桜島が爆発的噴火、煙 4,200m 昨年 11 月以来、被害なし

9 日午前 5 時 31 分ごろ、鹿児島市の桜島・南岳山頂火口で爆発的噴火があり、噴煙の高さが火口から 4,200 メートルに達した。 鹿児島地方気象台によると、桜島で 4 千メートル以上の噴煙が上がったのは昨年 11 月 8 日以来。 鹿児島県によると、被害は確認されていない。 気象台によると、大きな噴石が 7 合目まで飛散。 噴煙は北へ流れ、同県霧島市などで降灰があった。 降灰の影響で、鹿児島空港(霧島市)を発着する 6 便が欠航した。 気象台は「今後も引き続き噴火や小規模な火砕流の発生の恐れがある」として、警戒を呼び掛けている。 (kyodo = 5-9-20)

前 報 (11-8-19)


コロナ直撃 輸出激減で北海道産ホタテが大ピンチ

北海道の輸出食品の主力だったホタテが、新型コロナウイルスの影響で大幅に値を下げている。 高級食材として人気を博していた中国などへの輸出が一気に落ち込んだためだ。 主軸だった秋サケやサンマの不漁が続く中、ホタテは北海道漁業を牽引する新たな存在になりつつあっただけに、影響も大きい。

ラムサール条約の登録湿地でもある北海道東部の野付湾の尾岱沼(おだいとう)漁港(北海道別海町)には毎朝、ホタテが山積みになったかごを載せた漁船が続々と戻ってくる。 ただ、漁師の表情はいまひとつさえない。 第 38 三好丸の高根正樹船長 (45) は「値段はだめだよ。 中国に行くべきホタテが行っていないから」と漁の現状を語った。 今年の漁を始めた 2 月初めに 1 キロ当たり 400 円を超えていた浜値が、新型コロナウイルスの感染拡大とともに下がり、4 月上旬には 250 円ほどに。 「量が 10 トン、何十トンともなると、値段の差が大きく響いてくる。 漁期は 5 月 20 日までだけど、早く終えるかもしれない。」という。

漁期の違いで野付産直撃

流氷が運ぶプランクトンなど豊富な栄養素で育つ野付湾のホタテは、大ぶりなうえ食感が良いことで知られる。 こうした道内産のホタテは、中国をはじめ香港、台湾、韓国、さらには米国などで高級食材として人気が高い。 ホタテは生きたまま殻付きで輸出されるか、貝柱を冷凍にして輸出先で解凍される。 道内のホタテの生産は 2018 年に 38 万 5 千トンだった。 そのうち函館税関の集計だけで 6 万 7,652 トンを輸出に回し、344 億円を稼ぎ出した。 これは道の食料品輸出総額 774 億円の約 44% に当たる。 輸出先は中国が圧倒的に多く、260 億円と約 75% を占めている。 ほかに横浜港など、日本の別の場所から輸出される道内産のホタテもある。

ただ、道内のホタテの主要産地であるオホーツク海沿岸は、6 月から 11 月までを本操業の時期としており、まだ新型コロナの影響は受けていない。 一方、12 月から 5 月までが漁期で毎年 2 万トン近くを生産する野付湾地区は、新型コロナの激震をもろに受ける形となった。 野付漁協の内藤智明常務 (61) によると、尾岱沼漁港に揚がるホタテはまず国内の年末商戦で売られ、次いで中国の旧正月で需要が活発化する。 「中国をはじめ、輸出先の海鮮レストランなどでのホタテの需要に引っ張られ、浜での取引も高値が形成されてきた。 ホタテはグローバル商品と化していた。」と話す。

しかし今年は、中国・武漢市で始まった新型コロナの感染拡大が中国全土の外食産業を営業停止に追いやり、この流れが完全にストップした。 農林水産省のまとめでは、2 月のホタテの輸出額は前年同月より 35.5% も減った。 新型コロナによる世界経済の落ち込みは、グローバル商品としてのホタテを直撃した。 新型コロナの感染拡大で、国内市場も冷え込んでいる。 野付漁協では、4 月上旬の時点で東京・豊洲の市場などとやりとりしながら取引できるホタテの量は全体の 3 分の 1 ほどになり、残りは冷凍して保存せざるをえなくなった。 その後も緊急事態宣言の対象地域の拡大などで、国内市場をめぐる状況は厳しさを増す一方だ。

「野付湾での漁は 5 月で終わる。 後はホタテを冷凍倉庫に入れながら、12 月の漁再開までに感染症が収まり、経済がもとの姿に戻ってくれるのを待つしかない。」と内藤常務は語る。 6 月以降も感染症の影響が続き、中国などへの輸出も十分に再開されない場合には、本操業が始まるオホーツク海沿岸などの主要産地も困難な状況に直面しそうだ。

サケ、サンマの苦境でホタテへ

道東の根室地方には、新たなホタテ産地も広まっている。 伝統的な漁の苦境が理由だ。 2016 年からロシア 200 カイリでのサケ・マス流し網漁が禁止され、代替措置としての公海でのサンマ漁も低迷が続く。 8 月から 12 月のサンマの本操業も、昨年の水揚げ量は記録的な不漁に見舞われた。 道内の秋サケも昨年は約 4 万 5 千トンで、平成に入ってから初めて 5 万トン割れの事態となった。

