セブン、創業家の伊藤副社長が会長へ セブン-イレブンは社長交代 セブン & アイ・ホールディングスは 17 日、創業家出身の伊藤順朗副社長 (66) が会長に就く人事を発表した。 5 月 27 日付。 会長就任後も代表権は持ち続ける。 伊藤氏はイトーヨーカ堂創業者の故・伊藤雅俊氏の次男。 昨年、セブンがカナダのコンビニ大手から買収提案を受けた際に、創業家としてセブン株を買い取って非公開化する案を主導した。 セブンが単独で経営を続けても、買収提案を上回るような企業価値にならないと判断しての対抗策だった。 だが、必要な資金が集められずに断念した。 この経緯もあり、セブン社内には伊藤氏が経営陣に残ることに否定的な見方もあったが、引き続き、経営のかじ取りの一角を担う。 また同社は 17 日、子会社で国内のコンビニ事業を担うセブン-イレブン・ジャパンの社長に、阿久津知洋執行役員 (54) が就く人事を発表した。 永松文彦社長 (68) は会長となる。 社長交代は 6 年ぶり。 (井東礁、asahi = 4-17-25) ◇ ◇ ◇ セブン純利益 23% 減 2 月期決算 コンビニ国内外不振 関税、北米事業に暗雲 セブン & アイ・ホールディングスが 9 日発表した 2025 年 2 月期決算は主力のコンビニ事業が国内外で振るわず、減益となった。 この日、第 2 段階が発動したトランプ関税も、成長に期待をかける北米事業に影を落とす。 外資から買収提案を受ける中で難しい経営のかじ取りを迫られている。 この日発表した決算では、最終的なもうけを示す純利益は前年比 23.0% 減の 1,730 億円に落ち込んだ。 本業のもうけを示す営業利益も同 21.2% 減の 4,209 億円。 売上高にあたる営業収益は同 4.4% 増の 11 兆 9,727 億円だった。 業績の足を引っ張ったのが、主力のコンビニ事業だ。 営業利益でみると、国内コンビニ事業は同 6.8% 減の 2,335 億円。 物価高で消費者の節約志向が高まる中、低価格商品を増やすなど取り組んだが、高騰する原材料費を補えなかった。 海外コンビニ事業でも、物価高による消費の低迷が打撃となり、同 28.3% 減の 2,162 億円と大きく落ち込んだ。 また、不採算店の整理などで特別損失もかさんだ。 イトーヨーカ堂のネットスーパー事業からの撤退や、米国で不採算コンビニ 444 店舗を閉店する費用などで計 2,209 億円を計上した。 26 年 2 月期の業績予想は、純利益が同 47.3% 増の 2,550 億円とした。 多額の特別損失を計上して不採算事業を整理する「集大成の年」から一転、大幅増益を見込む。 国内外のコンビニ事業も営業利益は回復する見通しで、ともに増益を見込む。 ただ、同日、第 2 段階が発動されたトランプ関税により、成長が期待される北米事業には暗雲が立ちこめている。 25 年の米国の既存店について、売り上げの伸び率の目標を下方修正した。 今年 1 月時点のプラス 1.5% から、マイナス 1.5% に変えた。 粗利率も 0.4 ポイント引き下げるなど、消費マインドが悪化するリスクを織り込んだという。 社外取締役で次期社長のスティーブン・デイカス氏は会見で、「間違いなく経済や消費行動にとってマイナスになるだろう」と事業環境の厳しさを強調。 コスト削減を行うとともに、店舗への投資など「イノベーションを速やかに実行していく必要がある」と語った。 ■ 3.2 兆円、成長投資へ 30 年度までに セブンはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから 7 兆円規模での買収提案を受けている。 ただ、現在の株価はクシュタールの買収提案額を下回る。 仮に単独経営を維持する場合、企業価値の向上策が欠かせない状況だ。 この日、新しい企業価値の向上策として、30 年度までに最大 3.2 兆円を成長に向けて投資することを発表。 会見でデイカス氏は、具体的な内容は明言を避けたが、日米のコンビニの店内調理を拡大する方向性を示した。さらに、M & A (企業合併・買収)も視野に入れているという。 投資の原資として、米国のセブン-イレブンを運営する子会社の上場に伴う株式の売却益をあてるとした。 米子会社は 26 年下半期までに上場させる方針だ。 株価の上昇にむけては、25 年度中に 6 千億円を上限に自社株買いを実施する。 30 年度までに予定する計約 2 兆円の自社株買いの一環という。 買収提案について、受け入れるか否か、セブンは態度を明らかにしていない。 これまで、5 月の株主総会までに方向性を出すと示唆していた。 しかし、この日の会見では「判断の前提が不透明(丸山好道・最高財務責任者)」として現時点での表明は困難との見通しを示した。 (井東礁、岩沢志気、asahi = 4-10-25) セブンの社長交代劇、議論は 1 年以上前から 新社長めぐる思惑とは? セブン & アイ・ホールディングスは 6 日午後、井阪隆一社長 (67) が退任し、後任に社外取締役で過去に西友の最高経営責任者 (CEO) を務めたスティーブン・デイカス氏 (64) が就く人事を発表する。 カナダのコンビニ大手から買収提案を受けている最中の交代劇。その裏側に迫った。
