真珠の産地が大ピンチ 春生まれのアコヤガイ、7 割死ぬ

日本の真珠の 6 割を生産する愛媛、三重の両県で、真珠を育てるアコヤガイが大量死し、養殖業者に衝撃を与えている。 三重県は海水温の上昇などの可能性を指摘するが、原因究明には至っていない。 稚貝の被害が特に大きく、来年以降の真珠生産に打撃を及ぼしそうだ。 「廃業する人が出ないか心配だ。」 三重県志摩市にある立神真珠養殖漁協の鈴木孝夫参事は漏らす。

真珠生産が国内 3 位の三重で被害が出始めたのは 6 月ごろだ。 志摩市の英虞湾や周辺で、貝の内臓を包む外套膜(がいとうまく)が縮んで死ぬ「斃死(へいし)」が相次いだ。 県水産研究所によると、通常は冬場に発生するが、夏場に大量に死ぬのは初めてという。 7 月には、養殖業者から研究所に大量死の情報が入り始めた。 県が 8 月、県内のほぼ半数となる 122 業者から聞いたところ、今春に生まれた稚貝の 7 割にあたる 167 万 7 千個が死んだと判明した。

稚貝が、真珠の芯になる「核」を入れられる大きさの「母貝」に育つまでは 1 年半かかる。 三重では県水産振興事業団が年明けから稚貝を人工孵化(ふか)し、来春にも養殖業者に提供するが、母貝になるのは再来年だ。 昨年生まれた貝や、すでに核を入れた貝も 2 割以上が死んだことが県の調査で分かっており、来春以降に母貝が不足するのは避けられない状況だ。 鈴木参事は「業界は高齢化が進んでいる。 貝がないと養殖を続けるモチベーションを失ってしまう。」と危機感を募らせる。

進まぬ原因究明

真珠生産が国内トップの愛媛でも母貝や稚貝が大量死している。 県南部の宇和海。 7 月中旬ごろ、愛南町や宇和島市の漁業者たちが、養殖しているアコヤガイが相次いで死んでいるのに気づいた。 「大事に育ててきた稚貝の 7 - 8 割が死んだ。 どうなるのか不安が尽きない。」と、宇和島市内の養殖業者の男性 (67) は嘆く。 「全滅に近い」と肩を落とす漁業者もいた。

愛媛県漁連は 10 月 18 日、被害状況を発表した。 9 月末時点で、今春生まれた稚貝のうち 67% にあたる 2,230 万個が死んだとみられる。 核を入れる前の母貝も全体の 2 割強にあたる 469 万個が死んだ。 被害総額は、稚貝が約 6,700 万円、母貝が約 2 億 3,900 万円と算出された。 大量死の原因について、三重県は 9 月、冬場の海水温が高かったことや、えさとなるプランクトンが少なかったことが影響したとの分析結果を公表したが、「真の原因ではなく、要因の一つ(県の担当者)」との立場だ。 また、感染症の有無などについても国立研究開発法人「水産研究・教育機構」の増養殖研究所(三重県南伊勢町)が調べたが、確認されなかった。

愛媛では 10 月 2 日、県漁連や県、大学などによる「対策協議会」が設置された。 研究者 4 人が専門部会をつくって原因究明に取り組むと決めたが、「専門的な知見で、あらゆる可能性を排除せずに明らかにする(県の担当者)」として期限は設けないという。 下灘漁協真珠貝研究所(宇和島市)の松田教義所長は「業者をつなぎとめる意味でもモノが必要だ。 死んだ量をカバーできるか分からないが、稚貝生産に取り組む。」 (関謙次、亀岡龍太、寺田実穂子、asahi = 12-1-19)


若者の流出を防げ! 北各県「就活アプリ」で引き留め

高校生や大学生の多くが県外に就職する状況が続く中、青森県がスマートフォン用の「就活アプリ」の配信を始めた。 就職関連情報を若者に届け、地元企業にも目を向けてもらうのが狙い。 秋田県でも同様の取り組みがすでに始まっている。

青森県は 10 月 28 日から、就活生向けのアプリ「シューカツアオモリ」の配信を始めた。 合同企業説明会などのイベント情報、県内企業の採用情報などが確認できる。 11 月 17 日時点で、情報を閲覧できる企業は県内 5 社にとどまっているが、今後掲載数を増やしていく意向という。 県労政・能力開発課が県内の IT IT企業に委託して開発した。 アプリのダウンロードは無料で、個人情報登録の必要がない。 イベント情報などは随時更新されていくので、学生は最新情報をもとに就職活動の計画を立てられる。 同課就業支援グループの菊池忍さん (48) は「高校生や大学生に手軽に使ってほしい。」

同課によると、アプリ開発の背景には、青森県内の高卒者の約 4 割、大卒者の約 7 割が県外で就職する現状があるという。 文科省の学校基本調査によると、2018 年 3 月卒業の高卒者の県内就職率は全国平均が約 81.1%、東北 6 県で 72.6% なのに対し、青森県は 56.7% と特に低かった。 県企画調整課の奥田昌範さん (50) は「県内で就職する若い人がいないと、特に中小企業の従業員の年齢層が高くなり、いずれ存続が危うくなる」と危機感を示す。

