|
「とんでもない戦力」の技能実習生 制度廃止で転職自由化へ 外国人労働者が地方でも増加している。 宮崎県では 8,515 人と過去最多を更新した。 人手不足が深刻化する中、2 年後には「技能実習制度」が廃止され、外国人労働者にとって転職が容易な新制度へ移行する。 それにともない地方からの人材流出も懸念される。 新制度の狙いと課題に迫る。 宮崎県の外国人労働者、過去最多を更新 宮崎労働局によると、2024 年 10 月時点での県内の外国人労働者数は 8,515 人に上り、前の年より 1,419 人増加して過去最多を更新した。 この外国人労働者を巡る制度は、2 年後から大きく変わることになる。 現在の「技能実習制度」が廃止され、「育成就労制度」が新たに設けられるのだ。 「国際貢献」から「人手確保」へ 現行の技能実習制度では、外国人労働者は最長で 5 年間日本に滞在し、農業や製造業などの分野で働くことができた。 この制度の目的は、日本の技術を外国人に伝える「国際貢献」であり、実習終了後は原則として母国に帰国する必要があった。 一方、新たに導入される「育成就労制度」では、原則 3 年間働けば、長期就労が可能な「特定技能」の資格を取得でき、そのまま日本で働き続けることが可能になる。 制度の目的が "国際貢献" から " 人手の確保" へと明確に転換された形だ。 しかし、この変更は宮崎をはじめとする地方にとって、ある課題を生むと懸念されている。 農業現場を支える「とんでもない戦力」 えびの市でホウレンソウやサトイモなどを栽培する立久井農園では、16 人のインドネシア人が働いており、そのうち 12 人が技能実習生だ。 サトイモの掘り起こし作業など、農園の重要な戦力となっている。 外国人労働者の一人は「いい会社。 ルールも守っていて、皆さんが優しくしてくれるから、ここで長く仕事をしても大丈夫。」と話す。 また、「農業のことを色々知りたい」、「トラクターとか色々な機械がある。 インドネシアの農業にはあまりない。 だから日本に行きたいと思った。」と、日本での就労意欲を語った。 立久井農園の立久井義文社長は、外国人労働者について「とんでもない戦力」だと評価する。 「国を出て日本で働こうという気概を持って来ているので全く遜色のない人たち」と、その働きぶりを称えた。 県内には、この農園のように外国人労働者を受け入れている事業所が 1,506 カ所存在する。 制度移行の狙いと地方の課題 技能実習生のサポートなどを行う道休誠一郎さんに、制度変更の背景を聞いた。 道休さんによると、技能実習制度は 1993 年に法的に確立されたもので、「日本が持っている技術やノウハウを発展途上国の人たちを訓練することによって国際貢献をしていこう、ということを第一義に置いて作られた制度」であった。 しかし、次第に本来の目的から外れ、一時的な労働力として不適切に雇用する事業者が増加。 「いろんな業種で賃金の未払い、過酷な体罰を受けた、言葉で差別をされた。 そういう問題も起こっている。」という。 育成就労制度は、こうした問題を改善するために導入される。 特に、これまで原則としてできなかった他の会社への転籍(転職)が可能になる点が大きな変更点だ。 道休さんはこの転職の自由化が、地方では深刻な問題を引き起こすと指摘する。 「恐らく、転職が自由になるということであれば、基本的には時給の高い都会へ行こうよ、という流れが起こってくる」と懸念を示した。 実際に、ある技能実習生は「最初に(日本へ)来た時、宮崎がどんなところかはわからない。 イメージは東京だけ」と話しており、都市部への関心の高さがうかがえる。 「選ばれる日本」になるために では、転職による労働力の流出をいかにして防ぐべきか。 立久井社長は、外国人労働者との向き合い方について「(外国人労働者を)自分の子供だと思っている。(日本人と)同等に付き合っていくことが一番大事」と語る。 また、道休さんは事業者だけでなく、地域社会全体の姿勢が重要だと訴える。 「受け入れる農家の人たちだけでなく、地域社会が外国人に対して多様性を認めるような文化をどんどん取り入れないといけない。 世界の中で選ばれる日本にしなければいけないと私たちは思う」と提言した。 慢性的な人手不足の中、今後ますます増加が見込まれる外国人労働者。 制度が転換期を迎えようとしている今、事業者だけでなく、地域全体で彼らを受け入れ、向き合っていくことが重要になってくる。 (テレビ宮崎 = 10-8-25) 「ムスリムの給食決定」、北九州市教委が否定 誤情報に抗議 1 千件超 北九州市の学校給食について、ムスリム(イスラム教徒)への対応を決めたという情報が SNS で拡散し、市に 1 千件超の抗議などが寄せられている。 市教育委員会は 24 日、会見を開き、アレルギーや宗教上の理由などに配慮はしているが、「ムスリムに特化した給食を決定した事実はない」と説明した。 市教委によると、イスラム教で禁忌とされる食材を完全に取り除いた「ハラル給食」をめぐっては、2023 年 6 月にムスリムの女性から提供を求める陳情が出され、市議会で審議されたが、採択されなかった。 だが、SNS では、陳情が採択され、市教委がムスリム対応の給食を決定した、などという情報が拡散。 市教委は「誤情報だ」としている。 今月 19 日から 24 日までの間に、「日本の学校に来ているのだから、出されたものを食べるのが筋だ」といった苦情や問い合わせが 1 千件以上寄せられているという。 市教委は、ハラル給食の実施について、調理にかかる設備や人材、予算などの面から「学校給食全体で提供するのは困難」と説明。 一方で、アレルギーや宗教上の理由などがある子どもたちも食べられる給食の実現に向けて工夫しており、豚肉を鶏肉に変えたメニューもあったという。 市教委は「結果としてムスリムの子どもたちも一緒に食べられる機会は増えた」としている。 太田清治教育長は抗議について、「教育行政にたずさわるものとして悲しい。 子どもたちが喜んでいる顔が、私たちが願っているもの。 そこはしっかりと考えていただきたい。」と話した。 (鳥尾祐太、asahi = 9-24-25) アフリカ・ホームタウン騒動、「JICA 解体」主張の背景にあるもの 「解体、解体、解体!」 8 月 28 日午後 6 時、東京都千代田区の国際協力機構 (JICA) 本部前。 建物に向かって 100 人近い人が「JICA 解体」を求めて声を張り上げた。 10 代の学生からスーツ姿の会社員風まで様々な年代の人々が集った。 「アフリカホームタウン計画は白紙撤回一択」と書かれたプラカードや日本国旗などを掲げ、「日本人のために税金を使え!」、「移民を増やすな!」などと訴えた。 問題の発端は、8 月 22 日まで横浜市で開かれた第 9 回アフリカ開発会議 (TICAD) で、JICA がアフリカ各国と交流の深い国内 4 市を各国の「ホームタウン」に認定したことにある。 千葉県木更津市とナイジェリア、山形県長井市とタンザニア、新潟県三条市とガーナ、愛媛県今治市とモザンビークがペアになり、人材交流や連携イベントを JACA が支援し、国際交流を後押しするのが目的だ。 ところが発表直後から、SNS などでは「移民が押し寄せてきたら誰が責任をとるのか」といった投稿が急速に拡散し、4 市には抗議の電話やメールが殺到。 「JICA 解体」デモまで起きる騒動へと発展した。 背景にあるものは何か。 抗議の電話は今も 1 日 200 件近く 国際協力機構 (JICA) が国内 4 市(千葉県木更津市、山形県長井市、新潟県三条市、愛媛県今治市)をアフリカ各国の「ホームタウン」に認定したと発表されると、X (旧ツイッター)上などで「日本の市や町をアフリカに譲渡した」、「移民が押し寄せる」といった批判的な投稿が急速に拡大した。 ナイジェリア大統領府が「日本政府が特別査証(ビザ)の枠組みをつくる」と誤った声明を出したことも混乱に拍車をかけ、外務省は「特別な査証の発給は想定されていない」と発表。 ナイジェリア大統領府は声明を削除したが、9 月に入っても抗議や騒動は続いている。 「ホームタウン」に認定された木更津市では現在も 1 日 200 件近くの電話があり、同市は 11 日、移民の受け入れ促進やインターンシップ受け入れの計画はないとする市の見解を改めてウェブサイトで発信した。 今治市では市役所の女性トイレで、個室の扉に「移民反対」などと油性ペンで書かれたケースが複数回あった。 三条市では、今秋に予定されていたガーナ政府関係者による市への視察が中止となった。 外務省関係者によると、「ホームタウン」の名称変更を求める市もあり、今後各市や JICA と協議する方針という。 