イラン、ガソリン価格が 3 倍に 全土で反政府デモ

イランで 15 日夜以降、ガソリン価格の値上げに抗議する反政府デモが全土で続いている。 政府が 15 日にガソリン価格を最大約 3 倍に値上げしたためだ。 イランメディアによると、デモ参加者らは反政府のスローガンを叫び、高速道路を封鎖するなどしており、少なくとも 1 人が死亡した。 デモはイラン全 31 州のうち 20 州以上で起きた。 首都テヘランでは市民が道路を封鎖するなどした。 他の都市では暴徒化したデモ隊の一部が、パトカーや銀行などに火をつけたとの情報もある。 南東部ケルマン州シルジャンではデモに参加した市民 1 人が死亡したが、治安部隊による銃撃を受けたのかどうかなどは分かっていない。

政府は、全土で携帯電話によるインターネットの接続を大幅に制限するなどして対応にあたっている模様だが、事態を収拾できるかは不明だ。 デモの引き金になったガソリン価格は、15 日未明に政府が値上げを発表した。 産油国のイランでは、政府が補助金を出してガソリン価格を統制しており、世界有数の安さに抑えられている。 これまでは 1 リットル 1 万リアル(実勢レートで約 9 円)だったが、15 日以降は 1 カ月間に 60 リットルまでは 1 万 5 千リアル(約 14 円)に、それ以上を購入した場合は 3 万リアル(約 28 円)に値上がりした。

2015 年のイラン核合意から昨年に離脱した米国による制裁の影響で、イランの経済は低迷。 物価高や通貨の下落が起きたため、市民生活を直撃している。 今回の値上げについて政府は「値上げ分の増収は、中間層や貧困層への補助金に回される」と説明しているが、市民からは、政府の経済政策の失敗とエリート層の腐敗が経済的苦境を招いているとの批判が強く、ガソリン価格の値上げが火に油を注ぐ結果となった。

ガソリン価格が上昇すると輸送費が増えるため、多くの商品が値上がりする。 市民はガソリン価格の値上げには神経をとがらせており、07 年には暴動が起きた。 17 年末にも全土で物価高に端を発した反政府デモが発生。治安部隊との衝突などで 25 人が死亡した。 (テヘラン = 杉崎慎弥、asahi = 11-17-19)


桁違いの寄付集めたノートルダム 首里城再建への教訓は

先月末に那覇市で発生した首里城の火災。 琉球王国時代の建物を復元したもので、沖縄を象徴する建物だっただけに、日本中に大きな衝撃を与えました。 火災による世界的な文化財の被害で思い出すのは、今年 4 月のパリのノートルダム大聖堂です。 再建に向けてどんな議論があり、どんな取り組みが進んでいるのでしょうか。

まず、注目したいのは再建に向けた費用の問題です。 首里城では那覇市がふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を利用して寄付を呼びかけたところ、3 日現在で目標金額の 1 億円を突破して話題になりました。 しかし、ノートルダム大聖堂では桁違いの募金が集まりました。 火災の発生直後、高級ブランドを多数抱える仏モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン (LVMH) などが 2 億ユーロ(約 250 億円)の寄付を表明しました。 また、石油企業や保険会社などフランスの大企業が巨額の寄付を続々と表明。 米アップルのティム・クック最高経営責任者 (CEO) もツイッターで「寄付する」と書き込むなど、国外からの支援表明も相次ぎました。

火災から半年後の 10 月、フランク・リステール仏文化相は世界各国の 35 万人が協力し、約 1 億 400 万ユーロ(約 125 億円)の寄付があったことを明らかにしました。 巨額の寄付が集まった背景には、世界で約 12 億人といわれるカトリック教徒の広がりがあるのはいうまでもありません。

とはいえ、再建はまだ大聖堂が崩れないようにする補強工事の段階です。 たとえば、火災当時、改修工事のために取り付けられていた足場は、火災の熱で溶けて大聖堂にくっついたままです。 ようやく来年春にそれを取り除く作業が始まる予定ですが、こうした補強工事だけでも約 8,500 万ユーロ(約 102 億円)かかると見積もられています。 本当の意味での「再建」工事が始まるのは 21 年からになりそうで、修復全体に必要な費用はまだ分かりません。

資金の問題以外に、文化財を復元する上ではどんな課題があるのでしょうか? 民間シンクタンク・世界遺産総合研究所(広島市)の古田陽久(はるひさ)所長によると、「いかに真正性を大事にするかという点では日本も海外も同じです」といいます。 「真正性」とは聞き慣れない言葉ですが、1964 年に建築家らの国際会議でつくられた「ベネチア憲章」に記されている言葉だそうです。 臆測に基づく復元を禁じ、建てられた当時の意匠(デザイン)、素材や技術などを尊重する考え方です。

「真正性」については、ノートルダム大聖堂のケースでも議論になりました。 フランスのフィリップ首相は 1860 年に設置された尖塔(高さ 98 メートル)の焼失について、国際コンペを開いて新たな設計で作り直す考えを表明しました。 これについて、地元紙では「長い歴史を持った建築に変更を加えるべきではない」といった主張の一方、「大聖堂は修復を繰り返すもので、それ(変化)も歴史の一部だ」とする専門家の意見などが紹介され、現在も決まっていません。

