政策活動費全廃など政治改革 3 法案が衆院可決 今国会での成立確実に

政治資金規正法改正案など政治改革関連 3 法案は 17 日、衆院本会議で与野党の賛成多数で可決され、衆院を通過した。 野党 7 党が提出した、公開の義務がない「政策活動費」の全廃法案に自民、公明両党が賛成した。 自民は政策活動費を廃止する代わりに、外交の秘密にかかわる支出などを非公開にできる「公開方法工夫支出」の新設を提案していたが断念した。

衆院で可決されたのは政策活動費の全廃法案の他に、政治資金全般を監視する第三者機関の設置を盛り込んだ法案(国民民主党、公明提出)、外国人・外国法人の政治資金パーティー券の購入禁止や政治資金収支報告書のデータベース化などを盛り込んだ法案(自民提出)。 参院でも可決される見通しで、今国会での 3 法案の成立は確実になった。ただ、最大の焦点だった企業・団体献金を禁止する法案(野党 4 党派提出)の採決は見送られた。 与野党は来年 3 月までに結論を得ると申し合わせている。 (asahi = 12-17-24)


補正予算案、異例の修正 衆院通過、年内成立へ

今年度補正予算案は 12 日、衆院本会議で修正の上、自民、公明、日本維新の会、国民民主の 4 党などの賛成多数で可決し、衆院を通過した。 自公は立憲民主党の修正要求に応じ、28 年ぶりに予算案を修正する異例の対応を取ったほか、維新や国民民主にも譲歩した。 参院では与党が過半数を占めており、今国会での成立は確実となった。

自公は、立憲の要求の一部を受け入れ、当初予算の予備費から 1 千億円を能登半島の被災地の復旧・復興に充てる修正案を予算委員会に提出。 本会議では、この修正を反映した予算案を採決し、自民、公明、維新、国民民主、参政党が賛成。 立憲、れいわ新選組、共産党、日本保守党などが反対した。 立憲は修正部分は評価したものの、複数年度にわたる事業に支出できる「基金」への支出削減の要求が反映されていないとして、本会議での修正案採決で反対に回った。 政府の予算案が修正可決されるのは、1996 年の第 1 次橋本内閣以来、28 年ぶりだ。

少数与党となった石破内閣は野党に譲歩することで、補正予算案への協力を取り付けた。 国民民主との間では、所得税がかかる年収の最低ライン「103 万円の壁」について、178 万円を目指して来年から引き上げることで合意。 維新に対しても、同党が求める「教育無償化」について 12 日、自公維の協議体を立ち上げることで合意した。 石破内閣にとって、最初の関門である補正予算案の年内成立にはめどをつけた形だ。 ただ、政治改革では、石破茂首相が目指す年内決着の見通しは立っていない。

補正予算案の一般会計の歳出は約 13 兆 9 千億円。 住民税非課税世帯向けの給付金や電気・ガス料金、ガソリン代の補助などに 3 兆 3,897 億円を計上したほか、基金にも 3.5 兆円を計上。 能登地域などの復旧・復興には約 7 千億円を盛り込んだ。 規模はコロナ禍から膨張を続けており、財源の約半分の 6 兆 6,900 億円を国債(借金)の追加発行で賄う。 (国吉美香、asahi = 12-13-24)


総額 13.9 兆円の補正予算案が審議入り、野党「規模が過大だ」

政府は 9 日、一般会計の総額が 13.9 兆円にのぼる補正予算案を国会に提出した。 予算の規模はコロナ禍から膨張したままで、歳入の約半分は借金で賄う。 政府は年内の成立をめざすが、野党側は「規模が過大だ」などと追及の手を緩めない。

補正予算案は、賃上げ環境の整備など「日本経済・地方経済の成長」に 5 兆 7,505 億円、住民税非課税世帯向けの給付金や電気・ガス料金、ガソリン代の補助など「物価高の克服」に 3 兆 3,897 億円、能登地域の復旧・復興など「国民の安心・安全の確保」に 4 兆 7,909 億円を盛り込んだ。 総額で 13 兆円超の補正規模は、リーマン・ショックや東日本大震災の対応時に相当する。 複数年度にわたる事業に支出できる「基金」にも 3.5 兆円を計上した。 ラピダスをはじめとする半導体産業の支援には特別会計分も含めて 1.5 兆円を充てた。 昨年度に設置したばかりの「宇宙戦略基金」にも 3 千億円を積み増した。

この日は衆参両院の本会議があり、衆院では立憲民主党の酒井菜摘氏が、首相が衆院選公示日に補正予算の総額を示したことを挙げ「(公示日時点で)必要な施策の積み上げができていたのか」と追及。 日本経済の現状を踏まえれば、今回の補正予算案が「過大な財政出動ではないか」と指摘した。 石破茂首相はデフレ経済からの脱却と、成長型の経済への移行を確実なものにするためだと強調し、「速やかに実行すべき政策を積み上げた結果だ」と述べた。

日本維新の会の三木圭恵氏も「規模ありきだ」と批判。 「宇宙戦略基金など基金事業は長期にわたって執行するもので、緊要性の要件について疑念がある」と問うた。 首相は「必要な政策を積み上げた結果で、規模ありきとの批判はあたらない」と主張。 宇宙戦略基金について、「国際競争力の強化等の観点から、迅速な支援が必要。 新たなプロジェクトを速やかに採択できるよう、補正予算で措置する。」と述べた。 補正予算案では、財源の約半分の 6 兆 6,900 億円を国債(借金)の追加発行で賄う。 (笠井哲也、asahi = 12-9-24)


