曲がっても圧力測れます 高性能薄型センサーを開発

曲がっても正確に圧力の分布を測れる薄型センサーを東京大の研究グループが開発した。ゴム手袋の表面に貼れば物に触れたときの感触を数値化でき、医療やスポーツの研究への応用が期待されるという。 25 日付の英科学誌ネイチャーナノテクノロジー(電子版)に論文が掲載された。 研究グループは、ゴムに炭素素材のグラフェンなど電気の通りやすい物質を混ぜ、太さ 300 - 700 ナノメートル(ナノは 10 億分の 1)の極細の繊維を作製。 2 枚の薄い金属の間に一様にはさみ、押されたときの電気抵抗の変化から圧力の値を測るセンサーを開発した。 3 千回以上計測することもできたという。

厚さは食品用ラップの 3 割ほどの 0.0034 ミリ。 従来の圧力センサーは 0.3 ミリ以上あり、曲がった時にセンサー自体のひずみが影響してうまく測れないのが課題だったが、薄型化によって克服した。 研究グループは、人工心臓につないだ人工血管の外側にセンサーを付け、脈の圧力から内部の流速を測ることにも成功したという。 染谷隆夫教授は「人の感覚に頼っていた触診を数値化したり、ボールを握った時の圧力分布を測ったりするなど、医療やスポーツ分野への応用が期待できる」と話す。 (山崎啓介、asahi = 1-26-16)


「神の手」もうなる手術器具 めがねの鯖江が新境地

チタン製手術器具

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床発電で照明点灯、停電時も安心 大和ハウスがアパート

大和ハウス工業は、床を踏んだエネルギーで発電するしくみを採り入れたアパートを、栃木県小山市に建設した。 停電しても階段を上り下りするときに照明がともるため、災害時でも安心だ。 今後、全国で建設する賃貸住宅にも広げていくことを検討するという。

各戸ごと 2 階建て構造のアパートで、部屋は階段を上った 2 階部分にある。 玄関を入り、真っ暗な階段をのぼり始めると、階段に付いた緑色の LED 照明が点灯した。 大和ハウスの担当者は、「停電しても混乱なく避難できる。」 圧力を加えると電気が発生する「圧電素子」という物質を階段に敷いた。 電気はいったん蓄電池に蓄えた上で、照明に流れる。 最長で 1 分間電気がつく。 (下山祐治、asahi = 1-17-16)


エアコンやテレビを遠隔操作可能に? ソニーの半導体部門が新しく仕掛ける多機能ライト

ソニーは、2016 年 1 月 13 - 15 日に東京ビッグサイトで開催されている「ライティングジャパン」に合わせて、LED シーリングライトとコントロール機能を持つモジュールを組み合わせたマルチファンクションライトを発表した。 ソニーは、1 月 13 - 15 日に東京ビッグサイトで開催されている「ライティングジャパン」に合わせて、LED シーリングライトとコントロール機能を持つモジュールを組み合わせたマルチファンクションライトを発表した。 同社のデバイスソリューション事業本部新規事業部門 L-Gadget 事業室の統括部長である横沢信幸氏に、同製品の概要や特徴、ライティングジャパンで展開する狙い、今後の展開などについて話を聞いた。

5W スピーカー内蔵で、音質にも高いこだわり

横沢氏は、「同社が展開するマルチファンクションライトは、"家の中を快適で、安心に" というテーマを掲げている」と語る。 マルチファンクションライトとスマートフォン(スマホ)の専用アプリを用いることで、照明以外にもエアコンやテレビの遠隔操作が可能になったり、照明を通して音楽コンテンツを楽しんだりできるという。 冒頭でも述べている通り、同製品は、LED シーリングライトと比較的大きめなモジュール部分によって構成されている。 LED シーリング部分は、東芝ライテックと技術提携を行って開発。 モジュール部分には多くのコントロール機能が内蔵されている。

例えば、Wi-Fi (IEEE802.11 b/g/n) に対応し、内蔵する赤外線コントローラーによって、専用のスマホアプリからエアコンやテレビの制御が可能になる。 人感センサーと温度センサーも内蔵しているため、部屋に人がいないときに自動的に照明を消すといった照明の消し忘れの防止や、部屋の温度が設定した温度よりも上がったときに自動的にエアコンを付けるといったカスタマイズが行えるとしている。

スマートフォン専用のアプリは、エアコンやテレビ、音楽コンテンツなどの遠隔操作が行える。 マルチファンクションライトを通して制御できる機器は拡張していく予定で、将来的にユーザー自身がアプリを開発できるソフトウェア開発キット (SDK) も展開する予定という。 また、Wi-Fi を通して、スマートフォンに保存している音楽コンテンツを内蔵するスピーカーで再生可能。 32G バイトまでの microSD カードを挿入できるため、モジュール単体に音楽コンテンツをアップロードして再生もできる。

横沢氏は、「ソニーが Blu-ray システムで培ってきた "音質" にもこだわって、5W 出力のスピーカーを内蔵した。 モジュールが比較的大きいサイズになっているのは、この影響が大きい」とする。

