JDI が台湾孫会社を売却へ 譲渡額 80 億円

ジャパンディスプレイは 8 日、自動車向け中小型液晶パネルを手がける台湾の孫会社カオシュン・オプトエレクトロニクスの全株式を、台湾の電子機器受託製造大手ウィストロンに売却すると発表した。 譲渡額は 80 億円。 JDI は、ウィストロンにスマホ向け液晶パネルの組み立てなどを委託してきた。 今回の孫会社売却で、自動車や産業機器向け液晶パネルの組み立てもウィストロンに委託することで、コスト削減をめざす。 9 - 12 月をめどに売却手続きをすませる。

日立製作所、ソニー、東芝の液晶パネル事業が統合して 2012 年に生まれた JDI は、14 年 3 月に東証 1 部に上場した。 21 年 3 月期まで 7 年連続で純損益が赤字となっている。 官民ファンドの産業革新機構(現 INCJ)が経営を主導したが、19 年には一時、債務超過に陥った。 昨年 10 月に白山工場(石川県白山市)を約 400 億円でシャープに売却するなど、資産売却を進めていた。 JDI のスコット・キャロン会長は 8 日の会見で孫会社の売却について、「自社生産を受託製造に切り替えることでコスト競争力を上げる」と話した。 (鈴木康朗、asahi = 7-8-21)



JDI、シャープに白山工場を 412 億円で売却へ

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ (JDI) は 28 日、主力工場の白山工場(石川県白山市)を電機大手のシャープに 3 億 9 千万ドル(約412億円)で売却することで最終契約したと発表した。 売却で固定費を圧縮し、再建を加速させたい考えだ。 主要顧客の米アップルや、シャープを傘下に置く台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を交え、昨年から交渉してきた。 3 月には、白山工場の生産装置の一部を取引先に 2 億ドル(当時約 215 億円)で売る契約を結んだ。 関係者によると、取引先は米アップルという。 今回、さらに 8,500 万ドル(約 90 億円)の生産設備の追加売却にも合意した。

一方、白山工場を買い取るシャープは液晶パネル事業の分社化方針を打ち出している。 工場買収で最大顧客アップル向けの液晶パネル供給量を増やし、交渉での発言権を強めるねらいがありそうだ。 シャープの戴正呉会長は 28 日、「生産能力拡充や次世代ディスプレーへの展開といった面で、当社のパネル事業にとってプラスになると確信している」とのコメントを出した。

白山工場は 2016 年、米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」向けの液晶パネルの拠点として生産し始めたが、スマホ需要が予想を下回り、稼働率は低迷。 累計 1,200 億円を超える減損処理を余儀なくされ、JDI の経営不振の要因の一つになっていた。 JDI は 3 月、資産運用会社から金融支援を受け入れて債務超過を解消。 昨年 7 月から操業停止中の白山工場の扱いが課題だった。 (小出大貴、森田岳穂、asahi = 8-28-20)

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JDI、iPhone 向け主力工場をシャープに売却へ

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ (JDI) は、主力工場の白山工場(石川県白山市)を電機大手のシャープに売却する方向で調整に入った。 白山工場はスマートフォン向け液晶パネルの需要低迷を受けて今年 7 月から操業を停止しており、来年 3 月末までの売却完了を目指す。 売却により、再建に必要な資金の調達や固定費の削減を進める狙いがある。 売却額は数百億円にのぼるとみられる。

主要顧客の米アップルや、シャープを傘下に収める台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を交えて、今後詳細を詰める。 白山工場は 2016 年 12 月、アップルのスマホ「iPhone (アイフォーン)」向けパネルの生産拠点として稼働を開始。 アップルの要請を受けて建設を決めた工場で、投資額の 1,700 億円はアップルから「前受け金」として調達した。 アップルの「専用工場」とも言われてきたが、工場の建設中から iPhone の需要が落ち込み、今年 7 月に操業を停止。 来年 3 月までに操業再開の可否を判断する方針だった。 前受け金の返済額は年 200 億円程度にのぼり、経営の重荷になっていた。

白山工場をめぐっては、これまでに累計で 1,200 億円を超える減損処理を実施した。 楽観的な計画に基づいた過剰投資が経営危機を招いた。 経営不振を象徴する生産拠点を手放すことで再建の道筋をつけたい考えだ。 JDI とシャープは、アップルからスマホ向け液晶パネルの生産を受注しており、白山工場の売却が実現すれば、JDI の経営改善に加え、シャープの受注増につながる可能性がある。 アップルにとっても、液晶パネルの安定的な調達先の確保につながる。 (高橋諒子、笹井継夫)

会計調査の第三者委メンバー決定

JDI は 26 日、元社員から通知を受けた不適切会計を調査するため、第三者委員会を設置し、委員長に弁護士の国谷史朗氏を選んだと発表した。 会社設立時の 2012 年 4 月から 19 年 9 月までの不適切会計の有無や影響額などを調べる。 委員には、ほかに弁護士の関口智弘氏と公認会計士の荒張健氏も就任。 荒張氏は、JDI の執行役員を含めた特別調査委員会のメンバーを務めていた。 この問題では、特別調査委が今月 2 日から調査を進めたが、過年度の在庫を過大に資産計上するなどの疑いが判明したため、調査主体を独立性のある第三者委に切り替えることにした。 (asahi = 12-27-19)


