糖尿病治療薬アクトス、膀胱がん患者への使用制限求める 武田薬品工業の糖尿病治療薬アクトスが長期服用で膀胱(ぼうこう)がんの危険性が高まる可能性があると米仏で指摘された問題で、厚生労働省の調査会は 23 日、膀胱がん患者への使用を控えるよう医師らに求めることを決めた。 厚労省は 24 日にも医師向けの説明書を改訂し、膀胱がんを併発している患者への使用を控えることや、使用中の患者は定期的な尿検査などでがんの症状が出ないか確認することを書き込むよう同社に指示する。 患者向けの説明文書の作成も求める。 アクトスと同じ成分が入った同社の「ソニアス」と「メタクト」にも同様の対応を求める。 (asahi = 6-23-11) 筋肉が動かなくなる難病 ALS、新薬治験開始へ 東北大 全身の筋肉が次第に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症 (ALS)」の新しい薬の臨床試験(治験)を東北大が近く始める。 まずは薬の安全性を確認する段階から始めるが、難病の進行を遅らせることが期待できるという。 ALS は、運動ニューロンという神経細胞が次第に死滅して筋肉が動かなくなり、最後は呼吸もできなくなる。 発症した米大リーグ名選手の名前からルー・ゲーリッグ病とも呼ばれ、理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士が発症したことでも知られる。 原因はよくわかっていない。 研究を進めてきたのは、青木正志教授(神経内科)らのグループ。 1993 年、SOD1 という遺伝子が ALS の発症にかかわっていることを発見。 2001 年に SOD1 を操作し、人工的に ALS にしたラットの開発に成功した。 そのラットに、大阪大のグループが見つけた HGF (肝細胞増殖因子)というたんぱく質を投与すると、運動ニューロンを保護し、ALS の進行を遅らせることができた。 発症後の生存期間は 1.6 倍に延びた。 さらに、慶応大の岡野栄之教授らとサルの仲間のコモンマーモセットやカニクイザルで HGF の安全性を確認。 実際の患者に HGF を投与し、安全性や効果を確かめる治験を始めるところまでこぎ着けた。 (asahi = 6-22-11) 福島県民を 30 年にわたり健康調査 内部被曝も含め測定 東京電力福島第一原子力発電所の事故による福島県民への放射線の影響について 30 年以上にわたって見守る福島県の調査案の概要が、わかった。 7 月上旬にも空間線量が高い地区の住民代表を対象に、先行的な予備調査を始め、内部被曝も含めた被曝線量を実際に測るとともに、問診票での被曝線量の推計も出す。 住民の放射線影響評価をめぐり、長期間に及ぶ大規模調査は世界でも初めて。 予備調査の概要は、今月 18 日に、実施主体の県や関係省庁の担当者のほか、放射線医療の専門家らが集まる健康管理調査検討委員会で決まる見通し。 (asahi = 6-17-11) 神経細胞の作製短縮 慶応大チーム 皮膚から iPS 経ず 半月から 1 カ月ほどと短期間で皮膚の細胞から神経細胞をつくることに慶応大学の岡野栄之教授や赤松和土専任講師らの研究チームが成功した。 iPS 細胞(人工多能性幹細胞)を経ずに作製するため時間が 4 分の 1 以下で済む。 事故による脊髄(せきずい)損傷など緊急時の治療などへの応用が期待されている。 15 日からカナダで開かれる国際幹細胞学会で発表する。 岡野さんらは、マウスや人の皮膚細胞に iPS 細胞を作る時に使う 4 遺伝子を導入。 細胞の変化や神経幹細胞の増殖にかかわるたんぱく質などを使って培養に使う溶液を工夫。 すると神経細胞のニューロンと、その周囲にありニューロンの保護や栄養供給を担うグリア細胞がマウスでも人でも 18 - 30 日で作製できた。 人の皮膚細胞から iPS 細胞経由でニューロンやグリア細胞を作る場合、4 - 6 カ月かかるという。 (asahi = 6-15-11) ◇ ◇ ◇ iPS 抜きで神経細胞 米チームが人の皮膚細胞使い 人の皮膚の細胞に 4 種類の遺伝子を入れるだけで神経細胞に変化させることに、米スタンフォード大の研究チームが成功した。 皮膚などの体細胞から治療などに必要な細胞に直接、変化させる「ダイレクト・リプログラミング」と呼ばれる方法が人の細胞で成功したのは初めて。 研究チームは遺伝子 4 種類を人の皮膚細胞に入れて 4 - 5 週間培養した。 約半数が神経細胞の一種ニューロンになり、神経細胞として働くことも確認した。 遺伝子4種類のうち 3 種類は、マウスの皮膚細胞からニューロンを作る際、使った。マウスは 3 種類で足りたが、人の場合はもう 1 種類の遺伝子を追加しないとできなかった。 従来は、体の細胞を iPS 細胞(人工多能性幹細胞)にいったん変化させてから、改めて必要な細胞に変化させる方法が主体だった。 (asahi = 5-27-11) ◇ ◇ ◇ iPS 介さず神経幹細胞に 米研究所、マウスで成功 マウスの皮膚から神経細胞のもとになる神経幹細胞を、iPS 細胞(人工多能性幹細胞)を介さずに作ることに、米グラッドストーン研究所などが成功した。 iPS 細胞を使わないため、がんになるリスクを減らせる可能性がある。 神経幹細胞は増やしやすく、複数の種類の神経細胞を作り出せるので、幅広い応用が期待できるという。 26 日付の米科学アカデミー紀要に発表する。 成功したのは、米グラッドストーン研究所のシェン・ディン主任研究員ら。 京都大の山中伸弥教授が iPS 細胞を作るのに使った四つの遺伝子をマウスの皮膚細胞に導入した後、薬剤を使って遺伝子が働く時間が短くなるよう工夫した。 神経幹細胞ができる際に必要なたんぱく質を加えて培養したところ、皮膚細胞は iPS 細胞にはならず、そのまま神経幹細胞になった。 ディンさんは「ほしい細胞を作るには、培養の方法や期間などが大きなカギを握っていることが証明できた」としている。 iPS 細胞を介さずに、必要な細胞を直接作る技術は「ダイレクト・リプログラミング」と呼ばれ、世界中で開発競争が活発だ。 神経幹細胞を直接作る研究に取り組んでいる岡野栄之(ひでゆき)慶応大教授は「今回の研究は、遺伝子の組み合わせを見つけるのではなく、培養条件を変えるだけで、シンプルなのが特徴だ。 自分たちも同じコンセプトで、再生医療への応用を目指し、移植実験を含めて研究中だ。 近く、論文を発表したい。」と話した。 (竹石涼子、福島慎吾、asahi = 4-26-11) iPS、効率よく作製 「魔法の遺伝子」山中教授ら発見 iPS 細胞(人工多能性幹細胞)を効率よく作り、がん化するおそれのある不完全な細胞の増殖を抑える遺伝子を、京都大 iPS 細胞研究所の山中伸弥教授や前川桃子助教らのグループが見つけた。 山中教授が発見した従来の 4 遺伝子の一つと置き換えると、iPS 細胞の割合がマウスは約 20% からほぼ 100%、ヒトの細胞では約 10% から約 50% と純度が 5 5倍になった。 山中教授は「魔法の遺伝子だ。 臨床応用に向け大きな前進になる。」と話している。 使ったのは、受精前とその直後の卵子で現れる「Glis1」という遺伝子。 前川助教が、産業技術総合研究所のデータベースにある 1,400 余りの遺伝子の働きを調べて見つけた。 iPS 細胞はこれまで、体の細胞に 4 遺伝子を入れてつくっていた。 その一つ「c-Myc」はがん遺伝子として知られ、iPS 細胞の作製効率を大きく高める一方、iPS 細胞になり損ねた不完全な細胞も増やしてしまい、再生医療への応用の壁になっていた。 マウスの実験で、4 遺伝子を入れてできた細胞群のうち、iPS 細胞の細胞群の割合は約 20% だったが、c-Myc の代わりに Glis1 を使うと、3 回の実験いずれでもほぼ 100% になった。 ヒトの細胞でも、4 回の平均が約 10% から約 50% に上がった。 (asahi = 6-9-11) 重症患者に脳症多発、厚労省研究班設置へ 食中毒事件 焼き肉チェーン店での腸管出血性大腸菌による食中毒事件で、重症化した患者の多くが腎臓の働きが悪化するだけでなく、脳神経細胞が傷つく脳症も併発していることがわかった。 診療にあたる医師らは厚生労働省の研究班をつくり、治療法や重症化する患者の見分け方などの検討を始める。 富山県などによると、腸管出血性大腸菌 O111 や O157 に汚染されたユッケなどが原因とみられる今回の食中毒による入院患者は 5 月末現在で 41 人。 そのうち 31 人が腎臓の働きが悪くなる溶血性尿毒症症候群 (HUS) を起こした。 HUS は、腸管出血性大腸菌による食中毒で、重症化すると起こりやすい病状だ。 平均して全患者の 1 - 10% が起こすとされている。 一方、重い脳症を同時に引き起こす頻度はそれほど高くないとみられてきた。 旧厚生省の研究班は脳症発症は HUS 患者の約 5% と報告している。 ところが、富山県などで治療にあたっている医師らによると、今回は HUS を起こした 31 人の約 4 割にあたる 12 人が脳症を起こした。 亡くなった 4 人も含まれ、多くの脳症患者が一時期は人工呼吸器が必要になるなど重篤な状態に陥った。 HUS と脳症を起こした患者 2 人の治療にあたっている谷内江昭宏・金沢大教授(小児科)は、「詳細はまだ不明だが、従来より脳症が多く、しかも重症になる印象を受ける」と言う。 これまでの腸管出血性大腸菌の報告では重い脳症が起こる場合、HUS とほぼ同時期の発生が多かった。 今回は HUS 発症から数日経ってから症状が急速に変化し、脳症が起こることも少なくなかったという。 重症の脳症が多い理由はまだ解明されておらず、治療法も確立していない。 今回のケースでは、医師らは早めに特殊な透析を実施するなど試行錯誤しているのが現状だ。 治療法の確立と重症の脳症が起こる可能性の有無を早期に見極める方法を見つけるため、富山県の医師らが中心になり、厚生労働省の研究班を近く立ち上げる。 