ユーロ圏の 8 月製造業 PMI 上方修正、11 年 6 月以来の高水準

[ロンドン/ベルリン/パリ/ローマ/マドリード/アテネ] マークイットが発表した 8 月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数 (PMI) 改定値は 51.4 となり、速報値の 51.3 から上方修正された。 前月は 50.3 だった。 PMI は 50 が景況の改善・悪化の節目となる。

受注が堅調となり、2011 年 6 月以来の高水準となった。 マークイットによると、フランスを除き、域内の主要国すべてで状況が改善した。 新規受注が 2011 年 5 月以来の高水準となり、このモメンタムの継続が見込まれる。 生産サブ指数は速報値と変わらず、2 年 3 カ月ぶりの高水準となる 53.4 となり、7 月の 52.3 から上昇した。 新規受注サブ指数は前月の 50.8 から 53.3 に上昇し、2011 年 5 月以来の高水準となった。

PMI データによると、製造部門は 8 月に 1 年 7 カ月連続で雇用を削減したほか、前月よりも削減ペースが加速した。 マークイットのチーフエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「競争力強化に向けたコスト削減に加え、原油高の影響を相殺するため、企業が引き続き雇用に後ろ向きという事実は、回復傾向が雇用市場の十分な改善につながるまで先が長いことを示唆している」と述べた。 (Reuters = 9-2-13)

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EU 圏の成長率、7 四半期ぶりにプラスへ

【ブリュッセル = 野島淳】欧州連合 (EU) 統計局が 14 日発表したユーロ圏 17 カ国の 2013 年 4 - 6 月期の実質域内総生産(GDP、速報値)の成長率は、前期(1 - 3 月)と比べて 0.3% 増となり、11 年 7 - 9 月期以来、7 四半期ぶりにプラス成長に転じた。 年率換算では 1.1% 増となった。 (asahi = 8-14-13)


米 GDP、年 2.5% 増に上方修正 4 - 6 月期改定値

【ワシントン = 五十嵐大介】 米商務省が 29 日発表した 4 - 6 月期の実質国内総生産 (GDP) の改定値(季節調整済み)は、年率換算で前期比 2.5% 増となり、7 月末の速報値(1.7% 増)から大幅に上方修正された。 市場予想の「2% 前半の増加」を上回り、昨年 7 - 9 月期以来の高い伸びとなった。

内訳を見ると、輸出が 8.6% 増となり、速報値(5.4% 増)より大幅に増えた。 住宅投資は 12.9% 増、住宅を除く企業による設備投資は 4.4% 増で速報値より伸びは鈍ったが、引き続き好調だった。 一方、GDP の約 7 割を占める個人消費は速報値と同じ 1.8% 増で、前期よりは減速。 歳出の強制削減の影響を受けている政府支出は低調だった。 米連邦準備制度理事会 (FRB) は、来月にも量的緩和の縮小を始めるとみられている。 今回の改定値は、緩和縮小の早期開始の追い風となりそうだ。 (asahi = 8-30-13)

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米 GDP、1.7% 増 = 投資、輸出が拡大 - 4〜6 月期

【ワシントン】 米商務省が 31 日発表した 2013 年第 2 四半期(4 - 6 月)の実質 GDP (国内総生産)速報値は、季節調整済み年率換算で前期比 1.7% の増加となった。 成長率は前期(1.1% 増 = 改定)を上回り、2 期連続で加速。 12 年第 3 四半期(7 - 9 月、2.8% 増)以来の高い伸びとなり、市場予想の 1.0% 増も上回った。

米連邦準備制度理事会 (FRB) は予想通りに経済が回復すれば年内に量的緩和を縮小する可能性を示しているが、これを後押しする内容。 31 日まで開かれる連邦公開市場委員会 (FOMC) の議論にも影響を与えそうだ。 (jiji = 7-31-13)


ユーロ圏失業者数が減少 6 月、2 年 2 カ月ぶり

【ブリュッセル = 野島淳】 欧州連合 (EU) 統計局は 31 日、6 月のユーロ圏 17 カ国の失業者数が前月比で 2 万 4 千人減り、1,926 万 6 千人だったと発表した。 失業率は横ばいの 12.1% で 1999 年のユーロ導入以来最悪の水準だが、実数は 2011 年 4 月以来の減少に転じた。 ユーロを導入していない国も含めた EU 27 カ国の失業率も前月より 0.1 ポイント低い 10.9% だった。 改善は 2 年 3 カ月ぶりだ。 債務(借金)危機で進んできた景気悪化に歯止めがかかりつつあるのではないかとの期待が、じわりと膨らんでいる。

国別ではスペイン、イタリア、ポルトガルなどで失業率が改善。 一方、フランスやオランダ、キプロスなどでは悪化が続いている。 社会問題化している 25 歳未満の若年失業率はユーロ圏で 23.9% と前月から 0.1 ポイント悪化した。 EU 27 カ国でも 0.1 ポイント悪化して 23.2% だった。 欧州委員会の報道官は同日、「数値は改善したが、なお高水準。 引き続き加盟国が労働法の改革など雇用対策に取り組む必要がある」と述べた。 (asahi = 7-31-13)

