AIIB に中国 29% 出資 事実上の「拒否権」も 中国が呼びかけるアジアインフラ投資銀行 (AIIB) の設立協定の概要が 22 日、明らかになった。 資本金は 1 千億ドル(約 12 兆円)で、中国が最大の 29% を出資、議決権でも 4 分の 1 超を握る。 12 人による理事会には出資 2 位のインドも常任ポストを得た。 中国財務省は 22 日、シンガポールで開かれていた首席交渉官会合で、参加した 57 カ国の代表が設立協定に合意したと発表した。 各国政府の承認を経た上で、6 月末に署名する。 中国側は協定内容を明かしていないが、参加者によると、当初は 500 億ドルを想定していた設立時の資本金は、中国の提案で 1 千億ドルに引き上げることに各国が同意した。 資本金の 75% は「域内国」とされるアジア・太平洋諸国で分担する。 比率は各国の国内総生産 (GDP) から算出し、中国は 29%、インドが 10% を出すという。 以下ロシア、韓国と続く。 銀行での決定に関わる議決権も決めた。 中国は 26% だが、重要案件では中国が反対すれば決められない事実上の「拒否権」を持つ模様だ。 インドは 7% の議決権を持つ。 理事は域内国から 9 人、域外国から 3 人。 単独で理事ポストを確保するには 7% 以上の議決権が必要で、現時点で中国とインドがこの条件を満たす。 ほかはグループをつくり、輪番などの方法で理事を出す。 理事は本部の北京には常駐せず、年に数回の会合を開く。 本部に常設の理事会を置く世界銀行やアジア開発銀行 (ADB) など既存の国際金融機関とは一線を画した。 総裁人事などの決定は、設立協定の署名後に見送った。 最大出資国の中国が総裁を送ることが確実視されている。(シンガポール = 斎藤徳彦、都留悦史、asahi = 5-23-15) ◇ ◇ ◇ AIIB、1 千億ドル規模 … 中国出資は 3 割未満 中国が主導して設立準備を進めているアジアインフラ投資銀行 (AIIB) の設立協定の概要が明らかになった。 創設メンバーが57か国まで増えたため、資本金は当初予定した 500 億ドルより大幅に増やす。 出資比率の算定方法も固まり、中国は 20% 台後半でトップとなる。 創設メンバー国は節目となる設立会合を 6 月下旬に開く方向で調整している。 資本金は 1,000 億ドル(約 12 兆円)には達しないが、近い規模とする方向で詰めている。 中国は最大で 50% 出資する意向も示していたが、3 割を切る水準に落ち着く見通しだ。 中国の発言権を落とし、信頼性の高い国際金融機関として運営する狙いがあるとみられる。 中国に次ぐ出資比率は、インド、ロシア、韓国の順となる見通しだ。 (asahi = 5-16-15) ◇ ◇ ◇ AIIB 創始メンバー「57 カ国で確定」 中国メディア 中国が設立を呼びかけているアジアインフラ投資銀行 (AIIB) について、中国国営中央テレビは 15 日、「AIIB の『創始メンバー国』が 57 カ国で確定した」と報じた。 中国財務省も同日、公式ホームページで、新たに南アフリカやイスラエルなどが加わり、創始メンバー国が 57 カ国に増えたと公表した。 AIIB は日米が参加を見送った一方、その他のアジア各国や欧州の主要国がことごとく参加。 南アフリカの参加で、新興国の代表格「BRICS」 5 カ国も勢ぞろいした。 中国側は 15 日を、3 月末に申請を締め切った創始メンバー国が確定する日としていた。(北京 = 斎藤徳彦、asahi = 4-15-15) ◇ ◇ ◇ 「中国の動き過小評価」 … アジア投銀対応で批判 中国主導で設立準備が進む「アジアインフラ投資銀行 (AIIB)」を巡り、日本政府の対応が後手に回ったのではないかとして、首相官邸や与野党から、財務省や外務省の見通しの甘さを批判する声が出ている。 AIIB に対し、日本政府はこれまで一貫して距離を置き、政府・与党での本格的な議論をしてこなかった。 しかし、仕組み作りに加われる「創設メンバー」の参加が締め切られる 3 月末を前に、先進 7 か国 (G7) の英仏独伊と、オーストラリアが参加を表明し、参加国が約 50 か国に上るなど、AIIB は無視できない存在となった。 このため、安倍首相が 31 日に、自民党に党内議論を行うよう指示。 自民党は 1 日から、外交部会(秋葉賢也部会長)などの合同会議で、AIIB への参加の是非についての議論をスタートした。 7 日からは、有識者の意見聴取を始め、AIIB の定款が決まる 6 月までに方向性を出す方針だ。 党内には、「今までに政府から聞いていた話と違う。 外務省は認識が甘かったのではないか(幹部)」といった不満がくすぶっている。 AIIB が設立されれば、日米が主導するアジア開発銀行 (ADB) と競合することになる。 財務省は ADB 総裁を多く輩出しており、「ADB の影響力低下を懸念するあまり、中国の動きを過小評価したのでは(若手)」との指摘も出ている。 