ついにアンチも登場、全米席巻の「こんまり」ブーム

片づけの達人・近藤麻理恵、「こんまりする」は米国でも一般動詞

「彼女の名前をみない日はない!」 そんなふうに感じるほどに、いま米国では片付けコンサルタント近藤麻理恵さんの知名度が急速に高まっている。 1 月に米国で 2,500 万人の有料契約者を持つ動画配信サービス「ネットフリックス」が独自番組を配信し始めたことがきっかけだ。 西欧諸国では「モノ」としかみられない家具や洋服に対して、まるで感情を理解する存在に話しかけるように「ありがとう」といいながら、テキパキと不用品を整理整頓する姿が、米国人の目には新鮮に映った。

2001 年の米同時多発テロ事件や 08 年の金融危機を多感な時期に経験した「ミレニアルズ(約 40 歳以下)」は米国版「ロスト・ジェネレーション(ロスジェネ)」とも呼ばれ、上の世代よりも物欲が低いといわれる。 「ときめかないモノはいらない」という近藤さんのメッセージは、「大量生産・大量消費」に背を向け始めた米若年層の心に響いた。 ただ、米国での知名度が上がるとともに「アンチ・こんまり」の意見も出始めるなど、さらなる飛躍には課題も見え隠れする。

WSJ の見出しに踊った「マリエ・コンドウ」 Twitter goes full Marie Kondo - -. 2 月上旬に、米有力経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルがツイッターの決算を報じた際の見出しだ。 意訳すると、「ツイッターが事業内容を近藤麻理恵ばりに大掃除した」という感じだろうか。

ツイッターが幽霊利用者を含めて必要以上に事業規模を大きくみせる行為をやめて、ネット広告収入の拡大につながるコアなユーザー数「デイリーアクティブユーザー (DAU)」を初公開した決算内容を「こんまりした」と表現したわけだ。 ちなみに、この記事では、この決算発表後に株価が動かなかったことを「ツイッターはこんまりのようにキチンと財務指標をお掃除したのに、投資家はときめかなかった」と表現し、もう一つのこんまり用語「ときめき (spark joy)」まで登場させてみせた。

この例だけに限らず、最近の米新聞では大掃除をするという動詞として「こんどうまりえ」、「こんどう」、「こんまり」を使う例をよく見かけるようになった。 2014 年に英語版を出版して以降、一部の米国人に「お掃除の専門家」として知られてきた近藤さんの知名度は、ネットフリックスでの動画配信をきっかけに一気に全米に拡散。

人気コメディアンのエレン・デジェネレスさんやスティーブン・コルベアさんが司会を務める高視聴率番組にもゲスト出演し、「本屋に足を運ばない」や「有料配信サービスのネットフリックスは見ない」といった人たちに対する露出も増えている。 米ニュース局 CNN は今年 1 月、米国の非営利団体や中古品買い取り店舗に持ち込まれる洋服や本の数が例年の水準より高くなったことについて、「こんまり効果ではないか?」と報じている。

「こんまり揶揄」が原因で謝罪に追い込まれた有名作家

全米を席巻している感のあるこんまりブームだが、人気が出れば「アンチ」が増えるのは日本でもアメリカでも一緒だ。 例えば、書籍 1 冊 1 冊に触りながらときめくかどうかで本を整理する行為が多くの作家や読書家の逆鱗に触れた。

米有力紙ワシントン・ポストには「コンドウマリエ様、私の山積みの書籍には触らないで下さい」という見出しの記事を文芸評論家が執筆。 小説家のアナカナ・スコフィールドさんはツイッターで「本に関しては、こんまりに耳を傾けないで。 アパートも世界も本で埋め尽くそう」と訴えた。 「ときめくものだけとっておきましょう」という分かりやすいメッセージが近藤さんの人気の理由だが、下着やタッパーを捨てるのと同じ要領で書籍を扱うことには違和感を覚える米国人が多くいたようだ。

ジャーナリストでベストセラー作家のバーバラ・エーレンライクさんは、「お掃除のグル、コンドウマリエが英語を習い始めたら、米国の影響力は衰退していないって認めるわ」とツイッターでつぶやいた。 ネットフリックスの番組内では、近藤さんは専属の通訳を通じて顧客とコミュニケーションをとっている。 だがこちらのコメントには、多くの米国人から「こんまりが英語を話せないことを皮肉った差別ではないか」と批判が集中、エーレンライクさんのほうが「英語を話せないことを問題視するつもりはなかった」と謝罪する事態に発展した。

特に低賃金労働者や女性の権利などマイノリティー問題に強いジャーナリストのエーレンライクさんがこうした発言をしたことが反発を呼んだ。 米国の「こんまりファン」に近藤さんが守られた格好だ。

家事が上手で、小柄で、サラサラな黒髪 - -。 近藤さんは米国人が単純に思い描く日本人の女性像に一致する。 あえて日本語で話す戦略は現時点では成功しているように思う。 ただ長年欧米に住む筆者としては、「こうした日本人女性のステレオタイプが定着するのは時代に逆行するのではないか」との懸念もある。 特に、コメディアンの番組にゲスト出演した際に、洗濯物に顔をうずめてスカートをヒラヒラさせながら「ときめく」感じを表現してみせたときには「小学生じゃないんだから」と感じてしまった。