富山県や石川県などに入院している重症患者の症状や治療歴などの情報を交換し、なぜ脳症が多いのかという原因解明にも取り組む方針だ。 (大岩ゆり、asahi = 6-6-11) ◇ ◇ ◇ メニューに「生食用」表示、飲食店に要請へ 厚労省 焼き肉チェーン店「焼肉酒家(さかや)えびす」での集団食中毒事件で、厚生労働省は 9 日、ユッケなど生の牛肉を提供する飲食店に対し、同省の現行の衛生基準を満たした生食用の肉を使っていることをメニューなどに表示するよう求める方針を決めた。 表示によって、飲食店に衛生基準の順守を徹底させるのと、消費者の不安を取り除く狙いがある。 厚労省は食品衛生法に基づいて生食用の肉の取り扱い基準を罰則付きで新しく定める方針を示している。 基準のほか、生食用の表示も義務化する方向で消費者庁と協議を進める。 ただ基準ができるまで「半年はかかる(担当者)」ため、緊急的な措置として都道府県を通じて飲食店に協力を呼びかけることにした。 メニュー以外に、消費者が店を選ぶ際に参考にできるよう、看板や印刷物などへの表示も認める方針。 現在の衛生基準では、生食用の表示のない肉を卸業者などから仕入れても、飲食店で肉の表面を削り取るなどすれば、生食用として客に出すことができる。 このため、厚労省は卸業者と飲食店の契約では、生食用か加熱用か文書で交わすことも要請する。 (北林晃治、沢伸也、asahi = 5-10-11) ◇ ◇ ◇ 生肉販売に罰則ある基準創設へ ユッケ食中毒受け厚労省 焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす(本社・金沢市)」の集団食中毒を受け、厚生労働省は 5 日、罰則のある食品衛生法に基づいて、牛肉を生食として販売する際の基準を新たにつくると発表した。 基準ができるまでは、生肉を出している飲食店への監視指導を強めるとして、緊急的な立ち入り調査の実施を都道府県に要請した。 牛肉などの生食については厚労省の衛生基準があるが、強制力がないため飲食店の独自の判断で客に提供しているのが実態だった。 新たな基準は、汚染部位を取り除く際の指標や「生食用」の表示を定めた現行の衛生基準を基本とする。 法改正ではなく、内閣府の食品安全委員会や厚労省の薬事・食品衛生審議会の意見をふまえて決める。 厚労省の担当者は「可及的すみやかに検討する(厚労省の担当者)」という。 また、緊急的な立ち入り検査の対象は、ユッケなど牛肉の生肉を扱う飲食店や食肉処理業者、食肉販売業者。 現行の衛生基準を満たしているかどうか確認し、適合しない場合は、改善するまで飲食店への販売や客への提供の中止を求める、としている。 厚労省によると、5 日現在、「焼肉酒家えびす」をめぐる腸管出血性大腸菌による食中毒の疑いのある患者は、富山、福井、神奈川 3 県で計 75 人にのぼる。 うち 23 人が重症、4 人が死亡している。 細川律夫厚労相は、朝日新聞の取材に対し、被害が拡大していることについて「重く受け止めている。 汚染原因を調査し、食品衛生法の基準をつくることを検討する。」と述べた。 (北林晃治、及川綾子、asahi = 5-5-11) 「iPS 細胞で拒絶反応」に反論 京大・山中教授 iPS 細胞(人工多能性幹細胞)でも拒絶反応が起きると、米グループが先月発表した論文について、京都大の山中伸弥教授は 6 日、記者会見で「実験データの解釈に問題がある」と反論した。 iPS 細胞は患者自身の細胞からつくるため、臓器にして移植すれば、拒絶反応が起きないと期待されている。 だが、米カリフォルニア大のグループが、マウスに iPS 細胞を移植する実験で拒絶が起きたと、5 月 14 日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。 iPS 細胞をそのまま移植すると、いろいろな組織が含まれる腫瘍〈しゅよう〉ができる。 今回の実験は、この腫瘍を免疫が攻撃する程度をみる手法だった。 iPS はほかの細胞に比べて、拒絶のためにがんができにくかったとする論文内容について、山中教授は、「元は自分の細胞でも、がん化すれば免疫が反応して拒絶するのは当然だ」と述べた。 (asahi = 6-6-11) ◇ ◇ ◇ iPS 細胞なのに拒絶反応 再生医療応用に課題 さまざまな臓器の細胞にすることができ再生医療の切り札と期待される iPS 細胞(人工多能性幹細胞)の応用に新たな課題が見つかった。 従来は患者の細胞から作れば、移植で戻しても免疫拒絶反応は起きないと見られていたが、拒絶反応を起こす可能性があることが米カリフォルニア大研究チームによるマウスの実験でわかった。 14 日付の科学誌ネイチャー電子版に掲載される。 研究チームは、マウスの胎児の線維芽細胞から作った iPS 細胞を、まったく同じ遺伝情報になるよう操作したマウスの背中に皮下注射した。 遺伝情報が同じなら体が「異物」とみなして免疫拒絶反応を起こすことはないはずだ。 