首相周辺も、「財務省も外務省も説明が悪すぎた。 『G7 の国々は入りません』と言っていた」と語っている。 (yomiuri = 4-5-15) ◇ ◇ ◇ AIIB 創立会員国申請締め切り … 日本は参加見送り 中国が主導するアジアインフラ投資銀行 (AIIB) の創立会員国の申請期限である 31 日、日本政府が同行の創立メンバーとして参加しない立場を明らかにした。 日本メディアが報じた。 NHK など日本メディアによると、麻生太郎財務相は同日の記者会見で「(日本は AIIB 参加に対して)極めて慎重な態度を取らざるをえない」と述べた。 麻生財務相は続けて「加盟国を代表する理事会がきちんと審査や個別案件の承認をし、環境、社会に対する影響への配慮が行われるなど、公平なガバナンスが参加の条件だ」として、中国側の説明が不十分であるとの認識を表明した。 日本政府報道官である菅義偉官房長官も同日の記者会見で、AIIB 運営の公正性と透明性確保と関連し、「中国に対して、こうした問題提起をしているが、明確な説明は得られていない」と明らかにした。 菅官房長官は「きょうの時点では、こうしたことが明確になっていないので、日本が参加することはありえない。 政府としては、特定の期限にとらわれることなく、引き続き、関係国と連携しながら中国側に働きかけをしていきたい」と伝えた。 また、菅官房長官は木寺昌人・駐中日本大使が日本が数カ月以内に AIIB に合流する可能性があると述べた英フィナンシャル・タイムズの報道については「全く事実と異なる」と伝えた。 (韓国・中央日報 = 3-31-15) ◇ ◇ ◇ アジア投資銀行、参加ドミノ ブラジル・ロシアに豪州も ![]() 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行 (AIIB) へ参加する動きが 28 日、有力新興国に広がった。 ブラジルとロシアが相次ぎ参加を表明、オーストラリアも続く見通しとなった。 アジアの成長力の魅力や米国優位の国際金融秩序への反感も追い風に、中国の構想に加わる国々が増えている。 ブラジル大統領府は 27 日夜(日本時間 28 日午前)、「中国からの招待に応じ、AIIBの創設メンバーとなる」との短いニュース速報を流した。 ロシアのシュワロフ第 1 副首相は 28 日に中国海南省博鰲(ボアオ)で開幕式があった「ボアオ・アジアフォーラム」で、「プーチン大統領が AIIB への参加を決めたことをお知らせしたい」と発言。 中国政府は、オランダとグルジアも参加すると発表した。 豪州のコールマン金融相も「明日にも参加を正式に表明するだろう」と述べた。 (サンパウロ = 田村剛、モスクワ = 駒木明義、博鰲 = 斎藤徳彦、asahi = 3-28-15) ◇ ◇ ◇ 「西側ルールが最善でない」 AIIB で中国 【北京 = 栗原守】 中国主導で設立準備が進むアジアインフラ投資銀行 (AIIB) を巡って、中国の楼継偉(ロウジーウェイ)財務相は 22 日、「西側が示すルールが最善だとは思わない」などと述べ、現行の国際金融機関とは異なる独自色を出す考えを示した。 楼氏は、北京市内で開かれた経済討論会に出席した。 楼氏は、現行の国際金融機関について「参考にする非常に良い手法もあるが、官僚主義的で煩わしい手法もある」と指摘。 さらに「AIIB は途上国が主導する機関であり、途上国の要求を考慮すべきだ」と述べ、日米が主導するアジア開発銀行 (ADB) などとの違いを強調した。 同席した ADB の中尾武彦総裁は「両銀行は協力できると思うし、アジアのために多くのことを実行できる」と述べ、協力関係を模索する考えを示した。 (yomiuri = 3-23-15) ◇ ◇ ◇ 中国主導のインフラ銀「協議の可能性ある」 麻生財務相 麻生太郎財務相は 20 日の閣議後会見で、中国が設立を呼びかけているアジアインフラ投資銀行 (AIIB) への日本の参加について、融資の審査方法などで透明性が確保された場合には「協議する可能性はある」と述べた。安倍政権幹部が参加の可能性に言及したのは初めて。 AIIB をめぐっては、3 月に入って主要 7 カ国 (G7) のうち英国、ドイツ、フランス、イタリアが参加を表明した。 日本は米国とともに、AIIB の組織運営や融資基準などが不透明として、参加に慎重な姿勢を示してきた。 麻生氏は会見で「AIIB の運営で、だれが融資を決めるのか。審査をきちんとしてもらわないと、国際通貨基金 (IMF) やアジア開発銀行 (ADB) など(の融資)に影響が出る」と指摘。 その上で「そういうことが確保されれば、どういう(出資)割合にしていくか、中に入って協議する可能性はある」とした。 一方で「外交や経済といった意味から慎重に判断したい」とも述べた。 菅義偉官房長官は 20 日の会見で、AIIB について「参加には慎重な立場だ。 麻生大臣も同じ立場で、問題が解消されない限り参加することはありえない趣旨の発言と思う。」と語った。 