)


9 時頃が狙い目! Amazon にて Nintendo Switch 本体の定価販売が増加中

任天堂の業容

記事コピー (7-8-16 ~ 6-2-18)


大型化するテレビの販売 50 型以上が 3 割に

テレビの売れ行きの主流が、大型になりつつある。 国内向けに出荷された 50 型以上の薄型テレビの台数は、5 年前から年々増加。 価格が下がって買いやすくなる傾向に加え、映像がより鮮やかに見えたり、インターネットと接続できたりする高性能な機種が人気を集めていることが背景にあるようだ。 電子情報技術産業協会 (JEITA) によると、薄型テレビの国内出荷実績のうち 50 型以上は、2020 年 1 - 3 月が 35 万台で前年同期比 16.5% 増。 全サイズのうちの 31.1% を占めた。 全サイズのうち 50 型以上は 15 年が 13.9%、19 年は 28.9% で右肩上がりだ。

11 年 7 月の地上デジタル放送への完全移行を見すえた薄型テレビの特需が終わって 9 年ほどが経つ。 家電量販関係者によると、当時購入されたテレビが買い替え時期にさしかかり、また今年は東京五輪も予定されて大画面で五輪を見たいという消費者の需要も高まっていた。 メーカー各社の価格競争による値下げも相まって大型テレビへの買い替えが増えたという。 大型テレビの高性能化も後押ししている。 4K、8K 放送に対応する機種のほか、高精細の有機 EL テレビも登場した。 さらに画面のふちの部分を細くしたり、薄型にしたりした製品が発売され、同じスペースにより大きなサイズを置くことが可能になってきたという。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、不要不急の自粛が呼びかけられた今年の大型連休前には、ネットとつながる「スマートテレビ」の問い合わせが家電量販店に多く寄せられたという。 ヨドバシカメラマルチメディア梅田(大阪市)でテレビコーナーの責任者を務める小田原寛幸さんは、「家にいる時間が増えた分、大画面でネットの動画も楽しみたい方が増えている」と話す。(井東礁、asahi = 5-19-20)

メモ : シャープは、フルハイビジョンの 16 倍の解像度の 8K 放送に対応した液晶テレビ「AQUOS (アクオス) 8K」を 4 月 25 日に発売した。 従来製品に比べて色鮮やかで、価格も 4 割ほど安くしたという。 税抜き想定価格は 70 インチが約 60 万円、60 インチで約 45 万円。(知っとこ! DATA)


医療崩壊を防げ! 医療器具を 25 時間で即納する中小企業の力

木幡計器製作所(大阪市大正区)を中心とする大阪市内の中小企業 7 社が技術力を結集し、このほど感染症患者搬送用ストレッチャーの頭部部分に装着して飛沫を防ぐ被覆具を作製した。 市内の病院から相談を受け、パーツ加工、組み立てを行い、わずか 25 5時間という短納期で納入した。 新型コロナウイルス感染症拡大により、医療現場で防護具などが不足する中、モノづくり企業が駆けた。

4 月 21 日 11 時半、医療用計測器を製造する木幡計器製作所に病院から相談が舞い込んだ。 同病院は新型コロナ感染症患者の受け入れを自治体から打診されたが、ストレッチャー用の被覆具が医療器具卸商社の在庫になかったという。 病院の焦りを感じ取った木幡巌社長はすぐさま、大阪商工会議所の「町工場ネットワーク」メンバーに無料通話アプリで拡散。 近隣企業を中心に 7 社がウェブ会議で集まり製作が始まった。

加工材料は一から手配していては間に合わない。 「うちの工場に厚みが合致するアルミニウム端材がある」と土井商店(大阪市大正区)がフレーム材料を用意。 光機械工業(大阪市大正区)が形状と厚みに合うネジを探した。 切断や曲げ、穴あけを泰製作所(大阪市港区)が担い、万一にもシート素材が破れないよう、南歯車製作所(大阪市港区)が念入りにバリ取りを施した。 その後、木幡計器と西村鉄工所(大阪市大正区)がとりまとめ、翌 22 日、集まれる関係者が池田鉄工所(大阪市大正区)で組み立て、11 時半にテストを完了。 12 時半に病院へ持ち込んだ。

各社は今回の病院からの依頼を無償で引き受けた。 木幡計器製作所の木幡社長は「こういう時期だから、医療に貢献したいという思いを持つ企業は多い」と語る。 大阪府が模索する経済活動の段階的解除において、医療崩壊を起こさない体制整備は必須。 製造業は、医療の最前線で働く人の安全性を下支えすることができる。