青森労働局が発表した 2018 年の県内の有効求人倍率(原数値)は 1.30 倍で、過去最高を更新。 建設・福祉・サービスの分野で人手不足が顕著だ。 「生産年齢人口が減ると消費も落ち込み、経済規模も縮小すると見込まれる。 県内就職者の年齢層のバランスを改善したい。」と奥田さん。 県はアプリなどを通じて地元企業について知ってもらい、県内就職率を東北平均並みの 7 割まで上げることをめざす。 県外の若者への情報発信に期待する企業もある。 アプリ配信開始当初から就職関連情報が掲載されている青森銀行(本店・青森市)の人事担当者は「県外にいる就活生に、アプリを通じて情報を広く発信したい」と話した。

秋田県は 2017 年からアプリ「秋田 GO! EN アプリ」を導入している。 高校生や大学生のほか、秋田県への移住を考えている県外の既卒者も対象に、県内企業の見学やインターンシップ情報を発信。 県によると、19 年 8 月末までに約 2,200 人が会員登録している。 県移住・定住促進課によると、やはり高卒者の県内就職率が全国平均より低いことなどから、地元就職を選択肢に含めてもらうことが導入の狙いだったという。 配信開始当初と比べると登録者数が伸び悩んでいるというが、担当者は「合同説明会などのイベントにはアプリを使っている人が多く来場しており、情報が多くの人に届いているという手応えはある」と話している。 (吉備彩日、asahi = 11-23-19)


桜島で 5,000m 超す噴煙、気象庁が発表 … 16 年 7 月以来

気象庁は、鹿児島市・桜島の南岳山頂火口で 8 日午後 5 時 24 分に噴火があり、噴煙が火口から 5,500 メートルまで上がったと発表した。 5,000 メートル以上に上がったのは、2016 年 7 月 26 日の昭和火口での噴火以来で、南岳山頂火口では 2,000 年 10 月 7 日以来という。

噴火警戒レベルは 3 (入山規制)のまま

同庁によると、桜島では火山ガス(二酸化硫黄)の 1 日あたりの放出量が多い状態といい、山体膨張と考えられる地殻変動もみられていることから、今後も活発な噴火活動が継続する可能性があるという。 南岳山頂火口及び昭和火口から 2 キロの範囲では、噴火に伴い飛散する大きな噴石や火砕流に警戒が必要としている。 また、風下側では火山灰に加え、小さな噴石が遠方まで風に流されることもあることから注意を呼び掛けている。 (yomiuri = 11-8-19)

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「空から宝石が」 マグマシティ名乗る鹿児島の郷土愛

「マグマシティ。」 鹿児島市が今春から、そんな市のブランドイメージを発信している。 街には、噴火を繰り返す桜島の火山灰がときに容赦なく降りそそぐ。 厳しい自然を逆説的にとらえ直し、郷土愛を育て、魅力を市外に広めようという試みだ。 鹿児島からあなたへ、届け「桜島愛」 - -。

「桜島 わが前にあり 西郷も 大久保も見し 火を噴く山ぞ」

九州新幹線の終着駅、鹿児島中央駅の休憩スペース。 高さ 3 メートルほどもある壁一面に、鹿児島出身の作家、海音寺潮五郎の名で一文が刻まれる。 桜島は、維新の偉人が活躍した時代も今も、変わらず雄々しい姿で仰ぎみる者たちを圧倒する。 過去、大噴火で多数の犠牲者も出した。 「大正噴火(1914 年)」の犠牲者は 58 人に上った。 気象庁の 24 時間監視の下にある国内有数の活火山は市民にとって、「脅威」や「不安」と隣り合わせの存在だ。

市が今回、打ち出した「マグマシティ」というブランドは、そんな火山のイメージを、桜島のマグマが宿す「エネルギー」や「あたたかさ」といったプラスイメージに変える発想の転換だ。 「鹿児島は全て根っこで桜島とつながっています。」 市の高橋卓也・広報戦略室長はそう話す。 桜島を囲んで海の幸を恵む錦江湾も、わき出る温泉も、桜島大根などの特産品も。 降灰予報を見て傘を持ち歩き、ふいの「ドカ灰」に「雨宿り」ならぬ「灰宿り」することも。 桜島は厳しくもありやさしくもある。 「言ってみれば桜島は親のような存在」と高橋室長。

市は広報戦略室を立ち上げ、約 1 年かけて練った戦略を今春から実践する。 市民へブランドの浸透を図るため、▽ 桜島を模したロゴ入りの旗を繁華街・天文館に下げた、▽ シビックプライド(市民の郷土愛)を育もうと「市への思いがあふれる」市民を募集し、PR 動画を作成、▽ 東京で鹿児島市の魅力を学ぶ講座の開講 - -。 次々と繰り出す戦略のキーワードは市民も含めた「鹿児島ファン」を増やすことだ。

こんなデータがある。 市が昨年、インスタグラムで市の魅力を発信しようと、市民にお気に入りの鹿児島の写真を募ったところ、天文館の町並みや西郷隆盛にちなんだ力作を抑え、「桜島」がダントツ 1 位で全体の約 4 割を占めた。 火山灰や火砕流の堆積物は、加工や商品化によって姿を変え、くらしの中に生かされる。 市の風物詩、市電の軌道敷には、水はけがよい特徴を生かした火砕流の堆積物を材料にしたブロックを基盤に芝生を敷き詰めた。 シラスと呼ばれる火砕流の固まりを使った壁は消臭などの効果があるとされ、美術館などに利用される。

