出光・昭シェル、19 年 4 月統合 新社名「出光興産」

石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油は 10 日、2019 年 4 月に経営統合すると正式に発表した。 新会社の社名は「出光興産」とする。 28% の出光株を持ち、統合に反対を続けてきた出光創業家が賛成に転じた。 約 2 年にわたった出光と創業家との対立がようやく解消し、石油元売り業界で最大手の JXTG ホールディングスに次ぐ企業が誕生する。

10 日に記者会見した出光の月岡隆会長は「商号は出光興産になる」と説明。 昭シェルの亀岡剛社長は「両社の取締役や役員はフェアな形で出す」と述べた。 両社の発表によると、まず昭シェルを 19 年 3 月 29 日に上場廃止とした後、同年 4 月に株式交換により出光が昭シェルを完全子会社化する。 その後、両社は合併を視野に入れているもようだ。 新会社の売上高は 5 兆 7,700 億円規模となり JXTG との国内 2 強体制となる。 今年 10 月の統合合意を目指す。 12 月に両社が臨時株主総会を開いて正式に決定する。

創業家側は統合新会社に創業家が推薦する 2 人の取締役を入れる条件を示してきたが、出光側はこれを受け入れた。 創業家は出光側に自社株式の取得を求めてきたため、出光は 10 日、1,200 万株、550 億円を上限とする自己株式の取得を実施すると発表した。 これにより株主還元を充実させる。 統合の際に昭シェルの株主に対して交付する株式としても利用する。 出光と創業家は交渉が途絶えていたが、18 年 4 月から交渉を再開していた。 給油所などで使うブランドマークは両社の既存マークを一定期間存続させる。 (nikkei = 7-10-18)

前 報 (7-19-17)


景況感、2 四半期連続の悪化 貿易摩擦を懸念 日銀短観

日本銀行が 2 日発表した 6 月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、代表的な指標の大企業・製造業の業況判断指数 (DI) がプラス 21 で、前回 3 月調査結果(プラス 24)から 3 ポイント悪化した。 悪化は 2 四半期(6 カ月)連続で、2 四半期連続の悪化は 5 年半ぶり。 原油高や人手不足が企業の経営を圧迫しているほか、トランプ米政権の保護主義が鮮明になり、貿易摩擦が深刻になるとの懸念も強い。 大企業・非製造業の DI はプラス 24 と 4 期ぶりに改善した。

また、人員が「過剰」とする企業の割合から「不足」を引いた雇用人員判断 DI は、全規模・全産業でマイナス 32 と前期比 2 ポイント改善した。 3 カ月後の先行きは、大企業・製造業が横ばいのプラス 21、非製造業が 3 ポイント悪化のプラス 21。 輸出企業を中心に、米政権の保護主義的な政策への懸念が、企業の見通しに影を落としている。 短観は日銀が 3 カ月ごとに全国の約 1 万社に景況感を聞く。 DI は景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた指数。 3 月調査から対象企業を見直したことに伴った調整で昨年 12 月の指数が変わっている。 (柴田秀並、asahi = 7-2-18)

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景況感、2 年ぶり悪化 3 月日銀短観、大企業・製造業

日本銀行が 2 日発表した 3 月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、代表的な指標の大企業・製造業の業況判断指数 (DI) がプラス 24 で、昨年 12 月の前回調査から 2 ポイント悪化した。 DI の悪化は 2016 年 3 月以来 8 四半期(2 年)ぶり。 原材料高が響いた。 海外経済の追い風はまだあるが、円高やトランプ米政権の保護主義政策で、企業の先行きへの見方は慎重になっている。 短観では 3 カ月ごとに約 1 万社に景況感を聞く。 DI は景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた指数。

大企業・製造業では、原材料高の影響が出やすい化学や鉄鋼がともに 9 ポイント悪化。 海外需要は底堅く、生産用機械は半導体関連向けが好調で 8 ポイント改善。 自動車は輸出に加え国内販売も増え、2 ポイント改善した。 電気機械は 4 ポイント悪化した。

大企業・非製造業の DI はプラス 23 と前回から 2 ポイント悪化。 悪化は 6 四半期(1 年半)ぶり。 人手不足で人件費がかさんだことに加え、原材料高で仕入れ価格も上がり収益を圧迫した。 運輸・郵便が 4 ポイント悪化、電気・ガスは 7 ポイント悪化。 卸売りは 5 ポイント悪化、小売りは横ばいだった。 人員が「過剰」とする企業の割合から「不足」を引いた指数は大企業・製造業がマイナス 18 で、マイナス幅が 5 ポイント拡大し不足感が強まった。 非製造業は同 2 ポイント拡大のマイナス 28。 全規模・全産業ではマイナス 34 で、比較可能な 91 年 11 月以来のマイナス幅となった。

3 カ月後の先行きの業況判断指数は、大企業・製造業が 4 ポイント悪化のプラス 20、非製造業が 3 ポイント悪化のプラス 20 を見込む。 大企業・製造業の 18 年度の想定為替レートは 1 ドル = 109 円 66 銭。 足もとはそれより円高の 106 円台で、輸出が多い製造業には悪影響が出る。 トランプ米政権の保護主義政策も逆風だ。 大企業・製造業の 18 年度の経常利益予想は前年度比 3.2% 減と、17 年度の同 19.7% 増から減益に転じ、慎重な見通しとなった。 (福山亜希、asahi = 4-2-18)