野党 4 党派が規正法再改正案の共同提出で調整 国民民主は参加見送り

立憲民主党と日本維新の会、共産党、衆院会派「有志の会」の野党 4 党派の政治改革の責任者は 27 日、国会内で会談し、28 日召集の臨時国会で企業・団体献金の禁止と政策活動費の廃止を目指すことで一致した。 ただ、国民民主党とれいわ新選組は会談の呼びかけに応じなかった。 野党間の歩調はそろわない状況が続いている。

立憲の大串博志代表代行は会談で、企業・団体献金の禁止と政策活動費の廃止を挙げ、「特に重要な論点との思いを共有し、野党として法案をまとめたい」と呼びかけた。 維新の藤田文武幹事長は「大きなアジェンダだ。 法案をテーブルに上げたい。」と応じ、共産の塩川鉄也国会対策委員長と有志の福島伸享氏も同調した。 野党 4 党派は政治資金規正法の再改正案の共同提出に向け調整に入る。

26 日の与野党責任者による協議では、企業・団体献金の禁止をめぐり否定的な自民党に対し、立憲・維新・共産・れいわが必要性を主張。 政策活動費の廃止では、自民が外交の秘密などを理由に非公開の余地を残していることに対し、野党側は「シンプルに廃止を(藤田氏)」などと問題視した。 27 日に集まった野党 4 党派は当面、この 2 つの抜本改革を掲げて国会で自民と対峙する構えだ。

立憲幹部、国民民主の対応に「難癖だ」

ただ、同じ野党の国民民主とれいわは 27 日の会談に姿を見せなかった。 自公が衆院で過半数割れするなか、特に 28 議席を持つ国民民主は経済政策で自公に接近して存在感を高めている。 政治改革の議論でも、野党の枠組みに入るより単独で行動した方が自公との交渉の幅が広がると判断したとみられる。 野党による法案の共同提出の動きに玉木雄一郎代表は「パフォーマンスだ」と突き放した。

一方の立憲・大串氏は、立憲が準備中の企業・団体献金禁止法案の不備を強調する国民民主の姿勢に、「やりたくないがゆえの難癖みたいな話だ」と指摘した。 (大久保貴裕、松井望美、asahi = 11-27-24)


政府、計 13.9 兆円の経済対策を閣議決定 物価高対策に 3.4 兆円

政府は 22 日、物価高対策などを柱とする総合経済対策を閣議決定した。 対策の規模は国の一般会計の歳出で 13.9 兆円程度の見通しで、昨年度(13.2 兆円)を上回る。 自民、公明、国民民主の 3 党合意を受け、所得税がかかる年収の最低ライン「103 万円の壁」の引き上げも明記。 政府は、経済対策の裏付けとなる今年度補正予算案を 28 日召集の臨時国会に提出し、年内成立をめざす。 国民民主の賛成を得て成立する公算が大きい。

経済対策の三つの柱のうち「日本経済・地方経済の成長」に 5.8 兆円、「物価高の克服」に 3.4 兆円、「国民の安心・安全の確保」に 4.8 兆円を一般会計から支出する。 財政投融資や特別会計を含む「財政支出」は計 21.9 兆円程度、民間が使うお金を含めた事業規模は計 39 兆円程度を見込む。 石破茂首相は「暮らしが豊かになったと感じてもらうためには、現在、将来の賃金、所得が増えることが必要だ。 引き続き党派を超えて優れた方策を取り入れ、政策を前に進めてまいりたい」と記者団に語った。

「物価高の克服」では、住民税非課税世帯に対して 3 万円を目安に給付し、子育て世代には 1 人当たり 2 万円を加算する。 電気・ガス料金の補助は来年 1 月に再開し、3 月まで続ける。 年内が期限だったガソリン補助金も補助額を縮小しながら当面続ける。

「日本経済・地方経済の成長」では、持続的・構造的な賃上げに向けた取り組みの推進のほか、AI (人工知能)・半導体分野に 2030 年度までの 7 年間で 10 兆円以上の公的支援を実施すると盛り込んだ。 「国民の安心・安全の確保」では、能登半島地震の復旧・復興のほか、災害時に避難所となる全国の学校体育館への空調整備を加速するとした。 SNS を通じた闇バイトによる強盗・詐欺への対策強化も盛り込んだ。

自民、公明両党が 10 月の衆院選で少数与党となったことを受け、補正予算案への協力を取り付けるため国民民主の主張も反映された。 「年収 103 万円の壁」については「来年度の税制改正の中で議論し、引き上げる」と明記。 ガソリン減税についても「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」とされた。 (宮脇稜平、asahi = 11-22-24)

総合経済対策の主な内容
低所得世帯向け給付金 3 万円(子ども 1 人につき 2 万円加算)
来年 1 - 3 月に電気・ガス代補助再開、ガソリン補助金は来年 1 月以降も継続
30 年度までの 7 年間で AI・半導体産業に 10 兆円以上の公的支援
新しい地方経済・生活環境創生交付金を創設
能登半島地震の復旧・復興
「闇バイト」対策として警察の相談対応などを強化
* 「103 円の壁」は、25 度税制改正の中で議論し引き上げる
* 「ガソリン減税」は、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る