「こんまり」が欧米人が抱く日本人女性像に

当のコメディアンは近藤さんを紹介するときに「タイニィ(小さい)」と「タイディ(整然とした)」を言い間違えた。 だが、その後「あなたは小さい女性だからいいわよね」とその場をごまかし、大笑いしていた。 英語で言い返されないことを前提に、やや「いじり」がすぎるかなと感じる場面だった。 同じく在米歴の長い日本人女性たちにこの話しをすると、同じ番組を見て「近藤さんがバカにされているように感じた」と言う人もいた。

『人生がときめく片づけの魔法 改訂版(近藤麻理恵著・河出書房新社)』

気になって日本で活躍していた頃の近藤さんの動画を見てみたが、テキパキしたキャリアウーマン風の話し方だった。 現在のやや幼さを感じさせる振る舞いは世界進出を見据えた演出なのかもしれない。 現在、近藤さんは米西海岸に拠点を移しているという。 米国や世界で活躍する機会が増えれば、日本人女性といえば近藤さんの姿を思い浮かべる非・日本人が増えることを意味する。 これから近藤さんが欧米社会でどんな日本人女性像を提示していってくれるのか。 彼女の活躍に注目しているのは米国人以上に、日本人女性なのかもしれない。 (谷町真珠、JB Press = 2-18-19)

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バイクを綺麗に並べ「ときめき」 あの国でもこんまり流

「こんまり」こと片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんの整理術が、インドネシアでも話題だ。 インドネシアはお土産でも、食べて無くなる菓子より、形が残る物を好み、壊れた家電や古い衣服も大切にするお国柄だ。 日本や米国とは違った共感の広がりを見せている。 近藤さんは「ときめくものだけ残し、それ以外の不要なものは捨てる」と教える著書「人生がときめく片づけの魔法」で有名になった。 物があふれる時代に支持を広げ、同書は世界各地で翻訳された。 最近は米ネットフリックスが、本人出演の番組を配信し、米国でも大ヒットしている。

インドネシアでも翻訳本は 2016 年に出版され、13 刷りのベストセラーに。 主な読者は 25 - 35 歳の女性で、「片付けが大切で人生にもプラスになると気づき始めた。 こんまり流はシンプルで若者世代の文化に合致した。」と出版元ブンタン・プスタカはみる。

「いかに物を捨てるか」とは違った観点でも「こんまり流」が広がる。 ジャカルタ郊外の国立南タンゲラン第 4 高校の校庭で警備員スラマット・グナエディさん (47) は、生徒たちが乗ってきた計約 450 台のバイクをホンダ製などのメーカーと色、型別に分け、横一列にそろえる。 幼少期から整頓好きのグナエディさんが、00 年の勤務開始から自ら続けている朝の日課だ。 「帰りに見つけやすい」と生徒に評判で、ラフリ・ダッファさん (17) は「見栄えも良く気分があがる」と話す。

SNS に 1 月末に写真が投稿されると、「ときめきだ」、「こんまりのローカル版」と拡散した。 こんまり流の「色や形がバラバラなハンガーを統一させるだけで、ときめき度が上がる」との指南が多くの人を引きつけているようだ。 話題に地元の警察署は 1 日、「革新的な警備賞」と表彰。 一躍、時の人となったグナエディさんは「こんまりは知らないけど、人生で初めて賞をもらって、誇らしい」と、はにかんだ。

本に感銘を受けた学校職員アアン・フダヤさん (29) は 1 年半前から、片付け術のワークショップを 70 回開く。 参加者の多くは、同国で女性の半数を占める働く女性たち。 家事を任せきりにされる伝統のため、効率的に片付けたいとの思いが人気の背景にある。 ただ、「『ときめかないと捨てる』だと、持ち物がなくなる」、「日本みたいに引き出し収納がない」との不満も漏れた。 来客が多いリビングはどの家もきれいだが、キッチンや寝室に物が散乱するといった特徴もあった。

フダヤさんは、機能性や必要性も大事にし、インドネシアで多い大型収納での整頓術を考案。 「無駄な物を抱えないというこんまり流は素晴らしい。 ただ、日本とは文化や習慣の違いがあるので、合わないところを変えている」と話す。 地元の大手ネットニュース「ティルト」が 1 月に近藤さんを「(片付けのできない)怠け者から(ビジネスで)金を奪う日本人起業家」との見出しで報じると、SNS 上で「記事の筆者が男性だから、家の片付けに悩む女性の気持ちが分からないのだ」と、女性読者の反発が相次いだ。 (ジャカルタ = 野上英文、asahi = 2-3-19)