モジュールをソリューションとして展開へ

同製品を手掛けるのは、同社デバイスソリューション事業本部が 2015 年 4 月に新設した新規事業部門。 デバイスを扱う部門が照明を展開する理由について、横沢氏は「同製品は商品化後、住宅会社や電材卸事業者向けに販売していく。 しかし、将来的にはモジュール部分をソリューションとして展開する予定だ。 そのために、ライティングジャパンを通じて、モジュールがどのような形で応用できるかを、来場者とのコミュニケーションを通じて探りたい。」と語る。

取材時(2016 年 1 月 14 日)での手応えとしては、「遠くにいる両親や老人介護などの見守りに可能性がありそうだ(横沢氏)」とした。 機能面では今後、モジュール部分にカメラを搭載したり、規格化を行ったりしていきたいという。 同製品は、2016 年 4 - 6 月に商品化を予定。 価格に関しては、「LED シーリングライトとモジュールを合わせて 1 個当たり、10 万円以下におさえたい(横沢氏)」とした。 (庄司智昭、EE Times = 1-15-16)


米の家電見本市「CES」、初の美容コーナー登場

米ラスベガスで開かれている家電見本市「CES」に、美容関連製品を集めた展示スペースが初登場した。 家電好きの男性たちを引きつけてきた CES だが、女性をターゲットにした製品も広がっている。 CES 会場の一角に今年初めてつくられた美容製品コーナーは、自動車や黒い家電製品が多い会場の中で、カラフルな色使いの看板や製品が並び、他の会場とはやや違った雰囲気だ。

中国出身の 3 人の男性が始めた米ベンチャー企業は、写真や様々なデザインをネイルに印刷できる「ネイルプリンター」を展示。 女性たちの長い列ができた。 通常のジェルネイルの材料を使い、爪の大きさやカーブに合わせて印刷する。 指1本につき 8 秒ででき、約 1 カ月もつという。 創業者の一人、徐定亨さん (21) は「彼女が長時間ネイルサロンに行き、待たされるのにうんざりしていた」と開発のきっかけを語る。

別のベンチャー企業は、妊娠検査薬の結果をスマホに送り、結果や出産予定日を記録する機器を発表。 結果を待つ間、落ち着かない女性のためにスマホで犬が遊ぶ映像などを流す機能まで入れた。 (米ラスベガス = 西山明宏、宮地ゆう、asahi = 1-10-16)


日本の匠の技、欧州へ 工芸品の修復、仏アルザスに拠点

欧州の美術館などに収められている日本の伝統工芸品を修復する拠点「匠(たくみ)ビレッジ」をフランス北東部のアルザス地方につくり、職人の技や工芸品を海外に広めていく計画が動き出している。 前文化庁長官の近藤誠一さん (69) らが職人に声をかけ、運営組織を立ち上げた。 年内にも現地で活動を始める。

拠点となるのは、ドイツ国境に近いオー・ラン県のアルザス・欧州日本学研究所。 日欧の間の経済や文化などの交流を促すため、同県などが主導して 2001 年に設立された。 かつて学校法人の成城学園(東京都)の教育施設があり、ホールや庭を備えている。 学園の撤退が決まった約 10 年前、当時外務省の文化交流部長だった近藤さんに研究所側が跡地の活用を呼びかけたのが始まりだ。 一昨年、現地視察を経て話が進み、昨年秋に訪日した県知事とも計画を話し合った。

近藤さんは昨年、30 年近く伝統文化の発信を続けてきた写真家の田川清美さん (66) = 東京都港区 =、匠ビレッジの「村長」に就任予定の和紙職人、金刺潤平さん (56) = 熊本県水俣市 = らと一般社団法人「匠プロジェクト」を立ち上げた。 和紙や畳の職人や甲冑(かっちゅう)師、研ぎ師、漆芸家、書家らが参加する。 (佐々波幸子、asahi = 1-9-16)


マヨネーズ賞味期限 1 年に キユーピー、半世紀ぶり実現

キユーピーは、主力のマヨネーズの賞味期限を現在の 10 カ月から 1 年に延ばす。 対象は 50 - 450 グラム入りの 5 商品で、3 月出荷分から。 研究を重ね、半世紀ぶりにおいしさを 1 年保つことに成功した。 そのカギは「酸素」にあった。

同社がマヨネーズを売り出したのは 1925 (大正 14)年。 当時は瓶詰で、賞味期限は 1 年。 だが、より手軽に使えるよう、58 年から現在のようなポリエチレン製のボトル容器に変えたところ、期限は 7 カ月に短くなってしまった。 ポリエチレンは酸素を通すためだ。 マヨネーズは酸化すると品質が低下する。 酸素を通しにくい容器を採用したり、容器の口にアルミシールを貼り付けたりといった工夫を続け、2002 年には原料の油に溶けている酸素を取り除く製法を開発。 10 カ月に延長できた。 さらに今回、製造工程で酸素を減らすことで、ついに 1 年を実現した。 (岡林佐和、asahi = 1-8-16)


