韓国で深刻な大気汚染スモッグ! もう中国のせいだとは言わせない! = 中国メディア

中国メディア・今日頭条は 15 日、韓国の首都ソウルで同日に大規模なスモッグが発生し、視界が悪くなったとしたうえで「今回はわが中国のせいにはさせないぞ」とする記事を掲載した。

記事は、「15 日にソウルの大部分がスモッグに覆われ、視界が低下した。 韓国国立環境科学院が同日発表した顆粒物の濃度データによると、ソウルのほかに江原道、忠清道、光州、全羅北道、大邱、慶尚北道で深刻な汚染状態となっていた。 ソウル市ではスモッグ警報が出され、公共機関の車両使用が制限されるとともに、通退勤時間の公共交通の無料化措置が取られた」と紹介している。

そのうえで、「韓国は中国と張り合うことをこの上なく喜ぶ。 文化では、学者たちがあらゆる中国文化を自分たちの者としたがり、そのために非常に滑稽な理由を持ち出して証明しようとする。 しかしその一方で、われわれ中国に押し付けたがっているものもある。 それがスモッグだ。 韓国ではしばしばスモッグの原因が中国に押し付けられている。 責任をなすりつけるやり方ではスモッグは解決できないというのにだ。」と論じた。

そして、「中国のスモッグ状況が好転していることはみんな知っている。 しかし、韓国人はなおもスモッグの原因を中国に押し付ける。 ただ、今回はもうわれわれのせいにはできまい。 これは自分たちが生み出したスモッグなのだから、どうぞ韓国人が自ら解決してくれ。」とした。

中国のネットユーザーからは「彼らは、中国のスモッグが韓国に流れてきたから、中国の空気がきれいになりつつあると言うかもしれない」といった感想が寄せられる一方、「韓国の重度汚染レベルは、中国の良好レベルと一緒」、「中国のスモッグはいつ改善されたんだ?」、「むしろこれだけ厳しい基準を設けている韓国に学ぶべきではないか」、「確かに中国の大気汚染が韓国に流れている」など、記事の主張に懐疑的なコメントが多く見られた。

中国の大気汚染対策は着実に効果をあげてはいるものの、今の時期は依然として多くの地域で空気が著しく汚れていることが、各種のモニタリングデータから伺える。 中国で生じた汚染物質が依然として韓国や日本に流れ、現地の空気を多少なりとも汚していることは否めない。 ここはやはり、互いが協力して汚染の発生と拡散を防ぐための知恵を出しあっていくしかない。 (今関忠馬、SearChina = 1-17-18)


若いウミガメ、99% 以上がメス 豪、温暖化影響か

オーストラリア北東部沿岸に広がる世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ北部で生まれたアオウミガメを調べたところ、若い個体のほとんどが雌だった。 こんな調査結果を、米国とオーストラリアの研究チームが米科学誌に発表した。 地球温暖化の影響とみられるという。 アオウミガメは最大で 1.5 メートルに達する絶滅危惧種。 研究チームによると、アオウミガメの場合、卵が埋まった砂浜の地中の温度が 29.3 度を超すと孵化する赤ちゃんに雌が増える。

研究チームは特に気温が高いグレートバリアリーフ北部で生まれた 300 匹以上の性別を調べた。 甲羅のカーブに沿って測ったサイズが 65 - 86 センチのやや若い個体や 65 センチ未満のさらに若い個体では、99% 以上が雌だった。 一方、北部と比べて気温がやや低い南部生まれのカメでは、雌の割合は 65 - 69% だった。

気温データやカメの成長速度などを分析した結果、グレートバリアリーフ北部の繁殖地の島では繁殖期の 12 - 3 月に砂中の温度が、1990 年以降はほぼ 29.3 度を超していたと推定された。 過去 20 年以上にわたり、孵化した個体のほとんどが雌だったと考えられるという。 研究チームによると、雌が増えると一時的には産卵数も多くなると考えられるが、雄が少なくなりすぎると繁殖自体が難しくなる。 ウミガメが適応しきれない速度で温暖化が進んでいるとし、「絶滅を防ぐ対策が必要だ」と警告している。 (小堀龍之、asahi = 1-16-18)


鳥はなぜ大切か 人間の価値観を問う「小さな恐竜」

2018 年は、米国で渡り鳥保護条約法が制定されてからちょうど 100 年になる。 この法律の制定 100 周年を記念して、ナショナル ジオグラフィックは2018 年、鳥をテーマにしたさまざまな記事をお届けする。 その皮切りとして、「鳥はなぜ大切なのか?」という問いについて考えてみたい。

まず挙げたいのは、鳥たちが生息する領域の途方もない広大さだ。 世界にいる 1 万種ほどの鳥は、さまざまな環境に適応するため、驚くほど多様な形態に進化を遂げてきた。 体の大きさも千差万別で、アフリカに広く分布するダチョウは大きいものでは体高が 2.5 メートルを超えるが、キューバにしかいないマメハチドリはその名の通りハチぐらいの大きさしかない。 ペリカンやオオハシのように大きな嘴をもつ鳥もいれば、コバシムシクイのようなおちょぼ口の鳥もいる。