デイカス氏への社長交代について、あるセブン幹部はそう証言した。 プロ経営者の名前も挙がった 井阪氏が社長に就いたのは 2016 年 5 月。 在任期間が 10 年近くとなり、後継探しが始まっていたという。 セブン経営陣の人事は、社内の「指名委員会」で議論することになっている。 メンバーは井阪氏と丸山好道・最高財務責任者、社外取締 4 人の計 6 人だ。 新社長の候補としては生え抜きの幹部のほか、社外の日本人や外国人の「プロ経営者」の名前も挙がった。 当初は、井阪氏が就任 10 年を迎える 26 年 5 月での社長交代が検討されていたという。 しかし、それを前倒しせざるを得ない事態が起きた。 昨夏、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたことだ。 買収提案には、両社が展開する米国のコンビニ事業のシェアが高くなるため、競争当局の認可が下りるかという懸念があった。 セブン経営陣は、国内コンビニ事業への好影響も期待できないとみて、自社単独で経営を続けたいという意向が強くなっていた。 だが、クシュタールの買収提案額は総額 7 兆円規模にのぼり、実際の株価を上回る。 株主には買収された方がメリットが大きいとうつる可能性がある。 セブンが単独経営路線を株主や市場に認めてもらうには、独力でも企業価値を高められると示す必要があった。 そこで昨秋、業績不振が続くスーパー「イトーヨーカ堂」などを経営分離し、伸びしろがあるコンビニ事業に集中する改革案を発表したが、株価は上がらなかった。 そんななか、クシュタールへの対抗策として、セブン創業家が自社買収をして株式を非上場化する検討を始めた。 だが結局、巨額の資金を集められず、2 月末までに断念した。 追い詰められたセブンは、経営の刷新感を出すためにも、早期の社長交代に踏み切らざるをえなくなった。 新社長の候補者が多くいたなかで、なぜデイカス氏が選ばれたのか。 その主な理由は、国内では人口減などで市場拡大が見込めない中、成長エンジンに位置づける米国を初めとした海外事業に力を入れる必要があり、それにふさわしい人材と判断されたためだ。 デイカス氏は、ユニクロを展開するファーストリテイリングや米小売り大手ウォルマートなどを経て、11 - 15 年に西友の CEO を務めた。 特売に頼らず毎日低価格で商品を提供する「EDLP」戦略を強化して、業績を回復させた実績がある。 また、デイカス氏の親族が米国でセブンのオーナーをしており、「店舗のオペレーションもかなりわかっている。(セブン幹部)」 一方で、日本語も堪能とされる。 セブンの海外事業の中でも、主戦場となるのが米国市場だ。 だが米国子会社はガバナンス上の問題を抱え、親会社のセブンの意向を無視することもあったという。 幹部の一人は「(元会長の)鈴木(敏文)さんも井阪さんも、米国には手をつけられなかった」と話す。 米国の小売りに詳しく、英語を母語とするデイカス氏なら、米国子会社を立て直せるのではないか - -。 指名委員会の中では、そんな期待があったという。 セブン幹部は「(対外的に示す)成長のストーリーとしては描きやすい」と語る。 クシュタールとのタフな交渉にも力を発揮できるのでは、という思惑もあったようだ。 社外取締役としての仕事ぶりについても「本当にこの人は信用できる(別のセブン幹部)」との声がある。 井阪氏は納得? セブンは 24 年 7 月にデイカス氏ら社外取締役による対話を行い、その内容をホームページで公表している。 そこでは指名委員会の委員長も務める社外取締役の山田メユミ氏が、デイカス氏を次のように高く評価している。
最終的には、井阪氏が後任にデイカス氏を推したという。 ただ、井阪氏にとっては、当初は社長をもう 1 年続ける予定だったはずだ。 あるセブン幹部に「井阪さんは納得しているのでしょうか?」と尋ねると、笑いながらこんな答えが返ってきた。
6 日夕方にはセブンが記者会見を開き、デイカス氏とともに井阪氏も登壇する予定だ。 2 人の口からどんな言葉が語られるのか、セブンのこれからを見通す上でも大事な会見となる。 (岩沢志気、井東礁、asahi = 3-6-25) 「食」も雰囲気も … 米国のセブン、日本と全然違う ノウハウ導入急ぐ 米テキサス州ダラス。 郊外にあるコンビニ「セブン-イレブン」を昨年 12 月に訪れると、オレンジと緑の看板は日本と同じだが、店内に入ると開放的な空間が広がった。 面積は約 430 平方メートルと、日本の標準的な店の 2 倍以上。 天井の高さは 5 メートルを超える。 ここは昨秋に開店したばかりの「新標準店舗」と呼ばれる最新型の店。 品ぞろえは日本の店と近いが、特に食の分野を充実させた。 店の一角にはグループで運営するタコスのチェーン店が入り、できたてを食べられる。 サンドイッチやピザなどが並ぶ冷蔵食品の棚は幅約 3.6 メートルと、従来の店より約3割広げた。 商品の読み取りから会計まで、スマホのアプリで済ませられる無人レジもある。 こうした店を 2027 年までに北米で 500 店出す計画だ。
セブン & アイ・ホールディングス(セブン)の米国子会社セブン-イレブン・インクのダグ・ローゼンクランズ最高執行責任者 (COO) はそう語り、食に強みを持つ日本のセブンからノウハウを取り込んでいると強調。 従来型の店舗を含めて、いれたてのコーヒーなどを提供する飲料サーバーや、店内で焼き上げるベーカリーの導入なども進めているとした。 食を充実させる取り組みの中でも、特に注力するのが、サンドイッチや弁当など鮮度が求められる食品の充実だ。 そうしたオリジナル商品は他のコンビニとの差別化につながり、利幅も大きい。 17 年には、日本でセブン向けの弁当などを開発する「わらべや日洋ホールディングス」が北米に進出。 テキサス、バージニア両州の工場から周辺の店に商品を供給している。 年内にはオハイオ州でも工場を稼働させる計画だ。 ローゼンクランズ氏は「セブンから学んだことをさらに前進させたい」と話す。 