心停止後の社会復帰増加 心臓マッサージ普及が奏功

心臓が突然止まった際、近くにいた人による心肺蘇生を受けて社会復帰した人の割合が増えていることが、京都大などの調査でわかった。 2005 年から 7 年で 5 倍近くになっていた。 心臓マッサージ(胸骨圧迫)の普及が理由とみられる。 心停止した人の心肺蘇生は、自動体外式除細動器 (AED) の実施や、救急隊の到着までの重要な救命処置。 これまでは人工呼吸と胸骨圧迫を組み合わせた方法が勧められてきたが、成人では胸骨圧迫だけでも同等の効果があるとのデータが得られている。

京大の石見拓教授(救急医学)らは、消防庁のデータを元に、05 - 12 年に病院外で心停止した約 81 万 6 千人分の記録を解析。 社会復帰した人のうち、救急隊の到着までに市民から心肺蘇生を受けた人数は、05 年に 1 千万人あたり 9.0 人だったが、12 年には 43.6 人に増えていた。 このうち、胸骨圧迫のみは 0.6 人 → 28.3 人に増えていた。 一方、心肺蘇生を受けていなかった人は 12 年でも 52.6% に上った。 石見さんは「人工呼吸は難しく、口をつけることに抵抗感を持つ人もいる。 胸骨圧迫のみの蘇生法がさらに広まれば助かる人を増やせる。」と話している。(阿部彰芳、asahi = 6-16-15)


花粉症、免疫療法で 8 割が症状改善

スギ花粉のエキスを口に含んで花粉症を治す「舌下免疫療法」を受けた患者へのアンケートで、ほぼ 8 割が例年と比べて症状が改善したと答えたとの調査結果を、厚生労働省研究班が 11 日までにまとめた。

同療法の治療薬は昨年 10 月に発売され、12 歳以上で健康保険適用となった。 研究班の岡本美孝・千葉大教授(耳鼻咽喉科)は「最低でも 2 年間は毎日服薬が必要。 通院などの負担はあるが、2 年目となる来年の方が効果の自覚は強くなるだろう。」としている。 千葉大や日本医大など 6 施設で、昨年 10 月から今年 1 月に治療を始めた 13 - 78 歳の患者 102 人に、今年の花粉飛散時期の症状などを尋ねた。 (河北新報 = 6-11-15)

前 報 (2-3-14)


認知機能低下に脳梗塞の予防薬効くか 国循が治験開始

国立循環器病研究センターなどの研究グループは 26 日、血液の流れをよくする薬が、認知機能の低下を防ぐ効果があるかを調べる臨床試験(治験)を始めたと発表した。 11 病院が参加し、認知症に進むことがある「軽度認知障害 (MCI)」の治療薬としての適応拡大をめざしている。 MCI の人は推計で約 400 万人。 現在、根本的な治療薬はない。

治験を始めた薬は、脳梗塞(こうそく)の予防などに使われる「シロスタゾール」。 これまでの研究で、認知機能の低下を遅らせる可能性が示されている。 シロスタゾールで血管の壁が軟らかくなり、脳にたまった老廃物を排出しやすくなるためと考えられている。 治験では、55 - 84 歳の MCI の人で、高血圧や糖尿病といった病気を持っていないことなどを条件に、計 200 人を募集する。 シロスタゾールを飲むグループと偽薬を飲むグループに 100 人ずつ分け、約 2 年にわたって認知機能の変化などを比較する。 2018 年に結果をまとめるという。 (福宮智代、asahi = 5-30-15)


HIV 感染、20 代が最多 1,091 人中 349 人

厚生労働省のエイズ動向委員会は 27 日、昨年新たに報告されたエイズウイルス (HIV) 感染者とエイズ患者は計 1,546 人と過去 3 番目に多かったと発表した。 新たな感染者 1,091 人のうち、20 代が 349 人で過去最多となり、年代別でも 30 代を抜いて最も多かった。 人口 10 万人当たりの感染率でみても 20 代は他の年代に比べて増加傾向が目立っているという。 同委員会の岩本愛吉委員長は「感染予防の情報を理解しないまま、性的接触を持つ人が増えているのではないか。 身近に HIV 感染の可能性があることを、10 代のうちから啓発することが大事だ」と話した。 (asahi = 5-28-15)


たんぱく質の牢屋でウイルス封鎖 細胞の防御法を発見

細胞にウイルスなどの DNA が侵入した場合、たんぱく質などの膜で囲って「牢屋」のように閉じ込める - -。 そんな新しい防御の仕組みを発見したと、情報通信研究機構のチームが米科学アカデミー紀要に発表した。 ウイルス感染の防止や特定の遺伝子を細胞内に届ける新手法につながる可能性があるという。

細胞にウイルスなどが侵入した場合、これまでは侵入者を捕まえて分解する「オートファジー」という仕組みが知られていた。 今回、研究チームはヒト由来の細胞の中に DNA を侵入させて観察。すると、DNA のまわりに数秒間で特定のたんぱく質が集まり、約 10 分後には別のたんぱく質と脂質の丈夫な膜に覆われてしまうことがわかった。 従来の分解の仕組みより、たんぱく質が集まる仕組みの方が速いという。 (竹野内崇宏、asahi = 5-24-15)


