ノリタケ・日本ガイシ 森村グループ 3 社の祖業苦戦続く

明治期以来の食器事業に源流を持つセラミック企業集団の森村グループで「祖業」の苦戦が目立っている。 名古屋が本拠の主要 3 社の 2019 年 9 月中間決算は、ノリタケカンパニーの食器と日本ガイシの「がいし」が赤字。 日本特殊陶業も点火プラグを含む自動車事業が減益だった。

ノリタケは看板の食器事業で 3 億 8 千万円の営業赤字となった。 ホテル向けの受注が伸びて赤字幅は前年の 5 億円より縮んだが、海外販売が振るわず、赤字は下期も続く見通しだ。 食器は貴重な外貨を稼ぐ手段として明治期に始まったグループの祖業。 ノリタケの加藤博社長は「縮小均衡でもいいので、利益を出さないといけない」と危機感をにじませる。

創業 100 年を迎えた日本ガイシは、食器から派生した「がいし」が不振だった。 送電線の絶縁に使う製品で、蓄電池を含めた電力事業が 24 億円の営業赤字(前年同期は 31 億円の赤字)だった。 「電力会社の投資抑制が響いている(大島卓社長)」といい、当面、我慢の時期が続くとみる。

日本ガイシから分かれた日本特殊陶業は、点火プラグを含む主力の自動車関連事業が苦戦した。 中国の自動車販売が減ったあおりで、部門の営業利益は前年同期より約 15% 縮小。 川合尊社長は見通しについて「中国がどう動くかでかなりの影響が出る」と話す。 また、株高が支える米国の個人消費の先行きにも警戒を示した。

ノリタケは工業用の砥石(といし)、日本ガイシは半導体製造装置向け製品など、祖業以外の分野が売り上げの多くを占める。 ただ、9 月中間決算ではいずれも自動車や半導体産業の冷え込みが響き、3 社とも営業利益は前年実績を下回った。 (山本知弘、asahi = 11-11-19)

森村グループ〉 1876 (明治 9)年に森村市左衛門らが創業した陶磁器商社の森村組を起源とするセラミック企業集団。 1904 年に輸出用磁器の製造部門として日本陶器(現ノリタケカンパニー)を設立。 その衛生陶器部門が東洋陶器(現 TOTO)、がいし部門が日本碍子(現日本ガイシ)に。 日本碍子から自動車用点火プラグ部門として日本特殊陶業が分離した。 長く「1 業 1 社」を掲げて事業分野をすみ分けてきたが、今年 3 月に初の 4 社協業構想を発表。 セラミックをつかった燃料電池開発会社「森村 SOFC テクノロジー」をつくり、12 月に事業を始める。


有機 EL 実用化に貢献、3 氏にメダル贈呈 京都賞授賞式

科学や文明の発展に貢献した人をたたえる第 35 回京都賞(稲盛財団主催)の授賞式が 10 日、京都市であり、スマートフォンやテレビなどに用いられる有機 EL の実用化に貢献した香港科技大 IAS 東亜銀行教授のチン・W・タン氏 (72) ら 3 人に、メダルや賞金各 1 億円が贈られた。 タン氏は、高い電圧でしか発光させられなかった有機材料を、低い電圧でも効率良く発光させる構造を発見した。 授賞式後の記者会見で、「有機 EL が多くの人に使われていることを光栄に思う」と話した。

ほかの受賞者は、宇宙の 3 次元地図を作り、150 万個以上の天体の位置を特定した国際プロジェクトを率いた米プリンストン大名誉教授のジェームズ・ガン氏 (81) と、前衛劇団の代表格の一つ「太陽劇団」を創立し、独創的な作品を通じて歴史・政治に対する意識啓発を促した仏演出家のアリアーヌ・ムヌーシュキン氏 (80)。 ガン氏は「何百人もの研究者が貢献してくれ、以前よりも定量的な天体研究ができるようになった」と話した。 ムヌーシュキン氏は、着物を着た子供たちの合唱などが披露された授賞式について、「舞台の観点から眺めていた。 素晴らしい文明、文化が結集したものだ。」と評した。 (野中良祐、asahi = 11-10-19)


台風 19 号、日立とパナソニックの郡山工場、稼働停止

日本では台風 19 号(ハギビス)の影響により福島県にある日立製作所やパナソニックの工場が稼働を停止している。 NHK によると、日立製作所は 15 日、福島県郡山市にあるグループ会社の工場が台風 19 号の影響で浸水したため操業を見合わせていることを明らかにした。 また同日、パナソニックも郡山市の工場が浸水したため、稼働を見送ったと報じられた。 NHK は 16 日、日立とパナソニックの郡山市の工場では 16 日も稼働の停止が続いていると報じている。 日立とパナソニックは被害状況の確認を行っており、復旧の時期は未定だという。 (Kim Kyung-Hoon、Reuters = 10-16-19)