経営再建中の JDI、資産運用会社から 900 億円調達で基本合意

経営再建中の液晶パネルメーカー、ジャパンディスプレイはシンガポールに本拠をおく独立系の資産運用会社から最大で 900 億円を調達することで基本合意したと発表しました。 金融支援の枠組みはたびたび揺らいできただけに、今度こそ実現するかが注目されます。 発表によりますと、ジャパンディスプレイは 12 日、シンガポールに本拠をおく資産運用会社、いちごトラストから資金支援を受けることで基本合意しました。 調達額は 800 億円から 900 億円としていて、来月中に最終契約し、来年 3 月までに資金調達を終えることを目指すとしています。

また、スマートフォンのディスプレーで主要な取り引き先であるアップルからも石川県の白山工場の生産設備の一部を購入するなどの方法で 200 億円余りの支援をする意向を受けているとしています。 日立製作所と東芝、それにソニーの 3 社の液晶パネル事業を統合して発足したジャパンディスプレイは、スマホ向けの液晶事業の不振で 1,000 億円を超える債務超過に陥っていて、外部のファンドなどから支援を受ける交渉を続けていました。 しかし、いったん合意していた中国のファンドが一転して撤回するなど支援の枠組みがたびたび揺らいできました。

ジャパンディスプレイは香港のファンドなどともなお支援の協議を続けていますが、年内に協議がまとまらない場合、いちごトラストとの間で最終契約を結ぶとしていて、今度こそ実現するか注目されます。 いちごトラストはシンガポールに本拠をおく独立系の資産運用会社で、日本では、グループの投資顧問会社、いちごアセットマネジメントが拠点を置いています。 会社のウェブサイトなどによりますと、社名は「一期一会」ということばに由来しているということです。 日本企業の株式への長期投資を専門にしていて、ことし 11 月末時点でのグループの運用資産は 8,200 億円余りだということです。 最近は、ホテル事業を手がけるユニゾホールディングスの株式 9% 余りを取得したことが明らかになっています。

12 日、都内で記者会見したジャパンディスプレイの菊岡稔社長は「心強いバックアップをいただいたと思っている。 会社の健全性を守るため、今後も真摯に協議を行っていちばん有利な道を追求していきたい」と述べました。 一方、ジャパンディスプレイは巨額の資金を着服したとして去年、懲戒解雇した経理担当の元幹部から「過去の決算で不適切な会計処理を行っていた」との連絡を受け、過去の決算内容を精査しています。 これについて、菊岡稔社長は 12 日の会見で、「調査は第三者にすべて委ねる。 きちんと会社を守っていく立場からも資金調達活動も進めていきたい。 われわれに再生してほしいという投資家もいるので、きちんとまとめて次に進んでいきたい。」と述べました。 (NHK = 12-12-19)


経営再建中の JDI、中間決算で 1,086 億円の純損失

経営再建中の液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ (JDI) が 13 日発表した 2019 年 9 月中間決算は、売上高が前年同期比 11% 増の 2,377 億円、営業損益は 356 億円の赤字、純損益は 1,086 億円の赤字だった。 中間期の営業赤字は 4 年連続、純損失の計上は 6 年連続。 JDI はすでに債務超過に陥っているが、債務超過額は第 1 四半期(4 -6 月)時点の 772 億円から、1,016 億円にまで拡大した。 国内の従業員の 3 割にあたる 1,200 人超の早期退職や遊休資産の減損など、事業構造改革に伴うリストラ費用として特別損失を 637 億円計上。 有機 EL パネルを手がける関連会社 JOLED の経営悪化で、同社への投資損失 21 億円も計上した。 (asahi = 11-13-19)


「iPhone 専用工場」不振で危機に 泥沼の公的支援

石川県白山市の工業団地に立つジャパンディスプレイ (JDI) の白山工場。 米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」向け液晶パネルを生産し、アップルの「専用工場」とも言われたが、需要が落ち込んで稼働率が低迷。 今年 7 月に稼働開始からわずか 2 年半で操業を止めた。 約 400 人の従業員は工場の維持作業をしたり、国内の別の工場に応援に行ったりしている。 7 月上旬の平日。 駐車場に車はまばらで、工場から出てきた男性従業員は「在庫を作るような状況だった。 停止は仕方ない。」と話した。

「2016 年秋発売の iPhone の新モデル向けの工場がほしい。」 アップルの幹部が東京・西新橋の JDI 本社を訪れ、取締役の有賀修二に新工場建設を働きかけたのは 14 年末。直前に発売された「iPhone6」が世界的なヒットを記録し、アップルは iPhone 増産に向けたパネルの調達先を探していた。 白山工場の建設決定はそのわずか 3 カ月後だった。 破綻の危機を米アップルの支援で乗り切った JDI。 しかし危機的な状況に陥った原因をさかのぼると、そのアップルのスマートフォン「iPhone」の販売不振による液晶の生産計画の狂いがありました。 連載の 2 回目では、JDI への支援を巡る官民の様々な思惑を探っていきます。