国民と立憲・維新、規正法再改正で一致 企業・団体献金禁止は温度差

国民民主党は 5 日、立憲民主党と党首会談、日本維新の会と幹事長会談を相次いで行い、自民党派閥の裏金問題を受けた政治改革の実現に向け、年内に政治資金規正法の再改正を目指すことで一致した。 ただ、「企業・団体献金の禁止」の是非では立憲や維新と距離があり、野党間連携の先行きは不透明だ。

「自公過半数割れの(衆院選の)民意は、政治とカネの問題に決着をつけてほしいということ。 野党間で協力し、政治資金規正法の再改正などを与党に迫っていこうと一致した。」 国民民主の玉木雄一郎代表は立憲の野田佳彦代表と国会内で会談後、記者団に胸を張った。 野田氏も「早く決着をつけ、来年を迎えられるようにしたらいい」と述べ、連携を図る考えを示した。 両党首は外交・安全保障や原発を含むエネルギーなどの基本政策の協議を進めることも確認。 野田氏は国民民主が掲げる「103 万円の壁」の引き上げについても、「突破しようという動きに敬意を表する」と協力する考えを示した。

玉木氏「企業・団体献金が悪、という立場をとらない」

良好な関係を演出した両党だが、政治改革の「企業・団体献金の禁止」では温度差もみられた。 玉木氏は野田氏との会談で、政治改革のメニューとして、@ 政策活動費の廃止、A 調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開・残金返納、B 政治資金をめぐる第三者機関の早期設置 - - の 3 点を挙げた。 国民民主が以前から主張してきた内容で、石破茂首相も 10 月末にこの 3 点を検討する考えを示している。

これに対し野田氏は、会談で「企業・団体献金の廃止などを含め、野党案をまとめていこう」と追加で提案した。 だが玉木氏は、立憲などの野党案では、各種業界が立ち上げた政治団体であれば献金が可能とし、明確な回答を避けたという。 企業・団体献金が焦点となるのは、政治とカネの問題で長く「抜け穴」と指摘されてきたからだ。 議員個人に対する企業・団体献金はすでに禁止されているものの、政党への献金や政治資金パーティー券の購入は可能で、政党や政治家にとって重要な資金源となってきた。

それは労働組合など団体からの支援を受ける立憲や国民民主も同様だ。 玉木氏は会談に先立つ会見で「企業・団体献金が悪で個人献金が善だ、という立場をとらない」と強調。 「各党一致するなら与野党でまとまってやろう」と述べ、与野党が足並みをそろえる必要性を強調した。

維新との会談でも温度差がみられた。 国民民主との幹事長・国会対策委員長会談後、維新の藤田文武幹事長は、「献金をやめようと我々は強く訴えてきた。 話を聞いたが『すぐやります』と明言はなく、ちょっと歯切れが悪かった」と記者団に説明。 国民民主の古川元久国対委員長は「特に話は出ていません」と語るのみだった。(松井望美、大久保貴裕)

改正政治資金規正法の再改正 森山幹事長「まとまれば」

自民党派閥の裏金事件を受けて 6 月に改正された改正政治資金規正法の再改正について、自民党の森山裕幹事長は 5 日の記者会見で、「(年内に予定されている臨時国会で)協議をし、まとまれば改正をしていく」と前向きな姿勢を示した。 同法は、政治資金パーティー券購入者の公開基準額の引き下げや政策活動費の見直しなどを柱に改正されたが、検討事項が多く実効性が不十分として、野党が更なる改正を求めている。 石破茂首相は衆院選翌日の 10 月 28 日の会見で、政策活動費の廃止や政治資金の使い道を検証する第三者機関の設置などに早期に取り組むと表明している。 (asahi = 11-5-24)

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国民・玉木氏、野党で企業・団体献金禁止法案の提出「一致なら賛成」

国民民主党の玉木雄一郎代表は 3 日、フジテレビの番組に出演し、企業・団体献金を禁止する法案を野党が提出することについて、「一致してやるなら我々は賛成だ」と述べた。 国民民主はこれまで企業・団体献金禁止に慎重姿勢を示していた。 玉木氏が、司会者から「野党が一致して企業・団体献金禁止法案を出せば政治の風景は変わる」と問われて答えた。 企業・団体献金の禁止は、立憲民主党や日本維新の会、共産党などが訴える一方、与党は消極的な立場を取っている。

玉木氏は番組で「企業献金が悪で、個人献金は善という考えはとらない」と述べたうえで、「タイムリーで公平な公開を義務付けることが最も大事だ」とも話した。 11 日召集予定の特別国会に向け、国民民主は 5 日に立憲との党首会談や野党の国会対策委員長会談を控える。 立憲の野田佳彦代表は自民派閥の裏金問題を受けた政治改革での野党連携を模索しており、企業・団体献金の禁止の是非が野党間協議の論点の一つになりそうだ。