セブン-イレブンは米国で発祥した。 1927 年にダラスで創業した氷販売店が源流で、46 年に今の店名に。 74 年、イトーヨーカ堂が米サウスランド社と提携して日本で 1 号店を開いた。 以来、日本で独自の進化と成長を遂げた。 91 年には経営に行き詰まった「本家」のサウスランド社を、ヨーカ堂側が救済する形で買収。 日本の運営ノウハウを持ち込んで再生した。 近年は日本の市場が人口減などで伸び悩む中、セブンは北米への投資に力を入れる。 06 年から 51 件もの企業合併・買収 (M &A) を繰り返し、現地のセブン-イレブンは約 1 万 3 千店に。 米コンビニ市場でのシェアは首位の約 8% だ。 24 年 2 月期は海外コンビニ事業がセブン全体の売上高の 7 割強にあたる 8.5 兆円、営業利益の 6 割弱にあたる約 3 千億円を稼ぎ、国内コンビニ事業をしのぐ存在となった。 丸山好道・最高財務責任者 (CFO) は先月開いた 24 年 3 - 11 月期決算の会見で「グループの中で最も成長し、利益もあげているのは北米だ」と語った。 セブンは昨夏、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから 7 兆円規模での買収提案を受けた。 買収を防ぐには、独自経営を続けた方が企業価値を高められると株主に示す必要がある。 そこでスーパー事業の不振が続く祖業のヨーカ堂などの株式の過半を売却し、国内外のコンビニ事業への集中を強める方針を昨秋に表明した。 足元では業績悪化、現地では「ただのコンビニ」との声も だが、「成長エンジン」と位置づける北米コンビニ事業も、長引く物価高による消費低迷などを受け、足元では業績が悪化している。 「改善の兆しが見えてきたというが、何が変わったのか」、「不採算店の閉店で利益水準が回復するイメージでよいか。」 先月のセブンの決算会見で、アナリストの関心は不振の北米コンビニ事業に集まった。 前期まで成長を続けてきたが、今期は営業利益が前年同期より 26% 減っている。 セブンはその主な原因として、物価高による消費の停滞をあげる。 特に現地のコンビニの客は中低所得者層が中心で、影響が大きいという。 北米のコンビニの多くはガソリンスタンドを併設し、給油のついでに飲み物やたばこ、スナックなどを買う客が中心だ。 実際、米国ではセブンの売上高の約 7 割をガソリンが占める。 昨年 12 月に米テキサス州ダラスの従来型の店舗を訪れると、客にファミリー層はおらず、トイレなども清潔とは言い難かった。 セブン & アイ幹部は「まだ多くの店では女性が 1 人で安心して買い物できる雰囲気はない」と打ち明ける。 サンドイッチや弁当などは日本のセブンでは 1 日に数回配送されるが、米国では 1 日に 1 回。 ホットコーヒーのサーバーは、まだ旧式のあらかじめ抽出されたものを注ぐタイプで、日本の店舗のいれたてコーヒーとは味にかなり差を感じた。 現地では、セブンに買収提案をしているクシュタールが展開するコンビニ「サークル K」にも入ったが、雰囲気は変わらなかった。 「セブン-イレブン? ただのコンビニね」 近くの地元資本のコンビニに夫と買い物にきていたパットさん (75) にセブンの印象を聞くと、そう返ってきた。 セブンは米コンビニ市場でシェア首位といっても、「食」の分野などで他のコンビニより優れているというイメージはあまりないようだ。 ウーバー運転手のケルビンさんは、日本のセブンを紹介する SNS の動画で、品ぞろえ豊富な麺類やケーキを女性がおいしそうに食べている姿をみて驚いたという。 「米国で売られているものとは全く違う。 日本のセブンが米国にもほしいね。」 セブンはそんな日本の店舗が強みとする「食」のノウハウを、広大な国土の米国にも導入しようと急ぐ。 一方、ライバルも動いている。 特に存在感を高めているのが、テキサス州発祥の「バッキーズ」だ。 業界団体からコンビニに分類されているが、州内の店舗を訪れると、その巨大さに圧倒された。 店を L 字形に囲むガソリンスタンドでは、約 100 台の車が同時に給油できる。 店内に入ると、反対側の出口が見えないほど広い。 明るく清潔で、飲み物や食品から、衣料品や生活雑貨まで並ぶ。 店の中央ではウェスタンハットをかぶった店員が、かけ声をあげながらできたてのハンバーガーを提供しており、活気がある。 買い物に来ていたアシュリー・レコードさん (31) は「ここは新鮮な食べ物からギフトまで何でもそろう。 トイレもとてもきれいだから、みんな大好きなの。」と話した。 バッキーズは 1982 年の創業で、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると現在は米南部を中心に 9 州で 50 店舗を展開する。 そんな新興勢力も支持を集める中、米国のセブンが成長を続けるには、いかに「給油所」のイメージから脱して、食を強みに客層を広げていけるかがカギを握りそうだ。 ただ、セブン & アイのある幹部はこうもらす。 「米国人のコンビニへの先入観を覆すのは大変だ。 時間はかかる。」 (ダラス・井東礁、asahi = 2-23-25) セブンが MBO 検討、創業家と伊藤忠が出資し総額 9 兆円 - 関係者 セブン & アイ・ホールディングスが MBO (経営陣が参加する買収)による非公開化を検討していることが分かった。 創業家である伊藤家に加えて伊藤忠商事などが出資し、銀行融資と合わせて総額 9 兆円規模で全株式を買い取る。 複数の関係者が 13 日までに明らかにした。 