「むちゃなお願い」

新モデルの発売まであと 1 年半。 主要顧客の「むちゃなお願い(JDI 元役員)」に応え、突貫工事で建設を急いだ。 「世界最速の工事だった。」 元役員は大手ゼネコン鹿島の社員が漏らした言葉を覚えている。 地元選出の自民党衆院議員、佐々木紀(はじめ)は国会で、白山工場建設を「安倍内閣の経済政策の一つの成果」と持ち上げた。 だが、建設中に発売された「iPhone6s」など 15 年秋モデルの販売が振るわない。 当初計画から規模を縮小し、稼働時期未定のまま 16 年 10 月に工場は完成。 操業開始は予定より半年遅れの 16 年 12 月だった。

建設を決めた時の社長は大塚周一。 最高執行責任者 (COO) を務めた半導体大手エルピーダメモリ(12 年に経営破綻)を退職後、初代社長に就いた。 当時は能美工場(石川県能美市)や茂原工場(千葉県茂原市)でもアップル向けパネルを製造しており、JDI の生産能力はすでに過剰気味だった。 ある幹部は「営業は白山工場の建設に反対したが、大塚は『もう決まったこと』と建設を押し通した」と証言する。

操業再開のめど立たず

白山工場の建設が決まった直後、大塚は白山市長の山田憲昭に「この工場で今の売上高 8 千億円を 2 兆円に増やす基礎ができる」と説明した。 だが、売上高は白山工場の稼働前の 15 年度(9,891 億円)をピークに下がり続け、18 年度は 6,366 億円に落ち込んだ。 白山工場の建設を主導したのは経済産業省所管の官民ファンド、産業革新機構(現 INCJ)執行役員の谷山浩一郎とされる。 谷山は、発足段階からかかわる JDI の社外取締役を兼ねていた。

「谷山が JDI に深く入り込み、大塚は谷山の言いなりだった。 経産省も機構も、谷山に『好きにやって』という感じだった」と元役員。 別の元役員は「谷山は、右肩上がりの絵を描かないと電子産業は成り立たないとおまじないのように思っていた」と話す。 白山工場の建設に際し、JDI はアップルから「前受け金」として 1,700 億円を調達。 アップルからの受注にかかわらず、毎年 200 億円程度を返済する契約が経営の重荷になってきた。 「アップル依存」のツケは重く、操業再開のめどは今も立たない。

「最後の支援」のはずが

JDI に「公的資金」で支援を繰り返してきた INCJ も苦しい立場に追い込まれている。 2017 年夏、JDI は資金繰りに窮していた。 みずほ、三井住友、三井住友信託の取引銀行 3 行から運転資金を借りられる融資枠の契約が切れかかっていた。 運転資金が底をつきかけ、「早ければ 7 月末にも資金不足や事業停止に陥る可能性があった」と関係者は振り返る。

JDI はその半年前に経済産業省所管の官民ファンド、産業革新機構(現 INCJ)から有機 EL パネルの開発を名目に 750 億円の追加支援を受けたばかり。機構はこれを「最後の支援」と通告したが、JDI は「このままでは不測の事態に陥って、エレクトロニクスと金融市場に大きな混乱を与える懸念がある(関係者)」として 1 千億円を超す債務保証を機構に迫っていた。 融資枠を維持するためだった。 再生計画も検討され、出資者が見つからなければ法的整理で債務をカットし、会社をスマートフォン向けパネル事業と車載向けパネル事業に分割する案も浮上していた。

結局、機構はこの年 8 月に 1,100 億円の債務保証を受け入れた。 3 行あわせて 1,070 億円の融資枠との差額(30 億円)には「JDI が倒産し、返済が滞った場合の遅延損害金が含まれていた。(金融関係者)」 前向きな支援にはほど遠かった。 この債務保証契約は、その後も 1 年ごとに更新されている。

月 2 千万円でコンサルと契約

同時に発表されたリストラ策のとりまとめを含め、一連の動きは「経営共創基盤 (IGPI) の主導で進められた」と JDI 関係者は証言する。 IGPI は、ダイエーやカネボウなど不振企業の再建を担った産業再生機構の最高執行責任者を経て、経産省の審議会委員や東京電力ホールディングス社外取締役などを務める冨山和彦が設立したコンサルティング会社。 「東京電力や日本航空の再生を手がけたプロ」と JDI 社内で紹介され、月 2 千万円の契約で経営を支援していた。

このころ、JDI 会長の本間充が退任。 経産相の世耕弘成らの求めに応じて、有機 EL 開発会社 JOLED (ジェイオーレッド)社長の東入来(ひがしいりき)信博を後任に推薦したのも冨山だった。 複数の JDI 幹部は、経営の主導権が機構から経産省と IGPI に移ったと受け止めた。 会長就任後に経産省と接触を続ける東入来に、機構から不満の声も出た。 本間の退任にあわせて、JDI に強い影響力を持っていた機構執行役員の谷山浩一郎が機構と JDI を去ると、機構は「お金を早く返せと言うだけのファンドみたいになった。(元 JDI 役員)」 しかし、出資者探しも進まず、焦りを募らせた機構は、再び経営への関与を強めることになる。