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12 月の景気動向指数、3 カ月連続上昇 過去最高水準

内閣府が 7 日発表した昨年 12 月の景気動向指数(2010 年 = 100、速報値)は、景気の現状を示す指数が前月より 2.8 ポイント上昇し、120.7 だった。 3 カ月連続の上昇で、現行方式の調査を始めた 1985 年 1 月以来、最も高い水準になった。 建設用機械や乗用車、スマートフォン用電子部品の出荷などが好調だった。 基調判断は 1 年 3 カ月連続で「改善を示している」とした。 これまでの指数の最高は 90 年 10 月に記録した 120.6。 内閣府は「バブル期より経済規模が大きくなっており、指数だけで景気の良しあしを単純比較することはできない」と説明している。 (asahi = 2-7-18)


骨太方針に経済界から不満の声「覚悟感じられず」

政府が 15 日に閣議決定した「骨太の方針」に対し、経済界から不満の声が上がった。 経済同友会は 15 日にコメントを発表。 新たな財政再建計画に、社会保障費の伸びを抑える数値目標が盛り込まれなかったことなどを挙げ、「財政健全化に向けた政府の覚悟が感じられず遺憾である」と指摘。 基礎的財政収支(プライマリーバランス = FB)の黒字化は、政府が目標とする 2025 年度より前に達成すべきだとした。

日本商工会議所も「社会保障給付費の改革の遅滞は許されない」とくぎを刺した。 経団連も「社会保障給付費の伸びの抑制に資する改革の実現を働きかけていく」とした。 (加藤裕則、asahi = 6-16-18)


機械受注 10.1% 増 4 月「持ち直している」

内閣府が 11 日発表した 4 月の機械受注統計(季節調整値)によると、民間設備投資の先行指標となる船舶・電力を除く民需の受注額は、前月比 10.1% 増の 9,431 億円で、2 カ月ぶりのプラスとなった。 内閣府は「持ち直している」との基調判断を示した。 3 月は「持ち直しの動きがみられる」だった。 製造業は 22.7% 増の 4,479 億円で 2 カ月ぶりのプラス。 非製造業は 0.4% 増の 4,778 億円だった。 官公庁や外需を含む受注総額は 12.6% 増の 2 兆 5,080 億円だった。 (sankei = 6-11-18)

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1 月の機械受注、前月比 8.2% 増 2 カ月ぶり増加

内閣府が 14 日発表した 1 月の機械受注統計(季節調整値)によると、変動の大きい船舶・電力を除く民需の受注額は、前月比 8.2% 増の 8,723 億円だった。 増加は 2 カ月ぶり。 基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。 機械受注統計は企業の設備投資の先行指標。 製造業は 9.9% 増の 4,094 億円。 半導体製造装置などの受注が旺盛だった。 非製造業は 4.4% 増の 4,654 億円。 建設機械などの受注が伸びた。 (asahi = 3-14-18)

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鉱工業生産、4 カ月ぶり低下 1 月 基調判断も引き下げ

経済産業省が 28 日発表した 1 月の鉱工業生産指数(2010 年 = 100、季節調整済み)の速報値は 99.5 で、前月を 6.6% 下回った。 低下は 4 カ月ぶり。基調判断は「生産は緩やかな持ち直し」とし、前月より一段階引き下げた。 (asahi = 2-28-18)

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機械受注 11 月は前月比 +5.7%、予想上回る

[東京] 内閣府が 17 日に発表した 11 月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比 5.7% 増の 8,992 億円となった。 2 カ月連続の増加。 前年比では 4.1% 増だった。 内閣府は、機械受注の判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。 11 月は、ロイターの事前予測調査では前月比 1.4% 減と予想されていたが、予想に反して増加となった。

民間調査機関の間では、製造業における省力化・自動化投資を中心に国内受注も持ち直すとの期待がある一方で、非製造業では弱めの動きが続き、全体として機械受注は一進一退の動きが続くとみられている。 その結果、設備投資も年間をならすと横ばい圏にとどまるとの見通しもある。 もっとも、結果が予測より強めだったことから、10 - 12 月期の受注、ひいては設備投資が、緩やかな増加基調をたどる可能性もありそうだ。 機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。 設備投資の先行指標として注目されている。 (Reuters = 1-17-18)


「値上げの春」は本当か 物価上昇率は 2 カ月連続鈍化

人件費や原材料費などの高騰で「値上げの春」といわれたわりには、物価が上がらない。 全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は、4 月まで前年比で 2 カ月続けて鈍化。 25 日発表の先行指標となる 5 月東京都区部は 0.5% とさらに縮小した。 日本銀行が目標とする「2%」にはほど遠い。 どうして費用の価格転嫁が進まないのか。