AIIB は、アジアで不足するインフラ整備の資金を貸し出すことを目的に、中国が今年末の設立をめざす国際金融機関で、米国主導の IMF や世界銀行で十分な発言権がないことへの不満が背景にある。 中国は 3 月末までに参加表明した国を「創始メンバー」として扱う意向を示しており、これまで 30 カ国以上が参加を表明した。 (asahi = 3-20-15) 前 報 (11-9-14) 韓国を提訴へ手続き 禁輸問題、WTO に 水産庁 韓国が福島など 8 県の水産物の輸入を禁止している問題で、水産庁は 21 日、世界貿易機関 (WTO) に提訴する手続きに入ったと発表した。 今後、WTO の協定に基づいて二国間の話し合いに入り、60 日以内に解決できない場合は正式に提訴する方針だ。 韓国は 2013 年 9 月、東京電力福島第一原発の汚染水漏れを受け、福島、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森 8 県の水産物の輸入を禁止した。 日本政府は韓国に輸入禁止を撤回するよう求めてきたが、韓国側が撤回の見通しを示さないことから、提訴の手続きに入ることにした。 (asahi = 5-22-15) 台湾、日本食品規制強化 きょうから 輸入全品に産地証明 日本側は撤回求める
【台北・横尾誠】 台湾当局は 15 日から、東京電力福島第 1 原発事故を理由に、日本から輸入するあらゆる食品に産地証明を義務付ける規制強化策を実施する。 特定地域の水産品などには放射性物質検査を課す。 日本側は「科学的根拠がなく一方的」として撤回を求め、台湾当局との対立が続いており、通関の混乱が懸念される。 台湾の業者にはひとまず輸入を手控える動きがあり、日本食品の輸入が当面滞る可能性もある。 台湾への昨年の農林水産物輸出は 837 億円で香港、米国に次ぐ輸出先。 規制策は 15 日以降の出荷分が対象で、同日に台湾に到着する航空便から対象になる。 日本食品を多く取り扱う台湾の小売業者は「通関が遅れれば生鮮品は売れなくなるので、仕入れは当面控えて様子を見る」と台湾当局の柔軟な運用を期待する。 別の業者は「産地証明の作成コストを誰が負担するのかが問題だ」と語った。 台湾では昨年 9 月、中国ビジネスで成長した大手企業による違法食用油の販売が発覚。 馬英九政権の対応の甘さに批判が集まり、年末の統一地方選で与党の国民党が惨敗する一因になった。 来年 1 月には総統選と立法委員(国会議員)選を控え「食の安全」は政治的に敏感な問題となっている。 台湾はこれまでも福島、茨城、栃木、群馬、千葉の 5 県からの食品輸入を禁じてきた。 今年 3 月に発覚した 5 県産食品の「産地偽装」問題を契機に、一気に規制強化の流れができた。 (西日本新聞 = 5-15-15) 原油・通貨・中国 国際商品低迷、3 つの要因 原油や非鉄金属など国際商品の相場低迷が続いている。 世界の取引所で売買される主要 30 商品は半年前と比べると 23 商品で下落した。 昨年の同じ時期は逆に 22 商品が上昇していた。 国際商品の局面は鏡に映したように反転した。 読み解くキーワードは「原油安」、「通貨安」、「中国減速」。 ■ 原油関連、2 割超の大幅安 半年間で最も値下がりしたのは天然ガスだった。 4 月 28 日時点で、ニューヨーク先物は 100 万 BTU (英国熱量単位) 2.5 ドル。 2014 年 11 月初旬と比べて 4 割安になった。 米国のシェールオイルの増産が続き、副産物として一緒に生産される天然ガスは供給過剰になった。 「2 月に米国が寒波に襲われたにもかかわらず消費も例年並みにとどまった(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)」と相場上昇のきっかけがなかった。 14 年末にはオーストラリアのカーティス(クイーンズランド州)で新規開発案件が動きだした。 今年も同国では新たな開発案件が控えており、過剰な供給は止まらない。 北海ブレント原油やニューヨーク市場の WTI (ウエスト・テキサス・インターミディエート)といった原油関連銘柄は軒並み 20% 以上の大幅な下落になっている。 米国の原油生産量に減少の兆しがみえて、足元で相場は強含んできたが、需給が引き締まるにはまだ時間がかかりそうだ。 ■ 通貨安で増産基調 外為市場でのドル独歩高の状況に、新興国で通貨安を背景にした生産が止まらず、相場を下げる商品も多い。 その代表銘柄がコーヒー豆。 レギュラーコーヒーに使う「アラビカ種」の指標となるニューヨーク先物は現在、1 ポンド 140 セント前後になり、半年間の下落率は原油よりも大きい 27% だった。 生産国であるブラジルは最近 1 年間で通貨レアルが対ドルで 3 割下落した。 昨年、不作に見舞われた生産者は通貨安と好天に恵まれた今年、増産へのアクセルを踏み込む。 同国が輸出ベースで世界シェアの 4 割を占める砂糖も生産意欲は強い。 国際指標のニューヨーク先物は 1 ポンド 13 セント前後で 6 年ぶりの安値圏になった。 