行動も多様だ。 社交的な鳥もいれば、孤独を好む鳥もいる。 コウヨウチョウやフラミンゴは何百万羽もの群れをなし、インコは小枝を集めて手の込んだ大きな巣を作る。 一方で、カワガラスは単独で山の渓流に潜り、ワタリアホウドリは翼開長が 3 メートルにもなる大きな翼を広げて、独りで悠々と大空に舞う。 水深 200 メートルまで潜水できるハシブトウミガラスのような鳥がいるかと思えば、ハヤブサは時速 400 キロ近い猛スピードで空から降りてくる。

鳥は見た目こそ人間と似ても似つかないが、見方によってはほかの哺乳類よりも人間に近い。 手の込んだマイホームを作ってそこで子育てするし、冬には温暖な地域で過ごす。 シロビタイムジオウムは鋭い洞察力の持ち主で、チンパンジーも苦戦するような複雑なパズルを解く。 カラスは遊びが大好きだ。 動画投稿サイト YouTube で見つけた動画では、ロシアのカラスがプラスチック容器の蓋をそり代わりにして雪の積もった屋根をすべり下り、蓋をくわえて飛んで戻ると、再び滑降を楽しんでいた。 そして、世界を歌声で満たすのも、鳥と人間だけだ。

ただし人間にあって、鳥にない重要な能力が一つある。 環境を制御する能力だ。 鳥は湿地を保全できないし、漁場を管理することもできない。 人類が地球環境を急速に改変している今、大半の鳥の未来は人間が保護に本腰を入れるかどうかにかかっている。 わざわざ保護するほど、鳥は人間にとって価値ある生き物だろうか。

鳥より人間のほうが大事?

人間の活動が地球環境に大きな影響を及ぼしている今、「価値」といえばほぼ経済的な価値を意味し、人間にとっての有用性ばかりが問題にされる。 その点から見ると、多くの野鳥が食用として役に立つし、一部の鳥は害虫やネズミなどの害獣を食べてくれる。 植物の受粉を助けたり、種子を遠くに運んだり、肉食の哺乳類に食べられたりと、生態系の中で不可欠な役割を果たす鳥も多い。 とはいえ、残念ながら、鳥は人間の経済にそれほど役立つわけではない。 逆に、果樹園の果実を食い荒らして損失をもたらすこともある。

むしろ鳥の個体数は、私たちの倫理的な価値観の健全性を示す指標になるのではないか。 なぜ野鳥は大切なのか。 その理由の一つとして、人工的な環境で暮らす私たちにとって、鳥は自然に触れる機会を与えてくれる最後の、そして最高の存在だということがある。 鳥ほど広い範囲に分布し、人類が誕生する以前の地球の姿を生き生きと伝えてくれる生物はほかにいない。 鳥は恐竜と共通の祖先をもち、現代の環境に見事に適応して生きている「小さな恐竜」ともいえる。 現代の池にいるカモは、鳥類が地球を支配していた 2000 万年前のカモと、姿も鳴き声もほとんど変わっていない。

翼のないドローン(小型無人機)が無数に飛び回り、人々がスマートフォンに熱中するこの世界では、自然界のかつての覇者である鳥を慈しんだり、保護したりする合理的な必要性などないかのようだ。 しかし、経済的な得失は最も重要な基準だろうか。 鳥を見捨てることは、人間も自然の一部だという事実を忘れることにならないか。 (ジョナサン・フランゼン、日経ナショナル ジオグラフィック = 12-30-17)


EV に蓄電池の役割、普及めざし米企業へ出資 豊田通商

豊田通商は、電気自動車 (EV) に蓄えておいた電気を送配電網に送ることで、電力需給を安定化させる新たな取り組みを手がける。 EV に蓄電池の役割を担わせることで、普及すれば発電所を新設しなくても電力需給のバランス調整ができるという。 EV が普及する欧州の一部で実用化されており、日本での早期の普及をめざす。

豊田通商は 2017 年 12 月、「V2G (ビークル・トゥ・グリッド = 自動車から電力網へ)」と呼ばれる新技術を開発した米ベンチャー企業、ヌービーコーポレーションに出資した。 出資額は非公表。 ヌービー社の V2G では、充電ステーションに接続した EV が使われていない時間帯に、電力需給の状況に応じて EV にためた電気を送配電網に放電・充電できる。 EV の所有者は事前に EVの使用予定を登録し、放電してもいい電気の量を指定する。

普及すれば、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電が少ない時間帯に、複数の EV を通じて電気を供給できるようになる。 電力会社などが所有者に利用料を払うことも想定しており、EV の維持費の負担軽減につなげる。 日本でも通常の蓄電池を使った同様の取り組みはあるが、ためた電気を使える地域が周辺に限られるなどの課題がある。 豊田通商は今後、国内での実証実験を始める考えだ。 (鬼原民幸、asahi = 1-3-18)


