COCOA の不具合「永久になくならない」 デジタル相 新型コロナウイルス感染者との接触を通知するスマートフォン用アプリ「COCOA (ココア)」の不具合について、平井卓也デジタル改革担当相は19日の閣議後会見で「不具合というのは永久になくなりませんので、この手のアプリは。今後何もない、ということはないと最初から言っておきます」と述べた。 COCOA では、一部の端末で通知がされない不具合が相次ぎ、18 日から修正版が配布されている。 平井氏は会見で、COCOA を所管する厚生労働省と、平井氏のもとの内閣官房IT総合戦略室で連携チームを近く発足させ、今後の運営にあたると説明。 「今後の不具合に関してはこちらで責任を持つ。 次に何か不具合が起きたら、私が記者会見しなきゃいけないという状況になる。」と述べた。 また、昨年 11 月からネット上で不具合が指摘されながら、厚労省が把握するのに約 2 カ月かかったことを受けて、連携チームでは有識者や民間技術者と情報交換する仕組みも検討すると表明。 「今回のような事案への対応などを経験値として、(9 月に予定する)デジタル庁の設置準備にも生かしていきたい」と語った。 (西村圭史、asahi = 2-19-21) ◇ ◇ ◇ COCOA、スピード開発あだ 首相会見後に余裕なくす 新型コロナウイルス感染者との接触を知らせるスマートフォンのアプリ「COCOA (ココア)」の一部で肝心の通知が届かなくなっていた問題で、不具合の内容や原因が昨年 11 月には指摘されていたにもかかわらず、厚生労働省が把握するまでに 2 カ月かかっていた。 短期間での開発を迫られたうえ、プライバシー保護のために障害情報の収集が不十分なまま利用が始まったことが背景にあるとみられる。 COCOA は、感染者から 1 メートル以内に 15 分以上いた場合に接触を知らせるアプリ。 約 2,500 万件ダウンロードされ、うち約 770 万件のアンドロイド版で、接触しても通知されない不具合が昨年 9 月末から続いていた。 iPhone (アイフォーン)版に問題は指摘されていない。 発表では、厚労省が不具合を委託先から知らされて把握したのは、今年 1 月 25 日。 だが、2 カ月前の昨年 11 月 25 日、COCOA の開発者らがプログラムを公開していたサイト「GitHub (ギットハブ)」に、不具合を指摘する書き込みがあった。 「zaruudon」と名乗る投稿者が「現在のアンドロイド版では(感染者との)接触が検知されることはないと思われます。」と指摘、原因も示した。 COCOA はもともと、日本マイクロソフトの技術者ら有志が昨年 3 月ごろから無償で開発していた。 だが 5 月初め、基本技術の提供元となる米グーグルとアップルが「公衆衛生当局が管理し、1 国 1 アプリに」と世界各国に求めたことで、厚労省が開発を引き継ぐことになった。 「対応、決めていなかったのが反省点」 5 月 25 日には安倍晋三首相(当時)が「利用開始のめどは 6 月中旬」と会見で発表。 引き継ぎから 1 カ月半のスピード開発になり、厚労省は「公募して選ぶ余裕もなく(関係者)」、感染者情報を管理する「HER-SYS (ハーシス)」を委託していた「パーソルプロセス & テクノロジー(東京)」に契約を追加する形で開発を随意契約した。 パーソルは IT 企業「エムティーアイ(東京)」に保守管理を再委託した。 厚労省によると、通知されない不具合は 9 月 28 日にあったバージョンアップが原因だった。 アプリの改訂では、事前に問題なく機能するかの確認が必須。 しかし、感染者側と接触者側の 2 台のスマホを使って動作確認すべきだったところ、接触者側の 1 台だけでしかテストしていなかったという。 結核感染症課は、最終的な責任が厚労省にあることは認めつつ、「GitHub に投稿されたような指摘を確認するのは委託先業者の責任だ」としている。 COCOA が、不具合の情報を端末から集める設定になっていなかったことも原因究明を難しくした。 「利用者のプライバシーに配慮」したためだったが、このほかにも公開直後から複数の不具合があり、9 月に有識者会議の了承を得て障害情報を集められるようになったのは 12 月 3 日になってからだった。 今回の不具合を厚労省が把握したとき、不具合の発生から 4 カ月が経っていた。 COCOA の有識者会議メンバーも務める楠正憲・政府 CIO 補佐官は「指摘がたくさん来たとき、契約の範囲内で業者にすべて対応してもらうのは難しい。 深刻な指摘にどう対応するか、事前に決めていなかったのが反省点だ。」と語った。 (小宮山亮磨、asahi = 2-14-21)
