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台風の被害額、農林水産で 1,700 億円超 さらに拡大も

今秋に東日本を襲った台風 15、19 号による農林水産業の被害額が、27 日までの国の集計で 1,700 億円を超えている。 まだ未把握の被害があるうえ、千葉県を中心に浸水被害をもたらした先週末の台風 21 号の被害も加えれば、さらに膨らむ見通し。 実りの秋を迎えていた農業に大きな爪痕が残されている。 農林水産省が 27 日までに各都道府県から受けた報告の集計では、9 月に上陸した台風 15 号の被害額は 509 億 2 千万円、10 月の台風 19 号は 1,221 億 7 千万円。 この二つの台風により、計約 3 万 3 千ヘクタールの農作物や果樹、67 万頭羽を超える家畜のほか、農業用ハウスなどでも約 2 万 6 千件の被害があった。

農地の損壊は約 8 千カ所、農業用施設の被害は約 9 千カ所で確認されている。 ただ、都道府県が把握していない被害が数多く残っているとみられ、被害の全容はいまもつかめていない。 特に台風 19 号の被害額は 1 日で数十億円規模で積み上がっており、今後も拡大することが確実だ。 また、25 日には台風 21 号にともなう記録的な大雨により、千葉県の市原市や茂原市、佐倉市などで浸水被害が発生。 被害額は未集計だが、県によるとネギやイチゴ、ダイコン、ダイズなどの野菜のほか、農地や畜舎、林道、漁港など県内 38 市町で被害が確認されているという。

政府は離農を防ごうと、早期復旧に向けた査定の効率化や被災農家への無利子貸し付けなどの総合的な支援策を台風 15 号を機にまとめ、19 号にも適用した。 さらに、浸水による泥の堆積など、19 号の被害を踏まえた追加対策を近く打ち出す方針だ。 (asahi = 10-27-19)

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台風 19 号の農林水産被害 249 億円

農林水産省は、台風 19 号による農林水産関係の被害額が現時点で 249 億円にのぼると発表しました。 今回の台風 19 号は、河川の氾濫による作物の浸水や強風によるビニールハウスの倒壊など、農林水産業に大きな被害を与えました。 農林水産省によりますと、その被害額は長野県や福島県など 30 の都府県で 249 億 2 千万円にのぼります。 ただ、いまだに詳しい被害状況が分かっていない地域も多く、農水省は「今後、被害額が増える可能性もある」としています。 「週末、大変な雨が降る予想になっていますので、緊張感をもってあらゆる事態に備える対応を。(江藤拓農水相)」 農水省は週末に予想される大雨が更なる被害をもたらす恐れがあるとして、警戒を呼びかけています。 (TBS = 10-18-19)


海岸覆うごみ、ごみ、ごみ 台風の爪痕、世界遺産の地に

台風 19号の影響で、太平洋側の海岸に大量のごみが漂着した。 各地で撤去作業が続くが、漁業への影響のほか、世界文化遺産の構成資産である三保松原(みほのまつばら、静岡市清水区)では、ごみの影響に加えて塩害も心配されている。

神奈川県大磯町の大磯海水浴場。 海岸を清掃する「かながわ海岸美化財団」から依頼された業者らが、ごみの撤去を続けている。 16 日に訪れると、砂浜に流木などが大量に流れ着いていた。 レジ袋や釣り糸が絡みついたものも。 近くのゴルフ場からか、ゴルフボールも多く交じり、携帯電話のケースやペットボトルなどのプラスチックごみも目立つ。 手作業でプラごみを取り除いた後、流木を重機で運び出す。

いったん沖に流されても風向き次第で再び海岸に打ち上げられる可能性がある。 同財団は 9 月の台風 15 号で県内の海岸に計 180 トン程度のごみが漂着したと推定しているが、清掃を委託された紺野厚夫さん (63) は「台風 15 号よりはるかに多く、いつ終わるか見通しが立たない。 少しずつやるしかない。」と語る。 海洋プラごみなどに詳しい二瓶泰雄・東京理科大学教授は「大雨の時に川から運ばれてきたごみも相当含まれている」と指摘する。

東京湾では神奈川県側の横須賀市付近から千葉県にかけて各地で大量のごみが漂着した。 加えて、第 3 管区海上保安本部によると、19 号が上陸した 12 日に川崎市沖合で沈没した貨物船の燃料(重油 61 トン)の一部が流出、横須賀市や千葉県富津市でも確認された。 富津岬では 17 日、ごみが約 2 キロにわたって海岸に漂着していた。 木の枝やタイヤ、サッカーボール。 「川崎市多摩川管理事務所」とあるゴルフ禁止の看板、不法投棄禁止を呼びかける東京都八王子市からのものとみられる看板も。 近くの潮干狩り場や漁港もごみで海面が見えないほどだ。

