「日本に 5 軸加工機のブームを」 DMG 森精機が顧客 70 社と連携するワケ

低い普及率、製造業の国際競争力に危機感

DMG 森精機は国内顧客 70 社と、工程集約や複雑形状の加工に向く 5 軸制御工作機械の研究組織を立ち上げた。 70 社に 5 軸機を貸し出すとともに技術者を派遣し、近隣の機械加工会社を集めた教育研修を行う。 世界の製造業は工程集約の流れにあるが、これに適する 5 軸機の国内販売比率は 10% 台と 40% 前後の欧州、アジアに見劣りする。 製造業の国際競争力を保つには、連携組織での活動が不可欠と判断した。

「ものすごい危機感がある。」 DMG 森精機の森雅彦社長は5軸機の国内普及率の低さを危惧する。 5 軸機は複雑形状の加工に適するだけでなく、これまで複数の工作機械に分かれていた加工を、1 台・ 1 度の加工対象物(ワーク)の据え付けで完了できる工程集約などの利点がある。 車部品は電気自動車 (EV) シフトで大量生産品と少量生産品の二極化が予想される。 少量品は工程集約、つまり 5 軸機に専用機などから置き換わりそうだ。 ただ、3 軸機への慣れや 5 軸機を操作する不安、計測、精度などが導入の壁だ。 (六笠友和、Newswitch = 8-12-18)


老舗黒板メーカーが「IT 企業」になれたワケ

会社風土を変えたのはトップの意思を引き継ぐ孫の力

来年に創業 100 周年を迎える老舗黒板メーカーのサカワ(愛媛県東温市)。 従業員は約 40 名。 大正 8 年に創業してからずっと、学校などの教育現場向けに黒板を製造販売してきた。 よくある老舗企業のように思えるが、実は同社は「IT 企業」に転身しつつある。 従来の黒板製造を続ける傍ら、スマートフォン画面をプロジェクターで黒板に投影するアプリや、映像上に文字を書ける黒板用ワイドプロジェクターなど、これまでにない製品を近年相次いで発表し、話題を呼んでいる。 実際のシステム開発は外注だが、新製品アイデアは同社の開発会議で出されたものだ。

既存事業からの転身を遂げた背景には、「黒板製造だけをずっと継続するのではなく、とにかく新しいことを始めなければいけない」という、88 歳の坂和壽々子社長と、68 歳の坂和勝紀副社長が抱く危機感があった。 サカワが 2016 年に開発した黒板専用のウルトラワイド超短焦点プロジェクター「ワイード」。 パソコン画面を投影するだけでなく、専用のペンで映像上に文字を書くことも可能だ。

黒板メーカーを取り巻く環境は、年々厳しさを増している。 少子化の影響で、国内に 100 社程度あった黒板メーカーは約 30 社まで減少した。 また、かつて数十万円した黒板の価格も数分の一に下落し、利益を出しにくくなっている。 国も支援を行うが、効果は限定的のようだ。 教育現場では、文部科学省の施策によってホワイトボードとプロジェクターを組み合わせた電子黒板の導入が推奨されている。

学校での ICT (Information and Communication Technology、情報通信技術)の環境整備には補助金も付くという力の入れようだ。 しかし、教員が使いこなすためには高度な IT 知識が必要になる上に、機能や費用の面でも課題があった。 サカワだけでなく、他の黒板メーカーも同様に電子黒板を販売していたものの、ほとんど普及していないのが現状だった。

縮小する市場、軌道に乗らない国の支援策。 「既存事業からの転身をしなければ」というトップの危機意識は小さくなかったが、簡単には社内に浸透していかなかった。 サカワでは黒板製造の技術者を多く抱えており、新規事業が成功すれば、自分たちの仕事がなくなりかねないと心配する従業員もいたためだ。

社長の孫の行動が会社を変えた

従来のビジネスモデルから大きく転換するきっかけを作ったのは、社長の孫で副社長の長男にあたる常務取締役の坂和寿忠氏だった。 祖母と父の危機意識だけでなく、社内の現状も鑑みて、「従来の黒板を生かしながら、黒板の持つ価値をよみがえらせることはできないか」と考えた。 サカワの坂和寿忠常務は、壽々子社長と、勝紀副社長の危機意識を社内に広げる立役者となった。

アイデアはあった。 スマートフォンアプリを使って、黒板に映像を投影するサービスだ。 東京駅丸の内駅舎をスクリーンに見立てたプロジェクションマッピング「TOKYO STATION VISION」をヒントにしたもので、寿忠氏は「駅舎を黒板に置き換えたら、どんなことができるだろうかと考えた」と振り返る。 スマートフォンアプリであれば、使いこなすのが難しい電子黒板と違って、高度な IT 知識を必要としない。 従来の黒板をそのまま「スクリーン」として使えるために導入費用も抑えられ、また黒い色の上に投影した映像も色映えして見やすいというメリットもある。 教育現場にとってはうってつけだった。

ところが、サカワには黒板を作る技術はあってもアプリを開発できる技術者はいない。 そこで、インターネットで知ったウェブ制作会社、面白法人カヤックの門戸を叩く。 問い合わせフォームから新規事業のアイデアを送り、カヤックとの共同開発を 2014 年から開始した。 約 1 年間の試行錯誤を経て、プロジェクターと米アップルのセットトップボックス「AppleTV」を介してスマートフォン画面を黒板に投影するアプリ「Kocri (コクリ)」を完成させた。

