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「日本では買ってもセーフ」それでいいの? 売春防止法改正求める声 東京はアジアの新しいセックス観光都市 - -。 「東京に行ったら、合法的に安く若い女性と性行為して遊べると、世界の新聞やテレビが残念ながら報道している。」 5 月の衆院内閣委員会。 質問に立った山井和則議員(立憲民主)は、こう投げかけた。 女性を「買い」に、新宿・歌舞伎町を訪れるのは日本人だけでない。 支援団体によると、今も客の多くは日本人だというが、路上に立つ女性たちを買いに来る男性たちの様子は国際的に報じられている。 山井さんは、外国人による「買春観光」をなくすためにも、現在の売春防止法(売防法)を見直し、「(検討会を設置して)買春防止法の制定を議論していただけないか」と法務省に迫った。 ホストクラブで飲食をした女性が借金を背負わされ、その支払いのために売春などを強いられる、いわゆる「悪質ホスト問題」に取り組むなかで、積み残した課題として売防法に関心を持つ。 2022 年 6 月、山井さんは、女性たちへの支援活動をする団体のスタッフと歌舞伎町を歩き、衝撃を受けた。 「買う側を取り締まる国も増えるなか、日本では買ってもセーフだという認識が世界中で広がっている」と危機感をあらわにする。 なぜ処罰の対象が売る側に偏るのか。 1956 年に制定された売防法は、長く「公娼制度」があった日本が敗戦後、国際社会に復帰するために国際基準にあわせるため法整備された経緯がある。 制定時に法務省が出した解説には、処罰の対象となるのは「売春に介入して不法な利益を得る行為」、「売春を助長させるおそれのある行為」とある。 「婦女子が自ら売春の勧誘をする行為は、一般公衆にも迷惑を及ぼし、社会の風紀にも悪影響を及ぼす」とも記され、第 5 条で、公衆の目に触れる方法で売春の相手方となるよう勧誘する行為などに罰則が規定された。 見栄えが悪いから、迷惑だから取り締まる 山井さんだけでなく、今年 5、6 月の衆院内閣委員会や法務委員会では複数の議員が売防法について質問した。 その一人、緒方林太郎議員(無所属)は、「見栄えが悪いから、迷惑だから取り締まるという理屈で、この法律が女性の人権や尊厳を守ろうとしているものではないことは明白だ」と話す。 「売る側と買う側の非対称性の問題にとどまらず、そもそも何を守るための法律なのか、根本から議論し直す必要があるのではないか。」 緒方さんは 11 月 11 日の衆院予算委員会で、高市早苗首相に買春する側への処罰の必要性について検討を求め、高市首相は「必要な検討を行うことを法務大臣に指示する」と応じた。 海外ではどうなっているのか。 フランスのように売る側を処罰せずに保護や支援の対象とし、買う側を処罰する法体系は「北欧モデル」、「性平等モデル」と呼ばれる。 1999 年にスウェーデンが導入して以降、ノルウェーやカナダ、アイルランド、イスラエルなどが導入した。 アジアでは、韓国も 2004 年の性売買防止法で導入した。 一方で、ドイツやオランダのように売買春を合法とする国もある。 日本では、現場で女性支援を行ってきた団体が現行法に疑義を唱えてきた。 「居場所」をくれた大人が買春者のことも 困難を抱える女性支援に取り組む NPO 法人「ぱっぷす(東京)」は「性売買問題を解決するには需要を断つこと」といい「買う側が買春をやめれば、性売買の問題は終わる」として、「2 万円でどう?」などと持ちかける買う側に対して「勧誘罪」を適用するよう求めている。 虐待や貧困、孤立などから売春に至った女性たちを 2011 年から支援している一般社団法人「Colabo (東京)」は、売る側を犯罪者とせず、買春者への処罰を設ける法改正を求めている。 代表の仁藤夢乃さん (35) によると、路上に立つ女性たちは、「おなか空いてない?」など、女性の孤独や不安に「親身に」寄り添うような優しい言葉をかけてくる買春者やあっせん業者によって売春に誘導されている。 親や警察、児童相談所などから問題児扱いされてきた彼女たちにとって、初めて自分に「共感」や「理解」を示し、「居場所」や「仕事」をくれた大人が、買春者や業者であることも少なくない。 だが実際には、金銭と引き換えに、首を絞められたり避妊のないセックスをされたり、あらゆる暴力を受け入れることを強いられているという。 仁藤さんは「私がこれまで接してきた少女たちの語りは、性暴力被害者と共通点が多い。 心身ともに傷ついていて、ケアが必要な状況だ。」という。 