「科学界の 10 人」に米長官 その皮肉な理由とは

英科学誌ネイチャーは今年の科学界で話題になった人物 10 人を選び、18 日付で発表した。 その 1 人、米国のトランプ政権で環境保護局 (EPA) 長官に就いたスコット・プルイット氏を「汚染防止政策を弱め、多くの科学者らを怒らせている」と紹介した。 トランプ政権は、前オバマ政権の科学に基づく政策を一変させた。 その象徴が温暖化に懐疑的なプルイット氏の EPA 長官就任。

ネイチャーによれば、それまでオクラホマ州司法長官として、EPA に対する訴訟を少なくとも 14 回起こしていた。 プルイット氏は 2 月の就任直後から多くの環境規制を妨害したり廃止したりしている。 10 月には発電所の温室効果ガス排出規制の撤廃も発表した。 ネイチャーは何度もプルイット氏にインタビューを申し込んだが、これまで応じていないという。

ほかに生物の遺伝子を狙った通りに改変する「ゲノム編集」技術の改良に取り組む米国の生化学者デービッド・リウ氏や、盗聴が困難で安全性が高いとされる「量子通信」に取り組む中国の物理学者パン・ジャンウェイ氏、包括的核実験禁止条約機関 (CTBTO) 準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長などを選んだ。 (小堀龍之、asahi = 12-19-17)

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トランプ大統領の環境軽視、「ハービー」で変わるか

米南部を襲ったハリケーン「ハービー」が引き起こした未曽有の洪水は、たとえ富裕国であっても、弱い立場にいる人々の安全を守り、気候変動がもたらし得る大きな打撃に彼らが対処できるよう、災害対策を強化する必要性を浮き彫りにした。 とはいえ、ハービーのもたらした壊滅的被害によって、トランプ大統領が、災害対策費を増強したり、温暖化ガス排出量の制限や異常気象からのインフラ設備保護に関する規制を復活させたりすることを期待する人は少ない。 まして、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱の再考については、なおさらだ。

「気候変動に懐疑的なごく一部の人たちに対して、ハービーが示しているのは、これがわれわれの新たな現実だということだ。 そして、それは悪化する一方だ。」 国際非政府組織 (NGO) オックスファム・アメリカで気候変動とエネルギー政策のアソシエートディレクターを務めるヘザー・コールマン氏はそう指摘する。 「米国内外の災害から分かるように、最も被害を被るのは最貧困層だ。」 メキシコ湾からテキサス州に先週末上陸した、速度の遅いハービーがもたらした洪水により、少なくとも 17 人が死亡、約 3 万人が避難を余儀なくされている。

全米 4 位の人口を抱える同州ヒューストンでは、警察や州兵、救急隊員が今なお取り残されている人たちの救助にあたっている。 ルイジアナ州でも非常事態宣言が出されている。 テキサス州を襲ったハリケーンとしては、過去半世紀で最大となるハービーは、最大 200 億ドル(約 2.2 兆円)の被保険損失を生じかねず、米国史上で最も損害をもたらしたハリケーンの 1 つとなる可能性がある、とウォール街のアナリストは予測する。

ハービーによる異常な豪雨は、気候変動によって悪化した可能性がある、とポツダム気候影響研究所と世界気象機関の専門家は指摘する。 「(米国全土の)州政府、市長、そして科学者は、気候変動が現実だということに全く異議はないはずだ」と語るのは、バングラデシュの首都ダッカに拠点を置く国際気候変動・開発センターのサリーマル・ハク所長だ。

「ハービーは未曽有の降水量をもたらしている。これは人為的な気候変動によって引き起こされた可能性の証左と言える」と同所長は言う。 2015 年に採択されたパリ協定からの脱退を決めたトランプ大統領は、現在テキサス州の救急活動を指揮している米連邦緊急事態管理局 (FEMA) の予算を大幅削減するよう迫っている。 1 月の就任以来、最大の自然災害に直面している共和党のトランプ大統領だが、米気象機関の主要ポストがいまだ空いている一方、オバマ前政権の環境規制は、すでに廃止に追い込まれている。

トランプ氏は今月、洪水被害を受けやすい地域における政府のビル建設計画に関する環境面での見直しや規制を後退させ、洪水や海面上昇、他の気候変動の影響による被害を減らすために建築基準を厳格化したオバマ前大統領の大統領令を無効化した。

現実に基づいた政策を

災害による経済的損失は昨年 1,750 億ドル(約 19 兆円)超に上ると再保険会社スイス・リーが推定。 異常気象の規模と頻度が高まると見込まれるなか、被災する可能性の高い人々を守るための対策強化に向けた投資が不可欠だと専門家は指摘する。 「気候変動や自然に関して策を弄(ろう)することはやめ、インフラだけでなく人々の命や生活に取り組む長期的な決断をしなくてはならない」と、国連開発計画 (UNDP) で気候変動と災害リスク削減にあたる責任者ジョー・ショイアー氏は語った。

将来的なハリケーンの影響を軽減するため、被災地再興の方法を決めるにあたり、災害後に「より良い生活を取り戻すこと」、何十年も先の気象傾向を予報すること、そして、海面上昇と高潮の予測を織り込むことなどを、主な対策としてショイアー氏は挙げた。 また、災害の多い地域から人々やインフラを移動する決断を政府が迫られる場合もあると、同氏は付け加えた。 「全体的にかなり成功しているのはハービーでの救急活動においてだ。 人々を安全な場所に移動させ、人命の損失を防いでいる。」とショイアー氏。 「大半の場合、成功していない点は、リスクを念頭に置いてすべての投資が行われるよう促すことだ。」