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台風 19 号で浸水、生産停止 アルプスアルパインなど

台風 19 号による記録的な大雨により、自動車・電機部品などの一部の工場で浸水被害が相次いでいる。 断水や停電も影響し、稼働を停止させている。 サプライチェーン(供給網)への影響を回避するため、企業によっては復旧と同時に生産拠点切り替えの検討を急いでいる。 車載部品大手のアルプスアルパインは、福島県いわき市の子会社工場で 13 日午後、車載用スピーカーなどオーディオ機器を製造している生産設備の一部が水につかっていることを確認した。 13、14 日は当初から休みの予定で生産を止めており、15 日から稼働させる計画だったが停止させる。

阿武隈高地から流れる夏井川の氾濫の影響とみられている。 復旧には 13 日から数えて 10 日前後かかる見通し。 いわき市では断水と停電も続いており、インフラ復旧の状況次第では「操業停止が 10 日以上に長引く可能性もある」という。 いわき市内にある別の 2 工場や宮城県内の工場で代替生産を検討している。 在庫量については明らかにしていない。

電子部品大手、太陽誘電の福島県伊達市にある子会社工場では 12 日夜から浸水が始まった。 工場 1 階にある電気設備が浸水したため、最長で 1 週間操業を止める見通しだという。 阿武隈川か、あるいは近くを流れる支流から水があふれたとみられている。 この工場では、スマートフォンや自動車の電気ノイズを排除するインダクターを製造している。 在庫量は明らかにしていない。

通信機器のアンリツでは、通信用測定器を製造している福島県郡山市の工場 2 カ所のうち 1 カ所が浸水した。 製造設備は工場の 2 階に置かれているため、被害は小さいとみられるが、1 階部分の水がはけるまでは被害状況の確認ができない状況だという。 15 日の操業は取りやめる。 車部品大手のケーヒンは阿武隈川の氾濫で中心部が浸水した宮城県丸森町にエンジン部品の工場を持つ。 丘の上に位置しているため、浸水などの被害はなかったが、工場内には暴風で散乱物がたまっており、14 日は宮城県内の全 3 工場の稼働を取りやめた。 15日から稼働させる。

一方、14 日の時点で完成車メーカーは予定通り生産を再開させた。 トヨタ自動車は子会社の三重、岐阜、福岡県の 3 工場で 12 日は操業を止めていた。 三重県や埼玉県の完成車 2 工場を含む 4 工場を停止させていたホンダや、群馬県に工場を持つ SUBARU なども 14 日に再開させた。 電機、自動車などのメーカーは部品調達先を含めた被害の全体像の把握を進めている最中で、サプライチェーンへの影響がこれから明らかになるケースもありそうだ。 Nikkei = 10-14-19)


吉野彰氏にノーベル化学賞 リチウムイオン電池を発明

スウェーデン王立科学アカデミーは 9 日、2019 年のノーベル化学賞を、リチウムイオン電池を発明した旭化成名誉フェローの吉野彰氏 (71) ら 3 氏に授与すると発表した。 小型で高性能の充電池として携帯型の電子機器を急速に普及させ、IT (情報技術)社会の発展に大きく貢献した功績が評価された。 他の受賞者は米テキサス大教授のジョン・グッドイナフ氏 (97)、米ニューヨーク州立大ビンガムトン校特別栄誉教授のスタンリー・ウィッティンガム氏 (77)。

日本のノーベル賞受賞は 2 年連続で、17 年に文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏を除き計 27 人となった。 化学賞は 10 年の 2 氏に続き計 8 人。 吉野氏はビデオカメラなど持ち運べる電子機器が普及し、高性能の電池が求められていた昭和 58 (1983) 年にリチウムイオン電池の原型を開発した。 ノーベル化学賞を受賞した白川英樹筑波大名誉教授が発見した電導性プラスチックのポリアセチレンを負極の材料に使い、これにグッドイナフ氏が開発したコバルト酸リチウムの正極を組み合わせて作った。

その後、負極の材料を炭素繊維に変更することで小型軽量化し、電圧を 4 ボルト以上に高める技術も開発。 同じ原理で平成 3 年にソニーが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化した。 ウィッティンガム氏は 1970 年代初め、世界で初めて電極材料にリチウムを用いた電池を開発した。 繰り返し充電できる電池はニッケル・カドミウム電池などが既にあったが、性能を飛躍的に高めたリチウムイオン電池の登場で携帯電話やノートパソコンなどが一気に普及。 スマートフォンなど高機能の電子機器を持ち歩く「モバイル(可動性)社会」の実現に大きな役割を果たした。

近年は電気自動車や人工衛星などにも用途が拡大。 再生可能エネルギーを有効に利用する手段としても期待されている。 授賞式は 12 月 10 日にストックホルムで行われ、賞金計 900 万スウェーデンクローナ(約 9,700 万円)が3等分で贈られる。 (sankei = 10-9-19)

よしの・あきら 昭和 23 年 1 月、大阪府生まれ。 45 年、京都大工学部卒。 47 年、京大大学院工学研究科修士課程修了。 同年、旭化成工業(現旭化成)入社。 平成 4 年、イオン二次電池事業推進部商品開発グループ長。 9 年、イオン二次電池事業グループ長。 13 年、電池材料事業開発室室長。 15 年、同社フェロー。 27 年 10 月、同社顧問。 29 年、名城大教授、旭化成名誉フェロー。 16 年、紫綬褒章。 24 年、米国電気電子技術者協会 (IEEE) メダル受賞。 26 年、全米技術アカデミー「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」受賞。 30 年、日本国際賞。 令和元年 6 月、欧州発明家賞。