「鹿児島は空から宝石が降ってくる。」 同市の久木田智美さん (35) は、こんなキャッチフレーズで火山灰を使ったアクセサリーを製作・販売する。 2014 年、溶岩をスライスした「岩石薄片」の顕微鏡写真に衝撃を受けた。 ごつごつして汚いと思った溶岩が、キラキラ光る宝石のように見えたからだ。 樹脂で火山灰や貝殻などを包み、ネックレスやピアスなどをつくった。 「やっかいものの灰に、思わぬ美しさがあることをもっと知ってほしい」と久木田さんは話す。

11 月 9 日、鹿児島中央駅前で、恒例となった「灰フェス! (主催・鹿児島市などでつくる桜島・錦江湾ジオパーク推進協議会)」が開催される。 「降られたい。 ドカ灰(ば)りたい。」と銘打った灰にまつわる企画展やトークショーを予定。 「桜島愛」で盛り上がる。 桜島の噴火史を研究し、著書も多い同市の橋村健一さん (83) は桜島について「鹿児島を象徴する身近で、市民に郷里を感じさせる存在。 火山灰ですら、私たちにとっては日常の一部です。」と話した。

火山が多い九州他県でも、火山をテーマにした取り組みが続く。 「日本一のおんせん県」をうたう大分県は湯おけのロゴマークを商標登録し、届け出れば原則使用が自由。 土産品などに使われ、使用件数は 2 千超という。 長崎県の島原半島は「人と火山の共生」をテーマにユネスコの世界ジオパークに認定された。 雲仙の噴火災害からの復興や火山がもたらす恵みなどを学ぶイベントなどが続けられる。

宮崎県高原町の農事組合法人「はなどう」と日南市の古澤醸造は、本格芋焼酎「新燃岳」を共同開発。 新燃岳の噴火で上がった知名度を逆手にとったという。 熊本県でも阿蘇山の火山灰でつくった県の PR キャラクター「くまモン」のフィギュアなどが販売されている。 (町田正聡、合田純奈、小瀬康太郎、asahi = 11-8-19)


世界に誇る「サイクリングロード」を初指定 選ばれた 3 ルートはどこ?

国土交通省は 11 月 7 日、訪日外国人の誘客などに有効なサイクリングロードとして、「ナショナルサイクルルート」の第 1 次指定ルートを発表した。 選ばれたのは「しまなみ海道サイクリングロード(広島・愛媛県)」、「つくば霞ヶ浦りんりんロード(茨城県)」、「ビワイチ(滋賀県)」の 3 ルート。 今後、国内外への発信を強化していく。 年間の訪日外国人数目標 4,000 万人を達成するため、政府は海外で人気がある「自転車ツーリズム」に本腰を入れている。 国際水準の自転車道として、2019 年度中にナショナルサイクルルートの指定を目指していた。

すでに、全国各地でサイクリングロードの整備や魅力向上の取り組みが進んでいる。 今回は、その中でも代表的な場所や、サイクリング客の受け入れ態勢が整っている地域が選ばれた。

全国的に知名度が高い「しまなみ海道サイクリングロード」は、広島県尾道市の JR 尾道駅から愛媛県今治市のサイクリングターミナル「サンライズ糸山」までの全長 70 キロ。 瀬戸内海の島々をつなぐ橋を渡りながら、本州から四国へと走るルートだ。 サイクリング客に対応した休憩所やサイクリスト専用ホテルなどが整備されているほか、道路には推奨ルートを明示するブルーラインを引いてあるなど、走行環境も整っている。

「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、茨城県桜川市の JR 岩瀬駅から茨城県潮来市の水郷潮来バスターミナルに至る全長 176 キロ。 旧筑波鉄道の廃線跡地を活用しており、霞ヶ浦湖岸を 1 周するルートになっている。 18 年に、全国初の鉄道駅直結サイクリング拠点として「りんりんスクエア土浦(ゲートウェイ)」を開業。 多言語対応したサイクリングマップや路面のルート案内表示なども整備されている。

琵琶湖を 1 周する「ビワイチ」は、滋賀県大津市の瀬田唐橋を起点とする、反時計回りの一方通行ルート。 全長は 193 キロ。 守山市が運航する「漁船タクシー」など、湖上交通と組み合わせて、体力に合わせて気軽にサイクリングを楽しむための取り組みが行われている。 案内表示やサポート拠点も整備されている。

国交省は、ナショナルサイクルルートのブランディングを図るためのロゴマークも制定した。 東京五輪・パラリンピックが迫る中で、「日本にも国際水準のサイクリングロードがある」と発信することで、日本を訪れるサイクリスト、さらにはリピーターを増やしたい考えだ。 (ITmedia = 11-8-19)


パタゴニア日本支社、長崎のダム建設めぐり「遺憾の意」

長崎県と佐世保市が同県川棚町に建設を進める石木ダム。水没予定地・川原(こうばる)集落に暮らす 13 世帯(約 60 人)の土地明け渡し期限が今月 18 日に迫るなか、「強制的に土地を奪い取るのはおかしい」、「暮らしや文化を破壊してまでダムは必要か」など抗議の動きが広がっている。