医療物資、生産急ピッチ 木幡計器が中小の力結集

木幡計器製作所(大阪市大正区)は、地域の中小企業と連携し、医療現場向けの製品開発に乗り出している。 近く医療用フェースガードの生産を開始するほか、すでに感染症患者搬送用ストレッチャーで飛沫を防ぐ被覆具を作製。 新型コロナウイルスの感染拡大で医療物資不足が深刻化する医療現場に対し、中小企業の力を結集して支援する。

医療用フェースガードはポリプロピレンの袋を針金の枠にかぶせ固定したもので、顔の周囲を覆い、使用後は袋を捨てる。 数週間以内に約 1,000 個を生産する予定。 まず大阪市内の医療機関へ提供した後、非常時の物資供給を支援する一般社団法人、スマートサプライビジョン(東京都港区)を通じて全国の医療機関に提供する。

木幡計器製作所は産業・医療用計測装置メーカー。 以前から大阪市内の医療機関と医工連携などで協力し、臨床工学技士から物資不足の説明を受け、生産を決めた。 木幡巌社長は「現場の生の声を聞き、ビジネスというより何か手助けをしたいという気持ちで作り始めた」という。 フェースガードは同社も参加する医工連携プロジェクト「りびんぐラボ大正」の会員企業と連携。 今後もそれぞれの得意技術を生かして医療物資供給に取り組む。 ストレッチャー用被覆具は、同社を含め 7 社で作製した。 (大阪・坂田弓子、NewSwitch = 5-9-20)


カプコン、過去最高益に モンハンなどダウンロード好調

ゲーム大手のカプコンが 8 日発表した 2020 年 3 月期決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年比 25.8% 増の 228 億円と過去最高だった。 売上高が 815 億円と同 18.4% 減った一方、利益率の高いゲームソフトのダウンロード販売が増えたためという。 ダウンロード版は店頭などで売るパッケージ版よりも価格は安いが、データのやりとりだけで済む分、利益率が高い。 人気シリーズ「モンスターハンター」の新作など、主な販売をダウンロード版に転換したことが功を奏し、純利益も同 27.1% 増の 159 億円で過去最高となった。

同業大手の任天堂は新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり需要」を追い風に好業績をあげたが、カプコンは自社ソフトの販売本数は前年並み。 巣ごもり消費は「それほど大きくなかったと考えている(野村謙吉専務)」という。 逆に、各地で運営するゲームセンターの 9 割で臨時休業や時短営業を強いられている。 3 月のこの事業の売上高は 3 割ほど減ったという。

21 年 3 月期は大型の新作ゲームソフトの発売を複数予定し、売上高は同 4.2% 増の 850 億円、営業利益も同 11.7% 増で再び過去最高となる 255 億円を予測する。 ただ、開発陣の在宅勤務が続いて開発スケジュールが遅れたり、パチンコ店の休業で新作のパチスロ機が見込み通りに売れなくなったりすれば、業績の下ぶれにつながる可能性もあるという。 (森田岳穂、asahi = 5-8-20)


3D プリンターのアルミ造形物を金属光沢加工する新技術
メーカーやユーザーに幅広く提案

アート 1 (神奈川県大和市、秋本政弘社長、046・264・1311)は、金属 3D プリンターで造形したアルミニウム造形物の表面に金属の光沢を与える表面処理技術を開発した。 アルマイト処理の一種で表面の粗さもある程度滑らかにできる。 3D プリンターの造形物は金属的な見栄えにならない課題がある。 新技術なら試作品でもより金属に近い外観で検討できる。 3D プリンターメーカーやユーザーなど幅広く提案する。

3D プリンターでアルミ造形する場合、造形しやすくするためアルミ合金の粉体にケイ素を 12% ほど混ぜる。 アート 1 によると、ケイ素が混ざるとアルマイト処理が困難になる課題があった。 開発した表面処理「3DPBright (スリーディピーブライト)」は、アルマイト処理の前に行うブラストの方法や処理に使う電解液を工夫し、被膜を均一に施せるようにした。 染料も定着しやすくなり、これまで難しかった黒などの色付けも可能になる。

表面の滑らかさに関しては、同社の実験によると未処理の 3D プリンター造形品の表面粗さが、算術平均粗さ (Ra) 14.4 マイクロメートル(マイクロは 100 万分の 1)に対し、処理品は同 4.9 マイクロメートルだった。 秋本社長は「3D プリンターの利用価値向上に貢献できる」と期待を寄せている。 (NewSwitch = 4-28-20)