三菱重工から「H3」ロケット部品を受注したホンダ系サプライヤー

ホンダ系でエンジン部品が主力の田中精密工業はグループ会社で次期基幹ロケット「H3 ロケット」用部品を受注した。 100% 子会社のタナカエンジニアリング(富山市)が三菱重工業からエンジン部品と機体バルブ部品を受注した。 タナカエンジの航空宇宙関連部品の売上高は部品製造事業の 7% を占めるまでに拡大した。

今回受注したのは、H3 ロケットの水素と酸素の混合比を最適化するのに寄与する燃料噴射部品をはじめとするエンジン部品と、水素と酸素の調圧や排圧を制御する機体バルブ部品。 タナカエンジはレース用エンジン部品の加工や生産設備の設計・製作を手がけている。 2014 年に航空宇宙産業の品質管理規格「JISQ9100」を取得し、航空宇宙向けの部品加工にも注力していた。 今後はロケットだけでなく、航空機部品の受注も視野に入れ、部品製造事業の 10% 以上を航空宇宙分野にすることを目指すとしている。 (NewSwitch = 10-5-19)


工作機械の市況低迷も、DMG 森精機が強気の国内生産増強に動くワケ

20 年後半には受注回復との読み、日米中で 3 割増の年 8,000 台

DMG 森精機は 2023 年までに、国内の生産能力を増強する。 三重県と奈良県にある計 2 工場を大規模改修し、日本、中国、米国を合わせた年産能力を現在比約 3 割増の 8,000 台規模に引き上げる。 現在、工作機械の市況は低迷しているが、同社は 20 年後半には回復するとみている。 好転時に直ちに需要を取り込む体制を競合他社に先駆けて整えるとともに、長期的な成長に向けて国内基盤を充実させる。

国内生産能力の増強は 2 段階で実施する。 まず、国内最大拠点の伊賀事業所(三重県伊賀市)内で 20 年末までに、複数ある工作機械の組立工場の 1 棟を改修する。 40 億円以上の投資を見込む。 続いて、自動車部品製造向けの工作機械が主の奈良事業所(奈良県大和郡山市)から、改修した伊賀の工場に部品加工を移管する。 その上で 22 - 23 年に奈良事業所を改修する。 部品加工用だったスペースで工作機械の組み立てを行うほか、主軸をはじめとした精機部品の生産を検討する。

工作機械受注は、日本工作機械工業会(日工会)の調べで 8 月まで 11 カ月連続で前年割れにある。 米中関係の緊張が背景にあり、6 月と 8 月には健全水準とされる月 1,000 億円を下回った。 ただ、DMG 森精機は「中国は底を打った感がなくはない(森雅彦社長)」との見立てだ。 生産体制の整備に先立ち、今夏には日本でアフターサービス体制を拡充した。 伊賀事業所に補修部品の自動倉庫を新設し、部品の収容量を従来比 50% 増に引き上げている。 同社の 18 年度国内受注高比率は約 2 割でドイツ、米州と並んで高い。 (NewSwitch = 9-28-19)


受託生産、日本勢受け皿に 米中摩擦で脱・中国加速

日本の EMS (電子機器の受託製造サービス)企業が東南アジアで生産増強に動いている。 米中貿易戦争を受けて、EMS を使う企業が発注先を中国から東南アジアに切り替えており、日本の EMS が受け皿の一つとなっているためだ。 大手の加賀電子はタイで新工場を建設、メイコーはベトナムの現地企業の子会社化などで能力増強をめざす。 人件費の上昇もあって製造業の「脱・中国」の流れは続く見通しで、日本の EMS には商機となりそうだ。

加賀電子はタイのチョンブリ県に第 2 工場を建設する。 約 5 億円を投じ 2019 年 12 月に稼働させる。 顧客の複合機メーカーがタイでの生産を拡大するのに伴い、基板部品の受託生産が増えることなどに対応する。 2 年以内に新工場の売上高を 100 億円まで増やす。 同社は「米中貿易問題を回避するための顧客の生産移管の動きは拡大する」とみる。 新規の顧客からの注文も増えるとみており、EMS 事業の 21 年度の売上高を 18 年度実績比 5 割増の 1,400 億円に拡大する計画だ。

ベトナムに EMS 工場を持つプリント基板製造のメイコー。 10 月に現地の EMS 企業に 8 億円を投じて 60% の出資持ち分を取得し、子会社化することを決めた。 生産能力の増強などにつなげる。 中国で車載機器やスマートスピーカーなどを生産するメーカーからの引き合いが急増しているためだ。 顧客からは「中国の EMS への発注を続けると、追加関税のコスト増に対応できなくなる」という声が聞かれるという。 19 年度に 89 億円を見込む EMS 事業の売上高は、20 年度は 2 倍超に増える見込みだ。