古田さんは完全に元々の素材や技法を用いるのは難しいとも指摘します。 パリでは再建の先例としてパリ北東部ランスにあるノートルダム大聖堂が挙げられます。 第 1 次大戦時にドイツ軍の砲撃で木造屋根が全焼しましたが、再建するにあたり、耐火性などを高めるため、屋根裏部分は木材ではなくコンクリートが使われました。

首里城も沖縄戦の際に焼失し、1992 年に正殿や北殿、南殿・番所などの修復が完成しました。 ただ、元々の素材をそろえることはできませんでした。 強風や赤瓦屋根の重さに耐えるために 100 本以上の丈夫な材木が必要でしたが、国内で確保できず、台湾のヒノキを用いることになったのです。 古田さんは「今回もそれだけの木材や沖縄特有の赤瓦をそろえられるのかという問題があります。 また、腐食を防ぎ独特の風合いを生み出すためには漆塗りが欠かせませんが、逆に水がしみこみにくい漆によって燃焼速度を早めたとの指摘もあり、様々な観点から議論が必要」と言います。

世界的な文化財の修復では、国際協力の実例も増えています。 ウガンダの首都カンパラ郊外にあった、かやぶき小屋のような外観を持つ世界遺産「カスビのブガンダ王国歴代王の墓」は 2010 年に火災で全焼しました。 その再建に向け、かやぶきの文化を持つ日本が再建に向け技術協力したそうです。 古田さんは「首里城もノートルダム大聖堂も、その国の人たちにとっての心のシンボルであり、世界の財産という点では共通しています。 最もふさわしい再建のあり方について国際的な議論や協力のあり方があってもいいのではないでしょうか。」 (清水大輔、asahi = 11-9-19)


「フィアット」と「プジョー」経営統合で合意 米紙報道

【フランクフルト = 深尾幸生】 欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ (FCA) と「プジョー」を傘下に持つ仏グループ PSA が経営統合で合意したことが 30 日わかった。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ) が関係者の話として報じた。 31 日にも両社が発表すると見られる。 合計世界販売台数は約 870 万台となり、米ゼネラル・モーターズ (GM) を上回る世界 4 位の自動車連合が生まれる。

FCAは「フィアット」や「ジープ」、PSA は「プジョー」や「シトロエン」、「オペル」などのブランドを抱える。 2018 年の世界販売台数はそれぞれ 8 位と 9 位だった。 統合で首位の独フォルクスワーゲン (VW) や 3 位のトヨタ自動車に迫る。 規模を拡大し、電動化や自動運転などの次世代技術開発に向けた投資を効率化する。 両社はそれぞれ 30 日に取締役会を開いて経営統合を議論したもよう。 WSJ によると、統合会社の会長に FCA のジョン・エルカン会長、最高経営責任者 (CEO) に PSA のカルロス・タバレス CEO がそれぞれ就く。 新会社の取締役会は 11 人とし、PSA 側が 6 人、FCA 側が 5 人を選ぶという。

両社は 30 日、「世界をリードするモビリティーグループの形成を目指して話し合っている」と発表していた。 FCA は 5 月に仏ルノーに経営統合を提案したが、ルノーの大株主である仏政府の同意を得られず、6 月に白紙に戻っていた。 (nikkei = 10-31-19)


世界の富裕層の上位 10%、中国人が 1 億人で最多

ロンドン : スイスの金融大手クレディ・スイスが毎年、富裕層の動向をまとめている報告書の最新版によると、保有資産の額が世界の上位 10% に入る人の数で中国が米国を抜き、初めて世界トップに立ったことが分かった。 報告書によると、保有資産が上位 10% に入る中国人は 1 億人と、米国人の 9,900 万人を上回っている。 一方で 100 万ドル(約 1 億円)以上の資産を持つ「百万長者」の数は、米国が 1,860 万人と世界全体の 40% を占め、中国は 440 万人にとどまった。 成人 1 人当たりの資産は米国が平均 43 万 2,365 ドル、中国は 5 万 8,544 ドルだった。

世界全体の富の分布をみると、下から 50% の層が保有する額は世界の総資産の 1% 未満。 上位 10% の人が総資産の 82%、上位 1% が半分近くを保有している。 ただし、上位 10% を除いた人口が保有する資産は世界全体の 18% と、2000 年の 11% から増加していることが分かった。 上位 1% が独占する資産の合計も 16 年以降は減少傾向にあり、富の集中はピークを超えた可能性があるという。 (CNN = 10-22-19)


イーレックス、海外発電事業に参入 カンボジアで水力

日本の海外プロジェクト

記事コピー (10-22-19)


米中合作アニメに「9 段線」 ベトナムで上映打ち切り

米中合作のアニメ映画「アボミナブル(原題)」のベトナムでの上映が 13 日、開始から 10 日で中止となった。 報道によると、南シナ海で中国が独自に管轄権を主張する「9 段線」を示すシーンがあると、観客から指摘があったためという。 ベトナムと中国は南シナ海の領有権を巡って対立している。 アボミナブルは米ドリームワークス・アニメーションと中国のパール・スタジオが共同制作し、少女とイエティ(雪男)の友情を描いた作品。 ベトナム国内で上映していた大手映画館は、予告編などの宣伝も取りやめた。

