100 万時間の滞空を達成したインターネット接続気球、1 カ所に留まれる巧妙な仕組み Google の親会社である Alphabet 傘下の Loon は、全世界の空から高速インターネット接続を提供することを目指しており、数週間前にケニヤで商用トライアルをスタートさせることが発表されている。 この Loon のインターネット気球が総計で滞空 100 万時間の大台に乗ったという。 気球の高度は成層圏の最上部で、1万5000mから2万mあたりをジェット気流に乗って飛ぶ。Loonのエンジニアは地域ごとの上層気流に関する詳細なデータを収集し、人工知能によって気球の高度を調節することによって同一地域の上空に留まれる航法システムを開発した。 Loon の気球群はこれまでに延べ 4,000 万km を飛行した。 これは月まで 50 回往復できる距離だ。 この間気球を操縦したソフトウェアは狙いどおりの位置をキープするためにユニークな方法を用いている。 気球は上から見てジグザグのコースを飛ぶ。 これはヨットがタッキングしてセールの開きを変えながら進むのに似ている。 ただし、そのナビゲーションは直観に反しており、いかに熟練したヨットマンでも思いつかないようなものだ。 気球は成層圏の気流に沿って吹き送られていくが、それでも目指す場所に行く方法を編み出せるのだ。 気球が長時間同一区域に留まるためには上下に高度を変えて 8 の字型の飛行が必要な場合がある。 逆方向に吹く気流が高度によって何層にもなっている場合があるからだ。 8 の字パターンによる飛行は単純な円運動の飛行に比べて、安定した長時間の LTE 接続を実現するうえで有効であることが確認された。 こうした複雑な運動パターンは人間が操縦するのであれば普通選択されない。 ナビゲーションを自動操縦システムにまかせて、気球が置かれた状況下で最適なパラメータをシステム自身に発見させる方法の有効性がここでも証明された。 Loon の CTO (最高技術責任者)である Salvatore Candido 氏はブログ記事で「この自動操縦システムが AI と呼べるかどうかはよく分からない」と説明している。 最近、テクノロジー企業は AI の定義を思い切り拡張し、多少でも複雑な動作をするソフトウェアはすべて AI だと主張する傾向があるだけに、キャンディド氏の慎重さは称賛すべき公正な態度といっていいだろう。 しかし呼び名はどうであれ、このソフトウェアが気球を一箇所に滞留させ、安定したインターネット接続を提供するという目的を果たしたことはすばらしい。 Loon はすでに台風に襲われたプエルトリコ、地震が起きたペルーで壊滅した通信網を代替するために役立っている。 これまで地上に中継設備を建設することが主として経済的な理由によって阻まれてきた遠隔地に、手頃な価格のインターネットをもたらすために Loon が果たす役割は今後大きくなっていくだろう。 (Darrell Etherington、TechCrunch = 7-28-19) ◇ ◇ ◇ Google 関連会社 Loon による気球インターネットが商業トライアルを実施 Google (グーグル)からスピンアウトした Alphabet (アルファベット)傘下の Loon は、Telkom Kenya と提携してケニアで数カ月以内に最初の商業トライアルを開始する。 Loon の目標は、遠隔地にインターネット接続を提供することで、太陽光発電による通信機器を搭載した高高度気球を使用し、設置が難しかったり、価格が手頃でなかったりする、恒久的な地上施設を置き換えることにある。 この新たな商業トライアル(数週間以内に装置が目的地に到着した後、年内に実施される)では、Telkom Kenya は山岳地域に位置する複数の村に在住する顧客に対し、従来型のネットワーク施設と同額でインターネットへのアクセスを提供する。 Reuter によると、インターネット接続を提供する新しいモデルが、安定したサービスを利益の出る価格で提供することに懐疑的な提携通信事業者にとって、ビジネス的に理にかなうのかを証明するという点で、Loon はにやるべきことが残っているという。 この点において、Loon は気球ネットワークがペルーやプエルトリコでの取り組みにおいて、地上との接続を提供する技術的な能力を持っており、自然災害によってダウンしたネットワークを強化するために地元の通信事業者が無料でこの技術を利用し実証したため、次は商業的な能力の実証に熱心なようだ。 アルファベットの気球インターネット計画は、同じように遠隔地に固定設備によらないインターネットを遠隔地に提供する衛星インターネット、例えば SpaceX の「Starlink」などと最終的には競合するものだ。 (Darrell Etherington、TechCrunch = 7-3-19) ◇ ◇ ◇ ペルーを襲った地震の後、インターネット気球 Loon がモバイル回線をサポート 非常時に役立ってこその技術です。 