大阪は「爆買い」、伊勢はサミットが追い風 路線価上昇

1 日公表された路線価で、大阪・ミナミの戎橋(大阪市中央区)は昨年比 11.3% の高い上昇率となった。 大きな要因は中国人旅行客の急増だ。 家電や医薬品を大量に買い込む「爆買い」を追い風に、量販店や大型薬局が競うように進出。 エリア人気が路線価を押し上げている。 先月末の日曜日、ドラッグストア「スギ薬局 道頓堀東店」には中国人旅行客の行列ができていた。 「こんなにたくさん買い物できる場所があるなんて。 大阪にはびっくり。」 中国・深センから家族連れで訪れた女性 (43) はスキンクリームを土産に 10 個以上買い、笑顔を見せた。

「まさか、ここまで需要が増えるとは」と山本圭介店長 (31)。 売り上げは 2 年前の 2.5 倍にのぼり、通訳ができる中国人の店員も約 40 人に倍増させた。 日本政府観光局によると昨年、外国人観光客は日本全体で 1,080 万人。 中国人は 170 万人で前年の 2.5 倍に急増した。 ビザ発給要件の緩和や円安、関西空港の中国便の増加もあって、大阪にも 100 万人が訪れたと推計される。 (釆沢嘉高、木村和規、小若理恵、保坂知晃、asahi = 7-1-15)

◇ ◇ ◇

博多駅周辺の路線価、5 年連続上昇 「成長性を評価」

1 日公表された路線価では、福岡市の博多駅周辺が 5 年連続の上昇となり、天神は 3 年ぶりのプラスとなった前年から上昇幅が拡大した。 専門家は、さらに開発や商業施設の進出が進み、成長性に期待して不動産への投資が続いていることが背景にあるとみている。 西鉄福岡(天神)駅に直結する福岡市中央区天神 2 丁目の商業施設「ソラリアプラザ」。 平日も女性を中心に多くの買い物客が訪れる。 今年 4 月に 2 年間の改装を終え、全面開業した。 運営する西日本鉄道によると、開業後 1 月の売り上げと来館者はともに前年比 60% 増だという。 担当者は「近隣の百貨店からの回客が増えている」と話す。

天神では福岡三越と岩田屋本店が昨秋に相次いで地下食品街などをリニューアル。 昨年 11 月にはパルコが新館を開業し、今年 3 月には本館を増床した。 路線価の算定に携わった不動産鑑定士の井上真輔さんは「商業施設の集積が進んだが、過剰にならず、堅調に推移している」と分析。 好調な集客が賃料を支え、路線価上昇につながっているという。 (井上怜、asahi = 7-1-15)


牛乳、給食から消える 新潟・三条の小中学校、9 月から

新潟県の三条市教育委員会は、9 月から牛乳を全小中学校 30 校の給食の献立から外し、給食と別の時間に「ドリンクタイム」を設けて提供する方針を固めた。 30 日に開く学校給食運営委員会に提案する。 市教委は 2008 年度から、食育と健康づくりの一環として、小中学校での完全米飯給食を始めた。 昨年度からは「米飯給食と合わない」などとの理由で、昨年 12 月 - 3 月の 4 カ月間、試験的に給食から牛乳を外し、牛乳以外の食材だけで必要なカルシウムやたんぱく質を補うことができるかどうか、検証していた。

市教委によると、煮干しの粉や大豆で必要なカルシウムやたんぱく質を摂取できる献立をつくれるが、メニューに限りがあることなど課題も浮上した。 このため、献立は牛乳が出ていた時と同じとし、牛乳は給食時に出さずに、別の時間に提供するという。 学校給食から牛乳を外すことについて、文部科学省学校健康教育課の担当者は「把握している限りでは、聞いたことがない」と話している。 (三木一哉、asahi = 6-29-15)


岐阜の求人倍率、愛知を超えた 1.51 倍、全国 3 位

26 日に発表された 5 月の有効求人倍率(季節調整値)で、岐阜県が 4 月より 0.04 ポイント高い 1.51 倍となり、約 5 年半ぶりに愛知県(1.49 倍)を上回った。 1.5 倍を超えたのは 22 年 2 カ月ぶりで、サービス業などで求人が増えたことが主な理由。 都道府県別では東京都(1.71 倍)、福井県(1・57倍)に次ぐ 3 位だった。

岐阜県の有効求人数(原数値)は、前年同月比で 62 カ月連続で増加中だ。 一方、企業倒産による解雇などを理由に仕事を探す求職者も、減少傾向が続く。 有効求人倍率は半年前の昨年 11 月の 1.32 倍から急上昇している。 岐阜労働局によると、採用の目標に達しない企業も出ているという。 一方、愛知県は 1.49 倍で、4 月から横ばいだった。 自動車産業の求人が増えた一方、サービス業などで減らした。 都道府県別では全国 5 位。 藤沢勝博・愛知労働局長は「景気の動きがこのままなら、緩やかな改善が続くのでは」と話した。 また、三重県は 4 月より 0.01 ポイント高い 1.28 倍だった。 (asahi = 6-26-15)