ハービーがもたらす多大な損失にもかかわらず、トランプ大統領が気候変動と気象災害の科学的関連性を認めたり、今後起こり得る洪水やハリケーンによる被害を最小限にとどめるため、予算と規制を強化したりすることに、専門家の多くは懐疑的な見方をしている。 「トランプ政権はこれまで、現実に基づいた政策を策定する意向を全く見せていない。 人々が日々直面している問題に、明らかに基づいていない。」と、アクションエイド USA の政策担当責任者、ブランドン・ウー氏は語った。 (Reuters = 8-30-17)

前 報 (2-27-17)


中国が CO2 排出量取引市場を設立 EU 上回り世界最大

中国政府は 19 日、地球温暖化対策を効率的に進めるため、二酸化炭素 (CO2) 排出量取引の全国市場を設立したと発表した。 国家発展改革委員会によると、まずは電力業界 1,700 社超が対象で、排出量は 30 億トンを超える。欧州連合 (EU) の規模を上回り、世界最大の排出量取引市場が誕生した。

排出量取引は企業や業界に排出量の枠を定め、達成できなかった所に、超過達成した所から枠を買わせて温室効果ガスの削減を進める制度。 中国は 2011 年以降北京市や深セン市など国内 7 カ所で (CO2) 排出量取引を試行し、取引累計は 2 億トンを越えた。 全国市場でより多く、効率的に排出量を減らせるようにする。 新興国の中国に世界最大の市場ができたことで、先進国以外でも気候変動への対策が加速しそうだ。 (asahi = 12-19-17)


温室効果ガス排出、0.2% 減 代替フロンの回収進まず

環境省は 12 日、2016 年度の温室効果ガス排出量(速報値)が 13 億 2,200 万トン(二酸化炭素換算)で、前年度比 0.2% 減だったと発表した。 再生可能エネルギーの導入が広がる一方、温暖化に影響が大きい代替フロンの回収が進んでいないという。 3 年連続で減少したが、前年度からはほぼ横ばい。13 年度比は 6.2% 減だが、政府は 30 年度までに 13 年度比で 26% 削減する目標(森林吸収分を含む)を掲げており、より一層の削減が求められる。

05 年度比では 4.6% 減で、20 年度までに 05 年度比で 3.8% 以上減らすという目標は達成した。 環境省によると、16 年度は、再生エネ拡大に加え、九州電力川内原発と四国電力伊方原発が運転し、原発の稼働率が 5.0% と上昇し、温室効果ガスの 9 割を占める二酸化炭素は前年度比 0.5% 減った。 内訳をみると、オフィスなどの業務部門で 1,190 万トン、家庭部門は 520 万トン減るなど省エネが進んだが、工場などの産業部門は 700 万トン増えた。

エアコンや冷蔵庫の冷媒などに使われる代替フロンの HFC の回収は約 3 割にとどまり、排出が 410 万トン増加した。 中川雅治環境相は 12 日の閣議後会見で「30 年度の 26% 削減の目標達成に向け、一層の努力が必要。 再エネの最大限の導入など、対策を推進していく。」と述べた。 (戸田政考、asahi = 12-12-17)


水素発電の設備、神戸に完成 世界初の実験、来年 2 月に

水素を燃料に発電する試験設備が神戸市のポートアイランド内に完成し、報道陣らに 10 日公開された。 病院や国際展示場など周辺 4 施設に、電気と熱を供給する実験を来年 2 月上旬から 3 月末まで行う。 施設は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の助成を受け、約 20 億円かけて川崎重工業と大林組が建てた。

工場の自家発電などに使われている既存品のガスタービン発電設備をベースに開発した。 中核の設備は長さ 6.7 メートル、奥行き 3.1 メートル、高さ 4.7 メートル。 25 立方メートルのタンクを備え、満タンなら約 6 時間発電できる。 天然ガスを混ぜても運転でき、稼働中も調整できる。 水素は堺市の工場から液化して専用車で運ぶ。 川重などによると、市街地の複数の施設に電気を供給する水素発電施設は世界初だという。

水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しない。 温暖化ガスの削減につながると、国などが活用を促すが、燃料費の高さが課題となっている。 (伊沢友之、asahi = 12-11-17)


セブン、日立と省エネ対策強化 コンビニ店舗の電力削減

セブン-イレブン・ジャパンは 5 日、コンビニの各店舗で効率的に電力を使えるよう、日立製作所と協力して省エネ対策を強化すると発表した。 出店の加速で増加傾向にあるエネルギーの使用量や CO2 排出量の削減を目指す。 日立は、グループ全体で光熱費を大幅に削減した実績がある。

第 1 弾として、日立のクラウド式のデータベースシステムを使い、セブン-イレブンの全店舗や本社での電力の使用量などを一元管理する。 地球温暖化防止のため各地方自治体に提出するエネルギー使用量の報告書作成を日立に委託する。 今後は収集したデータを分析するほか、人工知能 (AI) を活用して、エネルギーを最も効率的に使えるよう、店舗の新たなレイアウトや設備の保守計画も検討するという。 (sankei = 12-5-17)