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新日鉄住金の資産売却へ = 徴用工訴訟で韓国原告側

韓国最高裁が元徴用工らへの賠償を日本企業に命じた問題で、新日鉄住金を相手取った訴訟の原告側弁護士は 15 日、東京都内で記者団に対し、既に差し押さえた同社の韓国国内の資産の売却命令を裁判所に申請すると表明した。 弁護士らはこの日、東京都千代田区の本社を訪問。 協議を要請したものの、対応を拒否され、実力行使に踏み切る形となった。

日本政府は「賠償問題は 1965 年の日韓請求権協定で解決済み」との立場で、協定に基づく 2 国間協議を韓国政府に求めているが、韓国側は回答していない。 原告側が差し押さえ資産の現金化に向けた手続きに着手すれば、日本政府はさらに反発を強め、仲裁委員会の設置要請や対抗措置の本格検討に入るとみられる。

原告側は新日鉄住金と韓国鉄鋼大手ポスコ(韓国・浦項市)の合弁会社 PNR の株式を差し押さえているが、弁護士は「売却命令を申請しても、手続きの完了、現金化には 3 カ月程度かかる」と予想。 「新日鉄住金が協議に応じる最後の期限となる」と警告した。 また、下級審で賠償判決が出た訴訟についても、差し押さえの仮執行手続きに入る方針を示した。 これに対し、新日鉄住金の広報担当者は「要請書は受け取った。 日本政府とも相談の上、適切に対応していく。」とコメントした。 (jiji = 2-15-19)

〈編者注〉 振り返ると、1965 年「日韓請求権協定」締結の直後から、浦項製鉄(ポスコ)創設プロジェクトはスタートしました。 その原資は日本からの賠償と借款でしたし、その技術も人材も全て日本から投入して完成させています。 そして、ポスコの稼働が、その後の韓国経済発展の端緒となったのは明確です。 今差し押さえられている「PNR の株式」は、韓国に唯一残る「日本が協力したことを示すモニュメント」的性格のものでもあります。 それまでを潰そうとする韓国の人々の気持ちを理解することは、正直、非常に難しいと言わざるを得ません。

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日本に「好感」、韓国で急落 … 最大の下落幅

公益財団法人「新聞通信調査会」は 8 日、米英仏中韓とタイの計 6 か国で行った対日好感度の世論調査を公表した。 慰安婦問題や徴用工問題で日本と関係が悪化した韓国では、日本に「好感が持てる」とした人は、「とても」と「やや」を合わせて 32.6% で、6 か国中最低だった。

韓国での好感度は約 1 年前に比べ 6.3 ポイント下落し、調査が始まった 2014 年度以降で最大の下落幅となった。 調査期間は昨年 11 月 23 日 - 12 月 3 日だったため、12 月 20 日に起きた韓国海軍による自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題の影響は反映されていない。 日本の好感度が最も高かったのはタイの 96.5% で、米国 85.7%、フランス 79.1%、英国 62.0% と続き、中国は 33.9% だった。 (yomiuri = 2-9-19)


日本が整備のケニア港、中国の担保に? 現地で懸念の声

日本政府の途上国援助 (ODA) で拡張工事が進むアフリカ・ケニア南東部のモンバサ港について、複数の地元紙が「中国からの債務の担保とされている可能性がある」と報じた。 日本政府も情報収集に乗り出した。現地では中国による融資の拡大や不透明な債務状況に懸念の声が上がっている。

ケニアでは中国輸出入銀行から約 3,200 億ケニアシリング(1 ケニアシリング = 約 1 円)の融資を受け、モンバサと首都ナイロビを結ぶ鉄道が建設され、2017 年に開業した。 だが、この事業に関し、ケニアのデイリー・ネーション紙などは昨年 12 月 - 今年 1 月、返済が滞った場合、モンバサ港の運営権を含む国内インフラを担保にするという趣旨の契約を結んでいたと報じた。 契約は 14 年で、中国側の承諾なしに内容を開示できないと定められているという。

同港は東アフリカ最大規模で、ウガンダやルワンダなど周辺内陸国への物流拠点でもある。 同港のコンテナ貨物量は過去 15 年で 4 倍に増えている。 日本は 07 年以降、同港の開発事業に約 590 億円を上限に円借款を供与し、コンテナターミナルなどを整備してきた。 13 年のアフリカ開発会議 (TICAD5) で、モンバサと周辺国を結ぶ「北部回廊」の支援を唱え、開発計画を作成。 アフリカ支援の目玉プロジェクトと位置づける。 日本政府によると、これまでのところ、日本の円借款に対するケニア側の返済は滞っていないという。

ケニア、中国両政府は昨年 12 月、同港が担保との報道について否定した。 だが、ケニア経済問題研究所のクワメ・オウィノ氏は「ケニアと中国側の契約内容はほとんど開示されておらず、債務の実態も不透明なままだ」と疑う。 ケニアの日本大使館と国際協力機構 (JICA) ケニア事務所は朝日新聞の取材に「ケニア政府から報道を否定する回答を得たが、事態を注視している」としている。 (モンバサ = 石原孝、asahi = 2-5-19)