◇ ◇ ◇ 接触確認アプリ「出来は良くなかった」 デジタル相苦言 新型コロナウイルス感染者との接触を通知する政府のアプリ「COCOA (ココア)」が一部で機能していなかった問題で、平井卓也デジタル改革相は 9 日の閣議後会見で「はっきり言って、出来の良いアプリではなかったと思う」と苦言を呈した。 アプリを所管する厚生労働省と連携して改善を図る考えを示した。 コロナ禍のなかで一律 10 万円の現金給付で自治体の現場が混乱したことなどを踏まえ、平井氏は「デジタル系で国民の期待に応えられないような事案が結構出てきた」と指摘。 「COCOA なんか、もう、まさにその最たるもの」とし、「そもそも発注自体にも問題があったと言わざるを得ない」とも語った。 平井氏は「何とか COCOA を立て直さなきゃいけない。 私がどう関与するかはこれから考えたい。」とし、同日中に厚労省からヒアリングをする方針を示した。 (西村圭史、asahi = 2-9-21) ◇ ◇ ◇ COCOA の接触通知、昨年 9 月から届かず 一部端末で 新型コロナウイルス感染者と接触したことを通知するスマートフォンのアプリ「COCOA (ココア)」について、厚生労働省は 3 日、アンドロイド端末について、感染者との接触があっても通知されない状態が昨年 9 月以降続いていたと発表した。 厚労省によると、通知されない障害は昨年 9 月 28 日のアプリのバージョンアップに伴って発生。 アプリは陽性が分かった人と 1 メートル以内に 15 分以上接触した利用者に通知されるが、陽性登録があっても接触者に通知されない状態だという。 厚労省はシステムを改修し、2 月中旬にも障害を解消するとしている。 iPhone (アイフォーン)用は問題ないという。 アプリは 2日時点で約2460万件ダウンロードされ、陽性の登録は1万15件という。田村憲久厚生労相は「信頼を損ねる状況。おわび申し上げます。信頼回復できるよう最大の努力をしてまいります」と陳謝した。 (asahi = 2-3-21) 前 報 (7-21-20) フランス人が日本に戻って心底感じた「自由」 同じコロナ禍でもフランスとは様子が違う かつて日本がこんなに「自由」だと感じたことがあったでしょうか - -。 やっと日本に "帰って" 来ることができました。 日本は、25 年以上前、初めて来てから私が自然と受け入れることができた国(それとも私を受け入れてくれた国と言ったほうがいいでしょうか)です。 それなのに、今年 3 月にフランスに発ってからというもの、ここ何カ月も日本に戻って来たくても、なかなかそれがかないませんでした。 なぜなら日本は永住権を持っている、私のような外国人にさえ門戸を閉ざしてしまっていたからです。 これではまるで鎖国をしていた江戸時代と同じ。 やはり日本は島国だったのだ … と思ったのもつかの間、11 月にさまざまな手続きを経て、ようやく日本に戻ってくることができました。 そして、とても奇妙なことに、ここ日本でこれまでにないほどの自由を感じているのです。 どうやって入国したか その前に、どうやって日本に入国できたのかをお話ししましょう。 まずはフランスを発つ前にパリで PCR 検査を受け(出発の 72 時間前以内)、関西国際空港についてからも医療スタッフによる検査を再度受診(今度は唾液検査)。 その結果が出るまで 45 分待ち、陰性の場合は入国手続きを行います。 このとき、さらに厳重に検査結果を調べるほか、パスポートや搭乗券も通常時より厳しくチェック。 やっと終わったと思って前に進もうとすると、入国審査官から「ダブルチェック!」と呼び止められました。 この時、人生で初めて入国できるか不安に。 でも辛抱強く待っていると、ようやく最終的な OK が出ました。 パリから関西国際空港の機内には 40 人(400 席のうち)ほどしか乗っていませんでしたが、この日がボジョレーヌーヴォーの正式な解禁日ということもあり、飛行機はワインでいっぱいでした。 搭乗前に預けていた荷物を受け取ろうと、コンベアを見ると私のスーツケースがぽつん、と置いてあるだけでした。 もちろん私は公共交通機関を利用することが許されなかったので、大阪に住む知人が空港まで迎えに来てくれました。 それから、私は友人の自宅で 2 週間の自己隔離を行いました。 入国するのにあれだけ厳しかったので、入国管理局などからこの間、連絡があるのではないか、と思っていましたが、一旦入国してからはとくに追跡調査はありませんでした。 ただし、隔離されているとはいえ、やっと息ができるような気がしました。 