南シナ海問題をめぐっては、中国船がベトナムの排他的経済水域 (EEZ) 内で石油探査活動をしたとして、ベトナムのファム・ビン・ミン外相が 7 月に強く抗議するなど、両国の間で緊張状態が続いている。 2018 年 3 月には、中国のアクション映画「紅海行動 Operation Red Sea」に、中国軍が南シナ海で外国籍とみられる船に「領海から出て行きなさい」と呼びかけるシーンがあるとして、ベトナムの観客から問題視する声が上がり、上映開始の 8 日後に打ち切りになった。 アボミナブルの上映については、同じく南シナ海で領有権を主張するフィリピンでも話題になっており、同国のパネロ大統領報道官は 15 日、外務省と映画の審査格付けをする委員会に判断をゆだねると述べた。 (ハノイ = 鈴木暁子、asahi = 10-17-19)

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米の歌姫、ズボンなしのアオザイ姿 ベトナムで批判の的

今年のグラミー賞で年間最優秀アルバム賞など 4 部門で受賞し、日本でも人気の米国人歌手ケイシー・マスグレイヴスさんが、ベトナムの民族衣装アオザイの「あり得ない」着こなしをしたとして、ベトナムで批判の的になっている。 アオザイは体にフィットする上着と、ゆったりとした長ズボンからなる衣装。 だが、マスグレイヴスさんは 10 日夜、テキサス州でのコンサートで黄色いアオザイの上着だけを身につけ、足をあらわにして出演。 自身のインスタグラムでも、上着だけを身につけてポーズをとった写真を公開した。

これにベトナムの人々は大反発。 マスグレイヴスさんのインスタグラムやフェイスブックにはベトナム人とみられる名前の投稿者から、「ベトナムの文化と国民への侮辱だ」、「下品」、「ベトナムはあなたを嫌います」、「誰かズボンをはくよう言ってあげて」などのコメントが相次いでいる。 アジアの伝統衣装をめぐっては 6 月、米国の女性タレント、キム・カーダシアンさんが「キモノ」のブランド名をつけた矯正下着を発表し、「KIMONO」を矯正下着として商標登録する出願もしていたことが判明。 「着物は日本の伝統的な衣装だ」といった批判を受け、ブランド名を変更する事態になった。 (ハノイ = 鈴木暁子、asahi = 10-17-19)


甘い飲み物の広告全面禁止 糖尿病 11% のシンガポール

シンガポール政府は、砂糖の含有量が一定量を超える飲料水の広告を全面的に禁じる方針を発表した。 同国が「健康危機」と位置づける糖尿病対策の一環。 具体的な実施方針は来年に打ち出すといい、実現すれば世界初の取り組みになる。 缶やペットボトル、紙パックなどに入ったソーダやアイスティーなどの飲料や、インスタントコーヒーといった粉末などが対象。 砂糖の含有量が一定量以上の飲料にはパッケージに「不健康」などと記すこともメーカーに求める。 10 日、新方針を発表したエドウィン・トン上級国務相は「消費者に知識を与え、製造者には砂糖の含有量を減らすよう促すためのもの」と説明した。

保健省の調べによると、18 - 69 歳の国民のうち、11% が糖尿病を抱えており、先進国の中では米国に次ぐ最高水準だ。 中でも、少数派のインド系とマレー系の住民の間で特に深刻な問題となっている。 リー・シェンロン首相は 2 年前、生活習慣の変化によって不健康な食生活が広がっているとして、「糖尿病との戦い」を宣言。 増加の一因には、甘い飲み物の消費があるとみて、抑制策を検討してきた。 これまで、砂糖の含有量の多い飲料・粉末の禁止や、メーカー側に「砂糖税」を課すことも議論に上がったが、世論の反対が強く、実施は見送られてきた。

広告の全面禁止や「不健康」表記の導入は世論の反対が比較的少なかったことなどから、先に開始することに決定したという。 新方針が発表された翌日の 11 日、国内のスーパーでは、「一番砂糖量の少ないジュース」、「低糖 勝ち組のライフスタイルを手に入れよう」などと、砂糖量を通常よりカットした飲料をアピールする広告が大きく掲げられていた。 ビジネス街の屋台でソーダ飲料を飲みつつ、カレーを食べていた男性 (47) は、「周りに糖尿病の人はとても多い。 甘い飲み物を減らそうという取り組みは正しいと思う。」と話した。 (シンガポール = 守真弓、asahi = 10-12-19)


ディーン & デルーカ、発祥の地で危機 閉店続々、本店も

米高級食品店「ディーン & デルーカ (D & D)」が発祥の地ニューヨークなどで大量閉店し、米国での存続が危ぶまれている。 輸入食材や高級総菜を扱う大型スーパーの攻勢や、食料品のネット通販の広がりで競争が激化。 給料の遅配や仕入れ先への代金未払いが常態化するなど、経営が行き詰まっていた。 D & D は米国に約 10 カ所残っていた店舗を、7 月以降に相次ぎ閉店した。 本拠のニューヨーク・マンハッタンでも続々と店が閉まり、最後まで開いていたソーホー地区の本店も 7 日までに営業をやめた。