職人の技、機械に伝承 44 年の「勘」をデジタル化

人口減少、生産技術の継承

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水蒸気レンジ、自動調理 300 種 東芝ホームテクノ販売

東芝ホームテクノは、高温の水蒸気で調理する過熱水蒸気オーブンレンジ「石窯ドーム ER-ND200」を来月下旬に売り出す。 内側の天井部分が石窯のように湾曲した構造が特徴で、高温で素早く表面を焼き上げることができるという。 カラー液晶のタッチパネルを採用し、300 種類のメニューから料理名を選ぶだけで自動調理する機能も備える。 想定価格は税抜き 7 万 8 千円前後。 (asahi = 12-30-15)


介護ロボット導入、国が補助へ 人手不足緩和する狙い

政府は来年 2 月にも、介護施設が高額な介護用ロボットを導入する際にかかる費用への補助を始める。 施設への介護ロボット導入を促すことで介護に従事する人の負担を軽くし、介護分野の人手不足の緩和につなげる狙いがある。

「移乗介助(介助者による抱え上げなど)」、「移動支援」、「排泄支援」、「認知症の見守り」、「入浴支援」の 5 分野の介護ロボットや機器を導入する際の費用を補助する。 20 万円を超えるロボットが対象で、市町村を通じて 1 施設あたり 300 万円を上限に支援する。 リースで使う施設への補助も検討する。 2015 年度補正予算案に 52 億円を計上しており、成立すれば、速やかに始める方針だ。

介護ロボットの開発は相次ぐが、例えば入浴介助型が約 200 万円、介護する人の腰の負担軽減向けは約 60 万円など高額だ。 リース料が月 10 万円を超えるものもあって施設側には負担が重く、補助で導入を促す。 (真海喬生、asahi = 12-28-15)


エレベーター、世界最速競う 中国、三菱電機が報道公開

中国・上海で来年の開業が見込まれる 632 メートルの上海中心(上海タワー)で 25 日、三菱電機が「世界最速」をうたうエレベーターを報道陣に公開した。 広東省広州に来年完成予定のビル(530 メートル)では、日立製作所のエレベーターが記録を塗り替える見通し。 中国の「摩天楼」を舞台に、日本企業の記録更新が続きそうだ。

中国で最高層となる上海タワーは、東京スカイツリー(634 メートル)とほぼ同じ高さ。 この日公開された三菱電機のエレベーターは、地下 2 階から地上 119 階の展望階までの 565 メートルを 55 秒で移動し、最高速度は分速 1,080 メートル(秒速 18 メートル)に達した。 現地合弁会社、上海三菱エレベーターの安藤宏副総裁は「世界最大のマーケットである中国で、快適で安全に世界最高速を実現できたことは、ブランドイメージを強くするのに貢献する」と語った。 日立製作所のエレベーターは、分速 1,200 メートルを達成する予定だ。(上海 = 金順姫、asahi = 12-26-15)


米の業務冷蔵庫会社をパナソニックが買収

パナソニックは 21 日、業務用冷蔵庫の米メーカー「ハスマン」を買収すると発表した。 来年 4 月をめどに、約 1,900 億円で全株式を取得する。 ハスマンはスーパーやコンビニで使われる冷凍・冷蔵ショーケースの大手。 買収によってパナソニックのショーケース事業の売上高は 2 千億円超となり、世界トップの規模になるという。

ハスマンは 1906 年設立で 11 月末の従業員は 5,830 人。 2014 年の売上高は約 1,300 億円で、北米のショーケース市場で 2 番手という。 米国を中心に、世界に生産拠点が 10 カ所ある。 パナソニックは 18 年度に売上高 10 兆円の目標を掲げ、安定して売り上げが見込める企業向け製品を強化している。 ショーケースを含む食品流通部門の売上高は 15 年度の 2 千億円を、18 年度には 3 千億円まで伸ばす計画だった。 今回の買収で達成が見込めるため、目標を引き上げる方針だ。 (山村哲史、asahi = 12-22-15)


「はやぶさ 2」、スイングバイ成功 JAXA 発表

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は 14 日、小惑星探査機「はやぶさ 2」が地球の引力を利用して軌道を変えた「スイングバイ」の成功を確認したと発表した。 3 日に地球に最接近した後、飛行位置や速度などを測定し、目的地の小惑星「リュウグウ」へ向かう軌道を順調に航行していることを確かめたという。 プロジェクトマネジャーの津田雄一准教授は「メンバー全員力を合わせ、挑戦の航行を続けます」とのコメントを発表した。 (asahi = 12-14-15)

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小惑星探査機「はやぶさ 2」が地球スイングバイ … 結果は 12 月 10 日前後に

宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、小惑星探査機「はやぶさ 2」が 12 月 3 日の夕方から夜にかけて地球スイングバイを実施したと発表した。 「はやぶさ 2」は同日 19 時 08 分(日本時間)に地球に最接近、ハワイ諸島付近の太平洋上空約 3,090km を通過した。 NASA (米航空宇宙局)深宇宙ネットワーク局の支援を受けた探査機運用により、最接近後の探査機の状態は正常であることを確認したとしている。

「はやぶさ 2」は 2014 年 12 月 3 日に打ち上げられ、その後 1 年間は地球の軌道と似た軌道に沿って、太陽の周りを公転して、2015 年 12 月 3 日に、地球に接近、地球の引力を利用して軌道を小惑星 Ryugu へと変更する。 現在、はやぶさ 2 プロジェクトチームでは、地球スイングバイ後の「はやぶさ 2」の軌道の計測と計算をしている。 「はやぶさ 2」が目標とする軌道に入れたかどうかの確認には 1 週間程度かかる見込み。 (Response = 12-7-15)


金星軌道、あかつき投入成功

金星探査機「あかつき」が金星を回る軌道に入った。 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が 9 日、5 年越しの軌道投入に成功したと発表した。 投入後の 7 日午後 2 時 19 分、金星の中心から 7 万 2 千キロの距離からあかつきが撮影した金星の紫外線画像(JAXA 提供)には、しま模様が写っていた。 (asahi = 12-10-15)

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あかつき、金星軌道へエンジン噴射 5 年前は投入失敗

金星探査機「あかつき」が 7 日、金星を周回する軌道に入るため、エンジンを噴射した。 5 年前に周回軌道投入に失敗して以来の再挑戦で、太陽を回る軌道を飛び続けながら金星に近づく機会を待っていた。 主エンジンが使えなくなるなど綱渡りで迎えた「最後のチャンス」。 成功すれば日本初の惑星探査が実現する。 あかつきは、金星の周囲を回りながら大気を観測、地球と大きく異なる気象現象を解明するのが目的で、2010 年 5 月に打ち上げられた。 ちょうど 5 年前の 10 年 12 月 7 日に周回軌道入りを試みたが、主エンジンが破損、噴射時間が足りずに失敗した。

次に金星に近づくのはそのままだと 6 年後だった。 ただ、衛星の設計寿命は 4 年半で、バッテリーは劣化する。 太陽の熱の影響も懸念された。 このため、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の運用チームは様々な工夫をこらした。 出力の小さい姿勢制御用エンジンを使い、予定より1年早く投入できる軌道に移した。 効率よく航行できるよう、使用を断念した主エンジン用の薬剤を捨てて軽量化。 高温に強い側が常に太陽を向くようにした。 今年 10 月に太陽に近づいた後も、観測機器は正常であることが確認されていた。

軌道を担当する広瀬史子主任研究員は数万のケースを計算し、この日を選んだ。 「あっという間の 5 年だったが、考え漏らしがないよう準備は尽くした。」 再投入の開始は午前 8 時 51 分。 進行方向と反対向きの姿勢制御エンジン四つを約 20 分間噴射し、ブレーキをかける。 すると金星の引力に引っ張られ、周回軌道に入る手はずだ。 残っている燃料は、ほぼ使い切る。 予定通りに噴射を終えたことが確認されると、運用管制室では拍手が起きた。 (奥村輝、asahi = 12-7-15)


電機メーカー OB、異業種で輝く 人員削減のち即戦力

シャープをはじめ大手電機メーカーでは人員削減が相次いできた。 辞めた人たちの一部は、別のメーカーなどに移って活躍している。 再就職が若手に比べて難しいベテランでも、技術があれば採用したいという企業は多い。 ただ、全体的に見ると、再就職が「狭き門」という現実は残る。

腕利き技術者を積極採用

生活用品メーカーのアイリスオーヤマ(仙台市)は昨年、大阪・心斎橋で開発拠点の「大阪 R & D センター」を本格的に動かし始めた。 家電事業の売上高は、2009 年の 57 億円から 14 年は 420 億円に増えた。 品ぞろえの強化には腕の立つ技術者が欠かせない。 電機メーカーが集まる大阪にセンターを置くのは、転職者らを集めやすいという狙いがある。 いまの人員は約 30 人だが、100 人規模まで大きくしたい考えだ。

シャープを 3 年前に辞めた雨堤正信さん (59) は、センターで空調機器の売り出し準備に追われる。 「スピード感が全く違う。 前の職場を引きずるとついていけない。」 商品の企画から量産まで 1 人で責任を負う。 発売までの期間は半年ほどでシャープ時代の半分という。 刺激があって「転職してよかった」と話す。 1979 年にシャープに入り、冷蔵庫やエアコンの開発に携わった。 若手に後は任せようと 12 年の希望退職に応募した。 ものづくりを続けたかったが、面接では不採用が続いた。 「50 代は思っていた以上に壁が高い」と振り返る。