「米国際開発局 (USAID)」解体影響か JICA 関係者は、トランプ米大統領が米国の途上国援助を担う米国際開発局 (USAID) の解体を打ち出して以降、JICA への世論の風当たりは強まり始めたと語る。 さらに 7 月の参院選で外国人受け入れ規制を訴える政党が議席を伸ばすなどする中、SNS で途上国支援に批判的な投稿も増えてきたという。 8 月末にインドのモディ首相が来日した際も誤情報は拡散。 石破茂首相が「JR 東日本で研修中のインド人運転士さんたちとご挨拶」と視察の様子を X に投稿すると、「インド人が日本の新幹線を運転する」という誤情報が広がった。 日本政府の「10 年間で 10 兆円」という民間投資目標についても、国の多額の税金が投じられるとの誤った情報も拡散し、外務省の担当者は「政府がお金を出すわけではない」と記者団に強調した。 アフリカ各国の「ホームタウン」認定をめぐる今回の事態を受け、外務省は誤情報の拡散を察知する仕組みづくりや在外公館による現地政府の発信のチェック体制を強化する方針だ。 だが、SNS 上などで強まる途上国支援批判などにどこまで効果が上がるかは見通せない。 「福祉排外主義」で JICA が標的に 慶応大・塩原良和教授(国際社会学)の話 今回の問題の背景には、外国人に対する排外主義や福祉排外主義があるのではないか。 現代社会の急速な変化の中、あらゆる人々は根拠のない漠然とした不安を抱えている。 そこに脅威を設定し、攻撃することで安心感を得ようとするのが排外主義だ。 外国人が脅威に仕立てられ、さらに「税金は自国民にのみ使われるべきだ」との福祉排外主義の主張が絡み合い、JICA も標的となったのだろう。 今回拡散した誤情報は、これまでならそれほどの影響力を持たなかっただろう。 だがトランプ米政権による米国際開発局 (USAID) の解体が「先例」として人々に知られたことで「JICA 解体」を求める誤情報を含む言説が広がる素地を作った可能性がある。 「ホーム」はナショナリズムを呼び覚ます言葉であり、一部の人々の心に刺さった可能性がある。 ただ、民間交流を積み重ねて、外国人を生身の人間として想像できるようになることが排外主義に抵抗する芽を育む。 「ホームタウン」の事業目的とされる草の根の交流こそ今求められているのではないか。 (山本知佳、加藤あず佐、asahi = 9-14-25) ◇ ◇ ◇ 誤情報で自治体「仕事にならない」 アフリカに「特別なビザ」と拡散 国際協力機構 (JICA) が千葉県木更津市など 4 市をアフリカ各国の「ホームタウン」に認定したことをめぐり、「移民が押し寄せる」といった投稿が SNS で広がった。 各市には問い合わせが殺到し、市長が否定コメントを出すまでに。 きっかけは一部の国で発信された誤情報。 外務省が訂正を求める事態に発展した。 22 日まで横浜市で開かれていた第 9 回アフリカ開発会議 (TICAD) で、JICA が公表した。 JICA のウェブサイトによると、これまでに各市が築いてきたアフリカ諸国との関係を強め、アフリカの課題解決と日本の地域活性化に役立てることを目指している。 木更津市とナイジェリア、山形県長井市とタンザニア、新潟県三条市とガーナ、愛媛県今治市とモザンビークがペアになり、人材交流や連携イベントを JICA が支援し、国際交流を後押しするとしている。
この発表の後、SNS などでは「移民が押し寄せてきたら誰が責任とるんですか」といった投稿が急速に拡散。 アフリカの現地報道などで、この事業によって日本政府が移民の受け入れを促進したり、特別な査証(ビザ)を発給したりする、といった誤情報が伝えられたからだった。 4 市には苦情を含めた問い合わせが相次いだ。 長井市には「移民を受け入れるのか」などの問い合わせがあり、担当課の 4 回線では足りず、別の回線を使って対応した。 担当者は「仕事にならない状況だった」と振り返る。 タンザニアとは、2021 年の東京五輪・パラリンピックで同国選手団のホストタウンになったり、市内のマラソン大会に選手を招待したりするなど交流が続いている。 市の担当者はホームタウン認定の申し入れを「光栄なことなので受けた」と説明し、「今回の騒ぎは予想外だ」と話す。 鳴りやまない電話 メールは 3,500 件に 三条市では、25 日朝から電話が鳴りやまず、26 日午前 10 時の時点で、問い合わせの電話が約 350 件、メールが約 3,500 件に上った。 