◇ ◇ ◇

九州・沖縄の求人倍率、1 倍台に回復 23 年ぶり水準

5 月の九州・沖縄の有効求人倍率(季節調整値)が、23 年 11 カ月ぶりに 1 倍台に回復した。 前月を 0.03 ポイント上回る 1.01 倍で、1991 年 6 月と並ぶ水準になった。 改善は 4 カ月連続。 景気回復で求人が増えており、九州・沖縄の雇用情勢の改善が続いている。 厚生労働省が 26 日発表した。 求人数が職を求める人の数を上回ると、有効求人倍率は 1 を超える。 全国の有効求人倍率は 2013 年 11 月に 1 倍台を回復している。 九州・沖縄の雇用情勢の改善も、全国に 1 年半遅れて節目を迎えた。

福岡労働局によると、有効求人が前月より 1.0% 増えた一方、就職した人も増えて有効求職者は 1.4% 減った。 医療・福祉、サービス業、運輸業などで求人が増えているという。 県別にみると、熊本が前月を 0.02 ポイント上回る 1.11 倍、福岡も 0.02 ポイント上回る 1.08 倍。 長崎は 0.04 ポイント改善して 1.00 倍に回復した。 全県で前月を上回り、佐賀、鹿児島、沖縄を除く各県で 1 倍台になった。 (asahi = 6-26-15)


「たま駅長」しのび献花台 ファン「世界中でショック」

和歌山電鉄は 25 日朝、地方鉄道の活性化に貢献した三毛猫「たま駅長」の死を悼み、生まれ育った貴志駅(和歌山県紀の川市)の駅長室前に献花台を設けた。 駆けつけたファンは、たまの写真に手を合わせ、花を手向ける人もいた。

会社員の中井研さん (33) = 同県湯浅町 = は正午前、花束とかつお節を持って訪れた。 鉄道ファンで時折、たまを見に来ていたという。 「女の子だったのでまさにアイドル。 お年だと分かっていたのですが、訃報(ふほう)を聞くとやっぱり悲しかった。 ありがとうございました。」と別れを惜しんだ。 香港から観光で来たというエリック・ケンさん (41) は「香港でもたまは大人気。 日本に来たのもたま駅長に会うためだった。 とても悲しい。 世界中でショックを受けている人が多いと思う。」と話した。 (asahi = 6-25-15)


JR 名古屋高島屋「新ビルは若者取り込む」 新社長語る

JR 名古屋高島屋の運営会社「ジェイアール東海高島屋」の山田正男・新社長 (64) は 22 日、朝日新聞のインタビューで、2017 年に開業予定の大型商業施設について、20 - 30 代向けの衣料・雑貨の専門店を中心とする考えを示した。 一方、百貨店部分では主に 40 - 50 代向けに高級品を充実させる。 隣り合う両施設ですみ分けながら、幅広い年齢層を取り込むねらいだ。

新施設は「タカシマヤ ゲートタワーモール」の名称で、百貨店の隣に建設中の高層ビルの 2 - 8 階に入る。 約 3 万 2 千平方メートルの売り場に約 150 の専門店を出す。 山田氏は「名駅地区に少ない 20 - 30 代のニーズを取り込み、百貨店と合わせた都市型の複合空間をつくる」と強調した。 百貨店部分については、「顧客の年齢層が上がっており、本物志向に応えたい」などと述べた。 高島屋グループでは、東京・玉川店などが専門店と一体運営しており、こうしたノウハウも活用して、買い物客に両施設を回ってもらいやすくするという。 (大隈悠、asahi = 6-23-15)


ムクドリもハトもタカが一喝 街の鳥害、鷹匠が救う

野鳥の群れが都市部の街路樹などに集まり、各地で糞(ふん)害や鳴き声の騒音被害をもたらしている。 いま、効果絶大の対策として注目されているのが、古来の妙技「鷹匠(たかじょう)」による追い払いだ。 6 月中旬、福井市の繁華街の入り口にある大名町交差点。 夕暮れが迫ると、一帯にあるケヤキやユリノキの街路樹にムクドリの群れが集まってきた。 信号待ちの車や歩道に糞が降り注ぐ。 けたたましい鳴き声がビルの壁に反響する。

そこへ、石川県小松市から鷹匠の吉田剛之さん (42) がワゴン車でやってきた。 ムクドリの集まる木を見上げる吉田さんの左手には、タカ科のハリスホーク。 手を木に向けて振ると、タカは翼を羽ばたかせて猛然と木に向かっていった。 数十羽のムクドリたちが一斉に逃げていく。 外敵が少ない都市部の街路樹は、ムクドリやハト、カラスなどの格好のねぐらだ。 日中は周囲の森や田畑などで過ごし、日没とともに集まってくる。 大名町交差点付近の街路樹には、昨年 12 月の福井県の調査で 4 千羽を超すムクドリが集結し、住民や商店主から苦情が相次いでいた。

このため、福井県と福井市などは昨年 12 月に「鳥害対策検討会」を設置。 県が調べると、大阪府堺市が約 2 年前に鷹匠を使って成功した例があった。 そこで、今年度に約 100 万円の予算を組み、1 回約 3 万円で吉田さんに依頼した。 5 月から週 2、3 回、大名町交差点の周辺でタカを放ち、ムクドリの数は大幅に減った。 12 月まで様子を見ながら 30 回ほど続ける。 (小川詩織、asahi = 6-22-15)


口永良部、18・19 日の噴火では火砕流なし 気象庁

火山活動が高まった状態が続いている口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県屋久島町)の新岳(しんだけ)について、気象庁は 21 日、今月 18、19 日に 2 日連続で発生した噴火で火口の形状に大きな変化はなく、新たに火砕流が発生したような痕跡はないと発表した。 20 日に今月の噴火後、初めて上空から観測した。