米中の貿易摩擦は過熱の一途だ。 トランプ米政権は 1 日、中国製品に対する制裁関税「第 4 弾」を発動。 複合機やスマートウオッチなどに 15% の追加関税を課した。 10 月には第 1 - 第 3 弾の税率を現在の 25% から 30% に引き上げる方針だ。 これを受け、中国からの生産移管をめざす企業が増えている。 「世界の工場」である中国は、EMS でも世界最大の拠点だ。 ただ顧客企業は生産移管に伴い、EMS に発注していた部品などの生産についても、一部及び全量を東南アジアの日系 EMS などに切り替える動きが出ている。 追加関税の対象となる部品の自社生産を取りやめ、新たに EMS に発注する例もある。

日本の EMS は世界での規模はまだ小さい。 18 年で世界首位の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の売上高が 5 兆 2,938 億台湾ドル(約 17 兆 8,400 億円)であるのに対し、同 15 位で日本最大手のシークスの 18 年 12 月期の売上高は 2,428 億円にとどまる。 主要拠点が中国に多い海外勢に比べ、日本の EMS は日系の電機や自動車メーカーなどが多い東南アジアを中心に展開してきた歴史がある。 サプライチェーンや工場の管理ノウハウ、技術力などに強みがあり、足元で中国からの生産移管の受け皿となっている。

シークスもその 1 社だ。 中国にも工場を持つが、ここでの複合機や車載向け部品の EMS 事業の一部を、年内にもインドネシアやタイなどの工場に移す。 東南アジアに拠点を持つ強みを生かす。 機械部品大手のミネベアミツミは、電子部品の受託生産も手がける。 貝沼由久会長兼社長はカンボジア工場について「様々な引き合いが来ている」と語り、新規受注の拡大を見込む。 世界の EMS 市場は拡大基調が続く。 英調査会社のテックナビオによると、18 年に 4,756 億ドル(約 50 兆 3,600 億円)だった市場規模は 22 年に 17% 増の 5,560 億ドルに拡大する見通し。 このうち、米中摩擦の長期化観測や中国の人件費の上昇を受けて、東南アジアでの生産割合は今後も高まると想定される。

一方、台湾や中国の EMS も東南アジアへの生産移管を急いでいる。 強みとしていた中国語での人材管理を英語などに切り替えたり、サプライチェーンを新たに構築したりする必要があり、生産体制の確立には一定の時間がかかりそうだが、日本勢にはライバルとなる。 (佐藤雅哉、nikkei = 9-4-19)

EMS : 「エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス」の略。 電子機器やモジュール(複合部品)の生産を複数の企業から受託するサービスを指す。 1990 年代の米 IT (情報技術)大手の生産体制見直しに伴って発達してきた。 安価な人件費を活用するため中国に拠点を設ける企業が多い。 世界大手の鴻海(ホンハイ)精密工業や和碩聯合科技(ペガトロン)といった台湾勢が代表的で、中国勢も事業を拡大している。


東芝メモリ、台湾の電子部品大手から SSD 事業買収へ

東芝メモリホールディングスは 30 日、台湾電子部品大手ライトンから、記憶装置「SSD」の事業を買収すると発表した。 主力製品の NAND 型フラッシュメモリーを組み込んだ SSD は、データセンター建設による需要増加が見込まれている。 買収で既存事業を強化し、年度内を目標にしている上場後の成長に布石を打つ狙いがある。 SSD はデータセンターやパソコンに使われる。 ライトンは発光ダイオードや半導体部品を主力製品としており、SSD 事業の売却を決定。 2020 年前半までの買収完了をめざす。 金額は 1 億 6,500 万ドル(約 175 億円)という。

東芝メモリの主力製品である NAND 型フラッシュメモリーは最近、市況が悪化。 データセンターへの投資が一巡し、メモリーを搭載するスマートフォンの売れ行きも鈍っていることから、需要が低迷しているためだ。 東芝メモリの 19 年 4 - 6 月期の純損益は 952 億円の赤字になった。 一方、NAND 型フラッシュメモリーを組み込んだ SSD はメモリー単体で売るよりも採算がよく、東芝メモリも注力分野の一つに位置づけている。 SSD 事業は今後本格化する次世代通信規格 5G の普及などを受けてデータセンターなどで再び需要の伸びが期待されている。 ライトンの SSD には東芝メモリ製のメモリーが使われており、買収による相乗効果が高いと判断したとみられる。

調査会社 IHS マークイットによると、18 年の SSD の世界市場で東芝メモリのシェアは 9% で 3 位、ライトンは 2% でシェア 7 位。 一方、NAND 型フラッシュメモリーでシェア首位の韓国サムスン電子は SSD 市場でもトップのシェア (34%) を占める。

メモリー市場の低迷を受けて、東芝メモリは当初年内を予定していた上場時期を年度内に先送りする方針を固めている。 市況による業績変動の波が大きいメモリー事業だけでなく、採算性の高い SSD 事業を強化することで業績を安定させて、上場後の安定的な成長をめざす。 東芝メモリは昨年 6 月に東芝から独立し、米投資ファンドのベインキャピタルが率いる「日米韓連合」のもとで再出発した。 ベインの杉本勇次・日本代表は買収完了時の会見で、「グローバル競争を勝ち抜くための技術提携、M & A (企業合併・買収)を積極的に推進していきたい」と述べていた。(高橋諒子、笹井継夫、asahi = 8-30-19)