セブン & アイはカナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールから総額 7 兆円に上る買収提案を受けている。 匿名を条件に話した同関係者らによると、MBO はクシュタールが合意がないまま買収に踏み切った場合などへの防衛策として、創業家や伊藤忠、取引銀行などが具体的な協議に入っている。 現在検討されている案では伊藤家と伊藤忠などが 3 兆円程度を出資。 セブンの主力取引銀行である三井住友銀行を筆頭に、三菱 UFJ 銀行、みずほ銀行の 3 メガバンクが総額 6 兆円規模の融資を実行する方向で協議している。 売上高 10 兆円を超える企業の非公開化は前例がなく、実現すれば国内企業の MBO としては過去最大となる。 これまでは大正製薬ホールディングスが今年実施した約 7,100 億円が最高額だった。 国内企業による M & A としても過去最高だった武田薬品工業によるシャイアー買収も上回る。 セブン & アイの広報担当者にコメントを求めたが得られていない。 三井住友銀と三菱 UFJ 銀、みずほ銀の広報担当者は個別の取り引きについてはコメントを控えるとした。 伊藤忠の広報担当者は「決まった事実は何もない」とした。 (布施太郎、鈴木英樹、Bloomberg = 11-13-24) セブン、グループ売上高「30 兆円以上」目指す 買収提案に対抗 セブン & アイ・ホールディングスは 24 日、2030 年度にグループ売上高を現在の約 1.7 倍の 30 兆円以上にする目標を発表した。 海外コンビニ事業を大幅に伸ばす計画で、カナダの企業から受けている買収提案に対抗し、自力で成長していく姿勢を強調した形だ。 グループ売上高は、展開するコンビニ「セブン-イレブン」の加盟店売上高をすべて含めた金額で、24 年 2 月期は約 17 兆 7 千億円。 一方、セブンが決算で発表する売上高(営業収益)は、加盟店については受け取るロイヤルティー(売上高の一部)のみが計上されるため、約 11 兆 4 千億円だった。 今後グループ売上高を大きく伸ばす原動力と見込むのが、すでに全体の 58% を占める海外コンビニ事業だ。 セブン-イレブンは現在、20 カ国・地域に約 8 万 5 千店あり、30 年までに 30 カ国・地域で 10 万店まで増やす計画だ。 井阪隆一社長はこの日の投資家向け説明会で「まだまだ未進出の国、地域がある。 今後も大きなグローバル成長の可能性を秘めている。」と語った。 具体的には、アジア太平洋や欧州、南米、中東、アフリカなどの未進出国について、現地企業の買収も含めて進出を加速させる。 進出済みの国では、日本のセブンが得意とするファストフードや総菜などの食品を強化することなどで、1 店舗当たりの売り上げの増加も図る。 井阪氏は「戦略的な投融資の機会は複数の可能性を検討している」と述べ、ライセンスを付与している海外企業との資本関係を強化することなどにも意欲を示した。 セブンが高い目標を掲げた背景には、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていることがある。 クシュタールは、現在のセブンの株価から算出する時価総額(約 5.9 兆円)を 2 割弱上回る 7 兆円規模の買収額を示しており、このままでは株主の利益を考えると買収を拒否するのが難しくなる。 セブンは自力でクシュタールの提案以上に企業価値を高められることを示す必要があり、今月 10 日には業績が低迷する総合スーパー「イトーヨーカ堂」などを子会社から外し、成長が見込めるコンビニ事業に集中する方針を発表していた。 セブンの経営戦略の発表を受けて、東京株式市場ではこの日、同社の株価は終値で 2,266 円と前日より 64 円 50 銭 (2.92%) 上昇した。(井東礁、asahi = 10-24-24) セブン、コンビニ集中鮮明 自力の企業価値向上で「買収提案上回る」 セブン & アイ・ホールディングス (HD) は 10 日、傘下のスーパーや外食事業などの株式の過半をファンドなどに売却し、子会社から外す方針を発表した。 これまでの多角化路線を転換し、収益性が高いコンビニ事業に集中して企業価値を高めることで、カナダの企業から受けている買収提案に対抗する狙いだ。 発表によると、業績低迷が続くイトーヨーカ堂などのスーパー事業や、デニーズなどの外食、雑貨のロフトといった、コンビニと金融以外の事業を束ねるための中間持ち株会社「ヨーク HD」を 11 日に設立。 その株式の過半を 2026 年 2 月までに外部に売却し、子会社から外す。 その後、新規上場を目指すという。 セブンはヨーク HD 株の一部を保有し続け、持ち分法適用会社としてグループ内に残す。 食品開発での協働体制をとるためだという。 セブン銀行などの金融事業については、最適な資本関係のあり方を検討するとした。 今後は経営資源を主力のコンビニに集中させ、その方針を明確にするため来年 5 月には社名を「セブン-イレブン コーポレーション」に変更する予定だとした。 井阪隆一社長は記者会見で「グループ構造の最適化をスピードをもって着実にする」と話した。 こうした構造改革を急ぐのは、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから受けている 7 兆円規模での買収提案に対抗するためだ。 買収額は、株価から計算する企業価値が目安になるため、企業価値を高めて株価を上げることで、買収のハードルを高くする狙いだ。 井阪氏は買収提案への評価については明言を避けたうえで、自力での企業価値向上策を進めることで「提案の価値をしっかり上回って、株主の皆さんから評価をいただきたい」と述べた。 