富津で盛んなノリ養殖にもごみは影を落とす。 富津漁業協同組合の平野秀夫副組合長 (71) によると、漁協組合員ら 100 人以上が港などで撤去に取り組んでいるが、ノリ養殖場のごみは大型の船でないと取れずに時間がかかり、収穫に影響が出ているという。 船のスクリューにごみを巻き込むと危ないため、漁師も出漁できない日が続く。 「こんな途方にくれるほどの量は初めてだ。」 三重県鳥羽市の答志島などでも、多くのごみが漂着した。

国土交通省と農林水産省によると、台風 19 号で宮城、福島、茨城、千葉、神奈川の 5 県から漂着ごみ処理の補助申請に向けた報告が来ている。 国交省によると、海岸に漂着したごみは自治体が処分することが多いが、炉を傷めないよう焼却前に塩分を洗い落とす必要があるなど手間がかかる。 分別しないと産業廃棄物扱いとなり処分費用がかさむという。

昨年 7 月の西日本豪雨では中部 - 九州地方で漁業に影響が出るほどの漂着ごみが出た。 2017 年 7 月の九州北部豪雨でも有明海に大量の流木や土砂が流れ込み、漁船の故障やアサリが死滅するなどの被害が生じた。 17、18 年度とも被災地を中心に少なくとも 4 万立方メートルの漂着ごみが回収された。 (杉本崇、小木雄太)

松 200 本枯れたことも

7 キロの海岸に 3 万本の松が並ぶ世界文化遺産の富士山の構成資産の一つ「三保松原(静岡市清水区)」。 海岸沿いの松林越しに富士山を望む風景を楽しめるが、19 号で大量の流木などが海岸に漂着しただけでなく、強風で松 6 本が倒れた。また少なくとも 9 本は高潮で根元が浸食された。 今後塩害で松枯れが広がらないか静岡市が警戒している。

高潮による塩害で松枯れが広がるおそれがあるため、市は土の入れ替えや散水を始めた。 17 年度にも台風による塩害で約 200 本が枯れたといい、市三保松原文化創造センターの担当者は「今後も 2 年ほど松の様子を注視する必要がある」と話す。 三保松原は 13 年の世界文化遺産の登録後に観光客が急増した。 根や周囲の土が踏まれて根が弱ったため、立ち入り制限区域を設けるなどの対策を進めていた。 (asahi = 10-23-19)


武蔵小杉の 47 階建てタワマン断水 24 階より下が停電

台風 19 号の影響で、東急東横線武蔵小杉駅近くの 47 階建てタワーマンション 1 棟が、24 階まで停電したまま、エレベーターが使えない状況になっている。 川崎市が取材に明らかにした。 地下 3 階の電気系統の設備に浸水したためで、断水は全戸に及んでいる。 高さ約 161 メートル、643 戸のマンションは、ポンプで水をいったん上層階までくみ上げ、各世帯に供給する仕組みとなっているが、停電によりポンプが動かず、全戸で断水、トイレも使えない。 管理会社が水や携帯するタイプのトイレを住民に提供している。

電気系統のシステムは、1 階から 24 階までと、25 階から上階に分かれている。 エレベーターが動かない階の住民は、階段を使わざるを得ないという。 住民らによると、エレベーターが止まっているため、真っ暗な非常階段を、懐中電灯を使って移動している。 高層部分に住む女性は「管理組合から『長引きそうだ』との説明があった。 しばらく別の場所に行く。」と話し、スーツケースを持って駅に向かった。

住宅と工場の街だった武蔵小杉駅周辺は 2007 年の工場移転をきっかけに開発が進み、10 年の JR 横須賀線武蔵小杉駅開業で開発はさらに加速。 新宿、渋谷、横浜、成田空港が JR や東急線でつながる交通の利便性が人気を呼んでいる。 現在、駅周辺には 11 棟のタワーマンションが完成している。 (石原剛文、大平要、asahi = 10-15-19)

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調整池が機能「首都圏大洪水防げた」 上空から識者分析

12 日午後、朝日新聞ヘリから災害に詳しい安田進・東京電機大名誉教授(地盤工学)が、台風 19 号によって関東平野の各地で氾濫した河川の状況を見て回った。 浸水で多くの利用者らが一時孤立した特別養護老人ホームがある埼玉県川越市では、東京湾に注ぐ荒川水系の越辺(おっぺ)川の堤防が決壊しているのが見えた。 確認できたのはカーブの出口で、安田さんは「水が勢いよくぶつかり、堤を削ったのではないか」と話した。