ところが、実験では移植した複数のマウスで拒絶反応が起きたという。 iPS 細胞の分析では免疫反応に関係する遺伝子が作製の過程で活性化された可能性があるという。 iPS 細胞は京都大の山中伸弥教授が開発した。 皮膚などの体細胞にウイルスを使って遺伝子を入れる手法で細胞が神経や心臓などさまざまな臓器・組織になり得る状態にリセットできることを示した。 治療への応用に向け、目的の臓器・組織にできるかや、効果や安全性の確認が課題になっている。 (大岩ゆり、asahi = 5-14-11) 「超悪玉」コレステロール、分子の形に原因 英チーム 悪玉コレステロールよりも心筋梗塞(こうそく)を起こしやすい「超悪玉」として注目される新種のコレステロールが、悪さをする仕組みを英ウォリック大チームが突き止めた。 米糖尿病学会誌の最新号に論文を発表した。 超悪玉は、生活習慣病である 2 型糖尿病の患者や高齢者の血中に最近見つかった。 悪玉である LDL コレステロールより、分子が小さく、比重がやや高いのが特徴だった。 詳しく調べたところ、LDL コレステロールに糖が結び付いて表面の形が変化すると「超悪玉」になり、血管の壁につきやすくなる性質を持つことがわかった。 血管が詰まると心筋梗塞などの原因となる。 (asahi = 5-30-11) 脳梗塞治療に白血病の薬 血流回復、後遺症減る 東海大 脳梗塞(こうそく)の発症初期に、白血病治療にも使われている血液や血管になる幹細胞を増やす薬を投与することで、発症後の後遺症を大幅に軽減することに東海大の研究チームが成功した。 神経細胞が死ぬのを防いだり、再生したりする効果があったと見られる。 7 月にも岡山大(岡山市)、藤田保健衛生大(愛知県豊明市)と共同で 100 人規模の臨床試験を始める。 研究結果は、28 日までスペインで開催中の国際脳循環代謝学会で発表された。 脳梗塞は、脳の血管が血の塊(血栓)などで詰まり細胞が壊死する病気で、年間 8 万人程度が死亡する。 助かっても言語障害や手足にまひが残ることが多い。 短時間で血流を回復すれば、機能が戻る可能性が高まるため、急性期と呼ばれる発症後 1 - 2 週間の治療が重要とされる。 (asahi = 5-28-11) 振りかけるだけで iPS 細胞 ウイルス使わずリスク低減 振りかけるだけで、さまざまな細胞になりうる iPS 細胞(人工多能性幹細胞)を作ることに大阪大の森正樹教授(消化器外科)らのチームが成功した。 振りかけるのは、遺伝子の働きを制御する分子「リボ核酸 (RNA)」の断片。 ウイルスを使う遺伝子組み換え技術に頼る従来の手法と違い、がん化の危険性は低く、手軽で安全性の高い作製法になると期待される。 26 日付の米科学誌「セル・ステムセル(電子版)」で発表する。 チームはマウスの細胞を調べ、何の細胞になるのか決まる前段階の「幹細胞」だけにある RNA 断片六十数個を発見。 うち特定の 3 種を組み合わせると一部の細胞が幹細胞に変わることを突き止めた。 できあがった幹細胞は iPS 細胞とほぼ同じ性質を持っていた。 さらに、ヒトの細胞でも同じ組み合わせで iPS 細胞が作れることを確認。 「mi-iPS (ミップス)細胞」と名付け、特許も申請した。 従来のウイルスを運び屋にして遺伝子を組み込む方法と比べて細胞内の遺伝子を傷つける心配がなく、がん化のリスクは低い。 断片を含む溶液を細胞にかけるだけでいいため、将来は iPS 細胞を簡単に作る試薬の開発なども期待できる。 iPS 細胞の作製法は、今回とは別の RNA を使ったり、がん化のリスクの少ないウイルスを使ったりするなど国内外で激しい開発競争が続いている。 今回の手法は iPS 細胞が得られる効率が 1% 未満と低いが、森教授は「現時点で世界で最も安全に iPS 細胞を作る方法といえる。 効率を上げて臨床応用に活用したい。」と話す。 (小林哲、asahi = 5-27-11) 血液でうつ病診断、簡便な検査法開発 リン酸濃度を測定 血液中に含まれるリン酸の濃度を測り、うつ病を診断する検査法を、慶応大の研究成果をもとにしたベンチャー企業が開発した。 従来、研究されてきた血液による診断法に比べ簡便なことが特徴。 健康診断で使うことで早期発見につながる可能性がある。 開発したのは「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(山形県鶴岡市)」。 22 日に、東京都で開かれる日本生物学的精神医学会で発表する。 同社は、国立精神・神経医療研究センターで「大うつ病性障害(うつ病)」と診断された 31 人と、年齢や性別の構成が近い健康な 35 人の血液を分析。 うつ病患者は、血漿中の「エタノールアミンリン酸」の濃度が低いことを見つけた。 このリン酸の濃度を調べて、うつ病患者を正しく診断できた確率は 82%、健康な人をうつ病でないと診断できた確率は 95% だった。 (asahi = 5-21-11) エイズ感染拡大、早期の投薬で歯止め 米研究所発表 エイズウイルスへの感染がわかった時点で、感染者に早期の薬物治療を行うことで、性交渉による感染がほぼ抑えられることが、世界 9 カ国で行われている大規模臨床試験(治験)でわかった。 ワクチンの開発が難航する中、エイズ拡大に歯止めをかける可能性がある画期的成果として米国立保健研究所 (NIH) が 12 日、発表した。 発表によると、治験は 2005 年からボツワナ、ブラジルなどの約 1,700 組のカップルの協力で行われた。 ウイルスに感染したカップルの一人が、検査結果が出た直後から抗ウイルス薬を飲み始めるグループと、免疫力を示す指標がある程度下がったあとに飲み始めるグループに分けて経過を観察したところ、前者は後者に比べパートナーが感染する確率が 96% も下がっていた。 エイズ対策は治療よりもワクチンによる予防が重要とする立場があるほか、副作用を恐れて症状が出るまで薬を服用しない感染者もいるため、今回の結果は対策全般に大きな影響を与えそうだ。 (ワシントン = 勝田敏彦、asahi = 5-13-11) 義務化された医療費明細書、患者の 8% 「もらってない」 医療費の内訳が分かる明細書発行が義務化された後も、医療機関によっては出していない実態が 20 日、厚生労働省の調査でわかった。 診療所は8%、病院では5%の患者が、医療機関側が発行しないとの理由で受け取っていなかった。 医療費明細書は、昨年 4 月から病院や診療所、保険薬局に発行が義務づけられている。 調査は昨年 12 月から今年 1 月にかけて全国の患者を対象に実施、約 5,100 人から回答を得た。 厚労省は「まだ対応が不十分」として、医療機関への指導を強める考えだ。 一方、患者側が明細書発行を希望せず、受け取らなかったケースも診療所で 23%、病院で 17% あった。 明細書について、「診療内容がわかり、とても参考になった」、「高額な治療費を払った時には内容を知るために必要」との肯定的な声の一方、「紙と手間の無駄。 必要なときのみでよい。」という意見もあった。 (asahi = 4-20-11) 治療薬ほとんど効かない結核菌 佐賀で 10 人集団感染 佐賀県は 15 日、既存の治療薬がほとんど効かなくなる「超多剤耐性結核菌 (XDR)」の集団感染を確認したと発表した。 県中部の医療機関などで今月までに患者 5 人と未発症感染者 5 人を確認。 厚生労働省によると、XDR の集団感染の報告例は国内初という。 XDR は普通の結核と同じ症状だが、薬の選択を誤ったり適切に飲まなかったりすると、薬が効かない菌に変わる。 治療薬が限られ、外科手術や長期入院も必要になるという。 県によると、2007 年 6 月、県内の 50 代男性の感染を確認。 かかりつけの県中部の医療機関の職員や患者を検診し、今月までに新たな患者 4 人と未発症感染者 5 人を確認。 うち 8 人は院内感染とみられる。 県は感染者の経過観察を続けるが「集団感染はひとまずストップした」という。 (asahi = 4-15-11) 多剤耐性遺伝子 NDM1 持つ菌、インドの水道水で発見 ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性遺伝子 NDM1 を持つ菌が、インドの首都ニューデリーの水道水などから見つかった。 病院などでは見つかっているが、外部の環境中で見つかったのは初めて。 耐性遺伝子の拡散が心配される。 英医学誌ランセット姉妹誌最新号が英豪チームの論文を掲載した。 チームが昨年 9 - 10 月、ニューデリーの水道水や水たまりの水を調べたところ、それぞれ 4%、30% の割合で NDM1 を持つ菌が見つかった。 その中にはコレラや赤痢を引き起こす菌も含まれ、抗生物質が全く効かないものもあった。 ニューデリーでは上下水道の整備が不十分なうえ、モンスーンによる洪水で汚水が飲料水に混じる可能性が考えられる。 チームのティム・ウォルシュ英カーディフ大教授は「人口密集地で飲用や料理などに使われる水から耐性菌が見つかった。 極めて憂慮される結果だ。」とコメントしている。 米国などではインドで治療を受けた人らから NDM1 が見つかっている。 日本でも昨年 9 月に栃木県の大学病院で見つかるなどして問題になった。 (ワシントン = 勝田敏彦、asahi = 4-14-11) ES 細胞から網膜生成 理化学研グループ、マウスで成功 いろいろな組織の細胞がつくれる万能細胞の ES 細胞(胚〈はい〉性幹細胞)から、多種の細胞が重なっている網膜組織をつくることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹グループディレクターらがマウスで成功した。 視細胞を含む 6 層の立体構造。 人工網膜をつくり、失明した患者に移植する再生医療につなげたいという。 グループは「眼杯(がんぱい)」と呼ばれる目の元になる組織に注目。 マウスの ES 細胞を培養液の中で浮かせた状態に保ち、眼杯ができる時に必要なたんぱく質を加え、マウスの胎児の眼杯にそっくりの組織を作りだした。 