院内感染防止にドーム型病室 短時間で設営、導入相次ぐ

新型コロナウイルスの院内感染が全国各地で問題になる中、プレハブ工法のドームハウスが医療機関から注目されつつある。 車 2 台分のスペースに 1 時間半ほどで設営できるといい、すでに東京の病院や山梨県の診療所が隔離スペースとして導入したという。

「イージードームハウス」は直径 3.3 メートル、高さ 2.6 メートルの球形をしている。 外壁は高密度ポリエチレン製のパネルで雨に強く、防音性や保温性も優れている。 内部は 4 畳半ほどの広さで、患者のベッドや医療機器を入れても余裕がある。 入り口 1 カ所と窓 3 カ所が標準だが、扉を追加して通気性を高めることもできる。 駐車場などに設置し、すぐに撤去できる。

1 基 78 万円(消費税・配送料別)で、輸入車・自動車用品販売会社「ホワイトハウス(本社・名古屋市、木村文夫社長)」の子会社「TCL」が昨年11月から販売している。 当初は主に災害時の仮設住宅を想定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今年 2 月末ごろから医療機関から問い合わせが相次ぐようになったという。 すでに導入した病院や診療所は、「発熱外来」を訪れた患者を他の患者と接触させずに検査・診療するスペースとして使っているという。

「ホワイトハウス」広報・マーケティング部の谷川伸一部長は「ドームは丸洗いでき、建築確認申請も不要。 医療崩壊を防ぐためにも活用してほしい。」と話す。 水害や震災などが重なり、避難所などで集団感染が発生しないよう、自治体などにも導入を働きかけたいという。 問い合わせは「ホワイトハウス (0561・37・5440)」。 (鈴木裕、asahi = 4-20-20)


【新型コロナ】 テレワーク特需も限定的 … 半導体市場が急速悪化

日本総合研究所は新型コロナウイルス感染拡大による不況で半導体市場が将来、急速に悪化するという予測をまとめた。 同社は半導体需要の大半を占めるスマートフォンや家電、車載向けが落ち込むことで半導体出荷は 2008 年のリーマン・ショック時並みに下がると予測している。 テレワークや在宅医療、インターネットによる商品購入、第 5 世代通信 (5G) 関連投資などにより新型コロナ不況で自動車やアパレル、外食、旅行などの需要が落ち込む中でも半導体関連市場が "特需" で伸びるとの見方は強い。

しかし、半導体の最終製品別需要で分析すると、テレワーク需要にからむパソコンやサーバーのシェアは約 3 割と限定的と判断した。 2 月の半導体製造装置出荷額は前年同月比で日本は 15% 増、米国は 27% 増など国内外で堅調だった。 ただ、都市のロックダウン(都市封鎖)や活動自粛によって食品などの巣ごもり消費を除く消費が大きく落ち込み、耐久消費財需要も減ると予測。 半導体製造拠点が集まるアジア諸国に、大きな痛手になるだろうと分析している。 (NewSwitch = 4-14-20)


アビガンの原料、5 月から国内で生産 デンカ

新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待される抗インフルエンザ薬「アビガン(一般名ファビピラビル)」の増産に向け、中堅化学メーカーのデンカ(東証 1 部上場)が 5 月から、アビガンの原料となる「マロン酸ジエチル」の生産を新潟県糸魚川市の工場で始めると発表した。 マロン酸ジエチルは合成香料・農薬・医薬品などの原料に使われる有機化合物で、デンカは国内唯一のメーカー。 マロン酸ジエチルの原料となるモノクロル酢酸も、デンカの関連会社が国内で唯一生産している。

デンカは 2017 年 4 月までマロン酸ジエチルを生産していた。 海外勢との競合激化で撤退したが、生産設備は残していた。 国産原料を使ったアビガンの供給体制を国内で築きたいと政府から要請を受け、生産再開を決めた。 「新型コロナウイルス感染症への対策を社会的責務と捉え、迅速に生産体制を構築し確実な供給を図っていく」としている。 設備の再稼働に向け、従業員を他の製品の生産ラインから配置転換する。 アビガンは富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ薬。 ウイルスの増殖に必要な酵素の働きを阻害する。

他の薬が効かない場合に限って使える薬として14 年に国内で承認され、200 万人分が備蓄されている。 インフルエンザウイルスと同種の RNA ウイルスである新型コロナウイルスに感染した患者の治療にも有効と期待されており、政府は正式承認に必要な治験プロセスを始めた。 富士フイルムはこれまで海外の調達先から原料の供給を受けていたが、政府の仲介でデンカからも調達することを決めた。 (木村裕明、asahi = 4-3-20)