気象庁によると、新岳では 1 日あたりの火山性ガス(二酸化硫黄)の放出量は 1,700 トンと多い状態が続いている。 今回の噴火後も山頂に近いところにマグマがたまった状態が続いているとして、「(爆発的噴火だった) 5 月 29 日と同程度の噴火が発生する可能性がある」として警戒している。 (asahi = 6-21-15)

◇ ◇ ◇

口永良部島で再び噴火か、規模は不明 … 空振観測

気象庁は 18 日、鹿児島県屋久島町の口永良部(くちのえらぶ)島の新岳(しんだけ)で同日午後 0 時 17 分頃に、再び噴火が起きたとみられると発表した。 同島での噴火は 5 月 29 日の爆発的噴火以来。 同庁は、噴火警戒レベル「5 (避難)」を維持し、引き続き厳重な警戒を呼びかけている。

同庁によると、現地の天候不良のため噴煙や火砕流などの確認はできていないが、噴火によるとみられる空気の振動と火山性微動が観測されたという。 噴火の規模はわかっていないが、同庁は「空気の振動は 5 月の噴火よりも小さい」としている。 口永良部島では 5 月 29 日の爆発的噴火が発生した後、火山性地震は 1 日 1 - 8 回程度の少ない状態が続いていたが、今月 16 日は 10 回、17 日は 31 回にまで増加していた。 同島では、島民の全島避難が続いている。 (yomiuri = 6-18-15)

◇ ◇ ◇

口永良部噴火、長期化の恐れ 専門家「帰島、年単位も」

爆発的に噴火し、全島民が避難した口永良部(くちのえらぶ)島(鹿児島県屋久島町)について、気象庁の火山噴火予知連絡会は 30 日、「今後も今回と同程度の噴火の可能性がある」とし、大きな噴石や火砕流への警戒を求める見解を公表した。 活動は数年に及ぶおそれもあり、記者会見した委員は帰島について「1 週間ではあり得ない。 最悪の場合、年単位になることを考えておくべきだ。」との見方を示した。

予知連はこの日、臨時の会議を開催。 今回の噴火について、マグマが地下水に接触して起きた「マグマ水蒸気爆発」との見方を示した。 新しいマグマからできた火山灰はわずかで、地下に多くのマグマが残っているとみられるという。

口永良部島の火山性地震は 29 日午後以降は減っており、気象庁は 30 日午前 10 時 50 分、連続噴火は停止したもようだと発表した。 ただ、予知連会長の藤井敏嗣・東京大名誉教授は会見で「噴火が停止したとしても一休みといったところ。 むしろ長い期間にわたって噴火活動が続く可能性がある。」と話した。 災害対応を話し合う政府の災害対策会議でも 30 日、火山活動が長期化する可能性が指摘され、島民への火山情報の迅速な提供や生活支援などを確認した。

児童・生徒ら、屋久島で受け入れ

新岳(しんだけ)噴火を受け、鹿児島県と屋久島町は 30 日、口永良部(くちのえらぶ)島から屋久島に避難している児童・生徒計 16 人を屋久島の小中学校で受け入れると発表した。 県などは近日中の授業開始を検討している。 火山活動の先行きが見通せない中、子どもたちの学ぶ場を確保するための措置だ。 教科書などの学用品や給食も屋久島町教委で対応するという。 また、伊藤祐一郎知事と荒木耕治町長は 30 日、政府との対策会議で、島民の避難生活の長期化が想定されることを踏まえ、山谷えり子防災担当相に政府の長期的な取り組みを求めた。

県によると、口永良部島を離れて屋久島の避難所で生活している島民は 69 人(30 日午後2時現在)。 親戚宅などに移った人がいるため前日夜より 14 人減った。 噴火時に島には 137 人がいたが、うち 19 人は観光客など一時滞在者。 現在は島民の 6 割が避難所に身を寄せている。 各避難所では町の職員が食事などの準備にあたり、医師や保健師らが巡回した。 荒木町長は「避難者がストレスをためないよう総出で対応している」と報道陣に語った。 島民から要望が出ている「一時帰島」については、噴火警戒レベルの引き下げや関係機関との協議を踏まえて検討する考えを示した。 (asahi = 5-31-15)

◇ ◇ ◇

住民ら 137 人が全員、屋久島に避難 口永良部島噴火

29 日午前 9 時 59 分ごろ、鹿児島県の口永良部島の新岳で爆発的噴火が発生した。 火砕流も発生し海岸まで到達、一部は集落に接近した。 気象庁は噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを 3 (入山規制)から最も高い 5 (避難)に引き上げた。 鹿児島県屋久島町は全島に避難指示を出し、住民ら 137 人全員が同日夕までに、船やヘリコプターで 10 キロ余り離れた屋久島へ避難した。

住民の多くは噴火後、いったん島西部の避難所に避難。 屋久島町などによると、気道熱傷を負った男性 (72) と体調不良の男性 (82) が県のヘリで病院に搬送された。 気象庁は噴火のタイプについて、水蒸気噴火ではなく、マグマによる噴火の可能性を指摘。 噴石が火口から 3 キロ以上飛び 3 人が負傷した 1966 年の噴火と同規模とみているとした上で、今後も同じ程度の噴火が続く恐れがあるとし、厳重な警戒を呼び掛けた。