米アウトドア衣料品メーカー・パタゴニア日本支社などが支援する市民団体は 8 月、公開討論を求めて約 5 万筆の署名を県に提出した。 音楽家の坂本龍一さんや歌手の加藤登紀子さん、お笑い芸人の「せやろがいおじさん」らも現場を訪れ、事業に疑問を投げかけている。 県内外の野党系の国会議員や地方議員 73 人による議員連盟も発足。 元滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員なども名を連ねる。

パタゴニア日本支社は、ダム建設予定地の土地所有権が国に移された 9 月 20 日、ホームページで「遺憾の意」を表明した。 明け渡し期限前日の今月 17 日午後 1 時半からは、地元・川棚町でダム予定地の住民や支援者らが「石木ダムを断念させる全国集会」と銘打った 1 千人規模の集会を開く。 嘉田氏や超党派の「公共事業チェック議員の会」に加わる国会議員の出席も予定されている。

一方、県・市・町 3 議会のダム推進派議員らも先月 30 日、10 年ぶりに意見交換会を開いた。 県議会内の任意の石木ダム建設推進議員協議会長の田中愛国県議が「そろそろ結論を出す時期が来たのではないか。 もう、先延ばしは困る。」と提起した。 出席した県議のひとりは、ダム予定地の強制収用に反対する議員連盟が 9 月に発足した点を挙げ、「こちらも黙っているわけにはいかない」と述べた。

石木ダムは、1975 年に国が建設を決めた。 総事業費 285 億円。 川の洪水を防ぎ、隣接する佐世保市の水需要をまかなうのが目的だ。 建設予定地では 8 割の地権者が立ち退きに応じているが、川原地区の住民 13 世帯は土地の明け渡しを拒み、ダム本体工事に先立ち始まった県道付け替え工事現場で連日、抗議の座り込みを続けている。

82 年には県が土地収用法に基づき機動隊を導入して強制測量を行い、住民の激しい抵抗と根強い不信を招いた。 住民らはさらに、佐世保市の水需要の予測は人口減の進む中で過大だと指摘。 治水対策も堤防かさ上げや河道掘削で代替できると訴えている。 国を相手に事業認定の取り消しを求めた訴訟は昨年 7 月、長崎地裁で訴えを退けられた。 現在、福岡高裁で係争中で、今月 29 日に判決がでる。

本体工事に着手できない県は、残る土地の強制収用へ向けた手続きを進めてきた。 県収用委員会は土地収用法に基づき 5 月、約 12 万平方メートルの明け渡しを裁決し、住民らの土地所有権は 9 月に国へ移った。 11 月 18 日の居住地明け渡し期限を過ぎれば、県は行政代執行による土地の強制収用ができるようになる。 国土交通省によると、ダム建設を巡る行政代執行は「過去に例はない」という。 中村法道知事は「総合的に判断する」としつつ、選択肢として「除外しない」との姿勢を変えていない。 (小川直樹、asahi = 11-8-19)


ららぽーと来て街は激変 移住増? でも近隣店は打撃

「ららぽーと沼津」が静岡県沼津市東椎路に開店して 4 日で 1 カ月。 百貨店の撤退などで大型商業施設の空白地だった沼津への巨大商業施設の出現は、地域に大きな衝撃を与えた。 連日にぎわいを見せる集客力で商圏は一変。 一方で約 4 千人の雇用創出は、新たな市民を呼び寄せる波及効果も生んでいる。 開店から 1 カ月を経ても周辺道路は週末には激しく渋滞する。 収容台数約 3,600 台の駐車場を埋めた車は「沼津」ナンバーに加えて「富士山」、「伊豆」が目立つ。 「静岡」や「湘南」も見られ、東の御殿場市、西の富士市、富士宮市、南の伊豆市まで 30 キロ圏、人口 120 万人を商圏とするという開発主体・三井不動産の戦略は功を奏しているように見える。

渋滞対策として、臨時駐車場を設けたり、ポイントを付与する公共交通機関利用促進キャンペーンを実施したりしている。 来店者には親子連れも多く、30 - 40 代の子育てファミリーを主なターゲットにした店舗づくりも受け入れられているようだ。 2 階に設けた無料のキッズスペース「こもりらのもり」で妻 (37) と共に長男 (2) を遊ばせていた沼津市の会社員男性 (40) は開店後、4 回目の利用だという。 「天候にかかわらず子どもを遊ばせてやれる場所はこれまでになかった」と歓迎。 妻も「同じ年頃の子どもを連れた人が多く、安心感がある」と評価した。

三井不動産商業マネジメントららぽーと沼津オペレーションセンターの中村哲所長は「開業期は広範囲より多くのお客様にご来場いただくことができ、注目度の高さを実感しました」とコメントした。 ららぽーと沼津がにぎわう一方、これまで「県東部最大級」とうたってきた清水町のサントムーン柿田川は、10 月の売り上げが対前年比で約 10% 減となった。 強大なライバルの出現に加えて消費増税、台風による荒天、季節外れの陽気による秋冬物の売れ行き不振といった向かい風に苦しめられた。 建設中の新館を来年 3 月にオープンし、反転攻勢を図る。