こうした情勢下で、昨年の道内の漁業生産金額はホタテが 729 億円と、サケの 293 億円やサンマの 79 億円などを大きくしのぎ、一人勝ちの様相を見せていた。 根室湾沖ではホタテの漁場をつくり、1991 年から漁が始まった。 また、ロシア 200 カイリでのサケ・マス流し網漁禁止対策で、2016 年にホタテの新漁場の造成も始め、昨年 11 月には初水揚げも行われた。

しかし、ホタテ漁はヒトデの食害対策などで定期的に漁場を整備する必要がある。 また根室市の新漁場では、ほかの産地から買った稚貝 8,330 万粒を毎年放流するなど、その維持と管理には巨額の費用がかかる。 ホタテが高値で取引されているうちは良いが、こうした経費が生産額を上回って赤字が大きくなれば、漁の継続は危うい。 新型コロナの影響による価格の低下は、今後の大きな不安要因だ。

輸出がだめなら国内消費で下支えを図りたいところだが、これも難しい。 輸出は生のままや、冷凍で行うのが主流で、あまり複雑な加工を必要としない。 コストもかからず、高く買ってくれる。 一方で、国内向けは鍋用にボイルするなど、売るのに一定の手間とコストがかかる。 このため、道内で生産、加工されるホタテは輸出向けへとシフトし、国内市場への流通は重視されない傾向があった。 新型コロナの影響で海外需要が急激に落ちこんだが、こうした経緯から国内市場での消費で下支えする仕組みが十分に機能せず、事態はさらに深刻になっている。

それでも今回の出来事は、ホタテと国内消費者とのこれからの関係を、大きく変えるかもしれない。 道の漁業事情にくわしい専門家によると、ボイルしたものや、サラダなどで食べやすい小さなホタテを家庭料理の材料として消費者に買ってもらう試みは、輸出が全盛の間も青森県の陸奥湾など一部の生産者や加工業者の間で続いていた。 今の厳しい状況のもとで、そうした取り組みに光が当たりつつある。

国内消費者に向き合うチャンス

消費者の好みに合わせて工夫し、適正な値段で提供することで、国内市場を取り戻す動きへとつながる可能性があるという。 「輸出一辺倒は、リスクも大きい。 輸出はむしろ安全弁ととらえ、国内市場をきちんと確保する機会とするべきだ。 でないとホタテの安定した生産はおぼつかない。」と、専門家は強調する。 (大野正美、asahi = 5-2-20)


発がん性含む疑いの消火剤、普天間周辺の住宅街に飛散

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)周辺の住宅街で 11 日、発がん性が疑われる有機フッ素化合物 PFOS を含む泡消火剤が飛散しているのが確認された。 10 日夕に米軍から地元自治体に基地外に流出したと通報があったが、一夜明けても完全に除去できず、住民に不安が広がった。 宜野湾市消防本部によると、11 日午前 7 時 50 分ごろ、「川から泡が出ている」と住民から通報があった。 現場では道路上などを舞う泡のかたまりが確認され、6 時間以上かけてバケツですくうなどして除去したという。

ただ、河川の泡は完全に取りのぞけず、周辺に飛散しないよう巡回を続けている。 上流は基地内にあり、米軍関係者が除去作業にあたっているという。 夕方になって河川を見に来た近くの 40 代女性は「きょうはお天気だったけど、こわくて洗濯物を干すのはやめた。 まだ泡が残っているのを見てますます不安になった。 自然にもどんな影響があるのか。」と話した。

沖縄県内では近年、米軍基地周辺で PFOS などが高濃度で検出され、県は基地内への立ち入り調査を求めているが実現していない。 県は 10 日、沖縄防衛局に対し、基地外の消火剤回収に加え、基地内にとどまっている消火剤も地下に浸透する可能性があるとして速やかな回収を要請した。 11 日には玉城デニー知事が「大変遺憾」との談話を出した。 基地内への立ち入り調査も引き続き求めていく。 (asahi = 4-11-20)


「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」北海道・小樽のいま

新型コロナウイルスの影響が長期化し、観光業界が苦境に立たされている。 政府は 7 日に緊急事態宣言を出し、新たな経済対策をまとめたが、事態の収束は見通せない。 国内有数の観光地、北海道小樽市では「もう限界に近い」との声が上がる。

観光バス 99.5% 減の衝撃

今月初旬、小樽市が集計した数値が地元関係者に衝撃を与えた。 2 月まで多くの人が行き交っていた小樽運河近くの観光バス駐車場の利用が、3 月は 6 台にとどまった。 前年同月(1,343 台)と比べると 99.5% 減。 「観光客が消えた」と市の担当者は表現する。 緊急事態宣言の対象は東京や大阪、福岡など 7 都府県で、北海道は含まれなかったが、観光需要の回復は当面見込めない。 約 100 店舗が軒を連ねる小樽堺町通り商店街では、厳しい現状を訴える声があふれる。