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先進国全体の失業率低下が始まるのは来年終盤 = OECD

【ロンドン】 経済協力開発機構 (OECD) は 16 日、先進国全体の失業率が低下し始めるのは 2014 年に入って「かなり経過してから」になるとの見通しを明らかにした。 先進国間の格差は一段と広がる公算が大きいとみている。 OECD は毎年公表する「雇用アウトルック」で、長期失業者が金銭的な困難に陥らないよう各国政府は配慮すべきだと指摘した。 年齢の高い労働者が職を維持することで、若年層の雇用が犠牲になっているわけではないとの結論も示した。

OECD によると、加盟 34 カ国の 4 月時点での失業者数は 4,800 万人と、世界的な金融危機に見舞われる 1 年前の 07 年に比べて 1,600 万人多い。 OECD は「過去 4 年間の世界的な回復が全体的に弱く、むらがある」と述べた。 「多くの国々で総需要が抑制され、OECD 加盟国の大半では労働市場がまだ金融・経済危機の傷を負っている」という。 OECD 加盟国全体の失業率は来年末まで「ほぼ一貫して」 8% にとどまる見通し。 これは 09 年のピークからわずか約 0.5 ポイント低い水準にすぎない。

ただ、先進国間に存在する大幅な格差はさらに深刻化する可能性が高い。 OECD は、13 年 5 月に 7.6% だった米国の失業率が 14 年 10 - 12 月期に 6.7% へ低下すると見込む。 一方、ユーロ圏 17 カ国の失業率はこの間に 12.1% から 12.3% へと上昇するとみている。 ユーロ圏の中では、ギリシャの失業率が 26.8% から 28.2%、スペインは 26.9% から 27.8% へ上昇すると予想した。 同じく国際的な金融支援を受け、緊縮財政に取り組むアイルランドとポルトガルの失業率悪化も予測している。

若年層の「暗い」雇用見通しに直面し、各国政府はこれまでの景気後退期と同様、高齢労働者の早期退職「促進」に傾く可能性があるという。 OECD はこの傾向を高くつく誤算だと批判。 年齢の高い人々が従事する職と若者が得る職には違いがあると説明した。 さらに、失業期間が長く、失業手当てを受けられなくなった人々が見捨てられないよう、各国政府は確実にすべきだと忠告した。 その半面、公的な社会保障を受けている人々に職探しを義務付けることも呼びかけた。 (The Wall Street Journal = 7-16-13)

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ユーロ圏の失業率、12.1% に悪化 最悪の水準続く

【ブリュッセル = 野島淳】 欧州連合 (EU) 統計局が 1 日発表した 5 月のユーロ圏 17 カ国の失業率(季節調整値)は前月比 0.1 ポイント悪化の 12.1% となった。 1999 年のユーロ導入以来、最悪の水準を続けている。 今回、過去の統計を修正。 4 月の数値を当初公表の 12.2% から 12.0% とした。 社会問題化している 25 歳未満の若年失業率は 5 月で 23.8% だった。

国別でみると、金融支援をめぐって混乱したキプロスは 16.3% で、前月比 0.5 ポイント悪化。 スペインは同 0.1 ポイント悪化し 26.9%、イタリアは同 0.2 ポイント悪化し 12.2% だった。 ギリシャは 3 月の数値で 26.8% だった。 若年失業はスペインで 56.5%、ギリシャ(3 月)で 59.2% などと高い水準が続いている。 (asahi = 7-1-13)

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ユーロ圏失業率、初の 12% 台 2 月、悪化とまらず

【ブリュッセル = 野島淳】 欧州連合 (EU) 統計局が 2 日発表した 2 月のユーロ圏 17 カ国の失業率(季節調整値)は 12.0% で、前月から横ばいだった。 1 月の数値は当初 11.9% と発表されたが、今回、悪化方向に 0.1 ポイント修正された。 1999 年のユーロ導入以来、失業率が 12% 台に入るのは初めてで、最悪の水準を更新し続けている。

大手 2 銀行の破綻処理・再編が決まったキプロスは前月比 0.3 ポイント悪化の 14.0%。 預金の引き出し制限など経済の混乱と景気悪化が続き、さらに失業率が上がると見込まれている。 他の南欧諸国ではスペインが同 0.1 ポイント悪化の 26.3%、イタリアが同 0.1 ポイント改善の 11.6% だった。 景気がふるわないフランスは同 0.1 ポイント悪化の 10.8%、オランダも同 0.2 ポイント悪化の 6.2% だった。 ドイツは横ばいの 5.4% だった。 (asahi = 4-2-13)


「中国、米抜き超大国に」世界で広がる傾向 米調査機関

【ワシントン = 大島隆】 中国が米国を抜いて世界一の超大国になるという見方が世界中で広がりつつあることが、米調査機関ピュー・リサーチセンターの世論調査でわかった。 同センターは世界の 39 カ国で世論調査を実施。 約 7 割の 27 カ国で、「中国がいずれ世界一の超大国になる」、「すでになっている」という回答の合計が「中国が米国を追い抜くことはない」という回答を上回った。