西谷久弘さん (62) は、パナソニックを定年退職して移ってきた。 専用容器で焼き魚などができる電子レンジの開発などに関わった。 ほかの同僚も家電メーカーの出身者がめだつ。 家電業界のほかにも、技術者の受け入れに前向きな企業がある。 子ども用品店の西松屋チェーン(兵庫県姫路市)は、自主企画商品に力を入れている。 約 80 人いる開発の担当者らを、今年度中に 100 人規模にするため、積極的に採用している。 (山村哲史、西山明宏、asahi = 12-4-15)


蛍光灯、実質製造禁止へ 20 年度めど、LED に置換

政府は、エネルギーを多く消費する白熱灯と蛍光灯について、国内での製造と国外からの輸入を、2020 年度をめどに実質的に禁止する方針を固めた。 省エネ性能が高い発光ダイオード (LED) への置き換えを促す狙いだ。 安倍晋三首相が 26 日に財界幹部を集めて官邸で開く「官民対話」で、省エネ対策の一環として表明する。 今月末にパリで始まる国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP21) に向けて、日本の温室効果ガス削減への取り組みを具体化する狙いもあるとみられる。

政府は LED と蛍光灯それぞれについて、品目ごとに省エネ性能が最も優れた製品の基準を満たさないと製造や輸入をできなくする「トップランナー制度」で規制してきた。 来夏をめどにつくる省エネ行動計画に、照明についての品目を一つにまとめることを盛り込む。 LED 並みの省エネを達成するのが困難な白熱灯と蛍光灯は、事実上、製造や輸入ができなくなる見通しだ。 来年度にも省エネ法の政令を改める方針。 (高木真也、南日慶子、asahi = 11-26-15)


商業衛星打ち上げ成功 H2A 改良、海外から受注

H2A ロケット 29 号機が 24 日午後 3 時 50 分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。 約 4 時間半後、搭載していたカナダの企業の通信放送衛星を予定の軌道に投入。 国産ロケットによる初の商業衛星打ち上げが成功した。 国際的に商業衛星の需要が高まる中、商業衛星打ち上げで海外と競争を繰り広げる三菱重工業が初めて受注。 この成功で今後の受注に向けて弾みがつきそうだ。

当初打ち上げ予定の午後 3 時 23 分前に海上の警戒区域内に船舶が進入。 カウントダウンを中断するハプニングがあったが、安全確認後、H2A は白煙を上げて発射台を離れた。 従来の H2A では衛星を高度数百キロで切り離していたが、同社は静止軌道に近い約 3 万 4 千キロまでロケットで衛星を運ぶ新技術を採用。 飛行にかかる衛星側の燃料負担が少なくなり、その分、機器や衛星の寿命を延ばすための燃料を積めるため、商業衛星市場で欧米などと同じ土俵に立って勝負できることを同社は示した。 (小林舞子、asahi = 11-25-15)

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池井戸潤さん x 恵俊彰さん「下町ロケット」の魅力を語る

ドラマ「下町ロケット(TBS 系)」の神谷弁護士役で注目されたタレントの恵俊彰さんと、原作者の池井戸潤さんが作品への思いを語った。 恵さんの FM 番組の収録後で、同世代の 2 人が意気投合していた。

「会社員の実感をリアルに」

恵「家族みんなが池井戸作品のファンなので、神谷弁護士のイメージを壊さないか、撮影前は不安でした。」

池井戸「神谷弁護士が活躍しないと、佃製作所はつぶれてしまいますから大事な役ですね。 良い演技で、楽しみに見ていましたよ。 神谷弁護士のモデルの鮫島正洋弁護士とは飲み仲間なのですが、喜んでいたと聞いています。」

恵「ほっとしました。 阿部寛さんの演じる佃航平を支える役なので、出しゃばらず、脇役に徹しようと思っていました。」

池井戸「みなさんいいチームワークでした。」

恵「技術開発部長の山崎を演じた安田さんも技術者の持つヘンタイ風なところがステキな感じで出ていました。」

池井戸「恵さんも賢さと、バランス感覚の良さが演技に出ていました。 勉強したらすぐに弁護士になれるのでは。」

恵「ありがとうございます。 ぼくは池井戸さんの一つ下で、同級生たちのサラリーマン生活も残り 10 年ほどです。 同窓会などで話していると、この作品が会社員の実感をリアルに伝えているんだなということが分かります。」

池井戸「小説の登場人物それぞれが生きていると思って書いているので、ありえないことをやったり言わせたりはしないですね。」

恵「やはり何かを作るときは、自分が面白いと思えるものを徹底するべきなんですね。」 (asahi = 11-22-15)


下町ボブスレー、平昌五輪も不採用 技術者の夢叶わず

町工場の技術を結集した国産そりの「下町ボブスレー」を、日本代表が 2018 年平昌五輪でも使わないことが決まった。 日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟が 18 日、東京都大田区の下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会に不採用を通達した。 ソチ五輪に続き、下町の技術者の夢はかなわなかった。 日本連盟は 14 日に、ドイツで下町とドイツ製のそりの滑走テストを 3 本ずつ実施し、ドイツ製がゴールタイムと最高速度で上回ったという。 不採用の知らせに、推進委員会の細貝淳一ゼネラルマネジャーは「がっかりしている」と語り、今後は欧州や中南米に採用を働きかけるという。 (asahi = 11-18-15)