「残念ながら一時的に店を閉じます。 近く再開します。 30 年以上、地域の一員だったことは誇りです。 ご支援ありがとうございました。」 ドアにはそんな貼り紙があった。 店内には、商品が空っぽの陳列棚などが営業時のまま残っていた。 1977 年にソーホーで創業した D & D は、当時まだ珍しかった輸入食材や高級総菜を扱い、「食のセレクトショップ」の市場を切り開いた。 日本では 2003 年、東京・丸の内に初出店。 ロゴをプリントしたトートバッグが若い女性の間で流行した。

ただ、米国では高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」など、オーガニック食材やグルメ食品を幅広く扱い、店内で飲食もできるチェーン店がシェアを拡大。 珍しい食材を手軽に買えるネット販売の普及もあり、顧客を奪われていた。 D & D は 14 年、タイの不動産開発大手ペース・ディベロップメントに買収された。 しかし、仕入れ代金の未払いなどをめぐるいざこざが頻発し、ブランド力が低下。 ペース社は「規模を適正化して損失を抑える」などとして、買収時に米国内に 40 以上あった店舗の縮小を進めてきた。

消費者ビジネスに詳しい米コンサルタントのバート・フリッキンジャー氏は、D & D のブランドが通じにくい地方都市などへの無理な出店が重荷になったと指摘。 「食品小売業界では、この 50 年間で最悪の経営の失敗だ。 米国を象徴するブランドだっただけに、まさに悲劇だ。」と語る。 日本の D & D は、飲食・小売り中堅のウェルカム(東京・渋谷)が、カフェを含め計 46 店(7 月時点)を展開している。 同社は日本での営業権や商標権を 16 年に買い取っており、仮に米国事業が破綻しても「日本での運営には一切影響がない」としている。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 10-10-19)


世界競争力報告、日本 6 位に後退 シンガポール 1 位に

【ロンドン = 佐竹実】 世界経済フォーラム (WEF) は 9 日、2019 年版の「世界競争力報告」を発表した。 シンガポールが初めて 1 位となり、昨年首位だった米国は 2 位に後退した。 日本は 6 位と前年より 1 つ順位を下げ、香港(3 位)に抜かれた。 WEF は「人的資源や制度改革などに投資した国は生産性を向上させた」と分析した。 141 カ国・地域を対象に「革新力」、「労働市場」など 12 項目を 100 点満点評価した。 日本は 82.3 点と、前年より 0.2 ポイント低かった。 長寿を背景に「健康」は 100 点だったが、硬直的な労働市場や、女性の労働参加が不十分である点などに改善の余地が大きいとした。

1 位のシンガポールは「金融システム」「マクロ経済の安定性」などが高評価で、84.8 点だった。 WEF は米中の貿易摩擦に伴う生産移転などを念頭に「シンガポールやベトナムなど貿易摩擦の恩恵を受けた国もある」としている。 3 位の香港は金融やマクロ経済が評価され、83.1 点と前年より 4 つ順位を上げたが、今後は長引くデモが影響する可能性がある。 韓国は 13 位、中国は 28 位だった。 欧州連合 (EU) 離脱で揺れる英国は 1 つ順位を下げて 9 位だった。

WEF ニューエコノミー・アンド・ソサエティーセンターのサーディア・ザヒディ氏は「政府や中央銀行が金融政策を利用して経済成長を刺激する能力が衰えている。 生産性の向上や所得格差の縮小を実現する競争力強化政策が重要だ。」としている。 (nikkei = 10-9-19)


韓国でアフリカ豚コレラ拡大 軍事境界線越えて北から?

韓国の養豚場で、アフリカ豚コレラの発生が拡大している。 感染ルートは不明だったが、10 月に入って北朝鮮との境界付近で野生イノシシの死骸からウイルスが検出され、「北朝鮮説」が急浮上。 韓国軍が南北軍事境界線付近で防疫活動に乗り出す騒ぎになっている。 アフリカ豚コレラは、日本国内で現在確認されている豚コレラより毒性が強く、家畜に感染すれば致死率が極めて高い。 ワクチンもなく、水際の防止が重要とされている。 韓国政府によると、9 月 16 日に京畿道坡州市の養豚場から「母豚 5 頭が死んだ」と届け出があり、検査したところアフリカ豚コレラの陽性反応が出た。 以後、10 月 3 日までにソウル近郊の金浦市や仁川市を含めて計 13 カ所の養豚場で発生が確認された。

これまでの発生地域はいずれも、韓国北部。北朝鮮が今年 5 月、国際機関にアフリカ豚コレラの発生を報告していたことから、「北朝鮮からイノシシを通じて感染が広がった」という可能性が指摘されていたが、韓国軍は「完璧な鉄柵と警戒監視体制を備えており、韓国側に移動するのは不可能だ(鄭景斗国防相)」と説明していた。 ところが、2 日になって北朝鮮と隔てる軍事境界線から約 600 メートルしか離れていない非武装地帯 (DMZ) で野生イノシシの死骸が見つかり、翌日にはアフリカ豚コレラのウイルスが検出された。 韓国軍は「台風や集中豪雨などで鉄柵が倒れる場合もある」と説明を変え、軍用ヘリを使って軍事境界線周辺に薬剤をまくなどの防疫作戦を展開すると明らかにした。

