レンズつけて寝れば視力改善 矯正法、トラブル懸念も

【錦光山雅子】 夜、専用のコンタクトレンズをつけて寝れば、翌日、裸眼の視力が改善している。 「オルソケラトロジー(角膜矯正法、オルソ)」という視力矯正法の利用者が増えている。 子供の利用が中心だが、レンズをきちんと洗うなど適切な管理をしないと、目にトラブルが起こる心配もあり、注意が必要だ。

利用者の 6 割、未成年

東京都港区の高校 1 年、阿保迅(あぼはやと)さん (16) は今年 3 月から、オルソレンズをつけて寝ている。 両目の裸眼視力は 0.2 ほどだったが、日中の裸眼視力は 1.5 になった。 「バスケットボール部で思い切ってプレーできるし、授業で板書の写し間違いがなくなった。」

近視は、眼球の奥行き(眼軸長)が伸びたり目の屈折率が強すぎたりして、網膜に焦点が合わない状態を指す。 夜、オルソレンズを目につけて寝ると、レンズの特殊なカーブで角膜の形が平らに近づき、屈折率が下がる。 そうすることで網膜に焦点が合い、近視が一時的に改善される。 朝、外した後も角膜の形はすぐに戻らないので、夜まで裸眼で不自由なく過ごせる。 ただ、効果は個人差があり、視力が夕方には落ちる人もいる。 その場合、度が弱めの眼鏡などで視力を補う。

オルソは 1960 年代、米国で開発され、02 年に米食品医薬品局 (FDA) がレンズを承認した。 日本では 09 年、厚生労働省が医療機器として初めて承認。 現在 3 社が製造販売している。 昨年 7 月からレンズを販売しているユニバーサルビュー(東京都)は「取り扱い医療機関が今年 6 月末の 40 カ所から、現在は 90 カ所へ倍増した。 さらに普及していくだろう。」という。

日本コンタクトレンズ学会は 09 年、オルソの治療指針をまとめた。 その際、本人の十分な判断と同意を得られるという趣旨から「使用は 20 歳以上」とした。 だが、実際には利用者は未成年が多い。 筑波大医学医療系の平岡孝浩講師が、メーカーがレンズを卸している 9 眼科医院で調べると、利用者の平均年齢は 20.9 歳で、未成年が 57% だった。

医師の指導でケアを

オルソは、子供の近視の進行を遅らせるとの報告がある。 平岡さんたちは 5 年間、8 - 12 歳の子供 43 人を対象に、近視の進み具合が、この手法のレンズと眼鏡で違うか調べた。 この結果、近視につながる眼軸長の伸びは、オルソを受けた子の方が 3 割ほど抑制できた。 京都府立医大による 2 年間の追跡調査でも約 5 割の抑制が確認されたほか、海外の論文でも同様の伸び抑制が確認されている。

平岡さんは「強い近視は、網膜剥離(はくり)など失明リスクの高い病気と関係があると考えられている。 オルソが子供に広まれば、こうしたリスクを将来、減らせるかもしれない。」と話す。 京都府立医大、慶応大、愛媛大は今年から未成年を対象に安全性を調べる臨床研究を始めた。 治療指針の「20 歳以上」の見直しにつながるデータ蓄積を目指す。

ただ、レンズを使うため、管理が不適切だと、健康上のトラブルが起きる心配がある。 海外ではレンズで角膜が傷つき、細菌に感染して失明に至る例も複数報告されている。 京都府立医大の稗田牧講師は「子供だけにレンズの管理を任せず、親が管理してリスクを減らして欲しい」と話す。 同大が子供 16 人を 5 年間調べたところ、深刻な合併症は無かったが、黒目の表面の傷やアレルギー性結膜炎などのトラブルが数件あったという。

オルソを扱えるのは、日本眼科学会の講習会を受けた眼科専門医に限られている。 順天堂大の土至田宏准教授は「見えにくいからと日中もソフトコンタクトレンズをつけるなど、自己判断で偏った使い方をして病気になった例もある。 専門医の指導の下で、正しいケア方法でレンズを洗うなど、きちんと管理することが大前提。」と話している。 (asahi = 11-19-13)


酒飲まないのに … 生活習慣病原因で脂肪肝炎 400 万人

B 型、C 型といったウイルスや、大量の飲酒が原因で肝炎になることはよく知られている。 しかし、国内の肝炎患者で最も多いのは、飲酒量が多くない人に起きる「非アルコール性脂肪肝炎 (NASH)」であることはあまり知られていない。 推定患者数は約 400 万人に上る。

大阪府済生会吹田病院(大阪府吹田市)は、肝臓病研究では国内の第一人者で院長の 岡上武 (69) が中心となって、NASH の先進的な治療や研究に取り組んでいる。 NASH の存在は、米国では、30 年以上前から報告されている。 それまでは、肝臓に過剰な中性脂肪がたまって起きる脂肪肝炎になるのは大量に飲酒する人だけと考えられてきた。

全く飲まない人や、飲んでも 1 日にビール中瓶(500m・リットル) 1 本以下の人でも、脂肪肝炎になることが明らかになり、米国の医師が、非アルコール性脂肪肝炎を表す英語 (non-alcoholic steatohepatitis) の頭文字を取って NASH と名付けた。