5 月 26 日の朝、南米ペルーをマグニチュード 8.0 という大地震が襲いました。 同日 CNN が報じた記事によりますと、学校や教会や病院などがいくつも倒壊するほどの被害で、少なくともひとりが死亡、11 名が怪我、そして隣のエクアドルも 7 名の怪我人が出たとあります。 大変痛ましい天災には心が痛みますが、そんな折、Google と同じ Alphabet の子会社 X が、大きな気球で世界各地にインターネットを届ける「Project Loon」で活躍しました。 IEEE SPECTRUM いわく、ペルーは地震によって通信網に大打撃を食らってしまったものの、そのときちょうどプロバイダーのテレフォニカ社と契約を結んでいた Loon の気球がペルー国内でテストをしていたため、地震から 48 時間以内にペルーにモバイル回線を提供することが出来たのだそうです。 (岡本玄介、Gizmodo = 6-5-19) 住職がいざなう霊場 ユーチューブにチャンネル開設 法然が開いた浄土宗に属する三重県伊賀地域の 49 カ寺でつくる浄土宗法然上人伊賀霊場会(井上良純会長)が、各寺の紹介動画を公開する「法然上人伊賀霊場チャンネル」を動画投稿サイト「ユーチューブ」で始めた。 霊場へいざなうパンフレット的な役割とともに伊賀の町の素朴な魅力を発信し、「お寺に目を向けてもらいたい」としている。 伊賀霊場会によると、伊賀では天明 4 (1784) 年に「法然上人伊賀二十五霊場」が定められた。 1983 年に残る 24 カ寺の「新二十四霊場」が、2011 年にゆかりの供養塔を加えた「新二十五霊場」ができた。 動画は念仏寺副住職の豊岡浩史さん (48)、林昌寺住職の静永敬雄さん (54)、中庵寺住職の西野龍弥さん (39) の 3 人による珍道中形式で撮影。 黒い法衣に網代笠姿の 3 人が軽快な曲に乗って伊賀の町中を歩き、目的の寺に向かう。 寺では本尊や宝物を披露し、念仏を唱え、寺の歴史などを紹介している。 撮影には 360 度カメラを駆使。 身長 190 センチの西野さんが最長 3 メートルになる一脚に付けて撮った高所からの映像もある。 チャンネルは 5 月に開設し、今は動画 10 本を投稿している。 2 年かけて 50 カ寺を撮影して回る計画だ。 「メジャーではない寺にもいい物はいっぱいある。 文化財にこだわらず楽しんでほしい。」と豊岡さんら。 スマホで見られるユーチューブで若者に伊賀の魅力を伝えて足を運んでもらい、伊賀を離れ寺に来られない人にもスマホを通して参拝してもらうことで「人々とのご縁を結び続けたい」という。 (中田和宏、asahi = 7-20-19) Google Play から「ストーカーアプリ」 7 本が削除
ユーザーにアプリをインストールさせ、個人情報をこっそり抜き取るスパイウェアは以前から何度も話題に上がりますが、世の中には特定の人を監視する目的とする、俗に「ストーカーアプリ」と呼ばれる種類も存在します。 従業員や恋人などのスマートフォンにアプリをインストールし、その位置情報やメール、電話の内容などを監視する目的のアプリです。 非合法な雰囲気があり、アプリの入手自体が難しそうですが、意外なことに Google Play から普通にダウンロード可能だったようです。 そんなストーカーアプリ 7 本が、Google Play から削除されました。 アプリを発見し Google に報告を行ったのは、オンラインセキュリティ対策企業の Avast。 これらのアプリは合計で 13 万回ダウンロードされており、最もインストールされていたのは「Spy Tracker」と「SMS Tracker」。 どちらも 5 万回以上ダウンロードされていたとのことです。 これらのアプリは、スマートフォンの所有者自らがインストールするわけではなく、監視したい第 3 者によってインストールされます。 インストール後はアイコンを表示しないなど、見つかりにくくする工夫もあったようです。 なお、削除されたアプリは下記の 7 本。 ・ Track Employees Check Work Phone Online Spy Free Google によれば、こういったアプリはポリシー違反とのこと。 にもかかわらず、Google Play プロテクトなどのスクリーニングを潜り抜け、Google Play で公開されてしまっていたのが実情。 こうしたアプリに関しては、スパイウェアやマルウェアとは違った判別の難しさがあるようです。 (山本竜也、engadget = 7-18-19) 巨大 IT の不当な個人情報収集、独禁法違反適用へ指針案 米グーグルやアマゾンといった「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大 IT 企業による個人情報の集め方について、公正取引委員会が独占禁止法違反に当たる不当なケースを示すガイドラインの案が明らかになった。 