着物に咲いたモダニズム バラ柄のきもの

銀座「ミキモトホール」では、以前「着物の柄で時代の変遷を知る」をテーマに催しがあったそうですが、今回は新しい時代の象徴である「バラ」が着物の柄にどのように採り入れられていったのか、明治、大正、昭和の時代に作られた百点以上の展示の中で見せていただきました。

観賞用のバラは明治期に入るとすぐに輸入され、次第に広まっていったのでしょうが、着物の柄としては、最初は在来の花々の中につつましやかに収まっていました。 当時の祝いの礼服は振袖を含め全て黒地ですが、裏地はモミで鮮やかです。

展示品の中で最も華やかなものは、1935 年、「三越」特製の振袖で、いくつものバラのリースを模した柄は今着ても何の不自然さも感じませんし、誰の目も釘付けにしてしまう見事な出来映えです。

幸か不幸か、戦局が深刻さを増し、金色をふんだんに使った着物など自由に着られる雰囲気ではなかったのでしょう、既に 80 年近くを経ているのに、まるで誂えたばかりのお品を見せていただいた思いです。

いわゆる普段着としては、ジャガード織を採り入れた銘仙が爆発的な人気を呼びました。 その中にあったのが、赤と緑のチェック、絵柄が王冠にウェストミンスター寺院、それにバラが加われば、まさしくイギリス ・・・、現エリザベス女王の戴冠式(1953 年)があった時代に作られたのでしょう。

会場は華やかなバラづくし! 本当に楽しく鑑賞させていただきました。 併せて、丁寧にご説明いただきました長本先生に深く感謝いたします。

(竜、4-24-12)

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