道行く人たち、お店やレストランが開いている様子、友人たちの多くがいつものように忙しく仕事をしているのを見るだけで生きている心地がしました。 社会的、経済的活動がほぼストップしているフランスとは正反対です。 フランス政府の新型コロナウイルスへの対応は、あらゆるレベルで最初から悲劇的なものだったと私は思っています。 エマニュエル・マクロン大統領は、連日ように、まるで王様ように国民に話しかけます。 私たちが小さな子どもであるかのように。彼は非常に厳しいアナウンスをし、それから首相や関係大臣を登場させ、これから起こることを詳しく説明させます。 何がもう「許されない」のか、何が閉鎖されるのか、何が中止されるのか …。 今やフランスはひどい官僚主義と中央集権、そして国民の政府への信頼性の欠如により、恐怖に基づいたシステムができてしまいました。 国民を守る代わりに、国民を脅し、「規則」を守らなければ罰を与えられる。 何とも気が滅入ってしまう話です。 書店すら規制の「標的」に 3 月 10 日にフランスに到着したとき、街でマスクをしているのは私だけでした(「コロナ禍「フランス」は 1 週間で様変わりした」2020年3月24日配信)。 そのとき、多くの人は私のことを病気か、危ない人か、という目で見ていました。 当時、政府は、私たちはマスクをする必要はないとアナウンスしていました(が、数カ月後、これは覆されました)。 2 度にわたるロックダウン(都市封鎖)期間中は、外出するためには、戦時中のように外出理由を記載した「証明書」が必要となりました。 これを持っていないと、罰金を科せられます。 仕事はすべてテレワーク、レストランやバーも(論理的な説明もなく)現時点で 2 月まで閉鎖されることになっています。 確かにフランスでは、人口が日本の半分なのにもかかわらず、コロナによる死亡者がすでに 5 万 5,000 人に達しています。 もしここ数年の間、政府が病院の予算をこれほど削減していなければ、こうした問題は起きなかったかもしれません。 とはいえ、社会的、経済的、心理的影響を政府はあまり考えているようには見えません。 実際、フランス政府の政策には首を傾げたくなるものが少なくありません。 例えば、ロックダウン時の書店をめぐる規制です。 夏の間、多くの書店は人数制限を行ったり、顧客間の距離を保つなど感染予防対策を取りながら、店を開けていました。 実際、家にいる時間が長い今、本は心の健康を保つ重要な役割を果たしていました。 ところが、2 度目のロックダウンの際、政府は、書籍は生活に必要な必需品に当たらないとして、書店の閉鎖を決めました。 これに対して書店の経営者が、スーパーや大型店では本の販売ができるのになぜ個店を対象にするのか、と抗議すると、政府は大型店などでの本の販売を禁止しました。 次に「問題」になったのがアマゾンですが、なんとフランス政府はどうしたらフランス人がアマゾンで書籍を購入できないようになるか、を考えたのです。 こんな馬鹿げだことがあるでしょうか。 外出規制についても同じです。 2 度目のロックダウンが始まったとき、フランス政府は「散歩は 1 時間以内なら可能、ただし 1 キロ以内」という決定をしました。 これには何の根拠もありません。 これに対してフランス人が抗議を行った結果、1 日に外出できる時間は 3 時間に、移動できる距離は 20 キロにまで増えました。 ただし、なぜこの数字になったのかはいまだにわかりません。 日本とフランスの違いは? 日本では、賛否両論があるものの、「GoTo」キャンペーンが実施され、多くのお店がオープンし、人々は今までとほぼ同じように仕事をし、子どもたちは公園で遊び、サッカーの試合を観戦しています。 日本に帰ってきて日本の「エネルギー」に大きな感銘を受けました。 日本では「ワーケーション」のように、コロナ禍でも新しいアイデアを取り入れていることも素晴らしいと思います。 私がこうした点を称賛すると、日本人の友人たちは日本の習慣が感染拡大の抑制につながっていると話します。 家に上がる前に靴を脱ぐ、挨拶の際にキスや握手をしない、人との距離を自然と保つ、マスクを着用すること慣れている、そして手を洗う習慣がある(あるいはおしぼりを利用する)、ことなどです。 そして、何より日本人には自制心があるように見えます。 警察にチェックされなくても、多くの飲食店は要請されれば、夜 10 時には閉店するのですから。 日本で最も重要なのは、他人の目にどう映るか、人が自分たちをどう見るか、世間や社会が自分たちをどう見るかということです。 これは罰金よりはるかに強力です。 