製紙大手各社は今春、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの家庭紙で、1 割程度の値上げを一斉に打ち出した。 「販売数量を失っても、値段をとってほしい。」 ある大手家庭紙メーカーが 3 月に開いた全国支店長の会議で、指示が飛んだ。 昨春に比べて原料となるパルプの国際市況が 3 - 4 割上昇。 人件費や輸送費も上がり、コスト吸収はもう限界だ。 ただ、現時点で値上げはほとんど実現していないという。 「販売店から『近隣の店の商品はまだ上がっていない』と渋られる。(幹部)」 買い置きができる家庭紙は「特売の目玉」で、消費者も価格に敏感だ。 業界は昨春も 1 割の値上げ方針を出したが浸透しなかった。 (湯地正裕、asahi = 5-28-18)

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4 月消費者物価指数、16 カ月連続アップ 上昇幅は縮小

総務省が 18 日発表した 4 月の消費者物価指数(2015 年 = 100)は、生鮮食品を除く指数が前年同月より 0.7% 上昇して 100.9 だった。 上昇は 16 カ月連続。 3 月の 0.9% 上昇から上昇幅は縮小した。 上昇幅の縮小は 2 カ月連続。 昨年 3 月にスマートフォンの値引きキャンペーンがあったことで、3 月は端末代が大幅に上昇したが、4 月は落ち着いたことが大きい。 電気代の上昇も鈍った。 一方で、飲食店向けのビールが値上げされたことで、飲食店での価格が上がるなど、飲食関係は上昇した。 総務省は「物価が緩やかに上昇している状況に変わりはない」としている。 (asahi = 5-18-18)

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消費者、根強い節約志向 必需品値上がり出費かさむ

17 年度家計調査

消費者に節約志向が根強く残っている。 総務省がまとめた 2017 年度の家計調査によると、2 人以上の世帯で、食品や光熱費といった必需品を含む「基礎的支出」は、物価変動の影響を含めた名目で前年より 1.4% 増えた。 支出全体に占める比率は 58% と高止まりしたままで、娯楽などの「選択的支出」の 42% を大きく上回った。 必需品の値上がりで出費がかさむなかで、他の品目への消費を絞っている。

17年度の消費支出は、1 カ月平均で 28 万 4,587 円だった。 4 年ぶりに前年比で増えたが、必需品の値上がりが支出を押し上げた構図だ。 光熱・水道は 5.8% 増。 原油価格が上昇し、冬場には寒波による需給逼迫もあった。 外食の値上げや生鮮食品の高騰があった食料は 1.3% 増、ガソリン代を含む交通・通信は 3.5% 増だった。 必需品の値上がりを受け、比較的節約しやすい選択的支出は絞り込んだ。 レジャーなどの教養娯楽は 0.7% 減、被服及び履物は 0.5% 減だった。 08 年のリーマン・ショック後の消費刺激策で購入した買い替え期を迎えた家電を含む家具・家事用品は 2.9% 増と伸びたが、総じて節約志向は強いままだ。

賃金は全体として増えているが、物価上昇に追い付いていない。 厚生労働省の毎月勤労統計調査(従業員 5 人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は 2 月までに 3 カ月連続で前年を下回った。 暮らしに身近な商品やサービスの値上がりに消費者は身構えている状態で、内閣府の 4 月の消費動向調査では消費者心理の基調判断を「弱含んでいる」に下方修正した。 (nikkei = 5-8-18)

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3 月消費者物価指数、前年比 0.9% 上昇 15 カ月連続

総務省が 20 日発表した 3 月の消費者物価指数(2015 年 = 100)は、生鮮食品を除く指数が前年同月より 0.9% 上昇して 100.6 だった。 上昇は 15 カ月連続。 上昇幅は 2 月の 1.0% から縮んだ。 ガソリン価格の上昇幅が縮小したことが一因だ。 総務省は「原油価格の足もとの上昇幅は広がってきており、指数の上昇幅の縮小は一時的なもの」とみている。 (asahi = 4-20-18)

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消費者物価「緩やかに上昇」に 3 月の月例経済報告

内閣府は 16 日、3 月の月例経済報告で、国内の景気の基調判断を「緩やかに回復している」で据え置いた。 同じ表現は 3 カ月連続。 個人消費など 14 項目の個別判断のうち、消費者物価の表現を前月の「横ばい」から「このところ緩やかに上昇している」に変更した。 消費者物価では、人手不足を背景にした人件費の上昇で運送料などが値上がりし、原材料価格の高騰でタオルやタイヤといった製品の価格も上昇。 コメや肉類など食料品を含む幅広い品目で価格の上昇がみられるという。 茂木敏充経済再生相は会見で「基本的にはデフレ脱却に向けた動きが進んでいると考えている」との見解を示した。 (asahi = 3-17-18)


3 月の名目賃金、2.1% 増 ボーナスなどが大幅アップ

厚生労働省が 9 日発表した 3 月の毎月勤労統計調査(速報)で、名目賃金にあたる労働者 1 人当たり平均の現金給与総額(パートを含む)は前年同月比 2.1% 増の 28 万 4,464 円だった。 増加は 8 カ月連続で、上昇率は 2003 年 6 月以来 14 年 9 カ月ぶりの高水準だった。