現地の生産者団体によると、15 年のサトウキビ生産量は前年を上回るとの見通し。 弱基調の相場が長引きそうだ。 貴金属のプラチナ(白金)も砂糖に構図が似ている。 世界供給の 7 割を生産する南アフリカ共和国は昨年、鉱山のストライキで生産が停滞して鉱山会社の収益が減少した。 ドル建て相場が低迷しても、自国通貨のランド安を好機に鉱山会社は高水準の生産を維持する。 ■ 非鉄金属は中国減速も 非鉄金属で最も下落したのは、はんだなどに使うすず。 足元で指標となるロンドン金属取引所 (LME) の先物価格は 1 トン 1 万 5,700 ドル前後で、半年前から 16% 下落した。 特に主用途の家電向け需要が中国で弱く、相場が反転する足がかりがみえない。 ニッケルは中国需要の鈍化に通貨安のあおりも重なった。 主要生産国であるロシアのルーブル安を背景にした供給増が意識されて売られた。 3 月末には 1 トン 1 万 2,800 ドル前後まで下がり約 6 年ぶりの安値圏に沈んだ。 需要面でも中国で住宅価格が下落して部材に使われるステンレスの引き合いが後退、原料になるニッケルの相場に波及した。 鉱物資源全般が値下がりして「鉱山用建機向けのステンレス需要も弱くなっている(野村証券の大越龍文シニアエコノミスト)」という。 ■ 上昇した銘柄は ・・・ 相場を上げたのは 7 商品だった。 最も上昇したのは東京商品取引所に上場されるシート状の天然ゴムだった。 指標となる「RSS 3 号」は現在、1 キロ 216 円前後と 8% 前後の伸びになった。 主産地であるタイの政府がゴム農家の経営を支えるため、14 年 12 月から買い上げを実施した影響で、強基調の展開になった。 上昇率 2 位の綿花は昨秋に約 5 年ぶりの安値圏まで下落した反動に加え、競合するポリエステル繊維の原料が下げ止まったことでファンドによる買い戻しの動きが強かった。 (筒井恒、nikkei = 5-6-15) アジア開発銀行、融資枠拡大 AIIB と協調融資も アジア開発銀行 (ADB) の中尾武彦総裁は 2 日、アゼルバイジャンの首都バクーでの記者会見で、2017 年に年間融資枠を現在の約 1.5 倍の 200 億ドル(約 2 兆 4 千億円)に拡大すると発表した。 中国主導のアジアインフラ投資銀行 (AIIB) と、協調融資を行う考えも示した。 記者会見は、2 日始まった年次総会にあわせて開かれた。 ADB は市場から追加で資金調達するため、貧困国向けに低利融資などを行うアジア開発基金を自己資本に統合。 信用の裏付けとなる資本力を高め、拡大した融資枠の 8 割をインフラ向けにあてる考えだ。 さらに加盟国からの不満が多い融資手続きの時間の短縮などを検討する。 総会では、加盟 67 カ国・地域にこうした改革姿勢をアピールするねらいがありそうだ。 ADB への出資比率は日本 15.7%、米国 15.6% に対し、国内総生産 (GDP) が日本の約 2 倍の中国は 6.5%。 出資比率に応じて発言力も強まるため、中国など新興国は経済規模に応じた資本構成にするための増資を求めてきた。 しかし、今回の改革に増資は盛り込まれなかった。 (バクー = 都留悦史、asahi = 5-2-15) 成長鈍化の中国、引き続き世界経済のエンジンか - 米に恩恵も 中国の急成長が世界経済をリセッション(景気後退)から救ったが、中国の成長鈍化は世界経済低迷にはつながらない可能性がある。 国際通貨基金 (IMF) によれば、中国は今年 6.8% 成長にとどまり、2017 年には成長率が 6% に低下する見込み。 07 年には 14% あった成長率の半分以下だ。 10 年の 10% も大きく下回る。 世界 2 位の経済大国である中国が現在、世界全体の国内総生産 (GDP) の約 15% を占めることを踏まえれば、中国の減速は確実に世界に影響する。 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ (RBS) の中国担当チーフエコノミスト、ルイス・クイジス氏(香港在勤)は「輸入量が非常に低迷しており、他国に影響している」と指摘する。 オーストラリアやアジアの商品輸出国が最も悪影響を受けているようだ。 だが、それでも中国が引き続き世界経済のエンジンであり続けると考える幾つかの理由がある。 中国経済の規模は 11 兆ドル(約 1,315 兆円)を突破しようとしており、10 年前の 2 兆ドルとは比べものにならない。 キャピタル・エコノミクスのアンドルー・カニンガム氏によると、これは中国が今後 5 年、引き続き世界の成長の 30% を占めることを意味する。 2000 年以降の平均は 28% だった。 ドル換算では、中国が世界のどの経済よりも貢献することになる。 つまり成長は鈍化するかもしれないが、中国は引き続き大きな景気押し上げ要因だということだ。 一部では中国の需要鈍化が歓迎されるかもしれない。 