北朝鮮内のアフリカ豚コレラの発生実態は明らかになっていない。 ただ、韓国の情報機関・国家情報院は 9 月 24 日の国会情報委員会で「一部地域では豚が全滅した」と報告した。 韓国内でも拡散を防ぐため、政府が決めた殺処分の対象は 20 万頭以上に達する見通しで、韓国国内の養豚の 1.6% に相当する。 豚肉はサムギョプサルなど韓国料理に欠かせないが、豚肉の卸売価格は上昇傾向にあり、豚肉を扱う業者は「さらに価格が上がれば、食堂経営者も市民も豚肉を買えなくなる(ソウルの畜産市場で働く 60 歳の女性)」と悲鳴を上げている。 (ソウル = 武田肇、鈴木拓也、asahi = 10-6-19)

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アフリカ豚コレラ、東南アジアで猛威 米穀物輸出にも打撃

中国との貿易戦争にあえぐ米国産穀物の輸出業者にとって、昨年は東南アジアの畜産農家による飼料用の購入が命綱となった。 ところが今、アフリカ豚コレラが東南アジアを襲い、米国産穀物を飼料として育つ豚だけでなく、米国からの穀物輸出にも致命的な影響が及ぶ恐れが出ている。 ベトナム、ミャンマー、フィリピンなどの国々に対する米国産穀物の輸出は昨年 50% 近くも増え、過去最大の 1,230 万トンとなった。 中国向け輸出が 4 分の 1 程度に急減した打撃は、こうした動きによって緩和されている。

しかし、アフリカ豚コレラの影響で失われる東南アジア向け輸出は甚大な規模となりそうで、米中貿易協議が妥結しない限り、米国の畜産農家は在庫を抱えざるを得なくなりそうだ。 フィリピン豚肉生産連盟のエドウィン・チェン代表は「(フィリピンでは)豚の生産が落ち込み、他の国々同様に流通飼料の需要も落ち込むだろう」と話す。 フィリピンは世界第 4 位の大豆かす輸入国だが、アフリカ豚コレラの感染拡大以来、既に飼料用穀物の需要が鈍り始めている。

アフリカ豚コレラはヒトには感染しないが、豚を死に追いやる伝染病で、ワクチンも存在しない。 世界動物保健機関によると、1 年余り前にアジア初の事例として中国で確認されて以来、今では 50 カ国以上に広がった。 この中には世界の豚肉生産の 75% を占める国々が含まれている。

シェア獲得に尽力

東南アジアは過去 5 年間にトウモロコシと大豆の輸入が 25% 近く拡大し、両穀物の輸入市場として世界第 3 位の規模に発展した。 このため、同地域での需要急減は輸出国にとってとりわけ警戒感を呼び覚ます。 市場の急拡大を背景に競争も激しくなり、輸出業者の団体はシェア獲得のため定期的に代表団を送り込んでいる。 そうした団体のひとつである米大豆輸出評議会 (USSEC) は、中国向け輸出の減少分を少なくとも一部相殺するために「必要な手段を尽くす」戦略を打ち立て、東南アジア全体に米国産穀物を売り込んでいる。

USSEC の北アジア地域ディレクター、ロザリンド・リーク氏は「USSEC にとって市場多角化は、米中貿易の問題が起こる何年も前から最重要課題だ」と話す。 努力が実を結び、2018 年には米国産穀物・大豆の東南アジア向け輸出は過去最大の伸び率となり、初めて中国向けを上回った。 苦心して確保したこの伸びが今、アフリカ豚コレラによって反転する恐れが出ている。 豚の数が減れば飼料用穀物の輸入も減る。 商社筋 2 人によると、今年はベトナムだけでトウモロコシと大豆かすの購入が各々約 100 万トン減る見通しだ。

世界第 6 位の豚肉生産国であるベトナムは、アフリカ豚コレラの感染拡大を受けて既に約 470 万頭を殺処分した。 2 月に最初の感染が確認されて以来、7 月末までに同国の豚は 18.5% 減って 2,220 万頭となっている。 世界第 5 位の大豆かす輸入国であるタイは今月、アフリカ豚コレラが確認されたミャンマー国境に近い省で豚 2 頭が死に、原因の説明はないものの、感染拡大を恐れて殺処分を開始した。 業界専門家は「ベトナム、フィリピン、韓国へと感染は拡大している。 米国の飼料用穀物農家とアジアの畜産農家にとって悪いニュースが続く。」と語った。 (Naveen Thukral & Gavin Maguire、NewsWeek = 10-4-19)


インドネシア高速鉄道合意 日本が支援 総事業費 4,600 億円

日本が支援しているインドネシア・ジャワ島の首都ジャカルタと第 2 の都市スラバヤを結ぶ既存鉄道の高速化計画に関し、両国政府が建設方式で合意し、ジャカルタで 24 日、政府間文書に署名した。 事業化に向けた調査を来年末まで行う予定。 インドネシア側は総事業費を約 60 兆ルピア(約 4,600 億円)と見込み、円借款を含めた支援枠組みを協議する。