同アプリを使えば、黒板上にグリッド線や図形のほか、動画などの映像も簡単に投影できる。 2015 年に東京ビッグサイトで開催された「教育 IT ソリューション EXPO」でコクリを発表したところ、予想の 10 倍の約 500 校から試用申込みがあったという。 社内の雰囲気を変えたのは、このコクリの成功だった。 「新規事業によって仕事がなくなるのではなく、アプリ開発の企画など、むしろこれまでになかった新しい仕事が生まれるということに社員全員で気付くことができた 」と寿忠氏は話す。

今では新規事業を始めるにあたり、いくつかの暗黙のルールができているという。 最初は売上目標をあえて立てない、展示会に試作品を出すまではすぐにやる、2 - 3 人の小さなグループで始めていい、といった具合だ。 企業風土が変わってからわずか 2 年で発売までたどり着いた製品が、黒板全体に映像を投影できるウルトラワイド超短焦点プロジェクター「ワイード」。 パソコンやタブレットの画面を Wi-Fi 経由で黒板に投影する。 赤外線でペン先の位置を認識するスタイラスも付属し、「映像上に」板書ができる。 約 50 万円と高額であるにもかかわらず、通常の数倍の 1,000 台以上を売り上げるヒットにつながった。

「日本の企業では新しいことを始めようとしても、面白いけど売れないよね、という雰囲気になってしまう。 それを、面白いからやってみように変えられれば、新規事業のアイデアがどんどん出てくるようになるだろう。」と寿忠氏は話している。 (古川湧、日経ビジネス = 8-8-18)


カーナビのパイオニア、自動車業界の変革にのまれ苦しく

カーナビ大手のパイオニアが経営悪化に苦しんでいる。 リーマン・ショック後の経営危機は、プラズマテレビなどから撤退し、カーナビに集中する戦略で乗り切った。 しかしカーナビも低価格化や自動車の機能強化の波にのまれ、輝きを失いつつある。 2019 年 3 月期は 9 年ぶりに営業赤字になる見通しだ。

パイオニアが 6 日発表した 18 年 4 - 6 月期決算は、自動車メーカー向けの音響機器の出荷が増え、売上高は前年同期比 0.6% 増の 838 億円だったが、営業損益は 15 億円の赤字(前年同期は 2 億円の赤字)、純損益は 66 億円の赤字(同 20 億円の赤字)だった。 19 年 3 月期通期も 50 億円の営業赤字を見込む。 決算短信には、事業の継続に懸念があると認めて「継続企業の前提に重要な疑義が存在」との注記をつけた。

同社のカーナビは市販品の国内シェアがトップクラスだが、他社の参入や安価な簡易型ナビの普及で価格競争が激化している。 さらに自動車業界は、自動運転や通信機能を備えたコネクテッドカー(つながる車)の開発に向け、「100 年に 1 度の大変革期(トヨタ自動車の豊田章男社長)。」 納入先の自動車メーカーからは「自動運転や電動化などを理由に、追加の仕様変更が今までにないペースで来る。(パイオニア幹部)」 開発費の負担は重くなっている。

かつてのパイオニアは、世界に先駆けたセパレートステレオやプラズマテレビで知られた。 しかし家電の低価格競争と 08 年のリーマン・ショックで、09 年 3 月期に 545 億円の営業赤字を計上。 10 年にプラズマテレビから撤退した。 15 年には祖業の家庭用音響機器事業も売却した。 残った柱のカーナビも苦しくなるなか、今年 6 月には 10 年ぶりのトップ交代で、森谷浩一常務が社長に昇格。 車メーカー向け事業で他社との資本提携も視野に入れるが、森谷氏は 6 日の決算説明会では「いろんな可能性を模索している」と述べるにとどめた。

カーナビと組み合わせたサービスにも力を入れ、自動運転向けの精度の高い地図情報の収益化をめざす。 今秋に再建策をまとめて発表する。 カーナビでは競合する他社も苦しい。 クラリオンは今年 1 月、450 人規模の人員削減を発表。 富士通はカーナビ子会社をデンソーに売り、アルパインはアルプス電気と経営統合をめざすなど、生き残りをかけた再編が活発化している。 (高橋諒子、asahi = 8-6-18)


電機 7 社 4 - 6 月期決算 4 社が増収増益、ゲーム好調のソニーは業績予想を上方修正

電機大手のうち経営再建中の東芝を除く 7 社の平成 30 年 4 - 6 月期連結決算が 31 日、出そろった。 家庭用ゲーム機「プレイステーション 4」の好調で最終利益を前年同期比 2.8 倍と大幅に伸ばしたソニーなど、4 社が増収増益だった。

ソニーのゲーム & ネットワークサービス分野は、本業のもうけに当たる営業利益が前年同期比 657 億円増の 835 億円と大幅に伸長。 このため、通期の最終利益見通しを当初の 4,800 億円から 5 千億円へ上方修正した。 スマートフォンの伸び悩みが課題だが、十時裕樹専務は「事業継続の考えは変えていない」と同日の決算会見で強調した。