2007 年まで京都府立医科大教授として肝臓病の研究をしてきた岡上は、2000 年代に入ってから「日本でも、NASH はいずれ大きな問題になると確信していた」という。 NASH の大半は、肥満や高血圧、糖尿病といった生活習慣病に起因していることが米国の調査でわかっている。 食生活の欧米化が定着した日本で NASH の患者が増えてくるのは必然だと考えたからだ。

岡上は、厚生労働省が 08 年に発足させた NASH 研究班の班長になり、実態の解明や遺伝子解析などの研究を主導。 大学退職後、院長として赴任した同病院には、関西一円のほか四国や九州からも患者が集まり、全国最多の約 600 人の NASH やその予備軍の脂肪肝患者を診ている。

京都府長岡京市の歯科医の男性 (71) は昨年 11 月、心臓の画像診断を受けた際、偶然、肝臓の一部に異常な膨らみが見つかり、岡上に NASH が進行してできたがんと診断された。 2 か月後に肝臓の約 3 分の 2 を摘出する手術を受けた。

男性は 30 代の頃、運動不足などによる軽い脂肪肝だと指摘されたことがあったが、身長 175 センチ、体重 73 キロで肥満ではなく、酒もたしなむ程度だった。 肝機能などを示す AST (GOT) や ALT (GPT) の数値もほぼ正常値だった。 現在は、仕事に復帰している男性は、「自分が肝炎、肝臓がんになるなんて思いもよらなかった。 『まさか』の連続だった。」と振り返る。

肝臓は、病気が進行してもほとんど症状が出ないことから、「沈黙の臓器」と呼ばれる。 このため、かなり悪化してから病気に気づくケースも多い。 NASH かどうかは、専門医による血液検査や超音波検査で大体分かるが、詳細を知るには、局所麻酔で右の脇腹から針を刺し、肝臓組織を採取することが必要になる。

NASH と診断されれば、原因となる生活習慣病の改善を目指し、服薬や運動療法、食事療法を行うのが一般的だ。 肝臓に鉄分が多く蓄積しているなら、鉄分による肝炎の進行を抑えるため、血液を抜く治療を行うこともある。 現在、NASH そのものの特効薬はないが、昨年 11 月から進行を防ぐ新薬の治験が同病院を中心に、全国約 80 施設で始まっている。 4 - 5 年先の実用化に向けて期待が高まっている。

岡上は「早期発見すれば進行を防ぎやすいが、自覚のないまま見過ごされることが多い。 生活習慣病の人は、一度は専門医の診察を受けてほしい」と話す。 (敬称略、萩原隆史、yomiuri = 11-18-13)

厚生労働省などの推計によると、NASH の患者約 400 万人に対し、B、C 型を合わせたウイルス性肝炎患者は約 300 万人で、アルコール性肝障害患者は約 250 万人とされる。

大阪府済生会吹田病院では 2007 - 12 年の NASH とその予備軍の脂肪肝患者、計 550 人のデータを解析。 男性は年齢にかかわらず多く、女性は 50 代後半から急に増える傾向にある。 患者の約 8 割が脂質異常症を患い、肥満や高血圧、糖尿病といった他の生活習慣病を持つ割合も約 4 - 7 割と高かった。 日本人の約 2 割は NASH になりやすく、進行しやすい体質ということも明らかになっている。 岡上病院長は「患者の約 5% は生活習慣病のない健康な人。 こうした人には遺伝的な要素も大きく関係しているのではないか。」と指摘する。


がん患者の乳房再建、きれいに早く 切除前に型取り

【岡崎明子】 がんで乳房を全摘した患者に対し、よりきれいに短時間で乳房を再建する方法を、国立がん研究センターの研究班が開発した。 切除する前にシリコーン製の乳房の型を作っておくという方法だ。 経験が浅い形成外科医でも簡単にでき、技術の標準化につながる。

開発したのは、研究班のメンバーで、市立四日市病院(三重県)の武石明精形成外科部長。 愛知県がんセンターや静岡がんセンターなどと一緒に、多施設共同研究を進めている。 従来の再建法では、患者のおなかから脂肪を取り出し、医師が「勘」で乳房の形に整えてから挿入する。 全身麻酔中の患者の上半身を起こしたり寝かしたりを繰り返しながら、膨らみや角度などを調整してきた。 (asahi = 11-18-13)


摘出難しい脳腫瘍に新手術法 再発率が激減 大阪市立大

【野中良祐】 脳腫瘍(しゅよう)の一種で、全摘出が難しく再発しやすい「頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)」について、大阪市立大のグループは独自開発した手術法で、従来 40% 以上だった再発率を 13.5% に抑えることに成功したと発表した。 脳神経外科の大畑建治教授は「手術成績を飛躍的に向上させることができた」と話している。