名目賃金のうち、基本給などの「きまって支給する給与」は同 1.3% 増の 26 万 4,233 円。 一方、ボーナスなどの「特別に支払われた給与」は同 12.8% 増の 2 万 231 円と大幅に増えた。 厚労省は「業績が良かった企業が、年度末に業績連動の賞与を出した影響が出た」とみている。 物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数は、同 0.8% 増で 4 カ月ぶりに増加した。 ガソリンなどエネルギー価格の上昇で、実質賃金指数の算出に用いる消費者物価指数は同 1.3% 上昇したが、名目賃金の伸びがそれを上回り、実質賃金が上昇した。 (村上晃一、asahi = 5-9-18)

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賃上げ 20 年ぶり高水準 2.4% 人材確保へ脱・横並び

日本経済新聞社が 15 日まとめた 2018 年の賃金動向調査(1 次集計、4 月 3 日時点)で、平均の賃上げ率は 2.41% と 1998 年以来 20 年ぶりの高い水準となった。 大手製造業が主導して相場を形作る従来のモデルが崩れ、人手不足への危機感から賃上げに動いた陸運や小売りなどが押し上げた。 人材獲得競争が激しくなる中、初任給やシニアの待遇を改善するなど横並びの賃金体系を改革する動きが産業界全体に広がってきた。

賃金改善に当たるベースアップ(ベア)を含む平均賃上げ率は企業業績の回復を受けて 17 年を 0.35 ポイント上回り、3 年ぶりに上昇した。 ベアを実施する企業の割合は 84.5% と過去 10 年間で最高だった。 賃上げ額も 7,527 円と、20 年ぶりに 7,500 円を上回った。

製造大手先導崩れる

人手不足感が強い非製造業の賃上げ率は 2.79% で、97 年以来 21 年ぶりの高水準な伸びとなった。 製造業を 0.52 ポイント上回る。 製造業の伸び率を超えるのも 21 年ぶりになる。 大手製造業の賃上げがその他の産業に波及していくという従来の構図が崩れつつある。 陸運や外食・その他サービスの平均基準内賃金は 30 万円弱で、全体平均の 31 万 3,667 円を下回る。 従来の給与水準では人を確保できない可能性があり、ヤマト運輸は今年の春季労使交渉(春闘)で労組の要求に対し満額の 1 万 1,000 円で回答。 賃上げ率は 3.64% で、企業別の賃上げ率上位 7 位だった。

ヤマトなどの陸運は業種別で最も伸び、1.55 ポイント上昇の 3.39% だった。 全業種で唯一、賃上げ額が 1 万円を超えた。 ネット通販の普及で荷物が急増し、サービス維持が危ぶまれているからだ。 福山通運も新卒確保のため初任給を上げ、合わせて既存社員の給与も上げたため、賃上げ率は 5 位の 3.81% になった。 百貨店・スーパーは 2.53% だった。 食品スーパー大手のライフコーポレーションの賃上げ率は 3.86%。 パートやアルバイトの時給も増やす。

製造業の中でも、グループ内の序列や、同業他社との横並びで賃上げが決まる秩序が揺らぐ。 製造業の賃上げ率上昇は 3 年ぶり。 伸び幅は 0.18 ポイントにとどまった。 18 年 3 月期に純利益で過去最高を見込むトヨタ自動車は 3.30% の賃上げを決めたもののベアの具体額は示さず、賃上げの相場形成をリードする先導役を降りる形となった。 トヨタグループはデンソーやアイシン精機などグループ大手が回答した月 1,500 円のベア額が基準になったが、トヨタグループ傘下の組合でつくる全トヨタ労働組合連合会の約 3 割の企業がそれを上回る額を回答。 大手の回答額を逆転した。

日立製作所やパナソニックなど電機大手のベアは 1,500 円で横並びだった。 一方、電機大手の労働組合でつくる電機連合の統一交渉に加わっていないソニーは年収で約 5% の賃上げを決めた。 人工知能 (AI) などの技術者を獲得しやすくし国際競争力を高める。

若手やシニア手厚く

生鮮食品や原油価格の上昇で、実質賃金はマイナスが続く。 政府は 5 年連続で賃上げ要請し、初めて 3% という具体的な数値目標に踏み込んだ。 ただ、20 年ぶりの高水準に押し上げたのは、官製春闘の成果ではない。 鮮明になったのは、個別企業がグローバルな競争に向けて人材を確保するため、硬直化していた年功型の賃金体系も柔軟に見直す構図だ。 大卒初任給について、シャープは労組要求を上回る月 5,000 円の引き上げを決定。 富士フイルムも 5% 上げる。 ライオンは初任給を 9 年ぶりに 6% 程度上げた。

第 4 次産業革命として企業が競う AI やデータ分野は人材争奪が過熱し、一律の初任給など従来の横並びの慣習を揺さぶり始めた。 フリーマーケットアプリ大手のメルカリはインターンシップ(就業体験)の実績で初任給に差をつけ、サイバーエージェントもエンジニア職の一律の初任給を廃止した。