さらにこの組織の培養を続けた結果、6 種類の細胞が層になり、網膜そっくりの組織をつくることができた。 直径 2 ミリほど。 今後は移植実験で働きを調べる。 網膜のうち神経を守る「色素上皮細胞」は、すでに ES 細胞や iPS 細胞(人工多能性幹細胞)からつくられ、動物実験が進められている。 今回のように、光を受けて電気信号に変えて脳に伝える「神経網膜」も含む立体組織ができたのは初めてという。 「ヒトやサルの ES 細胞でつくった人工網膜をサルに移植する研究を始め、再生医療につなげたい」と笹井さんは話す。 (瀬川茂子、asahi = 4-7-11) 遺伝子傷つけず iPS 細胞作製 京大・沖田圭介講師開発 iPS 細胞(人工多能性幹細胞)の作製で、京都大の沖田圭介講師、山中伸弥教授らは、安全性を高めるためにウイルスを使わず、細胞の染色体に傷がつかない方法を開発した。 2009 年に米国で開発された DNA を使う方法を改良し、効率を高めた。 米科学誌ネイチャーメソッズ電子版に 4 日発表する。 iPS 細胞は、ウイルスの一種を運び屋にして遺伝子を細胞に導入して作製すると、ウイルスが遺伝子を細胞の染色体に入り込ませるため、もとからある遺伝子を傷つけてがん化させる危険性がある。 米グループは、iPS 細胞に必要な遺伝子を、染色体の外で複製する特殊な DNA に組みこむ方法を開発した。 沖田講師らはこの方法を使い、組みこむ遺伝子の種類の組み合わせを変えたところ、ウイルスを使う方法よりは効率が低いが、米グループの方法より効率が上がったという。 京都大は、拒絶反応にかかわる遺伝子を調べ、多くの人への移植が可能になるタイプの遺伝子をもつ人の歯髄から、この方法で iPS 細胞を作製した。 日本人の 2 割に拒絶反応が起こりにくいと期待される iPS 細胞ができたという。 (瀬川茂子、asahi = 4-4-11) 「乳児、水道水避けるより水分補給優先を」 小児科学会 東京都や栃木県などの水道水から国の基準(1 キロあたり 100 ベクレル)を上回る放射性ヨウ素が検出され、母親に不安が広がっているため、日本小児科学会など 3 学会は 24 日付で、水道水を飲んでも健康に影響を及ぼす可能性は極めて低いとする共同見解を発表した。 脱水症状の方が危険が大きいとして、「水分補給を優先して」と呼びかけた。 見解では「この基準は、放射性ヨウ素を、月単位または年単位で飲み続けた場合に危険性がある時の数値だ」としている。 むしろ水を控える方が乳児には危険だという。 学会は見解のなかで 4 つの指針を示した。 (asahi = 3-26-11)
インフルエンザ患者、2 週連続増 避難所で A 香港型流行 インフルエンザの患者数が 2 週連続で前の週を上回った。 国立感染症研究所(感染研)が 25 日発表した定点調査によると、最新の 1 週間(3 月 14 - 20 日)に新たに受診したインフルエンザ患者は 1 医療機関当たり 17.25 人(前週 16.81 人)だった。 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県などの避難所でも集団発生している場所があり、注意を呼びかけている。 先週に続き、被害を受けた岩手県の一部と福島県からの報告はなかった。 両県を除く 45 都道府県のうち 31 道府県で定点当たりの報告数が増えた。 推計では最新の 1 週間に受診した患者は全国約 74 万人(前週 68 万人)。特に 0 - 14 歳で増加がみられた。 警報発令レベルの「30」を超えたのは、山口 48.87 (前週 43.96)、大分 41.55 (同 37.67)、愛知 31.55 (同 35.64)、岐阜 30.59 (同 29.98)。 感染研感染症情報センターの安井良則主任研究官は「避難所では A 香港型の集団発生が目立つ。 高齢者が感染すると、肺炎になるなど重症化の恐れがある。 マスクをつけるなど、せきエチケットを徹底してウイルスを持ち込まないよう心がけ、もし発症者が出たら、避難所内で広がらないよう他の人と距離を置くなどして欲しい。」と話した。 他の地域では、北海道 20.49 (同 17.43)、山形 12.75 (同 11.68)、東京 15.28 (同 16.26)、埼玉 21.28 (同 20.28)、大阪 12.15 (同 10.79)、兵庫 13.4 (同 11.56)、福岡 29.81 (同 27.79)だった。 (asahi = 3-25-11) 肝臓の病気、血液 1 滴で即判定 肝炎・がんなど 9 種類 1 滴の血液から B 型、C 型肝炎、肝臓がんなど 9 種類の肝臓の病気を同時に判定できる - -。 こんな診断法を、慶応大などのグループが開発した。 30 分程度でわかるという。 肝臓の病気は症状が表に出るまで時間がかかるため、血液検査で早期発見できれば、治療にもつなげられる。 