頭蓋咽頭腫は、脳の中心に近い視床下部や脳幹の周辺にでき、患者数は年間約 700 人。 多くは良性だが、周囲の神経や組織を圧迫し、視力やホルモン分泌に障害をもたらす。 大畑教授によると、通常の手術は顔の前などの骨を除いて腫瘍を摘出する。 だが、途中には神経や動脈が通り、「おりの中の物を、おりに触れずに取り出す手術」のため、取り残した腫瘍が再び大きくなったり、神経などを傷つけたりするリスクがあるという。 (asahi = 11-16-13)


女子栄養大でノロウイルスか 146 人体調不良 埼玉

女子栄養大坂戸キャンパス(埼玉県坂戸市)で、学生と教職員計 146 人が 13 日以降、体調不良を訴えていることがわかった。 うち約 40 人が病院で診察を受け、1 人は入院中という。 同大は「調査に入った県坂戸保健所から 15 日、ノロウイルスによる食中毒との説明を受けた」としており、集団食中毒の可能性もある。

同大によると、13 日夕、学生が学内の保健センターに下痢や吐き気などの症状を訴えた。 14 日も似た症状を訴える学生が相次いだ。 学食で食事後に発症した学生が多かったことから、保健所に届け出たという。 学食以外で食べた人もいて、食中毒の原因とみられる料理は特定できていないという。 大学は来週まで、学食や調理実習のほか、通常の授業も休む方針という。 (asahi = 11-16-13)


iPS 作製効率、最大 100 倍に 山中教授らが新手法 がん化リスクも低減

さまざまな臓器の細胞に変化できる iPS 細胞(人工多能性幹細胞)の開発者である京都大 iPS 細胞研究所長の山中伸弥教授らのグループが、人間の細胞にある特定の「マイクロ RNA」の働きを抑えることで、iPS 細胞の作製効率を 10 - 100 倍向上させる新手法を、米グラッドストーン研究所との共同研究で発見したことが分かった。 新手法は、細胞がん化のリスクを減らす効果もあるという。 研究成果が米科学誌セル・ステム・セル(電子版)に 15 日掲載される。

マイクロ RNA は、DNA の指示でタンパク質合成に関わる遺伝物質「リボ核酸 (RNA)」の一種。 細胞の初期化や分化に影響を与えるが、詳しい働きなどは分かっていなかった。

グラッドストーン研究所の上席研究員でもある山中教授のチームは、人間の皮膚細胞を使って実験。 皮膚細胞から iPS 細胞を作る際、従来使ってきた 4 つの遺伝子とともに、マイクロ RNA の一種「let7」の働きを抑える別の RNA などを加えたところ、iPS 細胞の作製効率が従来比で 10 - 100 倍向上した。

let7 が細胞初期化を促すタンパク質「LIN41」の働きを妨げていることを解明。 新手法では、iPS 細胞作製で課題となる細胞がん化の要因にもなる遺伝子を使わなくても、効率を維持できた。 研究に参加したグラッドストーン研究所の林洋平研究員は「細胞の初期化にブレーキをかける let7 を抑えることで、iPS 細胞の作製効率が飛躍的に向上した。 安全性を検証し、さらにメカニズムの解明を進めたい。」としている。 (sankei = 11-15-13)


乳房温存手術後の放射線、強い 1 回でも効果 乳がん治療

【岡崎明子】 乳がんの乳房温存手術の後に、弱い放射線を繰り返し受ける一般的な治療法と比べて、手術中か術後に強い放射線を 1 回受ける方法でも、再発や死亡のリスクは変わらないことが、国際チームの共同臨床試験でわかった。 日本では、仕事や子育てなどに忙しい 40 - 50 代で乳がんを発症する人が多く、1 回の治療で済めば、負担が小さくなると期待される。

英医学誌ランセットに論文が掲載された。 2000 - 12 年に 11 カ国で乳がんの温存手術を受けた 45 歳以上の女性約 3,500 人を対象に調べた。 数週間かけて、約 20 回にわたり計約 50 グレイの放射線を乳房全体にあてる標準的な治療と、手術中か術後に 1 回、切除部分に 20 0グレイと強い放射線をあてる新しい治療法で比べると、死亡率も、温存した胸に 5 年以内に再発した率も違いがなかった。 乳がん以外の原因による死亡率は、従来法の 3.5% に対し、1 回の方法は 1.4% と低かった。

新しい治療法と同様に、強い放射線を 3 - 4 回と短期間だけあてる方法は、日本でも臨床研究が進められている。 研究チームは「手術中の照射はメリットが大きく、治療の選択肢の一つになりうる」と分析した。 (asahi = 11-14-13)


初診料加算、1 千円から 4 千円に増額へ 名古屋市大病院

名古屋市立大病院(瑞穂区)は、医療機関の紹介状を持たない患者が払う初診料の加算額を、いまの 1 千円から来年 4 月に 4 千円に上げる方針を決めた。 大病院で軽い症状の患者を減らし、高度医療を提供する役割を強める政府の方針をふまえた。 市は関連の議案を定例の 11 月議会に出す。

市立大病院は、難しい手術や最先端医療を担う特定機能病院に指定されているが、1 日あたりの外来患者は 1,860 人と 5 年間で 219 人増加。 診療所で済む軽い症状で訪れる患者もおり、初診の約半数が紹介状を持っていないという。