「国策救済」との批判根強く

INCJ は今も JDI に 25.3% を出資する筆頭株主だ。 「ゾンビ企業の延命は INCJ の業務としてはありえない。」 世耕は今年 4 月の衆院経産委員会でこう述べ、INCJ による JDI 支援の正当性を強調したが、経営不振企業の「国策救済」との批判は根強い。 設立 10 周年を迎えた INCJ が今年 7 月に開いた年に 1 度の定例記者会見で、会長の志賀俊之は JDI 支援について「合理的に適切な判断をした」と繰り返した。 INCJ はこの会見後にも計 400 億円の短期貸し付けを実行。 これまでに投じた「公的資金」のうち 2,700 億円超の回収が難しくなっている。 ずるずると支援を続ける INCJ の「出口戦略」は泥沼化している。(敬称略) (小出大貴、高橋諒子、笹井継夫、asahi = 10-31-19)

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破綻寸前だった「日の丸液晶」 あのアップルが救いの手

今年 5 月下旬。経営再建中の液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ (JDI) の東京・西新橋の本社に、西村あさひ法律事務所の南勇成らが乗り込んでいた。 南は事業再生や倒産案件を中心に手がける弁護士だ。 「取引先から電話が殺到します。 コールセンターを設置してください。」 弁護士らは、会議室に集まった JDI の幹部に会社更生法の適用申請に備えた対応を指示した。 関係者の一人は「裁判所に提出する書類も用意していた」と明かす。

JDI は 4 月 12 日に中国・台湾の企業連合から計 800 億円の金融支援を受け入れると発表。 外資の傘下で再建をめざす青写真を示したばかりだったが、水面下では危機が進行していた。 中台連合を構成する 3 社の一角、台湾の電子部品大手 TPK ホールディングが支援の枠組みから抜けそうな事態に直面していたのだ。 異変を察知した主要顧客の米アップルが仕入れ代金の支払いを止め、JDI の財務が急速に悪化。 負債総額 4 千億円規模の大型破綻が現実味を帯びていた。

日立製作所、ソニー、東芝の液晶パネル事業を統合して生まれた「日の丸液晶」メーカーの JDI が苦境にあえいでいます。 経営再建のカギを握る金融支援の枠組みが崩れ、再建の行方に不透明感が強まっています。

「X デー」は 5 月末

当時、関係者が「プラン B」と呼んでいたシナリオがある。 法的整理で債務をカットしたうえで不振のスマートフォン向けパネル事業を切り離し、世界トップシェアの車載向けパネル事業を温存する計画だった。 JDI はスマホと車載の一体再生にこだわったが、法的整理を選ばずにこのまま事業を続ければ、資金繰りに窮し、パネルの供給が途絶える恐れがあった。 「プラン B」のシナリオは、JDI がコンサルティング契約を結んだ「経営共創基盤」マネジングディレクターの児玉尚剛や、西村あさひの弁護士を中心に練られた。 更生法申請の「X デー」は取引先への支払いを控えた 5 月末。残された時間は 10 日もなかった。

経済産業省幹部の成田達治や児玉らは、車載向けパネル事業の引き受けを京セラなどに打診した。 JDI は自動車部品メーカーのデンソーや、独自動車大手の BMW、フォルクスワーゲン、アウディなどに車載用パネルを供給している。 パネルの供給が滞れば、国内外で自動車の生産が長期間止まる恐れもあった。 「経産省は自動車産業への影響を避けたかった。」 当時のシナリオは経産省の危機感も反映したものだったと、複数の関係者が証言している。

「アップルが引き金」

5 月 26 日。JDI と筆頭株主で官民ファンドの INCJ (旧産業革新機構)、アップル、中台連合に加わる中国の大手投資会社ハーベストグループと TPK の関係者が、東京・大手町の西村あさひ法律事務所に集まった。 「このままでは、アップルが引き金を引くことになりますよ。」 破綻を回避したい日本側の関係者はこの日の会合を前に、アップルの翻意を促そうとプレッシャーをかけ続けていた。 「JDI は大切なパートナーだ。 支援を続ける。」 アップルの調達部門幹部のトニー・ブレビンズらは会合の席でそう言って、集まった関係者にそれぞれが譲歩するよう呼びかけた。

これを受け、ハーベストと TPK は 6 月 14 日までに金融支援の実行に必要な手続きをとると JDI に通知した。 アップルは仕入れ代金の支払いを再開し、JDI からアップルへの借金の返済条件を緩和。 INCJ も追加の金融支援を約束した。 JDI が破綻すれば、アップルはスマホ販売で競合する韓国のサムスン電子や、LG ディスプレーへの依存度が高まり、調達計画に狂いが生じかねない。 すんでのところでアップルが救いの手を差し伸べ、JDI は危機を乗り越えた。

