「上田紬」のファッションショー

幸いにも「上田紬」のファッションショーを見せていただく機会がありました。 しかし、あの見慣れた「上田紬」ではなく、京都で後染めされたフォーマルなきもの、振袖と訪問着の 10 点でした。

次第に需要が細くなる中で、どうしても新しいジャンルへの挑戦が必要と考えておられるのでしょう。 大島紬にも '絵羽付け' されたものがありますし、デニムの振袖まで目にするご時世ですから、決して突飛な試みというわけではありません。

古典的な花柄で全面を覆われたものを除き、大半が淡い色使いで、色数も柄数も多くはありませんが、柄はディテールにこだわり、気品を持たせ、バランス良く上品に仕上がっていました。 又、「紬」とは思えないほど光沢が綺麗にでているものもあり、全体として、作者の思いは叶えられたようです。

ただ、素材が「紬」である限り、(勿論、その独特の風合いは個人的には大好きなのですが、)絹織物の大きな特徴の一つである着る人の動きに合わせた優美で流れるような 'ゆらぎ' を、振りや裾などに出すのはなかなか難しいように感じました。 それを克服する為には、仕立てや着付けに今少し細やかな目配りと工夫が求められるのでしょう。 しっかりとメリハリを付けた上で、もっと奥深い 'ゆったり感' が表現できるのではないでしょうか?

振袖をお召しになる若い方は、どうしても原色に近い色の組み合わせと、華やかな柄ゆきに目を奪われてしまわれます。 それでも「京友禅」があって「加賀友禅」があるように、控えめな色と柄、生地の独特な風合いなど、多くの方に興味を持っていただき、成功されることを心から願っています。

(竜、10-15-10)

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