セブン銀と伊藤忠、資本業務提携の協議開始 コンビニ ATM が念頭か

セブン銀行と伊藤忠商事は 18 日、資本業務提携に向けた協議を始めると発表した。 「幅広い金融分野での協業」を検討の対象にするとしており、コンビニの ATM での連携が念頭にあるとみられる。 伊藤忠がセブン銀に出資する方向で、出資比率などは今後詰める。 セブン銀は、セブン-イレブンや商業施設など全国に 2 万 8 千台以上の ATM を持つ。 一方、伊藤忠はコンビニ大手のファミリーマートを子会社に抱え、イーネットやゆうちょ銀行の ATM を置く。

セブン銀は、本人確認書類の読み取りや顔認証機能などを備えた新型 ATM を持つ。 こうしたノウハウをファミマの店内 ATM に活用することが念頭にあるとみられる。 セブン銀にとっては事業拡大、ファミマからみると来店者の利便性向上が図れる。 セブン銀は 6 月、自社株買いを行い、セブン & アイ・ホールディングス (HD) の連結子会社から持ち分法適用会社に変わった。 HD がコンビニ専業へ経営戦略を変え、セブン銀を連結子会社から外す方針を示したことを受けた動きだった。 (asahi = 8-18-25)


セブン、新中計 国内コンビニ 1 千店増 30 年度までに 出店加速へ

セブン & アイ・ホールディングスは 6 日、2030 年度までの中期経営計画を発表した。 国内コンビニを 1 千店舗増やすなど、コンビニ事業に特化した企業として成長を目指す。 また、ホールディングス機能をスリム化させ、スピードと実行力を強化する方針だ。 セブンは、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていた。 クシュタールは今年 7 月に撤回したものの、買収リスクが顕在化。 セブンは単独での経営を続けるためにも、企業価値を上げる戦略が求められていた。

セブンは今回、売上高にあたる営業収益を 24 年度の 10 兆円から、30 年度に約 11 兆 3 千億円に引き上げる目標を掲げた。 成長投資枠として示している約 3.2 兆円の多くをコンビニ事業にあてる。 現在、国内コンビニの店舗数は約 2 万 1,800 店舗。 30 年度までに増やす約 1 千店舗は、過去 6 年間で増やした店舗数の 1.4 倍超にあたる。 国内コンビニ市場は飽和状態ともいわれるが、出店スピードを上げる。

さらに、店舗の稼ぐ力を高めるため、食分野で差別化を進める。 既存店には 3 千億円を投資。 店内で焼き上げるパンや、入れたての紅茶「セブンカフェティー」を全国に導入し、既存の 5 千店舗以上に食の分野を強化するための投資をしていくという。 また、米国のコンビニ事業では、新たな店舗形態とする大型店を 1,300 店舗、レストランを併設する店舗も 1,100 店舗増やす計画だ。 ガソリン販売でも店頭販売以外に事業の垂直統合を進めて、収益性を高める。

事業運営体制も変える。 スティーブン・デイカス社長は、これまでのセブンの体制について「真のグローバルカンパニーになれていなかった」と振り返り、グローバルに知見を共有しながら経営していく方針を示した。 スーパーや金融など多角化された事業を前提としていたホールディングスの機能はコンビニに特化。 管理の役割を明確にし、スピードや実行力を上げていく。 ホールディングスの販売管理費は、現在の約 810 億円から半減させるという。 グローバルなテクノロジー戦略を担う組織も新設する。

クシュタールによる買収提案の撤回を巡っては、クシュタールがセブンとの「建設的な協議の欠如」を理由にあげていた。 デイカス社長は、この日の会見で「誠意を持って対応してきた」と改めて反論した。 撤回の理由については、米国の競争法当局の規制をクリアすることが難しく、クシュタールの業績も停滞していたとして「いろんなプレッシャーがかかっていたのではないか」と述べた。 (井東礁、asahi = 8-6-25)