コンビニ事業、国内外で不調 セブン & アイは買収提案に対抗して企業価値を高めていくとしたが、足元の業績は芳しくない。 この日発表した 24 年 8 月中間決算は、売上高は前年比 8.8% 増の 6 兆 355 億円と増収だったものの、営業利益は 22.4% 減の 1,869 億円、純利益は 34.9% 減の 522 億円と、大幅に利益を減らした。 なかでも深刻なのが、これから注力していくと宣言したコンビニ事業が国内外ともに不調で、利益を減らしたことだ。 物価上昇が続いて消費者の節約意識が高まったことなどに対応できず、客数が減ったことなどが原因だという。 会見ではコンビニの成長性を疑問視する質問が相次いだが、セブン側は低価格商品の拡充やオリジナル商品の開発といった従来どおりの成長戦略を説明することに終始した。 厳しい消費環境の中で、どう業績を立て直していくのか。 そう問われた井阪氏は「原因は内なるところにもあって、マーケットを見ないで、今までやってきた延長線上でビジネスを展開したということもあったと思う。 自分の頭の中の意識を変えて、ゼロから作り直すつもりでやっていくことが大事だと思う」と語った。 (井東礁、岩沢志気、asahi = 10-10-24) セブン & アイへの買収提案額、約 7 兆円に カナダ企業、2 割引き上げ セブン & アイ・ホールディングス (HD) に買収提案をしていたカナダの企業が、買収額を従来より 2 割引き上げて約 7 兆円とする新たな提案をしたことが分かった。 一方、セブンは業績低迷が続く傘下のイトーヨーカ堂などを売却して企業価値を高め、買収のハードルを上げる方針で、双方の駆け引きが激しくなっている。 関係者への取材によると、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールは 9 月中旬に、セブンの全株式を 1 株 18.19 ドルで買い取る新たな提案をしたという。 7 月の最初の提案時は 1 株 1, 4.86 ドルだった。 いまの為替レート(1 ドル = 約 148 円)で換算すると、買収総額は約 6 兆円から約 7 兆円に膨らむ。 セブンは 9 月上旬、当初の買収提案についてクシュタールに対し、「(セブンの)潜在的な株主価値の短中期的な実現について、著しく過小評価している」と拒否する書簡を送っていた。 ただ、提案内容を見直せば「真摯に協議をする用意がある」ともしていた。 それを受けてクシュタールは買収額の引き上げを伝えたものとみられる。 セブンは 9 日、クシュタールから「法的拘束力のない非公開の再提案を受領したことは事実」とのコメントを出した。 一方、セブンは 10 日の中間決算会見で、ヨーカ堂などの株式の売却方針を井阪隆一社長が説明するとみられる。 買収額は株価をもとにした企業価値が目安になるため、収益性が高いコンビニ事業に注力することで株価を高め、買収提案に対抗するねらいだ。 セブンはクシュタールに対し、両社がコンビニ事業を展開する米国でのシェアが約 13% に高まることを念頭に、競争法上の課題があることも懸念材料だと伝えている。 ヨーカ堂売却、セブンの焦り 「(井阪社長が会見する)中間決算の発表までに、何も(企業価値向上策を)出さないわけにはいかない。」 セブン & アイのある幹部は 9 月下旬、焦りの色を見せていた。 その 1 カ月ほど前、クシュタールが買収を提案したことが明らかになると、セブン株がいずれ高値で売れると見込んで買い手が増加。 株価は大幅に上昇し、当初クシュタールが提案した買い取り額を超えた。 ところが 9 月半ば、クシュタールが買い取り額を 2 割ほど引き上げたことで、再び株価を上回る水準になった。 そのままでは、株主の利益を考えると、買収を拒否するのが難しくなりかねない。 対抗するには、具体的な成長戦略を示し、自ら企業価値を高め、株価を上げていけることを示す必要があった。 そこで急きょ浮上したのが、4 年連続赤字のイトーヨーカ堂などスーパー事業の早期売却だった。 もともと構造改革の一環で、スーパー事業は 2027 年度以降に上場し、株式の半分以上を売って子会社から外すことを検討すると 4 月に発表していた。 その改革のスピードを上げるため、より早く手続きが進められる売却へ方針転換することにしたのだ。 複数の関係者によると、こうした転換は、決算発表直前になって決まった。 すでに売却先の候補となる投資ファンドに接触しているという。 あるセブン関係者はこう言う。 「(クシュタールの当初の買収額を)『過小評価』だと主張したのに、7 兆円の提案がきてしまった。それに対抗するには、改革を急ぐ姿勢を示すしかなかったのだろう。」(井東礁、岩沢志気) 「i」は残るか、社名変更を検討 セブン & アイ・ホールディングス (HD) が社名の変更を検討していることが 9 日わかった。 祖業のイトーヨーカ堂のアルファベットの頭文字を示すとみられることが多い「アイ」を外すことも検討する。 ヨーカ堂などのスーパー事業を売却してコンビニ事業に集中する方針にあわせたものとみられる。 関係者によると、社名の変更は 10 日の中間決算会見で説明される見通し。 新たな名称はまだ決まっていないという。 セブン & アイ HD は、「新・総合生活産業」を目指して 2005 年に設立された。 同社によると、社名のセブンは「七つの主要な事業領域」、アイは「イノベーションの頭文字と『愛』」を表している。 アイはヨーカ堂の頭文字を示すとの説明はしていないという。 (asahi = 10-9-24)