求人情報大手のエン・ジャパンによると、同社の転職サービスを通したデータサイエンティストの求人は 1 年で約 4 倍に増加。 中国などの外資が厚待遇で日本の優秀な新卒学生の採用に相次ぎ乗り出すなど、人材採用と処遇をめぐる競争は新たな段階に入りつつある。 一方、JR 西日本やクボタはシニア層をつなぎ留めるため、60 歳以上の再雇用者も賃上げの対象とした。 ホンダは 17 年に定年を延長し、シニアの給与水準を従来より引き上げた。 知識や経験を持つシニアのやる気を高め、工場でのノウハウ伝承などにつなげる狙いだ。 (nikkei = 4-16-18)

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2 月の実質賃金は前年比 0.5% 減 減少は 3 カ月連続

厚生労働省が 6 日発表した 2 月の毎月勤労統計調査(速報)で、物価変動の影響を除いた賃金の動きを示す実質賃金指数は前年同月比 0.5% 減だった。 減少は 3 カ月連続。 名目賃金は上昇したが、消費者物価指数の伸びがそれを上回り、実質賃金が減少した。

名目賃金にあたる労働者 1 人当たり平均の現金給与総額(パートを含む)は同 1.3% 増の 26 万 6,466 円で、7 カ月連続で増加した。 一方、ガソリンなどのエネルギー価格や野菜などの生鮮食品の価格が上がり、実質賃金指数の算出に用いる消費者物価指数は同 1.8% 上昇した。 また、2017 年度の冬のボーナスの平均額は、前年度より 2.8% 多い 38 万 654 円だった。 (asahi = 4-6-18)


日本企業の研究開発、世界に遅れ

日本企業の研究開発費の伸びが海外企業に劣っている。 2017 年までの 10 年間の伸び率を比較するとアジアの 4.1 倍、米国の 86% 増に対して日本は 12% 増にとどまる。 日本企業は事業の「選択と集中」で効率を高める半面、パナソニックやソニーなどが研究開発費の世界ランキングで順位を大きく落とした。 AI (人工知能)など IT (情報技術)分野で米国勢やアジア勢が投資を飛躍的に増やして第 4 次産業革命を主導する中、研究開発の遅れが日本の産業競争力を損ないかねない。

横浜市綱島地区に立つ全面ガラス張りの真新しい建物は、日米の研究開発の勢いの差を示す象徴だ。 看板がなく外からは一見何の施設か分からないが、米アップルが昨年稼働させた研究所だ。 自動運転や AI の研究に加え先端の電子部品の開発を進めているとされる。 アップルの 17 年の研究開発費は 115 億ドル(1 兆 2,000 億円)と世界企業で 7 位。 10 年前から 15 倍に急拡大した。

この敷地はパナソニックが 7 年前に閉鎖した工場の跡地。 最近まで最寄りのバス停が「松下通信前」だったのはその名残だ。 パナソニックの 17 年 3 月期の研究開発費は 4,300 億円と 10 年前から 25% 減った。 07 年は研究開発費がアップルの 7 倍あったが、業績悪化で規模を縮小した。 会社側は「重点領域にメリハリをつけて投資し、競争力を維持している」と説明する。 海外企業に比べ日本企業の研究開発費の伸びは低調だ。 東証 1 部上場企業と米 S & P 500 種株価指数、欧州のストックス 600、日経アジア 300 指数の構成企業の研究開発費の過去 10 年の伸び率を比較した。

世界で上位 100 社に入っていた日本企業は 10 年前の 24 社から 17 社に減った。 世界 3 位だったトヨタ自動車は 10 年間で研究開発費を 26% 増やしたが、17 年は 10 位まで順位を落とした。 研究開発費そのものを減らした電機メーカーの退潮はさらに大きく、パナソニックは 15 位から 36 位、ソニーは 18 位から 35 位に順位を落とした。 電機各社は半導体や携帯電話など多額の研究開発費が必要な事業から撤退。 あらゆるモノがネットにつながる IoT など絞り込んだ重点分野に集中的に投資するようになった。

世界の研究開発費の上位企業の顔ぶれも様変わりした。 主役は自動車や医薬品などから IT 企業に代わりつつある。 今では世界最大の研究開発企業になった米アマゾン・ドット・コムは 226 億ドルと 10 年前の 28 倍に急増。 AI スピーカーや無人コンビニエンスストアの開発など実験的な研究を手掛け、例えば 16 年は 1 千人だった AI の開発体制を 17 年に 5 千人に拡大した。

アジアでは 10 年間で 4 倍に増やした世界 3 位の韓国・サムソン電子に加え、中国電子商取引最大手のアリババ集団の伸びが目立つ。 アリババは昨年 10 月に中国、米国、ロシアなど 7 カ所に施設を開設し、今後 3 年で研究開発に計 150 億ドルを投じると発表した。 1 年あたりの投資額は 17 年実績の 2 倍で、AI や IoT の研究を加速する考えだ。 総務省によると、日本全体の研究開発費は 1,800 億ドル(15 年)に達し、米国の 5 千億ドル、中国の 4,100 億ドルに次いで世界 3 位だ。 国内総生産 (GDP) に占める割合は 3.6%。 米の 2.8% や中国の 2.1% を上回っており、規模の面では日本は依然として「研究開発大国」といえる。