「コロナで死ぬか、経済で死ぬか。」 昆布専門店「利尻屋みのや」の社長、簑谷和臣さん (50) はそう話す。 3 月の売り上げは前年の 24%。 例年、観光客が増える夏に向けて売り上げが伸びるため、このままでは 4 月の売り上げは前年の 10%、5 月は 5% になる恐れがあるという。 31 人の従業員の雇用は最後まで維持する考えだが、「あと何カ月、給料を払えるだろうか」と苦しい胸の内を明かす。 政府の経済対策、とりわけ即効性がある現金給付に期待を寄せるが、事態が長期化すれば焼け石に水になってしまう。 「収束が最大の経済対策だ」と簑谷さんは話す。

海鮮丼専門店、アルバイトは全員休み

海鮮丼の専門店「どんぶり茶屋」では、3 月の売り上げが前年の 2 - 3 割という。 十数人のアルバイトは全員休んでもらい、他に仕事が見つかればそちらを優先してほしいと伝えたという。 運営会社の外食部門の責任者、大野大輔さん (43) は「先が見えないのが一番不安。 打つ手がない。 今は耐えるしかない。」と話す。 アクセサリー店「3Ring (サンリング)」では、3 月の売り上げが半減した。 運営会社の副社長、淡路祐介さん (39) は「他のお店と比べれば、うちはまだマシかもしれない。」 それでも、運転資金を確保するために数百万円の融資を受ける検討をしている。

当初は 5 月までの収束を期待していたが、緊急事態宣言であきらめざるを得ない状況だ。 「このままでは、また融資、また融資となりかねない。 夏までに収束しないと、商店街でも事業を縮小するお店が増えてくるかもしれない」と淡路さんは言う。 (長崎潤一郎、asahi = 4-9-20)


福岡で黄砂を観測 全国で今年初

福岡市で 4 日から 5 日にかけて、黄砂が観測された。 福岡管区気象台によると、国内への飛来は今年初めて。 市内の視程(水平方向に見渡せる距離)は 10 キロ以上あり、上空がうっすらとかすむ程度だった。 (西日本新聞 = 4-5-20)


移転した長崎駅、オープン 旧駅の最終列車にファン集う

JR 長崎駅が 28 日、周辺の渋滞緩和などのために高架化され、新駅としてオープンした。 高架化にともなって旧駅から約 150 メートル西側に移転した。 新駅の隣では、2022 年度に暫定開業予定の九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)の駅舎の工事が進み、周辺では大規模な開発も予定されている。

高架化したのは JR 長崎線の長崎 - 浦上を含む約 2.5 キロ。4 カ所あった踏切を撤去し、周辺道路の渋滞を緩和するのが目的だ。 総事業費は約 529 億円。 地上にあった旧駅は長崎線の終着駅として、JR 九州管内では門司港駅(北九州市)などと並び、旅情を誘う駅舎として人気のスポットだった。 27 日深夜には 100 人以上の鉄道ファンらが旧駅で最後の列車を見送り、名残を惜しんだ。 (米田悠一郎、asahi = 3-28-20)


16 府県「東京行き避けて」 首都圏、28 日から外出自粛

新型コロナウイルス感染拡大を受け、首都圏 5 都県が打ち出した外出自粛などの異例の要請は全国に波及し、27 日には福島、茨城、富山、愛知、大阪、兵庫、鳥取、島根の 8 府県が東京方面などへの移動を避けるよう呼び掛けた。 これで移動自粛を求めたのは 16 府県。 強制力はなく、若者への浸透が課題だ。 都の外出自粛要請は 28 日からの 2 日間だが、首都圏でのオーバーシュート(爆発的患者急増)を防げるかどうかは予断を許さない。

共同通信の集計では、不要不急の外出自粛を求めたのは東京、埼玉、神奈川、大阪の 4 都府県。 東京方面などへの移動自粛は宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、新潟、富山、山梨、長野、静岡、愛知、大阪、兵庫、鳥取、島根の 16 府県が呼び掛けた。 都内では感染者が増加し、感染経路が不明の患者も急激に増えている。 都は 27 日にも 40 人の感染が判明したと発表。 40 人以上の感染確認は 3 日連続となり、都内の感染者は計 299 人となった。

都の要請は企業活動にも影響を及ぼしている。 高島屋が 28、29 日に日本橋高島屋など三店舗を臨時休業。 三越伊勢丹ホールディングスは、東京や埼玉の 6 店舗で営業時間を短縮する。 シネコン大手の TOHO シネマズは今週末、東京などの 17 劇場で営業を休止する。 交通機関は JR や私鉄、地下鉄とも通常運行する。 東京、埼玉、千葉、神奈川、山梨の 5 都県知事は 26 日に「ロックダウン(都市封鎖)などの最悪の事態を回避するため、断固たる決意を持って対策を進める」との共同メッセージをまとめた。 特に若年層は感染発見が難しいとして、慎重な行動を求めている。