地球温暖化対策 農業在り方検討 国連会合で

農水省は 11 月 21 日、17 日に閉幕した国連の地球温暖化対策の会合で、気候変動に対する農業の在り方を検討していくことで合意したと発表した。 温暖化への対応や土壌炭素、家畜管理などをテーマに、各国での合意を目指し検討を始める。 気候変動と農業を巡っては、国連の気候変動枠組み条約締約国会議 (COP) などで 6 年前に議題として検討することが決まった。 しかし、温室効果ガスの排出削減などで温暖化自体を緩和しようとする先進国に対し、途上国からは反発も大きく、結論が見送られてきた。 (全国農業新聞 = 12-1-17)


省エネ LED、世界の光害拡大に拍車 研究

【マイアミ】 エネルギー革命をもたらすと考えられてきた LED (発光ダイオード)照明が広く利用されることが、世界中で過剰な光による「光害」の拡大に拍車をかけているとの研究論文が 22 日、発表された。 光害の増加により、人間と動物の健康に悲惨な結果がもたらされるという。 米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表された今回の論文が根拠としている人工衛星観測データは、地球の夜の明るさがますます増しており、屋外の人工照明に照らされた範囲の表面積が 2012 年 - 2016 年に年 2.2% のペースで増加したことを示している。

専門家らは、この事態を問題視している。 夜間の光は体内時計を混乱させ、がん、糖尿病、うつ病などの発症リスクを高めることが知られているからだ。 動物に関しては、夜間の光は昆虫を引き寄せたり、渡り鳥やウミガメの方向感覚を失わせたりなどで死に直結する可能性がある。 論文の主執筆者で、ドイツ地球科学研究センターの物理学者のクリストファー・カイバ氏は、同じ量の光を供給するために必要な消費電力がはるかに少ない、より効率的な照明の LED 光自体だけが問題なのではないと説明する。

そうではなく、人間がますます多くの照明を設置し続けることが問題なのだと、カイバ氏は今回の研究について議論する電話会議で記者らに語り、「以前は明かりがなかった場所に新たな照明を増やすことがある程度、節約分を相殺してしまう」と指摘した。 専門家らが「リバウンド効果」と呼ぶこうした現象は、低燃費の自動車にもみられる。 必要な燃料がより少ない車を買うと、車をより頻繁に使うようになったり、より遠くから通勤することにして通勤時間が長くなったりする可能性がある。

史上初の地球の夜景

今回の研究は、夜間光向けに特別に設計された史上初の放射計「可視赤外撮像機放射計 (VIRS)」の観測データに基づいている。 VIRS は、2011 年 10 月から地球を周回している米海洋大気局 (NOAA) の地球観測衛星「スオミ NPP」に搭載されている。 研究チームは、休暇シーズンの光量の増加を回避するために、各年の 10 月の夜間光量に限って分析した。 論文によると「南米、アフリカ、アジアなどの全域でほぼ例外なく、照明の増加が発生した」という。 照明が減少した地域はほとんどなかったが、シリアやイエメンなど戦闘で荒廃した国々では照明の減少が顕著だった。

イタリア、オランダ、スペイン、米国などを含む世界で最も明るい地域の一部はみな比較的変化が少なかった。 これは、例えばイタリアでは 2012 - 2016 年の期間に、ミラノで LED 照明への切り替えによる放射光の減少がみられたとしても、国内の他の地域で光の増加が起きたということだ。 また、衛星は多くの LED 照明で顕著な青色の波長を捕捉できないため、衛星データでは夜間光全体が過小評価されている可能性が高いと、研究チームは注意を促している。

「重大問題」への解決策

米科学誌「エコロジカル・エコノミクス」に発表された 2010 年の研究によると、過剰な夜間光は、野生動物が生息する自然環境に害を及ぼしたり星空の観測を不可能にしたりするだけでなく、「野生動物、健康、天文学などへの悪影響とエネルギーの浪費」で年間 70 億ドル(約 7,800 億円)近くの損失を引き起こすという。 今回の研究には参加していない南カリフォルニア大学建築学部のトラビス・ロングコア助教(建築学など)は、夜間照明面積の年 2.2 パーセント増加について「持続不可能」と表現した。

解決策としては、光量が低い照明を使用する、人がいない時は照明を消す、動物や人の健康への悪影響が最も大きい傾向のある青色や紫色の代わりに黄橙色の LED 光源を選ぶなどが挙げられる。 また、夜間照明が治安を向上させるなどの世の中の思い込みについては疑う必要がある。 ロングコア助教は、AFP の取材に「照明を増やすと犯罪が減るという決定的な証拠は存在しない」と語り、「実際、照明の追加によって人々が何をしているかを犯罪者が見やすくなるために犯罪が増加することを示す部分的な証拠がある」と続けた。 「必要と思い込まれている多くのことはまったく不要だ。 それは行き過ぎなのだ。」 (AFP/時事通信 = 11-24-17)