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東芝メモリの 4 - 6 月期、952 億円の赤字

半導体大手の東芝メモリホールディングスが 8 日発表した令和元年 4 - 6 月期連結決算は、最終損益が 952 億円の赤字となった。 売上高は 2,142 億円、本業のもうけを示す営業利益は 989 億円の赤字だった。 同社は今年に入って決算の公表を始めたため、前年同期との比較はできない。 1 - 3 月期は 193 億円の最終赤字で、赤字幅が大幅に拡大した格好だ。

中国経済の減速もあって半導体市況が悪化し、記憶用半導体「フラッシュメモリー」の価格がスマートフォン向け、データセンター向けともに下落。 6 月中旬に四日市工場(三重県四日市市)で発生した停電も営業損益ベースで 344 億円の悪化要因となった。 同社は価格について「下げ止まりの兆しも見られる」とする一方、停電の影響は「7 - 9 月期においても出る見込み」としている。 (sankeiBiz = 8-9-19)


「室温で超伝導」目前 零下 23 度で実現、かぎは超高圧

最先端科学

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三菱電機、インバーター用パワー半導体モジュール

三菱電機は 2019 年 8 月、白物家電や産業用モーターのインバーター駆動用として小型パワー半導体モジュール「DIPIPM Ver.7」を発表した。 2019 年 10 月 29 日より発売する。 新製品は、キャリア蓄積効果を利用した「CSTBT」構造の新型 IGBT を開発し搭載した。 これにより、従来の DIPIPM Ver.6 と同等の低電力損失を実現しながら、低ノイズを達成している。 これまで基板上に実装していたノイズ対策部品などを削減することができるため、インバーターの小型化や部材コストの節減が可能となる。

新製品は上限保証温度も高めた。 動作モジュール温度は最大 125℃、接合温度は最大 175℃ である。 この結果、インバーターシステムの放熱設計も自由度が増した。 IGBT チップの接合部とケース間の熱抵抗は、従来に比べて約 28% 低減するなど、IGBT チップの温度上昇も抑制している。 新製品は、IGBT チップの他、FWD チップ、HVIC チップ、LVIC チップ、制限抵抗付き BSD チップなどをワンパッケージに集積した。 また、短絡保護や制御電源電圧低下保護、過熱保護またはアナログ温度出力などの機能を内蔵している。

新製品の外形寸法は 24.0 x 38.0 x 3.5mmで、端子配置なども DIPIPM シリーズの従来製品と互換性を維持している。 新製品は定格電圧が 600V。 定格電流は 10A 品、15A 品、20A 品および、30A 品の 4 製品を用意した。 サンプル価格(税別)はそれぞれ、1,200 円、1,500 円、1,700 円、2,200 円である。 (馬本隆綱、EE Times = 8-28-19)


ソニー子会社、スパイダーマンのゲーム開発の米企業買収

ソニーのゲーム子会社、ソニー・インタラクティブエンタテインメント (SIE) は 20 日、人気のゲームソフト「スパイダーマン」を手がけた米ゲーム開発会社インソムニアック・ゲームズを買収すると発表した。 買収額や時期は非公表。 開発技術を内部に取り込むことで、米グーグルなど IT 大手が参入するゲーム市場での競争力を高めたい考えだ。 インソムニアック社は 1994 年の設立。 カリフォルニア州に本拠を置き、従業員は約 260 人。 10 作以上続く「ラチェット & クランク」シリーズをはじめ、ソニーのプレイステーション (PS) 用ソフトを約 20 年にわたって開発し、昨年 9 月発売の PS4 専用ソフト「スパイダーマン」は累計販売 1,320 万本の「大ヒット(SIE 広報)」となった。

今回の買収でソニーは 14 の開発会社やチームを抱えることになった。 開発の内製化を進める背景にはゲーム市場の競争激化がありそうだ。 グーグルは今年 3 月にクラウドゲームへの参入を発表。 データセンターとデータをやりとりし、スマートフォンでもゲーム専用機と同じように楽しめる内容を示した。 これに対抗するためソニーは 5 月、PS のライバル機「Xbox (エックスボックス)」を擁する米マイクロソフト (MS) と、クラウドゲームでの協業検討を発表。 ソニーは専用機中心のゲーム市場に縛られない戦略にかじを切っており、今回の開発会社の買収もその一環とみられる。 外部の技術や人材を取り込むことで、「ソニーでしか遊べないゲーム(SIE 広報)」を増やす方針という。

証券アナリストの一人は「ソニーでは自社開発ソフトの割合が 25 - 30% とみられ、低いことが課題だ。 魅力あるコンテンツを多く持ち、今後のゲーム市場に立ち向かおうとする姿勢がうかがえる」と分析する。 (小出大貴、asahi = 8-20-19)


曙ブレーキ、増資の条件見直し = 株主責任を明確化

経営再建中の自動車部品大手、曙ブレーキ工業は 16 日、事業再生ファンド向けに実施する第三者割当増資の条件を見直したと発表した。 従来の案よりも株式の希薄化が進む内容となる。 株主責任を明確化することで、取引金融機関の支援を得やすくする狙いがある。