日本では逆に、72% が「中国が米国を追い抜くことはない」と答えた。 この回答が 6 割以上だったのは日本とフィリピンだけだった。 米国では、「中国が世界一に」という回答と「米国を追い抜くことはない」との回答が共に 47% で分かれた。 一方、国としての好感度では、米国に好意的な見方をする人が 63% だったのに対して、中国に対しては 50% だった。 (asahi = 7-24-13)


デトロイト市破綻 負債 1.8 兆円、米自治体で最大

人口流出響く

【ニューヨーク = 杉本貴司】 世界的な自動車の街として知られる米ミシガン州デトロイト市が 18 日、米連邦破産法第 9 条を裁判所に申請し、財政破綻した。 負債総額は 180 億ドル(約 1 兆 8 千億円)超で、米自治体の破綻としては過去最大。 市内に本社を置く米ゼネラル・モーターズ (GM) は復活したが、生産の海外移転などにより大量の人口流出と雇用縮小は止まらず税収は落ち込んでいた。

米自治体の破産規模では、2011 年に破綻したアラバマ州ジェファーソン郡の総額 40 億ドル強を大幅に上回った。 ミシガン州のリック・スナイダー知事は 18 日、デトロイト市の破産申請を認可し「負債の規模は持続不可能な水準だ」とする声明を出した。 スナイダー知事は同市の歳入のうち 38% が負債の支払いや、「レガシーコスト」と呼ばれる年金、医療費負担などに費やされていると説明。 対策を講じない場合、その比率は 17 年までに 65% へ高まると指摘した。

スナイダー知事は 3 月、デトロイト市の財政悪化に伴い財政非常事態を宣言した。 企業再生で実績がある弁護士のケビン・オーア氏を緊急財務管理者に任命。 破綻回避に向けて債権者と交渉を続けてきたが、6 月に一部債務の返済が不履行となった。 今後は裁判所の管理下で、債務カットなどを通じて再建を目指す。

スナイダー知事は警察や消防、ゴミ収集、街灯を例に挙げ、行政サービスへの投資は続ける意向を示した。 だが、すでに市民向けのサービスは一部を圧縮している。 これから策定する再建案に、市職員の削減や「レガシーコスト」の一部カットなどを盛り込む可能性もある。 デトロイトには GM のほか、米フォード・モーター、米クライスラーも近郊に本社を置く。 GM は 09 年の経営破綻から急ピッチで復活。 クライスラーもデトロイト市内の工場で増産投資を計画するなど、自動車産業の回復が鮮明だ。

だが、経営破綻に伴う税制優遇などもあり、デトロイト市の税収増加への寄与は大きくなかったもよう。 同市は 1960 年代に起こった暴動以降の治安悪化もあり、白人を中心に近隣の自治体への人口流出が続いた。 50 年前後の人口は 200 万人近かったが、近年は約 70 万人にまで縮小。 自動車工場で働く中流階級も多くが郊外に居を構えており、近隣自治体と同市の税収格差が顕著になっていた。 (nikkei = 7-19-13)


「アベノミクスが新たなリスク」 IMF が初めて指摘

【ワシントン = 山川一基】 国際通貨基金 (IMF) のブランシャール調査局長は 9 日、安倍政権の「アベノミクス」が世界経済の「新たなリスクだ」と指摘した。 一方、IMF は同日、最新の世界経済見通しで、日本の 2013 年の実質成長率予想を前年比 2.0% 増に上方修正した。 ブランシャール氏は同日の会見で、世界経済の新たな懸念材料として「中国の金融システム不安や成長の鈍化」、「アベノミクス」、「米国の量的緩和の縮小による世界金融の不安定化」の順で、言及した。 IMF はこれまでアベノミクスを支持してきた。 リスクだと指摘するのは初めてだ。 (asahi = 7-10-13)

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米の「破滅博士」が太鼓判 日本経済「崩壊しない」

【ニューヨーク = 畑中徹】 経済予測の悲観派の代表で、米国では「破滅博士」とも呼ばれるニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授が 3 日、米経済テレビに出演し、「日本の株式や為替、国債の市場は崩壊しない。 日本について、私はかなり前向きにとらえている。」と語った。 ルービニ氏は、2008 年の金融危機を的確に予言したことで知られる著名な経済学者。 同氏は「(安倍政権が進める経済政策の)アベノミクスは、消費を促すなどの効果がみられる。 日本経済の構造改革などが進めば、成長率が伸びていくことも期待できそうだ。」と述べた。 (asahi = 6-4-13)

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ノーベル賞学者「アベノミクス正しい」 国際会議始まる

【末崎毅】 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の評価などを国内外の有名な経済学者らが議論する国際会議(内閣府主催)が 30 日、都内で始まった。 ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ教授(米コロンビア大)は「(金融緩和、財政出動、成長戦略の) 3 本の矢は正しい」などと発言し、アベノミクスを評価した。