だが第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは「日本企業の競争力には懸念が多い」と話す。 その大きな理由が基礎研究の伸び悩みだ。 特定の用途を定めない、理論や新現象を対象にする基礎研究は全ての土台。 経済協力開発機構 (OECD) の調査では 15 年の日本企業の基礎研究費は 07 年から 4% 増にとどまった。 「08 年のリーマン・ショックなどを機に日本企業に短期的な利益を求める傾向が強まった。(星野氏)」 かたや米国の基礎研究は 2 倍増(人件費ベース)の勢いだ。

基礎研究以外でも、米 IT 大手は将来の種まきに余念がない。 グーグルを傘下に持つ米アルファベットの研究開発費は 166 億ドルとアマゾンに次ぐ世界 2 位。 気球を使ったネット接続やたこによる風力発電なども手掛ける。 研究開発部門の 17 年の営業損益は 33 億ドルの赤字だが、会社側は「中長期で成功すればよい」とゆったり構える。

もちろん日本企業も削減一辺倒ではない。 他社と共同で研究開発を進める「オープンイノベーション」で規模より効率をめざす取り組みに動く。 トヨタは 17 年からベンチャー企業とネットに常時接続するコネクテッドカーの開発を進める。 大和総研の長内智シニアエコノミストは「将来も米中勢と競争しつづけるには、研究開発のさらなる効率化が欠かせない」と話す。 研究開発は産業の成長力に直結する。 日本企業は選択と集中で利益率を高める一方、中長期の成長戦略が欠けていた面は否めない。 業績を盛り返した今こそ、研究開発の在り方を問い直す好機だ。 (遠藤賢介、nikkei = 5-2-18)


企業物価指数、3 年ぶりプラスに 世界的な景気拡大で

日本銀行が 11 日発表した 2017 年度の企業物価指数(15 年平均 = 100、速報値)は 99.3 で、前年度より 2.7% 上がった。 上昇は消費増税の影響が出た 14 年度 (2.7%) 以来。 この時を除くと上昇の率は08年度(3・1%)以来の水準だ。 世界的な景気拡大や、原油や金属類など商品市況の上昇が全体を押し上げた。 また、3 月の指数は 100.3 となり前年同月より 2.1% 上昇した。 前年を上回るのは 15 カ月連続。 ただ、最近の伸び率は縮小している。 原油や銅などの市況の下落や、為替の円高ドル安が影響している。

銀行の貸付残高は 78 カ月連続上回る

日本銀行が 11 日発表した 3 月の貸出・預金動向(速報)によると、全国の銀行の貸出残高は前年同月より 1.9% 増の 454 兆 7,404 億円だった。 78 カ月連続で前年を上回った。 中小企業は幅広い業種で資金需要が高いという。 ただ、大企業の合併・買収 (M & A) 案件が減ったため伸び率は鈍化した。 (asahi = 4-11-18)

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企業物価指数、2 月は前年比 2.5% 増 14 カ月連続増

日本銀行が 13 日に発表した 2 月の企業物価指数(2015 年平均 = 100、速報値)は 100.3 で、前年同月より 2.5% 上昇した。 14 カ月連続で前年を上回ったが、為替の円高ドル安傾向から上昇幅は抑えられ、伸び率は前月 1 月から 0.2 ポイント縮小した。 原油や金属類などの商品市況の上昇が全体を押し上げた。 「石油・石炭製品」は 11.6%、「非鉄金属」は 8.6%、「鉄鋼」は 6.1%、それぞれ前年を上回った。 技術革新による値下がりで「情報通信機器」は 0.5% 下回った。 企業物価指数は、企業間で取引されるモノの価格水準を示す。 (asahi = 3-13-18)

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企業の物価見通し 0.8% に 日銀、前回調査から上昇

日本銀行が 18 日に発表した 12 月の「企業の物価見通し」は、1 年後の物価上昇見通しの平均が 0.8% となり、前回 9 月調査から 0.1 ポイント上がった。 上昇は 2 四半期ぶり。 3 年後と 5 年後の見通しはいずれも 1.1% で、前回調査から横ばいだった。 企業の物価見通しは、前年比 2% の物価上昇目標を掲げる日銀が企業の物価予想を把握するため、3 カ月ごとの全国企業短期経済観測調査(短観)でたずねている。 (asahi = 12-18-17)

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企業物価指数 +3.4%、実質 9 年ぶり上昇幅 原油など商品相場高で

[東京] 日銀が 13 日公表した、10 月の企業物価指数は前月比で 0.3% 上昇した。 前年同月比では 3.4% 上昇し、2014 年 9 月以来の大幅上昇となった。 14 年の消費税率引き上げの影響を除くと、2008 年 10 月(前年同月比 4.5%)以来の上昇幅。 円安を背景に原油など商品市況上昇でガソリンなどの価格が上昇した。 企業物価指数は企業同士で取引される財の価格を指数化したもの。