都、週明け以降も自粛

東京都の小池百合子知事は 27 日の定例会見で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため今週末の 29 日までとしていた外出自粛や在宅勤務の要請を、週明けの 30 日以降も続ける考えを明らかにした。 都によると、当面は 4 月 12 日ごろまでをめどに、週末や夜間の外出自粛などを呼び掛ける。 都内の感染確認は 3 日連続で 40 人以上となり、小池知事は「感染の暴発、爆発を抑止できるぎりぎりの局面だと思う」と述べ、不要不急の外出自粛などに改めて協力を求めた。 会見では、不要不急の例の一つとして「花見」を挙げた一方、食品など生活必需品の購入や通院は当たらないとした。 (中日新聞 = 3-28-20)


首里城正殿再建「光が見えた」 政府工程、6 年後を目標

正殿などが全焼した首里城(那覇市)の再建に向けた関係閣僚会議が 27 日、首相官邸であり、正殿を 2026 年までに再建することを目指す工程をまとめた。 沖縄の人たちは、再びその姿を見られる時期のめどが立ち、喜んだ。 政府の工程表では、20 年度早期に設計に入り、22 年中に本体工事を始める。 早期発見と初期消火ができなかった反省から、正殿には自動火災報知設備やスプリンクラーを設置する。 必要な木材については、国産ヒノキを中心にし、沖縄の在来樹種も可能な限り活用することを盛り込んだ。

菅義偉官房長官は会議で「ゴールデンウィークまでに正殿の地下遺構の見学を可能とすることを始め、復元過程の公開や観光振興など地元のニーズに対応した施策を推進していただくようお願いする」と述べた。

「思ったより早い」沖縄で期待膨らむ

沖縄では、期待が膨らむ。 地元の首里地区で地域の行事などを主催する首里振興会事務局長の嘉陽田詮(かようださとし)さん (69) は「思ったより早くて良かった。 光が見えた。」と喜んだ。 2 月上旬、公民館で火災前の首里城の写真を展示した。 見に来た高齢の女性が涙ながらに言った。 「私が生きている間に(再建)できるかな。」 その時はいつ再建されるかわからず、返す言葉がなかった。 女性のように再建を待ちわびている人は多く、嘉陽田さんは「高齢の人も、いつできるかわかるだけでもがんばれる。 (地元の人たちも)喜ぶと思う。」と話す。

県内の観光業者は、火災直後、修学旅行の回り先を首里城から別の城などに変更するといった対応に追われた。 県内のバス会社によると、火災によって観光客が大きく減ることはなかったが、新型コロナウイルスでは、2 月途中から修学旅行やツアーがすべてキャンセルになるなど大きな影響を受けている。 その渦中に正殿の再建目標年次が示され、担当者は「久しぶりに明るいニュース。」 新しくできた正殿を見に来る観光客が増えることを期待する。 玉城デニー知事は 27 日、「首里城復元に向け大きな前進と考えており、一日も早い復元を望む多くの皆様にとって励みになる」とのコメントを出した。 (asahi = 3-27-20)


全国 600 農協の 4 分の 1 が赤字転落、農業の主役は「企業」へと交代する

『週刊ダイヤモンド』 3 月 21 日号の第一特集は「儲かる農業 2020 消える JA」です。 農協 (JA) の大淘汰が始まりました。 ダイヤモンド編集部が独自に試算したところ、全国にある 600 JA の「4 分の 1」に相当する 153 JA が赤字に沈む衝撃的な実態が明らかになりました。 マイナス金利政策の影響による金融事業の収益悪化のためです。 農協の本分である農家支援をおろそかにして金融事業に依存する農協には未来はありません。 一方、農業に商機を見いだしたトヨタ自動車や三菱商事などは有力農家を囲い込み始めています。 消える農協と攻める企業 - - 主役交代が進む農業激変の現場をレポートします。

金融ショックで凋落する JA 若さと IT で躍進する楽天

「入社希望者はたくさんいるから、リクルートには困らない。 けれど、入社した社員の住む場所が本社の周りに足りないんですよね …。」 松山空港からバスで約 1 時間揺られてようやくたどり着く愛媛県大洲市。 こののどかな街には、住宅の需給バランスを崩してしまうくらい、社員を激増させている農業法人がある。 楽天の 100% 子会社、楽天農業だ。 レタスや小松菜といったオーガニック野菜で作るカットサラダをヒットさせ、急成長を遂げた。

2019 年は首都圏のサラダの需要に応えるため、静岡県に 50 ヘクタール以上の土地を確保して、カットサラダ工場も建設する。 本拠地の愛媛県内では、撤退する食品メーカーの事業を事実上譲り受ける形で冷凍野菜事業にも本格進出した。 農場で働く社員は、誰も彼も若く活気に満ちている。 社員数は昨年から 50 人増えて約 110 人へと倍増している。 この 4 月にも新卒の新入社員が 14 人加わる予定だ。

中山間地の荒れ地を次々と開墾し、08 年にゼロだった経営面積は合計 65 ヘクタールまでに拡大。 もはや楽天は立派な「豪農」である。 楽天を筆頭に、農業に参入した企業は、資本力を生かした設備投資と M & A (企業の合併・買収)で、農業再生を主導している。 また、企業参入の目的は農場経営だけではない。 トヨタ自動車や三菱商事などの大資本は、JA グループの牙城である 9 兆円の農産物流通市場を奪いにきている。