栃木県佐野市では利根川水系の秋山川が決壊。 「堤防が低く、水位が上がると決壊しやすい」との見方を示す一方、流れは比較的直線で詳しい原因調査が待たれると述べた。 安田さんは、より多くの水を集め、流域面積が広い大河川やその支流が各地で氾濫したことを挙げ、「19 号が広範に記録的な雨を降らせたことが改めて浮かび上がった」と語った。 その一方、荒川の調整池である彩湖や、利根川水系の渡良瀬川が流入する渡良瀬遊水地にも大量の水が流れ込んでおり、「これらが機能し、下流の首都圏の大洪水を防ぐことができた」との見方も示した。

川崎市高津区で、マンション 1 階が水没し男性が亡くなった現場は、多摩川と支流の平瀬川が合流する地点にほど近い。 平瀬川は 12 日午後からあふれた。 「当時、多摩川の水位がかなり高かったことが想像される。 平瀬川が流れ込みにくくなりあふれたかもしれない。」と安田さん。 平瀬川を管理する事務所の職員も、多摩川から逆流した可能性を指摘する。 この「バックウォーター現象」は昨年の西日本豪雨で大きな被害が出た岡山県倉敷市真備町でも起きた。

飛行途中、埼玉県秩父地方の山間部も通ったが、大規模な土砂崩れは見当たらなかった。 雨が長く降り続いて地盤が緩むのではなく、「山間部に一気に多量の雨が降り、川に流れ込んで洪水を引き起こしたのではないか」と安田さんは話した。 (桑原紀彦、asahi = 10-14-19)

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洪水防ぐ「地下神殿」 4 年ぶりフル活動 担当者ひやひや

大雨を降らせた台風 19 号を受けて、「地下神殿」とも言われる「首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)」が、川の氾濫を防ぐために活用されている。 調圧水槽に水をため、ポンプで川幅が広い江戸川に排出する仕組みだ。 2006 年に完成し、すべての施設がフル活動するのは、茨城県の鬼怒川が氾濫した 2015 年の関東・東北豪雨以来 2 回目という。 地下 50 メートルを流れる世界最大級の放水路。 全長 6.3 キロある。 近隣の中川、倉松川、大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)、18 号水路、幸松川の 5 河川の水位が上がると、調圧水槽に水をためる。

江戸川河川事務所によると、12 日午前 11 時半に、18 号水路から水が入り始め、午後 6 時には 5 河川すべての水が流入した。 5 河川すべての水位が基準以上に上がることは珍しいという。 同日午後 7 時 10 分にポンプを使って江戸川への排出を開始。 ただ、13 日の朝方にかけて、江戸川の水位も上がり始めたため、担当者は「ひやひやしました」と振り返る。

その後、江戸川の水位は下がり、今も流入流出を繰り返している。 地下神殿で一度にためられる水量は 67 万立方メートルで、東京・池袋の「サンシャイン 60 ビル」の容積と同程度という。 12 日から 14 日朝までに 1 千万トン、サンシャイン 60 ビル 15 杯分を排出した。 15 年の関東・東北豪雨ではおよそ 2 倍の 1,900 万トンを排出した。 (江戸川夏樹、asahi = 10-14-19)

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巨大台風、「堤防神話」崩す

台風 19 号の記録的な大雨は、全国の延べ 140 以上の河川で氾濫を引き起こした。 国土交通省は堤防整備など水害対策に力を注ぐが、財源にも限りがあることから急速には進まない。 今回のように甚大な被害をもたらす巨大台風は今後も恒常的に襲来する恐れがあり、専門家は「堤防神話」からの脱却を訴える。 この台風で堤防が約 70 メートルにわたり決壊した長野市の千曲川では住宅地など広範囲が浸水。 氾濫箇所を映像で見た岡山大の前野詩朗教授(河川工学)は「水位が異常に上がり、堤防が数十メートルにわたり削られた」とみる。

千曲川で起きたとみられるのが、あふれた水が堤防を削って決壊に至る恐れもある「越水」だ。 単純な増水による氾濫は水位の低下で収まるが、越水で堤防が損傷すれば堤防の機能が低下し浸水が長引く。 こうした事態は過去にも多く発生した。 茨城県の那珂川は本流と支流が合流する付近で氾濫。 決壊箇所が本流と支流の合流点に近く、下流に川幅の狭い場所がある場合などは支流の水が水位の上昇した本流に流れ込めずに逆流する「バックウオーター現象」が起きた可能性もある。

2018 年 7 月の西日本豪雨では、この現象によって岡山県倉敷市真備町地区などで複数の堤防が決壊した。 中央大の山田正教授(水文学)は今回氾濫が起きた河川は「いずれも川幅に対し堤防の幅が狭く、構造的に決壊しやすい」と指摘する。 「堤防の安全性は高さより幅が決め手。 2 倍の幅に広げられれば、決壊はおおむね防げるだろう。」と話す。