また玉木氏は番組で、「基礎控除等の合計」を103万円から178万円に引き上げる国民民主の減税策について、「超富裕層、富裕層の人たちには、担税力があるということで、少しご負担いただく話は検討していく必要がある」と言及。 高所得者への優遇策にならないよう工夫が必要との考えを示した。 与党から連立入りを求められた場合の対応については「首相、あるいは他の大臣も含めて、連立入りはまったく考えていない」と重ねて否定した。 (笹井継夫、asahi = 11-3-24)


石破首相、中国の習氏と 11 月中旬に初会談へ APEC にあわせ調整

日中両政府が、南米ペルーで 15、16 日に開かれるアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議にあわせ、石破茂首相と中国の習近平(シーチンピン)国家主席との初めての会談を行う方向で調整していることがわかった。 複数の政府関係者が明らかにした。 首脳会談では、日中の「戦略的互恵関係」の推進を確認するほか、東京電力福島第一原発の処理水放出による日本産水産物の禁輸措置撤廃などを求めるとみられる。 首相は APEC の後、18、19 日にブラジルで開かれる主要 20 カ国・地域首脳会議(G20 サミット)にも出席する方針。 日程調整が難航した場合は、G20 にあわせて再調整する方針だ。

日本の首相が習氏との首脳会談を行うのは、昨年 11 月に米サンフランシスコで開催された APEC の時以来、1 年ぶり。 昨年の会談では、岸田文雄前首相と習氏との間で、2006 年に打ち出され、08 年に日中共同声明に盛り込まれた戦略的互恵関係の推進が改めて確認された。 今回も引き続き確認する方向だ。

習氏が原発処理水を「核汚染水」と呼び、前回の会談で打開策が見いだせなかった中国による日本産水産物の全面禁輸措置について、日本側は協議の進展を期待している。 今年 9 月には、日本政府と国際原子力機関 (IAEA) が、中国も交えた処理水のモニタリング(監視)で中国の採水行為などを容認することで合意。 中国側は、禁輸措置を緩和する方向を表明していた。

ただ両国の間には複数の懸案事項も残る。 広東省深セン市で日本人学校の男児が襲われ死亡した事件をめぐり、石破首相は引き続き動機の解明や邦人保護を求める方針だ。 8 月の中国軍機による日本の領空侵犯といった中国軍の活動についても懸念を示すとみられる。 (松山紫乃、asahi = 11-1-24)


石破首相、続投の意向「職責を果たしてまいりたい」

衆院選から一夜明けた 28 日午後、石破茂首相(自民党総裁)は記者会見で、自身が勝敗ラインに設定した「自民党と公明党で過半数」を割ったことへの責任を問われ、「現下の厳しい課題に取り組んでいく。 職責を果たしてまいりたい。」と述べ、続投する意向を表明した。 衆院選で自公は 215 議席にとどまり、過半数(233 議席)を割り込んだ。 自民単独でも 191 議席で公示前の 247 議席から大きく減らした。 党執行部の責任が問われており、記者会見の前には、小泉進次郎選挙対策委員長が首相に辞表を提出し、受理されていた。 (asahi = 10-28-24)


「裏金議員」は比例との重複立候補認めず 首相、次期衆院選巡り方針

自民党の派閥裏金事件によって処分を受けた議員の次期衆院選での公認をめぐり、石破茂首相(党総裁)は 6 日、処分が重い者を非公認とするなどの新たな方針を示した。 首相は 6 日午後、党本部で森山裕幹事長や小泉進次郎選挙対策委員長らと対応を協議。 その後、記者団に方針を説明した。

首相が示した小選挙区の方針は、@ 4 月に受けた処分で 8 段階中重い方から 4 番目の「選挙における非公認」より重い処分の者を非公認とする、A 「選挙における非公認」より軽い処分でも、現時点で処分が継続している者は、国会の政治倫理審査会で説明責任を果たしている者を除き、非公認とする、B 処分を受けたその他の議員で、説明責任を十分に果たさず、地元の理解が十分に進んでいないと判断される者を非公認とする、の 3 点。

さらに、政治資金収支報告書への不記載があったその他の議員も含めて、裏金問題の対象議員は比例代表との重複立候補を認めないとした。 協議後、首相は記者団に「党所属議員にこうした対応をとる以上、私ならび党 4 役についても、重複立候補はしない。 ともに責任を果たしていく」と語った。 首相ら党執行部は当初、都道府県連など地方組織の公認申請に基づき公認候補を決定していく手続きを確認。 その中で、裏金問題は公認・非公認の判断基準にしない考えを示していた。 だが、世論の反発を受けて党執行部が 5、6 両日に対応を協議。 一部の手続きを変更した形だ。 (森岡航平、asahi = 10-6-24)


日本外交「嫌韓嫌中では成り立たない」 中韓寄りとの指摘に岩屋外相

岩屋毅外相は 2 日の会見で、石破内閣が「中国、韓国寄り」との指摘が自民党内にあると記者団から問われ、「『嫌韓・嫌中』などと言っていたのでは日本外交は成り立たない」と述べた。 岩屋氏は、2018 年に韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊の P1 哨戒機に向けて射撃用の火器管制レーダーを照射したとされるレーダー照射問題の発生当時、防衛相を務めていたが、日韓関係の「未来志向」を訴えた。 こうした姿勢に当時、自民党内から異論が相次ぎ、今回、岩屋氏を含む石破内閣に対しても、早速党の一部議員から、「親中親韓内閣」などの指摘が出ている。