今後 2 - 3 年での実用化を目指すという。 人間の血液内には、細胞の活動により生まれる「代謝物」が約 3 千種類ある。 慶応大先端生命科学研究所の曽我朋義教授(分析化学)らは、病気ごとに、この代謝物の種類、濃度が異なることに着目。 代謝物の違いなどを測定できる装置を開発した。 その上で、東大と山形大の協力を得て、肝臓の病気を持つ患者ら 237 人の血液に特徴がないか調べた。 この結果、肝臓の病気には、5 - 10 種類程度の特定の代謝物があることが分かった。 また病気ごとに濃度も違った。 これらの特徴を比較することで、まだ発症していない B 型と C 型肝炎、B 型と C 型の慢性肝炎、薬剤による肝炎、肝硬変、肝細胞がん、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎の 9 種類の違いをほぼ正しく見分けることに成功した。 1 回の測定に必要な血液量は 0.1 ミリリットル程度で、費用も 2 万 - 3 万円ですむという。 すでに特許を申請し、食品会社と契約、製薬企業とも交渉中だ。 現在、肝臓の病気は、複数の検査を組み合わせて診断している。 ウイルスの有無や画像診断のほか、肝臓の組織をとって調べる方法などだ。 研究成果は近く欧州肝臓学会誌電子版に発表される。 B 型、C 型肝炎の感染者は、国内に 300 万人以上おり、曽我さんは「この検査法なら、ウイルス感染の有無だけでなく、病名もわかる。 早期診断が可能になることで、多くの命が救えるはずだ」と話している。 (岡崎明子、asahi = 3-10-11) 「リンゴ病」流行の兆し 9 割が子ども、難しい感染予防 両頬や体に赤い発疹が出る感染症「伝染性紅斑(こうはん)」が今年、4 年ぶりに流行の兆しを見せている。 患者は 10 歳未満の子どもが 9 割で、感染予防が難しく、妊婦がかかると流産の危険性が高まることから、国立感染症研究所が注意を呼びかけている。 子どもの両頬が赤くなるのが典型的な症状で「リンゴ病」とも呼ばれる。 流行期には年間 50 万人の患者が出ると推計されている。 ヒトパルボウイルス B19 が原因で、軽い風邪のような症状が 1 週間ほど続いた後、頬が赤くなる。 胸や腹、背中にも発疹が出て、はしか(麻疹)と間違えられることもある。 大人の場合は関節が強く痛み、丸 1 日動けないほど重い症状の人もいる。 ウイルスは患者のつばなどに含まれ、つばが飛んだり接触したりしてほかの人の口に入り感染する。 感染しても症状が全く出ない潜伏期間が 10 - 20 日間あり、この間にウイルスを周囲に出すため、予防が極めて難しい。 ワクチンはない。 感染研によると、最新の 1 週間(2 月 14 - 20 日)の全国定点調査では 1 医療施設あたりの患者数は 0.51 で、例年同時期と比べて多く、さらに増える傾向。 2007 年以来の流行になりそうだと感染研感染症情報センターの安井良則主任研究官はみる。 妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の恐れが生じる。 安井さんは「保育園や小学校で流行しているときは、妊婦の立ち入り制限も考えたほうがいい」と話している。 (熊井洋美、asahi = 3-4-11) パーキンソン病の薬、アルツハイマーに効果? 九州大 海外でパーキンソン病患者に使われている皮下注射薬アポモルフィンがアルツハイマー病の症状を改善させる可能性のあることが、九州大学大学院医学研究院の大八木保政・准教授(神経内科学)らの動物実験でわかった。 米国の神経学雑誌のオンライン版に掲載された。 遺伝子操作でアルツハイマー病の状態にしたマウスを使い、アポモルフィンを 1 カ月に計 5 回投与したグループと、投与していないグループ 8 匹ずつについて実験した。 直径 1 メートルのプールで泳がせ、ゴールの位置をどの程度覚えているかを調べた結果、投与したグループでは投与前と比べ、ゴールにたどり着く時間が半分になり、回数も 2 倍に増えるなど記憶機能の改善がみられた。 投与したグループを解剖して脳の組織を調べると、アルツハイマー病の原因物質と考えられている異常たんぱく質アミロイドβやタウたんぱくが減っていることも確認できたという。 国内の認知症患者は 200 万人以上で、10 年後には倍増するとみられている。 アルツハイマー病は高齢者の認知症の半分以上を占める。 進行を遅らせる薬はあるが、症状を改善させる根本的な治療薬は開発されていない。 アポモルフィンは国内では未承認。 大八木准教授は「今後、患者への有効性をみるための臨床研究をしたい」と話している。 (asahi = 3-3-11) 認知症に初の貼る薬、厚労省承認へ 進行抑える効果 体に貼るタイプの認知症治療薬が国内で初めて承認されることになった。 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会が 21 日、製造販売の承認を了承した。 