パナソニックは、アジアでのエアコン販売の苦戦から家電部門などが営業減益だったが、企業向けビジネス部門の好調や土地売却益で増収増益を確保した。 シャープは、スマホや白物家電の販売を伸ばしたほか、一連のコスト削減も奏功して増収増益。 日立製作所は、建設機械の世界的な販売増や情報通信事業の好調から、最終利益が過去最高を更新した。

一方、三菱電機は主要全 5 部門が営業減益。 海外のスマホ関連の設備投資が減り、稼ぎ頭の産業メカトロニクス部門で工場自動化関連の販売が落ちた。 素材価格上昇も利益を圧迫した。 富士通も携帯電話会社の基地局投資の低迷などで減収。 見かけの利益は退職給付制度の変更で増えた。 構造改革中の NEC は航空宇宙・防衛などを除く主要 4 事業が赤字か減益だった。 (sankei = 7-31-18)


スマートロック新商品『Qrio Lock』出荷台数が 5,000 台を突破

[Qrio]

Qrio株式会社(東京都渋谷区、代表取締役:西條晋一、以下「Qrio」)が、2018 年 7 月 5 日(木)に発表したスマートロック新商品『Qrio Lock (キュリオロック)』につきまして、出荷台数が 5,000 台を突破した事をお知らせ致します。

この度、『Qrio Lock』の販売好調により、発売開始からわずか 1 週間で出荷台数 5,000 台を突破いたしました。 7 月 19 日(木)より一般販売を開始し、EC サイトだけでなく、『Qrio Lock』は、2015 年 8 月の発売以来、ホーム IoT を代表する商品として多くのご家庭に取り入れられている「Qrio Smart Lock (キュリオスマートロック)」の次世代機です。 7 月 5 日(木)の発表初日に予約販売台数が 1,000 台を超え、大変ご好評いただいております。

主な特徴 : スマートフォンで自宅ドアの解施錠が出来ること / 施錠・解錠操作のレスポンスを極限まで短縮 / ハンズフリー解錠機能 / オートロック機能 / 合鍵を発行してシェアできること / 自宅ドアの施錠・解錠操作の履歴を表示 / 工事不要で、ご自宅の玄関ドアロックに簡単に取り付け可能

Qrio は、世界的な電機メーカーであるソニーグループの IoT (Internet of Things)企業として 2014 年 12 月に設立されました。 インターネットビジネスに精通したメンバーが中心となり、スマートロック「Qrio Smart Lock」やスマートタグ「Qrio Smart Tag」などの生活に役立つ様々な製品を生み出しています。 今後も、大企業のものづくりのノウハウと、ベンチャー企業のインターネット知識とスピード感を最大限に活かし、これまでにないユニークな商品を世に送り出して参ります。 (PR Times = 7-26-18)


三菱重工、電動圧縮機の生産倍増 電動車エアコン向け

三菱重工業は 23 日、電気自動車 (EV) やプラグインハイブリッド車 (PHV) など電動車向けのカーエアコン用電動コンプレッサー(圧縮機)の生産能力を平成 31 年中に倍増する計画を明らかにした。 タイ拠点内の設備を増強する。 また、EV の新車投入が急拡大している中国市場での電動圧縮機の販売強化に向け、中国での人員を現状の 2 倍に増やす方針だ。

三菱重工は電動圧縮機の生産を 25 年に日本からタイへ移管。 タイの拠点では 29 年から新型の電動圧縮機の生産を始めており、来年中にラインを増設する。 圧縮機は気体を圧縮して送り出す装置で、カーエアコンの中核部品。 ガソリン車やディーゼル車ではエンジンを動力源に使うが、エンジンのない EV や EV モードで走る際の PHV はモーターを動力源に使うため、電動化が必要になる。

三菱重工の電動圧縮機は既に三菱自動車や欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ (FCA) の PHV のほか、中国メーカーの EV に採用されるなど、販売が拡大。 三菱重工は電動圧縮機の強化などで空調関連の売上高を 32 年度に 3 千億円へ引き上げる計画だ。 (sankei = 7-24-18)


美容品が売上の 3 割の自動車部品会社 柔らかタオル人気

自動車用樹脂部品づくりを主力とする「鳥越樹脂工業(愛知県一宮市)」が美容雑貨の開発を進め、ローラー式のボディータオルを作った。 ゴシゴシと肌をこすらず、コロコロと転がして洗う。 インターネットを通じて試験的に販売したところ人気は上々で、8 月から本格的に販売する。 商品は「Hadamoist (ハダモイスト、税別 1,500 円)」。 回転する柄に取り付けられた網状のタオルにボディーソープをつけて軽く泡立て、体の上を転がす。 タオル部はポリエチレン素材で柔らかく、全身を泡でなでるように洗う。

「お肌に気を使う女性向けです」と企画開発に加わった女性社員 (26)。 自分でも毎日使っていて、肌を刺激せずに洗えるという。 6 月 25 日から大手クラウドファンディングのサイトを活用し、個数限定で割り引き販売したところ、2 日間で目標の 10 万円を超す注文が集まった。 サイト上では今月 24 日まで販売を続け、8 月からは大手雑貨店やインターネット通販で売り出す予定だ。