セブンへの買収提案、クシュタールが撤回 「建設的な協議欠如」理由

カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールは 17 日(現地時間 16 日)、セブン & アイ・ホールディングスへの買収提案を撤回すると発表した。 7 兆円規模の提案で、外資による企業買収として過去最大になる可能性があったが、提案から 1 年で協議は終わることになった。

セブンの「敵対的買収は計画にない」 クシュタールの会長語る

クシュタールが同日、撤回を伝える書簡をセブンの取締役会に送った。 撤回理由について、セブンとの「建設的な協議の欠如」とした。 クシュタールが買収提案をしたのは昨年 7 月。 その後、買収額を 7 兆円規模に引き上げ、今年 4 月には、セブンと具体的な買収交渉に向け秘密保持契約を結んだ。 ただ、セブンの経営陣は買収には難色を示し、単独経営を目指すとしていた。 クシュタールは今回の書簡で、セブン側が「意図的に混乱および遅延をもたらすような動き」をしたと主張した。 デューデリジェンス(資産査定)の際にも、限られた情報しか出さなかったなどとし、「全く真摯な協議がなされない状況が続いている。」

セブン「想定され得たものと受け止め」

セブンは同日、クシュタールの主張は「数多くの誤った記述について賛同しかねる」としつつ、「(撤回は)想定され得たものとして受け止めている」とコメントを発表。 改めて、「単独での価値創造の施策を今後も継続して遂行していく」とした。 クシュタールは、北米を中心に29の国・地域でコンビニなどを展開する企業で、合併・買収 (M &A)を繰り返して拡大してきた。 今回の撤回を踏まえて、クシュタールはセブンに対して「敵対的買収」はしない方針だという。 (ニューヨーク・杉山歩、asahi = 7-17-25)


セブン、店舗売却で純利益 2 倍に 買収交渉は「最終局面でない」

セブン & アイ・ホールディングスが 10 日発表した 2025 年 3 - 5 月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が前年同期の約 2.3 倍 となる 490 億円だった。 主力の国内コンビニ事業はふるわなかったが、海外事業では収益性が改善。 イトーヨーカ堂の店舗資産売却も大きく貢献した。 売上高にあたる営業収益は前年同期比 1.6% 増の 2 兆 7,773 億円、本業のもうけを示す営業利益は同 9.7% 増の 650 億円だった。

主力のコンビニ事業では、海外で利益を増やした。 海外コンビニ事業の営業利益は同 94.2% 増の 86 億円。 飲食料品などオリジナル商品の拡大で粗利率を改善したほか、人件費などのコスト削減も進んだ。 一方、国内コンビニ事業の営業利益は同 11.0% 減の 545 億円。 客足が伸び悩んだうえ、原材料費の高騰や人件費、家賃の上昇が響いた。 また、スーパー事業では、昨年までにイトーヨーカ堂の不採算店を閉店したことなどで、営業利益は前年同月の 3.9 倍となる 84 億円となった。

セブンはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けている。 丸山好道・最高財務責任者は会見で「(秘密保持契約)の進捗によって、どのような提案や条件が提示されるか待っている状況。 交渉は最終的な局面には至っていない。」と話した。 また、8 月に今後の事業戦略を発表する予定であると明らかにした。 (井東礁、asahi = 7-10-25)


セブン、創業家の伊藤副社長が会長へ セブン-イレブンは社長交代

セブン & アイ・ホールディングスは 17 日、創業家出身の伊藤順朗副社長 (66) が会長に就く人事を発表した。 5 月 27 日付。 会長就任後も代表権は持ち続ける。 伊藤氏はイトーヨーカ堂創業者の故・伊藤雅俊氏の次男。 昨年、セブンがカナダのコンビニ大手から買収提案を受けた際に、創業家としてセブン株を買い取って非公開化する案を主導した。 セブンが単独で経営を続けても、買収提案を上回るような企業価値にならないと判断しての対抗策だった。