この日の会見では日本への領空侵犯や領海侵入を続ける中国についても「様々な懸案、課題もあるが、一方で可能性もある。 対話を重ね、建設的で安定的な関係を築いていくことが、両国やアジア、世界のためであると確信をもって外交を進める」と述べ、中国の王毅(ワンイー)外交部長との早期の会談に意欲を示した。 (里見稔、asahi = 10-2-24)


石破首相の肝いり「安保重視」内閣は前途多難 思い先行、現実とズレ分

石破茂・新内閣が 1 日発足したが、首相肝いりの外交・安全保障、経済・社会保障政策も前途多難だ。 いずれも難しいかじ取りが迫られ、衆院解散・総選挙を前に野党側は対決色を強める。 石破茂首相は 1 日の記者会見で、在日米軍の地位や権利を取り決めた日米地位協定の改定について「日米同盟を強化することにつながる」と述べ、強い意欲を示した。

石破内閣の大きな特徴の一つは、安全保障政策を重視する布陣だ。 岩屋毅外相、中谷元防衛相はいずれも防衛相経験者で石破氏と同じ自民党国防族出身。 首相補佐官には知米派の長島昭久元防衛副大臣を起用した。 自身の政策秘書に加え、防衛相当時の大臣秘書官だった槌道明宏元防衛審議官を政務秘書官に充てたのも異例だ。 外務・防衛担当閣僚、官邸に安保政策に詳しいベテラン政治家や元防衛官僚をそろえたことは、持論の日米地位協定改定や「アジア版 NATO (北大西洋条約機構)」創設への意欲の表れとみられている。

 

だが、安全保障問題の専門家から石破氏の持論に疑問符がつく。 アジア版 NATO について、慶応大の神保謙教授(安全保障)は「欧州とは異なり、アジアは各国が海と空で隔てられ、安全保障問題の連動性が低い」と指摘。 「各国はそれぞれの優先順位に沿って国防政策を立てざるをえず、すぐにアジア版 NATO をつくる構想にはどの国も賛成しないだろう」と語る。 NATO は、冷戦期に旧ソ連を仮想敵として発足し、いまもロシアと対峙する。 だが、それをアジアにあてはめれば、中国が仮想敵となる。 外務省幹部も「東南アジア諸国連合 (ASEAN) の国々は、中国の反発が怖くて参加できない」とみる。

一方、石破氏はアジア版 NATO を潜在的な敵国も内部に取り込む「集団安全保障」体制ととらえている節もある。 石破氏は自著でアジア版 NATO への中国の参加にも言及。 それをロシアの存在を前提とする NATO と呼んだため、概念が混乱している。

理念先行、現実とズレ

また、アジア版 NATO の加盟国に対し侵略が起きれば加盟している各国軍が動くことになる。 これにはフルスペックの集団的自衛権行使が必要となる場合があり、日本は憲法 9 条との関係が問題になる。 ASEAN 諸国の参加も見込めず、日本国内の幅広い合意もなく持論を唱えても現実味は乏しい。 浮き彫りになっているのは、こうした国内外の現実とのズレだ。 自民党総裁選の論争で外相経験者の茂木敏充前幹事長は「集団的自衛権の全面行使は憲法との関係で現実的ではない」と指摘。 やはり外相経験者の林芳正官房長官も「当面は米国を中心とした仕組みが現実的だ」と反論した。

在日米軍の地位や権利を取り決めた日米地位協定の改定も、石破氏の思いの強さばかりが先行する。 沖縄国際大学で 2004 年に起きた米軍ヘリ墜落事故の当時の防衛庁長官として「沖縄の警察は(現場に)入ることもできなかった。 これが主権国家なのか。」と強調。 自衛隊の米グアム駐留を提案し、日米が「対等」になることで改定につなげようとしている。 しかし、神保氏は「(地位協定改定のための)交渉材料にするため自衛隊をグアムに置くことは、同盟の信頼にとってマイナスだ」と語る。

また、地位協定改定は在日米軍の「特権」を奪うことにつながるため、米側の強い反発が予想され、一筋縄では進みそうにない。 石破氏は党総裁に選出された9 月 27 日の会見で米側との交渉時期について「いついつまでにと申し上げる状況にはない」と語った。 実際、米側は石破氏の提案に後ろ向きで、日米間の摩擦の種となる懸念が出てきた。 ホワイトハウスのジャンピエール報道官は 30 日の会見で、アジア版 NATO や自衛隊のグアム駐留案について「(バイデン)大統領と話していない。 我々が注力しているのは(欧州の) NATO を強化することだ」と一蹴した。

バイデン政権は、インド太平洋地域で日本を含む同盟国や友好国との連携強化を図り、「格子状」と呼ばれる同盟政策を進めてきた。しかし、東南アジア諸国などが強く警戒しかねないアジア版 NATO の創設には否定的な立場だ。 クリテンブリンク米国務次官補も 17 日のシンクタンクでの講演で、アジア版 NATO の創設をめぐり「正式な機関について話すのは時期尚早だ」と述べた。 元米国家安全保障会議 (NSC) アジア上級部長のマイケル・グリーン氏は、石破氏がかねて「混乱を招く発言」をしてきたと指摘し、「米当局者には石破氏の発言の意図は何だったのか、との疑問がある」と語る。