鳥越樹脂工業は 1984 年、自動車に使う樹脂用品の試作品メーカーとしてスタート。 ものづくりのコンピューター化が進んで試作品の受注が減り、約 20 年前から健康・美容分野の製品づくりに乗り出した。 ウレタンなどの成形技術を生かして、骨盤補正クッションや肩凝りをほぐす枕といった商品を OEM (相手先ブランドでの生産)で次々に製作。 5 年前からは自社ブランドの商品開発と販売に取り組む。 今春、東京で開かれた生活雑貨の見本市にボディータオルを出品、来場者の反応がよかったという。

同社によると、昨期(2017 年 7 月 - 18 年 6 月)の売上高約 16 億 5 千万円のうち、健康・美容関連の割合は 3 割程度。自動車部品の試作・生産が主力だが、車業界の動向に経営が左右されないよう、近年は電子基板製造なども手がける。 健康・美容分野の担当者は「一大ブームとなるような商品を発信したい。 今後も社内コンペなどを通じて自社商品の開発に努めたい」と話す。 (荻野好弘、asahi = 7-23-18)


ファナック・三菱電、IoT で握手 海外勢に対抗

ファナック、三菱電機、DMG 森精機の 3 社はあらゆるモノがネットにつながる IoT 基盤の相互乗り入れで連携する。 IoT の覇権を巡る競争は世界的に激しさを増している。 これまでライバル関係にあったファナックと三菱電機は手を組み、先行するドイツや米国に対抗する。

協調して市場を拡大

18 日、経済産業省が 3 社の連携を「産業データ共有促進事業費補助金」の採択事業にすると発表した。 ファナックの「フィールドシステム」、三菱電機などが主導する「エッジクロス」、DMG 森精機の「アダモス」間でデータを共有する。 いずれも工場向けの IoT 基盤だ。 工場は金属を加工する工作機械や製品を運ぶロボットなど雑多な機械であふれる。 メーカーも製造年代もばらばらだ。 それをつないで有効なデータを蓄積する役割を果たすのが IoT 基盤だ。 企業間再編で他社の工場を自社に組み込んだりする場合、企業が複数の会社の基盤システムを使うことも想定される。

データ共有が進めば顧客は工場の効率化で様々な手が打てるため、メリットは大きい。 ただ、ライバル関係にあるファナックや三菱電機は連携に前向きとはいえなかった。 今回、3 社は経産省の主導とはいえ協調領域を広げる方向にかじを切った。 特にファナックと三菱電機は工作機械の頭脳とも言われる数値制御 (NC) 装置に関し、両社で世界シェアの過半を握るとみられる大手で、激しいシェア争いを繰り広げてきた。

連携についてファナックの稲葉善治会長兼最高経営責任者 (CEO) は「大企業は部門毎にプラットフォームが違うというのはよくある話。 そういう時につながらなかったら困る、ということになる。」と話す。 協調できる部分は協調して顧客の使い勝手を高め、結果的に IoT 関連のシステムや機器の市場を広げる考えだ。

米・独・中が先行

IoT の覇権を巡る国際競争は激しさを増している。 各国の得意分野を生かした戦略の違いも鮮明になりつつある。 米国はクラウドを使った上位システムに強く、「インダストリー 4.0」の提唱国、ドイツは中国との連携を強める。 中国も「中国製造 2025」を掲げ、国を挙げて製造業強化を推し進める。 独企業はこれまでも中国との「したたかな提携」を進めてきた。 例えば産業用ロボット世界 4 強の一角、独クーカは中国の家電大手、美的集団の傘下に入ることで、中国市場へ攻勢をかける。

独シーメンスも最新鋭の自動化工場を中国に設けるほか、複数社と IoT で協業。 一方で中国勢も力をつけており、華為技術(ファーウェイ)は独 SAP など大手と相次ぎ提携を進める。 ファーウェイの IoT 戦略の方針は「通信機器の提供に徹する。」 畑違いのデータ分析などには手を出さず、他社との提携で顧客を獲得する。

東京大学の藤本隆宏教授は米国勢が力を入れる上位のクラウドシステムを IoT の「上空」、日本が強い製造現場や機械などの世界を「地上」と例える。 今回の日本勢 3 社の連携は、地上の守りを固めるのが狙いといえる。 藤本教授は「日本は高度な擦り合わせによる製造現場の強みを生かせば戦える」と分析する一方、「今打つ手を間違えれば、日本は草刈り場になる恐れがある」と警鐘を鳴らす。 日本勢がどこまで団結を維持し強みを発揮していけるか。 それは日本の製造業の実力にも大きく影響する。 (nikkei = 7-18-18)


デンソーや日立などが手術の「見える化」実現、熟練医の技術共有

[東京] デンソーや日立製作所などは 9 日、手術の「見える化」を実現する「スマート治療室」の臨床試験を開始すると発表した。 あらゆるモノがネットにつながる IoT を活用して多種多様な医療機器の情報が連携できる手術室を、日本医療研究開発機構 (AMED) を中心に東京女子医科大学など 5 大学と 11 社が共同で開発した。