独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たる三つのケースを規定し、野放図に利用者の個人情報を集めることを防ぐ。 公取委は 8 月にも公表し、年内にも実施する方針だ。 政府は巨大 IT 企業への規制強化を進めており、ガイドライン策定は目玉の一つとなる。 公取委が巨大 IT 企業を対象にガイドラインを設けるのは初めて。 優越的地位の乱用については、主に大企業が強い地位を利用して下請け企業に不利益を与えた場合に適用してきたが、初めて企業と個人の関係に当てはめる。 ガイドライン案は、巨大 IT 企業による個人情報の収集が独禁法違反となりかねないケースとして、▽ 本人に目的を知らせずに個人情報を取得、▽ サービス提供に必要な範囲を超えた個人情報を、本人の意に反して取得、利用、▽ 安全管理のために必要な措置を取らずに個人情報を取得、利用 - - の三つを示している。 具体的には、個人情報の利用目的をウェブサイトで知らせなかったり、利用者の個人情報を同意なく第三者に提供したりすることなどを想定している。 いずれも少数の巨大 IT 企業が市場を支配し、利用者が個人情報の扱いに不満があってもほかのサービスに乗り換えられない状況が前提だ。 独禁法違反だと認定した場合は、排除措置命令や課徴金を課すことになる。 巨大 IT 企業は、利用者に検索や SNS などのサービスを提供する対価として個人情報を得ている。 本人の属性のほか、サイトの閲覧履歴や購買履歴、位置情報もある。 集めた個人情報をターゲット広告など別のビジネスの元手にしてさらに成長する一方、個人情報の漏洩や取引先への一方的な規約変更などの弊害が問題視されてきた。 政府は巨大 IT 企業の規制を強化する方針を 6 月に閣議決定した成長戦略に盛り込んだ。 ガイドラインの策定以外にも、巨大 IT 企業による不当な要求が出来ないように取引を透明化するための新法を来年の通常国会に提出する予定。 さらに、規制の司令塔となる新組織を内閣官房に今夏以降に立ち上げる。 (西山明宏、asahi = 7-16-19) ◇ ◇ ◇ 巨大 IT による「支配」に待った ドイツが FB 新規制 GAFA と呼ばれる巨大 IT 企業が膨大な個人情報を武器に市場を「支配」する世界的な流れに、新しい規制で市場の公正さを保とうという動きが欧州で生まれている。 5 月で施行から 1 年が経った欧州の個人情報法令と、市場での自由な競争を目的にする競争法を組み合わせることで、巨大 IT 企業の「暴走」を防ぐ試みだ。 日本でも同じ手法が模索されている。 日本の公正取引委員会に当たるドイツの連邦カルテル庁は 2 月、米フェイスブック (FB) に対し「インスタグラム」や「ワッツアップ」などのサービスや、同社のアカウントを使った他社のウェブサイトで得た個人情報を統合することを禁止すると伝えた。 同庁によると、FB は独国内で 3,200 万人の利用者を抱え、ソーシャルネットワーク市場で 9 割以上と圧倒的なシェアを持つ。 さまざまなアプリの情報を統合することで利用者の好みなどを詳細に分析し、ターゲット広告で利益を上げているという。 同庁が問題視したのは、FB が提供する複数のサービスで蓄積された個人情報の提供に一括同意しないと、FB の利用が継続できないようにした点だ。 ほかに有力なサービスがないため同意が事実上強制されていると考えられる上、そのようなやり方でデータを取得することが圧倒的な市場支配力をさらに強めるおそれがあると同庁は判断。 ドイツの競争法や、欧州連合 (EU) が昨年 5 月に施行し、世界一厳しい個人情報法令と言われる「一般データ保護規則 (GDPR)」に違反していると指摘した。 同庁のムント長官は朝日新聞の取材に対し「個人データ保護と競争法を組み合わせた、新しい法運用の形だ」と説明。 「FB が市場支配的であることと、利用者に対して GDPR に反する取引条件を強制できることは結びついている。 利用者は、データの統合を拒否しても FB を使い続けるという選択肢を与えられるべきだ」と訴えた。 同庁はさらに、米通販大手アマゾンについても、世界最大の通販市場を運営すると同時に、自社の商品を販売する小売業者でもある点を問題視。 出店業者を通じて得た購買データを使って、一部の業者を締め出しているとの苦情を元に調査を進めているという。 グーグルやアマゾン、FB、アップルの 4 社はその頭文字をとって「GAFA」と呼ばれる。 日本の公取委も、主に企業間取引を対象にしてきた独占禁止法の「優越的地位の乱用」などの規定を、企業と個人の取引に適用することで、GAFA に代表される巨大 IT 企業の活動を規制することを検討している。 独カルテル庁の今回の禁止処分はその先行事例になる。 (ボン = 渡辺淳基、asahi = 6-8-19) Amazon で中国セラーの嫌がらせ? 「爆発した」報告で販売停止、100 万円以上の損害 Amazon で Tomo Light を販売する事業者が悪質な嫌がらせにあっていると Twitter 上で告発をしています。 その「嫌がらせ」はもはや「営業妨害」と言えるレベルになっています。 度重なる嫌がらせに告発者は限界 … ちなみに Tomo Light とはヘッドライトで、テレビや新聞にも掲載され累計 2 万 9 千個売れているベストセラー商品です。 その Tomo Light の共同経営者である石武丈嗣氏の悲痛なツイートを紹介します。 (カミアプ = 7-8-19)