噴火警戒レベルは 2007 年に運用が開始され、5 へ引き上げられたのは初めて。 特別警報に位置付けられている。 気象庁によると、最も大きな噴火は 5 - 6 分続き、黒い噴煙が火口の上空 9 千メートル以上にまで達した。 その後も噴火は複数回起きた。 上空からの観測でも火砕流の痕跡や噴石を確認した。 口永良部島からは町営フェリーで 125 人が避難し、うち 19 人は旅行者。 屋久島に着いた住民らは、3 カ所の避難施設に向かった。 海上保安庁のヘリでも 6 人が避難したほか、自分の漁船で移動した人もいた。

新岳では昨年 8 月 3 日、80 年 9 月以来の噴火が発生。 気象庁は噴火警戒レベルを最も低い 1 から 3 に引き上げ、住民らが島外に避難した。 今年 3 月には、高温の溶岩や火山ガスなどが噴煙や雲に映り、明るく見える「火映」も観測した。 4 月には、二酸化硫黄の放出量が 1 日当たり 900 - 2,600 トンに上り、火山性地震も 1 カ月で 50 回以上を観測。 5 月 23 日にも震度 3 の地震を観測したため、気象庁は噴火の発生を警戒していた。 (中国新聞 = 5-29-15)


23 区内の本社、地方移転で税制優遇 東京集中を緩和へ

本社機能を地方に移した企業などを税制で優遇する改正地域再生法が 19 日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。 大手を中心に企業の拠点がひしめく「東京一極集中」を緩和し、人口減が進む地方で働く場を増やそうというねらいだ。 税制優遇の対象になるのは、東京 23 区に本社機能がある企業が、地方(首都圏や近畿圏、名古屋圏の中心部を除く地域)に本社や研究所などを移したケースだ。 新たなオフィスなどにかかった費用を損失にして法人税の負担を軽くする「特別償却」や、雇用を増やした場合に納税額を減らす「税額控除」などで支援する。

たとえば、本社機能を移した企業が施設の新増設に 5 億円投資したうえで、30 人が東京から転勤し、地元で 20 人を雇用した場合、3 年間で最大計 9 千万円の税負担が軽減される。 富山県黒部市に東京から本社機能を移転中のファスナー・建材大手、YKK グループがこの税制優遇の活用を検討している。 (豊岡亮、編集委員・堀篭俊材、asahi = 6-19-15)


回る回る回る 福岡・朝倉の「三連水車」、新調

田植えの季節を迎え、福岡県朝倉市にある菱野の三連水車が 17 日、勢いよく回り始めた。 今年は 5 年に 1 度の新調の年。 真新しくなった水車が、周囲の農地を潤していく。 午前 10 時過ぎ、筑後川の水門が開けられると、堀川用水路にどっと水が流れ込んだ。 水車に水が到達し、水しぶきがあがると、見学していた子どもたちから「がんばれ」と声があがった。 三連水車は下流にある二つの二連水車とともに、毎日約 2 万トンの水を 35 ヘクタールの農地に供給する。 稼働は 10 月中旬まで。(大久保忠夫、asahi = 6-17-15)


火山列島に明暗 蔵王山警報解除の日に浅間山噴火

全国各地で火山活動が活発な状態が続いている。 蔵王山(宮城・山形県境)の噴火警報が解除された 16 日、浅間山(長野・群馬県境)でごく小規模な噴火が起きた。 本格的な夏山シーズンを前に、蔵王で安堵感が広がる一方、危機感を強める観光地も。 気象庁は観測態勢の強化とともに、噴火予知に力を入れる。

16 日午前、噴火の兆候が見られなくなったとして、約 2 カ月ぶりに火口周辺警報が解除された蔵王山。 「本当によかった。」 山形市の蔵王温泉観光協会の伊藤八右衛門会長は笑顔で語った。 蔵王温泉では噴火警報が出された 4 月以降、少なくとも 8 千人分の宿泊予約がキャンセルされた。 風評被害について伊藤さんは「何年かかっても必ず克服する」と話した。 (多鹿ちなみ、関口佳代子、村野英一、渡辺周、鈴木逸弘、asahi = 6-16-15)

◇ ◇ ◇

浅間山の噴火警戒レベル、2 に引き上げ 気象庁

気象庁は 11 日、長野・群馬県境の浅間山について、噴火警戒レベルを 1 (活火山に留意)から 5 年ぶりに 2 (火口周辺規制)に引き上げたと発表した。 火口から約 2 キロの範囲で、噴火による噴石が飛散する可能性があるとして警戒を呼びかけている。 この範囲には主立った観光施設はない。

気象庁によると、今月 8 日以降、火山活動の活発化に伴う二酸化硫黄の放出量も増加。 11 日には 1 日あたり 1,700 トンに急増した。 浅間山のレベル 2 の基準は、1 日 500 トン超の二酸化硫黄の放出が 7 日間続くこととしているが、「11 日の放出量が多く、基準を満たした」と判断し、レベルの引き上げを決めた。 浅間山は 4 月下旬以降、山頂直下を震源とする火山性地震が多い状態が続き、火山活動が高まっていた。

浅間山では 2008 - 09 年、小規模な噴火があり、火山活動が活発化。 08 年 8 月には、今回と同様に火山性地震と火山性ガスの増加で警戒レベルを 2 に上げ、2 日後に噴火が発生。 一時はレベル 3 (入山規制)になったが、その後は 10 年 4 月までレベル 2 を維持した。 (asahi = 6-11-15)