ソニーが全固体電池を開発 ウエアラブル機器向け想定

ソニーは、電解質に固体材料を活用した全固体電池を試作した。 樹脂フィルム上に固体電解質を成型する薄膜型の 2 次電池で、新規の正極材料を開発することで実現した。 折り曲げなど形状の自由度が高いほか、作製時に高温処理が不要で製造コストの低減が見込めるという。 小型・薄型のウエアラブル機器や、折り曲げに対応できるフレキシブルデバイスへの搭載を想定し、数年後の実用化を目指す。

2015 年 11 月 11 日から開催の「第 56 回 電池討論会(愛知県産業労働センター、11/11 - 13)」で発表した。 ソニーは 2014 年、全固体の薄膜型 2 次電池の試作に関して論文誌で発表していたが、電池討論会で発表するのは今回が初めてという。 固体電解質を用いる全固体電池は、従来の有機系電解液を用いる電池に比較して安全性が高いとされ、世界中で研究開発が活発化している。 ソニーの参入により、今後電極材料や周辺部材などの研究開発も促進される可能性がある。

ソニーが発表したのは、全固体電池に向けた非晶質の正極材料と、その特性評価結果。 従来一般的な全固体薄膜 2 次電池では結晶材料を正極活物質に用いるため、高温の成膜プロセスが必要だったが、ソニーの開発材料は非晶質で、成膜時に基板加熱を必要としないという。 このため、ほとんどの製造過程を室温で実施できると見込む。

正極材料として用いたのは、リン酸系のリチウム金属化合物。 試作品は、厚さが 400μm (マイクロメートル)のポリカーボネートフイルムを基板とし、スパッタリング装置を用いて正極や固体電解質、負極を積層することで作製した。 固体電解質にはリン酸リチウムオキシナイトライド (LiPON) を成膜し、電解質の厚みは 500nm (ナノメートル)程度という。 正極材料の遷移金属元素としては Ni や Mn、Co や Cu、Ag などを評価した。

試作品の評価結果では、遷移金属に Ni を用いた時が最も高い放電容量を示し、正極活物質の重さ当たりの容量では 330mAh/g と、十分な値を測定したという。 レート特性では、30C といった急速充放電も可能であることを確認している。 試作した電池の充放電サイクル特性については、2,000 サイクル程度まで駆動するとを確認済みだ。 実用化に向けて残る課題は、自己放電を抑制すること。 今後の特性改善などで性能をさらに向上させる考えだ。 (日経テクノロジーオンライン 蓬田宏樹、nikkei = 11-16-15)


苦闘 5 年、ソニー「復活」は本物か 「不正」東芝に手差し伸べる余裕

まさに対照的な中間決算だった。 ソニーと東芝である。 片や復活の狼煙(のろし)をあげるソニーに対し、赤字転落の東芝。 その立場の違いは、東芝のリストラ策の一環である事業売却にソニーが応じるという事態をも生んでいる。 かつては中韓勢の攻勢に苦しむ日本メーカーの中にあって、先進的な構造改革で「テレビは黒字」としていた東芝が、ソニーを仰ぎ見る立場に陥った。

株式時価総額、大手電機 6 社で最大に

ソニーが 10 月 29 日に発表した 2015 年 9 月中間連結決算(米国会計基準)は、最終損益が 1,159 億円の黒字と、前年同期の 1,091 億円の赤字から一気に転換した。 中間決算として最終黒字を実現したのは 5 年ぶりのことというから、この間のソニーの苦闘を端的に示す数字といえる。 乱高下する液晶の需給にいまだに振り回されているシャープを除き、大手電機メーカー 6 社の中で構造改革のシンガリと言われ続けてきたソニーだが、復活への産みの苦しみの成果がようやく目に見える形になったと言える。

2016 年 3 月期の通期決算についても、3 年ぶりの最終黒字 1,400 億円(前期は 1,259 億円の赤字)とする従来予想を据え置き、株式市場では「より慎重に目配りしている結果で、十分達成可能ではないか(大手証券)」と見られている。 市場の評価は株価に現れている。 11 月 9 日の終値は 3,448 円。 全体の動きに合わせるような格好で、5 月 19 日の年初来高値(3,970 円)には幾分及ばないが、過去 10 年でどん底だった 2012 年 11 月 15 日の 772 円から大幅に上昇している。

大手電機 6 社の中で、時価総額はソニーが堂々のトップに位置する。 今回の中間決算でソニーの最終利益の水準は大手 6 社で最高で、それが時価総額にも反映している。 11 月 9 日現在、ソニーの時価総額は 4 兆 3,900 億円で、2 位の日立製作所 3 兆 5,260 億円、3 位のパナソニックの 3 兆 5,000 億円に大差をつける。 以下、▽ 三菱電機 2 兆 8,400 億円、▽ 東芝 1 兆 3,140 億円、▽ 富士通 1 兆 2,500 億円、▽ NEC 1 兆 160 億円 - - といった具合。 ソニー株に対する評価は、1 年前の 9 月に上場以来初となる無配を発表し、株価が急落した時点から隔世の感がある。