三幸製作所、10 倍の 500 台体制 ニプロ・テルモも ECMO 増産

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内の医療機器メーカーが相次いで人工呼吸器などの増産に乗り出している。 三幸製作所(さいたま市西区、金坂良一社長)は人工呼吸器の増産に向け生産体制を整備した。 同社は年間 50 台程度の人工呼吸器を生産しており、10 倍の 500 台程度まで増産できるよう部材や生産ラインを確保した。 大手では、ニプロが人工心肺装置 (ECMO) の部品の出荷体制を整えたほか、テルモも ECMO の増産を始めた。

動物用転用も

吸引器や麻酔装置を手がける三幸製作所は、海外向けの人間用人工呼吸器と国内向けの動物用人工呼吸器の 2 種類を生産している。 それぞれ 10 倍まで増産できるよう生産体制を強化した。 「緊急時に動物用の機器を人間に転用しなければならない状況も見据え、部材などを確保している(同社)」という。 テルモも人工心肺装置を 1 月下旬から増産。 人工心肺装置は現在、全国で約 1,400 台普及しており、テルモの装置は国内シェア 7 割を占める。今後数カ月以内に「年間の出荷計画を前倒しにする形で、100 台程度を増産する。(同社)」

部品出荷体制整う

ニプロは ECMO に使用する部品「ニプロコーティング膜型人工肺」の出荷体制を整えた。 同社は国立循環器病研究センターなどと共同で可搬式の ECMO を開発し、薬事承認を経て 2021 年の発売を目指している。 新型コロナ感染症は世界的に拡大しており、海外市場を対象にした増産も続いている。 旭化成傘下の米ゾール・メディカルは、欧米市場向けに人工呼吸器を月 1 万台増産する。 現在の生産数の約 25 倍に達する見通しだ。

欧米など向け

日本光電傘下の米オレンジメッドも欧米や新興国向けに人工呼吸器を増産する。 「部材の調達先との交渉次第だが、今期から年間で数百台を生産する(同社)」という。日本光電本社も欧州向けに生体情報モニターの出荷台数を増やしている。 新型コロナ感染症の拡大で、医療現場の機器が不足する懸念が高まった。 各社は増産で対応する。

人工心肺装置は 1 人の患者に対し複数の医療スタッフが 24 時間対応する必要があり、スタッフにかかる負担は大きい。 装置を操作する臨床工学技士はトラブル発生時の対応などで経験や知識が求められるため、運用できる人員が限られる。 東京医科歯科大学医学部附属病院(東京都文京区) ME センターの臨床工学技士・倉島直樹技師長は「人工心肺装置の運用例が年間 5 例以下の病院も多く、経験が足りない技師が多い」と指摘している。 (森下晃行、安川結野、大阪・中野恵美子、日刊工業新聞 = 4-3-20)

用語】人工心肺装置 (ECMO) = 重症呼吸器不全患者などに使われる生命維持装置。 患者の静脈に管を挿入して血液を取り出し、酸素を付加する。 同時に血液中の二酸化炭素を除去して再び患者の体に戻す。 これにより、血液中の酸素濃度が回復する。 呼吸機能が低下した場合、まず人工呼吸器で肺に酸素を送る。 ECMO を使用するのは人工呼吸器では補えないほど症状が悪化した場合だ。 重症患者の管理に加えて装置の取り扱いが難しいため、正しい知識と臨床経験を持つ医師や看護師、臨床工学技士らがチームで使用する。


シャープ、NEC のディスプレー事業買収 92 億円
世界シェア 3 位浮上、韓国勢を追撃

シャープは 25 日、NEC のディスプレー事業を買収すると発表した。 NEC は広告などに使うデジタルサイネージ(電子看板)の海外事業に強みを持つ。 シャープは買収で国内主体のディスプレー事業の海外展開を加速し、世界市場で先行する韓国サムスン電子、LG 電子を追撃する。 親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業の経営基盤を活用して買収事業の競争力を高める狙いもある。

NEC 子会社の NEC ディスプレイソリューションズ(東京・港)を買収する。 約 92 億円を投じ、NEC から全株式の 3 分の 2 を取得する方針だ。 独占禁止法の審査などを経て、7 月をメドに子会社化を完了する予定だ。 NEC ディスプレイソリューションズは、液晶ディスプレーを使った電子看板や電子黒板のほか、プロジェクターなどのオフィス機器も手がける。 2018 年度の連結売上高は 973 億円で、シャープの同様の事業の 2 倍以上の売り上げ規模があるもようだ。 売り上げの約 9 割が欧米など海外で国内が主体のシャープとは強みとする市場の補完関係もある。

