KATAGAMI Style

旧三井本館の上層階が「三井記念美術館」に生まれ変ったように、丸の内オフィス街の一角に「三菱一号館美術館」が誕生して既に 2年が経ったようです。 19世紀末、創建当時の面影を維持した建物、休憩用の椅子が置いてあるスペースの窓越しには、まるでビル街の小さなオアシスのような中庭の緑が見渡せます。

さて、今回企画されたテーマは "KATAGAMI Style"、勿論、あの錐彫りされた捺染用の型紙が原点です。 浮世絵が西欧人に知られるようになって、そこに描かれた着物の柄や色合いに興味が移っていくのは当然の成り行きだったことでしょう。 繊細な柄付け、多色重ねの捺染、たちまち西欧世界に広まっていきました。 それを国別で一同に集められ展示されたことへの驚きと、その関係者のご努力に敬意を払います。

アールヌーボーやユーゲントシュティールの中に、型紙柄のデッドコピーが見つかるだけでなく、元々は「四君子(蘭、竹、菊、梅)」の柄付けだったはずが、ヨーロッパでは、もっと身近な植物に変って、家具に装飾されたり、さすがに見どころは満載です。 衣料の分野で日本人に馴染み深い例は、イギリスの "Liberty" 社が上げられます。 1875年創業当時は、日本から輸入した物や工芸品を扱っていました。 それが次第に、客の好みや需要に合わせ新しい柄を生み出し、地元で量産されることで、「リバティープリント」として普及していったのです。

このように「クロスカルチャー」は発信元がどこであれ、行きつ戻りつ刺激しあって、新しい次元の文化を生み出していくのでしょう。 展示会でも見る側は欲張りですから、"Japonism" から既に超越したところで、「なるほどこれが」、「どうしてこれが」と言わせて欲しかった、などと想像してしまいます。

(竜、5-19-12)

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