曙ブレーキは第三者割当増資で、200 億円の種類株式を発行。 同種類株式には普通株式を対価とする取得請求権が付与されている。 今回の見直しでは、権利行使時に交付する普通株式数が増える方向で算定条件を変更した。 曙ブレーキは取引金融機関に対し、総額 560 億円の債権放棄を含む金融支援を要請しているが、同意を取り付けることができるかどうかは不透明になっている。 (jiji = 8-16-19)

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事業再生 ADR 申請の曙ブレーキ、国内再生ファンドから 200 億円調達へ

事業再生 ADR を申請した曙ブレーキ工業は 7 月 18 日、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズが組成するファンドを引受先とする第三者割当増資により、総額 200 億円を資金調達を行うと発表した。 曙ブレーキは今年 1 月、北米事業不振などの影響による経営悪化を受け、事業再生 ADR 手続を申請、金融機関の支援を求めると発表。 以来、40 社を超える複数の事業会社や金融投資家に対してスポンサー候補としての出資検討を依頼してきた。

ジャパン・インダストリアル・ソリューションズは、日本政策投資銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱 UFJ 銀行が設立した投資会社。 シャープや化学工業メーカーのトクヤマに出資を行ったことでも知られる。 調達資金 200 億円は、構造改革資金約 150 億円(国内 : 約 53 億円、米国 : 約 69 億円、欧州 : 約 25 億円)のほか、設備投資資金として(約 50 億円)を充てる予定だ。 (Response = 7-22-19)


GDP プラス成長も広がる不安 製造業で相次ぐ業績悪化

内閣府が 9 日発表した 2019 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) 1 次速報は、内需が全体的に好調だったものの、外需は米中貿易摩擦などの影響で振るわなかった。 半導体や自動車部品など輸出メーカーを中心に業績の悪化がみられ、先行きを懸念する声も強まっている。 東芝は、半導体事業が中国市場の低迷で苦戦。 自動車や家電に使うシステム LSI (大規模集積回路)などの需要が落ち、4 - 6 月期の同事業の売上高は前年同期比 16% 減だった。 平田政善専務は決算会見で、「(中国市況は)楽観を許さない。 景況感によって先行投資を少し抑えるなど、費用の効率化を考える。」と説明した。

京セラも中国経済の減速や世界的なメモリー需要減の影響で、スマートフォンや半導体製造装置に使う部品の販売が振るわない。 4 - 6 月期は大幅減益になった。 谷本秀夫社長は「スマホ部品は去年のような力強さがない。 半導体もまだ回復しないだろう。」と指摘。 スマホ部品をつくる NISSHA (ニッシャ)は 19 年 12 月期の通年見通しを下方修正し、純利益は 60 億円の予想をゼロに。 主力のタッチパネルの需要が想定を超えて落ち込んだためだ。

ヤマハ発動機は 19 年 12 月期の見通しについて、売上高を従来予想より 300 億円少ない 1 兆 6,700 億円、純利益を 50 億円少ない 800 億円に引き下げた。 中国の工場で発電機やゴルフカーの部品をつくって米国に輸出するが、それらは米国が課した 10% の追加関税の対象となっている。 日高祥博社長は決算会見で、「不安なのは(追加関税が)さらに 25% に上がる可能性があることだ」と述べた。

自動車部品への影響も顕著になっている。 アイシン精機は中国での新車販売台数の落ち込みを受け、自動変速機の販売が苦戦。 4 - 6 月期は中国の売上高が前年同期より 309 億円減った。 現地企業だけでなく、欧州系メーカーの低迷も響いているという。 全体の売上高も 4.5% 減の 9,630 億円、営業利益は 60.6% 減の 255 億円だった。 工作機械業界では、大手のオークマの 4 - 6 月の受注額が前年同期と比べて 4 割減った。 「米中貿易戦争が、グローバルの投資マインドに影響を与えている。 なかなか受注に至らない様子見状態だ。(堀江親専務)」

ブラザー工業も工作機械の販売が低迷している。 「中国国内の設備投資が減速しただけでなく、中国向けの輸出企業に対しても落ち込んだ(広報)」という。 工業用ミシンも中国やアジアで投資を控える動きが広がり、両事業を含む部門の 4 - 6 月の営業利益は前年同期より 9 割減の 5 億円にとどまった。 産業機械大手の安川電機の 3 - 5 月期決算も、設備投資への世界的な様子見の姿勢が影を落とし、売上高が前年同期比 16.2% 減の 1,074 億円、営業利益が同 58.2% 減の 71 億円だった。 四半期として売上高、利益ともに過去最高だった前年同期から一転、大幅な減収減益となった。

化学製品を扱う東レの深沢徹専務取締役も、4 - 6 月期決算会見で「中国で生産し欧米へ輸出している衣料品に影響が出た」と話した。 9 月以降の米国による追加関税についても「決してプラス材料ではない」と不安視する。 住友化学の佐々木啓吾執行役員は 4 - 6 月期の決算会見で、米中摩擦に関して「地政学リスクの顕在化などの不確定要素に加え、為替も円高圧力が強まる懸念がある」とし、「石油化学製品の需要減について、これまで以上に注視する必要がある」と述べた。