足手まといの「エレキ」が牽引役

「ソニー復活」と株式市場が判断した根拠は、これまで足を引っ張ってきた、ソニー社内で「エレキ」と呼ばれる電機分野の収益改善だ。 その中で最有望株は、従来から競争力があった画像センサーなどのデバイス事業で、部門営業利益は前年同期より 6 割近く増えた。 ゲーム事業の中核「プレイステーション 4 (PS4)」は、任天堂の苦境とは対照的に好調で、2016 年 3 月期の販売計画を 1,750 万台と、従来予想から 100 万台増やした。 スマホ、テレビ、デジカメもそれぞれ収益が改善した。

エレキの復活が注目されるなか、ソニーらしい「とがった」を製品開発が目に見え始めたことも株式市場を安心させている。 CD より高音質な「ハイレゾ」対応のウォークマンや、高精細画質の 4K テレビなどがその筆頭だろう。 また、無人飛行機「ドローン」事業の新会社「エアロセンス」の設立や、映像を使ったソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) の開始などでも先手を打つ。この SNS は、スマホを活用した新しい映像コミュニケーションとして、来年度に 100 万人の利用者獲得を目指している。

ソニーの陰で、東芝は冴えない。 不正会計問題に注目が集まるが、稼ぐ力自体が劣化している。 11 月 7 日に発表した 2015 年 9 月中間連結決算は営業損益が 904 億円の赤字となり、前年同期の 1,378 億円の黒字から大幅に悪化。 収益が低迷する POS (販売時点情報管理)システム事業の資産評価を見直す減損処理で 696 億円の損失を計上したほか、主力の半導体も苦戦した。

こうしたことから、東芝はスマホなどに搭載する画像半導体の生産設備をソニーに売却、1,000 人以上がソニーに移籍する見込みだ。 構造改革が一巡したソニーが東芝に手をさしのべる構図だ。 かつて東芝は 2008 年度に日本勢の中で唯一、テレビ事業を黒字化するなど、構造改革の先駆者として高い評価を得た時期もあったが、それも、今や遠い昔のことになった。 (J-Cast = 11-15-15)

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ソニー、1,159 億円最終黒字に転換 4 - 9 月 画像センサー事業など好調

ソニーが 29 日発表した 2015 年 4 - 9 月期の連結決算(米国会計基準)は、最終損益が 1,159 億円の黒字(前年同期は 1,091 億円の赤字)となった。 画像センサーやゲーム、音楽事業が好調だったうえ、不振の携帯電話事業の赤字幅が縮小した。 市場予想の平均値である QUICK コンセンサス(27 日時点)の 1,105 億円の最終黒字を上回った。 売上高は微減の 3 兆 7,007 億円、営業損益は 1,849 億円の黒字(前年同期は 157 億円の赤字)だった。 16 年 3 月期通期の業績見通しは従来予想を据え置いた。 年間配当については未定としている。 (nikkei = 10-29-15)

前 報 (6-12-15)


東大目指す人工知能・東ロボくん、偏差値 57.8 に上昇

東京大学の合格を目指す人工知能「東(とう)ロボくん」が今年受験した大学入試センター試験模試の結果が 14 日、発表された。 合計点の偏差値は 57.8 と、昨年の 47.3 を上回り、3 年目で初めて全国平均を上回った。 東大の合格レベルはまだ遠いが、全大学の 6 割にあたる 474 大学の 1,094 学部で合格の可能性が 80% 以上と診断される「優等生」に成長した。

東ロボくんは、国立情報学研究所などによるプロジェクト。 コンピューターが解読できる形に人が書き直した問題文を解析、辞書や教科書、ウェブ上にあった情報などを元に解答する。 昨年の代々木ゼミナールに代わり、今年はベネッセコーポレーションの「進研模試 総合学力マーク模試・6 月」を受験した。 英語や数学、物理など 5 教科 8 科目の合計得点は 511 点で、平均の 416.4 点を大きく上回った。 偏差値は合計が 57.8 で、世界史の 66.5 が最高。 数学 IA、数学 IIB は 60 以上の好成績だったが、国語、英語、物理は 50 以下だった。

2 次試験を想定した論述式の駿台予備学校「東大入試実戦模試」も受験。 地理歴史(世界史)は初挑戦で偏差値 54.1 の成績を収めた。 昨年は文系科目が得意だったが、今回は数学の成績も伸びた。 今回は、苦手だった数学の数列や統計の問題を解く仕組みを新たに開発。 世界史が得意な人にならい、出来事と関連する人物の組み合わせで選択肢の正誤を判定するなどして成績アップにつなげた。