全 600 JA 中、153 JA が赤字転落 衝撃試算を初公開

片や農協である。 ダイヤモンド編集部の試算により、全国に 600 ある農協のうち 153 JA が赤字に沈む衝撃的な実態があぶり出された。 赤字転落の理由は金融事業の大幅な減益だ。 農協は本業である農業関連事業の赤字を金融事業の黒字で補填して経営を成り立たせてきた。 だが、マイナス金利政策の影響で、1 JA 当たり最大 27 億円も金融事業が減益になることが想定される。

JA グループ内でも本編集部と同様の試算が行われており、減益額の大きさに戦慄した農協は、規模を追うだけの成長戦略なき合併に走っている。 凋落する農協と躍進する企業 - -。 明暗は分かれた。 いよいよ農業の主役交代が始まった。

担い手農家 1,600 人が選ぶ カリスマ農家、優良農協も

『週刊ダイヤモンド』 3 月 21 日号の第一特集は「儲かる農業 2020 消える JA」です。 今特集の目玉は、前述の独自試算に基づく「JA 赤字危険度ランキング」だけではありません。 ダイヤモンド編集部は今特集のために「担い手農家アンケート」を実施。 全国 1,600 人の農家から回答を得ました。 回答者は平均経営面積 36.6 ヘクタールの有力農家たちです。 この有力農家たちに、「支持する農協」や「理想とする農家」、「役立つ農業ツール」などを評価してもらい、作成したオンリーワンのランキングが大きな目玉の一つです。

「役立つ農業ツール」のランキングでは、農産物の生産から販売までを一気通貫で支援することで農業界のプラットフォーマーの座を狙う企業の多くがランクインしました。 こうした企業は、傘下の IT 企業や小売企業をフル活用することで、JA グループが牛耳ってきた農業の「主役交代」を実現しようとしています。 同ランキングは、アンケートに回答した有力農家たちに、主役交代の野望を抱く企業が浸透していることを浮き彫りにしました。

また、今特集でも定番となった「レジェンド(大規模)農家」ランキング、中小でも高収益を上げる「中小キラリ農家」ランキングを作成しました。 いずれも、担い手農家アンケートの回答者から、ダイヤモンド編集部が独自の基準で選定した超有力農家です。 特集では、農業ビジネスを展開する企業が提携のために殺到するレジェンド農家の凄みや、他産業から農業に参入して高収益モデルを確立した中小キラリ農家の儲ける秘訣もお届けします。

「JA 大淘汰」とともに「農家の大淘汰」の時代もやってきそうです。 今特集は、いよいよ始まった農業激変と、その後の「未来の農業」の姿をできるだけ克明に描き出しました。 (千本木啓文、ダイヤモンド = 3-16-20)


新幹線効果、石川との差が開く富山 知事は延伸に危機感

ベニズワイガニにウマヅラハギ、ニギスにイシモチ - -。 2 月上旬、富山湾産の魚介が東京駅地下の「グランルーフ」にある飲食店に届いた。 いずれも、その日の朝に新湊漁港(富山県射水市)で水揚げされたばかり。港から富山駅へトラックで、富山駅から北陸新幹線で東京駅へ運ばれた。 新幹線で富山 - 東京間は最速 2 時間 8 分。 富山の魚介を短時間で運び、新鮮なまま味わってもらうことで富山への誘客につなげようと、富山県とJRグループなどが試験的に行った。

グランルーフ内のシーフードバルのシェフ岩間隆さんは「富山湾の魚は締まった味がする。 お客さんにも好評。」と笑顔。 県観光振興室の寺井聡志さんは「新鮮な魚介類で富山を PR したい」と力を込めた。 成果を検証し、再び行うかどうかを決めるという。

「新幹線開業で富山の認知度は確実に向上した」と県総合交通政策室の担当者は自信をのぞかせる。 ただ、隣の石川県との差は大きい。 観光庁の宿泊旅行統計調査で新幹線開業前の 14 年と 18 年の富山、石川両県の延べ宿泊者数を比べると、両県とも数は増えたが、伸び率は富山県の 8% 増(349 万人 → 378 万人)に対し、石川県は 21% 増(754 万人 → 913 万人)。 延べ宿泊者数のうち訪日外国人客は、富山県は 14 万人から 31 万人に、石川県は 35 万人から 97 万人と伸びに開きがある。 また、富山、石川両県が推計した 18 年の観光消費額は、富山県 1,494 億円、石川県 3,227 億円で、石川県が圧倒している。

知事「通過駅になる」

23 年春には福井県敦賀市まで新幹線は延びる。 延伸は、富山にどのような効果をもたらすのか。 2 月 13 日、敦賀延伸に向けた県の戦略をつくるための検討委員会の会合が富山市内であった。 県が示した戦略案には、国内外からの誘客増に向け、立山黒部地域の世界ブランド化などに向けた取り組みが書かれていた。 この案について「95 点だがワクワク感がない」と委員の 1 人。 「ライバルは金沢でなく、ロンドンや(スペインの)サンセバスチャン。120 点を目指していかないと富山が印象に残らないし、選ばれ続けるどころか選ばれもしない。」 延伸で新駅ができることで「今まで富山に来ていた人が来なくなる」と指摘する委員もいた。