「被爆電車」当時の姿に復元 8 月まで広島の街走る

広島に原爆が投下された朝、市民とともに路面電車も被爆した。 3 日後には運行を再開し、「復興のシンボル」とも言われた。 そのうちの 1 両が当時と同じ姿に復元され、13 日に街を走った。 被爆者、戦争を知らない世代、外国人 ・・・。 それぞれが 70 年前の惨禍に思いをはせ、「核兵器のない平和な世界を」と願った。

上半分が灰色、下半分が青色。 レトロな雰囲気を醸し出す車両が午前 10 時半の出発時刻に合わせ、JR 広島駅(広島市)前の電停からゆっくりと動き出した。 その姿を見守ったり、カメラで撮ったりする人たちの中に、この日を特別な思いで迎えた女性がいた。 増野(旧姓・小西)幸子さん (85)。 1944 年の春、広島電鉄(広電)が運営していた家政女学校に入った。 男性の運転士たちが次々と戦地に行き、代わりに増野さんら女学生も路面電車の運転や車掌を任せられるようになっていた。

戦況が悪化するなか、入学から 3 週間余りで車掌になり、同じ年の秋には運転席についた。 「お国のために頑張らなきゃ。」 仕事はきつかったが、懸命に働いた。 楽しいこともあった。 乗客の男性に声をかけられて、映画館で初デート。 ラブレターももらった。 そんな日常を 1 発の原子爆弾が奪った。 (根津弥、asahi = 6-13-15)


日韓関係悪化に円安 … 九州 - 釜山の旅客船利用が 9% 減

韓国・釜山と九州(下関を含む)を結ぶ定期旅客船の 2014 年度の利用者数は、前年度比 9.0% 減の 96 万 3 千人だった。 100 万人割れは 3 年ぶり。 円安や日韓関係悪化などで、日本人利用者が過去最低となった影響が大きい。 九州運輸局が 10 日発表した。 主な内訳は、日本人が 19.8% 減の 16 万人と過去最低で、韓国人は 5.9% 減の 78 万 7 千人だった。

日本人の減少は、「日韓の関係悪化や、韓流ブームの陰りも影響している(同局海事振興部)」という。 韓国人も、昨年 4 月の旅客船セウォル号沈没事故が影響したという。 昨秋から客足は回復しつつあったが、最近は韓国での中東呼吸器症候群 (MERS) コロナウイルスの感染問題で旅行キャンセルが出ており、影響が懸念されるとしている。(湯地正裕、asahi = 6-11-15)


原発 PR 看板「永久に保存を」 標語考えた人が署名提出

東京電力福島第一原発の事故で全町民が避難を続ける福島県双葉町が、原発を PR する町内の看板を撤去する方針を示したことに対し、看板の標語を考えた大沼勇治さん (39) らが 8 日、「負の遺産」として現場で永久保存するよう求める署名 6,502 人分を町と町議会に提出した。 伊沢史朗町長は「重く受け止めて大局的に判断したい」と述べた。

看板は町中心部の 2 カ所に掲げられており、大沼さんが双葉北小 6 年の時に考えた「原子力 明るい未来のエネルギー」などの標語が記されている。 町は、看板が老朽化して落下する危険があるとして今年度予算に撤去費用 410 万円を盛り込んだ。 3 月からインターネット上などで署名を集めてきた大沼さんは、「都合の悪い歴史を隠すのは恥ずかしいことだ。 原発事故を知らない世代に町の歴史を伝えたい」と語った。(根岸拓朗、asahi = 6-8-15)


なぜ伊勢志摩が選ばれた? きっかけは正月のある会話

8 地域によるサミット招致レースを制したのは、最後に手を挙げた三重県だった。 安倍晋三首相が来年のサミット開催地に伊勢志摩地域を選ぶにあたってカギとなったのは、「伊勢神宮の荘厳さ」、「日本の原風景」といった日本の伝統や文化だった。 「日本の精神性に触れていただくには大変よい場所だ。」 首相は 5 日午後、羽田空港で記者団にそう語った。 政府高官は「やはり『伊勢神宮の凜とした独特な空気を外国首脳にも感じてもらいたい』という首相の意向が一番大きい」と、選定には首相の強い意向があったことを認める。

首相が伊勢志摩サミットを決断した直接のきっかけは、今年 1 月 5 日の伊勢神宮参拝にあった。 伊勢神宮を参拝中、首相は「ここはお客さんを招待するのにとてもいい場所だ」と口にした。 それを聞いた首相周辺が、同行していた鈴木英敬三重県知事に「サミット候補地として立候補すればいい。 いま直接、首相に伝えるべきだ。」と進言した。

鈴木知事は伊勢神宮が宗教施設である点や、伊勢志摩以外に 7 都市が開催候補地に名乗りを上げていたことから、やや遠慮気味に「今から手を挙げても間に合いますか」とたずねたところ、首相は「いいよ」と即答。 鈴木知事は 1 月 21 日の定例記者会見で、サミット誘致の意向を正式に表明した。 鈴木知事は経産官僚出身、第 1 次安倍内閣で官邸のスタッフだった。