政権の足元からはすでに「外交は一貫性と継続性が大事(外務省幹部)」などと石破氏の提案について否定的な意見が相次ぐ。 09 年に民主党の鳩山由紀夫代表(当時)が米軍普天間飛行場の移設先について「最低でも県外」と表明し、政権交代後に混乱した状況との類似性を指摘する見方もある。 閣僚の一人は間近に迫った総選挙を見据え、「少しずつフェードアウトさせていかないと、立憲民主党の野田佳彦代表らは手ぐすねを引いて待っている」と強い懸念を示す。

こうした状況に、防衛相就任が決まった中谷氏は 1 日、記者団からアジア版 NATO 創設や地位協定改定について問われると、「官房長官や外務、関係省庁としっかり協議したうえで検討していく」とだけ語った。(田嶋慶彦、ワシントン・清宮涼)

論戦置き去りに「敵前逃亡内閣」との批判も

石破茂首相が臨時国会での十分な論戦がないまま衆院解散に踏み切ろうとすることに、野党側は批判を強めている。 1 日の首相指名の衆院本会議の開始が予定より 30 分遅れるなど、初日から荒れ模様の国会となった。 与党は同日午前、会期を 9 日までの 9 日間とする日程を野党に提案した。 野党は、予算委員会を開くには会期が短すぎるとして反対した。

首相指名の前に反対討論の場をもうけたうえで、本会議での採決に至った。 臨時国会の会期は事前に与野党で合意するのが一般的で、今回のように反対討論の末に本会議で会期の起立採決となった事例は、2011 年の野田佳彦内閣以来だ。 立憲民主党の小川淳也幹事長は反対討論で「国会を 9 日間で閉じるのは何もやる気がないのと同じだ」と断じた。 日本維新の会の馬場伸幸代表は「『敵前逃亡内閣』だ」と批判し、国民民主党の玉木雄一郎代表も「議論から逃げる内閣」だと語るなど、野党からの批判が相次いだ。

一方、新内閣の顔ぶれに対し、早くも与党内から不満が漏れている。 総裁選で高市早苗・前経済安全保障相を支援した議員や、安倍派が特に反発するのは、村上誠一郎総務相の入閣だ。 2 年前、安倍晋三元首相の国葬に関し、安倍氏を「国賊」と表現したとして 1 年間の役職停止処分を受けた。 無派閥中堅は「安倍氏を支えていた保守票は逃げるだろう」と語る。 また、高市氏に近い議員の入閣は城内実経済安保相 1 人にとどまった。 高市氏を支えた議員は「我々なしに政権が回ると思っているのか」と不満を口にする。

党内では「論功行賞の象徴的な人事だ(安倍派中堅)」との見方が広がっている。 茂木派の参院議員は、第 1 次安倍政権が「お友達内閣」と批判されたことを挙げ、こう皮肉った。 「『安倍さんじゃない側』のお友達内閣だな。」 (高橋杏璃、笹山大志、asahi = 10-1-24)


年度内にも 4 万円台回復? 石破茂氏当選を金融市場は手荒く歓迎 日本株は長期的に上昇か

自民党の石破茂新総裁を、27 日の金融市場は手荒く歓迎した。 石破氏が以前、金融所得課税の強化に言及したことが重しとなった。 一方、過去の例を見れば、近く想定される衆院解散・総選挙後は日本株の買い材料となる。 デフレからの完全脱却も近づいており、株価は長期的には上昇基調が続くとの見方も広がる。 27 日午後の東京市場では、財政出動や金融緩和に積極的な高市早苗経済安全保障担当相の優勢が伝わると、円相場は一時、1 ドル = 146 円台半ばまで急落。 日経平均株価は前日終値比 903 円 93 銭高の 3 万 9,829 円 56 銭で取引を終えた。

しかし、その後に決選投票で石破氏の勝利が明らかになると、円相場は一時、142 円台後半まで円高方向に巻き戻し、日経平均先物は急落した。 週明けの東京市場も荒い値動きが予想される。 ただ、総選挙後は、新政権が打ち出す経済政策が株価を押し上げる可能性がある。 三井住友 DS アセットマネジメントによると、平成以降に 11 回行われた衆院解散・総選挙の全てで、解散日と投票日、それぞれの前営業日を比べた騰落率はプラスとなっている。 加えて米国経済のソフトランディング(軟着陸)の可能性が高まってきたことも、市場の安心感につながっている。 日本企業の業績や賃上げの実施状況も順調だ。

こうした動きを踏まえ、三井住友アセットの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「日本株は今年度内は上昇基調を維持し、回復していく」と分析。 日経平均は年度内にも 4 万円台を回復すると予想する。 (根本和哉、asahi = 9-27-24)


自民党新総裁に石破氏

[東京] 自民党総裁選が 27 日午後に投開票が行われ、決選投票の結果、石破茂元幹事長が高市早苗経済安保相を破り、第 28 代総裁に選出された。 石破氏は 10 月 1 日に召集される予定の臨時国会での首相指名選挙を経て、第 102 代の首相に就任する見通し。 総裁は選挙期間中に年内早期に衆院解散の意向を示しており、その時期や想定される経済対策の規模や内容などが注目される。