近くの名古屋大病院や愛知医大病院でも、紹介状がない場合の初診料加算額は 4 千円。 市立大病院は、引き上げにより紹介状がない初診患者が 2 割減るとみる。 「まず診療所などのかかりつけ医に診てもらい、高度、専門的な医療は当院が担うというすみ分けを促したい」と説明する。 (asahi = 11-14-13)


看護師の医療行為解禁へ 研修受講で気管挿管など可能に

【辻外記子】 厚生労働省は 8 日、医師の具体的な指示がなくても、看護師が一部の医療行為ができる制度の創設を決めた。 国指定の研修を修了すれば自身の判断で、気管挿管や脱水患者への点滴などをできるようにする。 医師がいなくても患者の変化に素早く対応できると期待される。

この日の審議会の部会で最終案が了承された。 次期通常国会に、保健師助産師看護師法の改正案を提出。 対象の行為や研修内容を確定させ、2015 年度の施行を目指す。

最終案は、床ずれで壊死した部分の切除や点滴中の高カロリー輸液量の調整、抗不安薬をのませるなど、医師が主にしてきた 41 の行為を「特定行為」と位置づけた。 研修を受けた看護師は、医師が事前に示した手順に従い、自身の判断でできるようにする。 一般の看護師も、医師の具体的な指示があればできる、と明確にする。 当初検討された「特定看護師」という資格は、日本医師会などの反対で見送られた。 (asahi = 11-9-13)


口唇ヘルペス、アルツハイマー病発症に関係 慈恵医大

【中村通子】 疲れると現れる「口唇ヘルペス」の原因である単純ヘルペスウイルスが、アルツハイマー病発症に関わっていることが慈恵医大の研究で分かった。 症状が出る前に診断できる検査法開発につながる可能性がある。 10 日から神戸市で始まる日本ウイルス学会で発表する。

単純ヘルペスウイルスは、感染すると脳から顔面につながる三叉(さんさ)神経にすみつく。 50 歳以上では感染率が 7 割を超す。 普段はおとなしいが、過労や過度なストレスで再活性化し、口の周りに水ぶくれをつくる。 アルツハイマー病との関係が疑われていたが、はっきりしていなかった。 (asahi = 11-9-13)


トランス脂肪酸、米が使用禁止 「心臓発作を予防」

米食品医薬品局 (FDA) は 7 日、一部の菓子類やマーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の使用を段階的に禁止すると発表した。 この措置により「年間 2 万件の心臓発作を予防でき、心臓疾患による死者を 7 千人減らせる」としている。 FDA はトランス脂肪酸を「食用として安全と認められない」と暫定的に判断した。 60 日間の意見聴取期間を経てこの判断が最終的に確定すれば、許可を受けた場合を除き使用を原則禁止する。 食品業界には激変緩和措置として一定の猶予期間を与える。

FDA によると、トランス脂肪酸は血中の悪玉コレステロールを増加させ、心臓疾患のリスクを高めるという。 米国の食品業界や飲食店ではすでに使用をやめる動きが広がっており、米国民のトランス脂肪酸摂取量は 2003 年の 1 日当たり 4.6 グラムから 12 年には 1 グラムに減った。 (ワシントン = 芦塚智子、nikkei = 11-8-13)


育毛を促す遺伝子発見 米研究チーム、傷の治癒に効果も

【大岩ゆり】 毛の成長を促す遺伝子を米ハーバード大などの研究チームが発見し、マウスの実験で確認した。 傷の治癒を促進する効果もあり、この遺伝子からできるたんぱく質と同じ働きの試薬でも同様の効果が得られた。 研究チームは「研究を進め、薬剤の開発に役立てたい」としている。 7 日付の米科学誌セルに掲載された。

この遺伝子は「Lin28a」。 ヒトも含め哺乳類では胎児期に盛んに働くが、生後はほとんど働かない。 研究チームは、生後もこの遺伝子が働くように操作したマウスと通常のマウスの背中の毛をそった。 1 週間後、通常マウスはまだほとんど毛が生えていないのに、遺伝子操作マウスはほぼ元の状態に戻っていた。 毛穴の数や大きさは変化しておらず、遺伝子の作るたんぱく質が毛の成長を早めていることがわかった。 (asahi = 11-8-13)


進行膵がんに新治療薬 = 3 年後実用化へ臨床試験 - 札幌医大

札幌医科大は 5 日、進行した膵臓(すいぞう)がんの治療薬として開発したワクチン「サバイビン 2B」の臨床試験を始めたと発表した。 進行膵臓がんは致死率が高く、有効な治療法が確立されていない。 同大は早ければ 3 年後の実用化を目指している。

臨床試験は、同大の佐藤昇志教授を中心とするグループが実施。 昨年 8 月から膵臓がんや胃がんの患者ら計 20 人を対象に安全性を確認し、今年 10 月 16 日から進行膵臓がん患者 71 人を対象に本格的に始めた。 サバイビン 2B は 9 個のアミノ酸で構成されるペプチドワクチン。 佐藤教授らは、ワクチンを皮下注射すれば、がん細胞を攻撃するリンパ球が増え、活性化されて膵臓がんの治療に効果があるとみている。 (jiji = 11-5-13)