各候補地が出そろった時点で、政府は会議場の規模やホテルの受け入れ能力、警備や交通ルートなどを数値化して比較しつつ検討を重ねてきた。 伊勢志摩の場合は、中部空港からヘリコプターで移動する点が懸案として指摘されていたが、政府高官によると「郊外都市でのサミット開催が各国で定着しており、首脳のヘリ移動は珍しくない」、「伊勢志摩は、悪天候でも別手段で移動が可能」などとして、大きな不安材料にはならなかったという。 (菊地直己、冨名腰隆、asahi = 6-6-15)


「買い物難民」は 11 万人 2040 年の九州、民間試算

2040 年には九州 7 県で「買い物難民」になる恐れがある人が 11 万 3 千人にのぼる - -。 民間シンクタンクの九州経済調査協会がこんな試算をまとめた。 人口減が進めば、採算がとれずに閉店を迫られる商店やコンビニが相次ぎ、小売店の空白地帯が増えて日常の買い物に不自由する人が増えるとみている。 国立社会保障・人口問題研究所は、九州の人口がいまの 1,320 万人から、40 年には 1,074 万人まで減ると予測している。 九経調は、九州全域を 500 メートル四方に細かく区分けし、同研究所のデータをもとにして、エリアごとに将来の人口の増減を試算した。

試算によると、人が住んでいる約 5 万 5 千のエリアのうち約 2 割の地域では、40 年の人口がいまより半減する。 「よろず屋」と呼ばれるような、最小限の食料や日用品をそろえるごく小さな商店でも、半径 5 キロの商圏に少なくとも 1 千人の住民が必要とされるが、40 年にこの水準以下まで住民が減る地域は、宮崎県北部の山あいや半島の先端、離島など 654 平方キロにのぼる。 九州で人が住むエリアの 4.5% にあたる。

こうした商店よりやや規模が大きいコンビニエンスストアは、半径 2.5 キロの商圏に 3 千人が必要とされる。 こちらは一部の都市圏と周辺をのぞく、7 千平方キロ近くの地域で立地が困難になるという。 九経調は買い物難民対策として、「移動販売や買い物代行など、近くの拠点と住民をつなぐ手法づくりが必要」としている。 (湯地正裕、asahi = 6-2-15)


知事同盟が初会合、「地方創生」へ提言まとめる

宮城、鳥取など全国 12 県の知事でつくる「日本創生のための将来世代応援知事同盟(地方創生知事サミット)」は 23 日、初会合を岡山市内で開いた。 人口減対策として、都会から地方へ移住する人に税制上の優遇措置を設けるなどの提言をまとめ、近く政府に提出することを決めた。

知事同盟は、政府が進める地方創生についての政策提言を行うため、今年 4 月に発足した。 まとまった提言では、小児科・産婦人科医の確保、保育環境の充実などを求めた。 会合には、石破地方創生相と有村少子化相が出席した。 石破氏は「地方創生に失敗すると、この国に未来はない。 国は地方を情報と人材、財源で全力で応援する。」と述べた。 (yomiuri = 5-23-15)


人口減でコンパクトシティー推進 = 国土形成計画で素案 - 国土交通省

国土交通省は 21 日、今後 10 年間の国や地域づくりの基本方針となる「国土形成計画」の改定に向け、素案を自民党部会に示した。 地方都市で進む人口減少に対応するため、住宅や医療機関などを地域の中心部に集める「コンパクトシティー」の推進などを掲げた。 素案は、市街地の空洞化を防ぐためにもコンパクトシティー形成が必要だと強調。 その形成に当たっては、公共施設の再編や使われていない建築物など既存の施設を有効活用するとしている。 (jiji = 5-21-15)


箱根山、火山性地震 4 千回超 気象庁、小規模噴火に警戒

箱根山で 4 月 26 日から続く活発な火山活動で、神奈川県温泉地学研究所(同県小田原市)が箱根で観測した火山性地震が 21 日、計 4 千回を超えた。 過去 20 年間で最も活発だったとされる 2001 年 6 - 10 月、研究所は 4 カ月で約 4 千回を観測したが、今回は 26 日目でこの数字に並んだ。

研究所によると、今回の日別で最多は 5 月 15 日の 500 回。 20 日は 84 回、21 日は午後 5 時までで 43 回と減ったが、「今後も増減を繰り返す」とみている。 大半は体に感じない微小な地震で、有感地震は 20 日までに 125 回。 最大規模は 15 日のマグニチュード 3.0 で、大涌谷で震度 3 相当を記録した。 研究所の地震の観測地点は箱根町内に 6 カ所あり、気象庁よりも多い。 気象庁が観測した箱根の地震数は 4 月 26 日 - 5 月 20 日で 1,760 回だった。

一方、気象庁の西出則武長官は 21 日の記者会見で、箱根山について「警戒が必要なのは大涌谷周辺の限られた範囲であり、その付近の小規模な噴火に注意してほしい」と述べ、火山情報の適切な理解を求めた。 気象庁は大涌谷周辺に新たに、噴火などによる空気の振動を捉える空振計やカメラを設置し、監視活動を強化している。

また、箱根山は想定火口域から周辺の民家までは 700 メートルほどと、他の火山と比較して距離が近いことから、西出長官は「他の火山よりも小規模な変化でも、噴火警戒レベル 3 (入山規制)を考えないといけない」との認識を示した。 (asahi = 5-21-15)