中国は世界の石油の 10% 以上を消費するが、商品輸入国にとってはエネルギーコストの低下は好ましい。 一般的に商品輸入国がエネルギー生産国より多くの支出をすることを考えると、これが景気拡大を支えるはずだ。 スタンダードチャータードの大中華圏経済調査責任者、丁爽氏は中国経済の現代化が他国にとってプラスになるとみている。 中国が金融サービスの拡大を必要としていることから米国はその恩恵にあずかる 1 国になるだろうと分析する。 米アップルが中国の減速を気に留めていないのは確実だ。 1 - 3 月期には大中華圏でのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」の販売が初めて米国を上回った。 ルカ・マエストリ最高財務責任者 (CFO) は今週、「中国の伸び率は世界の多くの地域と比べ相当高い」とブルームバーグに語った。 (Bloomberg = 5-1-15) 習主席「微笑外交」に戦術転換? 経済圏構想に支持訴え 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は 24 日、アジア・アフリカ会議(バンドン会議) 60 周年首脳会議を中心にした一連のインドネシア訪問を終えた。 強硬姿勢を抑え、協調と経済支援を前面に見せる「微笑外交」を展開。 自ら主導するシルクロード経済圏を再現させる「一帯一路」構想への賛同を得ようと、イメージアップに努めているようだ。 「中国は関係各国と共に『一帯一路』建設を進め、アジアインフラ投資銀行 (AIIB) を共に設立し、シルクロード基金の役割を生かすことを願っている。」 習氏は 22 日の首脳会議での演説で、経済圏構想への支持を強く訴えた。 演説ではバンドン会議の歴史やアジア・アフリカ諸国との協力について提案する内容が中心で、歴史認識や海洋権益をめぐる中国の主張は封印した。 国営新華社通信によると、習氏は首脳会議の合間に各国首脳と会談。 22 日には安倍晋三首相のほか、インドネシアのジョコ大統領、ミャンマーのテインセイン大統領と会った。 ジョコ氏とテインセイン氏とは「一帯一路」構想を通じたインフラ建設を話し合った。 23 日にも、イランのロハニ大統領に「一帯一路」構想への協力を求めたほか、カンボジアのフン・セン首相とも会談し、同構想を通じたカンボジア南部の深海港に隣接する「シアヌークビル港経済特別区」の運営協力を提案した。 (バンドン = 倉重奈苗、asahi = 4-25-15) 世界経済、長期低迷のリスクに直面 = IMF 専務理事 【ワシントン】 国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事は 9 日、政策担当者が生産活動の拡大へ向け適切な措置を取っておらず、世界経済は成長低迷や高債務、高失業率が長引くリスクに直面しているとの見解を示した。 ラガルド専務理事はシンクタンクの大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)での講演原稿で、足元の世界経済成長率は過去 30 年間の平均にほぼ一致しているが、高止まりする失業率と高債務、複数の経済大国の成長低迷を克服するには不十分な水準だと述べた。 「新たな低迷局面が『ニュー・リアリティ(新しい現実)』となることを阻止しなければならない」 とし、「あらゆる政策余地と手段を生かさなければならない」と訴えた。 ラガルド専務理事によると、IMF のエコノミスト予想では英米の成長加速とユーロ圏の先行き改善が見込まれている。 一方で、中国やブラジル、ロシアなど主要新興国の多くについて成長見通しが下方修正されている。 14 日に発表される最新の世界経済見通しで、前回 1 月の見通しが更新される予定だ。 ラガルド専務理事は、世界経済における金融リスクが高まっているとし、低金利、場合によってはマイナス金利の環境が長期化する中ではなおさらだと語った。 「こういった中では投資家のリスク許容度が上がり、資産価値の過大評価につながり得る」と指摘。 低金利が続けば、生命保険会社や確定給付型年金基金の支払い能力に近い将来に問題が生じる恐れがあるとの懸念を示した。 また、欧州と日本の異次元緩和策を背景にドルが対ユーロと円で急伸しており、激しい為替変動はドル建て債務を抱え商品(コモディティー)輸出収入の減少に見舞われる新興国経済に脅威となるとの見方を示した。 (The Wall Street Journal = 4-10-15) インドの経済成長率、中国を抜いて主要国トップへ 国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事は、インドの来年度(15 年 4 月 - 16 年 3 月)の経済成長率が 7.5% に達し、中国の 7.2% を上回って世界の主要国のトップに立つとの見通しを示した。 IMF は昨年末、16 年のインドの成長率が 6.5% となり、中国の 6.3% を抜くと予想していた。 