慶大教授は問う「中国のデータ国家主義は悪いだけか」 国家が主導して、膨大な個人データを収集・活用して社会を改革しようという中国。 海を隔てた日本では、不気味と見る向きも多い。 しかし、医療政策が専門の宮田裕章・慶応大教授は、そんな固定的な見方に異を唱えている。 どういうことなのだろうか。 - - 中国では、IT 大手アリババグループの子会社が始めたゴマ信用を始め、個人を評価する信用スコアが社会の隅々まで浸透しています。 信用スコアについてはこれまで、交通ルール違反や借りたお金を返さないなどの減点法で行われてきました。 ゴマ信用は、これらの情報を多元的に組み合わせるだけでなく、加点方式による評価を組み込んでいます。 例えば「低炭素行動」です。 ガソリン車を使わないで自転車や電気自動車で通勤したら点がプラスされる。 またゴミを適切に分別して廃棄することを評価することにより、人々の善行を引き出す、という地域もあります。 このような評価も踏まえて可視化されるゴマ信用は、無担保で融資を受けることができる金額だけでなく、時に子どもの進学先にも影響するというんです。 そうなると、お金を持っていないが信用の高い人も、いい大学に行けるということが起こります。 信用スコアが貨幣を超えるような価値になるのではないか、ということに注目しています。 スコアが貨幣の代わりになる - - そんなことが本当に起きるのでしょうか。 今まではお金より大事なものがあると言っても、客観的な形として共有することは困難で、社会活動は貨幣を主軸に成り立っていました。 これからはスコアを通じてさまざまな価値を交換できるようになります。 ポスト資本主義の大きな流れが中国から始まりつつあるのかもしれない、と思っています。 - - 貨幣を代替する役割をスコアが持ち得る、と? 信用スコアでは、データを使うことで富裕層に対する運用の利益率を改善するだけでなく、これまでカードが作れなかった人たちにチャンスを与えることができます。 中国ではこれまで、チャンスをつかみたい人はバイトを 2 - 3 年して学校に行っていました。 その間に時間を浪費してしまいます。 でも信用があれば、ある意味、人生を担保にしてカードを作ることができるのです。 確かに借金漬けになるという悪いケースもありますが、チャンスをつかむこともできます。 アリババの言葉を借りれば、これまで富の 8 割を所有する 2 割の人々を対象にしてきた金融サービスを、富の 2 割しか持たないが人口の 8 割を占める人たちに拡張できるということです。 今まで踏み込めなかったところに踏み込んでいるという意味では、だいぶ違うところに来たと感じます。 ただ、中国が格差を解消できるのかはまだ評価ができません。 国家と一体になってプライバシーに踏み込むアプローチや、トップダウンのみによる価値の構築は過度な監視社会に向かうリスクもはらんでいます。 日本なりの活用法もあり得る - - 日本にも参考にできる点はあるのでしょうか。 国家の役割などを含むと中国そのものを参考にすることは難しいですが、データを活用して新しい価値を構築する、というチャレンジには見るべきところがあると思っています。 先進国では、データの利用で人権保障を重視する EU (欧州連合)の GDPR (一般データ保護規則)のように、データを「所有財」のようにコントロールする側面が強調されがちですが、私はデータは「共有財」としての側面から運用できるとも考えています。 日本は価値の多様性を踏まえた上で、米国のような巨大プラットフォーマー企業によるデータ覇権でもなく、中国のような国家主導による一元的監視社会でもない、人権を中心とした多様な価値の実現をめざす第三の道を選ぶべきです。 例えば医療・ヘルスケア分野です。 企業だけでもなく、国だけでもない産官学連携の取り組みが始まっています。 患者の体から採取した組織や細胞を調べる病理医は全国的に不足していますが、診断の仕事量は時期によって波があります。 検体をクラウドに上げて、遠隔診断で誰か空いている人が見れば仕事の量は最適化されます。 国内だけでなく、病理医がほとんどいない途上国にも広めることで、日本を支えるようなサービスに転換できるかもしれません。 データを「共有材」に データを「共有」という側面からとらえることも重要です。 1 人の患者を 1 万人のデータから見ることで、よりよい治療を受けることができます。 1 万人が 100 万人に増えれば、全体としてのレベルはさらに向上します。 