会合から 5 日後、新年度予算案についての会見で石井隆一知事は、新幹線延伸を念頭に置き「気をつけないと通過駅になる」と危機感をあらわに。 予算案には、JR と連携して首都圏や関西圏に富山の食の魅力を PR する事業や、東京五輪・パラリンピック期間中の訪日外国人客のスマートフォンに富山の PR 広告を配信する事業などが盛り込まれた。 検討委員会副会長の中村和之・富山大副学長(財政学)は「富山ならではのコンテンツを提供して差別化を図り、継続的に魅力を打ち出すことが必要」と話す。 そして「人の流れをつくるための情報発信の仕方を考えないといけない」と指摘する。 (野田佑介、財津能仁、asahi = 3-16-20)


これ踏み絵? 思わずよけるマンホール 江口寿史さん作

熊本県水俣市の歩道に漫画家・イラストレーターの江口寿史さん (63) = 東京都 = がデザインしたマンホールのふたが設置されている。 その出来栄えに、思わずよけて通る人もいる。 江口さんは同市出身。 「ストップ!! ひばりくん!」、「すすめ!! パイレーツ」などの作品で知られ、イラストレーターとしても高い評価を受けている。

マンホールのふた全 6 枚のうち 4 枚は 4 日、水俣市中心部の歩道にはめ込まれた。 6 日朝、自転車で通りかかった女性は「マンホールはここなんですね」と言いながら、色鮮やかなマンホールのふたをよけて通り過ぎた。 市下水道課総務管理室次長の溝口博史さん (52) も写真撮影に訪れ「想像していた以上に大きな反響があり、つくってよかった。 江口先生の絵の力だと思います。」と話した。

すでに江口さんのファンらから、設置場所などについての問い合わせが相次いでいる。 マンホールのことを紹介した江口さんのツイッターの投稿にも、「これ、踏み絵ですか? 私は踏めない。」といった感想が寄せられている。 水俣の「ご当地マンホール」は、市制 70 周年記念事業の一つとして「足を運んでもらうきっかけになれば」と市が発案。 江口さんが描いた市の観光ポスターのイラストを使えないかと打診したところ、江口さんが快諾した。

直径約 65 センチ、重さ約 37 キロ。 それぞれに温泉など地元が誇る観光地や女性が描かれている。 表面には歩行者の滑り防止と絵を保護するコーティングが施されている。 2 月末に水俣市であった完成披露式で、江口さんは「(市から)依頼を受けて 6 枚のイラストを描いてきたが、マンホールにまでなるとは思っていなかった」とうれしそうに話した。 さらに、観光ポスター用の原画の新作を制作中であることを明かした。「新作は初めて男女です。 見ていただけるとわかると思います。」 (奥正光、asahi = 3-6-20)


また日本一? バレンタイン、今年は 31 億円売れた百貨店

JR 名古屋高島屋は 14 日、「売り上げ日本一」とされるバレンタイン商戦について、今冬は売上高が過去最高の 31 億円になりそうだと発表した。 前年より 4 億円増え、来場者は 10 万人多い 100 万人だった。 限定商品を増やしたことで集客が伸び、前年に比べ客単価も上がったという。

1 月 16 日 - 今月 14 日まで、バレンタイン催事「アムール・デュ・ショコラ」を開催。 10 階のメイン会場を含め計 5 フロアに展開し、約 150 ブランド約 2,500 種類の商品を集めた。 ブランド別の売り上げトップは、いちごを使った菓子で知られる「オードリー」で、これまで 7 年連続 1 位だった「クラブハリエ」は 2 位だった。 JR名古屋高島屋のバレンタイン商戦は、2010 年に売上高が 6 億円を超えてから、10 年連続で「売り上げ日本一」とされる。 国内外の有名シェフが連日来店し、サインや記念撮影を目当てに訪れる客も多い。 (石塚大樹、asahi = 2-14-20)


雪まつり閉幕、来場者 70 万人減 冬の風物詩、新型肺炎が影響

札幌市中央区の大通公園などで開催されていた北海道の冬の風物詩「さっぽろ雪まつり」が 11 日閉幕し、実行委員会によると来場者数は昨年の 273 万 7 千人より 71 万 6 千人少ない 202 万 1 千人だった。 実行委は減少の理由として「新型コロナウイルスに関連した肺炎の世界的な発生」などを挙げた。 新型コロナウイルスの感染拡大を巡っては、中国政府が海外への団体旅行を禁止。 実行委は、地元の小学校や幼稚園が感染を懸念し、団体での来場を取りやめたことなども理由とした。 日韓関係の悪化を受け、韓国人観光客が減少したことも影響したという。 (kyodo = 2-11-20)