史上最多の 9 候補が出馬した総裁選は 1 回目の投票で、高市氏、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長のいずれも過半数を得ることができず、1 位の高市氏と 2 位の石破氏による決選投票が行われた。 (Reuters = 9-27-24)


冷遇続きの石破氏がなぜ勝利? 5 度目の挑戦、再び脚光 自民総裁選

過去最多の 9 人が名乗りを上げた自民党総裁選。 前例なき混戦を制したのは、「党内野党」が指定席の石破茂元幹事長 (67) = 無派閥 = だった。 長年冷遇されてきた石破氏が、なぜ首相の座をつかめたのか。

「若手は(2012 年の第 2 次)安倍政権以降しか知らず、野田氏の怖さを知らない。 『悪夢の民主党政権』なんて軽んじれば、返り討ちに遭う。」

立憲民主党が野田佳彦元首相を新代表に選出した 23 日夜、石破氏は周囲にこんな感想を漏らした。 誕生日が 3 カ月違いという同世代への敬意を込めた言葉だったが、そこにはある本音も見え隠れする。 12 年の総裁選。 1 回目の投票では石破氏が圧倒的な地方票を得てトップに立ったが、決選投票で安倍晋三元首相に逆転負け。 総裁に就いた安倍氏が、党ナンバー 2 の幹事長に石破氏を指名したのは「挙党一致」を演出するうえでも自然な流れだった。

だが、安全保障政策の立場などに元々違いがある 2 人の関係はぎくしゃくし続けた。 14 年に政権の肝いり政策だと説得され地方創生相のポストを受けたが、幹事長が持つ権限との差は歴然だった。 2 年後、農水相ポストを提示されると首を横に振り、「どんな政権もいつか終わる。 次の準備をしなければならない。」と安倍政権から距離を取った。 この時を境に、「党内野党」に位置づけられた。 政権運営において、安倍氏は民主党時代を「悪夢」と呼び、そこへ逆戻りさせてはいけないという論理をたびたび展開した。 石破氏が党首に返り咲いた野田氏をあえて持ち上げたのは、他者をののしる「安倍政治」へのアンチテーゼが込められている。

安倍路線の転換を目指して、4 度目の挑戦となった 20 年の総裁選でも最下位に沈んだ。 敗北の責任を取り、自ら作り上げた派閥会長を辞すると、仲間は散り散りになった。 石破氏と行動をともにすることで、「党内野党」の烙印を刻まれるからだ。 「もう石破氏が首相になることはないだろう。」 そんな見方が、党内の大勢になった。

世論は見放さず

そんな石破氏を見放さなかったのは、世論だ。 00 年以降の自民党政権において森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫の 4 人の首相を輩出し、最大派閥として長らく栄華を極めてきた清和政策研究会(安倍派)に政治資金を巡る裏金問題が発覚。 国民の信頼を失墜させる事件に発展すると、非主流派として冷や飯食いが続いた石破氏に再び脚光があたるようになった。

岸田文雄首相が関係者の処分や政治資金規正法の改正で決着を図ろうとした裏金事件は、いまだに国民の納得を得られていない。 だが衆議院は任期満了まで残り 1 年となり、来年夏には参院選も控える。 その中で石破氏に求められているのは、第 2 次安倍政権以降の安定が引き起こしたであろう「緩みとおごり」からの決別だ。 「永田町では『石破だけはダメ』と言われ続けてきた。 だが圧倒的な地方票が、そのくびきを外してくれた。」 石破氏と同じ鳥取選出の赤沢亮正・財務副大臣がこう語るように、政権の権力基盤は当面、世論の支持になりそうだ。 11 月までに実施が見込まれる衆院選で早速、信が問われることになる。 (森岡航平、asahi = 9-27-24)


なぜ野田元首相が立憲新代表に? 世論の支持と「中道保守」シフト

23 日に投開票された立憲民主党代表選で、野田佳彦元首相 (67) が新代表に選出された。 今また、なぜ野田氏なのか。  背景には、早期の衆院解散・総選挙の観測が高まり、野田氏の世論人気や「中道保守」シフトが好感されたことがある。

「力を合わせて打倒自民に向かっていきたい。 挙党態勢で政権を取りに行こう。」

枝野幸男前代表 (60) との決選投票を制した野田氏は、新代表あいさつで自民党への対抗心をあらわにした。 代表選で「政権交代前夜」を掲げた野田氏。 2012 年衆院選敗北の「戦犯」だったにもかかわらず、首相再登板に向けた戦いで枝野氏、泉健太代表 (50)、吉田晴美衆院議員 (52) を退けることができた要因の一つに、世論の高い人気がある。 投開票の約 1 週間前に行った朝日新聞社の全国世論調査では、代表にふさわしい候補として、野田氏は 29%。 15% の枝野氏らに大きく差をつけた。 元首相としての知名度の高さのほか、ここ数年、故・安倍晋三元首相の追悼演説や政治改革をめぐる国会論戦などで、存在感を示してきたことなども背景にあるとみられる。

12 日に自民党総裁選が告示されると、小泉進次郎元環境相 (43) ら総裁選候補が早期の衆院解散・総選挙に言及。 立憲内でも警戒感が高まった。 野田陣営の衆院中堅は「公認候補予定者たちは誰が代表になったら衆院選が戦いやすいかをわかっている」と指摘。 「選挙の顔」として野田氏への期待が党内で高まっていると読み解く。 もう一つは、野田氏が目指す「中道保守」路線にある。 自民派閥の裏金事件を受けて離反した「穏健な保守層」を取り込む狙いがあり、外交・安保政策で「東アジアに対する米国のコミット」の必要性を強調した。

