背守り 子供の魔よけ展

背守り - 子供の着物の背中心に手刺しした 12 針の色糸! 親の子への深い愛情と強い思いが伝わってきます。 京橋際、"LIXIL" の小さなギャラリー一杯に明治期以来の小さくて可愛い着物が展示されておりました。

子に恵まれても早世の憂き目に会うことが非常に多かった時代、子の健やかな成長に祈りを込めた背守りだったのです。 大人の着物であれば背中心はしっかりと接いでありますが、一つ身の子供の着物にはありません。 それを母親の手刺しで魔よけするという、古来からの慣習だったようです。

絹物の晴れ着に普段着からうぶ着まで、くず絹の黄八丈、木綿地や帷子(麻)、漆黒の地に白い鶴を鮮やかに浮かび上がらせたもの、シッカリと発色した紅花染め、冬物の綿入れには、たっぷりと 'ふき' がとってありました(表地の傷みを少なくする工夫です)。

それでも、とびっきりの展示品は、数百片の残布を接ぎ合わせた手作りの着物 - これ以上の母親の愛情表現はありません。 背裏に漢詩を添えて生年月日を記されたもの - こちらは父親の慶びと祈りの詞です。

筆者にも祖母が誂えてくれた晴れ着の思い出があります。 大変厳しい時代に生まれ育ったのですが、柄ゆきは溢れ出さんばかりの滝に上に向かって鯉が跳ねている大好きな着物でした。 ただ、背守りが付いていたのかどうか、どうしても思い出せません。 迷信などを忌み嫌う祖母でしたから、おそらく母親に付けさせなかったのかもしれません。

(竜、7-5-14)

§上記「背守り 子供の魔よけ展」については、既に「産経新聞」の黒沢綾子記者が 記事 にされています。 ぜひ、ご参照ください。

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