沼津市の中心市街地では沼津駅前の再開発商業施設のブランド店とレストランがららぽーと沼津に移転、商店街の全国チェーン靴店が撤退するなど、テナントの流出が続く。 沼津新仲見世商店街の井草雅彦会長 (49) は「商店街を歩く人は確実に減った」という。 自身が経営する呉服店の売り上げも対前年で 4 割の減という。 「来て楽しい、歩いて楽しい、人と会って楽しい街にしなければ」と言い、来年、老朽化したアーケードを撤去して明るい商店街に生まれ変わらせるなどの対策を進める。

隣接する沼津仲見世商店街振興組合の渡井篤紀理事長 (59) も「人口が減る中で売り場床面積を増やせば当然客は分散する」と現実を受け止める。 「商店街は差別化された魅力のある個店の集合体という魅力を磨くしかない。」 最近、空き店舗への飲食店の出店が相次いでおり、集客力に期待している。 そんな中、井草さんにはうれしいこともあった。 交流を続けて来た青年が沼津に移住してきたという。 秦野萌(もゆる)さん (25) はららぽーと沼津のテナントの求人に応じ、9 月にさいたま市から沼津に引っ越してきた。

アニメ「ラブライブ! サンシャイン!!」のファンで舞台になった沼津を訪れるうちに街のファンになったという。 頻繁に沼津に通って街の人と共にラブライブ関連のイベントを企画するなどしてきた。 「ラブライバーを受け入れてくれる沼津の人は本当に温かい」と居心地の良さを語る。 「これからは自分が人を迎える立場で活動していきたい」とまちづくりの担い手に加わる考えだ。 (岡田和彦、asahi = 11-5-19)


首里城火災 : 那覇市へ寄付 2 億突破 全国、海外からも再建支援
19 時間で 1 億円積む クラウドファンディング

那覇市がふるさと納税を活用したクラウドファンディングのウェブサイト「ふるさとチョイス」を通じて受け付けている首里城火災への寄付金が 4 日午後 1 時 13 分ごろ、2 億円を超えた。 前日 3 日午後 6 時ごろに目標額の 1 億円に達しており、約 19 時間で 2 倍に増えた。 増加のペースは加速、寄付額はさらに増え続けており、支援の輪が広がっている。

ふるさとチョイスを運営するトラストバンクの担当者は「かなり早いペース。 5 分ほどで 100 万円単位で増えているので驚いている。」と語る。 寄付金額だけでなく、寄付した人も約 1 万 4 千人と多く、全国、海外からの寄付者もいるという。 クラウドファンディングは首里城焼失の翌 1 日午後 2 時半に始まっており、3 日目の 3 日午後 6 時までに目標額に達した。 そこから 19 時間でさらに 1 億円上積みされており、市民の関心の高さがうかがえる。 寄付は 4 日午後 1 時 13 分現在、1 万 4,082 人、2 億 13 万 7,867 円に達している。 募集期間は来年 3 月 31 日まで。 (琉球新報 = 11-4-19)

プロジェクト URL は、https://www.furusato-tax.jp/gcf/717

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首里城火災 : 沖縄戦で破壊、復元に 30 年超 首里城の歴史を振り返る

Q : 首里城の正殿などが全焼してしまったね。 誰のお城だったの?
A : 現在の沖縄県にはかつて、琉球王国 (1429 - 1879) と呼ばれる国があった。 その国王が住み、政治や儀式を行っていたのが首里城だよ。

Q : え? 日本とは別の国だったんだ。
A : 現在の中国や日本、東南アジアをつなぐ海の貿易で栄えた国だった。 1879 年、明治新政府によって日本の政治体制に組み入れられた「琉球処分」まで、首里城は 450 年間にわたり、琉球王国の政治と文化の中心だったんだ。

Q : 昔からある建物が燃えてしまったんだね?
A : いや、正殿などは 1992 年に復元されたものだ。 かつてあった建物は、第 2 次世界大戦の地上戦「沖縄戦」で壊されてしまった。 86 年に復元することが決まり、30 数年かけて、乏しい資料をもとにかつての姿を再現しようと努力を続けてきたんだ。

Q : 世界遺産だって聞いたけど?
A : 2000 年に世界遺産に登録された「琉球王国のグスク(城)及び関連遺産群」に含まれるのは、復元された建物ではなく、地下の遺構にあたる「首里城跡」。 そこも被害を受けてしまったのか、今後の調査の結果でわかる。

Q : 沖縄の人たちはきっとショックだね。
A : 戦争で県民の 4 人に 1 人が亡くなるなど、苦難の歴史を歩んできた沖縄の人びとにとって、首里城の復元は「沖縄のアイデンティティーを取り戻すプロジェクト」でもあった。 首里城公園は近年、年間 200 万人以上が訪れる沖縄のシンボルになっていた。

Q : 首里城はまた復元できるのかな?
A : 首里城の建物は、これまで何度も再建が繰り返されてきた。 沖縄の人びとの心のよりどころが美しい姿を取り戻せるといいね。 (上原佳久、asahi = 10-31-19)


幻の酒「越乃寒梅」がイオンに 「禁じ手」の取引はなぜ

様々な日本酒の有名銘柄で知られ、それらをつくる全国最多の 88 蔵元を抱える新潟。 日本酒では強いブランド力を誇るが、日本酒市場が縮小する中、その座に安住することもできなくなっている。 そうした中、慣例からの脱却を目指す経営者らがいる。 「酒どころ」で今、何が起きているのか。