NEC は ICT (情報通信技術)技術を活用したサービスやソリューションを収益の主軸に据える一方、パソコンなどをはじめとする機器事業は段階的に売却を進めてきた。 脱ハードへの構造改革を推進するなかで、ディスプレー事業での規模拡大を目指すシャープと双方の思惑が一致した。 シャープは当面、NEC のブランドを維持しながら、事業を展開していく見通しだ。

英調査会社のオムディアの調べでは、19 年の業務用・商業用ディスプレーの世界シェアはシャープと NEC の合算で、9% と世界 3 位に浮上する。 首位のサムスン電子のシェアは 27% とまだ差が大きいが、今回の買収で 2 位の LG 電子 (12%) の背中は近づく。 シャープは液晶パネルの生産拠点を国内に持ち、中国にディスプレーの組み立て工場を持つ。 さらに世界最大の電子機器の受託製造サービス (EMS) である鴻海の生産拠点や調達・物流網も活用することで NEC の事業を効率化し、売り上げ規模も拡大することが可能とみている。

シャープは価格下落の激しい液晶テレビなどの消費者向け家電から、法人向け主体へと製品構成の転換を進めている。 製品売り上げのうち 3 - 4 割にとどまる法人向けを 5 割に引き上げる方針だ。 戴正呉会長兼社長は昨年 6 月のインタビューで、「BtoB (企業間取引)のビジネスの拡大に向けて M & A (合併・買収)を進めたい」と話していた。 (nikkei = 3-25-20)


家庭用の非常用電源に最適! 1 時間の連続運転が可能なカセットボンベ燃料で稼働
ヤマハのインバータ発電機「EF900iSGB2」

ヤマハモーターパワープロダクツは、手軽に扱えるカセットボンベを燃料とするインバータ発電機「EF900iSGB」に新機能を織り込んだ「EF900iSGB2」を、2020 年 4 月 1 日に発売する。 販売は、ヤマハ発電機販売店やホームセンターなどで行なう。 近年、自然災害が多発していることから、非常用電源として小型ポータブル発電機が注目されている。

中でも家庭用として、小型・軽量、簡単な操作と燃料補給、劣化の少ない燃料による長期保管が可能といった特長からカセットボンベタイプの需要が高まっており、特に家庭用電源と同等の良質な電気を供給できるインバータ方式を採用する「EF900iSGB」が人気を集めている。 こうした状況から「EF900iSGB2」は、1) 既存モデルと同等の約 1 時間に及ぶ連続運転時間を維持しながら、定格出力を従来の 850VA から 900VA に向上、2) 別売り・オプションの並列運転ケーブルで 2 台の「EF900iSGB2」をつなぐ並列運転機能により最大 1,800VA を供給可能とし、家庭などの非常用電源としての利便性を高めた。 (@dime = 3-17-20)


世界初、次世代型リチウムイオン電池量産化へ 三洋化成工業の子会社、工場取得

東証 1 部上場の化学メーカー三洋化成工業(本社京都府京都市)は 3 月 2 日、子会社の APB (東京)が世界初となる次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の量産化に向け、福井県越前市で新たに工場を取得したと発表した。 エネルギー産業の大規模蓄電池などでの活用を照準に、越前市の工場で量産技術を確立し、2021 年秋ごろの量産化を目指す。

全樹脂電池は、リチウムイオン電池の主要な構成要素である集電体などを、金属ではなく樹脂に置き換えたもの。 従来電池に比べて電気容量や安全性が高く、低コスト、短い工程で製造できるのが強みという。 日産自動車の電気自動車「リーフ」の電池を手掛けた APB の堀江英明 CEO らが開発。 三洋化成の界面活性制御技術で開発した樹脂を用いる。 越前市庄田町にある電子部品メーカーの旧工場(敷地約 2 万 3,700 平方メートル、延べ床面積約 8,600 平方メートル)を取得した。 福井県庁で 2 日記者会見した堀江 CEO は、立地選定について「電池の海外輸出を考えており、物流面も重視した。 (北陸自動車道)武生インターチェンジや敦賀港が近くにあり、素晴らしいところ。」と話した。

越前市の工場で今後 2 年ほどで量産技術を確立し、国内のリチウムイオン電池の年生産と同程度の 1 ギガワット時ほどの電池製造を目指す計画。設備投資額や雇用数などは未定とした。 再生可能エネルギーの発電などの基幹電力を安定させるための定置用電池市場を主に狙っており、堀江 CEO は「福井県からこの技術を世界に発信していく」と強調。 三洋化成の安藤孝夫社長は「5 - 10 年内に数千億円規模の事業にしたい」と述べた。 (福井新聞 = 3-3-20)