◇ ◇ ◇

箱根ロープウェイが全線運休 大涌谷の観光施設を閉鎖

箱根山(神奈川県)の噴火警戒レベルが 2 (火口周辺規制)に引き上げられたのを受け、箱根町は 6 日、大涌谷につながる県道 734 号の約 1 キロを通行止めにし、箱根ロープウェイが運休になったと発表した。 大涌谷周辺の遊歩道もすべて閉鎖され、大涌谷は立ち入り禁止になった。 町は 6 日午前 6 時 10 分に防災行政無線で規制開始を伝え、6 時半から通行止めなどの規制を始めた。 町は箱根ロープウェイの早雲山 - 姥子の運休を要請したが、運行する会社は全線を運休にした。 大涌谷の観光施設やおみやげ店もすべて閉鎖される。 (asahi = 5-6-15)

◇ ◇ ◇

箱根山で火山性地震を 98 回観測 5 日、前日の 3 倍に

箱根山(神奈川県)で 5 日、午後 3 時までに 98 回の火山性地震が観測された。 気象庁によると、火山性地震が増え始めた 4 月 26 日以降の 1 日の回数としては最も多く、前日の約 3 倍に増えた。 体に感じる震度 1 の揺れも 2 回あった。 「火山活動がやや高まっている」として、大涌谷付近での水蒸気の噴出に注意するよう呼びかけている。

箱根山の火山性地震は 2 日は 37 回、3 日は 36 回、4 日は 34 回だった。 震度 1 以上の揺れが観測されたのは 4 月 26 日以降初めて。 気象庁は「今のところ噴火の危険はない」として、噴火警戒レベルは 1 (平常)のまま据え置いた。 神奈川県箱根町は遊歩道などの立ち入り制限をこれまで通り続けている。 (asahi = 5-5-15)

◇ ◇ ◇

箱根山で蒸気噴出を確認 大涌谷の遊歩道など閉鎖

気象庁は 4 日、火山性地震が増えている箱根山(神奈川県)で現地調査をし、大涌谷の温泉施設で 3 日に確認された蒸気が引き続き勢いよく噴出しているのを確認した、と発表した。 火山性地震は 3 日は 36 回、4 日も午後 3 時までに 8 回あった。 同庁は今後も箱根山の動向を注視するという。

同県箱根町は同日、大涌谷の遊歩道や谷周辺の 4 ハイキングコースを閉鎖した。 遊歩道の噴煙地で調理する名物「黒たまご」を売店が販売できず、店員は「品がありません」と来客に頭を下げていた。 それでも訪れる車は数多く、正午前、駐車場に入る待ち時間が 30 分以上かかった。 (asahi = 5-4-15)

◇ ◇ ◇

箱根山で火山性地震が急増、わずかな膨張も確認 気象庁

箱根山(神奈川県)で火山性地震が増えており、気象庁は 3 日、高温の水蒸気が突発的に噴き出す可能性があるとして、地元自治体の指示に従って危険な地域に立ち入らないよう注意を呼びかけた。

気象庁によると、大涌谷付近を震源とする火山性地震は 4 月 1 - 25 日は計 9 回だったが、26 日は午後 2 時以降に 16 回、5 月 2 日は 37 回、3 日は午後 3 時までに 35 回観測された。 傾斜計でわずかな山の膨張が確認された。 気象庁は「現時点では噴火の危険があるわけではない」とし、噴火警戒レベルは 1 (平常)を維持する。 4 日、現地に観測班を派遣する。 神奈川県箱根町は 3 日、周辺にある遊歩道の一部などを 4 日午前 5 時から閉鎖すると発表した。 (asahi = 5-3-15)


「農地バンク」目標の 2 割 昨年度、集約進まず

農林水産省は 19 日、使われない農地を集めて必要としている農家や法人に貸し出す「農地中間管理機構(農地バンク)」の 2014 年度の実績を発表した。 集めた農地は全国で約 3 万 6 千ヘクタール、貸し付けたり販売したりした農地は約 3 万 1 千ヘクタールで、14 年度目標の約 14 万ヘクタールの 2 割強にとどまった。

政府は 14 年から、農地バンク制度を開始。 耕作放棄地の有効活用に加え、環太平洋経済連携協定 (TPP) をにらみ、経営規模を大きくする狙いもある。 農地バンクが借りた農地のうち、大半はすでに集約が進んでいる大規模農家のものだった。 耕作放棄地など新たに集めた農地は、約 6,700 ヘクタール(45 都道府県合計)だった。 (asahi = 5-19-15)


謎の蒸気機関復刻へ 世界遺産・富岡製糸場で創業時使用

明治期の歴史的建築物などを展示する博物館明治村(愛知県犬山市)で 50 年近く展示されている 140 年前の珍しい蒸気機関が、レプリカでよみがえろうとしている。 世界文化遺産の富岡製糸場(群馬県富岡市)の創業時に使われたブリュナエンジン。 動力の仕組みなど謎も多いが、秋の復刻を目指して明治村と富岡市がタッグを組んでいる。

ブリュナエンジンは全長約 4 メートル、幅約 2.5 メートル。 蒸気機関が電力化されるまでの製糸場の動力源だった。 1968 年に製糸場から寄贈され、以来、50 年近く同村が修復しながら展示を続けてきた。 いま明治村の機械館にある。 「ブリュナエンジンはメーカーも年式も不明。 つくった動力をどうやって繰糸にいかしたかの資料も残っていない。」と、明治村の中野裕子主任学芸員は言う。 (鈴木毅、asahi = 5-17-15)