私から見ると、日本人のこうした態度はコロナと「共に (with)」、あるいはコロナ「後に (post)」生きるというもので、コロナに「対抗する」というものではありません。 ヨーロッパでは、ウイルスと「闘う (fight))」や「戦争 (war)」という言葉が使われています。 これは神道や仏教の影響かもしれません。 人間は自然の一部であり、欧米人のように自然は戦う相手ではないのです。 私はいつも「何よりも自由」に重きを置いています。 そして、フランス人にとって最も重要な原則は「liberte (自由)」だと思ってきました。 それなのに今のフランスには自由がなく、人々は罰を恐れるようになってしまいました。 今回日本に到着したときに感じたこの信じられないほどの開放感と安堵感を私はこれから先も忘れることはないでしょう。 自己隔離中でさえ、フランスに比べれば天国だったのですから …。 (ドラ・トーザン、東洋経済 = 12-20-20) 感染データ共有システム広がらず 保健所「逆に負担増」 新型コロナウイルスの全国の感染者データをオンラインで管理、自治体なども共有できる国の新システムが、十分活用されていない。 感染状況を素早く把握する切り札として 5 月に稼働したが、保健所の負担軽減のカギを握る医療機関による入力が広がらず、データの正確性にも課題が残る。 感染拡大を防ぐ対策に欠かせない情報の共有と活用は道半ばだ。 新システム「ハーシス」、5 月稼働 新システム「HER-SYS (ハーシス)」は感染者の発生や入退院などの情報をオンラインで入力。 感染者一人ひとりの症状の変化や入退院など経過を素早く、一元的に把握できるのが特徴だ。 従来は、感染者を確認した医療機関が手書きの「発生届」をファクスなどで保健所に送り、保健所が厚生労働省や国立感染症研究所とつながる「感染症サーベイランスシステム (NESID)」に入力していた。 しかし 3 月以降の「第 1 波」の流行時、業務が集中した保健所で情報の収集や入力が滞った。 ネシッドは感染者の症状の変化や経過は追えない。 ネシッドに情報がない濃厚接触者の調査などは、保健所同士が電話やファクスなどで個別に調整していたが、ファクスが通信中で情報がすぐ届かず、相互の連絡や行政への報告が遅れるなどした。 それを解決するのがハーシスで、ネシッドに入力していた発生届に加え、感染者の入院、宿泊療養中といった経過、濃厚接触者の情報など、必要なデータをすべてシステムに打ち込めるようにした。 ネットを通じて国や都道府県、保健所双方が共有でき、国や自治体の対策に生かすことが期待された。 主に医療機関が入力することで、保健所の負担軽減も目指した。 費用は感染拡大を防ぐシステム整備などとして 1 次、2 次補正予算に盛り込まれた計約 23 億円の事業から出ている。 厚労省は現時点でハーシスにどのくらい支出したかは明らかにしていない。 5 月下旬から導入が始まり、保健所を設置する全国 155 自治体すべてに入力や閲覧権限が与えられた。 厚労省「利点多い」と強調 ハーシス導入の利点は多いと厚労省は強調する。 例に挙げるのが沖縄県。 医療機関での入力が普及し、保健所や県の素早い情報の把握や公表につながっているという。 医師も患者の情報がすぐに探せて経過が追える点などにメリットを感じているとする。 しかし、当初参加に慎重だった自治体があり、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は 7 月の会見で、感染防止策を取るうえで即時のデータ収集が重要と指摘、「感染が拡大しているのにデータが遅いことが起こり続ける。 早急に解決してほしい。」と訴えた。 全自治体で利用が始まったのは 9 月中旬だ。 オンラインで感染者の情報を管理することに、多くの自治体で個人情報保護条例による審査手続きが必要となったためだ。 厚労省の担当者は「個人情報保護の審査にこれほど時間がかかるのは想定外だった」と漏らす。 さらに肝心の医療機関による入力は、感染者が多い都市部で広がっていない。 都市部の複数の保健所の担当者は「忙しい医療機関に入力を押しつけるわけにはいかない」と話す。 東京都では多くの保健所が医療機関から発生届をファクスで受け取り、ハーシスに入力している。 都の担当者は「システム入力に習熟するのは簡単ではなく、日々の診療で忙しいなかで医療機関の負担にもなる。 正確な情報を入力するためにもまずは保健所で集約して入力している。」 横浜市も医療機関による入力は 2 割に満たず、残りは保健所の職員が打ち込む。 大阪府でも保健所が発生届を入力している。 