美肌の源、これだ 研究 20 年、美容アミノ酸を発見

ぷるるん肌のもとになるアミノ酸の研究です。 美容だけでなく、病気になるリスク診断にも役立つ「新しいアミノ酸」です。

隠れた成分を測れる装置

「美肌」、その言葉にひかれて食品や化粧品に手を伸ばしてしまう - -。 そんな人たちにとって、「肌を若々しく保つアミノ酸が見つかった」というのは朗報かもしれない。 都内のあるドラッグストアに並ぶゼリー状食品。 美容アミノ酸を含む玄米黒酢、コラーゲン、ヒアルロン酸 ・・・。 そんな単語とともに、パッケージには「17 種類の美容成分」と書かれていた。

「美容アミノ酸」という聞き慣れない言葉。 長い間、研究者から見向きもされなかったが、近年注目されている新しいアミノ酸だ。 人の皮膚にもあり、年齢とともに失われていく、いわば「美肌の源」。 肌の弾力に欠かせないコラーゲンをたくさんつくり出してくれる。 2008 年にそのアミノ酸を測れる分析装置が誕生したことでわかった。 (佐藤恵子、asahi = 5-24-15)


体の衰え「ロコモ度」判定法を発表 日本整形外科学会

日本整形外科学会は 15 日、運動機能が落ちて介護が必要になるリスクが高い「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」の判定法を発表した。 年齢・性別にかかわらず、台に座った状態からの立ち上がりや歩幅などによって、二つの段階に当てはまるかを判断する。 判定には「立ち上がりテスト」と、大股で歩いた 2 歩分の幅をみる「2 ステップテスト」、日常動作の困難度など 25 項目を点数化する「ロコモ 25」を用いる。 例えば、高さ 40 センチの台から片足で立ち上がれないと「ロコモ度 1」、20 センチの台から両足で立ち上がれないと「ロコモ度 2」となる。

ロコモ度 1 は筋力などが低下した状態で、定期的な運動とバランスのとれた食事に気をつける必要がある。 ロコモ度 2 は、歩行など基本的な動きの衰えが進んでおり、自分で身の回りのことができなくなるリスクが高いという。 学会は、ロコモ度 2 で痛みがあれば、整形外科の専門医の受診を勧めるとしている。 学会によると、国内にはロコモ度 1 が約 3,200 万人、ロコモ度 2 が約 1,400 万人いるという試算もある。 岩本幸英理事長は「ロコモは高齢者が突然なるのではない。 早く気づいて対処することが重要。」と話す。 (南宏美、asahi = 5-17-15)


スパコンで仮想心臓を作成、薬の副作用予測に成功

スーパーコンピューターで作成した心臓のモデルを使い、薬の副作用を予測することに成功したと、東京大の岡田純一特任講師らのチームが米専門誌サイエンス・アドバンシズに発表した。 薬の開発を効率化できる可能性があるという。 東大、東京医科歯科大、エーザイのチームは、実際の細胞での実験データを使って、2 千万個の仮想細胞からなる仮想心臓をスパコンで作成。 心電図の波形や血圧、血流など心臓の働きを再現した。 副作用がわかっている 12 種類の薬で試したところ、心臓に副作用が出るかどうかを正確に予測できたという。

予測が可能になることで、開発の初期段階で薬剤候補のふるい分けができるようになる。 細胞や動物を使った実験では困難な、複数の薬による相互作用も調べられるという。 薬は、重い不整脈を起こす副作用の有無が開発の重要な判断基準となる。 今回のシミュレーションで、この「予兆」が心電図の波形で出たが、量を増やしても重い不整脈にはならない薬があることもわかった。 これまで断念していた薬の開発が、継続できるようになるかもしれないという。 岡田さんは「将来は個人差も考慮した副作用リスクの予測も可能になる」と話す。 (竹石涼子、asahi = 5-11-15)


脂っこい食事続けても太らない? 特定のたんぱく質発見

脂肪分の多い食事を続けても、体内にある特定のたんぱく質をなくすと太らないことを、京都大などのグループがマウスを使った実験で確かめた。 人間に応用できれば、肥満対策につながる可能性があるという。 英科学誌サイエンティフィック・リポーツに 8 日発表した。 このたんぱく質は「ニューデシン」と呼ばれ、脂肪組織などから分泌される。 研究グループが存在を 10 年前に確認していたが、体内での働きは不明だった。 人間でもこのたんぱく質が作られているとみられる。

遺伝子を壊して、ニューデシンを作れなくしたマウスを観察すると、普通のえさではやせてしまうことを発見。 高脂肪のえさを 16 週間与えると、正常なマウスの体重は平均で約 41 グラムになったが、このマウスは平均約 32 グラムにとどまった。 詳しく調べると、脂肪組織で脂肪の分解と燃焼が明らかに多く、体温が 0.5 度前後高かった。 運動量や食べる量は正常なマウスと変わらず、やせること以外で目立った変化はなかったという。

グループの木村郁夫・東京農工大特任准教授は「ニューデシンが働く仕組みが解明できれば、肥満を抑える薬の開発につながる可能性がある」と話している。 (阿部彰芳、asahi = 5-9-15)