パリ協定の運用ルール、交渉加速で合意 COP23 閉幕

ドイツ・ボンで開かれていた国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP23) が 18 日朝、2020 年以降の地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の運用ルールづくりの交渉加速を確認することなどを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。 今回、議論の土台はなんとかできたが、意見対立も鮮明になった。 米トランプ政権による脱退宣言の影響も見え隠れし、今後の交渉は難航が予想される。

パリ協定の運用ルールは来年 12 月にポーランドのカトウィツェである COP24 で採択する。 今回、各国の意見を並べた約 60 項目に及ぶ非公式文書がまとめられ、これを基に来年 4 月の早い時期までに運用ルールのたたき台をつくる。 温室効果ガス削減や途上国への資金支援など多くの論点が残るため、4 月末から 5 月上旬にある作業部会と COP24 の間に追加会合を開くことになりそうだ。

資金支援では COP23 でも先進国と途上国が対立、会期を延長して交渉が続けられた。 米国のパリ協定脱退宣言で、途上国には十分な資金支援が続くのかという不安がある。 日本政府関係者は「各国の駆け引きはこれからも続く」と話す。 (ボン = 小坪遊、編集委員・石井徹、asahi = 11-18-17)

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米、COP23 で化石燃料の利用機会拡大を主張へ

[ワシントン] 米国はドイツで開催中の国連気候変動枠組み条約第 23 回締約国会議 (COP23) で、化石燃料の利用機会拡大を主張する考えだ。 ホワイトハウス当局者が明らかにした。 COP23 では、地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」の詳細なルールづくりに向けた議論が行われる。 米国は協定離脱の手続きを進めているが、COP23 に参加している。

当局者は、米政権の優先事項の一つは「効率の高い化石燃料を含め、価格が手頃で安定的なエネルギーへの普遍的なアクセス」を訴えることだと説明した。 東南アジアのような人口の多い国々で大量に使われている石炭について他の国が議論しないのは、「現実から目を背ける」ようなものだとの考えを示した。 その取り組みの一環として、ホワイトハウスやエネルギー企業の関係者の主導の下、「気候変動緩和における化石燃料と原子力」促進のイベントが 13 日に COP23 の場で開かれると述べた。 (Reuters = 11-13-17)

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シリアもパリ協定署名へ 離脱目指す米国、後退浮き彫り

地球温暖化対策の「パリ協定」にシリアが参加する考えを明らかにした。 ドイツ・ボンで開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP23) で 7 日、シリア政府代表団が「パリ協定にできる限り速やかに署名したい」と発言した。 署名は協定に参加する意思を示す手続きで、その後に国内で効力を発揮させるために締結をする。 シリアとともに参加意思を示していなかったニカラグアは 10 月に協定を締結、トランプ大統領が協定からの離脱を表明した米国の「後退ぶり」が COP23 でも改めて浮き彫りになった。

これに対し、米国務省のナウアート報道官は 7 日の会見で、シリア政府による化学兵器使用疑惑を引き合いに「シリア政府が大気に出すものを気にするならば、自分たちの国民にガスをかけなければいい」と開き直った。 その上で「米国のビジネス、労働者そして納税者により好ましい合意になれば、そのとき考える。 我々は引き続きパリ協定の離脱に向けて進む。」と話した。 (ボン = 小坪遊、ワシントン = 香取啓介、asahi = 11-8-17)

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ニカラグアがパリ協定署名へ、不参加は米・シリアのみに

中米ニカラグアのムリジョ副大統領は 23 日、地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」に同国が参加する意向であり、関連文書を国連に提出したと明らかにした。 これで協定に参加しない国は米国とシリアのみとなった。 副大統領はラジオ番組とのインタビューで「パリ協定は、気候変動と自然災害に対処するための意思や取り組みをひとつにする唯一の手段だ」と説明した。

トランプ米大統領は 6 月、パリ協定が国内雇用に影響を及ぼし、石油や天然ガスなどの業界に打撃を与えるとし、離脱を表明した。 ニカラグアは 2015 年にパリ協定が採択された際、より抜本的な行動が必要だとし、参加を見合わせていた。 次回のパリ協定会合は、ドイツのボンで 11 月 6 - 17 日の日程で開かれ、フィジーが議長国を務める。 (Reuters = 10-24-17)

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米、温室効果ガス規制を撤廃 パリ協定離脱鮮明

米環境保護局 (EPA) のスコット・プルイット長官は 10 日、発電所の温室効果ガス排出規制「クリーンパワー・プラン」の撤廃を公式に発表した。 3 月にトランプ大統領が署名した環境規制見直しの大統領令を受けた措置。 石炭などの化石燃料の利用を続け、経済負担を減らすのが狙いだが、ニューヨーク州などが規制撤廃に反発、訴訟の構えを見せており長期化する可能性がある。

クリーンパワー・プランは、米国の二酸化炭素 (CO2 排出量の 3 分の 1 を占める発電所からの排出を 2030 年までに 05 年比で 32% 減らす政策でオバマ政権の温暖化対策の目玉。 温暖化対策の世界的ルール「パリ協定」で、米国が 25 年までに 05 年比で 26 - 28% 削減するとの目標を達成するための核となる政策だった。 15 年に最終版が発表されたが、経済界や産炭地を抱える州などによる訴訟で、まだ施行されていない。