ただ、斜面を転がった球が別の球にぶつかるといった、現象が連なる物理の問題は答えを出せなかった。 論述も「知識を詰め込んだだけの受験生が書く答案(渡辺幹雄・駿台予備学校講師)」と厳しい評価だった。 プロジェクトは人工知能の限界や人に取って代わる仕事を見極めるのが目的で、2021 年までの東大合格が目標。 プロジェクトリーダーの新井紀子・国立情報学研究所教授は「人工知能はルールが変わらないものが得意。 取って代わる分野はますます広がるだろう。」と話した。 (山崎啓介、asahi = 11-14-15)


ウラン濃縮 : 日本の技術流出 04 年 IAEA 韓国で初確認

国際原子力機関 (IAEA) が 2004 年夏に韓国の極秘ウラン濃縮実験施設を査察した際、日本が開発した濃縮技術の特許に関する資料を押収していたことが毎日新聞の取材で分かった。 IAEA で核査察部門の責任者を務めていたオリ・ハイノネン元事務次長が明らかにした。 査察では、この特許に基づいた機器も見つかった。 欧米主要国では、核兵器開発につながる技術は情報公開を限定する措置が取られているが、日本では、特許出願で詳細な技術情報が公開される。 特許制度の不備により、軍事転用可能な核技術が他国で利用されていることが初めて明らかになった。

ハイノネン元次長によると、日本の濃縮技術情報は、IAEA が韓国中部の大田にある「韓国原子力研究所」を査察した際に見つけた。 日本の電力各社が中心となり 1987 年に設立した「レーザー濃縮技術研究組合」が開発したレーザー濃縮法と呼ばれる技術の特許に関する資料だった。 また、査察ではこの特許の核心となる機器の実物も確認したという。 ウランなど核物質を使う実験を行うには、事前に IAEA に届け出る必要があるが、韓国はこれを怠り、04 年 8 月に自主的に申告。 IAEA の査察で極秘実験が裏付けられた。

IAEA によると、韓国は 00 年 1 - 3 月に少なくとも 3 回、極秘のレーザー濃縮実験を実施し 0.2 グラムの濃縮ウランを製造した。 濃縮度は最高 77% に達した。 ただ、ウラン(広島)型核兵器の製造には濃縮度が 90% 以上のウラン 25 キロが必要で、実験は小規模な実験室レベルにとどまった。 しかし、IAEA は「量は多くないが深刻な懸念がある」と指摘した。 レーザー濃縮技術研究組合は、93 年から 02 年までレーザー濃縮法など計 187 件の特許を出願し、技術情報が公開された。 韓国は、こうした日本の核技術情報などを入手し、極秘実験していた可能性がある。

核技術を巡っては、01 年に大手精密測定機器メーカー「ミツトヨ」が三次元測定機と呼ばれる機器をリビアの核兵器開発用として不正輸出した例があるが、今回のように核技術情報の利用が判明したのは初めて。 韓国への特許情報流出は日本の国内法上問題はないが、荒井寿光・元特許庁長官は「軍事技術にも転用できる技術を公開している実態は危険だ。 なんらかの新たな対応を考えるべきだ。」と話している。 (会川晴之、mainichi = 11-4-15)

レーザー濃縮法

天然ウランにレーザーを照射することで、核分裂反応を起こしやすいウラン 235 だけを集める濃縮法。米仏などのほか、日本でも原子力発電所の核燃料製造のため 1980 年代後半から技術開発が本格化した。 高濃縮ウラン製造に向くため、軍事にも利用できる。 低コスト化が難しく、いずれの国でも商業化には至らず、遠心分離法が主力になっている。

すべての情報が公開される … 日本の特許の実態

日本が独自に開発したウラン濃縮技術の情報が、韓国の原子力研究機関で見つかったのは、原子力の平和利用を目指す日本が、核技術の海外流出に注意を払ってこなかったことに一因がある。 こうした利用例は、韓国以外にも存在する可能性がある。 濃縮などの核技術は、平和、軍事両面で利用が可能なため、主要国は機微技術を秘匿する「秘密特許」制度などで情報公開を限定する措置をとっている。 日本にも「秘密特許」はあったが 1948 年に廃止され、特許を出願した技術情報は、すべての人が知りうる「公知の技術」として公開されている。 世界のどこからでもインターネットで検索できる。

60 年代から本格化した日本の濃縮技術開発は、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)など国の機関が深く関与、核技術の国外流出を防ぐ手立てを講じてきた。 具体的には、特許の出願は認めるものの、情報を非公開にする「放棄」という特殊な手続きを取ることで、事実上の「秘密特許」扱いにしていた。

だが 80 年代半ば以後から民間主導の技術開発が本格化した。 動燃のような厳しい情報管理態勢を敷かなかったため特許出願が相次いだ。 「放棄」を利用する制度は有名無実化し、98 年の特許法改正で廃止された。 現在は、特許取得をせずその技術に関する権利をあきらめるか、さもなければすべての情報が海外にも公開される実態がある。 核拡散を防ぐ手立てを講じることが、唯一の被爆国の責任でもあろう。