コンビニ 3 社と結びつく総合商社 セブン買収提案で注目されるのは … 大手コンビニ 3 社はそれぞれ、総合商社とつながりが深い。 商社にとっては、消費者に身近なコンビニ事業に関わる利点は大きいからだ。 そんななか、カナダの企業がセブン & アイ・ホールディングス (HD) に買収を提案したことで、セブンに出資する三井物産への注目がにわかに高まっている。 ローソンは三菱商事の子会社だったが、8 月に三菱商事と KDDI が 50% ずつ出資する経営体制に変わった。 33社のトップは 9 月に記者会見を開き、KDDI の通信技術を生かした「未来のコンビニ」の構想を説明した。 三菱商事の中西勝也社長はローソンについて「原料の調達、食品などの製造の流し込みはできたが、解決できていないのが『通信』。 いいパートナーにめぐり合えた。」と述べた。 ビジネスを川に見立てると、原料の調達が「川上」にあたり、商品を生産したうえで、「川下」の小売店が消費者に売る流れになる。 商社は戦後、原料や商品を売買して手数料を得るモデルで成長した。 まさに「川上」を得意としたが、バブル経済の崩壊を経て、「川下」まで商流のすべてにかかわって利益を増やそうと考えるようになった。 そこで目をつけたのが、存在感を高めていたコンビニだった。 三菱商事がローソンに初めて出資したのは 2000 年。 当時ローソンの親会社だった大手スーパー、ダイエーが経営再建の一環で株式を売り出すことになった。 丸紅と日立製作所の連合も買い手に名乗りをあげたが、三菱商事が競り勝ち、約 1,700 億円を出資した。 「当時、三菱商事の純利益は 1 千億円にも満たない規模。 その利益を上回る投資を決断できたのは、ローソンが小売業という枠組みを超えて、社会インフラとしての大きな可能性を秘めていると確信を持ったからだ」と中西社長は語る。 実際、災害時には地域の拠点として頼られるなどコンビニは成長を続け、各社を合わせた国内店舗数は 5 万を超えている。 コンビニへの大型出資で先行したのは伊藤忠商事だ。 1998 年に同社としては当時最大の 1,350 億円を投じて、経営難に陥ったセゾングループからファミリーマート株を取得。 2018 年に買い増して子会社化すると、20 年には保有比率を約 95% まで高めた。 伊藤忠は、ファミマを傘下に持つことで「多様化する消費者のニーズを直接つかみ、商品開発などに生かせている(広報)」とメリットを強調する。 国内のコンビニの先駆け、セブン-イレブンを運営するセブン & アイ HD は独立経営を貫いてきた。 ただ、1970 年代に、米国でセブン-イレブンを運営していた企業と提携して日本で展開を始める際は、伊藤忠が橋渡し役を務めた。 やがて伊藤忠はファミマとのつながりを強めていった一方で、80 年代からセブンと関係を深めたのが三井物産だ。 弁当や総菜などの商品開発にかかわり、物流面なども支える。それでもセブン & アイ株のうち三井物産が保有する比率は 1.85% (2024 年 2 月時点)にとどまり、他の 2 陣営に比べると資本関係は薄い。 商社とコンビニはつながりが強い 三井物産はかねて商社のなかでも資源分野の比重が大きく、16 年 3 月期には世界的な資源安で三菱商事とともに戦後初の赤字に陥った。 その教訓から、近年は「川下」への進出を積極化させており、21 年にはインドネシアの消費者関連事業を手がける企業グループが発行する 1 千億円の転換社債を引き受けた。 セブンとの関係を強固なものにしたいとの思いは常にある。 そして 7 月、セブン & アイがカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから総額約 6 兆円での買収を提案されたことで、三井物産の存在が注目され始めた。 三井物産は、資源高を背景に 23 年 3 月期は 1 兆円超の純利益をたたき出し、業界トップに返り咲いた。 資金力にも余裕があることから、仮にクシュタールが「同意なき買収」を仕掛けてきた場合、セブン側が対抗するために資金面で三井物産を頼るとの臆測が浮上しているのだ。 三井物産社内にも、セブンとの関係を強化する「千載一遇のチャンス(幹部)」との声がある。 ただ、セブンは買収提案をいったん拒否しており、今後の展開は見通せない。 交渉は長期化するとの見方も強い。 三井物産に買収問題に関する見解をたずねると、「報道は承知しているが、当社はコメントする立場にございません(広報)」と回答した。 (宮崎健、asahi = 10-4-24) セブン & アイ「買収提案価格は不十分」 カナダ大手に返答へ セブン & アイ・ホールディングスは 5 日、買収提案を受けていたカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールに対し、「買収提案価格は不十分」などとする書簡を 6 日にも送ることを決めた。 今後はクシュタールからの返答を待ちつつ、提案を受け入れるか引き続き検討する。 複数の関係者によると、書簡では買収額がセブンの企業価値を正しく反映していないことや、競争法上の懸念があることを伝えるという。 クシュタールが提案した買収額は明らかになっていない。 買収に必要な金額について市場関係者の間では、セブンの時価総額(5 日時点で約 5 兆 6 千億円)に約 3 割のプレミアム(上乗せ分)を加えた 7 兆 - 8 兆円規模になるとの見方が強い。 実現すれば、外資による日本企業の買収では過去最大規模となる。 一方、セブンは 2021 年に米コンビニ大手スピードウェイを買収するなどして、現在は米国のコンビニ業界でのシェアは約 8% で 1 位。 