国土交通省は流域人口や被害想定によって、200 年に 1 度の大雨を想定した「スーパー堤防(高規格堤防)」などの整備を進める。 スーパー堤防は高さの約 30 倍の幅を確保、越水による決壊を防ぐ構造となっている。 ただスーパー堤防は一般的な堤防の 10 - 15 倍のコストがかかるとされる。 民主党政権の事業仕分けで「スーパー無駄遣い堤防」とされ、いったん廃止と判定。 その後首都圏の江戸川や多摩川、近畿圏の淀川など都市部に限り復活した経緯がある。

地球温暖化の影響で台風や大雨のリスクは高まっている。 台風 19 号も日本の南の海水温が平年より高く、エネルギー源の水蒸気を多く取り込み、日本に接近しても勢力が衰えなかったとされる。 堤防の決壊による水害は各地で続発。 西日本豪雨では死者が 200 人を超え、15 年 9 月の関東・東北豪雨では鬼怒川が決壊して茨城県常総市の 3 分の 1 が浸水した。

激甚化する災害にどう備えるか。 満潮時の水面より低い「ゼロメートル地帯」が 7 割の東京都江戸川区は 5 月、高潮などが起きれば区全体が水没する恐れがあるとして「ここにいてはダメ、全員が区外に避難を」と呼びかける異例のハザードマップを作成、今回の台風でも 12 日午前にいち早く避難勧告を出した。 前野教授は「全国各地の堤防を完全に整備するのは財政面から非現実的。 強力な堤防があれば水害が防げるはずという『堤防神話』を見直し、豪雨の時は早めに逃げるという防災意識の徹底が最も重要だ」と強調する。 (nikkei = 10-14-19)

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台風 19 号、15 号並の暴風か 気象庁が異例の緊急会見

大型で猛烈な台風 19 号は非常に強い勢力を保ったまま、12 - 13 日に四国から東北に接近、上陸する恐れがある。 気象庁は 9 日午後、通常は列島に接近する前日に行う会見を開いた。 先月、千葉県に上陸した台風 15 号と同程度の暴風で、影響は広範囲に及ぶ可能性が高いという。 同庁は最新の気象情報に留意し、特に被災地は早めに対策を取るよう呼びかけた。

同庁によると、小笠原諸島では 9 日から、沖縄・奄美や大東島地方は 10 - 11 日に大しけとなる見込み。 西日本の太平洋側では 12 日に、東・北日本は 12 - 13 日に暴風や大雨になる恐れがある。 台風 19 号の進路は太平洋高気圧の張り出しによって決まる。 同庁は「一番接近の可能性が高いのは東日本」とする一方、台風が西寄りに進んだ場合、近畿や四国に上陸し、その後、北陸や東北などへ北上する可能性もあるという。

同庁によると、台風 19 号は 9 日午後 3 時現在、小笠原近海を時速 15 キロで北北西へ進んでいる。 中心気圧は 915 ヘクトパスカル、最大風速は 55 メートル、最大瞬間風速は 75 メートル。 台風の北上に伴い、太平洋上の前線も北上。 台風の接近を前に、10 日夜には伊豆諸島で、その後、千葉県でも雨が強まる恐れがあるという。 (金山隆之介、asahi = 10-9-19)


千葉・館山などでまた停電 7,100 戸 台風の影響は不明

9 日午前 10 時ごろ、千葉県館山市の約 6,800 戸と南房総市の約 300 戸が停電した。 午後 12 時 14 分時点で両市の計約 900 戸が停電している。 東京電力パワーグリッド千葉総支社によると、原因は不明で、複数の変電所で異常を検知した。 台風の影響かどうかは不明という。 (asahi = 10-9-19)


東電の見通し適切だったか … 千葉の停電、検証へ

台風 15 号の影響で千葉県で長期間停電が続いていることについて、菅原経済産業相は 24 日の閣議後の記者会見で、東京電力による初期段階の対応について近く検証の枠組みを公式に設ける方針を明らかにした。 被害状況の把握や復旧見通しの公表などが適切だったかを調べる。

東京電力が高圧線の復旧を終えても、低圧線や引き込み線の損傷を確認できずに停電が続くケースが相次いでおり、菅原氏は「(検証を通じて)今後、災害、台風が来ても最小限にその被害を食い止め、また復旧に向けての道筋をつけていく」と強調した。 倒木が原因で電柱が倒れた事例が多かったことから、電柱の建て方や基準についてもあわせて検証する考えを示した。 また、菅原氏は、中小企業の被害が多かった千葉県鋸南(きょなん)町の被害が正式に「局地激甚災害」に指定された場合、被災企業の事業再建支援の拡充を行う考えを示した。 (yomiuri = 9-24-19)