国内最高値つけた「幻のノリ」、全滅から復活の兆し

かつては日本中で食べられていたのに、いまは「幻」と呼ばれているノリがあります。 養殖に挑戦する三重県の伊曽島漁協では、一時は 1 枚 170 円もの値をつけましたが昨シーズンは原因不明の全滅。 「復活の兆しがみえている」という今シーズンの見通しと、難しい養殖に挑むわけを漁協組合長の服部茂さん (66) に聞きました。

- - アサクサノリの養殖に取り組んでいます。

「2011 年に三重県伊勢市の沿岸で野生株が見つかり、13 年に養殖をはじめました。 主に贈答用として、『伊勢あさくさ海苔(のり)』のブランドで出荷しています。 ほかの地域でもアサクサノリを手がけているところがありますが、私たちは収穫後に DNA 検査をするなど厳しい基準を設けています。 普通のノリと比べ、甘みや香りの評価が高く、歯切れや口溶けがいいのも特徴です。 17、18 年の競りでは 1 枚あたり 165 円、170 円と、その漁期の国内最高値をつけました。」

- - 昨シーズンは不漁でした。

「アサクサノリは全滅、一般的なスサビノリも出荷枚数は前年比で 1 割以下と激減しました。 ノリ漁師になって 40 年で初めての記録的不漁でした。 原因ははっきりしません。 例年より潮位が高めだったことや 1 日の海水温の差が激しかったことが指摘されています。 下水処理能力が上がって海がきれいになりすぎていることも一因だと思っています。 豊かな海ときれいな海は違います。 ノリが採れる漁期は年々短くなっています。」

- - 今期はいかがでしょう。

「まだ漁期のなかばですが、復活の兆しが見えています。 今期は 14 人がアサクサノリに挑戦していますが、すでに数人が収穫しました。 スサビノリを含めると、漁協全体で出荷枚数は前年同期比 2.6 倍。 昨シーズンは黒くならなかったり穴が開いたりしたノリも多かったのですが、今期は質もいい。 金額ベースでは 8.3 倍まで回復しています。」

「網を張る高さを潮位にあわせて変えたほか、ノリを魚に食べられないように防御用の網もはることも検討しています。 これまでは魚に食べられても気にする必要はないくらい採れていたのです。 漁期が終わるまでは気が抜けません。 天候にも左右されます。 例年の 7 割ほどまで回復すればいいと思っています。」

- - 漁協の未来をどう描きますか。

「私が子どものころはこの地域に 150 軒ほどのノリ漁師がいました。 それがいまは 10 分の 1 以下です。 一方で、ノリを成型・乾燥させる工程の機械化が進んだため、生産するノリの量は減っていません。 いまは一式 5 千万円以上もするその機械を 1 軒 1 軒が買って使っています。 これからは共同での購入・使用も考えるべきでしょう。」

「三重県内では人が減って存続が難しい漁協も出はじめました。 資金はなんとかなっても人の力は急に増やせません。 伊曽島漁協はまだ若手がいる方ですが、後継者を育てることがとても大切です。」

「そのためにはやりがいがあって稼ぐことのできる、魅力ある漁業を残さないといけません。 アサクサノリというブランドを育てることは、その大きな魅力をつくることだと思います。 ノリも生き物。手間ひまをかければかけただけ、そういう顔を見せてくれます。 難しい挑戦ですが、組合員同士で情報を共有して、七転び八起きの気持ちでやっていきます。」 (初見翔、asahi = 2-4-20)

〈はっとり・しげる〉 三重県立四日市農芸高校卒。 伊曽島漁協に 8 年勤めた後、実家のノリ漁師を 3 代目として継いだ。 2010 年から組合長。 座右の銘は「信じよう 努力は人を裏切らない。」 16 歳のときに偶然みた、ある小学生が考えた標語だという。 66 歳。

〈アサクサノリ〉 ノリの一種。 1960 年ごろまで国内で広く養殖された。 しかし、病気に強く、収量の多い「スサビノリ」が普及したことで生産が激減した。 環境省レッドリストで絶滅危惧 I 類に指定され、「幻のノリ」とも呼ばれている。


口永良部島で噴火、鹿児島 火砕流発生、噴煙 7 千メートル

3 日午前 5 時半ごろ、鹿児島県屋久島町の口永良部島の新岳火口で火砕流を伴う噴火が発生した。 気象庁によると、火砕流が火口の南西側約 900 メートルに達し、大きな噴石が火口から約 600 メートルまで飛散した。 火口から約 7 千メートルの高さまで噴煙が上がった。 火砕流の発生は昨年 1 月 29 日以来。 噴火警戒レベルは 3 (入山規制)を継続している。 県警と町によると、けが人や住宅の被害などは確認されていない。 町は地元消防団などを通じて情報収集している。 気象庁は、新岳火口から約 2 2キロの範囲で、大きな噴石や火砕流への警戒を呼び掛けている。 (kyodo = 2-3-20)

前 報 (6-21-15)


