名家の逸品 - 母から娘へ

先日、「名家の逸品 - 母から娘へ」と題するチャリティーイベントへ伺いました。 ホテル内の会場ですから決して大規模な展示会ではないのですが、第一回の昨年から多くの来場者を集めているようです。 とりわけ、きもの姿が目立つ華やかな雰囲気に包まれていました。

和装関係の展示品は限定的でしたが、それでも、満州国皇帝の弟さま、溥傑氏夫人、嵯峨家浩さまの婚儀のご衣裳は唐織紅色うちきと緋のはかま、高松松平家、豊子さまが受け継がれている総刺繍の帯、それに裏千家の容子さまは、母上、三笠宮妃殿下から賜った、刺繍やつづれに、佐賀錦の手法で柄を織りだした豪華な帯などを見ることができました。

嫁ぐ娘のためにリメークされたジュエリー、手書きで詳細に書かれたお正月の献立表、色鉛筆を使ってイラストまで書き添えられたフランス料理のレシピノート、さらにはニューヨーク仕立てのウェディングドレスなどなど、愛情溢れる親の心持ちがしっかりと伝わってきます。

ごく最近発見され展示された、溥傑、浩ご夫妻の海を越えた往復書簡は、やはりこのイベントの話題の中心です。 満州国皇族、政治犯としての収容所生活、ご長女の死、文化大革命中の辱め、幾多の荒波に翻弄されながらも、溥傑氏の書簡は優しくもしっかりとした日本語で綴られています。 単なる政略結婚から始まっても、真の夫婦愛、家族愛へと見事に昇華された証しがありました。

晩年、足が弱くなられた浩さまを溥傑さまが抱えるようにして散策されている動画がすぐに目に浮かびます。 まさか、私的な書簡が人目に触れるなど、生前想像だにされなかったことでしょう。 本当に素晴らしいものを見せていただきました。

(竜、2-26-11)

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