アルツハイマー研究、根治薬・仕組み解明へ期待

厚生労働省の研究班(代表・森啓ひろし大阪市大教授)は、今月から、アルツハイマー型認知症の予防や根本治療薬の開発につながる調査研究に乗り出す。 アルツハイマー型認知症をほぼ確実に発症する家族性アルツハイマー病の患者や家族の実態調査を実施。 この病気の遺伝子を持つ人を対象にした国際研究「DIAN (ダイアン)」に参加することで、アルツハイマー型認知症全体の発症メカニズムの解明や創薬が期待される。

全国の認知症高齢者は、推計で約 462 万人。 主な認知症には数種類あるが、記憶障害が主症状のアルツハイマー型が最も多く、全体の約 7 割を占める。 海外の研究によれば、家族性アルツハイマー病の遺伝子を持つ人のほぼ全員が発症し、発症の時期も 40 歳代、50 歳代などが多い。 世界では、遺伝子を持つ家系は約 520 見つかっているが、日本での実態は不明だ。 (yomiuri = 11-4-13)


食事制限・運動なしでメタボ治療 … マウスで効果

肥満が原因で発症する糖尿病やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を治療する薬の候補物質を見つけたと、東京大の門脇孝教授(糖尿病・代謝内科学)らの研究チームが発表した。 心臓病の合併など様々な事情で運動や食事制限ができない人に朗報で、飲み薬を目指して 5 年以内に臨床試験を始める。 研究成果は 31 日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。

肥満の人では、アディポネクチンという「善玉ホルモン」の分泌が減り、糖尿病やメタボにつながることが知られている。 アディポネクチンを薬にできれば糖尿病などを改善できると期待されるが、構造が複雑なため、飲み薬としての量産は難しかった。

研究チームは、飲み薬として使えそうな数百の化学物質を試し、アディポネクチンと似た働きをする物質を発見。 脂肪の多い食事で太って糖尿病になったマウスに物質を飲ませて、効果を検証した。 その結果、マウスの食べる量や体重に変化はなかったものの、血糖値や中性脂肪の濃度が下がった。 肥満による筋力低下を抑える効果もみられた。 (yomiuri = 10-31-13)


新型インフル、ワクチン生産態勢整わず 厚労省再検討へ

新型インフルエンザ発生時、半年以内に国民全員分のワクチンを生産できる態勢を今年度中に整えるとした国の計画が達成できない見込みになった。 厚生労働省は 24 日、開発事業に応募した 2 社について「条件が合わなかった」と不採択にした。 2,500 万人分の生産態勢が確保できておらず、専門家の会合で対応を検討する。

昨年 11 月、国の助成で生産態勢を整える予定だった 4 社のうち 1 社が、ワクチンの効果が不十分として撤退したため、再公募していた。 半年以内のワクチン製造態勢は政府の行動計画で定められ、厚労省は 2011 年度に新製法の開発事業を開始。 4 社に計約 1,190 億円を支援していた。 残り 3 社は開発を継続中で、計 1 億 500 万人分の態勢は確保できる見込み。 (asahi = 10-25-13)


食材偽装見破ります 生物種判別ソフト、京大が開発

【鍛治信太郎】 DNA から生物の種類を自動的に当てるソフトを京都大のグループがつくった。 食品に含まれる農作物や水産物の偽装を見破ったり、犯罪捜査で遺留品の出所を調べたりといった応用ができるという。 米科学誌プロスワンで 19 日発表した。

京大地球環境学堂などの研究グループは、手に入れた動植物の DNA をデータベースにある DNA と比べ、どの種に似ているか自動的に判定するソフトをつくった。 新種の場合でも、どの科や属に入るか、近い種はどれかなどがわかる。 データベースは日米欧が公開しており、動植物、菌、ウイルスなど約 28 万 8 千種が登録されている。

これまで、動植物の試料で種を決める際、専門家の知識と経験に頼っていたため、間違えたり、人によって結果が違ったりした。 このソフトを使えば誰でも簡単に判定できる。 研究の中心となった田辺晶史さんは「キハダマグロとクロマグロでは値段が全く違うが、食材になってしまうと専門家でも見分けるのは難しい。 この方法なら偽装を見破ることができる。」と話している。 (asahi = 10-22-13)


「赤ちゃん設計」許されるか 根強い批判、予測には限界

【行方史郎 = ワシントン、岡崎明子】 SF の世界の話だったデザイナーベビー。 親の望みによって、子どもの病気のリスクや容姿、知性、芸術・スポーツへの適性や才能を選ぶことは許されるのか。「究極の生命の操作」には根強い批判がある。また、遺伝子の働きは複雑で、いまの遺伝子研究では「赤ちゃんのデザイン」には限界があるのが実情だ。

特許を取得した 23 アンドミーは、利用者の情報をデータベース化した独自の手法で研究を進める。 大学や患者団体との共同研究で、パーキンソン病などに関係する研究成果も発表、自社の個人向け遺伝情報解析サービスにも反映している。 利用者が増えるほど精度も上がる。 米国には個人向けに遺伝子解析を提供する会社が 10 社以上あるが、同社は、情報の信頼性について強みがある。