ニコン、再生医療向け細胞を量産へ iPS 細胞も視野

ニコンは 7 日、再生医療向け細胞を量産する工場を建設すると発表した。 将来は iPS 細胞の生産も視野に入れる。 再生医療向け細胞の受託生産で世界最大手のロンザ(スイス)と業務提携して製造ノウハウを提供してもらい、2017 年度の稼働を目指す。 量産するのは体性幹細胞。 iPS 細胞と比べるとさまざまな細胞への分化は限られるが、細胞をつくるのは容易だという。 今年 9 月までに 20 億円を出資して、工場を運営する子会社をつくる。 工場では製薬会社や研究機関から委託を受けて研究用の細胞をつくったり、預かった細胞を増やしたりする。 将来は新薬の原料向けの生産も見込む。

再生医療向け細胞は、細胞を専用の溶液に漬けてつくったり、増やしたりする。 温度管理などが難しく、専門の工場に需要があるとみている。 ニコンは顕微鏡や培養装置など再生医療に使う機器を扱っており、工場を新製品の開発や販売にも役立てる考えだ。 (高木真也、asahi = 5-8-15)


コーヒーや緑茶、1 日数杯で長寿効果 19 年間追跡調査

コーヒーや緑茶を日常的によく飲んでいる人は、そうでない人に比べて死亡するリスクが低いとする調査結果を、国立がん研究センターなどの研究チームがまとめた。 コーヒーに含まれるポリフェノール、緑茶に含まれるカテキンが血圧を下げ、両方に含まれるカフェインが血管や呼吸器の働きをよくしている可能性があるという。

全国に住む 40 - 69 歳の男女約 9 万人に対し、コーヒーや緑茶を 1 日どれくらい飲むかを、ほかの生活習慣などと合わせて質問し、経過を約 19 年間追った。 この間に約 1 万 3 千人が亡くなっていた。 コーヒーや緑茶をよく飲む人は死亡率が低く、コーヒーを 1 日に 3 - 4 杯飲む人ではほとんど飲まない人に比べて、死亡リスクが 24% 低かった。 緑茶は 1 日 1 杯未満の人に比べ、1 日 5 杯以上飲む男性で死亡リスクが 13%、女性で 17% 低かった。 どちらも、死亡のリスクにかかわる年齢や運動習慣などは影響しないように統計学的に調整した。 (田村建二、asahi = 5-7-15)


ヒト ES 細胞、マウス胚で分化成功 再生医療で応用期待

万能細胞のヒト ES 細胞をマウスの胚(はい)に移植し、神経や筋肉などになる細胞に分化させることができたと、近畿大の岡村大治講師(発生生物学)らの研究グループが発表した。 人間の体が作られる仕組みの解明などにつながるという。 論文が英科学誌ネイチャー電子版に 7 日、掲載された。 体のさまざまな部位になれる人間の万能細胞をブタなどの動物の胚に入れ、人間の臓器を作ることができれば、再生医療につながると期待されている。だが、人間とは異なる種の細胞を混ぜた状態で成長させるのが難しかった。

岡村さんらのグループは米国のソーク研究所で、ヒト ES 細胞を独自の方法で培養したうえで、マウスの子宮に着床した胚を取り出して移植。 胚を試験管で 1 日半培養したところ、ES 細胞はマウスの細胞と混じり、神経や筋肉などに成長する細胞に分化したことが確認できたという。 従来の方法で培養した ES 細胞は胚の中で育たず、研究グループは「培養方法を変えることで、新しい性質を持った ES 細胞を作ることができた」としている。

しかし、着床後に子宮から取り出した胚を戻して成長させる技術は確立されておらず、今回の研究成果を動物の体内で人間の臓器を作ることに、すぐに応用できるわけではないという。 岡村さんは「人間の細胞が着床後にどのように分化していくかを詳しく調べられるので、人間の発生学の研究には大きな前進になる」と話している。(今直也、福島慎吾、asahi = 5-7-15)


赤外線でがん狙い撃ち 米研究所、新治療法の臨床試験へ

人体に無害な光(近赤外線)を当ててがん細胞を壊す新しい治療法を米国立保健研究所 (NIH) の小林久隆・主任研究員らが開発し、患者で効き目を調べる治験(臨床試験)を近く始める。 光を受けると熱を出す特殊な化学物質をがん細胞の表面に結びつけ、がんだけを熱で狙い撃ちする。

この治療法は「光線免疫療法」。 小林さんらが 2011 年、マウス実験だと 8 割でがんが完治したと発表。 副作用が少ない新治療法になると注目を集め、オバマ大統領が翌年の一般教書演説で取り上げた。 今年 4 月末、米食品医薬品局 (FDA) が治験を許可。 通常、動物実験から治験開始まで早くても 5 年以上はかかるとされており、今回は異例の早さだという。 米製薬ベンチャーと組んで準備を進め、新興企業に投資するベンチャーキャピタルなどを通して約 10 億円の資金も確保した。

治験ではまず、近赤外線を受けて発熱する化学物質を、特定のがん細胞に結びつくたんぱく質(抗体)に結合させた薬を患者に注射する。 最初は、首や顔にできる頭頸部(とうけいぶ)がんの患者 10 人前後で、近赤外線を当てずに副作用などがないことを確認。 その後、患者 20 人前後で、近赤外線を当てて効果を調べる。 3 - 4 年後にがん治療薬として米国での承認を目指す。 (asahi = 5-6-15)