一方、工作機械最大手の DMG 森精機の森雅彦社長は 6 月中間決算の会見で、「受注延期は出ているがキャンセルはほとんどないのがリーマン・ショックとの違いだ」と強調。 受注は前年同期より 2 割落ちているが、「工作機械は買わなければ動かなくなる」とし、低迷の状態は長く続かないとの見方を示した。 (asahi = 8-9-19)

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上場企業、3 年ぶりに減益へ 米中貿易摩擦が日本にも影

東京証券取引所の上場企業の 2019 年 3 月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が 3 年ぶりに減益へ転じる見通しだ。 米中の貿易摩擦から中国の景気が減速し、自動車や素材などの製造業を中心に売上高、利益ともに伸び悩んだ。 両大国の衝突が、日本企業の業績にも影を落としている。 13 日までに決算発表した東証 1 部の 962 社(全体の 71.5%、除く金融)の数値を、SMBC 日興証券が集計した。 残る 28.5% の未集計分は公表済みの業績見通しなどで推計した。

売上高は前年比 2.3% 増の 515 兆円、本業のもうけを示す営業利益は同 0.4% 増の 38 兆円となる見込み。 純利益は同 3.6% 減の 29 兆円と、3 年ぶりに前年を割り込みそうだ。 中国の景気減速で、売上高、営業利益ともに前年からの伸び率が大きく鈍化。 在庫や設備の整理など構造改革で特別損失を計上した企業が増え、純利益の落ち込みにつながったようだ。

SMBC 日興の集計によると、決算発表済み企業の 20 年 3 月期の業績予想を集計したところ、売上高が前年比 1.0% 増、営業利益が同 1.9% 増、純利益が同 8.3% 増だった。 ただ、足元で米中の対立が一層激しくなり、経営者は先行きに慎重になっている。 日立製作所の東原敏昭社長は「世界経済がスローダウンすることを非常に心配している」と話す。 米中対立の日本への影響とともに、10 月には消費増税が予定され、景気の先行きに不安が高まっている。 SMBC 日興の伊藤桂一氏は「消費が冷え込めば、19 年 3 月期に堅調だった非製造業が 20 年 3 月期に落ち込むことも懸念される」と話す。 (高橋克典、asahi = 5-15-19)


日立、ひたちなか市に半導体製造装置の新工場を建設、生産体制を強化

日立ハイテクノロジーズは 2019 年 7 月 24 日、茨城県ひたちなか市新光町に工場用地を取得し、新工場を建設すると発表した。 新工場建設により、半導体製造装置事業や解析装置事業における開発・生産能力の強化を目指す。

新工場は地上 6 階建て、敷地面積約 12 万 5,000m2、延床面積約 5 万m2。 総投資額は約 300 億円となる。 主要生産拠点である那珂地区近郊の常陸那珂工業団地内にて 2019 年 11 月に着工し、2021 年 2 月の完成を予定している。 同社は新工場の完成により、今後も需要の増加が見込まれる半導体市場に対応するための生産能力を確保する。 また、製造工程のさらなる自動化を進め、IoT (モノのインターネット)や AI (人工知能)を活用した先進的なスマートファクトリーを目指し、先端製品を製造するとしている。 (MONOist = 8-7-19)


737MAX の不具合、「ボーイングからの値下げ要求はない(三菱重工)」

三菱重工業の小口正範副社長は米ボーイングの新型旅客機「737MAX」の不具合に対し、「当社は『787』、『777X』が主力で、787 の月産 14 機の工事量は予定通りで値下げ要求もない(同)」と語った。 5 日の決算会見で明らかにした。 ボーイングが先月発表した 2019 年 4 - 6 期決算は、最終損益が 29 億 4,200 万ドル(約 3,100 億円)の赤字だった。 新型機「737MAX」の墜落事故による出荷停止などで売上高が 35% 減少、フライトの欠便に対する航空会社への補償費用も響いた。

日本メーカーは中大型機「787」の機体製造の約 35% を、次期大型機「777X」の 21% をそれぞれ担っている。 一方、737MAX での比率は低い。 ボーイングが正確な数値を算出していないほどで、「おそらく数 % (ボーイングジャパン)」とみられる。

一方、三菱重工の 19 年 4 - 6 月期連結決算は、売上高が前年同期比 1.5% 増の 9,193 億円、事業利益が同 22.8% 増の 404 億円となった。 売り上げはガスタービンの増加や民間航空機部門の好調が寄与。 利益は「三菱スペースジェット」を含む航空・防衛・宇宙セグメントが改善した。 小口副社長は「総じて想定の範囲内で、順調に推移している」という。 20 年 3 月期連結業績見通しは 5 月の期初公表値を据え置いた。 (NewSwitch = 8-6-19)


ロケット「地上と通信断絶」判断、エンジン停止

北海道大樹(たいき)町の宇宙新興企業インターステラテクノロジズは 27 日午後 4 時 20 分、同町の実験場から小型ロケット「MOMO 4 号機(全長 10 メートル)」を打ち上げたが、高度 13 キロでエンジンが緊急停止し、目標の 100 キロ以上の宇宙空間には届かなかった。 機体は沖合 9 キロの太平洋に着水したという。