ジャカルタ - スラバヤ間の既存鉄道(約 720 キロ)の列車の速度を最高時速 160 キロに引き上げ、所要時間を現在の半分の 5 時間半に短縮する。 高速道の混雑緩和や輸送力増強を目的に、インドネシアは 2016 年に鉄道高速化への協力を日本に要請していた。

日本が支援して今年 3 月に開業したインドネシア初の地下鉄を含む都市高速鉄道 (MRT) は市民に好評で、インドネシア政府は高く評価。 日本は 15 年にジャカルタと高原都市バンドンを結ぶ高速鉄道事業の受注競争で中国に敗れた苦い経験があり、今回の事業でさらに巻き返しを図った形だ。 日本政府関係者は「MRT に続く、協力の象徴的な案件となる」と意気込んでいる。 計画では、ジャカルタから中ジャワ州の州都スマランまでの約 440 キロに、特急用の線路を追加。スマランからスラバヤまでの約 280 キロは既存線路を改良する方針。 (ジャカルタ・kyodo = 9-26-19)

前 報 (3-31-19)


三菱商事、345 億円損失見込み 海外子会社で不正取引

三菱商事は 20 日、シンガポールの連結子会社「ペトロダイヤモンド シンガポール (PDS)」で 3 億 2 千万ドル(345 億円相当)の損失が出る見込みだと発表した。 現地の 30 代男性の元社員が社内規定に違反した原油デリバティブ取引をしていたという。 発表によると、元社員は 1 月から、他の取引と偽って問題のデリバティブ取引を繰り返した。 原油価格が 7 月以降に下落して損失が広がったが、社内で認識できないよう操作していたという。

元社員が 8 月中旬から病欠し、担当の取引を精査したところ判明した。 元社員に金銭が還流した形跡は見つかっていない。 直接事情を聞けていないため、動機は不明という。 PDS は元社員を 9 月 18 日付で解雇し、翌 19 日付で地元シンガポールの警察に刑事告訴した。 問題の取引は終えて損失は確定したが、取引費用などを含めた最終額と業績への見通しを精査している。 デリバティブ取引をするグループの他の部署や会社では同様のことはなかったという。 (末崎毅、asahi = 9-20-19)


サウジ石油攻撃で生産停止 日量 570 万バレル

サウジアラビア東部の国営石油会社サウジアラムコの石油施設 2 カ所で 14 日、無人機による攻撃があり、サウジのアブドルアジズ・エネルギー相はサウジの石油生産の一部が停止したと発表した。 停止分は日量約 570 万バレルに及び、サウジの日量生産能力の半分に当たるという。 イエメンの親イラン武装組織フーシ派が犯行声明を出した。

570 万バレルは世界の石油日量生産の 5% ほどに相当する。 国際エネルギー機関 (IEA) は「十分な量の商業在庫がある」として当面の原油供給に問題がないとの見解を明らかにした。 ただ生産再開が遅れれば、原油市場に影響が出る可能性もある。 ポンペオ米国務長官は 14 日、ツイッターで攻撃はイランの仕業だと名指しした上で「世界のエネルギー供給に対する前代未聞の攻撃を仕掛けた」と非難した。 (kyodo = 9-15-19)


米、味付き電子たばこの販売禁止へ 若者の健康被害懸念

米トランプ政権は 11 日、ミントやメンソールなどの味付き「電子たばこ」の販売を禁止する方針を明らかにした。 若者の間で利用が急増し、愛用者が死亡するなど健康被害の報告が相次いでいた。 州や都市レベルでも規制の動きが出ており、日本を含む世界に利用者が広がる電子たばこの動向に影響するとみられる。 禁止される電子たばこは、日本で広まっている加熱式たばことは違い、電気式の吸入器にニコチンや香料を含む溶液を入れて、加熱して蒸気を吸い込む仕組み。 日本ではニコチンを含む製品は規制されているが、個人輸入されている。

米国では 18 歳未満への販売は禁じられているが、メーカー各社はミントやメンソールのほか、フルーツやコーヒーなど様々な風味をつけた製品を販売。 コンビニなどで手軽に買え、USB メモリーやペンに似た吸入器のおしゃれさもあり、中高生をひきつけている。 アザール厚生長官は 11 日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と面会し、米食品医薬品局 (FDA) がガイドラインを作成し、たばこ味を除くすべての味付き製品の販売を禁止する方針を明らかにした。 アザール氏によると、米国で 800 万人の成人利用者に対し、500 万人の子どもの利用者がいるという。 サンフランシスコやミシガン州が同様の販売規制に踏み切った。

電子たばこは、紙たばこに含まれるタールなどの有害な化学物質やにおいが少なく、禁煙や減煙を助けるとされているが、長期的な健康影響は不明だ。 米国では今夏以降 500 件近い健康被害が報告され、電子たばこに関連する肺疾患で少なくとも 6 人が死亡したという。 原因が器具にあるのか、成分にあるのかは特定されていない。 研究者は、依存性のあるニコチンが子どもの脳の発達に影響する恐れを懸念している。 同年代の息子バロンくん (13) を持つトランプ氏は 11 日、メラニア夫人が特に心配していると明かし、「電子たばこは巨大ビジネスになったが、人々を病気にしてはいけないし、若者に影響を与えることはできない」と話した。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 9-12-19)