千葉の停電戸数が再び増加 一時 5 千戸超、台風影響か

台風 15 号の影響で停電が続く千葉県内で 23 日、いったん減った停電戸数が再び増加した。 東京電力パワーグリッドによると、午後 2 時現在で約 5,400 戸まで増え、4 時ごろまでには 3,200 戸まで減った。 22 日午後 10 時時点では 2,300 戸まで減っていた。 停電が解消していた千葉市内では 23 日午後 4 時ごろの時点で、花見川区で約 700 戸、稲毛区で 100 戸未満が停電。 原因は調査中だが、台風 17 号による強風が影響した可能性があるという。 (asahi = 9-23-19)


非常用発電機の半数超が活用されず 千葉県、倉庫に眠る

台風 15 号の影響による停電が続く千葉県で、県が災害用に備蓄する非常用発電機の半数以上が活用されていないことが 20 日、県の資料などでわかった。 県内では同日午後 8 時時点で約 1 万 2 千戸が停電しており、停電による断水も続く。 この日開かれた県の災害対策本部会議の資料などによると、県は県内 13 の防災倉庫に発電機を計 468 台備えている。 今回の台風通過後に貸し出したのは、市町村には鋸南(きょなん)と神崎の 2 町で計 6 台だけ。 県警向けが 210 台で、主に信号機を動かすために使われた。 残り約 250 台は防災倉庫に眠った状態という。

発電機にはコンセントがつき、一度の燃料の補充で 3 - 4 時間、明かりや煮炊きに使える。 県の地域防災計画では備蓄は「市町村を補完する」としており、市町村からの要請で貸し出す流れだ。 原則、避難所の運営や役場での予備電源など、行政サービスの維持に使うことが想定されており、今回は 2 町以外からの要請はなかったという。 県民への直接の貸し出しは想定されていない。

台風が直撃した 9 日以降、停電は県内全域、最大 64 万 1 千戸に及んだ。 南房総市役所では一時、全ての固定電話や携帯電話、インターネットが不通になった。 多くの県民が携帯電話やパソコンが使えず、助けを求めることもできなかった。 井戸水を使っている地域では飲み水をくみ上げられなくなった。 20 日夕に停電が解消した南房総市の佐久間和夫さん (77) は「電気のない生活は不便そのもの。 発電機があるなら利用したかった。 大規模停電が長引いた場合の対応方法をしっかりと考えてほしい。」と話した。

 

自宅が停電中の鋸南町の 30 代女性は、県の備蓄する発電機について「使うためにあるんでしょ」と憤る。 台風直後は土砂崩れや倒木で集落は孤立。 連絡を取れず、情報も得られなかった。 「いつまで耐えればいいの」と疲れた様子で話した。 県の担当者は「すべてを貸し出せば、緊急性の高い病院などで必要になった時に対応できない。 被災者を直接支援するプッシュ型の支援は想定していない。」と話している。 (古賀大己、黒田壮吉、松本江里加、asahi = 9-21-19)


千葉の熱中症搬送、全国最多 停電長引き 1 週間 498 人

総務省消防庁は 18 日、台風 15 号が千葉県を直撃した 9 日から 15 日までの一週間で、熱中症による救急搬送者は同県が 498 人(速報値)で全国最多だったと発表した。 長引く停電の影響とみられ、前週(2 - 8 日)より約 3 倍も増えた。 全国では 4,243 人が搬送された。

同庁によると、千葉県では熱中症により 2 人が死亡したほか、重傷 6 人、中等症は 201 人、軽症 289 人に上った。 年代別で最も多いのは 65 歳以上の高齢者で 288 人。 次いで成人(18 歳以上 65 歳未満)が 190 人、少年(7 歳以上 18 歳未満)が 16 人、乳幼児が 4 人だった。 搬送された時の場所別では、住居の敷地内が 237 人で最多。 病院など施設の屋内が 76 人、工事現場や作業場などが 57 人となっている。

気象庁によると、9 - 13 日は千葉県内の 11 カ所の観測地点で連日、30 度以上を記録。 鴨川市や茂原市などでは、35 度以上の猛暑日を観測した日もあった。 東京電力パワーグリッドによると、同県内では 18 日、約 4 万 1,300 戸で停電が続いている。 山武市で約 6,900 戸、八街市で約 5,300 戸、市原市で約 4,900 戸、南房総市で約 4,500 戸がそれぞれ(いずれも18日午後6時現在)。 千葉県内は 19 日明け方まで急な強い雨や落雷の恐れがある。 朝方から曇りで、昼前から晴れる見込みだ。 (金山隆之介、asahi = 9-18-19)