記者会見を開いた稲川貴大社長 (32) によると、打ち上げから約 64 秒後に機体のコンピューターが地上の司令所との通信が途絶えたと判断し、安全性を確保するため緊急停止したという。 稲川社長は「データを解析し、原因を究明したい」と述べた。 同社は今年 5 月、3 号機を宇宙空間まで飛ばし、民間単独で開発したロケットとしては国内で初めて宇宙到達に成功させた。 今回は機体先端部に収容した紙飛行機 3 個を宇宙で放出する予定だった。 (yomiuri= 7-27-19)

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今後 5 年で 2,800 機 民間ロケット、世界で競争激化

いちからわかる! 民間ロケット

Q : 民間ロケットの打ち上げが成功したね。
A : 元ライブドア社長で実業家の堀江貴文さんが出資する宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズが開発した小型ロケット「MOMO (モモ)」 3 号機だね。 北海道大樹町から 4 日に打ち上げられ、高度 113.4 キロの宇宙空間に届いたよ。

Q : 高度 100 キロを超えるのは、初めてなの?
A : 国内では、東京大生産技術研究所のロケットが 1960 年に達成したけど、ノウハウが乏しい民間企業が単独で開発したロケットとしては初めて。 過去 2 回は、打ち上げ直後にエンジンが止まって落下するなど失敗だった。 3 度目の挑戦で「百(もも)」という名前の由来通り、高度 100 キロに届いたんだ。

Q : 次はどうするの?
A : 高度 500 キロに人工衛星を投入できるロケット「ZERO (ゼロ)」の開発を進める。 打ち上げは、早ければ 2022 年末。 打ち上げ費用は 6 億円以下で衛星を宇宙に運べるようになる。

期待高まる「小型」ロケット

Q : 今は費用が高いの?
A : 重さ数十キロの衛星は、ほかの衛星と一緒に大型ロケットで打ち上げることが多く、数十億円以上かかることが多い。 相乗りなので打ち上げ日時も決めにくく、適した高度に衛星を投入しにくかった。 そのため「宅配便」のように安価で小回りのきく小型ロケットが注目されているんだ。

Q : ほかも続くのかな?
A : 衛星がたくさんあれば、災害時などの観測や通信サービスに生かせる。 機体も安くなり、小型衛星(50 キロ以下)の打ち上げは、昨年は世界で計 253 機と 7 年前の 10 倍以上に増えた。 今後 5 年間で最大 2,800 機の打ち上げが予想されている。 小型ロケットを開発する企業は世界に 100 社ほどあり、競争が激しい。 国内では、キヤノン電子などが出資するスペースワン(東京)も取り組んでいるよ。 (石倉徹也、asahi = 5-21-19)

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ホリエモンロケット、打ち上げ成功 民間単独で国内初

元ライブドア社長で実業家の堀江貴文さんが出資する宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ (IST) の小型ロケット「MOMO (モモ)」 3 号機が 4 日午前 5 時 45 分、北海道大樹町から打ち上げられた。 ロケットは数分後、民間単独のロケットとして国内で初めて高度 100 キロの宇宙空間に到達。 打ち上げは成功した。 機体は太平洋上に着水した。 堀江さんはツイッターに「宇宙は遠かったけど、なんとか到達しました。 高度約 113km」と投稿した。

MOMO 3 号機は全長 9.9 メートル、直径 50 センチ、重さ 1,150 キロの液体燃料ロケット。市販の部品を使うなど低コストで開発した。 今回の打ち上げ費用は数千万円。 当初 4 月 30 日に打ち上げる予定だったが、燃料の液体酸素漏れが直前に分かった。 部品の交換や発射場近くの強風のため、3 度延期していた。 IST は、前身企業が始めた宇宙事業を継承して 2013 年に設立。 MOMO で高度 100 キロ超の宇宙空間への到達を経て、高度 500 キロに重さ 100 キロ程度の小型衛星を打ち上げる新型ロケット「ZERO (ゼロ)」の開発をめざしている。

MOMO 1 号機は 17 年 7 月、打ち上げ約 1 分後に通信が途絶え、高度 20 キロから海上に落下。 2 号機は 18 年 6 月、打ち上げ直後にエンジンが停止し、機体が落下して爆発した。 2 号機の失敗を受け、IST は外部の専門家を含む対策委員会を設立。 姿勢を制御する小型エンジンの誤作動が原因と特定し、エンジン内部の設計を見直し、打ち上げに近い状態での燃焼試験を初めて実施するなど対策を重ねていた。

IST が狙うのは、需要が高まってきた小型衛星の打ち上げ事業への参入だ。 部品の高性能化により、衛星の小型化が進み、年間数百機が打ち上がる一方で、打ち上げは大型ロケットに頼っている。 ただ、コストは最低数十億円と高く、他の衛星との相乗りで待ち時間が長いなどの不都合が多く、世界中で安価で小回りのきく小型ロケットの開発が進んでいる。 IST は、今回の成功を機に、ZERO の開発を加速させたい考えだ。 商業化すれば、1 回のコストは 6 億円以下、年数十回の打ち上げ需要を見込んでいる。 早ければ 22 年末に打ち上げる予定。 (石倉徹也、asahi = 5-4-19)

前 報 (6-30-18)