米に寒波、氷点下 41 度 中西部、南極より低温

米中西部などの広い地域が 30 日から 31 日にかけて記録的な寒波に襲われ、ミネソタ州パークラピッズで氷点下 41 度に達するなど各地で数 10 年ぶりの寒さを記録した。 南極点近くのアムンゼン・スコット基地(氷点下 31.7 度)の気温を下回った場所も多く、強風により複数の地点で体感温度が氷点下 50 度前後に達した。

ロイター通信などによると、寒さが関係したとみられる死者は 31 日までに、少なくとも 12 人となった。 各地で郵便配達は停止、学校は軒並み休校となり、一部の州は非常事態を宣言した。 中西部イリノイ州北部のロックフォードでは 3 日、記録が残る 1905 年以降で最も寒い氷点下 34 度を記録した。 CNN テレビは同州シカゴは「アラスカや南極より寒くなる」と警告した。 ミシガン、ウィスコンシン両州などで 29 日以降、凍死したとみられる遺体が見つかり、東部ペンシルベニア州では吹雪となり、数 10 台が絡む多重交通事故が起きた。 (kyodo = 2-1-19)

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豪州は異常な猛暑、南部で 46 度超 魚や動物が大量死

米国と豪州で異常気象が猛威

米国が記録的な寒波に見舞われる中、南半球のオーストラリアは長引く干ばつに続く猛烈な熱波に覆われている。 全 8 州と準州で毎週のように気温が上がり続け、道路は溶けてインフラは故障、各地で動物や魚の大量死が相次いでいる。 南オーストラリア州アデレードの気温は 24 日に観測史上最高の 46.6 度を記録した。 オーストラリア気象庁は 1 日、1 月は同国史上最高の暑さだったと発表し、これほどの猛暑は「前代未聞」と形容した。

気温が 40 度を超えると人体は熱疲労を感じるようになり、41 度を超えると身体に障害が出ることもある。 衛生当局はオーストラリア全土で警報を出し、気温が高い日中は屋内にとどまり、運動は控えて水分を取るよう呼びかけている。 しかし気候変動に対して何も対策を講じなければ、今回の猛暑はオーストラリアの異常気象問題の始まりになるかもしれないと指摘する専門家もいる。

オーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO) のマイケル・グロース研究員によると、最悪の場合、オーストラリアでは 2100 年までに、気温が 40 度を超す日数が年間最大で 22 日に達する可能性がある。 「たとえ(温室効果ガスの)排出量が非常に少なかったとしても、記録的な暑さになる日は増えるだろう」と同研究員は予想する。

1 月にはニューサウスウェールズ州のダーリング川で、猛暑のために死んだ大きな魚の死骸を抱えて政府に対策を求める 2 人の男性の動画が注目を集めた。 同地では魚の大量死が相次ぎ、数千匹の腐った死骸が水面を覆っている。 犠牲は魚にとどまらない。 北部準州では野生の馬数十頭の死骸が、干上がった水飲み場の周辺で見つかった。 ビクトリア州では 2,000 匹以上のオオコウモリが熱波のために死に、ニューサウスウェールズ州やクイーンズランド州でもオオコウモリの大量死が伝えられている。

南部のタスマニア州では山火事が相次いで民家や野生生物の被害が拡大。 消防隊が消火作業に追われている。 タスマニア州知事は 30 日、状況はさらに悪化する恐れがあるとの見通しを示した。 ビクトリア州や南オーストラリア州では、エアコンや扇風機の使用が激増して発電施設が需要に対応できなくなり、数十万世帯が断続的な停電に見舞われた。 こうした中で、経済協力開発機構 (OECD) はオーストラリアの環境政策を批判する報告書を発表。 同国政府に対し、生物多様性を守り、異常に高い化石燃料への依存を減らすよう求めている。 (CNN = 2-1-19)


高橋留美子氏、仏漫画祭グランプリ 「少年漫画の女王」

「うる星やつら」、「めぞん一刻」、「らんま 1/2」、「犬夜叉(いぬやしゃ)」などで知られる漫画家の高橋留美子さん (61) が、フランスの第 46 回アングレーム国際漫画フェスティバルでグランプリに選ばれた。 「漫画界のカンヌ」とも呼ばれる祭典で、日本人のグランプリは 2015 年の大友克洋さん以来、2 人目。 1,672 人の漫画家による投票で決まった。 同フェスは公式サイトで、高橋さんが女性の漫画家としては珍しく、少年漫画を主な活躍の場にしてきたことを紹介。 「漫画のしきたりを初めて超え、少年漫画の女王になった」と評した。

高橋さんの絵は「手塚治虫の特徴を柔らかく現代化している」とも指摘。 日本のことわざ「出る杭は打たれる」を引き合いに出し、「違いを受け入れない社会の中で、高橋さんは常にアウトサイダーや変人に焦点をあて、彼らにもチャンスがあることを示そうとしてきた。 コメディーでありながらも進歩的で、欠点はあっても人間味にあふれる登場人物たちが世代を超えて読者に愛されている。」と論評している。