今回、認められたデザイナーベビーにつながる特許は、これまで同社が蓄積してきた遺伝情報の解析技術を統計的な手法で応用するものだ。 生殖医療技術と組み合わせれば、病気になるリスクを回避したり、親が望む特質を子どもに受け継がせたりすることが可能になるかもしれない。 (asahi = 10-20-13)

◇ ◇ ◇

出生前診断に新手法 費用 8 分の 1、異常発見確率は 8 割

【岡崎明子】 妊娠初期に胎児にダウン症などの染色体異常があるか調べる新たな出生前診断を、昭和大など 6 施設が始める。 妊婦の血液検査と超音波検査を組み合わせた。 今春、国内で始まった新型診断に比べて、費用は 8 分の 1 ですみ、年齢制限も設けないが、異常を見つけられる確率は約 8 割にとどまる。 急速に広がる可能性があり、妊婦への支援や遺伝相談の充実がより重要な課題になる。

計画しているのは、遺伝カウンセリング体制が整っている昭和大(東京)など大学病院を中心に、国立成育医療研究センター(東京)が加わる。 施設内の倫理委員会の承認を受け、早い施設は 10 月中旬以降に始める。 検査を受けた母親や胎児の経過も追い、検査法に問題がないか検証するため、連携して臨床研究の形で行う。 正式に実施が決まれば、参加施設名は公表される見通しだ。

今回の検査は、血液中の特定のたんぱく質の濃度などを測る新しいタイプの「母体血清マーカー」に、超音波で胎児の首の後ろのむくみを測る検査(NT 測定)を組み合わせ、妊婦の年齢を考慮して染色体異常の確率を出す。 妊娠 11 - 14 週で検査が可能で、異常を見つけられる確率(検出率)はダウン症で 83%、18 番目の染色体が 3 本あり、精神遅滞や様々な発育異常が出る 18 トリソミーで 80% という。 (asahi = 10-3-13)

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新型出生前診断 : 陽性判定は 29 件 … 2 人が確定後中絶

妊婦の血液から胎児の 3 種類の染色体異常を判別する新型出生前診断が、開始から 3 カ月間に全国 22 施設で 1,534 件実施され、そのうち 29 件 (1.9%) が陽性(異常の可能性が高い)との判定結果だったことが、同診断の研究組織「NIPT コンソーシアム」の調査で分かった。 うち少なくとも 2 人が、羊水検査による確定診断を経て人工妊娠中絶をしていた。

29 件のうち、ダウン症(21 番染色体の数に異常がある 21 トリソミー)は 16 件。 いずれも心疾患などを伴う、18 番染色体の異常「18 トリソミー」が 9 件、13 番染色体の異常「13 トリソミー」が 4 件だった。 判定保留は 3 件あった。 陽性の 29 件のうち、現段階で確定診断の状況が把握できているのは 11 件ある。 自然流産した 1 件を除く 10 件で、腹部に針を刺して子宮から羊水を採取する羊水検査などによる確定診断が実施された。

既に結果が出た 8 件中 6 件で染色体異常が確定し、1 施設では 2 人が中絶を選択した。 13 トリソミーと 18 トリソミー各 1 件の計 2 件は、実際には異常がない「偽陽性」だった。 この 2 種類の異常は元々偽陽性が出やすいことが分かっている。 妊婦は 27 - 47 歳で平均 38.3 歳。 受検理由では、「35 歳以上の高齢妊娠」が 94.1% を占めた。 「染色体異常のある子の出産歴がある」は 2.5%、「胎児の超音波検査や血清マーカーで可能性を指摘された」が計 1.7% だった。

同コンソーシアム世話人の関沢明彦・昭和大教授(産婦人科)は「この検査で自分なりに納得できた人は、羊水検査に伴って起こりうる事故の危険を回避できたと言える。 偽陽性が出る可能性もあることなど、検査の特性を十分に理解して受けることが重要だ。」と話す。 (須田桃子、mainichi = 7-17-13)

初 報 (5-10-13)


ヒトの皮膚細胞から軟骨様細胞へ直接変換に成功

王谷英達(大阪大学 医学系研究科/前京都大学 CiRA)、妻木範行教授(京都大学 CiRA)らの研究グループは、ヒトの皮膚線維芽細胞)から iPS 細胞を経ずに軟骨細胞様細胞 (induced chondrogenic cell : iChon cell) へと直接変換することに成功しました。

関節軟骨は骨の端を覆い、滑らかな関節運動を行うにあたって重要な役割を果たしています。 軟骨は修復能力が乏しく、損傷を放置すると広い範囲で線維化などの変性が生じ、関節機能への障害や痛みを引き起こします。

治療法の 1 つとして、細胞移植が試みられていますが、高品質な軟骨細胞を充分量用意することが困難で、どうしても修復された組織には線維性組織が含まれてしまいます。 そこで、高品質な軟骨細胞の供給源を開発することを目標に、妻木教授らのグループでは皮膚の線維芽細胞を軟骨細胞へと直接変換することを試みています。