クシュタールは 5% 弱で 2 位だ。 クシュタールの狙いは米国事業の拡大とみる向きもあるが、買収が成立すればシェアが高くなり、米国の「反トラスト法(独占禁止法)」に抵触する可能性がある。 セブンは先月 19 日にクシュタールから買収提案を受けたことを明らかにした。 そのうえで、提案内容を検討するために社外取締役のみで構成する特別委員会を設置した。 関係者によると、今月 5 日の取締役会で、特別委から検討状況の報告を受けた上で、書簡を送ることを決めたという。 セブン側は交渉は「長期戦になる(幹部)」とみる。 クシュタールは先月出した声明で「両社の顧客、従業員、フランチャイジー、株主に利益をもたらす」提案だとしたが、具体的な内容は明らかにしていない。 セブン側は、株主をはじめとした利害関係者の利益につながるかといった観点から提案を検討するとしている。 SBI 証券の田中俊・シニアアナリストは「(セブンにとって)日本市場での相乗効果は見込めず、あまりメリットがない」と話す。 (岩沢志気、井東礁、asahi = 9-5-24) ヨーカ堂、関東などで 5 店を閉店へ 閉店予定の 33 店が全て明らかに セブン & アイ・ホールディングス傘下のスーパー「イトーヨーカ堂」が、関東などの 5 店舗を来年 2 月までに閉店することがわかった。 これで同社が構造改革のために閉店するとしていた 33 店舗がすべて明らかになった。 新たに閉店することがわかったのは、竜ケ崎(茨城)、西川口(埼玉)、川崎港町(神奈川)、姉崎(千葉)、尾張旭(愛知)の各店舗。 閉まる日時は店舗ごとに異なる。 これで茨城県内には店舗がなくなる。 ヨーカ堂は経営不振で、2024 年 2 月期まで 4 年連続で最終赤字となっている。 セブン & アイは海外投資ファンドからヨーカ堂の売却を迫られたこともあり、昨年 3 月に国内事業を首都圏に集中させると発表。 26 年 2 月までに国内で 33 店舗を閉鎖して 93 店舗にするとした。 その後、北海道と東北、信越地方からは完全撤退することも明らかにしていた。 セブン & アイをめぐっては今月、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収の提案を受けていることが明らかになった。 セブン & アイがヨーカ堂など経営効率の悪い事業を抱えているために時価総額が低くなっていることが、買収提案をしやすくしたと指摘されている。 (岩沢志気、asahi = 8-28-24) セブン & アイへの買収提案 カナダの大手、米でのコンビニ事業狙いか セブン & アイ・ホールディングスが、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けた。 狙いは米国でのコンビニ事業との見方もある。 ただ、提案の詳しい内容やセブン側の対応は明らかになっておらず、買収の実現性は不透明だ。 クシュタールは日本時間 19 日夜に出した声明で「セブン &&アイに友好的で拘束力のない提案を送付した。」 「両社の顧客、従業員、フランチャイジー、株主に利益をもたらす相互に同意できる取引の締結に注力している。」、として買収を提案したと認めたが、それ以上の内容は明らかにしなかった。 一方、セブンの幹部はクシュタールから 2020 年にも買収提案を受けたと明かす。 当時、セブンは米国のコンビニ事業を拡大していたところで、「米国を中心としたセブン & アイのネットワークに価値があると目されていた」と振り返る。 この幹部は今回の買収も、主な狙いは米国事業ではないかとみる。 両社ともに現地でガソリンスタンドも手がけており、「全くの同業で親和性も高い。 色々とシナジー(相乗効果)が出せると思ったのでは」と話す。 ただ、セブンは 21 年に米コンビニ「スピードウェイ」を買収するなどして、現在は米国のコンビニ業界でのシェアは約 8% で 1 位。 クシュタールは 5% 弱で 2 位だ。 仮に買収が成立するとシェアは 13% 近くに達するため、米金融大手ジェフリーズのコリー・タルロー氏は 19 日付のリポートで「反トラスト法(独占禁止法)は潜在的なリスク」と指摘した。 米当局は近年、企業間の競争が失われることへの警戒を高めており、買収を認めない可能性もある。 クシュタールはカナダや米国、欧州など約 30 の国と地域で、ガソリンスタンドを併設するコンビニを中心に計 1 万 6,700 店以上を展開している。 24 年 4 月期の売上高は約 692 億ドル(約 10 兆円)。 合併・買収 (M &A) を繰り返し、この 20 年で売上高を 15 倍以上に増やした。 米国では 03 年にコンビニ「サークル K」を買収するなどしており、19 日にはガソリンスタンド併設のコンビニなど約 270 店を展開する「ゲットゴー」を買収すると発表した。 欧州でも積極的に買収を進め、スウェーデンやデンマークでガソリンスタンド併設のコンビニを展開するほか、昨年 3 月には仏石油大手トタルエナジーズの給油部門を約 31 億ユーロで買収すると発表した。 21 年には仏スーパー大手カルフールに対して約 162 億ユーロ(約 2.5 兆円)で買収を提案したが、フランス政府側が「食料安全保障」を理由に拒否して実現しなかった。 セブン & アイの売上高は約 11 兆 4 千億円(24 年 2 月期)とクシュタールより約 1 割多い。 だが、株価を反映した時価総額はセブンの約 5 兆 2 千億円に対し、クシュタールは 570 億ドル(約 8 兆 4 千億円)と 1.6 倍に達する。 