高橋さんは 24 日、「この度は栄誉ある賞をありがとうございます。 今後の創作活動の励みになります。 ありがとうございました。」とコメントを出した。 週刊少年サンデー編集部(小学館)によると、高橋さんは 17 年に「境界の RINNE」の連載を終えていたが、今春、同誌で新連載が始まる予定だという。 (加藤勇介、asahi = 1-24-19)


仏デモ続く、一部が政府庁舎に侵入し警官隊と衝突

[パリ] フランス各地で 5 日、マクロン政権に反発するデモが再び起き、パリでは一部の参加者がフォークリフトを使って政府庁舎に侵入したほか、観光名所シャンゼリゼ通り周辺で車に放火するなど暴徒化し、警官隊と衝突した。  この日のデモはパリのほかボルドー、トゥールーズ、レンヌ、マルセイユなどで行われ、全国で約 5 万人が参加した。

パリのデモは穏やかに始まったが、一部の参加者が警官隊を殴り、路上のバイクや車などに放火したことを受けて衝突に発展した。 仏当局は週末に行われているこうしたデモへの対応に苦慮しており、警察の対応のあり方だけでなく、失業手当のルール厳格化や公務員の削減などの改革推進を目指すマクロン政権運営にも問題を提起している。

マクロン大統領は 6 日、「(フランス)共和国やその守護者、代表、象徴が過激な暴力によって再び攻撃された」とツイッターに投稿した。 11 月に始まった「黄色いベスト運動」と呼ばれるデモはクリスマス休暇にかけて一時勢いを弱めたかに見え、マクロン政権は運動に対する態度を硬化させていた。 グリボー政府報道官は 4 日、経済の再構築に向けた改革の取り組みは弱めないと強調し、デモをなお続けているのは政府転覆を望む扇動者だと非難した。

5 日のデモでは参加者が政府庁舎に侵入し、複数の車を破壊。グリボー報道官は裏口から避難する事態となった。 報道官はその後、「攻撃されたのは私ではなく共和国だ」と述べた。 マクロン大統領は 12 月、最低賃金の引き上げや年金生活者を対象とした減税などの対策を発表し、事態の沈静化に努めたが、その後もデモは続いている。

ペニコ労相は、長引く混乱が海外からの投資に打撃を及ぼしていると警告した。 野党からは運動側の要求に対する具体的な提案を示すよう求める声が上がっているが、閣僚らは少数のトラブルメーカーの要求に屈するべきではないとの立場で、ブランケール国民教育相は LCI ニュースで「最も大声で泣く者に耳を傾ける国であってはならない」と述べた。 (Reuters = 1-7-19)

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仏大統領「譲歩」後、初のデモ 事態収束は不透明

【パリ 賀有勇】 フランスの反政権運動「黄色いベスト」が 15 日、5 週連続となるデモを実施した。 マクロン大統領が最低賃金の引き上げなどの「譲歩」を表明後の初のデモで、事態収束に向かうかどうかを占うことから、参加者数などが注目された。 仏テレビによると、同日正午(日本時間同日夜)ごろまでにパリでは、数千人がデモに参加、85 人が拘束された。

パリではこの日、前回 8 日のデモと同様、8,000 人の警察官とともに装甲車や放水車が配備された。 凱旋門付近などに集まった参加者らは「マクロン(大統領)は辞任しろ」などと叫びながらシャンゼリゼ通りを行進した。 クリスマス商戦さなかのデモで、仏国内には経済的な影響が出ている。 前回デモの際に休業したパリの老舗百貨店は今回、破壊行為の被害が及ばないように警察官らが警備にあたって営業した。

前回のデモには仏全土で約 14 万人が参加した。 パリや南西部ボルドーでは一部が暴徒化し、2,000 人近くが拘束されるなど、大荒れとなった。 一連のデモによるけが人は数百人に上るほか、交通事故なども頻発し、デモに関連して 6 人の死者も出ている。 デモ参加者から大統領辞任を求める声も出るなか、デモに関して積極的な発言を控えてきたマクロン氏は 10 日のテレビ演説で、最低賃金の引き上げや今年末のボーナスや来年の残業代を非課税とすることなどを約束した。 デモ参加者らに譲歩することで、デモの鎮静化を図り、「大統領は傲慢」とのイメージを払拭して「国民に寄り添う大統領」の演出をした形だ。

マクロン氏の演説直後の世論調査では「デモの終了を望む」との回答が 54% で、「続行」の 45% を上回った。 世論は依然として二分されているものの、今月上旬までは 7 割超がデモを支持していた。 国民がマクロン氏の姿勢に一定の理解を示したともいえるが、さまざまな不満を訴えるデモ参加者が抗議行動をやめることにつながるかは不透明だ。 15 日、電気代やガス代の値下げを求めてパリのデモに参加した自営業のパトリック・ドルーエさん (55) は「偉そうなマクロン氏もようやく耳を傾けた。 いま圧力を弱めるべきではない。」とデモ継続を訴えた。 (mainichi = 12-15-18)