データはクラウドにどんどんたまるので、AI (人工知能)と組み合わせれば学習も進みます。 今後訪れる「データ駆動型社会」は、データがさまざまな価値を生み出す社会です。 貨幣の所有を競い合うよりも、データにより価値を共創することが重要になるでしょう。 (聞き手 = 大津智義、asahi = 7-6-19) 中国の社会信用システム (6-20-19 & 5-27-19) 検査画像スムーズにシェア 和歌山発、救急支援システム 和歌山県は、地域の中核病院である 2 次救急医療機関と高度な医療をする 3 次救急医療機関の間で、検査画像などを正確かつ迅速に情報共有ができる「遠隔救急支援システム」の運用を 4 月から始めている。 県全体で同システムを展開するのは全国で初めてという。 同システムは日赤和歌山医療センターや県立医科大付属病院など県内の計 13 医療機関が参加しており、病院同士がタブレット端末で専用のアプリを通じてやりとりをする。 2 次救急医療機関は救急患者の MRI や X 線画像などを 3 次救急医療機関に送る。 専用アプリには LINE のようなトーク画面があり、3 次救急医療機関は送られた画像を見ながら 2 次救急医療機関とやりとりをし、受け入れの判断や準備をする。 これまで病院同士は電話やファクスでやりとりしており、患者の状態が伝わりにくかった。 検査画像は患者とともに受け入れ先の医療機関へ搬送していたため、受け入れ先は患者が到着してから検査画像を見て手術の準備をしていた。 同システムにより、検査画像を見ながらやりとりをするため、より正確に患者の状態を把握できるようになった。 2 次救急医療機関から 3 次救急医療機関への不要不急な患者の転送も減らすことができ、患者や家族の負担軽減にもつながるという。 Google のクラウドで大規模障害が発生、YouTube や Gmail など多くのサービスが影響を受ける Google のクラウドサービスである Google Cloud で障害が発生し、YouTube・Snapchat・Gmail・Nest・Discord といったウェブサービスが使用できなくなる状況に陥りました。 Google が公開している Google Cloud の状況を確認可能な「Google Cloud Status Dashboard」によると、障害が発生したのは現地時間で 2019 年 6 月 2 日 12 時 25 分(日本時間で 6 月 3 日 4 時 25 分)頃となっています。 Google は「Google Compute Engine に関する問題」としており、これが大きなネットワーク問題につながっていると記述。 影響を受けているサービスは Google Cloud、GSuite、YouTubeなどが挙げられています。 ただし、障害は 2019 年 6 月 2 日 16 時 45 分(日本時間で 6 月 3 日 8 時 45 分)に終了したとされています。 Google Cloud を中心に発生した障害は主にアメリカ東海岸に影響を与えたようですが、ヨーロッパの一部でも YouTube や Gmail といったサービスが一時的にアクセスできない状況に陥ったそうです。 YouTube は 5 時前に「YouTube のロードが終わらなかったり、エラーメッセージが出てきたりするケースがあります。 我々は問題の修正に取組んでいます!」と障害により一時的にサービスが利用しづらい状況にあることをアナウンス。 その後 8 時過ぎに「大部分の人の間で YouTube が使えるようになった!」と報告しています。 ネットサービスの障害情報をリアルタイムでモニタリングしている Downdetector によると、障害が発生した 4 時辺りから障害発生報告件数が急増しています。 障害発生報告件数だけでいえば YouTube は圧倒的。 Google 関連サービスだけでなく、Discord、Snapchat、Vimeo といったウェブサービスもログイン時に問題が発生した模様。 これらのサービスはすべてバックエンドで Google Cloud を使用しているためと考えられます。 また、Apple の iCloud も Google Cloud で発生した障害の影響を受けていた模様。 2018 年に Apple は iCloud が Google Cloud を使用していることを明かしています。 海外メディアの The Verge が Google に問い合わせたところ、「アメリカ東部で高レベルのネットワーク輻輳を経験しており、Google Cloud、GSuite、YouTube といった複数のサービスに影響を及ぼしています。 ユーザーにはパフォーマンスの低下や断続的なエラーが発生する可能性があります。」とコメントがあったそうです。 なお、YouTube は 2018 年 10 月にも障害発生によりアクセスできない状態になりました。 (Niclas Illg、Gigazine = 6-3-19) 前 報 (10-17-18) 変貌する MS かつては囲い込み、いま「オープン化」 米マイクロソフト (MS) が変貌している。 かつては他社を押しのけてウィンドウズを販売し、顧客を囲い込む姿勢で知られたが、今のキーワードは「オープン化」と「多角化」だ。 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの「GAFA」の陰に隠れてかつてほどめだたないが、実は今の時価総額は 4 社を上回る。 何が起こっているのか。 「オープンソースのプロジェクトとして、各国における自由で公正な選挙を守る事業を始めます。」 6 日朝、シアトルで開いた MS の開発者向け会議の冒頭で、サティア・ナデラ最高経営責任者 (CEO) はこう宣言した。 ロシアによる 2016 年の米大統領選への介入などが問題になる中で、その基盤となる強固な選挙システムのソフトを、オープンソースで作る取り組みだ。 世界中の技術者が自由にソフトを改良できる「オープンソース」に MS が注力する姿は、創業者のビル・ゲイツ氏が率いたころと比べると隔世の感がある。 1990 年代から 2000 年代にかけて、基本ソフト (OS) 「ウィンドウズ」の売り上げを伸ばしてきた MS は、自社ソフトの知的財産を厳しく管理。 ウィンドウズとビジネス統合ソフト「オフィス」を二本柱に、オープンソース陣営とは激しく対立してきた。 それを大きく変えたのは、14 年に CEO に就いたナデラ氏だった。 就任直後「オフィス」を、アップルの「iOS」やグーグルのアンドロイドに対応させるオープン化路線を発表した。 当時、新方針を実行した MS 幹部のジュリア・ホワイト氏は「本当に大きな変化だった」と振り返る。 15 年ごろからは、ライバルだったオラクルや IBM との連携も強めた。 16 年にはビジネス向け SNS 「リンクトイン」を、18 年にはオープンソースの開発コミュニティー会社「ギットハブ」を買収。 多角化とオープン化を推し進めた。 背後にあったのは、企業がデータセンターを自社で持たず、他社のクラウドを利用する動きを強め始めた潮流の変化への対応だ。 従来はウィンドウズなどのソフトを企業や個人に売りまくる手法で成長したが、企業に MS のクラウド「アジュール」を使ってもらって、利用量に応じお金をもらうビジネスモデルに転換した。 よりオープンに他社と連携した方が、ライバルと関係が深い企業にも食い込め、クラウドの利用を増やせる - -。 そんな戦略は奏功した。 MS の事業構造は今、クラウドを土台に「企業向けの顧客管理・業務ソフト」、「ウィンドウズ、オフィスなどのソフト」、「ゲーム」が存在し、多角的に収益を得られる仕組みだ。 MS は、アップル、アマゾンに続く形で、4 月下旬に時価総額 1 兆ドル(約 111 兆円)超えを果たし、最近の時価総額は両社だけでなく、フェイスブック、アルファベット(グーグルの親会社)も上回る。 そこまでの変革は、なぜ可能だったのか。 「ゲイツ氏やバルマー前 CEO が、自らが退いた後はナデラ氏に任せ、口出しをしなかったことが実は大きかったのではないか」。 MS 幹部はこう打ち明けた。 (シアトル = 尾形聡彦、asahi = 5-8-19) フェイスブックが画面刷新へ、デートアプリの提供も拡大 米フェイスブック (FB) のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者 (CEO) は 4 月 30 日、交流ソフトである FB の今後の方向性について、利用者にさまざまな「グループ」に参加してもらう方向に変えていく考えを明らかにした。 プライバシーの重視にかじを切る考えに沿ったもので、FB の画面も 30 日から順次更新。 「グループ」に参加しやすい仕組みにしていくという。
ザッカーバーグ氏は 30 日、米カリフォルニア州サンノゼで開いた開発者向けの発表会「F8」で、こう強調した。 ザッカーバーグ氏は 3 月、FB について今後数年かけて、プライバシーを重視した私的なネットワークに作り替えていく考えをブログ上で表明している。 その後初めて公の場に姿を見せた同氏は、改めて「プライバシーに焦点をあてたプラットフォームを作り上げる」と強調したうえで、その具体策として「グループ」重視を掲げた。 これまでの FB は、ネット上で大勢の人が出会う「公共の街角」のような仕組みだったが、今後は友達同士に加えて、同じ趣味や共通の関心を持つ人たちがさまざまな「グループ」をより簡単につくれるようにし、グループ内で私的なやりとりを楽しみやすくしていくという。 「仕事」、「好きなテレビ番組」、「ゲーム」、「近所」といった形で、さまざまなグループを作ってもらうイメージだという。 これに合わせ、FB は 30 日から、スマートフォンとパソコン上の FB の画面を米国を手始めに一新していくと発表した。 今後、日本を含めた世界中でも順次切り替えていく。 