バイヤー「圧倒的ブランド」

成田空港に近く、訪日客も多く訪れる大型商業施設・イオンモール成田(千葉県成田市)。 8 月下旬、酒類売り場の人目に付きやすい通路沿いの陳列棚に、新潟の清酒「越乃寒梅」がずらりと並んでいた。 イオンは 7 月下旬から、越乃寒梅をつくる石本酒造(新潟市江南区)と直取引を始めた。 比較的安い「白ラベル」、「別撰(べっせん)」を約 400 店舗、「特撰(とくせん)」などの高級品も 21 店舗で販売する。 イオンの担当バイヤー・鈴木誠さん (49) は「越乃寒梅は日本酒の中でも圧倒的なブランドで、清酒売り場の売り上げを主導している。 年末商戦に向けて取扱店舗を増やしていきたい。」

石本酒造はこれまで、全国各地の小規模小売店と特約店契約を結び、大半をこの特約店だけに卸していた。 街の小さな酒屋の店主が酒造りのこだわりを消費者に丁寧に説明し、買ってもらうことを想定したビジネスモデルだ。 1980 年代に口コミで評判が広がり、地酒ブームを主導。 入手のしづらさから一時は「幻の酒」とも呼ばれた。

しかし 90 年代以降の規制緩和でコンビニや大手スーパーが酒の販売に乗り出し、小売店は 20 年で半分以下に激減。 「日本酒離れ」も進み、清酒の消費量もこの 10 年で 2 割減った。 特約店の廃業も相次ぐ中で、蔵元 4 代目の石本龍則社長 (52) は「若い人の酒の買い方の変化に対応しないと、商品の価値を伝えることができなくなる。」 今春、新潟県内に展開するスーパー 2 社と取引を始め、さらにイオンとの取引にも踏み切った。

直接取引 もう一つの狙い

これまで「禁じ手」だった大手との直接取引を解禁したねらいはもう一つある。 実は、これまでも越乃寒梅は大手スーパーで売られていた。 ただ、これらは一部の特約店から転売されたものだと石本酒造の竹内佑介常務 (40) は指摘する。 転売された寒梅は流通コストがかさむ。 4 月上旬、石本酒造が取引をしていないという首都圏の大手スーパーでは、720 ミリリットル入りの「別撰」が、希望小売価格(税別 1,210 円)の約 2.6 倍の税別 3,124 円で売られていた。

卸業者の免許を持たずに小売店に転売するのは違法だが、実態は把握しづらい。 石本酒造には苦い経験がある。 地酒ブームが続いていた 90 年代には、偽造した王冠やラベルを貼った「ニセ寒梅」が大量に出回った。 竹内常務は「転売された酒は品質管理も行き届かず、『高いのにまずい酒』と思われかねない」と、スーパーとの取引拡大のねらいを明かす。 同様の懸念をいち早く示したのが、「獺祭(だっさい)」の旭酒造(山口県)だ。 約 2 年前に全国紙の全面広告で、「お願いです。 高く買わないでください。」と太字の見出しを付け、主力商品の希望小売価格と、全国 630 の正規販売店をずらりと並べた。

イオンはこの広告を契機に、それまで続けていた「転売品」の寒梅の仕入れをストップ。 石本酒造との交渉を経て、今夏の取引に至った。 イオンのバイヤーの鈴木氏は「売り上げは一時落ち込んだが、流通の適正化への姿勢を示す方が長期的にプラスになる。」 ワインなどを常時 20 度弱で保管できる大規模な低温物流倉庫を構えていることや、清酒売り場に専門の販売員を配置していることも、取引開始につながる要因となった。 石本酒造の竹内常務は「品質管理や商品説明が担保されれば売り場を広げていきたい。 直接の取引が増えれば、不透明な流通を減らすことにもつながる。」

広がる ワインのテイスト

東京・秋葉原駅近くの居酒屋「虎連坊」。 ワイングラスに琥珀(こはく)色の日本酒が注がれ、口に運ぶとリンゴのような香りと強い酸味が舌の上に広がる。 「越後鶴亀(新潟市西蒲区)」がつくる「ワイン酵母仕込み 純米吟醸」だ。 名前の通り、ワイン酵母で熟成させ、白ワインに近い甘みと酸味が特徴。 新潟県内の大半の蔵元の酒をそろえる JR 越後湯沢駅構内のみやげ店「ぽんしゅ館」では、2014 年の発売以来、試飲数で約 120 銘柄のうち上位 10 位以内を保っているという。 新潟の酒の代名詞「淡麗辛口」とは一線を画す商品を仕掛けたのが、サントリー出身の小林建夫社長 (79) だ。

越後鶴亀の前身は、1890 (明治 23)年創業で、全国第 1 号の地ビール「エチゴビール」をつくったことでも知られる上原酒造。 地ビールの採算悪化が引き金で 2010 年に経営破綻し、再建のため買収した東京の業務用酒販会社に請われた小林氏が、11 年に社長に就任した。 サントリー時代はワイン事業部長を務め、仏ボルドーの名門ワイナリー「シャトー・ラグランジュ」の買収も手がけた。 日本酒は年 1 回、正月のおとそで飲む程度。 「清酒業界から見れば、私は異端の人間。」 そんな「門外漢」が感じていたのが日本の食生活の変化だ。