ただし、国内総生産 (GDP) の規模は 14 年の時点で中国が 10 兆ドル(約 1,200 兆円)を超え、インドの約 2 兆ドルを大幅に上回っている。 ラガルド氏は 16 日、訪問先のインドでの講演で「インドが人口の規模を生かし、世界経済成長の主要な動力源となる時が来ている」と述べた。 同氏はインドの活力の源として、近年の改革と景況感の改善を挙げた。 モディ政権は経済成長を最優先の目標に掲げ、法人税の引き下げやインフラ整備などを進める構えだ。 ラガルド氏によれば、同国の経済規模は 09 年からの 10 年間で 2 倍に拡大し、ロシアとブラジル、インドネシアの 3 カ国の合計を上回る規模になることが予想される。 この背景には、若年層の多い人口構成がある。 12 億 5,000 万人の人口のうち 25 歳未満が約半数を占め、毎年約 1,200 万人が新たに労働力に加わっている。 30 年には同国の人口が中国を抜き、世界一となる見通しだ。 (CNN = 3-24-15) 日欧 EPA 合意へ交渉加速 = 日仏外相 - 防衛相会談も、テロ対策強化 岸田文雄外相は 14 日午後、フランスのファビウス外相と仙台市内のホテルで会談した。 ワーキングランチ形式で行われ、日本と欧州連合 (EU) の経済連携協定 (EPA) について、2015 年中の大筋合意に向けて交渉を加速させることで合意。 日本が取り組む国連安保理改革でも連携を確認した。 両外相は、20 年以降の地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第 21 回締約国会議 (COP21) の成功に向けて協力することを申し合わせた。 同会議はフランスが議長国で、年末にパリで開かれる。 一方、中谷元防衛相はフランスのルドリアン国防相と防衛省で会談し、過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件や仏風刺週刊紙シャルリエブド襲撃事件を踏まえ、テロ対策を強化することで一致。 中谷氏はこの後、記者団に、仏企業がヘリコプターの着艦装置を中国に売却したことに懸念を伝えたことを明らかにした。 (jiji = 3-14-15) 日米欧金融政策の方向の相違、世界経済のリスクに = IMF 専務理事 [ベルリン] 国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事は 11 日、日米欧の中央銀行の金融政策の方向性が異なっていることが、世界経済にとってリスクとなっているとの見解を示した。 ベルリンを訪問中の同専務理事は、米連邦準備理事会 (FRB) が金融政策の正常化に向けて動いていると見られる一方で、日銀と欧州中央銀行 (ECB) は緩和策を継続、もしくは追加的な緩和策を導入していると指摘。 「(各国の)金融政策に起因するリスクが存在している」と述べた。 そのうえで、こうした状態は外国為替相場にも影響を及ぼすとし、資金をドル建てで借り入れた国や企業などが痛手を受ける可能性があるとの見方を示した。 各国・地域の経済情勢についてはユーロ圏は「峠を越した」とし、米国と英国も回復しつつあると評価。 一方、中国の成長は鈍化しつつあるとし、ロシアは弱体化していると指摘した。 (Reuters = 3-12-15) 世界経済の「時限爆弾」は日本、ギリシャよりも危ない - 中国メディア 2 日、中国メディア・新浪は、金融界の注意は破綻寸前のギリシャに注がれているが、世界 3 位の経済大国・日本の方が世界経済により大きな影響力を持つことから、さらに危険な「時限爆弾」だと指摘した。 ユーロ圏財務相会合でギリシャに対する支援策が協議されていると伝えられるなど、ギリシャ問題が注目されている。 しかし、ギリシャは経済規模が米国のルイジアナ州に相当とそれほど大きくなく、ユーロ圏から離脱しても影響は限定的になるとみられている。 しかし、日本経済の影響力はギリシャを大きく上回る。 コロンビア大学の経済学者はある座談会で、日本政府が消費税を 8% から 15% に引き上げたとしても、日本は 2021 - 2023 年には財政危機に陥ると予測した。 高齢化にともない、貯蓄率が下がり、国民は政府の巨額の債務を支えきれなくなるとしている。 ポール・クルーグマン氏などの経済学者は、日本の経済成長の停滞とデフレ問題はすでに極めて厳しい状況にあるとしている。 労働生産性の低下と人口問題から、現在の日本の経済成長率は上限に近いという見方は正しいだろう。 同様に生産性や高齢化の問題を抱える欧米各国にとって、日本の情勢は自国の経済の行く末を見据える材料になると捉えられている。 (RecordChina = 3-3-15) 陶磁器・温泉 … 「日本ブランド」投資の的 背景に円安 陶磁器や農産物、温泉。 外国人に人気がある「日本ブランド」の関連企業を、国内外のファンドが相次いで買収している。 円安や日本文化への関心の高まりを追い風に、業績を伸ばせるとの思惑がある。 陶磁器を売る京都の「たち吉」。 