そのうえでスティグリッツ氏は、日本が取り組むべき課題の一つに「定年の年齢引き上げ」をあげた。 「高齢になっても貢献できれば、高齢者の貧困の問題が緩和するし、(高齢者も所得税などを納めるため)政府の財政状態もよくなる」と提言した。 米コロンビア大のジェフリー・サックス教授は、経済規模に対する税収の割合が日本は先進国の中で低いと指摘し、「高齢化社会なのに課税が不十分だ。 経済回復を邪魔してはいけないが、今後は税収を高めないといけない。」と求めた。 (asahi = 5-31-13)


タイ大手銀買収へ 相次ぐ邦銀の東南アジア進出

三菱 UFJ フィナンシャル・グループがタイのアユタヤ銀行の買収に向けて最終調整に入った。 買収総額は 4,000 億円規模に上る見通しで、邦銀によるアジアの金融機関の M & A (合併・買収)では過去最大。 欧州債務危機の影響で欧州系銀行が出遅れる中、安定した財務基盤のメガバンクが海外に活路を求める姿勢がより鮮明になってきた。 急成長する東南アジアでの事業展開が主戦場となりそうだ。

買収交渉は 7 月上旬にも合意する見通し。 三菱 UFJ は、株式の公開買い付け (TOB) でアユタヤ銀株式の過半の取得を目指す。 アユタヤ銀は資産規模でタイ 5 位の大手商業銀行で、邦銀によるアジア大手行の経営権取得は初。 三菱 UFJ はアユタヤ銀の店舗網や顧客基盤を活用し、地元の企業や個人への貸し出し拡大を図る。 日系企業向けにとどまらない総合金融サービスを展開する。

メガバンクは日本国内の融資が頭打ちの中、新たな収益源として海外部門の強化を急いでいる。 三菱 UFJ の 2013 年 3 月期の部門別業務純益では、国内の個人向け業務(2,939 億円)を海外業務(3,041 億円)が上回った。 子会社の米地銀ユニオンバンクが事業展開する米国に加え、成長を続けるアジア事業が収益に貢献している。 東南アジアについては「地場の金融機関と連携しながら地域での金融サービスを展開する(平野信行社長)」方針を掲げていた。

一方、みずほコーポレート銀行は 11 年 9 月にベトナムの大手商業銀行と業務・資本提携し、約 435 億円の出資を決めた。 三井住友銀行も今年 5 月にインドネシアの大手銀行に約 1,500 億円の出資を決めるなど、邦銀の東南アジア進出が相次いでいる。 メガバンク幹部は「東南アジアはインフラ投資など大型案件の増加が見込まれる。 債務危機後、欧州銀の存在感が低下しており邦銀が融資を拡大するチャンスがある」との見方を示す。 (工藤昭久、mainichi = 6-22-13)


EU が特殊鋼管めぐり中国を WTO 提訴、60 日以内に協議

中国・EU 貿易摩擦

記事コピー (asahi = 5-17-13 〜 6-14-13)


G7、円安への批判出ず 通貨安競争に改めて戒め

【英南部エイルズベリー = 五十嵐大介】 ロンドン近郊で始まった主要 7 カ国 (G7) 財務相・中央銀行総裁会議は 10 日夜(日本時間 11 日午前)、初日の議論を終えた。 直前に 1 ドル = 101 円台まで円安ドル高が進んだが、円安を直接批判する声は出なかったという。 ただ、「金融政策は国内の景気(回復)のためで、為替レートを目的にしない」との考えでは一致し、通貨安を招く政策にくぎをさした。

日本銀行が大規模な金融緩和に踏み切ったことで、円資産の金利が下がるとみた金融機関などが円を売る動きを強め、円安が進んでいる。 通貨が安くなれば、輸出品の価格も安くなって輸出企業が有利になるが、ほかの国の輸出を落ち込ませることにもつながる。 初日の議論では、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁らが金融緩和は物価が下がり続ける「デフレ」から抜け出すのが目的で、通貨安をねらった政策ではないことを改めて説明したとみられる。 (asahi = 5-11-13)

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先進国の金融緩和は「近隣富裕化策」 FRB 議長が弁護

【ワシントン = 山川一基】 米連邦準備制度理事会 (FRB) のバーナンキ議長はロンドンでの 25 日の講演で、米国や日本など先進国が実施している金融緩和策について、周辺諸国にも好影響を与える「近隣富裕化策」であると弁護した。 「通貨安競争を促している」との批判に答えたものだ。

バーナンキ氏は講演で、先進国の金融緩和策は為替レートの変化ではなく、国内需要が活性化することで効果が生まれると指摘。 そのうえで、「先進国の強い成長は貿易相手国に波及効果を与えるから『近隣富裕化策』である」と訴えた。 相対的に為替レートが上昇している新興国からの批判については「先進国の需要増などで(為替レートの変化による)悪影響は相殺される。 先進国の堅実な成長は結局、先進国にも新興国にも同様に利益になる」と述べた。