がん細胞 : 動き制御のたんぱく質 転移予防に期待 神戸大

がんの培養細胞を使った実験で、細胞膜の膨らむ力(膜張力)を感知するたんぱく質が、がん化した細胞の動きを制御していることを神戸大自然科学系先端融合研究環バイオシグナル研究センターの伊藤俊樹教授(細胞生物学)らの研究グループが突き止めた。 がんの早期発見や転移の予防への応用が期待されるという。 英科学誌「ネイチャーセルバイオロジー」の電子版に 5 日、掲載された。 実験では、膜張力の弱いがん細胞内では、膜を曲げる性質のあるたんぱく質「FBP17」が活発に膜を細胞内に引き込むなどして膜を伸縮させ、細胞の動き出す方向を決めていることが分かった。

既に細胞の動きに膜張力が関わっていることは判明していたが、分子レベルで細胞の動く仕組みが解明されたのは初めて。 伊藤教授は「細胞が動くには FBP17 が不可欠。 安定した正常な細胞とがん細胞では、膜張力に違いがあることも強く推定される。」と話す。 研究が進めば、膜張力の強弱でがんを早く見つけたり、細胞の動きを抑えて転移を防げたりする可能性があるという。 (松本杏、mainichi = 5-5-15)


ES 細胞の網膜、移植後 1 年がん化せず アジア人で初

万能細胞の一つ、ES 細胞(胚〈はい〉性幹細胞)からつくった網膜の細胞を患者に移植したところ、1 年後もがん化などの問題はなかったと、韓国のチャ大学などのチームが 30 日付の米科学誌ステム・セル・リポーツに発表した。 米国で同様の報告はあったが、アジア人では初めてという。

網膜の組織が傷んで視力が低下する難病「加齢黄斑変性」などの患者 4 人に移植し、1 年間の経過を見た。 細胞のがん化や異常増殖はみられず、3 人で視力の回復がみられたという。 今回の移植手術は臨床研究の段階で、安全性を確認するのが主な目的。 研究チームは「長期間の安全性と治療効果を判定するにはさらなる研究が必要」としている。 (合田禄、asahi = 5-1-15)


がん患者、高齢化で「大腸」 1 位に … 15 年予測

国立がん研究センターは、2015 年に新たにがんになる患者数が、14 年より約 10 万人増え 98 万 2,100 人になると推計し、28 日発表した。 種類別にみると、これまで 3 位だった大腸がんが、胃がん、肺がんを抜いて 1 位になり、肺がんは 2 位にとどまると予測した。 男性に限ると、前立腺がんの患者が最多になるとした。 同センターによると、大腸がんの増加は主に高齢化の影響で、肺がんは、喫煙率が最も高かった 1960 年代に 20 - 30 代だった男性が高齢になり、発症が増えたためという。 胃がんが 3 位になったのは、原因の一つとなるピロリ菌の感染者数の減少によるとみられる。

また、がんによる死亡者数は、14 年より約 4,000 人多い 37 万 900 人と予測。 肺がんがトップで、14 年は 3 位だった大腸がんが胃がんを抜いて 2 位となった以外に、大きな変化はみられなかった。 同センターは 14 年から、がん対策の目標設定や評価などに活用するため、その年の患者数や死亡数の予測結果を公開している。 (yomiuri = 4-29-15)


第 4 のがん治療法 免疫療法、効果と副作用は 新薬発売

免疫の仕組みを利用した免疫療法は、手術、抗がん剤、放射線に次ぐ、がんの第 4 の治療法と期待されている。 昨秋、皮膚がんの一つ「悪性黒色腫(メラノーマ)」の新薬が、国内で発売された。 ただ、免疫療法で効果が確かめられているのは、まだわずかしかない。 東京都内の男性 (86) は昨年 7 月、膀胱(ぼうこう)の結石を取る手術を受けた時、膀胱の粘膜にメラノーマが見つかった。 国立がん研究センター中央病院で検査すると、肺にも転移していることがわかった。

3 週間に 1 回通院し、発売直後の新薬「ニボルマブ」の点滴を受けた。 5 回目の点滴の後、CT 撮影すると、肺と膀胱にあった腫瘍(しゅよう)が見えなくなっていた。 男性は、結石の手術前とほとんど変わらない生活を送っている。 メラノーマの治療は、腫瘍を切り取る手術が一般的だ。 ほかの臓器に転移している場合は、抗がん剤が中心となる。 転移性メラノーマには、同じ抗がん剤が 30 年以上使われてきた。 国立病院機構大阪医療センターの為政大幾・皮膚科長は「目立った延命効果は期待できず、治療は非常に困難だった」と振り返る。 (宮島祐美、鍛治信太郎、asahi = 4-28-15)


ちょい高めの血圧ご用心 心房細動の恐れ 1.7 倍 国循

脳梗塞(のうこうそく)を起こす大きな要因として、近年注目されている不整脈の一種「心房細動」は、肥満に、ちょっと高めの血圧が重なるだけで、なりやすさが 1.7 倍上がることを国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)がつきとめた。 「ちょっと高めの血圧は、思いのほか危険なので、注意が必要」と呼びかける。

心房細動は、心臓の一部がけいれんを起こした状態。 これだけで命に関わることは多くないが、心臓内で滞った血液が固まり、脳に流れ込んで脳梗塞を起こす。 脳梗塞の発症率を 5 倍上げるとされている。 心房細動は自覚症状がないことが多く、早期発見には心電図検査が有効だ。 どんな人が心房細動を起こしやすいのか、大規模集団を長期間追跡した研究は少ない。 (中村通子、asahi = 4-27-15)