現行の手術室では、使われる数多くの医療機器のメーカーが異なり、医療機器によって通信規格なども違う。 「スマート治療室」ではメーカーや通信規格の異なる多種多様な医療機器を接続・連携させることが可能。 デンソーが中心となって開発したミドルウエア「オペリンク」により、手術の進行や患者の状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて統合することができる。

異なるメーカーの医療機器の情報をリアルタイムで加工・融合することができるのは、世界初という。 信州大学の病院で標準モデルの治療室を設置し、今月中に脳腫瘍の患者への臨床研究を始める。 また、映像だけでなく、手術中に起きた事象や発したコメントを残すこともできる。 手術室の外でもリアルタイムで患部の映像やデータを共有でき、外にいる医師が手術中にアドバイスを送ることも可能だ。 医療プロセスを透明化することにより、手術の精度や安全性が向上し、医療ミス防止にも結びつき、患者の安心にもつながる。

プロジェクトを統括する東京女子医大の村垣善浩教授は同日の会見で、今の手術では医療機器がほぼ単独で動いており「(医療機器それぞれの持つ)情報がほとんど捨てられている」と指摘。 各医療機器のデータをつないで「単なるスペースだったオペ(手術)室それ自体を 1 つの医療機器にする」と説明した。 また、海外の病院への事業展開も検討しており「国際標準化も狙いたい」と意欲を見せた。

デンソー新事業統括部メディカル事業室の奥田英樹室長は、熟練医の頭の中だけに存在していた情報やノウハウを可視化し「若手の先生方に全て開示することで、誰でも熟練医のような判断ができる。 手術の質や効率を継続的に改善する。」と語った。 デンソーは、工場で普及しているミドルウエアを中核技術として医療用にも使えるよう開発。 日立は自社の磁気共鳴画像装置 (MRI) と組み合わせるなどしてパッケージ化し、販売を担当する。 2019 年度の事業化を予定。 価格は数億円程度で、20 年度から 10 年間で売上高 300 億円を目指す。 (Reuters = 7-9-18)


射場に上がった炎、爆発音 ロケット落下、観覧席に沈黙

元ライブドア社長で実業家の堀江貴文さんが出資する宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ (IST) の小型ロケット「MOMO」 2 号機が、打ち上げ直後に落下、炎上した。 小型ロケット「MOMO」 2 号機の射場から約 4 キロ離れた有料観覧席には、多くの家族連れが集まり、打ち上げを見守っていた。 午前 5 時 30 分、カウントダウンがゼロになり、ロケットのエンジンが噴射する赤い炎が見えると、「おー」と歓声が湧いていた。 だが直後に炎があがり、「ドン」という爆発音が遅れて聞こえた。

距離が離れているため、肉眼では炎しか見えず、観覧席からは「どうなったの」、「いつ上がるの」と不安がる声が次々に起こり、その後沈黙の時間がしばらく流れた。 射場の近くに置かれたカメラの映像では、機体は 10 - 20 メートル上昇した後、エンジンの燃焼が弱まってほぼ垂直に落下。 地面にぶつかり、10 秒足らずでバラバラになって炎に包まれていた。

エンジンはエタノールと液体酸素を燃料にしており、延焼の可能性もあるため、午前 9 時現在で社員らの立ち入りができない状態が続いている。 計画では、打ち上げから約 4 分で宇宙空間(高度 100 キロ)に到達し、そのまま弧を描いて太平洋上に落下する計画だった。 (浜田祥太郎、asahi = 6-30-18)

前 報 (4-30-18)


「ダイソンキラー」日本上陸 高級掃除機を量販店で

米シャークニンジャ、成長市場の競争激化

米国で「ダイソンキラー」と呼ばれる家電メーカーが日本に進出する。 米シャークニンジャ(マサチューセッツ州)は 26 日、高級掃除機を日本の家電量販店で 8 月に発売すると発表した。 市場が拡大するコードレスのスティック型掃除機を展開。 米国では割安感を武器に英ダイソンからトップシェアを奪った。 シャークニンジャ参入で国内市場の競争激化は必至だ。

「日本市場は 20 年前と大きく変わった。 海外勢も成功している。」 ダイソンの日本法人に在籍し、シャークニンジャ日本法人の社長に就いたゴードン・トム氏は 26 日、日本市場をこう分析。 日本向け新商品「エヴォフレックス」を発表した。 高さを 1 メートル程度と米国商品に比べ約 10 センチ低くし、動かしやすいよう重さも 15% 程度軽くした。 ヘッドも米商品に比べひとまわり小さく、足が短い日本の家具の下にも回り込めるようにした。 モーターも改良し、日本人が気になる金属音などを抑制している。

ヤマダ電機など家電量販店や総合スーパー (GMS) などを通じて展開する。 先行して予約を受け付け 8 月に発売する。 価格は上位機種で 7 万円、中位機種で 6 万円程度。 ネット通販でも展開する。 テレビ通販会社を通じた一部商品の提供にとどまっていたが、法人設立で本格展開する。 シャークニンジャの売上高は約 2,000 億円。 米国で約 95% を売り上げ、英国や中国など販売地域を広げている。 掃除機を「シャーク」、調理家電を「ニンジャ」ブランドで展開している。 日本に合わせ小型化した調理家電の投入も検討する。