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仏抗議デモ、約 1,000 人拘束 = 4 週連続、収束見えず - エッフェル塔、デパート休業

【パリ】 フランスで 8 日、燃料税増税への抗議運動に端を発したデモが行われ、AFP 通信によれば、全土で約 3 万 1,000 人が参加し、パリで 650 人以上、仏全体では 950 人以上が拘束された。 治安当局が全土で警官ら約 9 万人を動員して厳戒態勢を敷く中、シャンゼリゼ通りなどパリ中心部でデモ隊と治安部隊が衝突し、当局側は催涙弾と放水車で対応。 仏メディアは、パリで 30 人以上が負傷したと報じた。

エリゼ宮(大統領府)周辺は安全確保のためデモ開始前から封鎖され、住民以外の通行が禁じられた。 また、デモ隊が過激化する事態を懸念し、パリのエッフェル塔や美術館、デパートなどが臨時休業した。 毎週土曜に行われるデモは回を重ねるごとに激化し、今回で 4 回目。1 日のデモでは、仏全土で治安部隊を含む 260 人以上が負傷、680 人以上が拘束された。 事態を重く見た政府は 5 日、燃料税の来年中の引き上げを断念した。 しかし、大学の学費値上げなどに反対する高校生や大学生らも抗議運動に合流し、収束の兆しは見えていない。

フィリップ首相は 7 日夜、抗議運動を呼び掛ける団体の代表らと面会した。 団体メンバーの 1 人は「これは緊急事態だ。 大統領はわれわれが表明した不満を考慮しなければならない。」と語り、マクロン大統領との対話を要望した。 7 日付の仏経済紙レゼコーによると、調査会社エラブの世論調査で、マクロン大統領の支持率は就任以来最低の 23% に落ち込んでいる。 (jiji = 12-8-18)


日経平均、一時 2 万円割れ 下げ幅 700 円超す

日米の株式相場が大きく下落している。 日経平均株価は 2019 年最初の取引となる 4 日の大発会で、一時 700 円を超える大幅安となった。 米アップルが 2 日に売上高見通しを下方修正。 中国での景況感悪化も意識され、投資家がリスク回避の姿勢を強めている。 3 日の米ダウ工業株 30 種平均が急落したことを受け、動揺がアジア市場にも広がっている。

午後 1 時時点の日経平均は前週末比 538 円 86 銭 (2.7%) 安の 1 万 9,475 円 91 銭。 昨年末に回復した 2 万円の大台を再び下回った。 取引開始直後から幅広い銘柄に売りが膨らみ、東京証券取引所第 1 部に上場する銘柄の約 8 割が下落した。

きっかけは 1 8年末から 19 年初にかけて海外で発表された企業業績や景気指標の悪化だ。 アップルの売上高見通し引き下げをきっかけに、ダウが急落。 中国国家統計局が 18 年 12 月 31 日に発表した 12 月の購買担当者景気指数 (PMI) が好不調の目安となる 50 を割り込んでいたこともあり、米中貿易戦争の影響が具体的に表れ始めたとの見方が広がった。

4 日の東京市場ではスマートフォン関連銘柄が総崩れとなった。 村田製作所が一時 13% 安と約 2 年 2 カ月ぶりの安値水準をつけた。 ロームや TDK も大幅に下げている。 中国関連ではコマツや日立建機に加え、ユニ・チャームなど消費関連も売られている。

東京証券取引所の大発会では午前 9 時、359 円安で始まった日経平均株価が大型画面に映し出されると、参加者 430 人からため息が漏れた。 日本取引所グループ (JPX) の清田瞭最高経営責任者 (CEO) は大発会で「亥(い)固まる」との相場格言に触れた上で「下値を探る場面もあるかもしれないが、底値を踏み固めて大きく飛躍してほしい」と述べた。

清田氏は足元の相場環境について「米国は波乱の幕開けになったが、企業のガバナンス(企業統治)や稼ぐ力の向上に期待したい」と指摘。 今後の見通しは「年初に悪くても年末には良くなるという期待を持っている」と話した。 麻生太郎副総理・財務相は、18 年に始まった「積み立て型少額投資非課税制度(つみたて NISA)」などに触れ、「国民の資産形成の流れが広がることを期待したい」と強調。 総合取引所についても「早期実現を積極的にサポートする」と述べた。

アジア市場では、2 日から取引が始まっている台湾の加権指数が続落して始まった。 電子部品や半導体関連銘柄が下げている。 世界景気の不透明感を反映し、円相場で円高が急速に進んだことも日本株相場の重荷だ。 トヨタ自動車などの輸出関連銘柄の業績悪化が懸念されている。 もっとも、急落後は割安と見た投資家の買いが膨らみ、下げ幅を縮小する場面もあった。 (nikkei = 1-4-19)