前月比ではガソリンや軽油、ナフサなど石油・石炭製品が 0.29 ポイント指数を押し上げた。 このほか、玄米・鶏卵・サケ・イクラ、エチレン、銅地金なども上昇した。 中国の環境規制の影響でアルミニウム合金も上昇した。 一方、電力料金は需要期である夏の間の値上げが終了したため前月比で 0.24 ポイント下落。 夏の電力値上げの影響を除くと、企業物価指数は前月比で 0.6% 上昇した。 日銀では、原油・鉄鋼・非鉄など国際商品市況の上昇を背景とした上昇品目が多く、「国内の需要要因で上昇しているのは鉄骨程度」とみている。 (竹本能文、Reuters = 11-13-17)


廃業予備軍「127 万社」の衝撃 後継ぎ不足、企業 3 割

東京商工リサーチによると、後継者難などで毎年 3 万件の企業が休業や廃業、解散している。 技術やノウハウが失われかねない事態にどう対応すべきか。 JR 大宮駅から北へ約 10 キロ。 埼玉県伊奈町の事業所や工場が集まる一角に、円戸(えんど)幸雄 (82) が 1989 年に創業した三協技研がある。 複数の素材を貼り合わせて包装材などに仕上げるラミネート加工が専門だ。

社屋に隣接する工場では、ゆっくりと回る二つのローラーから出た 2 枚の素材を自動でぴったり接着させる工程が続いていた。 できたシートは、住宅の鉄骨と外壁の間に入れられ、緩衝材の役目を果たす。 円戸が考案したこの製法は、大幅な自動化で人件費を抑えられるのが特徴で、特許もとった。 製品は全て大手住宅メーカーが買い上げる。 「この製品は営業する必要がないんです。」 需要は増加傾向という。 そんなアイデアと技術力で会社を引っ張ってきた円戸だが、悩みがある。 自社の将来を任せる後継ぎがいないのだ。

3 人いる娘はすでにそれぞれの道を見つけた。 10 年ほど前から、取引先企業に頼んで、優秀な社員を後継候補として何人か送り込んでもらった。 しかし、どの候補者も定着しなかった。 中小企業の社長は、営業から開発、製造まで、細かく把握する必要がある。 円戸は住宅だけでなく、土木、金属、食品、化学繊維など幅広い取引先から細かい悩みを聞き、独自の技術提案をして商機につなげてきた。

同じことを後継者が務めるのは簡単ではない。 会社の売却という道もあるが、密接な取引がしづらくなると心配する取引先からは、独立経営をお願いされる。 「あと 3 年のうちには跡取りを見つけなければ」。あらゆるつてをたどって探すつもりだ。

経済産業省によると、この 20 年で中小企業の経営者の年齢分布は 47 歳から 66 歳へ高齢化。 2020 年ごろには数十万人の「団塊の世代」の経営者が引退時期となる。 「中小企業の競争力の源泉は『社長』自身であることが多く、創業者はなおさら。 引き継ぐのは簡単ではない。(大手銀行幹部)」 少子化や「家業」意識の薄れもあり、後継ぎのめどが立たない企業は多い。

経営者が 60 歳以上で後継者が決まっていない中小企業は、日本企業の 3 分の 1 にあたる 127 万社に達する。 事業が続けられず廃業する企業の半分は黒字とされ、25 年ごろまでに 650 万人分の雇用と 22 兆円分の国内総生産 (GDP) が失われる可能性がある。

首都圏近郊の板金会社の社長だった女性 (60) は昨春、板金工の兄が約 40 年前に創業した会社を畳んだ。 精密加工技術が評価され、製品は新幹線の車体にも採用された。 11 年に兄が急死し、社長を継いだ。 出入金管理や不利な手形取引の見直しを進め、就任 3 年で無借金経営に転換した。 しかし、兄の一人息子は後継に一時意欲を見せたが、結局別の道を選んだ。 古株の従業員にも引き継ぎを断られた。 「私が会社をみとろう」と決めた。

取引先からは「同じ品質のものが調達できなくなる」と嘆かれた。 廃業すれば、サプライチェーン(部品供給網)の分断にもつながる。 何とか技術は残せないかと考え、同業者と交渉し、設備やノウハウ、従業員を譲渡することでまとまった。 機械設備を売り払って廃業してしまう方が、手続きは簡単で、多くの金額が残る可能性はあった。 でも、事業譲渡で技術を引き継ぐことを優先した。 女性は言う。 「会社をつくり、経営したのは私たちだけど、培った事業は社会のものですから。」 (榊原謙、asahi = 4-1-18)

中小企業の事業承継の足かせの一つが、経営者が後継者に引き継ぐ自社株の扱いだ。 政府は今後 10 年間に限り、後継者が受け取る株式にかかる税金を全額猶予し、承継に伴う税負担を緩和する。 経営者が後継者に自社株を渡すと、相続税や贈与税の納税義務が後継者に発生する。 億単位になることもあり、代替わりにちゅうちょする一因になっていた。