EPA は撤廃により 30 年に最大 330 億ドル(約 3 兆 7 千億円)の経済負担が軽減できるとしており、オバマ政権が試算した規制により避けられる健康被害などのメリットは「不確実」として含んでいない。 プルイット氏は撤廃で「米国のエネルギー源の開発を促し、不必要な負担を減らす」としており、産業界が受け入れやすい代替案を示すことを示唆しているが、時期については明言していない。 (ワシントン = 香取啓介、asahi = 10-11-17)


独シーメンス、6,900 人削減 火力発電事業大幅見直し

独電機大手シーメンスは 16 日、火力発電所向けの発電機を手がける部門を中心に、世界中で計 6,900 人を削減すると発表した。 再生可能エネルギーへの移行が進む中、火力発電向け事業を大幅に見直す。 削減人数全体のうち約 6,100 人が火力発電機を担当する部門。 地域別では半数がドイツで、ドイツ国内の 2 拠点は閉鎖する。 電力会社が太陽光や風力による発電にシフトする中、火力発電所に使われるタービンの受注が減っていた。 シーメンスは、社内に約 3,200 人分のポストが空いているとして、削減対象となる従業員を可能な限り配置転換すると説明している。 (寺西和男、asahi = 11-17-17)


スパコン省エネ、世界 1 - 3 位が日本勢 ベンチャー躍進

スーパーコンピューターの省エネ性能の世界ランキング「グリーン 500」が 12 日、発表され、日本のベンチャー企業が開発したスパコンが 1 - 3 位を独占した。 スパコンは膨大な電力を消費するため、計算能力のほかに省エネ性能でも競争になっている。 これまで大手企業や大学などが開発の主体だったが、ベンチャー企業が躍進した。 開発したのは東京のベンチャー「エクサスケーラー」と「ペジーコンピューティング」。 スパコンの多くは大型空調設備などで冷やす「空冷式」だが、このベンチャーのものは冷却効率の良い絶縁性の液体に基幹部を浸す「液冷式」だ。

省エネ世界一は理化学研究所(埼玉県)にある「Shoubu (菖蒲)」。 消費電力 1 ワットあたりの計算回数は 1 秒間に 170 億回を記録した。 2 位は高エネルギー加速器研究機構(茨城県)のスパコンで 168 億回、3 位はペジーコンピューティング社内のスパコンで 167 億回だった。 4 位の米半導体大手エヌビディア社の 151 億回を大幅に上回った。

一方、計算速度の世界ランキング「TOP500」も公表され、同ベンチャーが開発し、海洋研究開発機構(神奈川県)に設置されている「Gyoukou (暁光)」が日本勢としてトップの 4 位に入った。 計算速度は 1 秒間に約 1 京 9,000 兆回(京は兆の 1 万倍)で、10位の理研のスパコン「京」の約 1.8 倍だった。 「暁光」は省エネ性能でも 5 位に入った。 (杉本崇、asahi = 11-14-17)

前 報 (6-23-17)


米ユナイテッド航空、ニューアーク─ニューデリー便を停止

[ニューヨーク] 米航空大手ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスの広報担当者は 12 日、ニューデリーにおける大気汚染を理由にニュージャージー州ニューアーク発インド・ニューデリー行きの航空便を一時的に停止すると発表した。 また現在、ニューデリー発、ニューデリー行、ニューデリー経由の航空便を利用する乗客に対し、旅程の変更規定を免除していると明かした。 広報によると米デルタ航空はインド行きの航空便を運航していない。 ニューデリーは先週、有害スモッグによる緊急事態宣言を発令していた。 (Reuters = 11-13-17)


日本にまた「化石賞」 各国環境団体、石炭発電巡り批判

ドイツ・ボンで開かれている国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP23) で 9 日、地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」を日本が受賞した。 2 位を単独、1 位を共同でのダブル受賞だった。 世界各国の環境 NGO でつくる「気候行動ネットワーク (CAN)」が発表した。

CAN によると、日本が米国と 6 日に結んだ、温室効果ガスを大量に出す石炭火力発電所をアジアやアフリカに積極的に展開することなどをうたう覚書が 2 位の受賞理由。 1 位は「温暖化への歴史的な責任に後ろ向きだ」などとしてすべての先進国に贈られた。 この中には日本も含まれている。 日本は化石賞の常連。 日本政府代表団は「民間団体がやっていることの一つ一つにはコメントしない」などとした。 (ボン = 小坪遊、asahi = 11-10-17)


車の CO2、さらに 3 割減の規制案 欧州委が発表

欧州連合 (EU) の行政機能を担う欧州委員会は 8 日、新車の乗用車と軽商用車に課す二酸化炭素 (CO2) 排出量の規制強化案を発表した。 すでに世界でも最高水準の厳しさとされる 2021 年の排出削減目標から、30 年にはさらに 30% 減らす。 EU 域内の自動車産業の競争力強化が主な狙いだ。 今後、欧州議会や自動車業界などと協議して詳細を詰める。 EU は 21 年に乗用車は 1 キロ走行当たり 95 グラム、軽商用車は同 147 グラムまでの排出量規制を導入することを決めている。 今回の案には、25 年に 21 年比 15% 減とする中間目標も盛り込んだ。