だが、現行法に基づくと、路上で客待ちをしたとして売防法違反で逮捕されるのは女性たちの側だ。 報道ではさらに「インバウンドを狙った売春」、「ホストに貢ぐため」など、女性たちの「自発性」や「悪質性」が強調される。 仁藤さんは、女性たちは、あっせん業者と買春者の間でやりとりされる「商品」に過ぎないと指摘する。 「いくら商品を罰しても、買いたい人がいれば業者はあらゆる手を尽くして新しい商品を探す」といい、「業者と買う側を処罰しなければ性売買は減らない。 売る女性側に注目するのではなく、買う側、あっせん業者に注目し、女性の人権を守る法律にするべきだ」と話す。 大切なのは「売る側と買う側の力関係を逆転させること」といい、買春者に罰を適用するだけでは、売買春が地下に潜る恐れもあると懸念する。 「買春を暴力ととらえ、売る側を保護することが重要だ。」 ☆ 国は 11 月 12 日から 25 日まで「女性に対する暴力をなくす運動」を実施している。 (大貫聡子、asahi = 11-16-25) 国のコロナ補助金、3 億円超を過大交付 審査担ったパソナなどに不備
記事コピー (4-29-20 〜 11-5-25) どうなる「出産費無償化」 自己負担ゼロの基本料 + 現金給付案が浮上 出産時にかかる標準的な費用を無償化する議論が、年末にかけて本格化する。 厚生労働省内では、正常分娩に欠かせない医療サービスなどの費用は自己負担をゼロとし、出産後に提供される「お祝いご膳」など付加的なサービスに対しては現金給付で負担を軽くする案も浮上している。 最終案の行方は不透明だが、厚労省の審議会で議論し、来年の通常国会で必要な法改正を目指す方針だ。 現在、帝王切開などを必要としない正常な出産は公的医療保険の対象外で、自由診療として扱われている。 国が価格を決める保険診療と異なり、医療機関ごとに価格や提供するサービスに差がある。 出産した人は、自身が加入する健康保険組合から出産育児一時金として 50 万円を受け取れるが、大都市を中心に費用が 50 万円を大幅に超える施設も多い。 出産費用は年々高くなり、負担は重くなっている。 さらに、一時金の額を引き上げると、医療機関も追いかけるように価格を引き上げる傾向がある。 こうした課題を受け、岸田政権は出産費用の保険適用を打ち出した。 2023 年末に閣議決定した「こども未来戦略」では、26 年度をめどに導入の検討を進めるとされた。 病気やけがの保険診療と同じように出産が保険適用されると、現役世代では医療費の 3 割が原則本人の負担になるため、必ずしも負担の軽減につながらない。 また、保険診療は全国一律の価格がつけられるが、出産に必要な診療行為にそれぞれ一律の価格をつけるのは難しいとの反対意見も強かった。 このため、厚労省は新しい支援策を検討している。 その案では、正常分娩に欠かせない医療サービスの費用などをまかなう「基本料」を設定する。 基本料部分については、妊婦の自己負担はなく、妊産婦が加入する健康保険組合が医療機関に料金を支払うことも想定する。 ハイリスクの妊婦を受け入れるなど、医療機関の機能をふまえた加算も検討される。 基本料には、「お祝いご膳」のようなサービス分は含めない考えだ。 こうしたサービスに対しては、出産した人に一定の現金を給付する。 医療機関には価格を明示してもらうことで、妊産婦が自由に選べる仕組みにしたい考えだ。 省内での議論はまとまっておらず、最終的にどのような案が提示されるかは見通せない。 また、帝王切開が必要になるなどの異常分娩の場合、現在も費用の一部が病気やけがと同じように保険適用となっており、新しい制度でも正常分娩とは別の形で負担軽減が図られる見通しだ。 財源は、一時金の 50 万円と同様に基本的に保険料を想定している。基本料や現金給付の額は、少子化で分娩数が減っていることと現在の一時金の金額もふまえて、議論される見通しだ。 仮にこの案を実現する場合、どの医療サービスを基本料に含め、価格をどう設定するのかなど、検討すべき課題は多い。 無痛分娩を基本料の部分に含めるのかも大きな論点だが、無痛分娩は提供体制が整っていない地域も多く、難しいとの見方が強い。 また、産婦人科医の業界団体である日本産婦人科医会は、国が出産費用を一律で決める保険化には反対している。少子化の影響もあり、経営難になって地域の産科施設がなくなる懸念があるためだ。 こうした点も踏まえ、厚労省は来年の通常国会で必要な法改正を目指しているが、26 年度当初から新たな制度を本格的に始めることはできない見通しとなっている。 (足立菜摘、asahi = 11-3-25) 遠のく選択的夫婦別姓 高市政権で「旧姓使用の法制化」が急浮上 新たな政権のもと、今年の通常国会で機運の高まりをみせた「選択的夫婦別姓」の議論はどうなるのか。 