販売が振るわず債務超過に陥った創業 260 年余りの老舗を、東京の投資ファンド「ニューホライズンキャピタル」が実質的に買収する。 11 億円を投じてつくった新会社に 4 月から事業を移す。 ファンドの安東泰志社長は「日本に来る外国人の間で認知度があり品質管理もしっかりしている。 世界最高の品質を前面に出してマーケティングしていく。」 2014 年 3 月期の売上高 46 億円のうち、中国の百貨店などでの海外販売は 1% に満たない数千万円。 これを「3 - 5 年で 10 倍以上にしたい」という。 日本企業を国内外の投資会社が買う動きは活発だ。 企業の買収や合併に助言するレコフによると、14 年は出資の拡大なども含めて 360 件。 前年の 1.5 倍にのぼる。 世界的な金融緩和でカネ余りが続き、資金を集めやすい。 投資会社はブランド力や技術力がある企業の経営を立て直し、ほかの企業に売ったり株式を上場させたりして、利益を得る。 食やアニメも含めて日本文化への関心は世界的に高まっている。 そこで魅力ある投資対象の一つとして「日本ブランド」が浮上している。 海外のファンドも動く。 米大手「ベインキャピタル」はキノコ生産大手の「雪国まいたけ」の株式公開買い付け (TOB) を 24 日に始めた。 買収額は最大で約 95 億円にのぼる。 国内のキノコ消費量は頭打ちだが、雪国まいたけは本社がある新潟県だけでなく、成長が見込める中国でも生産を始めている。 ベインは「独自技術があり、売り上げを大きく増やせる可能性がある(広報)」とみており、ロシアや東欧の市場開拓もめざす。 雪国まいたけは TOB に賛同しており、同社の東証 2 部への上場は廃止になる見込み。 ベインは直接経営に携わり、企業価値を高めたうえで再上場をめざす。 ベインは、温泉旅館や温浴施設を全国 29 カ所で営む「大江戸温泉ホールディングス」も 3 月に買収する。 負債を含む買収総額は約 500 億円。 20 年の東京五輪に向け、海外からの客が増えると見込む。 施設は東北から四国まで広がり、東京お台場大江戸温泉物語(東京都江東区)や温泉宿の下呂(岐阜県下呂市)、箕面観光ホテル(大阪府箕面市)などを手がける。 九州や北海道での温泉旅館の新たな買収や海外進出も狙う。 株式上場もめざす。 SMBC 日興証券の圷(あくつ)正嗣氏は「海外のファンドは円安で日本企業を割安に買える。 日本が中国などのアジア市場に近いことも大きい。」と話す。(山村哲史、神山純一、下山祐治、asahi = 2-28-15) 世界経済成長は脆弱、アジア新興国に試練 = 篠原 IMF 副専務理事 [東京] 国際通貨基金 (IMF) の篠原尚之副専務理事は 18 日、都内で開かれたセミナーで、世界経済の成長はまだら模様で脆弱であり、アジア新興国の試練になっているとの認識を示した。 投資の弱さをアジア新興国の主なマイナス要因に挙げた。 篠原氏は、原油価格下落によるプラス効果があるにもかかわらず、中国、ロシア、ユーロ圏、日本の成長見通し悪化で世界の経済成長が低迷する可能性に直面している、と指摘した。 アジア新興国におけるドル化進行に警鐘を鳴らし、是正に向け検討が必要との見解を示した。 (Reuters = 2-18-15) 世界の債務総額、金融危機後は 57 兆ドル増 = マッキンゼー 調査会社マッキンゼーが 9 日発表した報告書によると、世界全体の債務総額(政府、家計、民間企業の債務)は世界金融危機の後、57 兆ドル(約 6,760 兆円)もの急激な増加を示した。 金融危機が発生した場合、たいていはその後に債務者が資金調達のため借り入れ増を余儀なくされるため、債務額は増える。 だが、その後はデレバレッジ(負債圧縮)が見られるものだ。 同社のリチャード・ドッブス氏によると、今回(の危機後)は、まだこのデレバレッジが実現していない。 ドッブス氏は「今回の金融危機後を見ると債務が全く減っておらず、増えている」としたうえ、「世界全体で債務が増えている。 このため、人々は安心して支出を維持することができた。 各国政府も緊縮策を緩和することができた。 だが、この状況がどこまで続くかはっきりしない段階にまで達している。」と述べた。 要旨と全文からなるこの報告書は、今回の危機後すでにデレバレッジが進んでいるとみていた向きにとって意外な内容となった。 報告は「主要国の債務は対国内総生産 (GDP)比で、2007 年より高まった」と指摘する。 同比率は危機以降 17% 上昇している。 つまり、過去 8 年の各国債務額は GDP 成長率を 17 ポイント上回るペースで拡大したことになる。 これは重要なポイントだ。 債務の増加額や債務規模そのものはさほど重要ではない。 問題は返済力だ。 ドッブス氏は「一部の国にとって本質的な問題は、特に高齢化が進んでいることだ」とし、債務額が増加する一方で労働人口が減少していることは、「最悪の組み合わせだ」と述べた。 2014 年の世界債務総額は 199 兆ドル、対 GDP 比で 286% に達した。 