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NY ダウ大幅下落 653 ドル安 米政権運営を不安視

週明け 24 日のニューヨーク株式市場は、米トランプ政権が不安定さを増していることへの警戒感から、大企業でつくるダウ工業株平均が 4 営業日連続で大幅に下落した。 前週末比 653.17 ドル (2.91%) 安い 2 万 1,792.20 ドルと、ほぼ 1 年 3 カ月ぶりの安値で終えた。 この米株安の流れを受けて、25 日の東京市場で日経平均株価が 2 万円割れする可能性がある。

ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数も急落。 同 140.07 ポイント (2.21%) 低い 6,192.92 で引けた。 株安によって投資家心理が悪化し、24 日のニューヨーク商業取引所では原油価格も急落。 国際指標となる「米国産 WTI 原油」の先物価格は、前週末比 3.06 ドル (6.7%) 安い 1 バレル = 42.53 ドルと約 1 年半ぶりの安値で終えた。

トランプ大統領が「国境の壁」の建設費用計上を求めてつなぎ予算の署名を拒み、米連邦政府の一部機関が 22 日から閉鎖された。 閉鎖が長引きそうだとの観測もあり、米経済への悪影響が懸念されている。 マティス国防長官の退任をめぐるトランプ政権の混乱ぶりも市場の不安を深めた。 (ニューヨーク = 江渕崇、asahi = 12-25-18)

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業績懸念の米アップル株急落で … NY 市場、大幅安続く

20 日のニューヨーク株式市場は、業績懸念が出ている米アップル株が急落したことなどを受け、大企業でつくるダウ工業株平均が大幅続落した。 終値は前日比 551.80 ドル (2.21%) 安い 2 万 4,465.64 ドルだった。 前日からの下げ幅は一時、648 ドルに達した。 ダウ平均を構成する 30 銘柄すべてが値を下げ、年初来でもマイナスに転じた。 ハイテク株が中心のナスダック市場の総合指数も続落。 同 119.66 ポイント (1.70%) 低い 6,908.82 で取引を終えた。 節目となる 7,000 を切り、7 カ月半ぶりの安値となった。

新型 iPhone (アイフォーン)の販売不振が相次いで報じられているアップルは 4.8% 安で、前日に続く大幅下落。 この 1 カ月で 20% 近く値下がりした。 米金融大手ゴールドマン・サックスは、アップルの目標株価を引き下げた。 朝方にディスカウントチェーン大手ターゲットが発表した四半期決算は、既存店売り上げなどが市場の予測を下回った。 米消費の先行きに警戒感が強まり、幅広い小売り関連株に失望売りが広がった。

世界経済の減速懸念が強まる中、ニューヨーク商業取引所では原油価格の指標となる「米国産 WTI 原油」の先物価格も急落。 前日比 3.77 ドル (6.6%) 安の 1 バレル = 53.43 ドルと、ほぼ 1 年 1 カ月ぶりの安値で引けた。 これを受け、シェブロンやエクソンモービルなどのエネルギー株も大幅下落した。

米国市場の流れを受け、21 日の東京株式市場で日経平均株価は続落して取引が始まった。 石油や鉄鋼などが売られ、下げ幅は一時、300 円を超えた。 午前の終値は、前日の終値より 135 円 59 銭安い 2 万 1,447 円 53 銭。東京証券取引所の第1部全体の値動きを示す TOPIX (東証株価指数)は 15.73 ポイント低い 1,609.94 だった。(江渕崇 = ニューヨーク、福山亜希、asahi = 11-21-18)


津波原因のインドネシアの火山、高さが 3 分の 1 に

22 日にインドネシア・ジャワ島西部のスンダ海峡で発生した津波の原因となったクラカタウ火山の高さが海抜 338 メートルから約 3 分の 1 の 110 メートルに減少した。 同国の火山地質災害軽減センター (CVGHV) が明らかにした。

同センターの報告書によると、24 - 27 日までに発生した噴火で火山の体積も 1 億 5,000 万 - 1 億 8,000 万立方メートル減少し、現在の火山の体積は 4,000 万 - 7,000 万立法メートルほどだという。 22 日の津波の原因となった噴火で、64 ヘクタールに及ぶクラカタウ火山の土砂の塊が海に滑り落ちた。 またインドネシア政府は 29 日、先週の津波による死者数を 430 人から 426 人に引き下げた。 一部の集計に重複があったという。 インドネシア国家防災庁の報道官は 28 日の記者会見で、7,202 人が負傷、29 人が行方不明で、4 万 3,386 人が避難したと述べた。 (CNN = 12-30-18)

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インドネシア津波 アナック・クラカタウの山体崩壊 日本の衛星がとらえていた!