先進国の緩和策は、自国通貨の為替レートを安くすることによって、貿易相手国や貿易競争国に負担を押しつけながら景気回復を目指す「近隣窮乏化策」であるとの批判が根強い。 世界大恐慌後の 1930 年代に各国が競ったとされている。 (asahi = 3-26-13)


ユーロ圏成長率見通し引き下げ 今年はマイナス 0.4%

【ブリュッセル = 野島淳】 欧州連合 (EU) の欧州委員会は 3 日発表の春季経済見通しで、ユーロ圏 17 カ国の 2013 年の実質域内総生産 (GDP) の成長率をマイナス 0.4% とし、冬季(2 月)見通しから 0.1 ポイント下方修正した。 EU 27 カ国でも冬季見通しのプラス 0.1% からマイナス 0.1% に下方修正した。

先導役のドイツはプラス成長ながらも 0.4% 増にとどまり、フランスはプラス成長の予測からマイナス 0.1% へと転じる見通し。 もともとマイナス成長の予測だったイタリアやスペイン、オランダの数値も軒並み、下方修正した。 金融市場は落ち着いているものの、企業の資金調達の環境は厳しいまま。 ユーロ圏で 12% 台と失業率は高止まりし、消費の落ち込みが続くことなどが要因だ。 (asahi = 5-3-13)


日本、中国の投資規制に見直し要求 日中韓FTA交渉

【ソウル = 福山崇】 日本、中国、韓国 3 カ国による自由貿易協定 (FTA) 交渉で、日本が中国に対し、投資規制の見直しを求めたことが分かった。 自動車や金融などの分野で、経営の主導権を握れるようにするのがねらいだ。 3 カ国の FTA 交渉は 1 回目の会合が 26 - 28 日の日程で、ソウルで開かれている。 27 日は関税、投資、サービスの 3 分野の作業部会を開き、具体的な協議に入った。 中国の投資規制の見直しは、投資の作業部会で日本が伝えた。 (asahi = 3-28-13)


米国債 8 日 1 週間続落、予想上回る米雇用統計で利回り上昇

8 日の米国債市場では、2 月の米国雇用が予想よりも大幅な伸びを示したため安全資産としての米国債を売る動きが加速し、債券価格は 5 営業日連続で下落し、指標銘柄の利回りは 11 カ月ぶりの高水準をつけた。 この 1 週間で債券相場は過去 2 カ月間で最大の下げに見舞われた。 米労働市場と米経済全般に対する見通しが明るくなり、比較的安全な資産を処分してリスク資産に資金を移す動きにつながっている。 この結果、米国株は史上最高値を更新している。

米労働省がこの日発表した 2 月の雇用統計では、非農業部門就労者が 23 万 6,000 人増加した。 エコノミストらが予想した 16 万人増を大幅に上回った。 失業率は、1 月の 7.9% から 2 月は 7.7% に低下した。 市場の予想は 7.8% だった。

格付け会社フィッチ・レーティングスは、政治的な行き詰まりが続くイタリアを「A-」から「BBB+」に格下げし、格付け見通しを「弱含み」とした。 米国の歳出削減や中国の期待はずれな経済指標も懸念される中、世界の主要中央銀行による金融緩和が続いており、米労働市場の改善が懸念材料をいまのところ打ち消している。

米クレディ・スイス証券の米金利・スワップ取引次席ヘッド、ギャン・フ氏は「強い雇用統計で、現在の景気回復の勢いが確認された」と語った。 指標銘柄の 10 年米国債の利回りは、日中 2.086% まで上昇(債券価格は下落)した。 10 年債利回りはこの 1 週間で 0.20% 上昇した。 この雇用統計を受け、景気回復が続いているので、米連邦準備制度理事会 (FRB) は年末前に米国債の買い入れを減額ないし中止するかもしれないとの弱気な見方が強まった。

しかし、今回の雇用統計だけで FRB が債券買い入れの姿勢を変えることはないと強気筋はみている。 1 月の就労者数は当初発表から大幅に下方修正されており、就労率は 1981 年以来最低水準に落ち込んでいる。

FRB のバーナンキ議長とイエレン副議長はそれぞれ今週、金融緩和解除の目安として設定した失業率 6.5% のしきい値を上回っているかぎり、債券買い入れ措置を継続する意向を示した。 バーナンキ議長は、米国債利回りが大幅に上昇すると、住宅ローン金利などの長期資金調達コストが押し上げられるので、景気回復が遅れると警告した。

当面は、米国債の入札が債券需給を圧迫するだろう。 米財務省は来週、総額 660 億ドルの入札を予定している。 12 日には新発 3 年債 320 億ドルを入札し、13 日は 10 年債 210 億ドル、14 日には 30 年債 130 億ドルをそれぞれリオープン入札する。 ただ、債券利回りが数カ月ぶりの高水準にあるため、押し目買いを狙う投資家が集まり応札需要は高まるだろうと一部の市場参加者は考えている。 (The Wall Street Journal = 3-9-13)