保守的な立ち位置の高市早苗氏が首相となり、推進派の公明党が連立政権から離れたことで、実現がさらに遠のく可能性がある。 旧姓の通称使用の法制化法案を、来年の通常国会に提出し、成立を目指す――。 自民党と日本維新の会が 20 0日に交わした連立合意書には、そう明記された。 通称使用の法制化は、高市氏の長年の持論で、維新の選挙公約でもある。 結婚の際に夫婦のどちらかが姓を改める「夫婦同姓」制度を維持したうえで、結婚前の旧姓を通称として広く使えるようにする考え方だ。 希望した人が夫婦別々の姓を選べる選択的夫婦別姓とは、根本的に異なる。 高市氏は過去に私案をまとめ、維新は法案を提出しているが、両案には隔たりがある。 維新案は保守派が重んじる戸籍法を改正する手法で、自民党の一部に強い異論がある。 ただ、選択的夫婦別姓を認めないという点では一致している。 「高市政権の間、前進見込めない」 今の民法は、戦後間もなく制定されて以来、夫婦同姓の制度をとってきた。 男女どちらの姓でも選べるが、改姓するのは女性が 9 割超に上る。 国政の議論は、法相の諮問機関である法制審議会が 1996 年、選択的夫婦別姓を導入するよう答申したことから始まった。 女性差別撤廃条約に批准後、女性差別にあたる法律を見直す一環だった。 だが、自民党の一部に「家族を崩壊させかねない」といった反対論が強く、政府は法案を提出できなかった。 膠着状態が続く中、変化の兆しもあった。 日本経済団体連合会(経団連)が昨年、ビジネスの妨げになっているとして、政府に早期実現を要望。 さらに、導入に前向きな発言をしていた石破茂氏が首相に就いた。 好機とみた立憲民主党は、「30 年越しの課題に決着をつける(野田佳彦代表」)として、今年の通常国会に法案を提出した。 しかし、野党内の推進派が割れるなどし、決着はつかなかった。 与野党は臨時国会でも法案を審議すると申し合わせているが、立憲のベテラン議員は「高市政権の間、前進は見込めない」と漏らす。 「個人の尊厳に関わる問題」 選択的夫婦別姓を望む人たちの間では今、高市政権の目指す旧姓の通称使用法制化について、懸念が強まっている。 旧姓の通称使用を法制化しても、旧姓を使えない場面は残る。 海外で旧姓が理解されず、トラブルにあった人も少なくない。 経団連の昨年の調査では、女性役員の 88% が、通称使用が可能でも何らかの不都合や不利益があると答えた。 自分の親しんだ名前が「旧姓」になる点も変わらない。 通常国会では推進派の参考人が「希望する人が自分の名字を名乗り続けられるかは、個人の尊厳に関わる重要な問題だ」と訴えた。 旧姓の通称使用の主な限界 司法界では、重要な憲法判断を担う最高裁大法廷が 2 度、選択的夫婦別姓を認めない現行法は合憲と結論づけ、国会で論じるよう促した。 ただ 21 年の決定では、15 人の裁判官のうち 4 人が違憲とする反対意見を書いた。 その中では、旧姓と戸籍名の「ダブルネーム」である限り「人格的利益の喪失」は生じ得ると、通称使用の限界にも言及している。 第 3 次訴訟の弁護団長を務める寺原真希子弁護士は、通称使用の法制化案を「選択的夫婦別姓を阻止するためのツール」と指摘。 「結婚しても姓を変えたくないというシンプルな願いが、なぜ何十年も実現できないのか。 別姓を望み、結婚をためらっている当事者の声を聞いてほしい。」と話す。 (二階堂友紀、asahi = 10-23-25) ◇ ◇ ◇ 選択的夫婦別姓、引き続き実現求める 高市新政権に対し経団連会長 自民党と日本維新の会が連立政権の合意書で「旧姓の通称使用の法制化」を掲げたことについて、経団連の筒井義信会長は 21 日、「経団連としては引き続き、選択的夫婦別姓(の実現)をかねての主張どおりに展開したい」と述べた。 高市早苗氏の首相選出を受け、報道陣の取材に応じ、コメントした。 経団連は旧姓の通称使用法制化について、「1 人の人物に『戸籍姓』と『通称姓』という二つの法的な姓が誕生することになり、マネーロンダリング(資金洗浄)、脱税、不正取引のおそれがある」、「ダブルネームや使い分けに伴う弊害を解消できない」、「通称対応には膨大な手間と費用がかかる」などと問題点を指摘してきた。 筒井氏は「経済界の強みは企業の声、働く様々な人の声に耳を傾けることができ、それを政策に反映していくことだ。 新政権とも建設的な対話を求めたいし、連携すべきところは連携したい。」と述べた。 他方、高市氏が首相に選出されたことは、「歓迎したい。 日本が変革していく表れになると思う。 