シャークニンジャの米国市場での掃除機シェアは約 10 年前、1% 程度だった。 吸引効率を高めるなどして高付加価値品にシフトさせ、同時に 400 ドル以上と 100 ドル程度に二極化していた米市場に「高品質だが 300 ドル程度」という値付けで挑んだ。 結果、高級掃除機で先を走っていたダイソンの 8 割の価格という割安感でシェアを奪った。 製造は中国に委託し開発と販売に特化して効率的な経営を目指している。

日本のスティック型掃除機市場は拡大傾向にある。 市場調査会社の GfK ジャパン(東京・中野)によると、国内の 2017 年の掃除機市場は 16 年比横ばいの 830 万台。 従来一般的だったキャニスター型が減少する一方、充電式のコードレスなどがけん引するスティック型が販売を伸ばし、掃除機市場全体で 38% を占めるまで成長した。 平均単価は掃除機全体で横ばいだが、スティック型の構成比向上で他の単価下落を補った。 日本の掃除機の平均単価は 2 万円を超え、米市場に比べ約 2 倍とみられている。 高級掃除機を展開するシャークは販売機会が大きいとみる。

日本の掃除機市場では海外メーカーの攻勢が強まっている。 ダイソンが 20 年までに金額ベースでシェア 50% を目指すと明言し、ロボット掃除機「ルンバ」の米アイロボットも存在感を示す。 シャークニンジャは数値目標を明らかにしていないが、米でダイソンを打ち破った実績は強力だ。 国内市場ではパナソニックがロボット掃除機を展開。 東芝ライフスタイルや日立アプライアンスがコードレスのスティック型を強化するなど、従来主力だったキャニスター以外の商品に注力する動きが続く。 日本勢が依然過半のシェアを握っている模様だが、さらなる外資の参入で戦略転換を迫られるかもしれない。 (nikkei = 6-26-18)


レーザーで欠陥発見 コンクリ内部検査、速さ 20 倍に

レーザーを使ってコンクリート内部のひび割れなどを計測する「レーザー打音検査装置」の実証試験が 23 日、大阪府能勢町の天王トンネルで行われた。 作業員がコンクリートの表面をハンマーでたたく従来の「打音法」に比べ、約 20 倍の速さで検査できるという。 強いレーザー光を照射することで表面を振動させ、別のレーザー光で計測・解析する。 振動の周波数の変化によって内部の空洞を検知できるという。

2012 年に起きた中央自動車道・笹子トンネル(山梨県)の天井崩落事故を受け、国土交通省は全国のトンネルに 5 年に一度の定期点検を義務づけている。 膨大な数のトンネルを点検するため、高速で危険の少ない検査方法の開発が進められている。 国立研究開発法人・量子科学技術研究開発機構と公益財団法人・レーザー技術総合研究所などの研究グループが開発し、3 年後の実用化を目指している。 (細川卓、asahi = 6-23-18)


富士フイルムが米ゼロックス提訴、統合解消巡り 10 億ドル超賠償請求

[ニューヨーク] 富士フイルムホールディングスは 18 日、同社との経営統合合意を破棄した米事務機器大手ゼロックスを相手取り、10 億ドル超の損害賠償支払いを求めて提訴した。 富士フイルムは、ニューヨーク州のマンハッタン連邦地裁に提出した訴状で、ゼロックスが統合合意の解消に際し「意図的かつ悪質な行為」に関与したと指摘した。

ゼロックスは先月 13 日、富士フイルムとの経営統合合意を撤回すると発表し、合意内容に反対していた主要株主でアクティビスト(物言う投資家)のカール・アイカーン、ダーウィン・ディーソン両氏と和解したことを明らかにした。 また、ジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者 (CEO) が退任し、新 CEO にジョン・ビセンティン氏が就任する見通しと発表した。 統合撤回の理由として、会計上未解決の問題があることも挙げていた。

富士フイルムは 18 日の声明で、「ゼロックス株のわずか 15% しか保有しない少数株主のアイカーン氏やディーソン氏にゼロックスの運命を支配させるのは株主民主主義と相いれない」とした。 一方ゼロックスは、統合合意を解消する契約上の権利があったと引き続き「非常に強く確信している」とする声明を発表し、富士フイルムの「不適切な経営・管理」に対し賠償を求めて行く考えを示した。

アイカーン氏とディーソン氏はコメントの要請に応じていない。 富士フイルムはゼロックスとの経営統合により少なくとも 17 億ドルのコスト削減や年間 10 億ドルの増収を実現できるとみていた。 ゼロックスに対する訴訟では、懲罰的損害賠償や統合解消に伴う違約金 1 億 8,300 万ドルの支払いも求めている。 18 日の米国株式市場でゼロックスは 0.6% 安で取引を終えた。 (Reuters = 6-19-18)