30 年に登録される新車 1 台の生産コストは平均 1 千ユーロ(約 13 万円)ほど高くなることが見込まれるが、燃料費の減少で利用者は 15 年間乗れば差し引き 1,500 ユーロの利益があるという。 欧州委は、世界の自動車販売市場で近年、EU 内の自動車メーカーのシェアが低くなっていることを問題視。 特に CO2 を出さない「ゼロエミッション車」などエコカーの分野で「日本や米国、中国の動きがとても早い」として、厳しい規制の導入で技術力を高めることを目指す。

ただ、すでに一部の加盟国から懸念の声も出ている。 ロイター通信などによると、世界でも有数の自動車産業を抱えるドイツのガブリエル外相が「規制の強化は、雇用や成長に悪影響を及ぼす可能性がある」などと欧州委に伝えたという。 (ブリュッセル = 津阪直樹、asahi = 11-9-17)


成長しながら CO2 抑制 米中で大幅減、日本は停滞

世界、GDP あたり 15 年で 2 割減

経済成長しながら温暖化防止に向け二酸化炭素 (CO2) 排出量を抑えるデカップリング(切り離し)の動きが広がっている。 世界で国内総生産 (GDP) 1 単位あたりの二酸化炭素 (CO2) 排出量はここ 15 年で約 2 割減少。 再生可能エネルギー投資に加え、新興国で省エネ投資が拡大している。 2020 年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は 4 日に発効 1 年を迎え、各国や企業に一層の取り組みを促す。

10 月下旬、英 BP や英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなど世界の石油・ガス 10 社でつくるオイル・ガス気候イニシアチブ (OGCI) は、ガス火力発電所からの CO2 回収をはじめとする 3 事業に投資すると発表した。 国連環境計画 (UNEP) のソルヘイム事務局長は「エネルギーの生産や消費の方法を転換させるのが必要」と言う。 パリ協定は約 170 カ国が批准。 慎重な石油メジャーも対応を迫られる。

国際エネルギー機関 (IEA) の 10 月末の報告書によると、15 年時点で GDP 1 万ドル分を生み出すのに排出された CO2 量は 3.1 トン。 00 年より 0.7 トン減った。 別の報告では 16 年に燃料を燃やして発生した CO2 は 15 年比 0.6% 減の 321 億トン。 ここ 3 年、3% 成長を実現し排出量はほぼ横ばいだ。 IEA は「新しく生まれた傾向」とみる。 デカップリングが進む理由は、排出量の少ないエネルギーの利用が増えたことだ。 グローバル企業では事業に使うエネルギーを再生エネで賄う動きが広がる。 全量再生エネをめざす企業連合「RE100」には、米アップルやマイクロソフト、米ゼネラル・モーターズ (GM) など世界 110 超の企業が参加する。

再生エネの価格は低下傾向にある。 調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス (BNEF) によると、米国、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリアでは、太陽光の発電コストが石炭火力と同水準になった。 省エネ技術への投資拡大も寄与する。 IEA によると、16 年の投資額は前年比 9% 増の 2,310 億ドル(26 兆円)。 販売されたヒートポンプの数は 28% 増え、電気自動車は 38% 増。 主要国で開発した省エネ設備が新興国に広がりつつある。

最大排出国の中国は、発電部門を石炭から太陽光などに転換。 100 基単位の石炭火力発電所の閉鎖も検討する。 16 年の経済は前年比 6.7% 拡大し、排出量はほぼ同じだ。 再生エネや原子力、天然ガスの割合が高まり、石炭消費は減少。 14 年の発電量は石炭が 73% を占めたが、30 年 51%、40 年 43% に下がるとみる。 世界 2 位の排出国、米国は主に油価の高いときにシェールガス革命が起き、発電燃料として石炭からの転換が進んだ。 トランプ政権はパリ協定離脱を宣言したが、企業の動きは止まらない。

日本は 16 年時点で世界資源研究所 (WRI) が選んだデカップリング達成 21 カ国から漏れた。 GDP あたりの CO2 排出量は 2.6 トン。 米中より 00 年からの減少幅は小さい。 RE100 の参加企業もリコーと積水ハウスだけ。 自動車や電機などは「再エネコストが高い日本で全量は無理」との声が大半だ。 太陽光発電は固定価格買い取り制度 (FIT) の影響で高コスト体質が続く。 再エネのコストを下げ、原発は再稼働の進め方に知恵を絞る必要がある。

6 日に独ボンで開幕する第 23 回気候変動枠組み条約締約国会議 (COP23) ではパリ協定を巡るルールづくりの交渉が本格化する。 IEA は年平均 3.4% の成長を前提に今の削減努力を続けても、30 年の CO2 排出量は 15 年比で 20% 増の 386 億トンになるとみる。 「2 度目標」の達成にはさらに 35% ほど減らす必要がある。 (竹内康雄、草塩拓郎、榊原健、nikkei = 11-5-17)