新潟の酒は、「寒仕込み」と呼ばれる伝統製法が特徴。 軟水を使い、冬場の低温でゆっくりとこうじを熟成させることで、雑味のないすっきりとした「淡麗辛口」の飲み口に仕上がる。 だが小林氏は「日本の食生活は世界でも最も無国籍化している。 淡麗辛口はあっさりした和食には合うが、脂っこい料理や辛い料理を受け止めるには、強い酸味が必要。」とみる。 そこでフランスからワイン酵母を取り寄せ、「ワイン酵母仕込み」を開発。 今や売り上げ全体の約 1 割を占める。

「端麗辛口」だけじゃない

市島酒造(新発田市)は 3 月、新潟市内の日本酒イベント「にいがた酒の陣」で、「甘口」を前面に出した「かれん 純米甘口」を発売。 若い女性を中心に、2 日間で当初予定を上回る 1 千本を販売した。 仕掛けたのは、今年 6 月まで社長を務めた大和竜一氏。 足利銀行やソフトバンク系の投資ファンドで企業再生を手がけてきた。 「酒はうまいし、杜氏(とうじ)の腕もいい。 あとはどう売るか。」 酒蔵を調べていると、スパークリング日本酒用につくったが商品化されず、タンクで眠っている原酒があった。 急きょ猫を描いたラベルや小ぶりの瓶をつくり、ターゲットを明確にするため、ラベルにはあえて「女子限定」と記した。

近年、日本酒市場はコメのうまみが強く出る「甘口」の酒が評価される傾向がある。 市販酒の品評会「SAKE COMPETITION」では、4 部門の上位に入賞した 40 点のうち、福島が 6 点、秋田が 4 点を占めたが、新潟は 1 点にとどまった。 運営会社の担当者は「純米大吟醸部門では、メロンやリンゴのようなフルーティーな香りを出す酸が多く含まれる日本酒が上位に入っている」と話す。

こうした流れを受け、「甘口」の日本酒をつくる酒蔵は新潟でも増えている。 ただ、主力商品は従来の「淡麗辛口」だ。 県酒造組合の大平俊治会長は「リキュールなどに慣れた若い世代を意識した酒造りも大事だが、世界で勝負できる酒は『淡麗辛口』に代表される繊細な味の酒だ」と力を込める。 伝統を大切にしつつ、どう新たな顧客を取り込むのか、模索が続いている。 (高木真也、asahi = 10-11-19)


広島アンデルセン、被爆壁を新店舗に 来夏開業へ着々

広島の爆心地から 5 キロ圏内に 85 件残る「被爆建物」の一つ、「広島アンデルセン(広島市中区)」の建て替え工事で、被爆した壁を建設中の新店舗に取り付ける様子が報道陣に公開された。新店舗は来年 8 月オープン予定。 建物を所有するパン製造販売大手のアンデルセングループ(広島市)によると、取り付けられたのは昨年 10 月に切り出した旧建物東側にあった壁のうち、今後も外壁として使用が可能と判断した 50 平方メートル。 この日午後 1 時すぎ、大型のクレーン車が壁をつり上げ、約 30 分かけて設置予定場所に定着させた。

爆心地の東約 360 メートルにあり、米国による原爆投下当時は帝国銀行広島支店だった。 1967 年に同グループが買い取り、増改築をしながら使用してきたが、耐震性に問題があるとの判断から 16 年に営業を休止した。 清川秀樹・執行役員広報室長は「元の建物と、愛し育ててくださった広島の皆さんに感謝し、歴史の重みを感じながら使っていきたい」と語った。 (宮崎園子、asahi = 10-10-19)


茨城、県民にも愛されず 魅力度に続く 47 位「なぜ …」

全都道府県の住民を対象にした意識調査で、茨城県民の地元への「愛着度」が全国最下位という結果が出た。 魅力度で 6 年連続全国最下位からの脱却を目指す県にとって、県民にも「愛されていない」というショックな結果になった。 調査をしたのは、都道府県の魅力度ランキングを発表しているブランド総合研究所(東京)。 SDGs (持続可能な開発目標)が住民視点で行われているかを調べることを目的に、今回初めて実施した。 各都道府県民 340 人に、「幸福度」、「生活の満足度」、「愛着度」、「定住意欲度」について聞いた。

「とてもある」から「全くない」まで 5 段階で尋ねた愛着度では、茨城の得点は 68.4 (全国平均 75.1)で最下位。 魅力度で毎年ワーストを争う群馬は 72.5 で 36 位、栃木は 70.3 で 44 位と同様に低迷している。 上位は北海道、沖縄、福岡だった。 ほかの項目でも茨城の順位は低迷している。 定住意欲度は 68.9 (同 72.9)で 39 位、幸福度は 65.6 (同 66.9)で 36 位、満足度は 60.0 (同 61.4)で 36 位といずれも平均を下回った。

調査では、地元への愛着度や満足度などと相関すると予測された、収入や子育て、介護といった「生活環境」に関する 48 項目と、空き家や犯罪、店舗の減少など「社会環境」の課題 48 項目についても尋ねた。 生活環境に関していくつ悩みがあるかの個数をまとめた「悩みが多い」ランキングは 3.96 (同 3.36)で、秋田についで 2 位。 唯一、全国平均よりいい結果だったのは、社会環境で解決すべき課題の数を聞いた「課題の多い」ランキングで、5.19 (同 5.28)で 27 位だった。