◇ ◇ ◇

米ゼロックス、買収反対株主との和解失効 経営陣も続投

米ゼロックスは 3 日夜(日本時間 4 日)、富士フイルムによる買収計画に反対する大株主 2 人と結んだ和解合意が失効したと発表した。 和解後に退任するとしていたジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者 (CEO) ら現経営陣も続投する。 大株主側は反発しているが、買収計画が白紙になる事態はひとまず遠のいた可能性がある。 米ゼロックスは 1 日、筆頭株主のカール・アイカーン氏、3 位ダーウィン・ディーソン氏の 2 人と和解に向けて合意したと発表。 そのなかに、3 日夜までに米裁判所の承認が得られなければ合意が期限切れになるとの条項が入っていた。

その後、和解を承認しないように富士フイルムが異議を申し立てたのを受け、裁判所は 3 日、判断の留保を決めた。 これを受け米ゼロックスは自動的に合意が失効したとした。 声明で「この数日の出来事で投資家や関係者が不安になっている」としたうえで、現経営陣が「会社の価値のためにすべての選択肢を検討する」とした。 これに対し大株主 2 人は 4 日未明、他の株主に向けた公表書簡で「全く不可解な転向の理由は一つで、(現経営陣の)個人的な利益だ」などとゼロックスの発表を批判。 「ゼロックスの救済と再生のために戦い続ける」とした。

一方、富士フイルムは 4 日、「裁判所が和解案を認めるか否かの最終決定を留保し、透明性のある審理プロセスを執るとしたことは、妥当な判断である」とのコメントを出した。 ただ、大株主側が起こした訴訟で、裁判所から買収手続きの一時差し止めを命じられている。 これを不服として近く上訴する方針で、買収が計画どおりに進むかは依然として不透明だ。 (江渕崇 = ニューヨーク、内藤尚志、asahi = 5-5-18)

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ゼロックス、富士フイルムとの統合見直し 株主と和解

米事務機大手のゼロックスは 1 日、富士フイルムホールディングスによる買収提案を見直すと発表した。 同案に反対している大株主のカール・アイカーン氏らと和解した。 大株主が提案した 6 人の取締役候補を受け入れ、ジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者 (CEO) ら現在の取締役 7 人が辞任する。 新たな経営陣と大株主が主導して代替案を練るとみられ、富士フイルムの買収計画に不透明感が出てきた。

富士フイルムは「ゼロックス旧経営陣と合意した買収計画の実行を新たな経営陣にも求めていく」とコメントした。 富士フイルム側は「今回の和解を想定していなかった(関係者)」としており、今後対応策を検討するとみられる。 アイカーン氏は富士フイルムによる買収提案に一貫して反対し、これに同調した大株主のダーウィン・ディーソン氏が買収差し止めと新たな取締役の推薦を求めてゼロックスを提訴していた。 ニューヨーク州上級裁判所は 4 月 27 日、ゼロックス取締役会の判断に問題があったとして富士フイルムによる買収手続きの暫定差し止めを命じた。

富士フイルム側は上訴を検討していたが、提携先のゼロックスが株主との和解に踏み切ったことで大幅な戦略転換を迫られる。 ゼロックスの新たな取締役会は過半をアイカーン氏らの推薦者が占めることになり、富士フイルム側の提案がこのまま通る可能性は極めて低くなるからだ。 ゼロックスはディーソン氏による訴訟の取り下げを和解の条件としている。 和解内容には「富士フイルムとの関係の終了や再構築も含まれる」という。 富士フイルムとは協議を続け、妥協案を探るもようだ。 ゼロックスは 1 日「裁判所の判断を受け、将来の不確実性と事業の混乱を避けるためには、訴訟と委任状争奪戦を即時に終わらせるべきだと判断した」との声明を公表した。

アイカーン氏はかねて「ゼロックスの価値を過小評価している」と主張してきた。 今回の買収案では、富士フイルムとゼロックスの合弁会社が富士フイルムが所有する75%の株式を買い入れる。富士フイルムはこれで得た資金を元手にゼロックスへ 50.1% 出資し、買収する。 富士フイルムが資金を全く使わずに経営権を握る枠組みに反発を強めていた。 (nikkei = 5-2-18)

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富士フイルムのゼロックス買収、米裁判所が一時差し止め

富士フイルムホールディングスによる米ゼロックス買収について、米ニューヨーク州の裁判所は 27 日夜(日本時間 28 日)、手続きの一時差し止めを命じた。 米紙ウォールストリート・ジャーナルが報じた。 両社は異議を申し立てる姿勢だが、買収の見直しに追い込まれる可能性もある。 米ゼロックス株の約 6% を保有する第 3 位の株主、ダーウィン・ディーソン氏が、買収受け入れは株主の利益にならないとして手続きの差し止めなどを求めて提訴していた。

報道によると、米ゼロックス側で交渉を担ったジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者 (CEO) について、担当裁判官は「重大な利益相反がある」と指摘。 米ゼロックス取締役会も適切な監視を怠った、と意見を述べた。 最終的な判決を出すまで、買収受け入れの手続きを進めることを禁じた。 また、ディーソン氏が求める米ゼロックス取締役の変更については、30 日以内に候補者を示すよう同氏に求めた。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 4-28-18)

前 報 (1-31-18)


日本の大学 痩せる「知」 東大、中国・清華大に後れ

ニッポンの革新力

日本の大学の研究力の地盤沈下が鮮明になっている。 日本経済新聞が国内外の 209 大学を対象にイノベーション(革新)の創出力を算出したところ、東京大学は学術論文の「生産性」で中国の清華大学に逆転された。 米欧の有力大学との差も開いたままだ。 先端研究で海外との人的ネットワークが細り、イノベーションの土壌が痩せてきている。