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NY ダウ、最高値更新 4 日連続、景気回復期待高まる

【シカゴ = 畑中徹】 8 日のニューヨーク株式市場は、米景気の回復期待が高まり、大企業で構成するダウ工業株平均は上昇した。 前日より 67.58 ドル (0.47%) 高い 1 万 4,397.07 ドルで取引を終え、終値での史上最高値を 4 日連続で更新した。 一時は 1 万 4,400 ドル台にのせ、取引時間中でも最高値をぬりかえた。 ハイテク株が中心のナスダック市場の総合指数は、前日より 12.28 ポイント (0.38%) 高い 3,244.37 で取引を終えた。 (asahi - 3-9-13)

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NY ダウ、終値も史上最高値 1 万 4,253 ドル

5 日のニューヨーク株式市場は、経済指標が改善したことなどから大幅に上昇し、大企業で構成するダウ工業株平均は前日比 125.95 ドル (0.89%) 高い 1 万 4,253.77 ドルで取引を終えた。 終値として 2007 年 10 月以来約 5 年 5 カ月ぶりに過去最高値を更新した。

米サプライ管理協会が同日発表した 2 月の非製造業景況感指数が高水準となり、米景気が堅調に回復しているとの見方が広がった。 中国の株価が反発したことも投資家心理を改善させた。 取引時間中の過去最高値は 1 万 4,286.37 ドルだった。 (asahi = 3-6-13)


米の支出強制削減、発動濃厚に 議会との会談間に合わず

【ワシントン = 山川一基】 米政府の支出を自動的に 1 割前後削る強制削減計画をめぐり、米ホワイトハウスは 27 日、オバマ大統領が 3 月 1 日に米議会幹部らと会談すると明らかにした。 回避するための議会の交渉期限を過ぎてからの会合となるため、強制削減の発動が濃厚になった。

オバマ氏は野党共和党のベイナー下院議長、マコネル上院院内総務、与党民主党のリード、ペロシ両上下院院内総務をホワイトハウスに招く。 この問題で 5 人が会うのは初めて。 回避するためには 28 日深夜までに議会が法改正しなければならない。 しかし富裕層に増税して支出の削減は抑えるべきだとする民主党やオバマ氏と、支出削減の幅は維持しつつ中身を見直すべきだとする共和党は、相手を繰り返し非難するだけで、27 日までに歩み寄りはみられない。 (asahi = 2-28-13)


通貨安競争回避、念押し G20 共同声明

【モスクワ = 松浦祐子】 モスクワでの主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議は 16 日夕(日本時間同日夜)、共同声明を採択し、閉幕した。 会議では安倍政権の経済政策「アベノミクス」に関心が集まり、日本は物価が下がり続ける「デフレ」脱却に向けた取り組みに理解を求めた。 ただ、円安が進んでいることを受けて一部の新興国が懸念を示しているため、声明は通貨切り下げ競争を避けることをこれまで以上に強く各国に求めた。

アベノミクスは「金融緩和」、「財政出動」、「成長戦略」を三本柱にしている。 とくに日本銀行の金融緩和の結果、円資産の金利が下がって円が売られ、急速に円安が進んだため、輸出企業の業績が急回復した。 ただ、声明を受け、今後は一本調子の円安に歯止めがかかる可能性がある。 政府・日銀もアベノミクスをこれまでより慎重に進める必要が出てくる。

日本は G20 会議で、金融緩和の目的は円安ではなくデフレ脱却が目的だと強調し、理解を求めた。 麻生太郎財務相は閉幕後の記者会見で「デフレ対策が成功し、日本経済が活気を取り戻せれば、世界経済にも良い影響を与える。 そう確信してやっている点が一番理解を得られた。」と述べ、各国から一定の評価を受けたとの考えを示した。

しかし、金融緩和が結果的に円安につながり、G20 会議では一部の新興国から「金融緩和の波及効果に留意すべきだ」との懸念が出た。 日本は名指しで批判されなかったが、声明では「金融政策は国内の物価の安定や景気回復に向けられるべきだ」と強調し、通貨安を招く政策を戒めた。

さらに、これまでの G20 声明で「通貨の競争的な切り下げは控える」としてきたのに加え、「競争力のために為替レートを目的にはしない」との表現を盛り込み、通貨安競争をしないよう異例の念押しもした。 声明は世界経済について「リスクが後退した」と分析した。 欧州では政府債務(借金)危機が支援策によって落ち着き始め、米国でも減税終了などが景気に悪影響を与える「財政の崖」がひとまず回避されたからだ。 さらに日本もアベノミクスで景気対策に乗り出したことが評価された。

ただ、日米は財政再建を遅らせているため、「継続した努力が求められる」として中期的な財政再建計画を練ることも求めた。 G20 のうち日本を除く先進国は、国内総生産 (GDP) と比べた財政赤字の規模を 2013 年末までに 10 年時点の半分にする目標を掲げている。 ただ、景気対策のための財政出動で米国などは達成が絶望的だ。 (asahi = 2-17-13)