「日本の液晶はダメになる」

JDI は、日立製作所、ソニー、東芝の液晶パネル事業を統合して生まれた。 「日の丸液晶」メーカー誕生のきっかけは、M & A (企業合併・買収)助言会社「産業創成アドバイザリー」共同創業者の佐藤文昭、液晶パネル事業を手がける「エプソンイメージングデバイス(現在は消滅)」社員の松島聡の 2 人が東京・丸の内の産業革新機構(現 INCJ)を訪れた 2009 年秋にさかのぼる。 産業革新機構は経産省所管の官民ファンド。 この年の 7 月、「エレクトロニクス業界の再編(経産省幹部)」などを目的に誕生したばかりだった。 複数の民間ファンドに液晶パネルメーカーの統合構想を持ちかけ、投資を断られていた 2 人は、機構からの出資に賭けていた。

日本興業銀行(現みずほ銀行)出身で、米系投資ファンドのカーライル・ジャパンを経て機構に入ったマネジングディレクターの谷山浩一郎が 2 人を出迎えた。 「なぜ中小型ディスプレーなんですか。」 谷山の問いに、2 人はスマホに搭載される中小型液晶パネルに「将来性がある」と訴えた。 折しも、米アップルが 07 年に売り始めたスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」が大ヒットしていた。 この訪問を境に、液晶パネルメーカーの統合構想が本格的に動き出した。

サムスン電子など韓国や台湾の液晶パネルメーカーが台頭し、電機大手各社は当時、数千億円単位の資金が必要な液晶パネル事業への投資に慎重になっていた。 「このままでは日本の液晶パネル産業はだめになる。」 エプソンでソニーの液晶部門との統合交渉に加わっていた松島は、経営陣に黙って日立や東芝との事業統合もめざしていた。

「世界に誇るメーカーに」

10 年の年明けから日立、ソニー、東芝の液晶パネル事業の関係者が集まって統合作業を開始。 経産省から機構に出向していた西山圭太、経産省課長の吉本豊も統合を後押しし、谷山は機構側で構想を推し進めた。

「電機メーカーに国のお金を使うなんてとんでもない。」 投資の可否を判断する機構の産業革新委員会には根強い慎重論もあった。 途中、ソニーが経営陣の反対にあって交渉から離脱。 日立が台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から提携を持ちかけられるなど、統合作業には曲折もあったが、3 社は最終的に液晶パネル事業の統合に合意。 機構は 2 千億円の出資を決め、12 年 4 月に JDI が発足した。 関係者は「ブルドーザーのような谷山の情熱がなければ統合は実現しなかった」と振り返る。

「トップクラスの技術力を持つ 3 社の統合で、世界に誇るメーカーになる」

機構の初代社長の能見公一は、JDI 設立を発表した 11 年 8 月末の記者会見で胸を張った。 当初計画より 1 年早く 14 年に東証 1 部に上場。 機構は上場時に株式の半分ほどを手放し、投資した 2 千億円のうち 1,674 億円を売却益で回収した。

甘かった青写真

一時は官民ファンドの成功モデルにも思われたが、上場後 5 年続けて赤字を計上。 今年 6 月末時点で 772 2億円の債務超過に陥っている。 INCJ から累計 4,620 億円の「公的資金」が投じられたが、2,746 億円が未回収だ。 上場時の売り出し価格は 1 株 900 円だったが、直近の株価は 60 円前後で低迷する。 JDI は輝きを失い、設立時のビジョンとはかけ離れた経営を強いられている。 「X デー」をぎりぎりで回避した後も、金融支援の受け入れ交渉は迷走続きだ。 再建の行方は視界不良に陥っている。

「ディスプレーという単一のハード事業に頼ったビジネスモデルからのさらなる脱皮が必要だろう。」 佐藤は自著にそう記し、スマホ向けパネルに偏重したビジネスモデルが経営不振の一因だと自ら指摘した。 9 月末には 1,266 人の社員が希望退職で会社を去った。 国内社員の 3 割にあたる。 元社員は、経営の混乱が続く社内の雰囲気について、「経営トップが 2 年おきに交代し、会社の方針も変わるので、社員は面従腹背だった」と語った。

国内外の社員数はリストラなどで最盛期の約 1 万 7 千人から約 9 千人に激減。 売却を含めて国内の 6 つの生産ラインを失った。 「事業部門の寄せ集めで経営的機能が欠けていた。 人員整理と工場の再編を進められず、固定費が高かった。」 元役員は、長引く苦境の原因が統合作業での失敗にあったと回顧する。 「青写真の描き方が甘かったのかもしれない。 途中から統合が手段ではなく、目的になってしまった。」 統合作業に加わった JDI 関係者の述懐だ。(敬称略) (高橋諒子、小出大貴、笹井継夫、asahi = 10-30-19)

JDI のあゆみ
2011 年8 月東芝、ソニー、日立製作所と産業革新機構(現 INCJ)が中小型液晶パネル事業の統合会社を設立すると発表
12 年4 月ジャパンディスプレイ (JDI) 発足 産業革新機構が 2 千億円出資
14 年3 月東証 1 部に上場
9 月米アップルが「iPhone 6」発売
15 年3 月白山工場(石川県白山市)の建設発表 16 年 12 月に稼働
9 月「iPhone 6s」発売
16 年12 月産業革新機構が 750 億円の追加金融支援を決定
17 年8 月能美工場(石川県能美市)の生産停止、約 3,700 人の削減を柱とする再建策発表 取引銀行の融資枠 1,070 億円を産業革新機構が債務保証
19 年4 月中国・台湾の企業連合 3 社から計 800 億円の出資を受け入れ、傘下に入ると発表
5 月19 年 3 月期決算で 1,094 億円の純損失を計上 赤字は 5 年連続
6 月白山工場の停止や 1,200 人の希望退職募集、業績低迷を受けた月崎義幸社長の引責辞任を発表。 トップ交代は 4 回目
6 月台湾 2 社が金融支援の交渉から相次ぎ離脱 一方、香港の投資ファンドが出資を決定
8 月19 年 6 月末時点で 772 億円の債務超過に陥ったと発表
9 月中国の大手投資会社が金融支援の交渉から離脱