インドネシア・スンダ海峡で津波を引き起こしたアナック・クラカタウ山の噴火の直後に、火口の南西側で山体崩壊が起こっていたことが地球観測衛星「だいち 2 号」のデータ解析で明らかになった。 噴火が発生したのは現地時間 22 日夜、スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡にそびえるアナック・クラカタウ山で爆発が発生し、その約 20 分後、2 島の沿岸地域を津波が襲った。

海上に犠牲者の遺体も …

インドネシア国家防災庁 (BNPB) のストポ・プルウォ・ヌグロホ・報道官によると 25 日現在、津波による犠牲者は、死者 429 人、負傷者 1,485 人、行方不明者 154 人に増加。 これまでに住宅 883 棟、ホテル 73 軒、商業施設 60 軒が倒壊し、1 万 6,082 人が避難所で生活している。 現在は、海軍や捜索救助隊が津波で島外に流された犠牲者の遺体を捜索しており、被害の規模はさらに拡大する可能性があるという。

津波の原因について、BNPB はこれまでに火山の噴火によって海底で地すべりが発生したと発表しているが、噴火に伴って山体崩壊が起きていたことが日本の地球観測衛星だいち 2 号がとらえたデータ解析で明らかになった。 国土地理院によると、噴火前の 8 月 20 日と噴火後の 12 月 24 日に撮影されたレーダー画像を比較した結果、島の南西部がえぐり取られたかのように消失しており、山体崩壊が起こったことにより、津波が発生した可能性を示している。

アナック・クラカタウ山は今年 6 月以来、ほぼ毎日噴火を繰り返しており、最盛期には 1 日 99 回観測されたこともある。 地元メディアの報道によると、ジャワ島の西海岸で漁師を営む 27 歳の男性は、津波発生前の 22 日午後 9 時ごろ、火山からオレンジ色の溶岩が噴出したのち、海面の水位がゆっくりと下がり始め、対岸の海で波が白くなったかと思うと海面が急激に上昇。 20 - 30 分後には、乗っていたボートの周囲で高波が立ち上がり、仲間の漁師と 10 隻のボートと一緒に必死になって操舵したことを同国の気象庁 (BMKG) に証言しているという。 (HazardLab = 12-26-18)


宇宙戦争、もう映画だけではない時代 日本が演習初参加

10 月中旬、米アラバマ州マックスウェル空軍基地内の一室。 米国、英国など国ごとに仕切られたブースの一つで、日本の防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) などの職員が机上のパソコン画面を見つめていた。

同月 9 - 19 日の間、米空軍宇宙コマンドが主催した多国間机上演習「シュリーバー・ウォーゲーム」での光景だ。 米軍の宇宙関連の部隊や米政府機関からの約 350 人のほか、日本を含む 7 カ国が参加した。 演習名の由来は、米軍の大陸間弾道ミサイル (ICBM) の開発や宇宙活用に大きな功績を残したシュリーバー元空軍大将の名前にちなむ。

演習の内容は「機密」扱いだが、複数の政府関係者によれば、想定はこんなシナリオだったという。 2028 年。 太平洋からインド洋の東側までを担当する米インド太平洋軍の管内で、米国の偵察衛星や通信衛星が「ある競合国」から攻撃や電波妨害を受け、軍事作戦に欠かせない全地球測位システム (GPS) もダウンした - -。

宇宙空間での軍事作戦をテーマに 2001 年に始まったこの演習は今年で 12 回目。 北大西洋条約機構 (NATO) 加盟国の一部が加わった年もあったが、多くは軍事諜報の世界で「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米、英、豪州、カナダ、ニュージーランドの 5 カ国を中心に続けられてきた。 そんな「極めて秘匿性が高いインナーサークル(自衛隊幹部)」の演習に日本が招待を受け、今年、初めて参加したのだ。

背景にあるのは、現代戦における「宇宙」の比重の大きさだ。 新たな防衛大綱の策定に関わる政府関係者はこう話す。 「弾道ミサイル発射の兆候も含めて情報収集や警戒監視、通信、測位、気象観測 …。 陸海空の作戦と装備は、宇宙に深く依存している。 相手の宇宙インフラを使えなくすれば、死傷者を出さずに陸海空の戦いで圧倒的に有利になる。 だから、現代の戦争は宇宙とサイバーから始まる。 宇宙を制する者は現代戦を制すだ。」

演習では、シミュレーションが繰り返されたという。 衛星が使えなくなった米軍が作戦を続けるために、欧州の測位衛星システム「ガリレオ」や「日本版 GPS」と呼ばれる準天頂衛星「みちびき」では、どんな支援ができるのか。米軍が他国の暗号コードを使うための技術的な課題やそれぞれの国の国内法上の制約は何か。 各国で対応を検討し、米国と調整を重ねた。 もはや日本も無縁でなくなっている。

各国の宇宙政策に詳しい鈴木一人(かずと)・北海道大学大学院教授は「南シナ海で米中の軍事的衝突の恐れが高まった時、最初に狙われるのは宇宙システム。 米国の衛星が攻撃を受けたときに、同盟国と連携して被害を最小限にとどめ、リスクを分散し、機能を維持していけるのかを探るのが演習の狙い。」と解説する。 宇宙を舞台に「米 vs. 中国・ロシア」という対決の構図が鮮明になりつつある。 一方、人工衛星やロケット開発で生じた大量の宇宙ゴミは、各国共通のリスクだ。 防衛省・自衛隊は、後者の解決をとば口に、宇宙への関わりを深めようとしている。 (編集委員・土居貴輝、asahi = 11-25-18)