虚偽の指示で約 40 億円詐欺被害 トヨタ紡織欧州法人

トヨタ自動車系部品メーカー大手のトヨタ紡織は 6 日、欧州の子会社が、悪意ある第三者からの虚偽の指示に基づいて、資金を流出させる被害にあったと発表した。 損失額は最大約 40 億円に達する見込み。 同社は詐欺事件とみて、現地の捜査機関に被害届を出した。

被害にあったのは、欧州・アフリカ地域を統括する 100% 子会社のトヨタ紡織ヨーロッパ(本社・ベルギー)。 8 月 14 日に虚偽の指示を受け、その後資金を流出させた。 まもなく社内で被害に気づいたという。 トヨタ紡織は「ご迷惑とご心配をかけ、深くおわび申し上げる。 捜査にかかわるため詳細の開示は差し控えたい。」としている。 今後、公表済みの 2020 年 3 月期の業績予想を修正する可能性もあるという。 (asahi = 9-10-19)


世界最悪の渋滞、挑む日本式 意外なところにハードルが

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関電、ラオスの水力発電所送電開始 27 年間売電後譲渡

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世界の観光競争力、日本は 4 位 首位は情熱のあの国

世界経済フォーラム(WEF、本部スイス・ジュネーブ)は 4 日、「旅行・観光競争力報告書」の最新版を発表した。 日本は 140 カ国・地域中 4 位で、1 位スペイン、2 位フランス、3 位ドイツとともに前回の 2017 年と同順位だった。 報告書は世界的に観光需要は増していると指摘し、観光地への負担に警鐘を鳴らした。

報告書は、政策、インフラ、環境、自然・文化資源の 4 分野計 14 項目で、観光地としての魅力を指数化して評価する。 日本は「国際的な開放度」、「陸上・港湾のインフラ」、「文化資源・ビジネス旅行」が高く評価され、9 位から 4 位に順位を上げた前回に続き、7 位のオーストラリアを上回ってアジア太平洋地域で首位だった。 総合で首位を維持したスペインは観光資源の豊富さと旅行者へのサービスが評価された。 米国が英国を抜いて 5 位となったものの、上位 10 位に変動はなかった。

WEF は世界の指導者や経済人が集う「ダボス会議」の主催で知られる。 今回の報告書は、旅行への障壁が減って観光産業が成長し、多くの国が指標を伸ばしたと指摘。 一方で、急増する観光客の受け入れが地域の負担になるなど「オーバーツーリズム」になる危険性に警鐘を鳴らしている。 (ウィーン = 吉武祐、asahi = 9-4-19)


「京都? いいえ、チェンマイどす」タイの観光 PR に芸妓

祇園甲部の芸妓(げいこ)、紗月(さつき)さんを起用した観光 PR 用のポスターをタイの観光庁がつくった。 日本の古都、京都を象徴する芸妓の人気にあやかり、タイの古都の魅力を日本で広く知ってもらう狙いだ。 ポスターは昨年 10 月、タイの古都として知られるチェンマイとタイ北部のランプーン県で撮影された。 紗月さんがゾウとふれ合うパターンなど全 6 種類で、100 枚ずつ作製。 6 月に完成し、京都府内の旅行会社などに配られた。

紗月さんの起用は、7 月までタイ国政府観光庁大阪事務所(大阪市西区)の所長だったサラッワディー・アサーサパキットさんの発案だ。 同氏はチェンマイの出身。 同じ古都同士で京都に親近感を持ち、京都の文化を象徴する芸舞妓にタイの魅力を PR してもらうことを思いついたという。 同事務所は「国の違いを感じさせず、紗月さんの写真は古都が持つ独特の風情を感じさせる」と話す。

一方の紗月さんも「合成? って言われるぐらい、よく撮れていた」とポスターの出来栄えに満足げ。 「日本の方にタイに行きたいと思ってもらうのはもちろん、タイの方にも日本文化を知ってもらうきっかけになれば」と話している。 (佐藤秀男、asahi = 9-3-19)


米 J & J に 600 億円の制裁金命令 過剰摂取を助長

医療用鎮痛剤オピオイドなどの過剰摂取を助長したとして、米中西部オクラホマ州の地区裁判所は 26 日、米大手製薬企業ジョンソン・エンド・ジョンソン (J & J) に対し、5 億 7,200 万ドル(約 600 億円)の制裁金支払いを命じた。 米国では薬物の過剰摂取が社会問題になっている。 自治体などが製薬会社を相手取って同様の訴訟を起こしているが、判決が出たのは初めて。 AP 通信によると、J & J 側は州最高裁に上告するとしている。

同州では 2007 年からの 10 年間で薬物の過剰摂取で 4,653 人が死亡。 州司法長官は、製薬会社が鎮痛剤の過大な効果をうたう一方、依存症になるリスクを正しく伝えず、積極的な販売戦略をとったと指摘。 J & J とその子会社が中心だったと訴え、過剰摂取問題の対策費として 20 - 30 年間に 126 億 - 175 億ドル(約 1 兆 3 千億 - 1 兆 8 千億円)が必要としていた。 サド・バルクマン判事は「オピオイド危機は州を破壊した。 すぐに抑えなければならない。」と述べ、製薬会社の責任を認めたが、制裁金は州側が求めた対策費の 1 年分だった。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 8-27-19)