ビッグデータで病気分析 70 万人の記録解析で傾向把握

全国 70 万人分の診療データを解析したところ、心臓の血管が突然つまる急性心筋梗塞(こうそく)の入院患者は、男性は 60 代、女性では 80 代で最も多いことが、日本循環器学会の研究で分かった。 全国規模で患者の傾向が明らかになるのは初めてという。 数十万人単位の「ビッグデータ」を活用して、医療の質向上につなげるのがねらい。 大阪市で開かれた同学会で 24 日、報告された。 国は、患者のビッグデータを使って、医療の質の向上や効率化などを目指す方針を打ち出している。 (今直也、asahi = 4-26-15)


白血病にエイズ薬 京大、臨床研究へ 成人 T 細胞

よく使われるエイズ治療薬の一つが、日本人に多い成人 T 細胞白血病 (ATL) のがん細胞を殺す働きがあることを京都大のグループが見つけた。 今の ATL の治療は薬も骨髄移植も効果が限られる。 グループは、この薬が新たな治療法になるか確かめる臨床研究を今秋にも始める。

研究成果は米科学誌サイエンス・アドバンシズに 25 日発表する。 ATL は、白血球の一種の「T 細胞」に「HTLV-1」というウイルスが感染して起きる。 母親から子へ母乳で感染したりし、発症すると感染した細胞が異常に増殖して全身に広がる。 国内の感染者は約 108 万人で、うち 5% ほどが発症する。

エイズも同じタイプのウイルスが原因で、感染した細胞で自身の遺伝情報を持つ DNA を合成して増える。 ATL にも効くエイズ治療薬がないか、グループは培養した ATL 細胞で様々な薬を試すと、ウイルスが DNA を合成することを妨げる「アバカビル」に最も高い効果がみられた。 (阿部彰芳、asahi = 4-25-15)


アトピー、皮膚表面の細菌の偏り原因 … 慶大など

アトピー性皮膚炎は、皮膚表面の細菌の種類の偏りがあると起きることを、マウス実験で解明したとの研究結果を、慶応大学と米国立衛生研究所 (NIH) のグループが 22 日、米科学誌に発表した。

研究グループは、アトピー性皮膚炎のモデルマウスを作り、皮膚表面の細菌の種類を調べた。 健康なマウスの皮膚には、たくさんの種類の細菌がいるが、モデルマウスでは黄色ブドウ球菌など少数の細菌のみで占められていた。 黄色ブドウ球菌などの細菌に効く抗菌薬を長期間投与すると、細菌の種類が回復し、皮膚炎は改善した。 しかし、治療を中断すると、再び黄色ブドウ球菌など少数の細菌で占められ、症状は悪化した。 細菌の種類の偏りがあると、皮膚炎が起きると考えられた。 (yomiuri = 4-23-14)


ナイジェリア「謎の病」、原因は … WHO が沈静化図る

AFP 通信などによると、アフリカ西部ナイジェリアで今月中旬以降、「謎の病気」により、19 人が死亡する出来事が起き、社会不安が広がっている。 現地で疫学調査を実施する世界保健機関 (WHO) は 20 日、この原因について「メタノールに汚染された地場産のジン(蒸留酒)の消費との強い関連がみられる」との同国保健相の発言を発表し、沈静化に乗り出した。 ただ、原因確定はまだという。

同国では昨年、エボラ出血熱で 7 人が死亡しており、「謎の病気」への人々の不安が高まっていた。 メタノールは有毒だが、密造酒の原料として広く使われ、近年ではインドや中国、アフリカなどで多くの犠牲者を出している。 日本でも戦中戦後の物資が足りない時期にメタノール入りの酒が出回っており、漫画「サザエさん」の初期の作品でも「メチール」として紹介されたこともある。(ジュネーブ = 松尾一郎、asahi = 4-22-15)


「機能性表示食品」 100 件届け出 企業責任で効果表示

消費者庁は 17 日、食品を製造販売する事業者が健康への効果をみずからの責任で表示できる新制度「機能性表示食品」について、1 日の施行以来、100 件余りの届け出があり、うち 8 件を受理したと発表した。 受理内容は同庁のウェブサイトで公開している。 商品は早ければ 6 月にも店頭に並ぶ見通し。 機能性表示食品は、表示内容を国が審査した上で許可する特定保健用食品(トクホ)と異なり、事業者が科学的根拠などの一定の要件をそろえて届け出ればよい。 届け出受理の 60 日後には包装などに「目の健康に役立つ」などといった表示をして販売できる。

今回受理されたのは、「血中中性脂肪や血糖値の上昇をおだやかにすると報告されている」とうたうノンアルコール飲料や、「肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があると報告されている」とするサプリメント、「目の使用による肩・首筋への負担を和らげます」というサプリメントなど。 残りの届け出について、消費者庁は、確認が済み次第、受理してウェブサイトで公開する。 商品名や表示内容のほか、表示の根拠なども確認できる。 詳細はサイト (http://www.caa.go.jp/) へ。(高橋健次郎、asahi = 4-17-15)