画面の中央の目立つ部分に「グループ」化のボタンがあるほか、全体のデザインもよりすっきりさせるという。 ザッカーバーグ氏は「過去 5 年で最大の変更だ」と語った。 また、交際相手を探すデートアプリ機能「FB・デーティング」もこれまでのタイやコロンビアなど 5 カ国に加え、フィリピンやベトナムなど 14 カ国で広げていくと発表。 米国でも今年末までにサービスを始める予定だという。 ただ、日本でのサービスは「現時点では未定(同社広報)」という。 FB がプライバシー重視を強調するのは、大量の個人情報流出で大きな批判を浴びたことが背景だ。 2016 年の米大統領選の際に、英選挙コンサル会社に最大 8,,700 万人の個人情報が流出していたことが昨春発覚するなど、FB はプライバシー保護の甘さがたびたび指摘されてきた。 ザッカーバーグ氏は 30 日、「我々は、プライバシーであまりいい評判を得ていないことは分かっている」と自嘲気味のジョークを飛ばしながら、個人情報保護に重点を置いたネットワークに作り替えていくことを強調した。 一方で、FB の「グループ」重視は、他社の SNS の機能を FB 内に取り込んでいく戦略ともいえそうだ。 仕事上のネットワークやグループは、マイクロソフト傘下の「リンクトイン」が知られている。 交際相手を探したり、近所の人とつながったりするアプリは、すでに各国で数多く存在する。 世界で 23 億人以上の月間利用者をかかえる FB が、そうしたさまざまな機能を自社ソフトに採り入れることで、より多くの利用者を獲得する思惑もにじんでおり、他社にとっては脅威になりそうだ。 (サンノゼ = 尾形聡彦、asahi = 5-1-19) ストレージ容量の小さな端末では Windows 10 の次期アップデートをインストールできない可能性 Microsoft は 2019 年 5 月に Windows 10 の次期大型アップデートとなる「Windows 10 May 2019 Update」を配信予定です。 このアップデートで Microsoft は、ペイントを標準搭載に戻したり、パスワードに有効期限を定める方針を廃止したりと、配信前から何かと話題の方針を打ち出しています。 そんな中、海外メディアの Ars Technica が、「ストレージ容量の小さな端末では Windows 10 の次期アップデートをインストールできない」と報じています。 PC を動作させるために必要なオペレーティングシステム (OS) には、「最低限このくらいの CPU やストレージ、メモリなどを搭載していなければいけない」という、システム要件が存在します。 Windows 10 の最新バージョンである 1809 の場合、システム要件は以下の通りとなっています。
Windows 10 には 32bit 版と 64bit 版が存在しますが、Windows 10 のバージョン 1809 にアップデートするには、32bit 版は最低 16GB、64bit 版は最低 20GB のストレージの空きが必要というわけ。 2019 年 5 月に配信予定のバージョン 1903 では、アップデートに必要なストレージ容量がより大きくなり、32bit 版と 64bit 版の両方で最低でも 32GB の空き容量が求められることになるとのこと。 ストレージのシステム要件が増加した原因は、Microsoft が Windows 10 のバージョン 1903 で導入した新しい動作にあると Ars Technica は記しています。 Ars Technica によると、バージョン 1903 では将来的なアップデートが問題なくインストールできるように、インストールプロセス用に 7GB のストレージを恒久的に確保しているとのこと。 これにより OS アップデート時にストレージの空き不足で起きるエラーを回避できるようになるわけですが、ストレージ容量の小さな端末では自由に使える容量が劇的に小さくなることが予想できます。 仮にストレージの空き容量が少なすぎてバージョン 1903 にアップデートできない場合、バージョン 1809 のまま残りのサポート期間を過ごさなければいけなくなります。 なお、Windows 10 のバージョン 1809 は Home、Pro、Pro for Workstations という各エディションでは 2020 年 5 月 12 日に、Enterprise Edition および Education エディションの場合は 2021 年 5 月 11 日にサポートが切れる予定です。 バージョン 1809 には長期対応のサービスチャネルも存在しており、2024 年 1 月 9 日までバグ修正とセキュリティアップデート、2029 年 1 月 9 日までセキュリティ修正を受けることも可能です。 新しいシステム要件は Windows 10 の IoT エディションには適用されません。 このエディションは IoT 端末向けの Windows 10 であるため、データ容量をなるべく小さくし将来的なアップデートに備える必要があるためです。 また、Windows Server 関連のシステム要件にも変更はありません。 (Tinh Khuong、Gigazine = 4-27-19) 日本のネット上の売上が米中企業に大量流失している