県はこれまで、魅力度ランキングで最下位が続くことについて、県民調査では地元へ愛着を持っている人が 9 割を超えていることを根拠に、「県民が満足と感じている環境が外部の人に伝わっていないため」などとして、県外への魅力アピールに努めてきた。 魅力度向上について担当している県プロモーション戦略チームは「残念な結果。 県の世論調査とは調査手法に違いがあるとはいえ、どうしてこのようなことになるか分からない。」とショックを隠しきれない。

調査をまとめた同社の田中章雄社長は「魅力度と愛着度は密接に関連している。 茨城にはいいものがあるが、県民が自信を持てないから外に PR できていない。 魅力度を上げるには、単に県外への PR だけではだめで、まずは県民が自分の県に自信を持つことが必要だ。」と話している。 今年の魅力度ランキングの公開は 17 日を予定している。 (重政紀元、asahi = 10-8-19)

【愛着度】 1 北海道 / 2 沖縄 / 3 福岡 / (略) / 45 秋田 / 46 埼玉 / 47 茨城
【満足度】 1 千葉 / 2 兵庫 / (略) / 36 茨城 / (略) / 46 青森 / 47 秋田


不自由展、午後 2 時すぎ再開 抽選で計 60 人、荷物検査

愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ 2019(津田大介芸術監督)」の実行委員会は 8 日午前、企画展「表現の不自由展・その後」の入場を同日午後 2 時 10 分から再開すると、公式ホームページで発表した。 発表によると、この日に入場できるのは午後 2 時 10 分からと、午後 4 時 20 分からの 2 回で、各回 30 人の計 60 人。 抽選券を午後 1 時と午後 3 時に、愛知芸術文化センター(名古屋市東区) 10 階で配布する。 当選した人は手荷物を預け、金属探知機で検査を受けた後で展示室に入る。

芸術祭実行委は会場の安全対策として、▽ 「電凸(とつ)(電話による攻撃)」対策、警備対策の強化、▽ 貴重品を除く手荷物の預かり、▽ 金属探知機によるチェック、▽ SNS 拡散の防止や動画撮影の禁止 - - の対策を講じる。 安全対策について連日点検し、翌日以降の対応に反映する。

再開を巡っては、不自由展の実行委員会が再開を求めた仮処分を名古屋地裁に申請し、6 - 8 日の再開に向けて協議を進めることで芸術祭側と合意した。 中止時と同じ状態での再開を求めた不自由展側と安全確保を重視する芸術祭側が協議を続け、双方が歩み寄って再開にこぎ着けた。 8 月 1 日に始まった不自由展は、慰安婦を表現する少女像や昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品など 16 作家の 23 作品を展示。 県などに放火を示唆する内容のファクスやテロ予告のメールを含む抗議が殺到し、開始から 3 日間で中止となっていた。 (asahi = 10-8-19)

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「表現の不自由展」再開へ 時期は 10 月 6 - 8 日で協議

国際芸術祭「あいちトリエンナーレ 2019」で、中止になった企画展「表現の不自由展・その後」の実行委員会が展示再開を求めた仮処分の審尋が 30 日、名古屋地裁であり、展示を再開する方向で、芸術祭実行委員会側と和解した。 企画展実行委の代理人・中谷雄二弁護士が明らかにした。 企画展実行委側はこれまでの審尋で、展示中止になる前の状態で 10 月 1 日に再開を求める和解案を提案していた。 中谷弁護士によると、この日の審尋では、10 月 6 - 8 日に再開することを前提に協議を進めるという内容で、芸術祭実行委側からの申し入れを受け入れたという。

芸術祭実行委会長の大村秀章・愛知県知事はこの日朝、記者会見を開き、@ 犯罪や混乱を誘発しないように双方協力する、A 安全維持のため事前予約の整理券方式とする、B 開会時のキュレーション(展示内容)と一貫性を保持し、必要に応じて(来場者に)エデュケーションプログラムなど別途実施する、C 県庁は来場者に(県の検証委員会の)中間報告の内容などをあらかじめ伝える - - の 4 条件を示した。 大村氏は、来場者への事前説明などを行った上で、中止前の状態での再開に前向きな姿勢を示していた。

企画展をめぐっては、有識者による県の検証委が 9 月 25 日、「条件が整い次第速やかに再開すべきだ」などとする中間報告を発表。 大村氏は脅迫などのリスク回避策を講じた上で、10 月 14 日までの会期中に再開を目指す考えを示していた。 企画展は、慰安婦を表現する少女像や昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品が展示され、芸術祭実行委や県などに放火を示唆する内容のファクスやテロ予告のメールを含む抗議が殺到し、開始から 3 日で中止された。 (asahi = 9-30-19)

前 報 (8-5-19)


1 年 10 か月ぶりに SL やまぐち号 "貴婦人" が復帰

JR 山口線の「SL やまぐち号」に、蒸気機関車「C57」が 1 年 10 か月ぶりに戻ってきました。 優美な姿の「C57」は貴婦人と呼ばれ、鉄道ファンに愛されています。 京都で点検を受けていましたが、西日本豪雨の影響や車両の不具合で復帰が遅れました。 (TBS = 10-5-19)

前 報 (11-25-17)