本研究により、ヒトの細胞においても線維芽細胞を軟骨細胞へと直接変換しうることが示されました。 変換の際に腫瘍形成に大きな影響を与えるとされる c-MYC の遺伝子を導入していることなどから、ヒトでの治療に応用するためにはさらなる改善が必要ですが、細胞を直接変換する方法は軟骨再生において軟骨細胞を供給する手段の 1 つとなることが期待できます。 本研究成果は 2013 年 10 月 16 日(米国東部時間)に米国科学誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載されます。 (CiRA/JST = 10-17-13)


70 歳代の体力、12 年で 5 歳若返る 文科省調査

【志賀英樹】 70 代の体力は、ここ 12 年で 5 歳ほど若返った - -。 文部科学省が 13 日に発表した「体力・運動能力調査」で高齢者の体力の向上ぶりが分かった。 健康への意識が高まり、スポーツクラブなどで定期的に運動する人が増えたためとみられる。

調査は昨年 5 - 10 月に、全国の 6 - 79 歳の約 7 万 4 千人を対象に実施した。 65 歳以上は、調査を始めた 1998 年度以降、「握力」、「上体起こし」、「6 分間歩行の距離」などほとんどの項目で、記録が伸びているのが特徴だ。 なかでも 70 - 74 歳、75 - 79 歳は、男女とも全 6 項目の得点合計で過去最高を更新し、70 - 74 歳は 2000 年の 65 - 69 歳、75 - 79 歳も 00 年の 70 - 74 歳の水準に並んだ。 65 - 69 歳の男性の得点合計も過去最高だった。 (asahi = 10-13-13)


涙腺・唾液腺の再生に成功 ドライアイなど治療に可能性

【岡崎明子】 マウスの幹細胞から唾液(だえき)腺や涙腺のもとを作製し、体内で正常に機能させることに、東京理科大のチームが成功した。 今後ヒトへの応用に向け、iPS 細胞(人工多能性幹細胞)などでも作製が可能かどうかを研究する。 実現すれば、口が渇くドライマウスやドライアイなどの治療につながるという。 1 日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。

同大の辻孝教授らは、独自に開発した方法で、マウス胎児の幹細胞から唾液腺や涙腺のもとを作製。 それぞれの器官を摘出した別のマウスに移植した。 その結果、移植した唾液腺や涙腺のもとは正常に働き、唾液や涙の量も正常なマウスとほぼ変わらなかった。 (asahi = 10-3-13)


早発閉経、卵巣の働き回復させ出産 聖マリアンナ医大

【阿部彰芳】 40 歳前に月経が止まる早発閉経で不妊になった女性の卵巣の働きを回復させて体外受精で出産することに、聖マリアンナ医科大学(川崎市)が成功した。 卵巣を取り出し、特殊な処理をして一部を体内に戻して卵子を得た。 卵巣が関連した他の不妊でも応用が期待できるという。

早発閉経は、40 歳前に卵巣が働かなくなり月経が止まる病気。 約 1% の女性が発症すると言われ、有効な治療法がなく、妊娠には卵子の提供が必要になる。 同大の河村和弘・生殖医療センター長らが開発した手法では、患者の卵巣を取り出し、将来、卵子になる卵胞という組織を含んだ表面を使う。 表面を1ミリ四方に切って卵胞の発育を促す薬剤に浸し、卵管の外側の膜と卵管の間に戻す。 その後、卵胞を刺激するホルモンを飲み、卵胞を育てる。 (asahi = 10-2-13)


大腸がん死亡率、内視鏡検査で 7 割低く 米で 9 万人調査

内視鏡を使った大腸がんの検査を受けた人は、受けなかった人より大腸がんによる死亡率が約 7 割低かったという調査結果を、米ハーバード大の西原玲子研究員らがまとめた。 大腸全体を診る内視鏡検査の効果を示すまとまったデータはこれまでなかった。 19 日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで報告した。

西原さんらは米国に住む医療職の男女約 8 万 9 千人を対象に、1988 年から 2008 年にかけて大腸内視鏡検査を受けたかどうかなどをたずね、その後を 12 年まで追った。 この間に 474 人が大腸がんで亡くなっていた。 年齢などの要因を加味して分析すると、検査を受けた人たちの死亡率は受けなかった人たちより 68% 低かった。 直腸や S 状結腸といった、肛門(こうもん)に近い側の「遠位大腸」に限ると、死亡率は 82% 低かった。 (asahi = 9-21-13)


マダニ媒介ウイルス、身近な場所にも 飼い犬の感染確認

【中村通子】 マダニを介してうつるウイルス病「重症熱性血小板減少症候群 (SFTS)」の患者が見つかった 13 県のうち 3 県で、地域の飼い犬もウイルスに感染していることが山口大の調査で分かった。 犬の散歩道という身近な生活圏にも、ウイルスが潜んでいる証拠だ。 20 日に岐阜市で始まった日本獣医学会で発表した。