だが、必要な資金が集められずに断念した。 この経緯もあり、セブン社内には伊藤氏が経営陣に残ることに否定的な見方もあったが、引き続き、経営のかじ取りの一角を担う。 また同社は 17 日、子会社で国内のコンビニ事業を担うセブン-イレブン・ジャパンの社長に、阿久津知洋執行役員 (54) が就く人事を発表した。 永松文彦社長 (68) は会長となる。 社長交代は 6 年ぶり。 (井東礁、asahi = 4-17-25)

◇ ◇ ◇

セブン純利益 23% 減 2 月期決算 コンビニ国内外不振 関税、北米事業に暗雲

セブン & アイ・ホールディングスが 9 日発表した 2025 年 2 月期決算は主力のコンビニ事業が国内外で振るわず、減益となった。 この日、第 2 段階が発動したトランプ関税も、成長に期待をかける北米事業に影を落とす。 外資から買収提案を受ける中で難しい経営のかじ取りを迫られている。 この日発表した決算では、最終的なもうけを示す純利益は前年比 23.0% 減の 1,730 億円に落ち込んだ。 本業のもうけを示す営業利益も同 21.2% 減の 4,209 億円。 売上高にあたる営業収益は同 4.4% 増の 11 兆 9,727 億円だった。

業績の足を引っ張ったのが、主力のコンビニ事業だ。 営業利益でみると、国内コンビニ事業は同 6.8% 減の 2,335 億円。 物価高で消費者の節約志向が高まる中、低価格商品を増やすなど取り組んだが、高騰する原材料費を補えなかった。 海外コンビニ事業でも、物価高による消費の低迷が打撃となり、同 28.3% 減の 2,162 億円と大きく落ち込んだ。 また、不採算店の整理などで特別損失もかさんだ。 イトーヨーカ堂のネットスーパー事業からの撤退や、米国で不採算コンビニ 444 店舗を閉店する費用などで計 2,209 億円を計上した。

26 年 2 月期の業績予想は、純利益が同 47.3% 増の 2,550 億円とした。 多額の特別損失を計上して不採算事業を整理する「集大成の年」から一転、大幅増益を見込む。 国内外のコンビニ事業も営業利益は回復する見通しで、ともに増益を見込む。 ただ、同日、第 2 段階が発動されたトランプ関税により、成長が期待される北米事業には暗雲が立ちこめている。 25 年の米国の既存店について、売り上げの伸び率の目標を下方修正した。 今年 1 月時点のプラス 1.5% から、マイナス 1.5% に変えた。 粗利率も 0.4 ポイント引き下げるなど、消費マインドが悪化するリスクを織り込んだという。

社外取締役で次期社長のスティーブン・デイカス氏は会見で、「間違いなく経済や消費行動にとってマイナスになるだろう」と事業環境の厳しさを強調。 コスト削減を行うとともに、店舗への投資など「イノベーションを速やかに実行していく必要がある」と語った。

3.2 兆円、成長投資へ 30 年度までに

セブンはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから 7 兆円規模での買収提案を受けている。 ただ、現在の株価はクシュタールの買収提案額を下回る。 仮に単独経営を維持する場合、企業価値の向上策が欠かせない状況だ。 この日、新しい企業価値の向上策として、30 年度までに最大 3.2 兆円を成長に向けて投資することを発表。 会見でデイカス氏は、具体的な内容は明言を避けたが、日米のコンビニの店内調理を拡大する方向性を示した。さらに、M & A (企業合併・買収)も視野に入れているという。

投資の原資として、米国のセブン-イレブンを運営する子会社の上場に伴う株式の売却益をあてるとした。 米子会社は 26 年下半期までに上場させる方針だ。 株価の上昇にむけては、25 年度中に 6 千億円を上限に自社株買いを実施する。 30 年度までに予定する計約 2 兆円の自社株買いの一環という。 買収提案について、受け入れるか否か、セブンは態度を明らかにしていない。 これまで、5 月の株主総会までに方向性を出すと示唆していた。 しかし、この日の会見では「判断の前提が不透明(丸山好道・最高財務責任者)」として現時点での表明は困難との見通しを示した。 (井東礁、岩沢志気、asahi = 4-10-25)