JDI 茂原工場、浸水で製造停止 アップル向け有機 EL

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ (JDI) は 26 日、豪雨による浸水被害の影響で、千葉県茂原市の茂原工場のガス供給設備が停電したと発表した。 同日午前 6 時から全設備をアイドリング状態にして、パネル生産に必要なガラス基板の投入を見合わせている。 業績に与える影響は調査中としている。

他の設備は停電を免れており、ガス供給設備が復旧すれば生産を再開する予定。 茂原工場では、主要顧客の米アップルのスマートフォン「iPhone」向け液晶パネルに加え、アップルウォッチ向けに有機 EL パネルも生産している。 JDI が有機 EL パネルを生産できるのは茂原工場だけで、生産停止が長引けば経営再建の妨げになりかねない。 (asahi = 10-26-19)


JDI、中国ファンドが支援見送り 再建案白紙に

経営再建中のジャパンディスプレイ (JDI) は 26 日、中国ファンドの嘉実基金管理グループから金融支援を見送るとの通知を受けたと発表した。 JDI は理由について、「ガバナンス(企業統治)に対する考え方における重要な見解の不一致が生じた」と説明している。 二転三転してきた JDI の再建案は事実上白紙に戻り、嘉実基金に代わる資金の出し手の確保が焦点になる。

26 日夜、JDI は都内で会見を開いた。 次期社長に就任予定の菊岡稔常務執行役員は「(香港ファンドの)オアシス・マネジメントや顧客、サプライヤーから 4.3 億ドル(約 460 億円)を調達するメドがついている。 10 - 11 月にほぼ確保できる。」と当面の資金繰りに懸念はないとした。 JDI は 8 月、嘉実基金とオアシスで構成する企業連合「Suwa インベストメントホールディングス」と 800 億円の支援受け入れで契約を結んだ。

800 億円のうち、嘉実基金が約 630 億円(米アップルからの 100 億円強含む)、オアシスが 160 億円以上を拠出することになっていた。 オアシスは支援の枠組みに残る。 JDI は 26 日、アップルとみられる顧客企業から 2 億ドルの出資を検討すると通知があったことも明らかにした。 JDI は今後、嘉実基金との交渉を続ける一方、代わりの資金調達先を検討する。 JDI は予定通り 27 日に都内で臨時株主総会を開く。

資金繰りについては、3 日に筆頭株主で官民ファンドの INCJ (旧産業革新機構)から 200 億円を借りており、当面は持つとの見方もある。 ただ嘉実基金の支援見送りで、JDI は再建案の見直しを迫られる。 同社はアップルに液晶パネルを供給してきたが、過大な設備投資が重荷となり、2019 年 3 月期まで 5 年連続の最終赤字に沈んだ。 資金繰りが厳しくなり、4 月に台湾・中国の企業連合と支援受け入れで契約を結んだ。 しかし 6 月に台湾 2 社が離脱するなど交渉が二転三転した経緯がある。

JDI 株は 26 日の東証大引け後に私設取引で大幅に下落。 SBI ジャパンネクスト証券が運営する私設取引システム (PTS) では一時 50 円を下回り同日の東証終値(67 円)から 2 割超下げた。 (nikkei = 9-26-19)


「日の丸液晶」の JDI が火の車 希望退職 1 千人超募る

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ (JDI) が 9 日発表した 2019 年 4 - 6 月期決算は、純損益が 832 億円の赤字(前年同期は 17 億円の赤字)となり、6 月末時点で772 億円の債務超過に陥った。 中国・香港の企業連合から 800 億円の金融支援を受け入れる最終契約を 7 日に結んだが、9 日に予定していた企業連合との共同記者会見は当日になって中止された。 再建の行方には不透明感が漂う。

売上高は前年同期比 12.5% 減の 904 億円、本業のもうけを示す営業損益は 274 億円の赤字(同 98 億円の赤字)だった。 主要顧客の米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」の販売が苦戦しており、スマホ向け液晶パネル事業の不振が続いている。 稼働率が低迷し、7 月から操業を停止している白山工場(石川県)の減損処理に踏み切って 516 億円の特別損失を計上し、赤字幅が大きく膨らんだ。

JDI は 19 年 3 月期まで 5 年連続の赤字。 3 月末時点の自己資本比率は 0.9% と債務超過寸前で、6 月末時点の自己資本比率はマイナス 19.3% とさらに悪化した。 財務の悪化は深刻で、中国の大手投資会社ハーベストグループ、香港の投資ファンドのオアシス・マネジメントからの金融支援が再建の鍵を握る。