医療機関にシステムが導入されて混乱が生じれば医療体制に影響する恐れがあると、府から通知があったという。 府の担当者は「医療機関にとって入力は手間。 入力した情報の確認などで混乱する恐れもある。」と話す。 結果的に保健所の負担軽減にはつながっていない。 「電話のほうが …」 データの精度も不明 ハーシスはネシッドより感染者の経過など入力項目が多い。 入力欄は最大 120 - 130 項目にのぼる。 関東地方のある保健所の担当者はこぼす。 「ハーシスは国がデータを吸い取るための便利グッズでしかない。 保健所の業務量は増えるだけだ。」 こうした不満の声を踏まえ、厚労省は今月、項目に優先順位をつける方針を示した。 発生届に書く情報や、現在の患者の状態など最優先に入力する項目を 40 程度に絞る。 入力の負担を減らし、必要最低限の情報を素早く、確実に入力してもらうように促す。 また、ハーシスへの不満はシステムの使いづらさにもある。 例えば、A 市の感染者が B 市や C 区に住む人と飲み会をした場合、濃厚接触者の検査を B 市や C 区に頼むことになる。 ある保健所の担当者は「ハーシス上で頼めるのが『売り』の一つだが、打ち込む画面も使いにくい。 ファクスやメールで依頼した方が早くて楽。」という。 都内のある保健所は、濃厚接触者の健康状態の確認のためにかける電話が、今月でも 1 日 150 件にのぼる。 ハーシスは感染者や濃厚接触者本人が入力できる機能もあり、これを使ってもらえば職員が電話をかけずに済むが、「デジタル化と言いつつハーシスは使い勝手が悪い。 結局電話で聞いたほうが早い。」と担当者はいう。 ハーシスは感染者の平均年齢や、何人が自宅療養中なのかなどを一覧で見ることができない。 独自に作ったデータベースで感染者の健康状況などを管理している自治体があるのはこのためだ。 東京都内の保健所では都から派遣された職員に、独自のデータベースへの入力を手伝ってもらっているところもある。 インフルエンザと新型コロナの同時流行を見越して、地域のクリニックなどでも新型コロナの検査が想定されている。 関係する医療機関が大幅に増えて情報収集がより大変になる。 厚労省の担当者は「ハーシスの利点や、入力がそれほど負担にならないことを理解してもらい、医療機関での入力を広げたい」と話す。 保健所行政に詳しい浜松医科大の尾島俊之教授(公衆衛生学)は「日本はデータ収集のデジタル化が遅れており、ずっと求められてきた。 しかし医療機関と保健所は紙のやりとりのほうが早く、メリットを感じにくかった。」と指摘。 「デジタル化が機能すれば保健所業務の効率化や細かいデータ分析もできる。 ハーシスは短期間で作ったシステムのため、保健所の意見を取り入れながら改良していく必要がある。」と語る。 正確な感染者のデータを速やかに集めて分析できないと最新の感染状況が分からず、適切な対応や判断ができない。 ハーシスの活用を議論する厚労省の専門家組織の作業部会の 7 月の会合では「ネシッドとハーシスどちらも十分に活用できていない。 速やかに改善すべきだ。」といった意見が委員から出ていた。 しかし、感染研が 8 月下旬に公表した国内の感染状況の分析はハーシスの情報は使わず、従来通りネシッドの情報でしか行えていなかった。 感染研の分析は厚労省に助言する専門家の会合や、政府の分科会で活用されるが、感染研がハーシスに直接アクセスできなかった。 厚労省がハーシスのデータをダウンロードして提供することは可能だったが、うまく伝わっていなかった。 厚労省は 9 月上旬、感染研が直接データにアクセスできるようにシステムを改修した。 また、厚労省がハーシスで集めた情報や、分析した結果を公表できる見通しは立っていない。 生年月日など感染者の情報の入力漏れや間違いが一定程度確認されており、データの精度を確保する仕組みが必要なためだ。 ネシッドは保健所、地方衛生研究所などでチェックしていた。 厚労省が日々公表する感染者数は、都道府県の発表を集計したものでハーシスは使っていない。 夏の「第 2 波」の流行でも、ハーシスは全国的には活用されず、課題は積み残されたままだ。 厚労省の専門家組織の作業部会では、データに間違いがないか感染研や地方衛生研究所がチェックする仕組みが必要という意見が出て、方法を検討している。 作業部会では委員から「医療機関に(ハーシスに)入力するインセンティブ(動機付け)がある仕組みとすべきだ」といった指摘もでている。 (土肥修一、後藤一也、asahi = 9-21-20)
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