骨再生の「種」開発 東洋紡と東北大、6 月から臨床試験

繊維大手の東洋紡が東北大と共同で、骨を再生させるスポンジ状の「骨の種」を開発した。 骨が欠けたり、やせたりしたところに埋め込むと、周りの細胞が入り込んで骨を再生させる仕組みだ。 6 月から歯を支える骨の再生に実際に使う臨床試験で安全性などを確かめ、2018 年度の製品化をめざす。 骨の種は、骨の成分となるカルシウムの一種と、コラーゲンを混ぜたもので、体内で分解・吸収されるのが特徴。 東洋紡がつくっている神経の再生をうながすチューブと同じコラーゲンを使った。 動物実験では、約半年で骨に置き換わったという。

臨床試験では、歯のインプラント治療などで、歯を支える骨が再生できるかを試す。 これまでは、腰の骨の一部などを移植するのが一般的だったが、何度も手術しなければならず、患者の負担が重かった。 開発に携わった東北大大学院の鎌倉慎治教授(歯学)は「患者の負担が大幅に減り、入院期間も短くなるだろう」と話す。 東洋紡の担当者は将来、整形外科や脳外科でも応用できるとみている。(笠井哲也、asahi = 4-15-15)


糖尿病悪化すると睡眠の質も悪化 大阪市立大ら研究発表

糖尿病の症状が悪くなると、深い眠りができなくなるなど睡眠の質も悪くなりやすいことが分かったと、大阪市立大の研究グループが発表した。 糖尿病に伴う高血圧などの病気を防ぐには、血糖値をコントロールするだけでなく、睡眠を改善することも重要だという。

十分に眠れていない睡眠障害の患者は、糖尿病になりやすいことなどが知られていたが、睡眠障害と糖尿病のつながりは詳しく分かっていなかった。 研究グループは、約 50 人の 2 型糖尿病の入院患者を対象に、脳波計を使って睡眠の質を精密に分析。 その結果、糖尿病の悪化を示す数値が悪くなるほど、脳を休める睡眠が十分にとれていない傾向が確認された。 (今直也、asahi = 4-14-14)


肥満から糖尿病・高血圧、引き金のたんぱく質解明 阪大

肥満が進んで糖尿病や高血圧などの生活習慣病になる仕組みを、大阪大の研究グループがマウスの実験で解明したと発表した。 高脂肪・高カロリーの食事をとると出てくる特定のたんぱく質の働きを抑えることで人でも糖尿病の発症を防ぐことが期待できるという。

肥満になると単に体重が増えるだけでなく、脂肪細胞などからなる脂肪組織で炎症が起きる。 この炎症が糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病につながると考えられている。 だが、何が炎症を起こす「引き金」になっているか分かっていなかった。 研究グループは、通常の食事を与えたマウスと高脂肪・高カロリーの食事を与えたマウスの脂肪組織で起きている現象を調べた。 すると、高脂肪・高カロリーの食事をとったマウスの脂肪細胞から特定のたんぱく質が出ており、免疫に関係する細胞を呼び寄せて炎症を増やしていることが分かった。 (今直也、asahi = 4-7-15)


脳死者と生体から両肺 ハイブリッド移植成功 岡山大、世界初

岡山大病院は 4 日、肺に難病を抱える男性 (59) = 北海道在住 = の左右両方の肺移植で、片方を脳死した人から、もう片方を生きている人から提供を受けた「ハイブリッド移植」手術を実施、世界で初めて成功したと発表した。 脳死ドナーから提供された左肺は医学的に状態が良くなかったため、右肺には、男性の息子(成人)から提供を受けた右肺の一部を移植した。脳死提供の肺は使用が難しいケースもあるが、今回の手法は生体肺を組み合わせて機能を補うもので、臓器提供が不足する中、移植医療の幅が広がりそうだ。

執刀した大藤剛宏(おおとうたかひろ)教授によると、男性は 2008 年、肺が硬くなり縮んで働かなくなる特発性間質性肺炎と診断された。 今年 3 月に日本臓器移植ネットワークに登録した。 左肺は、神奈川県内の病院に低酸素脳症で入院中、2 日に脳死判定された成人男性から提供された。 右肺の移植は医学的理由で断念された。 岡山大病院は今回、脳死ドナーから提供された左肺だけでは術後、十分に呼吸できないと判断。 息子の右肺下部の「下葉」という部分も移植し、肺機能をサポートさせることにした。

脳死ドナーから両肺の移植を受けるには五十五歳未満という年齢制限があり、男性はこの条件にも引っ掛かっていた。 男性は約 3 カ月後に退院の見通し。 「脳死ドナーやそのご家族、そして息子には感謝の気持ちでいっぱいです」とのコメントを出した。 大藤教授は「医学的理由で使用が断念される肺が利用されるのは意義深い。使われない肺を少しでも減らしたい」と話した。 (東京新聞 = 4-5-15)

特発性間質性肺炎> 肺の組織が炎症を起こして厚く硬く変化し、縮んで動かなくなって、うまく酸素を取り込めなくなる病気。 原因は不明。 複数の病型があり、特発性肺線維症と呼ばれる型が多く、治療も難しい。 歩いたり入浴したりといった日常生活で呼吸困難を感じ、急激に悪化することもある。 息切れが徐々に進行し、重症化すると酸素療法が必要になる。