山口大の前田健教授(獣医微生物学)らは昨年、40 都道府県で動物病院を受診した飼い犬計 743 匹の血液を調べた。 その結果、山口、熊本、宮崎の 3 県で、調べた飼い犬の 16 - 5% が、ウイルスに感染したことを示す抗体値が高い強陽性だった。 厚生労働省結核感染症課によると、人間の患者は 13 日現在、13 県で 43 人(うち 18 人が死亡)確認されているが、そのうち兵庫県と鹿児島県では今回の飼い犬調査は出来ていない。

犬の場合、SFTS ウイルスに感染しても発病したという報告はなく、犬から直接、人に感染した例はこれまで知られていない。 前田教授は「飼い犬で陽性が確認された地域では、身近な場所にもウイルスがいる可能性が高い。 11 月ごろまでマダニのシーズンは続くので、公園の散歩などでもマダニがつかないよう草むらには注意した方がいい。」と話す。 (asahi = 9-21-13)

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マダニが媒介、回帰熱患者を国内初確認 北海道で 2 人

【北林晃治】 マダニを介して感染し、発熱を繰り返す回帰熱の患者が北海道で 2 例見つかったことが 3 日、分かった。 厚生労働省によると、海外から持ち込まれた例を除き、国内での感染確認は初めて。 同省は疑いがある事例を報告するよう全国の自治体に通知した。

国立感染症研究所が、症状が似ているライム病への感染が疑われ、保存されていた患者約 800 人の血清を調査。 2011 年以降に採血した北海道の 2 人から、原因となる細菌の DNA を検出した。 2 人はいずれも回復している。 回帰熱は、マダニやシラミにかまれることで、体内に細菌が入り感染する。 発熱や筋肉の痛み、全身のだるさなどの症状が現れ、抗菌薬で治療する。 同省の担当者は「マダニが多く生息するやぶなどに入るときは、長袖、長ズボンを着用し肌を露出しないように」と話している。 (asahi = 9-4-13)

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マダニ感染症、東へ 中部地方でもウイルス確認

【阿部彰芳】 マダニが広げる重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) のウイルスが、中部地方のマダニから見つかった。 厚生労働省の研究班が調べた。 患者はこれまで兵庫県から西側でしか見つかっていなかった。 厚労省は「西日本以外でもかまれないよう注意して欲しい」と呼び掛けている。

SFTS は 2009 年ごろから中国で患者が報告され、見つかった感染症。 ウイルスは 11 年に初めて特定された。 国内初の患者は今年 1 月に確認され、患者数は今月 26 日までに計 39 人、うち 16 人が死亡している。 患者が見つかったのは九州から近畿地方の 13 県に限られていた。

研究班は、中国地方から中部地方の 9 県で採取されたマダニを調べた。 患者が未発生だった和歌山、福井、山梨、静岡の 4 県も含め、いずれの県でもマダニの一部から原因ウイルスの遺伝子が見つかった。 関東や東北のマダニも調査中だ。 長野、富山、岐阜、三重、香川の 5 県のシカや猟犬で感染の痕跡が見つかった。 厚労省は国内に広く分布している可能性があるとして注意を呼びかけていた。 今回の結果は、これを裏付けた形だ。 厚労省は「マダニにかまれないよう、草むらややぶでは長袖、長ズボンを着用してほしい」と話している。 (asahi = 8-29-13)


認知症の進行に関係? 異常たんぱく質の撮影に成功

【西川迅】 アルツハイマー病などの認知症患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質の分布を撮影することに放射線医学総合研究所の研究チームが成功した。 蓄積の進み具合は症状に関係するとみられ、早期の診断や治療薬の開発に役立つと期待される。 19 日付の米科学誌ニューロン電子版で発表した。

アルツハイマー病などは、アミロイドベータ (Aβ) やタウという異常なたんぱく質が脳内に蓄積、神経細胞が壊れて症状が出ることが分かっている。 タウはこれまで、亡くなった患者の脳でしか見ることができなかった。 研究チームは、数百種類の化合物からタウたんぱく質に結合する薬剤を探し出した。 脳にタウがたまるよう操作したマウスに薬剤を注射、陽電子放射断層撮影 (PET) で映し出すことで、分布を画像化できた。 (asahi = 9-19-13)


PTSD 初の治療指針 学会、患者向けの呼吸法も紹介

【大岩ゆり】 災害や犯罪などの体験が心の傷となり、強い不安や不眠などが続く心的外傷後ストレス障害 (PTSD) への対応や治療の指針を、専門医の学会が初めて作った。 東日本大震災などがきっかけだ。 医師による適切な治療のほか、呼吸法など患者自身ができる対処法も紹介している。 世界保健機関 (WHO) の 2005 年の調査では、日本国内で生涯に PTSD になる人は人口の 1.1 - 1.6%、20 代 - 30 代前半に限ると 3.0 - 4.1% だった。

しかし、専門医が少なく、適切な治療を受けていない患者も少なくない。 精神科医らで作る日本トラウマティック・ストレス学会による指針は、正しい診断には、医師が患者の体験を丁寧に聞くことが重要と指摘。 最初の 2 - 3 回の診察は時間を十分とって、患者のペースで話してもらうよう求めている。 さらに医師は、患者に「誰にでも起こる病気で患者が悪いわけではない」と説明することも大切とした。 自分を責める患者が多いためだ。 (asahi = 9-18-13)