課題解決に向け、迅速、着実に政策を遂行していくことを期待したい。」と語った。 (橋田正城、asahi = 10-21-25) 給与 1 千万円超 320 万人、会社員の 6.2% 電気ガス・金融に多く 最近の賃上げの流れを受けて、民間企業で働く給与 1 千万円超の人が 2024 年に 320 万人となり、前年から 15% 増えました。 同じ基準で比べられる 14 年以降で最多の人数です。 高年収の一つの目安とされる額ですが、どんな業種の人が多いのでしょうか。 国税庁「民間給与実態統計調査」によると、1 年を通じて勤務した給与所得者は 24 年に 5,137 万人。 うち年間の給料や手当、賞与の合計が 1 千万円超の人は男性 286 万人、女性 34 万人の計 320 万人だった。 全体に占める比率は 6.2% になる。 増加の一因は近年の賃上げの流れだ。 働き手の間ではより高い収入を求めた転職が盛んになり、人材の価値を最大限に引き出す「人的資本経営」が大企業で広がる。 24 年は平均給与も前年比 3.9% 増の 478 万円(男性 587 万円、女性 333 万円)と伸びた。 1 千万円超の人が占める比率を 14 業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道」は働き手の 28% と最も多く、平均給与も 832 万円と最も高い。 次いで「金融・保険」、「情報通信」の比率が多い。 一方で「宿泊・飲食サービス」、郵便局や協同組合などの「複合サービス」は 3% 未満だった。 なぜこうした差が生じるのか。 一つの理由は業種による賃金水準の違い。 機械化やシステム化を進めやすい業種は高水準で、労働集約型のサービス業などが低い傾向は、国内でも海外でもみられる。 業種ごとの人員構成の差も影響する。 給与は一般に、中小企業より大企業の方が、勤続年数の短い人より長い人の方が高い傾向だ。 「電気・ガス・熱供給・水道」、「金融・保険」は働き手の 6 - 7 割が資本金 10 億円以上の企業に属し、平均勤続年数は 15 - 18 年ほど。 一方で「宿泊・飲食サービス」は 4 割が資本金 2 千万円未満の企業で働き、勤続年数は約 8 年だ。 1 千万円超の人を男女別でみると、大半の業種は男性が 8 - 9 割超。 これに対して「医療・福祉」は女性が 3 割近くを占めている。 1 千万円は企業側にとっても、従業員に報いる象徴的な金額。 機械メーカーのスター精密(静岡市)は 7 月、初公表した統合報告書で、従業員の平均年収を 30 年に 1 千万円以上とする目標を示した。 北国銀行(金沢市)を傘下に持つ CCI グループは 24 年の統合報告書で、約 700 万円の年収を 10 年後に 1 千万円超にすると掲げた。 社員のやる気と成長への意欲を高めるねらいという。 「役職なし」で、給与伸び悩む中高年も 全業種の平均給与を年齢別でみると、男性は 50 代まで右肩上がりとなる年功序列型がくっきりと表れる一方で、女性は全年代で横ばい。 24 年を 14 年と比べると、男女ともに底上げされた。 ただ、男性の 40 代後半 - 50 代前半は、ほかの年代より伸びの低さが際立つ。 企業側は、転職の活発な 30 - 40 代前半と、65 歳への定年引き上げに伴う対応として 50 代後半 - 60 代前半を中心に、重点的に処遇改善している可能性がある。 管理職世代の伸び悩みについて、厚生労働省が「賃金構造基本統計調査」を使って興味深い分析をしている(23 年版労働経済白書)。 新卒期に入社して勤め続ける「生え抜き正社員」で、課長や部長などの役職に就ける人の割合が低下し、大企業の中高年の賃金押し下げにつながったという。 大卒や大学院卒で勤続 16 年以上(40 歳前後以上)のうち役職に就く人の割合をみると、20 - 21 年は 05 - 06 年より落ちていた。 白書では「雇用者の高齢化が進む中、役職に就ける年数になっても、ポストが限られ昇進が遅れている可能性や、転職などによる外部登用が増えた可能性」を指摘している。 賃上げが進む一方で、物価上昇には追いついていない。 シンクタンク「SOMPO インスティチュート・プラス」の小池理人氏が、1 千万円の実質的な価値を消費者物価指数を使って計算すると、現在は 10 年前と比べて 10% 以上落ちているという。 小池氏は「物価上昇で実質的な購買力が減少しても、所得税は名目金額で累進課税されて負担が増える。 税金の面でも適切なインフレ調整が必要になる。」と話す。 (中川透、asahi = 10-19-25) |