ホームタウンの認定は JICA からの提案で、市としては今後どういった交流ができるか考えていたところだったという。 担当者は「現地の誤情報でここまでひどい状況になるのか」とため息をつく。 こうした事態を受け、各市長は「移住や移民の受け入れにつながるような取り組みではありません」、「事実に基づかない情報の発信や拡散は、混乱を招く」などと情報を否定するコメントを次々に発表した。 外務省も動いた。 ナイジェリアの大統領府は今回の事業について、「日本政府は、高度の技術を持ち革新的で、才能にあふれた若いナイジェリア人が木更津市で生活し、働くための特別ビザの枠組みをつくる」との声明を公表。 日本側の説明と食い違っていた。 そこには、ホームタウンの認定によって人口の増加と地域の再活性に 4 市が期待している、とも記されていた。 JICA 「ビザの話はしていないのに …」 日本の外務省は現地の日本大使館を通じて発信内容の訂正を求めるとともに、事業内容について改めて説明しているという。 在日本ナイジェリア大使館は取材に「担当者がいない」と回答している。 JICA によると、TICAD 開催にあたってアフリカ各国の事務担当者と「ホームタウン」認定について話はしたが、ビザなどの話題には言及しなかったという。 広報担当者は「どういった誤解があって現地政府の発表や報道になったかはよくわかっていないが、事実と異なるので、訂正を求めていく」とコメント。 日本の SNS 上で誤情報が広がっていることについては、「国際交流を推進するための事業が、本来の趣旨と違う形で広がってしまい残念。 今後、誤解が起こらないように発信の方法も工夫していきたい。」と話した。 (真田嶺、平川仁、山本知佳、asahi = 8-26-25) 建築資材の下敷きとなりベトナム国籍の実習生死亡 栃木・佐野の金属加工会社で作業事故 栃木県警佐野署は 9 日、同県佐野市の金属加工会社で 5 日にベトナム国籍の技能実習生、レー・タイ・バンさん (39) が建築資材の下敷きになり、死亡する事故があったと発表した。 死因は多発外傷。 署が詳しい原因を調べている。 署によると、資材は長さ約 11 メートル、重さ約 2 トン。 クレーンで高さ 1 メートルほどの作業台に移動させ、切断する際、何らかの原因で資材が崩れ、頭部や足が下敷きになった。 1 人で作業していたという。 (sankei = 9-9-25) 「避難所に行く選択肢なかった」外国人 社長の決断と従業員の感謝 2 月に発生した大船渡市の山林火災を振り返り、災害時の外国人支援について話し合うセミナーが 4 日、盛岡市で開かれた。 国際協力機構 (JICA) 東北などが主催し、大船渡市「マルカツ水産」の佐々木晶生社長 (33) とインドネシア人従業員、ムハンマド・フセンさん (31) が、当時の避難生活を語った。 マルカツ水産では、ワカメの養殖やサンマ漁を行っており、24 人の従業員のうち 11 人がインドネシア国籍だ。 佐々木社長は「三陸沿岸の漁業は慢性的に人手不足。 日本に来てくれるインドネシア人には感謝しかない。」という。 火災発生時、会社や寮がある地域が避難指示の対象となった。 だが佐々木社長は「避難所に行く選択肢はなかった」と語る。 東日本大震災のとき、市内で外国人を雇用していた会社から「避難所で問題がおきて困った」と聞いたこともあったという。 日本人と異なる生活リズム、「尊重してもらえて感謝」 さらに、避難期間がイスラム教の断食月であるラマダンと重なったことが大きかったという。 「日没後まで食事をとらないため、生活リズムが日本人とは全く異なる。 そのため従業員を会社の経営する居酒屋などに避難させた」と佐々木社長。 10 日あまりの避難生活を、フセンさんは「文化や宗教を尊重してもらえて感謝している。 食事がとてもおいしかった。 公共の避難所に行くのは難しかったと思う。」と振り返った。 パネルディスカッションでは、勤務時間外に災害が起きたときのすみやかな避難の難しさや、組織に属していない外国人旅行者などへの災害情報の伝達の難しさなども話し合われた。 佐々木社長は「日頃からインドネシア人従業員とのコミュニケーションを重視し、地元の人たちとも積極的に付き合うようにしている。 地域ともいい関係を築きながらともに成長できれば。」と語った。 