ほかの野党との選挙協力をめぐっては、共産党だけではなく、日本維新の会や国民民主党とも「緊密に対話のできる連携を図っていく」との姿勢を強調した。 野田氏の勝因について、立憲ベテランは首相経験者の「安定感だ」と指摘し、今後の党の立ち位置をこう解説する。 「これまでは左に寄りすぎていた。 これからは民主党時代のように中道寄りに戻るだろう。」 (磯部佳孝、asahi = 9-23-24)


石破・小泉の 2 氏が優位、追う高市氏 自民総裁選は決選投票の公算大

事実上、次の首相を選ぶ自民党総裁選が 12 日、告示された。 過去最多の 9 人が名乗りを上げる混戦は、世論の支持を集める石破茂元幹事長 (67) = 無派閥 = と小泉進次郎元環境相 (43) = 無派閥 = を軸に、高市早苗経済安全保障相 (63) = 無派閥 = が追う展開。 ただし、いずれの候補も 1 回目の投票での過半数獲得は厳しく、決選投票をにらんだ駆け引きも始まっている。

12 日午後、自民党本部 8 階のホール。 所信発表演説会に臨む 9 人の候補者が、やや窮屈そうに壇上に並んだ。 所属議員や党員へ意気込みを語る最初の重要な機会だが、候補者が 4 人以下なら 20 分ずつ与えられる演説時間も 10 分に制約された。 これまで最多だった 5 人を大きく上回る候補者数になった最大の理由は、昨年来、大きな問題となってきた派閥の裏金事件にある。 事件を機に、麻生派を除く 5 派閥が解散を決定。 派閥が前面に出る政治を許さない空気が世間に生まれた。 結果、総裁選の趨勢を左右してきた領袖の影響力は弱まり、中堅・若手もある程度自由に動けるようになった。

多数の候補で戦うことは、総裁選全体の構図に別の影響も与えている。 立候補の条件は、推薦人 20 人を確保することだ。 9 人の候補者が立ったことは、国会議員票計 367 票のうち各候補者を含む 189 票の投票先がおおむね決まったことを意味する。 現時点で所属議員からの支持が突出している候補は見当たらず、国会議員票では差がつきにくい状況だ。 一方、党員・党友による地方票は国会議員票と同じ 367 票分に比例配分される。 8 月の朝日新聞世論調査で「次の自民党総裁にふさわしい」人として、トップに立ったのは石破氏と小泉氏だ。

2 人が得た 21% の支持を単純に総裁選の地方票に換算すると、80 票近くを上積みできることになり、一気に優位に立つ。 現在の仕組みは、候補者が増えれば増えるほど地方票の重みが増す。 党員・党友からの支持で 2 人を追うのが高市氏だ。 さらに、衆院議員の残り任期が約 1 年となり、衆院選が迫っている。 来年夏には参院選も控えており、次の総裁は所属議員や党員から「選挙の顔」としての役割を期待されている。 こうした状況も、「人気重視」の戦いに拍車をかけている。

各候補とも国民人気を意識

各候補が国民人気を強く意識し、地方票で優位に立とうと露出を強めている。 5 度目の挑戦となる石破氏は、12 日の出陣式で「鳥取で育った。 地方の悲しさ、苦しさ、誰よりも知るものだ」と、地方に寄り添う姿勢を訴えた。 小泉氏も同日、都内の神社を参拝する様子を報道陣に公開。 記者団の取材にも応じ、「選挙で東京の神社を参拝するのは初めて。 地元の気持ちで参拝した。」と語った。

2 人を追う立場の高市氏は 2021 年に続く 2 度目の挑戦だが、前回との決定的な違いは、圧倒的な知名度と党員からの支持を得て高市氏を支援した安倍晋三元首相がいないことだ。 それでも安倍氏と重なる保守層を取り込む戦略は変わらない。 高市氏は同日、「(安倍氏に)たくさんのことを教えていただいた。 その思いをしっかりと受けとめて頑張る。」と語った。 9 人の候補者は全国での演説会や討論会で、政策や主張をぶつけ合うことになる。 過去にも、討論会などでの発言が総裁選の情勢に変化を与えたことは多く、現在の構図のまま投開票日を迎えるとは限らない。 (藤原慎一、asahi = 9-12-24)


次の自民党総裁 石破氏 29%、小泉氏 16% 毎日新聞世論調査

毎日新聞は 24、25 の両日、全国世論調査を実施し、9 月の自民党総裁選で誰が選ばれてほしいか尋ねたところ、最も多かったのは石破茂元幹事長の 29% だった。 2 位は小泉進次郎元環境相 (16%)、3 位は高市早苗経済安全保障担当相 (13%) と続いた。 質問では、総裁選に立候補の動きがある国会議員 11 人から選んでもらい、「この中にはいない」は 12%、「わからない・関心がない」は 7% だった。 調査は、携帯電話のショートメッセージサービス (SMS) 機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯 429 件、固定 521 件の有効回答を得た。 (野原大輔、mainichi = 8-25-24)