「バニラバブル」銀より高い アフリカ異変、日本も影響

庶民の味として親しまれてきたタコやバニラが高級品になりつつある。 異変が起きた理由が、日本から遠く離れたアフリカにあった。 アフリカ大陸の東方に浮かぶ島国マダガスカル。 世界のバニラ豆の約 8 割を生産し、日本は 9 割強をここからの輸入に頼っている。 首都アンタナナリボから北東に約 500 キロ離れたサバ地方は温暖で適度な湿度が保たれ、特に生産に適している。 アンタラハという町から小型のボートで 1 時間揺られた先に、広大なバニラ農園が見えてきた。 バニラ農家のファーリン・ジュディさん (26) は「土壌によって手入れの仕方を変えるなどして、品質を保つよう努めている」と語った。

この地で異変が起きたのは 5 年ほど前。 天然のバニラ人気が強まった欧米に加え、中国などでケーキやアイスクリームに使うバニラの需要が増え、取り扱う業者が急増。 投機的な買い上げの動きもあり、2013 年に 1 キロ当たり約 5 千円だった取引価格は、急上昇した。 さらに追い打ちをかけたのが、自然災害だ。 17 年にサイクロンの被害を受けて一時、約 6 万円まで高騰。 18 年も価格は高止まりし、1 キロあたりの取引価格は同じ年の銀の 1 キロ当たりの輸入価格(約 5 万 5 千円)を超えた。 30 年前からこの地に進出し、バニラ豆を輸入してきたミコヤ香商(東京)の水野年純社長 (59) は「バブル状態が続いている」と話す。

高騰などを受けて、ハーゲンダッツジャパンは今年 6 月出荷分から主力のアイスクリーム約 20 品目を 23 - 85 円値上げ。 同社広報部は「バニラ味のアイスは一番人気だが、バニラの仕入れ価格はこの数年で 10 倍になった」と頭を抱える。 1 人当たりの国民総所得 (GNI) が約 400 ドル(約 4 万 2 千円)にとどまるマダガスカル。 トタンなどでできた家で暮らす人も多い。 だが、サバ地方では、欧州や日本製の高級車を頻繁に見かけた。 水野社長は「バニラ高騰でもうけた業者たちだ」と言った。 地元で「バニラ御殿」と呼ばれる豪邸も点在していた。

一方、価格高騰で農家らを悩ませているのが「バニラ泥棒」の増加だ。 英誌エコノミストによると、年間の収穫物の 15% 以上が盗難にあうため、被害を防ぐために十分に育つ前に収穫する農家も出てきたという。 バニラ輸出業者の「アグリ・リソース・マダガスカル」でも今年、自社農園でバニラ豆の一部が盗まれた。 マチュー・ルーガー最高経営責任者 (CEO、39) は「夜にパトロールをしていても、完全に食い止めるのは難しい」とぼやく。 「もうけを優先する農家や仲介業者もいるが、今こそ品質を保つ取り組みが必要だ」と強調した。

「タコが大衆向けの時代は終わった」

サハラ砂漠の西側にあるモーリタニア西部の港町ヌアディブ。 タコつぼ漁を終えた漁師が 12 メートルほどの木製ボートで次々に漁港に戻ってきた。 近くの水産加工会社「CPAA」の作業所に運びこまれ、従業員がサイズや状態をチェックし、冷凍処理をしていった。 同社のジャミラ・ベルハディール社長は「5 年ほど前までは、タコのほとんどは日本向けだった。 それが、最近は欧州勢が次々に参入して輸出先の 8 割が欧州になった」と明かす。 タコ輸入業者などによると、日本で流通するタコの約半数が、モーリタニアかモロッコ産。 現地はタコの餌となる貝が豊富で、日本は古くから地元でタコつぼ漁などの指導にあたってきた。

欧米ではかつて、タコは「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」と呼ばれ、競争相手は少なかったという。 ところが、両国と距離が近いスペインやイタリアに加え、ヒスパニック系住民が増えた米国などで需要が増加。 日本が仕入れる大きさのタコでは、昨年のモーリタニア産の仕入れ価格は一時、5 年前の約 2 倍になり、過去最高水準を記録した。 別の水産加工会社のヤクブ・エルナミ社長は「今は世界中でタコを食べるのが一種のファッション。 これまでの日本の支援には感謝しているが、高く買ってくれるところに売るのがビジネス。」と語る一方、「中国漁船が一気に増えて、他の魚と一緒に小さなタコも取ってしまっている」と打ち明けた。

総務省によると、東京都区部のスーパーマーケットなどで並ぶ 100 グラム当たりのゆでダコの価格は、2014 年 1 月の 237 円から今年 1 月には 406 円に上昇した。 現地の邦人企業の担当者は「タコが大衆向けだった時代は終わった。 たこ焼き屋でも、タコの粒を小さくしたり、別の国から仕入れたりするところも出ている。 質は西アフリカ産が一番だが。」と話した。 (アンタラハ、ヌアディブ = 石原孝、asahi = 8-27-19)


「倍返し」がアフリカを救う 日本が主導、救世主ネリカ

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