日本経済新聞は学術出版の世界大手、エルゼビア(オランダ・アムステルダム)、自然科学研究機構の小泉周特任教授と協力し、国内 97 大学、海外 21 カ国・地域の有力 112 大学の「大学革新力創出指数」を算出した。 学術論文数と研究者層の厚みに加え、引用件数が多い論文の割合(研究の質)と研究者 1 人当たりの有力論文数(論文の生産性)を比較した。

東大の数値からは日本を代表する研究機関の弱点が浮かぶ。 2012 - 16 年の東大の学術論文数は 10 年前の 02 - 06 年からさらに増え、米ハーバード大学や米スタンフォード大学などに続くトップ 10 を維持する。 だが 12 - 16 年の東大の論文の生産性は 94 位に沈み込んだ。 この 10 年間の大きな変化は中国の清華大学の台頭だ。 02 - 06 年は東大がいずれの指標も優位だったが、12 - 16 年は清華大が生産性で逆転。競争の構図は劇的に変わった。

時代に乗れず

日本の大学で何が起こったのか。 「ネット時代にうまく乗れなかった。」 ノーベル物理学賞受賞の天野浩名古屋大学教授はこう話す。 米ではグーグルやフェイスブックなどが勃興し、大学も産業構造の変化に対応してきた。 清華大も人工知能 (AI) の論文引用数で世界の上位に入るなど、先端研究に軸足を置く。 日本の大学は国際的な知のネットワークから取り残されつつある。 中曽根康弘首相(当時)が提唱し、1989 年に始まったバイオ研究の国際プログラム。 支援を受けた研究者からは 27 人のノーベル賞受賞者が出た。

「助成を受ける日本人はほとんどいなくなった。」 プログラムの責任者である広川信隆東大特任教授は話す。 他国の研究者との共同研究が助成の条件。 日本人は海外の研究者と組むことが少なくなり、「論文に載らない最新の知見を得られなくなる」と警鐘を鳴らす。 国は研究者に競争原理を持ち込むなどの手を打ってきたが、研究テーマの組み替えよりも、待遇が不安定になった若手を中心に短期間で成果が出る小粒のテーマで論文数を稼ぐ事態を招いた。 研究力の地盤沈下が進めば、日本の大学は企業にも素通りされる。

トヨタが素通り

トヨタ自動車は自動運転の優劣を左右する AI 技術を開発するため、20 年までに 5,000 万ドル(約 55 億円)を投じて大学と共同研究を進める。 連携相手はスタンフォード大や米マサチューセッツ工科大学。 トヨタは「世界最高峰の研究をする相手を見つけたとき、それが米大学だった」とするが、文部科学省幹部は「日本の大学が相手にされていない」と嘆く。 今回の調査からは革新力を取り戻すヒントも見える。 研究の質で東大を抜いて国内首位に立ったのは首都大学東京だ。

超電導物質の研究で成果を上げた 34 歳の水口佳一准教授を学内に 4 人しかいない先導研究者に認定。 月額給与を 20 万円上乗せする。 競争力のあるテーマに取り組む 16 のセンターでは外国人研究者が 30% を超える。 東大も若手研究者の無期雇用への転換などを進め、「5 - 10 年後には改善する(小関敏彦副学長)」という。 有望な若手に舞台を与えて力を伸ばすことが日本の大学の再生への第一歩になる。 (nikkei = 6-4-18)


「手で持たないドローン日傘」商用化へ アサヒパワーサービスが試作機を開発

アサヒパワーサービス(栃木県小山市、鈴木健治社長)は、手で持たない日傘「free Parasol (フリーパラソル)」の試作機を開発した。 飛行ロボット(ドローン)にシートを装着した "ドローン傘" で日差しを遮る。 価格は 3 万円程度を予定し、2019 年中にも商用化する。 将来は雨傘として使えるよう、モーター部に防水加工などを施す方針だ。 完成した試作機は、特定のマークを追尾する自動操縦仕様。 傘となる小型ドローンで撮影した映像を、人工知能 (AI) を使った自社のソフトウエアで解析してマークを識別する。 鈴木社長は「プログラムを改良し、人の頭部を識別できるまでレベルアップしたい」としている。

製品化を目指すドローンの直径は約 150 センチメートル、毎時 5,000 ミリアンぺアのバッテリーを 1 基搭載する。 重さは約 5 キログラム、飛行時間は 20 分程度。 今後は部品を軽量化し重さを 1 キログラム、飛行時間 1 時間を目指す。 事故防止のため、プロペラは網で覆う。 ドローンはプロペラから機体下部に向かい下降気流(ダウンウォッシュ)が発生する。 鈴木社長はこの特性を「扇風機同様に、熱中症対策で効果が見込める」と期待する。 従来の傘と違い両手が空くため視覚障害者などの利用が期待できる。 一方で法律上の課題などから、当面はゴルフ場など市街地以外の "おもてなし グッズとしての販売を見込む。 (NewSwitch = 5-30-18)