JICA 国内事業部市民参加推進課の松元秀亮課長は、能登半島地震で外国人労働者がボランティアをしたり、避難所運営に関わったりした事例を紹介。 「災害時には国籍関係なく支え合うことが重要。 有事に備えるには、日頃から相互理解を深めることが大事だ。」と語った。 (伊藤恵里奈、asahi = 9-7-25) 奇跡の急成長は社員の 4 割占める外国人 「安い労働力としてでなく」 外国人を大勢採用して業績を伸ばしている企業が、山形市にある。 会社を訪れると、「多文化共生社会」につながるたくさんのヒントがあった。 スズキハイテック(山形市銅町)は、メッキ加工を手がける創業 111 年の老舗だ。 自動車や半導体部品、精密機器などの表面処理加工を請け負い、航空宇宙や医療分野にも貢献している。 2024 年度の売り上げは、約 47 億円。 19 年度の約 11 億円から、5 年で 4 倍に増えた。 鈴木一徳社長 (54) は「この奇跡的な急成長は、外国人社員がいなければ成し得なかった」と語る。 社員数は約 260 人。 このうち 113 人、約 4 割が外国出身だ。 内訳は、バングラデシュ 63 人、ネパール 42 人、フィリピン 4 人、インドネシア 2 人、モンゴル 1 人、ボリビア 1 人。 高度専門職や技能実習、特定技能などの在留資格で働いている。 外国人材を積極的に雇用し始めたのは 15 年から。 この年に社長を継いだ鈴木さんがメキシコでの合弁会社運営や中国企業との取引に必要だと、日本語を話せる外国人材を求め、山形大の留学生だったボリビア人と中国人を迎えたのが最初だ。 きちんと教育すれば戦力になるとわかり、以降は毎年のように外国出身の社員を採用している。 19 年からは、技能実習生の雇用も始めた。 出身国の政府と協定を結んだ監理団体「国際人材育成機構」を介し、インドネシアやバングラデシュから志の高い人を雇い入れてきた。 「なぜこの会社で働きたいのか、どんな将来像を思い描いているのかを面接で尋ね、明確なビジョンを持っている人の採用を心がけている」と鈴木さんは話す。 買い物の車を手配、子育てもサポート その 1 人が、バングラデシュ出身のマズムダル・ソウラブさん (24) だ。 「技術力が高い日本の企業で学びたい」と 3 年前に来日。 不安もあったが、仕事は先輩の外国人社員が教えてくれた。 終業後には先輩外国人が講師役の日本語教室もあり、仕事や日常生活に必要な言葉を教わることができたという。 向上心が高いソウラブさんは、仕事を覚えるのも早く、作業も正確だった。 今は、表面処理事業部サブリーダーという役職で、製造管理や新人教育などを担当。 「会社が一人ひとりに配慮してくれるので、仕事に集中できます」とソウラブさん。 在留資格を特定技能に切り替え、引き続きこの会社で技術を磨いていくつもりだ。 バングラデシュから来日して 2 年半のイモン・エムディさん (24) も、品質管理部サブリーダーとして充実した日々を送る。 「治安がよく自然豊かな山形で、知識やスキルを高めることができます。 生活上の悩みや困りごとはなく、あっても先輩たちが相談に乗ってくれます。」と話す。 鈴木さんは、外国出身の社員に「郷に入っては郷に従え」と諭す。 「お祈りは仕事が終わってから」、「夜はアパートで大きな声を出さない」などのルールを定める。 国籍を問わず、がんばった分は昇給で応える。 異国での生活に困らないよう、きめ細かい配慮を欠かさない。 休日は、買い物に行く車を手配。 サクランボ狩りや芋煮会など親睦の場を設け、地元の祭りにも参加してもらうなど、社員が地域にとけこめるように工夫を重ねる。 山形市と連携し、出産や子育てのサポート態勢にも気を配る。 これまで全国で 7 万人以上の外国人労働者の仲介実績がある国際人材育成機構の担当者は「人手不足が顕著な地方では、外国人材が地域の産業を支える存在として欠かせない。 外国人労働者に選ばれる地域や企業になるためにも、ひとりの人として接することが、より大切になる」と指摘する。 鈴木さんは、外国人が働きやすい環境を整えることは、雇用する企業の使命だと考えている。 「大事なのは、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)にとらわれず、お互いに尊重し理解し合うこと。 『安い労働力』としてでなく、日本人と同じく地域社会を担う隣人としてつき合うことが、企業にとってもプラスになると思います。」 (斎藤徹、asahi = 8-21-25)