高齢者「中止考慮すべき薬」 50 種 … 10 年ぶり新指針案

日本老年医学会などは、副作用が大きいために高齢者への使用の中止を医師が考慮すべき薬を約 50 種類挙げた一覧を作成した。 10 年ぶりに改定予定の「高齢者の安全な薬物療法指針」の中に盛り込む。 同学会のホームページに指針案を掲載し、1 日から広く意見を募ったうえで、正式決定する。 さまざまな病気を抱える高齢者は多くの薬剤を漫然と長期間処方されがちだが、特に体力が低下した高齢者には有害な副作用が出やすい薬剤もある。

同学会が 2005 年に策定した指針では、効果より副作用の害が大きい薬について「慎重投与」としていたが、今回の改定で「使用中止を考慮すべき」と記述し、医師などに強く注意を促した。 新しい薬も検討のうえ、一覧に加えた。 一覧に挙げた副作用として、作用時間の長い睡眠薬は、認知機能の低下やふらつき、転倒を招く危険がある。 抗精神病薬は認知症患者の徘徊はいかいや暴力を抑えるために投与すると、脳血管障害と死亡率を上昇させる。

指針案では、こうした薬剤それぞれについて、別の薬剤に変更したり、使用期間を短くしたりするなどの対処法を示している。 ただし、患者が自己判断で服用を急にやめると、急激な悪化を招く危険もある。 指針案をまとめた秋下雅弘・東大教授は「薬の減量、中止は、医師や薬剤師と相談して進めてほしい」と話している。 (yomiuri = 4-1-15)


ミカンの皮とヨーグルトで「花粉症和らぐ」

ミカンの皮とヨーグルトに含まれる成分を同時に摂取すると、花粉症が和らぐとの研究結果を、愛媛大の菅原卓也教授(食品機能学)らが 28 日、岡山県で開催中の日本農芸化学会で発表した。 研究チームは、花粉症への抵抗力を高める食品の開発につながる成果としている。

チームは、温州ミカンの皮に含まれるポリフェノールの一種「ノビレチン」と、牛乳成分のたんぱく質「βラクトグロブリン」が、それぞれ花粉症に関わる炎症反応を抑える働きを持つことに着目。 26 人のスギ花粉症患者の同意を得て、牛乳成分を含む飲むタイプのヨーグルト(150 ミリ・リットル)に、すり潰した皮を混ぜたものを、1 日 1 回飲んでもらった。

飲み始める前と 2 週間後に、花粉症の原因物質を両目に点眼し、点眼 30 分後の症状を比べたところ、飲んだ後は全員、かゆみなどの自覚症状が大きく低下。 結膜炎の指標になる眼球表面の温度上昇も、約半分に抑えられた。 花粉症は体内の花粉に免疫細胞が反応、ヒスタミンなどの化学物質が放出されるのが原因とされる。 チームは、ミカンの皮と牛乳の成分の相乗効果が免疫細胞の反応を弱め、化学物質の放出を抑えるとみている。 (yomiuri = 3-29-14)


寄生虫でがん診断? 患者の尿のにおい好み、精度 95%

寄生虫のアニサキスなどで知られる線虫が、がん患者の尿のにおいを好むことを発見したと、九州大などの研究チームが発表した。 早期がんも含め、95% の精度でがんの有無を判定できたという。 実用化されれば、がん検診が大幅に簡素化でき、数百円で受けられる可能性がある。 論文は 11 日付の米科学誌「プロスワン」に掲載される。

九大味覚・嗅覚(きゅうかく)センサ研究開発センターの広津崇亮助教らは、生物実験で一般的に使われる体長数ミリの線虫 50 - 100 匹を実験皿の中央に置き、皿の隅に人の尿を数滴、垂らす実験を 242 人分繰り返した。

その結果、線虫は、がんがある 24 人の尿のうち 23 人分 (95.8%) に近寄り、健康な人の尿 218 人では 207 人分 (95.0%) で遠ざかった。 がんは、胃がんや食道がん、前立腺がん、早期発見が難しい膵臓(すいぞう)がんなど、様々だった。 遺伝子操作で一部の嗅覚を機能させなくした線虫は、がんがある人の尿に近寄らなかったため、においに反応しているらしい。 (東山正宜、asahi = 3-12-15)


タミフル原料生産、キノコ菌糸に青色 LED の刺激で

抗インフルエンザ薬「タミフル」の原料となるシキミ酸を、キノコのヒラタケの菌糸に青色 LED を当てて生産する技術を開発したと信州大教授らが発表した。 シキミ酸は中国で生産されるトウシキミの実(八角)から抽出されているが、この技術で安価で安定的な製造が可能になるという。 論文が英科学誌サイエンティフィク・リポーツ(電子版)に掲載された。

信大農学部の小嶋政信教授らは、キノコ栽培に光を使う研究で、青色光で刺激するとシキミ酸が飛躍的に増加する現象を発見した。 実験の結果、ヒラタケの菌糸に 36 時間、青色光の刺激を与えると、菌糸 1 キロあたり 0.45 グラムのシキミ酸ができることが分かった。 シキミ酸は、八角から抽出すると 1 キロあたり 30 - 80 グラム程度が抽出されるが、収穫は年 1 回。 ヒラタケは八角に比べて安価で、どこでも通年で製造できる。 小嶋教授は「世界のどこにでもあるヒラタケを使い、屋内の工場で製造が可能な技術。 実用化が容易なところが特長だ。」と話している。(関根光夫、asahi = 3-5-15)


