江戸の町並みを描く

東京駅丸の内口、オアゾの中にある「丸善」で、永井伸八朗さんの「江戸の町並みを描く」展が開かれていました。 会場をグルッと取り囲むように並べられた作品は正しく期待通りでしたし、作者ご自身にお会いするチャンスにも恵まれました。

作者はもともと建築家だけあって精緻な構図で、江戸の建物や名所といった当時のランドマークを、絵巻、浮世絵、屏風絵などを参照されながら、忠実に再現されるという、独自の永井ワールドを築き上げてこられました。

勿論、今の東京からは想像できないところもありますが、「駒形堂」など本来は小さな祠であったのに平成期に立派で大きなお堂になってしまったところもあり、今昔それぞれを比較する楽しみも出てきます。

今回展示されている作品の中心はやはり、「熙代勝覧」をオマージュした、今川橋から日本橋まで、当時最も賑わっていた通りの一連の描写でしょう。 軒を連ねるお店の多彩な業種、露天商や行商人、溢れるほどの荷物を積んだ荷車、ただ何よりも行き交う人々を一人一人生き生きと丁寧に描き上げておられるのは圧巻です。

おしゃれな服装、寄り添う男女、お忍びでしょうか家紋を隠すようにコートを羽織った武士。 男女の差別、身分の差別もさほど感じられない平和なこの町にタイムスリップできればと、思わず考えてしまいます。

とりわけ、きものに興味のある筆者としては、その着付け方、帯の結び方にすぐ目がいってしまいます。 「角出し」を基本として、左右に長く垂らしたり、中央部分が真っすぐ下に垂らされたり、現在、一番ポピュラーな「お太鼓」の原型がここにありました。

(竜、7-15-12)

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