千葉の大停電、復旧に 2 週間かかる地域も 東電が見通し

台風 15 号の影響に伴う千葉県内の大規模停電について、東京電力パワーグリッドは 13 日夜、停電の全面復旧は最大でおおむね 2 週間かかるとの見通しを示した。 配電線などの設備被害が広範囲に及び、当初の見通しより大幅に遅れることになった。 同社によると、13 日午後 8 時現在、千葉県内では約 17 万 8,900 戸で停電が続いている。 千葉市や市原市、成田市などでは山間部を除いておおむね 3 日以内に、君津市やいすみ市などはおおむね 1 週間以内に復旧する見通しと説明。 一方で、県南部の南房総市、鴨川市、館山市、鋸南町では最大で 2 週間かかるとの見通しを明らかにした。

同社は 10 日の段階で、11 日中に全面復旧させる方針を示していた。 全面復旧が後ろ倒しになっていることについて、金子禎則社長は「経験していない設備の故障状況が重なった。 複雑でエリアも広く、見通しが合わなくなってきた。」と釈明。 「停電が続いている地域の方々は、家の電気がいつつくか心待ちにしている。 情報発信は、正しいものもあれば、正しくなかったものもあり、心苦しい。」と話した。

経済産業省は 13 日、停電被害対策本部を設置。 東電などと合わせて約 1 万 6 千人が復旧作業にあたっているという。 厚生労働省によると、県内で停電中の福祉施設は、午後 1 時現在で 111 カ所。非常用の電源車を 9 カ所に配備して対応している。 千葉県は 13 日、君津市の特別養護老人ホーム「夢の郷(定員 80 人)」に入所していた 82 歳の女性が 12 日朝、搬送先の病院で死亡したと発表した。 熱中症の疑いがあるという。 台風の通過後、県が把握した熱中症とみられる症状の死者は 3 人目。 (asahi = 9-13-19)


牛乳を廃棄、豚は暑さで衰弱死 … 続く停電、畜産業を直撃

台風 15 号の影響で長引く停電は、畜産県、千葉の家畜農家も直撃している。 搾った牛乳を冷蔵できずに捨てたり、畜舎の換気が十分でなくて豚や鶏が死んだり …。 「東日本大震災の時より痛手だ」との悲鳴も上がっている。 「牛たちが心配だ。」 千葉市若葉区で酪農を営む飯田光央さん (45) は厳しい表情で語る。 乳牛約 55 頭を飼い、牛乳を出荷してきたが、9 日早朝から 12 日夜まで電気が止まり、機械を使った搾乳作業などができなくなった。 東日本大震災の時は半日ほどで終わった停電が、今回は丸 3 日以上続いた。

地下水を電動ポンプでくみ上げて使っているため、停電中は断水した。 近所の養鶏農家に水を分けてもらって軽トラックで牛舎へ運んだが、人力では運べる量にも限界がある。 1 頭に毎日 60 リットル与えていたのが、3 分の 1 程度に減った。 牛たちは一晩中、「メエー、メエー」と苦しそうに鳴いていた。 「のどが渇いていたと思う。」 10 日夕、知人から自家用発電機を借り、牛が病気になるのを防ぐためにようやく搾乳ができた。 使える電力量が限られるため冷蔵のタンクは動かさない。 12 日夕は、2 回の搾乳で搾った 1 千リットルほどを畑に廃棄した。

集荷量、4 割を下回る

えさや水の量がばらついたためか、牛の 3 割ほどが乳房炎になった。 「治療には抗生物質を使わなくてはならず、一定期間出荷ができない。 どれほどの影響がでるのかわからない。」 飯田さんは肩を落とす。 若葉区周辺の酪農地域では、農家から集めた生乳の一時貯蔵施設が今も稼働しておらず、関係者が貯蔵先探しに追われている。 酪農専門の農協「関東生乳販売(東京都)」によると、停電後、千葉からの 1 日あたりの牛乳の集荷量は普段の 4 割を下回る。 停電で生産者と連絡がつかず、被害の全容もわからない。 「もともと 9 月は牛乳が一番不足する時期。 生産への影響が心配だ。」という。

暑さが続くなかの停電は、畜舎の豚や鶏も苦しめた。 「台風のせいにはできないが …。」 養豚農家数が約 50 戸と千葉県内最多の旭市では、停電が原因で 100 頭以上の豚が死んだ。 豚舎の換気や温度管理をする設備が作動せずに衰弱したとみられる。 岩岡喜久男さん (62) の豚舎でも自家発電で換気をしたが、種豚 3 頭を失った。 「密集具合や外気温を計算しながら豚舎の環境を設定している。 使用電力量が限られる自家発電設備は広範囲に使えず、停電中の猛暑はきつかった。」 隣接する東庄町でも、種豚が少なくとも 30 頭、肉用豚が 250 頭死んだ。 担当者は「連絡がつかない農家があり、被害はまだ増えそうだ」とみる。