棚田守れ、ボランティアら 750 人が田植え 熊本・阿蘇

熊本県阿蘇市の「水掛(みずかけ)の棚田」で 16 日、ボランティアや地元住民ら約 750 人が参加して田植えに汗を流した。 棚田を守る取り組みで今年で 5 回目になる。 耕作放棄された田んぼを再生させ、地下水保全にもつなげる狙い。 参加者は約 1.5 ヘクタールの棚田に散らばり、1 時間半、機械を使わず人海戦術で苗を植えた。 アメンボウやゲンゴロウを見つけて、はしゃぐ子らの姿も。 あいにくの雨だったが、参加者は豊かな自然の中で貴重な農業体験をして笑顔だった。 (野中正治、asahi = 5-16-15)


ふるさと納税、勝ち組・負け組 町税超す収入、都心は …

実質 2 千円の自己負担の寄付で、自治体から返礼の米や肉などが届くことで注目が集まる「ふるさと納税」。 税収を上回る寄付を集め、新たな施策を打ち出す自治体がある一方で、減収に危機感を抱く大都市も。 今年から控除額が倍になってブームに拍車がかかる中、返礼品競争のあり方も問われている。

東京で「感謝祭」

十勝平野の北端、北海道上士幌(かみしほろ)町。 人口約 5 千人、牛の飼育数 3 万 4 千頭の酪農の町に 2014 年度、全国から約 5 万 5 千件、計約 10 億円のふるさと納税が寄せられた。 前年度の 4 倍で、町税収入 6.4 億円を上回った。 町企画財政課の関克身主幹は「想定外の勢いに驚いている」と言う。

人気の秘密は返礼品の和牛。 町内の牧場で飼育した最高品質の牛肉で、1 万円を寄付すると 300 グラムがもらえる。 空港や駅から遠い同町は元々、和牛など特産品のネット通販に力を入れてきた。 町は 11 年 8 月から通販サイトをふるさと納税に転用。 ほかの自治体が返礼の品ぞろえや受発注に四苦八苦する中、ネット通販で培った多彩な品ぞろえと到着の早さで人気を集めた。

ふるさと納税専門サイト「ふるさとチョイス」への掲載やネット決済もいち早く採り入れた。 関主幹は「スタートダッシュでファンを獲得できたのが成功の理由」と振り返る。 高齢化と人口減に悩む町は寄付者から使途を指定されなければ寄付金を少子化対策に当てている。 13 年度分で町立図書館に子供向けアニメなどの最新 DVD をそろえ、小中学生を送迎するスクールバスを新調。 14 年度分で 4 月に開園した町立認定こども園の幼稚園料金を今後 10 年無料にした。

今年 2 月、町は東京で寄付者約 1 千人を招き感謝祭を開いた。 町の観光案内を見ながら「夏休みに行こうか」と盛り上がる家族連れや、移住の紹介を熱心に聞く人もいた。 関主幹は「獲得したファンを離さないようにしたい」と話す。

東シナ海に面した長崎県平戸市。 昨年度にふるさと納税の拡大に取り組み、約 14 億 6 千万円を得た。 人口は 3 万人余、住民税額は約 11 億円だ。 ウチワエビや平戸牛など豊かな食に恵まれ、返礼品を選ぶ特典カタログには 83 商品をそろえる。 クレジット決済も導入。 昨年 11 月に開いた専用サイトでは、寄付に応じて付与するポイント残高や商品の発送状況を寄付者が確認できる。 特典の商品価格は寄付額の半分ほど。 商品の高額化で目を引く他の自治体とは一線を画す。 「高額商品は、まちづくり財源を確保するという制度の趣旨とあわない」との考えからだ。

市は今年度、寄付金約 3 億 2 千万円をコミュニティーバスの維持や小中学生の医療費助成など 20 事業に充てる。 今後は寄付者との交流も進めたいという。 担当する市企画財政課の黒瀬啓介・主任主事は「汗をかいた自治体に光が当たる制度。 小さくとも生き残れることが実感できた。 地方創生は自治体間のサバイバルだ。」と話す。

寄付者増え、財源流出

昼間人口 90 万人のオフィス街と高級住宅地を抱える東京都港区。 11 年度に 286 人だった区民の寄付者は 13 年度に 657 人にのぼり、都内の区市町村最多の 2 億 9 千万円を寄付。 区は 1 億円の税収を失った。 14 年度の寄付者はさらに増えて 1,057 人、寄付額は 5 億 3 千万円で、1 億 6 千万円の減収を見込む。

「カタログ競争の状況は当初の趣旨から逸脱している。 最大の被害者の港区はどう考えるのか。」 3 月の区議会予算特別委員会。 東日本大震災後、区がふるさと納税を知らせるチラシを納税通知書に同封した経緯に触れながら、区議の一人が区側に詰め寄った。 「被災自治体を応援する精神は変わらないが、やみくもに他自治体への寄付を奨励しているわけではない」と、区の担当者は答えた。

制度が拡充される中、担当者は「今後、減収は 5 億 - 6 億円になるだろう。無視できる額ではない」と危機感を抱く。 15 年度の一般会計は 1,141 億円だが、5 億円は小学校の給食に区が支出する額に匹敵する。 (伊藤唯行、上田輔、歌野清一郎、asahi = 5-11-15)