中国・香港の企業連合は 9 日、「JDI が新たな長期的成長を実現するために、主要ステークホルダー(利害関係者)とのパートナーシップに尽力する」などとするコメントを JDI を通じて発表したが、金融支援には「中国の政府当局からの介入がないこと」など複数の条件が付いており、確実に資金調達できるかどうかは不透明な要素も残る。 JDI は 7 日の発表で、金融支援を予定通りに受けられなければ、「資金繰りが悪化することで事業継続が困難となる可能性がある」としている。

再建の糸口をつかめない状態続く

日立製作所、ソニー、東芝の液晶パネル事業を統合して生まれた「日の丸液晶」メーカーのジャパンディスプレイ (JDI) が、2019 年 4 - 6 月期決算で 772 億円の債務超過に陥った。 米アップルのスマートフォン「iPhone (アイフォーン)」向けの液晶パネルに偏重したビジネスモデルが行き詰まり、再建の糸口をつかめない状態が続く。 経営陣は 9 日の決算記者会見で「下期からの黒字化」をめざすと強調したが、前途は多難だ。

19 年 4- 6 月期決算は、売上高が前年同期に比べて 12.5% 減り、本業のもうけを示す営業損益の赤字幅は 3 倍近くに拡大した。 19 年 3 月期まで赤字決算が 5 年続き、自己資本の目減りを余儀なくされてきたが、ついに負債が資産を上回る債務超過に転落した。 経営再建に向け、稼働率が低迷している白山工場(石川県)の減損処理を実施。 国内の従業員の約 25% にあたる 1,200 人の希望退職を募ることも打ち出し、年間の固定費を 500 億円減らそうとしている。

不振のスマホ向け液晶パネル事業を 12 月末をめどに分社化し、車載向けパネル事業などに注力して再建を進めるシナリオを描くが、世界経済の減速懸念が強まる中、想定通りに業績を改善できるかは分からない。 「資本の充実と、構造改革を通じたコスト削減の同時実施という非常に難しいことをやっている。」 10 月に社長に就く菊岡稔常務執行役員は 9 日の記者会見でそう強調した。

債務超過の解消には中国・香港の企業連合と 7 日に結んだ金融支援の最終契約の確実な履行が欠かせないが、企業連合の代表者のウィンストン・リー氏らと JDI が 9 日に開く予定だった共同記者会見は、「健康上の理由(菊岡氏)」から直前に急きょ中止された。 JDI は、法的拘束力のある最終契約を企業連合と結んだことなどを理由に、金融支援の枠組みが「流動化していることはない」としているが、金融支援には「中国の政府当局からの介入がないこと」など複数の条件が付いている。 800 億円の資金が振り込まれない可能性も残っている。 予定通りに金融支援を受けられなければ、再建の先行きに不透明感が増すのは避けられない。

大株主で官民ファンドの INCJ (旧産業革新機構)は、最終契約を受けて JDI に新たに 200 億円の融資を実行して資金繰りを助けたが、INCJ が JDI に投じた 4,220 億円のうち 2,346 億円は回収が難しくなっている。 JDI の経営が行き詰まれば、「公的資金」が焦げ付くおそれもある。 (高橋諒子、笹井継夫、asahi = 8-10-19)


JDI、中台連合 1 社が出資見送り 再建さらに不透明化

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ (JDI) への出資で基本合意した中国 1 社・台湾 2 社でつくる企業連合のうち、台湾の 1 社が出資の見送りを決めたことが 14 日、わかった。 JDI の経営が想定以上に悪化していることなどから、出資をめぐる条件が折り合わなかった。 中台連合から出資を受ける計画に狂いが生じたことで、再建の行方は一段と不透明になった。

JDI は 4 月、中台連合から最大 800 億円の金融支援を受けると発表した。 中台連合に 420 億円分の株式と、株式に転換できる社債 180 億円分を買ってもらい、JDI が資金需要に応じて転換社債 200 億円分を追加発行する予定だった。 最大 800 億円の金融支援のうち、中国の大手投資会社ハーベストグループが 407 億円、台湾の電子部品大手 TPK ホールディングが 251 億円、台湾の投資ファンド CGL グループが 142 億円を出す予定だった。

関係者によると、台湾の 1 社から金融支援を受けられなくなったことで 3 社連合による金融支援の枠組みが崩れ、新たに数百億円規模の資金の確保を迫られるため、海外の投資ファンドなどと出資の受け入れに向けた交渉を始めるという。 また、JDI は、中台連合が 14 日までに出資の実行に必要な手続きをとると説明していたが、同日夕の時点で全 3 社から、出資の可否について通知を受けていないと発表した。 出資の条件変更などがあった場合は、関係者と再協議し、協議の結果を開示するとしている。

JDI は 2019 年 3 月期決算で 5 年連続の赤字を計上し、債務超過寸前まで財務が悪化。 中台連合による金融支援の枠組みが崩れたことで、経営の先行きに不安が広がる恐れがある。 (高橋諒子、笹井継夫、asahi = 6-15-19)