銀座では「店長以外は外国人」の店も それでも足りないコンビニ業界 日本で働く労働者のうち、外国人の割合が「29 人に 1 人」まで高まっています。 漁業、宿泊業、介護、製造業 …。 全国の現場を訪ねると、あらゆる業界で日本人だけでは賄い切れなくなっている実態が見えてきました。 東京都新宿区で 1 月にあった「はたちのつどい」。晴れ着やスーツ姿の若者たちが集い、20 歳の節目を祝った。 対象者は 4,337 人。 うち外国人は 2,031 人で 46.7% を占めた。 つどいの案内文も、4 カ国語で記されていた。 区内には大学や日本語学校が集中し、留学生が多い。 学業に支障が出ないよう、原則週 28 時間以内のアルバイトしかできないものの、人手不足が深刻な都内では、貴重な労働力となっている。 厚生労働省などの統計によると、都内の労働者のうち、「14 人に 1 人」が外国人。 全国の都道府県で最も割合が高い。その代表的な仕事が、コンビニ店員だ。
平日も訪日外国人客(インバウンド)でにぎわう、東京・銀座のファミリーマート銀座松屋通り店。 劉梅琴(りゅうばいきん)さん (42) は客の入店に気づくと、快活な声をあげる。 慣れた様子で商品を補充し、レジ対応にも余念がない。 同店は、小沼敬店長 (46) をのぞき、従業員約 30 人がみな外国人。 ネパールや中国、ベトナムなどの留学生が多い。 中国出身の劉さんは週 3 日、1 日 8 時間程度働く。 店頭では、外国人客から商品の原材料や在庫の有無などを尋ねられ、道案内も頼まれる。 日本語だけではなく、英語や中国語も使って答える。 小沼店長がレジを担当している時、通訳をすることもある。 留学生として来日し、結婚を経て約 10 年前、同店で働き始めた。 初めは戸惑いの連続だった。 割り箸が必要かを尋ねた際、客から「いいです」と言われても、「いらない」という意味だとはわからなかった。 レジで「3 番」などと言われた時も、たばこの銘柄を示す数とは思わなかった。 1 - 2 年ほどで一通りの仕事をこなせるように。 今では、常連客の注文前に、よく頼むコーヒーの紙コップを出せるようになった。 「お客さんは、家族みたいに思っています」と笑顔を見せる。 ファミリーマートでは、留学生や永住者などの外国人約 2 万人が働いているという。 日本語学校が多い都市部で多く、日本語を母語としない人にもわかりやすい「やさしい日本語」を使った育成や、外国籍社員による講習などに力を入れ、接客対応を向上させているという。 広報部の吉澤智さんは「日本語を習得しようと夢を持って来日している方が多い。 母国語のスキルを生かしつつ、日本で活躍できる基盤になれれば。」と話す。 コンビニ業界、特定技能の対象分野に含まれず ほかのコンビニチェーンでも外国人の採用が進む。 日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニ 4 社の外国人従業員の割合は 2 月末で 13% に上る。 ただ、それでも人手は足りていない。 2018 年度の経済産業省の調査では、店舗オーナーの 61% が「人手不足」を訴えた。 20 年にはコンビニ業界の課題を話し合う経産省の有識者検討会が報告書をまとめ、最大の課題は人材の確保と定着であり、特定技能制度を活用し、一定の知識や経験が必要な店長などとして働いてもらうことも検討すべきだと指摘した。 自民党の外国人労働者等特別委員会も同年 6 月、リーダー層の育成を目的に、同様の提言をまとめた。 だが、24 年 3 月に特定技能 1 号の対象が 12 分野から 16 分野に拡充された際、コンビニ分野は含まれなかった。 壁となったのは、生産性向上や国内人材の確保を進めてもなお足りない人材を外国人で確保する、という制度趣旨だ。 コンビニ各社はセルフレジ導入など生産性の向上策を進めている。 日本フランチャイズチェーン協会の大日方良光専務理事は特定技能などの拡充を視野に「コンビニで働くことを目的とした在留資格の実現を目指したい」と話す。 (小川聡仁、asahi = 8-19-25) 「技能実習生なんて受け入れるな!」 「外国人は出ていけ」と憤る人が知らない "データの真実" 記事コピー (8-14-25) |