G20 財務相・中央銀行総裁会議の共同声明の主な内容

・日米欧の政策で世界経済のリスクは後退した。 成長はまだ弱い。
・日米の財政について(財政難に陥るような)不確実性を解消するために努力が必要
・先進国は(9月の)G20首脳会議までに信頼できる中期財政戦略を進展させる
・金融政策は国内の物価の安定や景気回復に向けられるべきだ
・金融政策の他国への影響を監視し、悪影響を最小化する
・市場で決まる為替レートシステムに早く近づくようにする
・為替レートが、継続して(市場で決まる水準から)乖離することを回避する
・通貨の競争的な切り下げ(通貨安競争)は控える
・競争力のために為替レートを目的にせず、(自由貿易を進めるより自国産業を守る)保護主義に反対する

〈主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議〉 1999 年にでき、毎年数回、世界経済の安定や成長などを話し合う。 開催国は回り持ちで決める。 米、英、日、仏、独、伊、カナダの G7 に、ロシア、メキシコ、韓国、中国、インドネシア、インド、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカ、トルコ、サウジアラビア、欧州連合 (EU) の国・地域が加わった。 2008 年秋のリーマン・ショック後、新興国が加わる G20 の存在感が高まった。

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通貨安政策の自粛、G20 で確認へ 共同声明原案

【尾形聡彦、松浦祐子】 モスクワで 15、16 日に開かれる主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議の共同声明原案がわかった。 各国が通貨安競争に走らないように為替相場を動かす政策を避けることを表明する。 また、自国の産業を守るために自由貿易を妨げる「保護主義」に陥らないことも確認する。

安倍政権の経済政策「アベノミクス」では、日本銀行がさらなる金融緩和を進めるとの期待から急速な円安が進み、輸出企業の業績も急回復している。 日本は G20 で、金融緩和は物価が下がり続けるデフレ脱却が目的と説明し、理解を求める構えだ。 ただ、金融緩和で円資産の金利が下がれば、円は売られやすくなる。 今後の金融政策には慎重さが必要になり、アベノミクスの進め方に影響が出る可能性もある。 (asahi = 2-14-13)

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急速な円安、G7 協議へ … 欧州が通貨安競争懸念

日米欧の先進 7 か国 (G7) の財務相・中央銀行総裁会議が、通貨安競争の回避に向けて共同声明の発表を検討していることが明らかになった。 大胆な金融緩和を掲げる安倍政権の経済政策「アベノミクス」により急速な円安・ユーロ高が進んでいることに対し、自動車産業を抱える欧州から懸念の声が出ているためとみられる。

声明は、(1) 為替レートの過度な変動や無秩序な動きは望ましくない、(2) 為替レートは市場で決定されるべきだ - - という点を再確認する方向で調整している。 中国やブラジルなどの新興国も参加し、15 - 16 日にモスクワで主要 20 か国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。 G20 を前に G7 の共同声明が発表される可能性がある。 (yomiuri = 2-12-13)

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米財務次官、アベノミクス支持 過度な円安誘導には釘

【ワシントン = 山川一基】 ブレイナード米財務次官は 11 日の記者会見で、財政出動と大幅な金融緩和を進める安倍政権の経済政策「アベノミクス」を支持する考えを表明した。 ただ「世界が通貨安競争に陥らないよう、主要 20 カ国・地域 (G20) が約束する必要がある」とも述べ、行き過ぎた円安誘導とならないように釘を刺した。

モスクワで 15 - 16 日に開かれる G20 財務相・中央銀行総裁会議を前に、会議に出席するブレイナード氏が会見した。 同氏は「日本が再び成長して、デフレを終わらせようという努力を支持する」と明言し、米政府で初めて安倍政権の経済政策に賛意を示した。 ただ「(成長のためには)構造改革も重要だ」と述べ、規制改革などの努力を改めて促した。 (asahi = 2-12-13)

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アベノミクス、海外から懸念 「極端な緩和政策」、「新たな通貨安競争」

進む円安を背景に、大胆な金融緩和などを柱にした安倍政権の経済政策「アベノミクス」に対し、海外から「日本発の通貨安競争」との批判が相次いでいる。 「円安誘導ではない」と政府は火消しに躍起だが、2 月の主要 20 カ国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議でも議論になりそうだ。

27 日に閉幕したスイスでの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、注目されたのはアベノミクスだった。 「為替操作が敏感な問題になっている。」 演説したドイツのメルケル首相は 24 日、日本に対し牽制した。

続く円安、日本は反論

会議前には、ドイツのショイブレ財務相や英イングランド銀行のキング総裁らから、日本を批判する発言が相次いだ。 輸出主導の景気回復を目指す米国政府も、自動車業界の突き上げを受けている。 円安によって日本製品の価格が下がり、日本の輸出競争力が高まれば、ほかの国がダメージを受けかねないためだ。