買収に必要な金額は時価総額が参考になるため、セブンは「割安」だとうつったことが、今回の提案の背景にあった可能性がある。 セブンの時価総額が相対的に低い一因として、主力のコンビニ事業は国内外で堅調なものの、それ以外のスーパーや外食などの事業は伸び悩んでいるケースが少なくないことがある。 相乗効果を生まない事業を多く抱えることで非効率な経営とみなされ、企業価値が低く見積もられる「コングロマリット・ディスカウント」と呼ばれる現象だ。 こうした点はこれまでも、海外投資ファンドなどの「もの言う株主」から指摘され、不採算事業の切り離しを迫られてきた。 それを受けてセブンは昨年 9 月に傘下の百貨店そごう・西武を米投資会社へ売却。 純損益の赤字が 4 年続く総合スーパーのイトーヨーカ堂については、将来的に上場させて連結子会社から外す方針を今年 4 月に発表した。 セブンは今回の買収提案を受け入れるかについて、「慎重かつ速やかに検討」するとのコメントを出した。 ただ、もし外資企業の傘下に入れば、従業員の雇用や取引先など広い範囲で影響が出る可能性がある。 「日本の小売りトップの企業であり、さすがに拒否するのではないか(金融関係者)」との見方も強い。 (井東礁、ニューヨーク・真海喬生、asahi - 8-20-24) セブン & アイ、カナダのコンビニ大手から買収提案 特別委員会で検討 小売り大手セブン & アイ・ホールディングスは 1 9日、カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」から買収の提案を受けていることを明らかにした。 社内に設置した特別委員会で検討した上で、提案を受け入れるかどうか返答するという。 クシュタール社のホームページによると、同社はカナダや欧州など約 30 の国と地域で、コンビニやガソリンスタンドなど計 1 万 6,700 店以上を展開している。 2024 年 4 月期の売上高は約 692 億ドル(約 10 兆円)。 一方、セブン & アイはコンビニ「セブン- イレブン」を国内で 2 万 1 千店以上、世界で計 8 万店以上展開する。 売上高は 24 年 2 月期で 11 兆 4,717 億円だ。 同社の発表によると、買収提案を検討するために設置した特別委は社外取締役のみで構成。 委員長には、取締役会議長のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏が就いた。 特別委は、株主をはじめとした利害関係者の利益を最大化する観点から、買収提案を受け入れるべきか「慎重かつ網羅的に、しかし速やかに検討」するとした。 そのうえで会社として、提案を受け入れるかどうかやクシュタール社と議論を始めるかなどを決めるという。 セブン & アイは、傘下にスーパーのイトーヨーカ堂やベビー用品の赤ちゃん本舗なども抱える総合流通企業だ。 ただ主力のコンビニ以外は伸び悩む事業も少なくなく、近年は構造改革を急いでいた。 傘下にあった百貨店のそごう・西武は 23 年 9 月に米国の投資会社に売却。 不振が続くヨーカ堂に関しても今年 4 月、将来的に株式を上場し、持ち分を減らして連結子会社から外す方針を示していた。 (岩沢志気、asahi = 8-19-24) 7 & i HD、イトーヨーカ堂含むスーパー事業上場や株式売却報道
セブン & アイ・ホールディングス (7 & i HD) が、子会社のイトーヨーカ堂を中核とするスーパー事業について株式上場の方針や売却の検討に入ったとする共同通信や日本経済新聞の報道を受け、10 日の東京市場で同社の株価は乱高下した。 共同通信の 9 日の報道によると、スーパー事業の株式を上場させ、主力のコンビニ事業に経営資源を集中する。 10 日の決算会見で井阪隆一社長が表明する見通しだ。 日経新聞は 2026 年以降に一部売却する検討に入ったと報じ、10 日午後には 7 & i HD がそれを取締役会で決議したとも報道した。 日経によると、同社はスーパー事業全体の成長に向け外部企業との連携を模索。 売却比率などは今後詰めるという。 スーパー事業に関しては、コンビニエンスストア事業と連携しながら抜本的な改革を進める方針を確認した上で、首都圏の食品スーパー事業の 26 年 2 月期の黒字転換など再建が見通せる状況に入った場合、早いタイミングでの新規株式公開の検討に入る方針とした。 4 営業日続伸でこの日の取引を開始した同社の株価はその後下落に転じ、一時前日比 1.9% 安の 2,138 円まで値を下げた。 日経の報道を受けて再び上昇に転じ、一時 2.1% 高まで上昇する場面もあった。 7 & i HD は 10 日午前、「当社がスーパーストア事業の株式を一部売却する検討に入ったとの報道」に関して、報道の内容についての事実はなく、現時点で何も決まったものはないとのコメントを発表していた。 岩井コスモ証券の菅原拓アナリストは電話取材で、詳細は決算会見を待ちたいとした上で「イトーヨーカ堂の店舗削減で株価が上昇していた流れの中で、今回のニュースもプラスなのでは」と語った。 スーパーの食品を生かしたコンビニ経営も掲げており、今後どういった関係に変わっていくのか注目したいとした。 7 i HD が 1 月に発表した 24 年 2 月期のスーパーストア事業の営業利益計画は145 億円と、国内コンビニエンスストア事業の 5,250 億円に比べて大きく見劣りする。 昨年アクティビスト(物言う株主)の米バリューアクト・キャピタル・マネジメントから、イトーヨーカ堂の売却を求められるなど、スーパー事業に対する外圧が強まっていた。 (照喜納明美、Bloomberg = 4-10-24) |