旭市萬歳の鶏卵生産会社「マルゲン」では 10 日午前 11 時ごろ、鶏舎 1 棟で火災が発生、飼育する 8 万羽のうち 2 万羽が犠牲になった。 原因は不明だが、出火当時、一帯は停電中で給水ポンプが動かず、初期消火ができなかったという。 経営者の衣鳩(いばと)享市さん (63) によると、四つある鶏舎の 1 棟から煙が上がり、瞬く間に火の手が広がった。 隣接する 2 棟への延焼を防ごうとした衣鳩さんの妻は「放水する手段がなく、ペットボトルで水をかけるのが精いっぱいだった」と話す。 これから産卵するはずだった若鶏 1 万 6 千羽が焼け死に、隣接の鶏舎でも煙を吸い込むなどで 4 千羽が犠牲になった。 衣鳩さんは「台風のせいにはできないが、停電がなかったら違っていたかもしれない」と力なく話した。

県農林水産政策課によると、台風 15 号の影響による 12 日時点の農業被害額はビニールハウスの倒壊などで約 193 億円。畜産関係の被害はまだ調査中で、詳細は不明だ。 (熊井洋美、高木潔、asahi = 9-13-19)

千葉の停電なお 20 万戸近く

東京電力パワーグリッドによると、台風 15 号などによる千葉県の停電は 13 日午前 10 時すぎの時点で、約 19 万 8,600 戸で続いている。 県南部を中心に復旧作業が難航しており、館山、南房総、市原、鴨川、君津、富津の 6 市ではそれぞれ 1 万戸を超えている。 県によると、断水しているのは 13 日午前 7 時時点で約 2 万 7 千戸。 電気が復旧した地域では、水道の使用量の急増に伴って新たな断水も起きており、前日朝より約 4 千戸増えた。

浄水場から来た水を一時的にためる配水池で、水位が急激に減少して水圧が下がったため家庭に水が届かなくなっているとみられる。 県は「停電が解消した直後も節水に協力してほしい」と呼びかけている。 また県は 14 日からの 3 連休を前に、ボランティアについて「電気やガス、水道などのライフラインが復旧しておらず、被災地に入ることが困難だ」として、各市町村が受け付けを始めるまで待ってほしいと呼びかけている。

千葉県の畜産産出額
生乳 233 億円(5 位)
豚肉 546 億円(3 位)
鶏卵 386 億円(2 位)
(2017 年、カッコ内は国内順位)


停電の千葉、通信障害拡大の恐れも 非常用電源に限界

台風 15 号の通過からまる 2 日たっても、千葉県では事態が収束するめどがたっていない。 東京電力は 11 日、同日中の県内の停電復旧は難しいと発表した。 携帯電話などの通信を支えてきた非常用電源も切れ、市民には不安といらだちが募る。 「11 日中の復旧の見通しがたっていない。 大変ご迷惑をおかけして、まことに申し訳ない。」 東京電力パワーグリッドの金子禎則社長は 11 日朝、東京都千代田区の東電本店で会見を開き、同日中にすべての停電を解消させるのは難しいと発表した。 11 日午後 1 時時点で、約 43 万戸が停電している。

同社は、10 日夜の時点では、11 日朝までに停電戸数を約 54 万戸から約 12 万戸にまで減らし、11 日中にはすべて復旧させるとの見通しを示していた。 10 日夜の雷雨や新たに見つかった不具合の影響などで、想定より復旧作業が進まなかったことが遅れの原因だという。 千葉県内で停電している世帯のうち、千葉市周辺で 8 割、成田市周辺で 9 割が修理を終えたが、山がちな内陸部などは倒木の被害も多いため、修理完了は 3 割にとどまっている。 同社はこの地域に重点的に作業員を配置しているが、復旧には時間がかかる可能性があると説明している。 11 日中には、新たな復旧の見通しを出すという。

停電復旧の遅れにともなって、通信障害の地域が広がる恐れも出てきた。 台風が通過した 9 日以降、通信を支えてきた基地局の非常用電源が切れるところが出てきたためだ。 NTT 東日本によると、県北部の香取市や南部の富津市などを中心に、千葉県内全体で固定電話約 8 万回線、インターネット約 7 万回線で不通状態が続いているという。 通信可能な地域でも、非常用電源が切れかかっている。 「停電から 24 時間程度なら非常用でまかなえるが、今回は想定の範囲外」という。

携帯電話の NTT ドコモや KDDI (au)、ソフトバンクでは、南房総市、君津市、銚子市などの一部で通信障害が続いている。 au によると、非常用電源は 10 日に切れたという。 現在は、東京近郊から電源を搭載した車を送り込み、防災拠点となる役場を中心に電源復旧を目指しているが、「車の数に限りがあり、応急処置にしかならない。 停電が解消しない限り、通信障害の復旧は見込めない」という。