JDI 出資、中台連合が正式決定へ INCJ も追加支援

経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ (JDI) は 30 日、出資の受け入れ交渉をしている中国・台湾の企業連合が 6 月 14 日までに JDI への金融支援を正式決定すると発表した。 また、筆頭株主で官民ファンドの INCJ (旧産業革新機構)から追加の金融支援を受けることも明らかにした。

JDI が保有する有機 EL パネル開発の関連会社 JOLED の全株式を譲渡し、INCJ からの借入金約 447 億円と相殺する。 さらに、4 月 12 日に発表した INCJ からの金融支援 1,520 億円のうち、長期借入金の金額を 770 億円から 500 億円に引き下げる一方、優先株の発行額を 750 億円から 1,020 億円に引き上げて資金繰りを改善する。 また、米アップルからの前受け金約 1 千億円について、毎月の返済額を半額に減らして返済期間を延ばす。 主力のスマートフォン向けパネルの事業を分社化することも検討する。 (asahi = 5-30-19)


JDI、金融支援 800 億円受け入れ発表 台中連合と合意

経営再建中のジャパンディスプレイ (JDI) は 12 日、台湾の電子部品メーカーなど 3 つのグループで構成する台中連合から 800 億円の金融支援を受けると発表した。 台中連合が議決権の 5 割弱を握る筆頭株主になる。 日本の官民ファンド、INCJ (旧産業革新機構)は筆頭株主ではなくなり、日本の電機大手の事業を統合して誕生した「日の丸液晶連合」は外資の傘下で再建を急ぐことになる。

JDI はスマートフォン向け液晶パネルの世界大手。 経済産業省が主導し、2012 年に日立製作所や東芝、ソニーの事業を統合して発足した。 当時の産業革新機構が 2,000 億円を出資し、日本の液晶産業の復活を目指した。 米アップル向けで売上高の半分を稼ぐが、過剰投資などがあだとなり、2019 年 3 月期は 5 年連続の連結最終赤字になったもよう。 資金繰りが悪化していたため、金融支援を求めて台中連合と交渉してきた。

台中連合には、台湾電子部品の宸鴻光電科技 (TPK) や台湾金融の富邦グループ、中国ファンドの嘉実基金管理グループが参加する。 JDI に普通株で計 420 億円を出資し、JDI が発行する 380 億円の新株予約権付社債(転換社債 = CB)も引き受ける。 JDI は台中連合を筆頭株主に迎え入れ、出遅れていた有機 EL パネルを収益源に育て、中国メーカー向けにも液晶パネルの販売を伸ばす。 赤字体質から抜け出すために国内ではリストラを検討するようだ。

現在の筆頭株主の INCJ は、JDI 向け債権の一部を議決権のない優先株に切り替えるなどして支援を継続する。 ただ台中連合が出資するため、INCJ の議決権比率は 25% 台から半分に低下する。 中台勢の出資と合わせた JDI の資本増強額は 1,170 億円になる。 JDI と台中連合は金融支援で何とか合意にこぎつけたが、実際に出資が実現するかどうかは不透明な部分がある。 米中の貿易摩擦が長引くなか、対米外国投資委員会 (CFIUS) などが待ったをかける可能性があるためだ。

最近では LIXIL グループが CFIUS の反対でイタリア子会社の中国企業への売却を断念した。 東芝は 11 日、米液化天然ガス (LNG) 事業を売却する予定だった中国民間ガス大手から、契約解除を求められたと発表した。 米中当局の審査の遅れなどが影響しているという。 (nikkei = 4-12-19)


JDI、台中勢傘下に 「日の丸液晶」が頓挫

経営再建中のジャパンディスプレイ (JDI) は 3 日、台湾の電子部品メーカーや中国の投資ファンドなどで構成する台中連合 3 社から、出資などで 600 億 - 800 億円の金融支援を受け入れることで大筋合意した。 官民ファンドの INCJ (旧産業革新機構)も支援する。 外資への傘下入りで JDI の再建は前進するが、液晶の国産化路線は頓挫することになり、日本の産業史にとっても大きな節目となる。 (nikkei = 4-3-19)


JDI、外資受け入れ検討 5 年連続赤字見通し

液晶パネル大手のジャパンディスプレイ (JDI) は 14 日、2019 年 3 月期の業績見込みを大幅に下方修正し、純損益が 5 年連続の赤字になる見通しになったと発表した。 中国ファンドや台湾企業などの企業連合からの出資受け入れを検討していることも関係者への取材で分かった。 公的資金を受けた国策企業として 12 年に発足したが、再建に向け、外資に頼らざるを得なくなった。

スマートフォン向けパネルをつくる白山工場(石川県)などは稼働率が低迷しており、減損処理の必要性を検討中だ。 通期の赤字額の見込みは示さなかったが、巨額になる可能性もある。 売上高の見通しは「前年比 5 - 15% 増」から「同約 10% 減」に、営業損益の見通しも「売上高の 1 - 2%」から「200 億円超の赤字」にそれぞれ下方修正した。 売上高の 5 割強は米アップル向けだが、主力の iPhone (アイフォーン)が想定以上に低迷した。 力を入れる自動車向けも、欧州の新車市場が低調で伸び悩んだ。 (北川慧一、asahi = 2-15-19)

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