既に、後継者が引き継ぐ株式の 3 分の 2 を上限に、80% まで納税を猶予する制度はある。 ただ、フル活用しても税額全体の 53% までしか猶予されず、中途半端さは否めなかった。 そこで政府は来年度から、納税猶予の対象株式を「3 分の 2」から「全株」に、納税猶予の割合を「80%」から「100%」に拡充、承継時の税負担をゼロにすることにした。 新制度を使えるのは今後 10 年以内に実際に会社を引き継ぐ人のみ。 中小の事業承継への決断を早める狙いがある。


増殖 デジタル支出 「ドコモ払い」は 3 兆円 消費の多様化

デジタル消費やシェアリングエコノミー

記事コピー (asahi = 3-12-18)


難しい 18 年度為替設定、110 円と 105 円で悩む国内企業

[東京] 国内企業が 2018 年度の想定為替レート設定に苦慮している。 例年、業績予想の前提となる社内レートを決め、来期の計画を固めに入っている時期だが、2 月中旬にドル/円が 105 円台をつけた後の戻りは鈍く、再度の円高進行が警戒される。 一方、日米金融政策の方向性の違いから円安になるとの観測も多く、現時点での見極めが難しい。

110 円派

「19 年 3 月期の予算編成はほぼ最終段階だが、今のところ 1 ドル 110 円を前提にしている。 今後 105 円に近いところで定着したら(業績的に)かなりつらいことになる - -。」 ある機械メーカーの首脳はこう漏らす。 同社は今期、想定レートを期初から変えず 1 ドル = 110 円としてきた。 実勢レートは 4 月から 12 月の間、おおむね 107 - 114 円を中心としたレンジが継続。 平均して 111 円半ばと想定よりやや円安で推移した。 自動化や省人化の流れも業績の後押しとなり、このままいけば増収増益となる見通しだ。

来期も 105 - 115 円で推移し、平均すれば 110 円近辺になるとみていた。 しかし、2 月に入って急激なドル安/円高が進行。 一気にレンジ下限の 105 円に近づいた。 同首脳は「3 月以降も現行水準の 106 - 107 円が続けば、想定レートは変更せざるを得なくなる」と顔を曇らせる。 5 円分の円高設定は業績見通しを押し下げる要因となる。

早い段階で来期の社内レートを 110 円に設定し、すでに計画を動かし始めている企業もある。 その自動車部品メーカーの幹部は「105 円を超えて円高が進むと計画が成立しなくなるが、今じたばたしても仕方がない」と泰然。 来期の業績予想を発表するまでに円高が進んでいれば「修正した数字を公表するだけ」と淡々とした口調だ。

105 円派

一方、17 年度の想定レートを期初から 105 円で据え置いてきた企業からは、予想通りになったとの声も出ている。 ある在阪の部品メーカー首脳は「トランプ政権とドルの先行き不透明さを感じていた中で円高リスクを意識していた。 本当は 103 円にしたかったが、『倒産(103 = とうさん)』と語呂が悪いので止めた。」と話す。 ただ、来期に一段と円高が進み、100 円を割り込んでいくかといえば、そうはみていない。 「100 円は悲観的過ぎ。 そこまで不安定要素があるとは思えない。 ドルはいったん 105 円が底になるのではないか。」との見方を示す。

実際、通貨オプション市場でも、一段の円高を警戒する動きはあまりみられない。 プットオプションとコールオプションの売買の傾きを示すリスクリバーサルは、1 カ月物の円コールオーバー幅が 2 月 9 日を直近ピークとして縮小傾向。 日本の年度末をまたぐ 3 カ月物もほぼ同様の動きとなっている。 先の部品メーカー首脳は「為替に楽観的過ぎるのはいけないが、悲観的になり過ぎてもいけない。 縮こまって次の一手を打てなくなる。 100 円で利益が出る態勢をつくってきており、来期もその備えで対応は十分可能だ。」と述べる。

円高気味に設定しがちな企業>

企業の多くは、新年度の想定為替レートを厳しめに設定しがちとされる。 楽観的な見通しをベースにした業績計画を公表し、後から下方修正するのは避けたいという心理が働くとみられている。

焦点 : 難しい 18 年度為替設定

そのため、仮にドルが 2 月に下落する前の 110 円近辺で推移し続けていた場合でも、来期の想定レートは 105 - 108 円程度に収れんしていた可能性がある。 ただ、一段の円高が警戒される中、105 円が本当に保守的な水準と言えるかどうかはわからない。 105 円台に下落した時点で、来期の想定レートを決めていない企業が多ければ「102 円とか 100 円とかにすべきかという議論になる。(ドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジスト)」との指摘も出ている。

ロイターが 2 月中旬から下旬にかけて市場関係者を対象に行ったアンケート調査によると、現在の日本経済にとって好ましいドル/円の水準は 110 - 114 円が 34 人中 20 人と最も多かった。 105 - 109 円が 8 人で続き、104 円以下は 0 人。 ここでも 105 円がボーダーラインだ。 3 月期決算の企業は、5 月の大型連休前後に 17 年度の決算と 18 年度の業績見通しを公表する。 それまで担当者は、神経質に為替相場をにらむことになりそうだ。 (杉山健太郎、Reuters = 2-27-18)