07 年は 142 兆ドル、対 GDP 比 269% だった。 債務増の最大の原因は中国だ。 中国の債務は 07 年の 7 兆ドルに対し、14 年には 4 倍の 28 兆ドルに膨らんだ。 ドッブス氏は「中国関連のリスクが増えているとみている」としたうえで、住宅バブル破綻前の米国ほどではないが、憂慮すべき状況だと指摘している。 セクター別では、政府部門が 25 兆ドル増と債務拡大に大きく影響した。 このうち 4 分の 3 は先進国だった。 金融部門ではデレバレッジが進んだ。 同社は、同部門が直近の金融危機の中心だった点を踏まえると、これは朗報だとしている。 しかし、「ノンバンク」の信用残高(社債とノンバンクの融資)は増えている。 金融危機の打撃を大きく受けた一部の国(米国、英国、スペイン、アイルランド)では、家計部門の債務が減ったが、それ以外の多くの国(全体の 80%)では、家計の債務が増え続けている。 この状況は問題なのだろうか。 確かに厄介だろうが、今後の展開を正確に予測するのは難しい。 ドッブス氏はこれを、ガス栓が開いて部屋全体にガスが充満している台所にたとえている。 つまり、誰かが窓を開けてガスを排出するか、それとも、誰かが電気のスイッチを入れて爆発するかのいずれかだというのだ。 (The Wall Street Journal = 2-10-15) スイス中銀がフラン上限廃止、「持続不可能だった」 [チューリヒ] スイス国立銀行(中央銀行)は 15 日、過去 3 年にわたり維持してきたスイスフランの対ユーロの上限、1 ユーロ = 1.20 フランを廃止すると発表した。 発表を受けてスイスフランは 30% 近く急騰、通貨高による輸出下押しへの懸念からスイス株は急落した。 スイス中銀のダンティーヌ副総裁は 12 日、フラン上限について、今後も主要な金融政策手段、との認識を示したばかり。 市場は完全に意表を突かれた形だ。 今回の発表は、量的緩和 (QE) 策が発表されるとの観測が高まっている欧州中央銀行 (ECB) 理事会の開催を1 週間後に控えたタイミング。 実際に ECB が QE に乗り出せば、スイス中銀は上限維持に向け継続的な市場介入を余儀なくされる可能性があった。 ジョルダン総裁は会見で、決定は「パニック的な反応」ではなかったとし、持続不可能だったため上限を撤廃したと説明した。 その上で「このような金融政策の解除を決定した際には、市場の不意を突く必要がある」とした。 中銀はあわせて、中銀預金金利をマイナス 0.25% からマイナス 0.75% に引き下げた。ジョルダン総裁は一段の引き下げが時間とともに、スイスフランに対する上昇圧力を和らげる一助となるとしている。 発表の数分後、スイスフランは対ユーロでパリティー(等価水準)を突破し、一時 1 ユーロ = 0.8052 フランまで上昇。 その後は上げ幅を縮小し 1.0255 フランで取引された。 ジョルダン総裁は「現在の為替レートは、スイスフランが著しく過大評価されていることを示している」と指摘。 市場は予想外の措置には過剰反応する傾向があり、スイスフランは「いずれより持続可能な水準に落ち着く」との見方を示した。 スイス中銀は景気悪化とデフレ懸念を背景に、2011 年 9 月 6 日にフラン上限を導入。 その当時は、ユーロ圏の債務危機を背景に、安全通貨とされるフラン買いが活発化、フランは過去最高値をつけていた。 中銀は「この例外的、かつ一時的な措置は、スイス経済を深刻な打撃から守った。 スイスフランは依然として高水準だが、上限導入以来、過大評価は是正された」との声明を発表した。 スイス中銀はまた、3 カ月物 LIBOR (ロンドン銀行間取引金利)目標レンジをマイナス 1.25% - マイナス 0.25% とした。 従来のレンジは、マイナス 0.75% - プラス 0.25% となっていた。 サラシンのエコノミスト、アレッサンドロ・ビー氏は「中銀は常に上限を維持するとの立場を示してきており、今回の撤廃は中銀に対する信頼感を損ねるだろう」と指摘。 「非常にリスキーな措置。 市場が極端な動きを見せたことでも明らかだ」と述べた。 スイス株式市場は一時 10% を超える下げとなった。 銀行大手 UBS、クレディ・スイスはいずれも約 10% 下落。 時計ブランド「カルティエ」などを傘下に持つリシュモン、時計大手スウォッチは軒並み 15% 程度急落している。 スウォッチのニック・ハイエック最高経営責任者 (CEO) は、中銀の決定は「スイスの輸出や観光産業、最終的には経済全体への津波になる」と述べ、経済に打撃が及ぶとの懸念を示した。 一方、格付け会社のフィッチ・レーティングスのソブリン格付けマネジングディレクター、エド・パーカー氏は「金融政策の変更はスイス経済の先行きを見極める上で重大なイベントだが、現時点では格付けに関する問題ではない」とし、今回の上限撤廃がスイスの最高格付けに影響を与えることはないとの認識を示した。 (Reuters = 1-16-15) |