ドンキ、宮崎の百貨店を買収 イオンの影響で近年は苦境

宮崎市中心部の百貨店「ボンベルタ橘」を傘下に持つ橘ホールディングス(HD、米良充朝社長)を、ディスカウント店大手「ドン・キホーテ(東京都、吉田直樹社長)」が 1 日、買収した。 4 月以降、営業を継続しながら改修し、11 月ごろにドンキを中核とする複合商業ビルとしてスタートする見通し。 ドンキが 1 日、橘 HD の全株式を取得した。 リニューアル後の新施設にはドンキの店舗が入るほか、地下は食料品フロアになるとみられる。 ドンキの親会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは同日、ボンベルタ橘の従業員に雇用を継続すると説明した。

ボンベルタ橘は、1952 年に前身の旧橘百貨店が創業。 76 年にジャスコ(現イオン)傘下に入り、88 年に店名を改称。 2008 年に地元の米良電機産業と坂下組が設立した橘 HD が株式を取得した。 同じビルに入るエアラインホテルも傘下に置いていた。 05 年にイオンモール宮崎が宮崎市郊外に開業した影響などで、ボンベルタ橘の売り上げは近年減少。 売上高は 00 年前後に 100 億円を超えたが、ここ数年は 30 億 - 40 億円台で推移。 赤字が続いていたとみられる。 (松本真弥、asahi = 2-2-20)


山形の百貨店大沼が自己破産申請 集客回復せず再建を断念 320 年の歴史に幕

経営再建中の老舗百貨店大沼(山形市)は 27 日、山形地裁に自己破産を申請した。 市中心部の本店は 26 日で営業を停止した。 従業員約 180 人は全員解雇する方針だという。 帝国データバンクによると、米沢店の閉店など自主再建に取り組んでいたが、集客は回復せず事業継続を断念した。 1700 年創業の大沼は全国 3 番目の老舗。 経営悪化で創業家トップが 2018 年 4 月に退任し、東京の投資ファンドが経営に当たったが、出資予定の店舗改装資金がファンド側に還流していた問題などが発覚し、地元の反発を招いた。 19 年 3 月には市内の実業家から融資を受け、幹部社員らが設立した投資組合の傘下に入ることで、経営権を取り戻していた。

業績が特に悪化していた米沢店(米沢市)を 19 年 8 月に閉店したものの、本店の再生策がほとんど進まない中、消費税増税後の 10 - 12 月の売り上げは前年同期に比べ 10% 以上減少。 市内の実業家の支援を受けても、なお資金繰りは厳しさを増していた。 旧米沢店で営業してきた米沢サテライト店、ギフトショップ新庄店(新庄市)も 26 日で閉鎖。 本店店舗(地上 7 階、地下 1 階、売り場面積約 1 万 2,000 平方メートル)の取り扱いは破産管財人に委ねられる。 売上高は 1993 年 2 月期の約 196 億円をピークに、郊外大型店との競合などで年々減少し、19 年 2 月期には約 74 億円まで落ち込んだ。採算面でも 2001 年から赤字が続いていた。 (河北新報 = 1-27-20)


熊本のバス 5 社、共同経営への移行合意 路線再編などで

熊本県内のバス事業者 5 社は 27 日、2020 年度中に「共同経営」の事業形態に移行する方針で合意した。 5 社は昨年 3 月から、県や熊本市と過疎地でのバス路線網の確保や運転手不足の解消のため再編に向けて協議を続けていた。 共同経営の具体的な方法について今後さらに詰める。 県内のバス事業者の九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バスの 5 社と県、市は 19 年 3 月に「熊本におけるバス交通のあり方検討会」を発足。 バス路線網の再編や運行体制、利便性の向上施策などを検討してきた。

この日、熊本市役所であった検討会では、「会社間の垣根を越えて路線再編の取り組みを実施する」ことを確認。 @ 共通定期券の発行、A 乗り継ぎの割引の拡充などを 5 社で検討することを決めた。 今年 4 月に 5 社で「共同経営準備室」を設置し、規制緩和に向けた政府の法整備状況などを踏まえながら「共同経営」を目指すとともに、公的な財政支援を求めていくことでも一致した。

検討会後、5 社の社長らが記者会見し、各社の経営状況について補助金や他事業で赤字を埋めている状況にあると説明。 「路線バスだけで黒字の会社はない」と指摘したうえで、「各社が一堂に会して話し合いができるようになることは大きい」と共同経営の意義を強調した。 また、「各社ごとだった定期券が共通で利用できれば、新しいお客を取り込むきっかけになる」とも述べ、「路線が重なっているところは譲り合うなど、真っ白なキャンバスに、あるべき路線網を描きたい」と期待を込めた。

市交通政策課によると、県内では鉄道網が未整備の地域が多く、バスが公共交通の中心を担ってきたが、人口減や過疎化の進行を受けてバスの利用者も減り、バス事業者の経営が悪化。 官民ファンドなどの支援を受けて存続してきた経緯がある。 政府の「未来投資会議(議長 = 安倍晋三首相)」では、地方銀行とともにバス事業者について共同経営を促す議論が続いている。 共同経営に伴うバス運賃の設定をめぐっては、独占禁止法上のカルテル規制に抵触する恐れがあるが、独禁法の適用を除外する特例法が今年の通常国会に提出される見通し。 (白石昌幸、矢鳴秀樹、asahi = 1-27-20)