日本のインターネット経済の売上の多くが海外に流出している。 新経済連盟が独自に調査し、その実態を初めてまとめた。 インターネット広告の 50 - 70%、 音楽定額配信サービスの 75% 以上など、衝撃的な数字が並ぶ。 IT 系企業が中核をなす新経連(代表理事 : 三木谷浩史・楽天会長兼社長)が、各分野の企業の協力を得てデータを集計した。 なぜ、外国企業がこれだけのシェアを日本で握っているのか。 その背景にはインターネットにおける「プラットフォーム」の力がある。 プラットフォームとは、例えば検索における Google、ソーシャルネットワークにおける Facebook や Twitter、E コマースにおける Amazon、動画における YouTube や TikTok など、様々な情報やサービスが集約される場所をさす。 巨大なプラットフォームには、あらゆる個人や企業が自らの情報やサービスを提供する。 例えば、新聞社やテレビ局、ネットメディアは Facebook や Twitter などに自社のページを作って記事を配信する。 そうしないとネットユーザーに自社のコンテンツを届ける競争で他社に勝てないからだ。 情報が集約されるプラットフォームはどんどん便利になり、ユーザーは個別の企業のウェブサイトよりもプラットフォーム経由でサービスを利用するようになる。 そうすると、利益の多くがプラットフォームに落ちることになる。 海外でもインターネット広告売上の多くが Google と Facebook に集中することが「デュオポリー(2 社独占)」と注目を集めていたが、日本でもその実態がデータから明らかになった。 広告だけではなく、スマートフォン上で楽しむあらゆる活動がプラットフォーム経由になっている。 音楽も、動画も、買い物も、ソーシャルネットワークも、メディア消費も。 そして、巨大プラットフォームはほとんどがアメリカや中国企業のものだ。 アプリに至っては市場の 100% を Apple と Google が抑えている。 スマホアプリでの売上の 30% は海外に吸い上げられ、国内企業の利益は圧迫されている。 アプリ手数料が日本企業にとって大きな壁になっている 新経連の吉田浩一郎理事は 4 月 24 日、衆議院議員会館で国会議員らを前に講演し、「日本の経済成長に直結する問題と認識して欲しい」と危機を訴えた。 日本の経済成長に直結する問題という言葉は、大げさではない。 インターネット上の経済規模は大きくなる一方。 その成長分野で売上の多くが海外に流れ、税率が安い国を経由することで徴税額は抑えられている。 そうやって急成長する海外企業の資本力は、日本で税金を収めている日本企業にとっては脅威。 吉田理事が例にあげたのが、スマートフォンへの広告出稿だ。 中国を筆頭に海外企業のサービスの広告が上位を占めるようになっているという。 膨大な資本力で投資してくる海外企業に対して、日本企業が同じ分野で競争力を維持するのが難しくなっている。 この状況にどのように対応するか。 吉田理事は「プラットフォームを規制しろというわけではない」と強調した上で「日本企業が外国企業に比べて不利な競争環境にある」と訴える。 例えば、著作権法違反の疑いのあるコンテンツや民泊やライドシェアなど、日本が法的な規制を設けている分野で、海外企業がその規制の網を逃れて国内で活動している、という指摘だ。 その上で、海外企業にも法の域外適用をすることや、独占禁止法によって手数料 3 割問題を是正していくことなどの対応策を改めて提言した。 メディア業界が頼みとするインターネット広告の実態に衝撃 メディア業界にとって、広告費は大きな収入源だ。 そのうちインターネット広告が、テレビ広告とほぼ並んだことが大きな話題になっている。 一方で、新聞や雑誌の広告収入は右肩下がりが続く。 しかし、右肩上がりで頼みの綱となるインターネット広告も、その 50 - 70% が海外に流れているという実態は衝撃的だ。 こういった情報がこれまで表に出てこなかったことについて、吉田理事は「取引相手でもある日本の個別企業では声をあげづらかった。 だから新経連で調査する意義があった。」と話す。 こういったプラットフォームビジネスで海外勢に圧倒される日本企業の努力不足を指摘する声もある。 吉田理事は国会議員を前に「便利なものが選ばれるビジネスの結果とも言える。 プラットフォームを規制しろというわけではない。 ただ、日本企業が不利な競争環境にあるという認識を持って欲しい。」と繰り返し訴えた。 これらの資料や提言は新経連のウェブサイトで公開されている。 (古田大輔、BuzzFeed = 4-25-19) |