薬がのみ込めない患者や、薬をのむことを嫌がる患者にも使うことができる。 貼り替えは 1 日に 1 回で、介護者の負担軽減にもつながると期待される。 了承されたのは、ノバルティスファーマ(東京都)の「イクセロンパッチ」と、小野薬品工業(大阪市)の「リバスタッチパッチ」。 いずれも薬効成分は同じで、アルツハイマー型認知症の治療薬としては国内で 4 品目目となる。 これまでの飲み薬と違って、背中や腕、胸などに貼って使う。 脳内の伝達物質の分解を防ぐ効果があり、症状の進行を抑えることができるという。 同じ薬は、海外では 81 カ国で承認されているという。 アルツハイマー型認知症の治療薬は、これまで「アリセプト」しかなかったが、昨秋以降、第一三共の「メマンチン(商品名・メマリー)」や、ヤンセンファーマの「ガランタミン(商品名・レミニール)」が相次いで承認されている。 (月舘彩子、asahi = 2-21-11) 脳の細胞再生成功、特殊なたんぱく質利用 名古屋市立大 病気などで失った脳の細胞を、脳内にある幹細胞から再生させることに、名古屋市立大のグループがマウスで成功した。 幹細胞が脳内で作り出した細胞は通常、未熟な状態のままだが、特殊なたんぱく質を注射すると一人前の細胞に成長させることができた。 脳性まひや脳梗塞(こうそく)などの治療法の開発につながると期待される。 再生できたのは、脳の神経細胞を保護したり栄養を補給したりする「グリア細胞」の一種。 血流が減って酸素が不足し、この細胞が死ぬことで起きる「脳室周囲白質軟化症 (PVL)」は、子どもの脳性まひの一因とされている。 脳にはグリア細胞などを生み出す幹細胞があり、細胞が失われると、新しく作ろうとする。 だが、同大の澤本和延教授と大学院生の加古英介さんらがマウスやサルなどを調べたところ、幹細胞から作られた細胞の多くは成長が途中で止まってしまい、脳の機能回復につながらないことがわかった。 そこで、成長を促すたんぱく質を PVL のマウスに注射したら、未熟な細胞の成長が進み、成熟した細胞が 1.5 倍に増えたという。 澤本教授は「脳の細胞は自然には再生しないとよく言われるが、人の手で再生を促せる可能性を示せた」と話す。 今後治療効果を詳しく調べ、サルでも同様の実験をする。 同大などでは、損傷した脳の細胞を iPS 細胞を使って再生する研究が進められている。 移植した脳の細胞を生着させるには、未熟な状態で移植して体内で成熟させる必要があるといい、今回の技術の活用も見込まれるという。 成果は 3 月 1 日から都内で開かれる日本再生医療学会で発表される。 (福島慎吾、asahi = 2-21-11) 虫歯の原因酵素、正体解明 歯周病など予防に期待 虫歯を引き起こす酵素がどんな形をしているか、静岡県立大、京都大、東京大のグループが解明し、17 日発表した。 この酵素は虫歯の元凶になる歯垢(しこう) = プラーク = の材料をつくる。 酵素の働きを止めて虫歯や歯周病を予防する新薬が期待できるという。 静岡県立大の伊藤圭祐助教らは、口の中の虫歯菌がつくるグルカンスクラーゼという酵素を、大腸菌を使って大量に合成し、X 線で形を詳しく調べた。 この酵素は、砂糖から粘りけのあるグルカンという物質をつくる。 この物質が虫歯菌や歯周病菌を包みこんで歯にくっつき、歯垢になる。 歯垢は有害物質を出して歯に穴をあけたり、歯茎をはれさせたりする。 これまでもこの酵素を止める薬が研究されていたが、腹をこわしたり、低血糖になったりする副作用のおそれがあった。 酵素の形が突き止められたので、効果的で副作用の少ない薬の開発がしやすくなるという。 米科学誌「ジャーナル・オブ・モレキュラーバイオロジー」電子版で公開される。 (鍛治信太郎、asahi = 2-18-11) 三重の養鶏場、高病原性鳥インフルと確定 全国 18 例目
記事コピー (11-29-10 〜 2-16-11) がん増殖抑制の遺伝子を確認、治療法・新薬に道 がん細胞増殖の原因となっている酵素「テロメラーゼ」の生成を、人の 5 番染色体にある遺伝子が抑えることを、鳥取大の久郷(くごう)裕之准教授(生命科学)のグループが確認した。 様々ながんに有効な治療法や新薬の開発につながる可能性がある。 成果は米科学誌「モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー」電子版に掲載された。 正常な細胞は分裂を繰り返すたびに、染色体を保護する部分(テロメア)が老化し、死滅する。 しかし、大半のがん細胞では、テロメアの老化を防ぐテロメラーゼが生成されるため、細胞が増殖を続けてしまう。 久郷准教授らは 2000 年から、マウスと人の皮膚がん細胞を使い、テロメラーゼの生成を抑える物質を探した。 がん細胞に 5 番染色体を入れると、テロメラーゼの生成が抑制されたことがきっかけになり、この染色体にある遺伝子「PITX1」が、テロメラーゼを作る遺伝子の活動を阻害していることを突き止めた。 (yomiuri = 2-11-11) |