紅茶成分で骨粗鬆症改善の可能性 阪大などマウス実験

大阪大などの研究グループは、紅茶に多く含まれる物質がマウスの体内で骨を壊す細胞ができるのを妨ぐことを実験で確認し、論文にまとめた。 紅茶の成分をとることで骨が弱くなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の改善につながる可能性があるという。 論文は 24 日、米医学誌ネイチャーメディシン電子版に掲載される。

骨は新陳代謝をしており、健康な骨を維持するには、骨を壊す破骨(はこつ)細胞と骨をつくる骨芽(こつが)細胞の数のバランスが大切とされる。 破骨細胞が多すぎると、骨が弱くなり骨折のリスクが高くなる。 骨粗鬆症の患者は高齢者に多く、日本で 1 千万人以上いると考えられている。 研究グループは、破骨細胞が作られるのに関係する物質と反応する酵素に着目。 紅茶に含まれる TFS3 というポリフェノールの一種によって、酵素が働かなくなることを発見した。 TF3 は紅茶ほどではないもののウーロン茶にも含まれているが、緑茶にはほとんどないという。 (今直也、asahi = 2-24-15)


ES 細胞から網膜作る方法開発 理研、再生医療へ前進

万能細胞のヒト ES 細胞から、生体と同じような網膜を作る方法を開発したと、理化学研究所などの研究チームが明らかにした。 目の病気の患者に、iPS 細胞などから作った網膜を移植する再生医療の実現に一歩近付く成果だという。

理研はこれまで、ヒト ES 細胞から網膜をつくる方法を開発している。 ただ、品質のばらつきといった課題があり、研究チームは改良法を探っていた。 理研の桑原篤・客員研究員(幹細胞生物学)らは、ES 細胞の培養液に、従来法と異なるたんぱく質を添加。 増やした細胞で網膜色素上皮という組織を作った後、一部を神経に変化させ、150 日間培養した。 (野中良祐、asahi = 2-21-15)


ボツリヌス毒素体内侵入の仕組み解明 食中毒予防に期待

重い食中毒を引き起こすボツリヌス毒素が体内に入り込む仕組みを、大阪大微生物病研究所などのグループが解明した。 毒素が腸管にある細胞の「扉」をくぐり抜けて血中に入り、発症につながるという。 17 日、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に掲載された。 ボツリヌス毒素は土中のボツリヌス菌から作られ、食べ物に付着して人間の体内に入ると全身まひなどを引き起こす。 衛生環境が整った先進国での発症は少ないが、治療法が限られているため、テロに悪用される恐れが懸念されている。 これまで発症の詳しい仕組みは分かっていなかった。

阪大微生物研の藤永由佳子特任教授(細菌学)らは、毒素の中のヘマグルチニン (HA) というたんぱく質に注目。 マウスを使った実験で、HA が腸管にある M 細胞の表面にある GP2 というたんぱく質とくっつき、細胞を通り抜けることを突き止めた。 毒素はその後血中に入って全身をめぐり、症状を引き起こしていると見られる。 藤永さんは「新たに分かった毒素の侵入経路を防ぐことで、食中毒の予防や治療につながる可能性がある」と話している。 (今直也、asahi = 2-17-15)


指定難病、43 の病気追加へ 遺伝子異常など 厚労省委

厚生労働省の検討委員会は 13 日、難病医療法に基づいて今夏から医療費が助成される「指定難病」の第 2 次実施分について、遺伝子異常や染色体異常の病気、皮膚疾患など 43 の病気を追加する方針を大筋で了承した。 5 月ごろ正式決定し、7 月からの助成開始を目指す。 追加で了承された病気は次の通り。

▽ 結節性硬化症、▽ 色素性乾皮症、▽ 先天性魚鱗癬(ぎょりんせん)、▽ 家族性良性慢性天疱瘡(てんぽうそう)、▽ 類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)、▽ 特発性後天性全身性無汗症、▽ 眼皮膚白皮症、▽ 肥厚性皮膚骨膜症、▽ 弾性線維性仮性黄色腫、▽ マルファン症候群、▽ エーラス・ダンロス症候群、▽ メンケス病、▽ オクシピタル・ホーン症候群、▽ 低ホスファターゼ症、▽ VATER 症候群、▽ 那須ハコラ病、▽ ウィーバー症候群、▽ コフィン・ローリー症候群、▽ 有馬症候群、▽ モワット・ウィルソン症候群、▽ ウィリアムズ症候群、▽ ATR-X 症候群、▽ 症候群性頭蓋(ずがい)縫合早期癒合症、▽ コフィン・シリス症候群、▽ ロスムンド・トムソン症候群、▽ 歌舞伎症候群、▽ 内臓錯位症候群、▽ 鰓(さい)耳腎症候群、▽ ウェルナー症候群、▽ コケイン症候群、▽ プラダー・ウィリ症候群、▽ ソトス症候群、▽ ヌーナン症候群、▽ ヤング・シンプソン症候群、▽ 1p36 欠失症候群、▽ 4p- 症候群、▽ 5p- 症候群、▽ 第 14 番染色体父親性ダイソミー症候群、▽ アンジェルマン症候群、▽ スミス・マギニス症候群、▽ 22q11.2 欠失症候群、▽ エマヌエル症候群、▽ 脆弱(ぜいじゃく) X 症候群関連疾患/脆弱 X 症候群 (asahi = 2-13-15)