28 日には一時、2 年 7 カ月ぶりの円安ドル高水準となる 1 ドル = 91 円 26 銭を記録。 円安が進んでいるのを背景に、海外の批判に対し日本政府は火消しに躍起だ。 麻生太郎副総理兼財務相は 28 日の閣議後会見で、「たかだか、(円が) 10 円か 15 円戻したのをいってくるなんてのは、およそ筋としてはおかしい」と反論した。 甘利明経済再生相も同日の会見で「円安誘導批判」をしているのは、ドイツや韓国など「ごく一部の国」と語った。

そもそも今回の円安局面は昨年 11 月、安倍晋三首相が総選挙前から「円高是正のために、思い切った金融緩和を」などとたびたび演説したことに端を発している。 安倍政権の圧力を受ける形で、日本銀行は 22 日、「無期限の金融緩和」を決めた。 「円安誘導が金融政策の目的だと受け取られても仕方ない(内閣官房幹部)」状況だ。

G20 でも議論の方向

海外からの批判が高まれば、日本に対する「包囲網」ができかねない。 安倍氏周辺は、発言の修正に乗り出している。 25 日夜、首相公邸。 安倍首相は浜田宏一、本田悦朗両内閣官房参与らと会食した。 安倍氏のブレーンである両氏は「日銀の金融緩和は、デフレから脱却するのが目的だ」と進言。 円安は金融緩和の副産物だと説明するよう勧めた。

26 日にダボス会議に出席した甘利氏は、国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事、経済協力開発機構 (OECD) のグリア事務総長らと相次いで会談。 「デフレから脱却するのが最大の目的だ」と強調した。 甘利氏は同日、記者団に「一部にあった誤解は解けた」と話した。 ただ、安倍氏は 28 日の所信表明演説で、「デフレ」だけでなく「円高」の二つを並べて懸念を示し、円高是正を通じた景気浮揚という「本音」をにじませた。

こうした本音を見透かした海外の批判は収まりそうもない。 ロイター通信によると、欧州中央銀行 (ECB) のアスムセン理事はギリシャ紙のインタビューに「G7 (主要 7 カ国)や G20 といった会議の場を活用すべきだ」と述べ、通貨安競争について議論する考えを示した。 各国のさや当ては、モスクワで来月 15、16 日開かれる G20 に場を移すことになりそうだ。 (asahi = 1-29-13)

円が独歩安になっている

(地域)/ 通貨 / 日本円の下落率 (%) / 要人の反応

米国 / ドル / 12.7 / 日本は円安により、競争相手を犠牲にして自国の経済成長を目指している (ブラント・米自動車政策会議会長)」

欧州 / ユーロ / 17.6 / 「(アベノミクスに)完全に懸念がないとは言えない(メルケル・独首相)」

中国 / 人民元 / 12.7 / 「日本の極端な緩和政策の対外的な影響を注視する必要がある(易綱・中国人民銀行副総裁)」

韓国 / ウォン / 13.6 / 「円安が大幅に進めば為替市場への介入など積極的に対応する(金仲秀・韓国銀行総裁)」

ロシア / ルーブル / 17.4 / 「世界が新たな通貨戦争といえる状況にさしかかっている(ウリュカエフ・ロシア中央銀行副総裁)」

(円の下落率は、各通貨に対する昨年 11 月 13 日と今年 1 月 25 日のレートを比較)

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政府・民間が結束 = 「アベノミクス」国際公約に成功

甘利明経済再生担当相が 27 日、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)から帰国した。 安倍晋三首相が経済再生に向けて掲げる大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を組み合わせた「アベノミクス」の国際公約化を果たした。 その陰には、停滞する日本経済の危機感を共有する安倍政権と民間の結束があった。

「甘利さんの説明はなかなか良かった。」 日本出身のある国際機関トップはダボス会議のパネル討論を終えた甘利氏に駆け寄った。 甘利氏は満面の笑みで応えた。 パネル討論では、国際通貨基金 (IMF) のラガルド専務理事や経済協力開発機構 (OECD) のグリア事務総長、カナダ銀行のカーニー総裁らが、アベノミクスへの理解や支持を表明。 円安誘導や中央銀行の独立性侵害、財政規律の維持放棄といった批判や懸念は鳴りを潜めた。

これには周到な根回しがあった。 まず、日本の金融緩和を人為的な円安誘導と批判する急先鋒で、今回のダボス会議でも「今の日本をやや懸念している」と述べたドイツのメルケル首相に安倍首相が直接電話して説得。 メルケル氏の懸念払拭に努めた。

民間のバックアップも大きかった。 政府が新設した産業競争力会議のメンバーでもある竹中平蔵慶大教授や長谷川閑史経済同友会代表幹事らダボス会議の「常連」が、グリア氏や著名投資家のジョージ・ソロス氏ら各界の有識者を集めた会合を 2 度にわたって開催。 これには、甘利氏や茂木敏充経済産業相のほか、安倍首相もテレビ電話で参加し、水面下で「日本応援団」づくりを進めた。

アベノミクスを無事、国際公約として打ち出したが、未踏の領域に踏み込んだ金融緩和によるデフレ脱却の成否はもちろん、財政規律と成長戦略の両立など、政権の実行力が試されるのはこれからだ。 (jiji = 1-27-13)