停電する自宅で家族 6 人で過ごす君津市の会社員、大島達也さん (49) の携帯電話は 9 日から、電話もメールも LINE も通じなくなった。 電波の強さを示すところに「x」の印が付き、家族、職場の人とも連絡がつかず、メールや LINE の新着メッセージも受け取れなかった。 11 日には、メールや LINE メッセージがまとめて届いたものの、リアルタイムでやりとりができない。 大島さんは「台風でみんなが我慢している状態なのでしょうがないが、早く復旧してほしい」と話す。 (asahi = 9-11-19)


成田の足止めドミノ、なぜ起きた? 出発便乱れが拍車

台風15号が通り過ぎた 9 日朝に滑走路の運用を再開した成田空港。 だが、空港への鉄道やバスのアクセスは遮断され、行き場を失った人々が空港で足止めされた。 その数は最も多いときで 1 万 7 千人近く。 空港で何が起きていたのか。

「ローカル空港じゃないはず」 成田アクセス遮断に怒り

未明から吹き荒れた猛烈な風が収まりつつあった 9 日午前 9 時 20 分、マニラからのジェットスター・ジャパン機が成田空港の第 3 旅客ターミナルに着いた。 乗客 114 人。 この日の最初の到着客だった。 台風 15 号の接近に備え、航空各社はこの日、朝の到着便を定刻より 3 - 4 時間遅らせていた。 空港を運営する成田国際空港会社 (NAA) も、通常は午前 6 時の発着開始時刻を同 9 時に繰り下げていた。

第 1 便以降、アジアや欧米各地からの旅客機が次々に着陸。閑散としていた到着ロビーににぎわいが戻ったかに見えた。 だが、いつもならロビーの外のバス停や地下の鉄道駅に向かう到着客が、この日は行き場をなくした。 東京都心方面への電車もバスもすべて止まっていたからだ。 NAA によると、到着客を中心に午前 11 時 55 分に約 1,450 人だった空港内の旅客は、午後 1 時半には 5,200 人に増えていた。 電車・バスの復旧見通しは告げられず、タクシー乗り場には長い列ができたが、タクシーはほとんど来なかった。 高速道路の通行止めに加え、空港周辺の一般道路は倒木などの障害や停電による信号の消灯もあり、大渋滞していた。

午後 5 時半過ぎにスカイライナーなど京成線の一部が運転を再開した。 バスも少しずつ動くようになったが、今度は出発便の遅延や欠航が相次いだ。 搭乗待ちの旅客も加わって、空港内で足止めされる人は午後 8 時に 1 万 3,210 人、終電が出た後の 10 日午前 0 時には 1 万 6,900 人まで膨らんだ。 昨年 1 月の大雪の際の 1 万人を上回って、過去最多となった。 復旧した鉄道とバスの運行が終わった後も、NAA は 10 日午前 3 時過ぎまで、東京駅行きの無料バスを出して、旅客を送り届けた。 それでも、1 万 3,300 人がロビーで夜を明かした。

大地震などで交通アクセスが断たれ、空港内に多くの人が取り残される事態を想定して、NAA は非常食や水、寝袋など支援物資を 3 万人分備えている。 今回も待機場所として旅客ターミナルのすべてのロビーを開放し、支援物資を配るなど旅客対応にあたった。 NAA オペレーションセンターの安田篤史部長は「お客様のケアの細かい点など反省点はある。 今後、課題を洗い出す。」と話す。 一方で、アクセスが断たれ空港から出られない旅客がいる中で、続々と航空機が到着した今回の事態を念頭に、「他の事業者と協力したり、国の支援を受けたりしないと解決できない課題もある」と話す。

空港の混雑に拍車をかけたのは、出発便の欠航や遅延だった。 台風の前、日本航空や全日空は「成田は計画運休はしない」としていた。 だが、出発便は両社の国際線だけで 50 便、空港全体では 94 便が欠航した。 NAA は、通常は午後 11 時までの発着時間を 10 日午前 1 時まで延長して出発機をさばいたが、中には旅客を乗せて動き出した後に出発を断念した便もあった。

欠航便が増えた理由について、日航と全日空は、交通アクセスの不通が長引いたため、乗員が空港に来られない事態が生じたためと説明する。 台風の動きをにらんで発着への影響は午前中と想定、該当する便の乗員は空港近くに前泊させるなどの対応をとったが、午後の便には備えていなかったのだという。 「鉄道の計画運休が午前 8 時までと聞いて、午後は大丈夫だと思い込んだ。 甘かったといえば、そうだった。」と話す関係者もいた。 (福田祥史、asahi = 9-10-19)

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