障害年金の不支給、前年の 1.5 倍増 2024 年度、精神障害で急増

病気やけがで障害を負った人が受け取る障害年金について、昨年度に「不支給」と認定された件数の割合が前年の約 1.5 倍に増えていたことが、厚生労働省の調査でわかった。 審査の厳格化を求めた事実は確認できなかったとしつつ、「認定の方向性を事前に決めておくのが望ましい」との引き継ぎが職員間であったと明らかにした。 厚労省が 11 日、公表した。 調査は、障害年金が不支給となるケースが 24 年度に増えているとの報道を受け、日本年金機構とともに実施。 昨年度に新たに申請があったものから 1 千件を抽出して集計した。

1 千件のうち、不支給は 130 件 (13.0%)。 23 年度は約 14 万 2 千件のうち約 1 万 2 千件 (8.4%) だった。 障害の種類別に不支給の割合をみると、精神障害は 12.1% (23 年度は 6.4%)、手足の障害などの外部障害は 10.8% (同 10.2%)、呼吸器疾患やがんなどの内部障害は 20.6% (同 19.4%)。 精神障害では約 1.9 倍となっており、障害等級の目安よりも低く認定されるなどして不支給となったケースが 75.3% だった。 精神障害については、昨年度以降で不支給になったケースを点検し、必要な場合は改めて支給決定するとしている。

障害年金の審査は、機構の障害年金センターが担当している。 職員が受給要件などを確認し、必要な事項を記載した事前文書を作成。 それをもとに、認定医が障害等級を判断している。 調査では、審査を厳格化する組織的な指示があったかなどについて、職員らに聞き取りをした。 報告書によると、障害年金センター長から認定の根拠を明確にすべきだという意図の指摘はあったが、「機構理事長やセンター長を含め特定の職員が、審査を厳しくすべきだとする指示をしていた事実は確認できなかった」とした。

一方で、職員が異動する際の引き継ぎ書類には、認定医の傾向について、「基本的にこちらの意向に沿って認定してもらえるので、認定の方向性や不支給理由についても事前に決めておくのが望ましい」などとの記載もあったという。 報告書では「組織的に認定をコントロールする意図を持って作成された文書ではないが、認定傾向に関することなど、適切ではない記載内容も含まれていた」とした。 これらの結果を踏まえ、今後の対応として、▽ 認定医に関する文書を廃止する、▽ 今後のすべての不支給事案について複数の認定医で審査、▽ 過去の不支給事案の点検 - - などが挙げられた。 (高絢実、asahi = 6-11-25)


いつプラス? 実質賃金 4 カ月連続マイナス 春闘賃上げも物価高重く

厚生労働省が 5 日に発表した 4 月分の毎月勤労統計調査(速報)では、物価の影響を考慮した働き手 1 人あたりの「実質賃金」は前年同月より 1.8% 減り、4 カ月連続のマイナスとなった。 高水準が続く春闘での賃上げが反映され始めるタイミングだったが、米価の高騰など物価高が賃金に重くのしかかっている。

4 月の実質賃金、4 カ月連続マイナス 春闘効果は顕著にはみられず

労働者が実際に受け取った「名目賃金」にあたる現金給与総額は 2.3% 増の 30 万 2,453 円で、40 カ月連続のプラスだが、伸び率は 3 月分と比べ横ばいに。 一方、春闘による賃上げの影響で、現金給与総額のうち、基本給などの所定内給与をみると、2.2% 増の 26 万 9,325 円と、3 月分の 1.4% から大きく回復した。 ただ、実質賃金の計算に使う消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が 4.1% 上昇し、実質賃金は低下した。

高水準の春闘

労働組合の中央組織・連合が 5 日に公表した春闘の第 6 回集計では、定期昇給を含む正社員の賃上げ率は平均 5.26%。 33 年ぶりの高水準となった昨年に続き、賃上げ率は 5% を超えた。 物価高への対応として重要なベースアップも集計可能な組合の平均で 3.71% と高水準だが、コメをはじめとした食料品物価の高騰に賃上げが追いつかない。 連合幹部は「春闘の結果が反映されて所定内給与は順調に上がっている印象だ。 だが物価上昇を超えられておらず、今後の実質賃金の動向を注視していく」と話す。

プラス転換についてエコノミストは …

SMBC 日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、春闘の影響は「7 月くらいまで徐々に反映されてくる」と指摘。 実質賃金がプラスに転じるかについては、食料品価格が昨秋から高騰していることなどを踏まえ、「秋ごろには、一定期間プラスには転換するだろう」との見方を示しつつ、プラスを定着させるための条件として「経済全体で生産性が向上する必要がある」と話した。 (宮川純一、片田貴也、asahi = 6-5-25)

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「実質賃金のプラス定着、夏以降か」 2 月は 1.2% 減 2 カ月連続

厚生労働省は 7 日、2 月分の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。 物価の影響を考慮した働き手 1 人あたりの「実質賃金」は前年同月より 1.2% 減り、2 カ月連続でマイナスとなった。 物価の高騰に賃上げが追いつかない状況が続いている。 労働者が実際に受け取った「名目賃金」にあたる現金給与総額は 3.1% 増の 28 万 9,562 円だった。 実質賃金の計算に使う 2 月の消費者物価指数は 4.3% 上がり、この物価上昇分を差し引いた実質賃金は 1.2% のマイナスとなった。 物価は、過去最大の上げ幅となったコメなど食料品を中心に高止まりしている。

現金給与総額のうち、基本給などの所定内給与は 1.6% 増の 26 万 1,498 円だった。 現金給与総額を就業形態別にみると、フルタイムの一般労働者は 3.7% 増の 37 万 3,099 円、パートタイム労働者は 2.4% 増の 10 万 7,572 円だった。 ただ実質賃金がプラスに定着するかは不透明だ。 今春闘での賃上げ率は、3 日に公表された連合の第 3 回集計で平均 5.4% と高水準となっている。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長は、春闘の影響が反映される 4 月分から名目賃金は上がるが、物価を安定して上回るかは見通せないという。 斎藤氏は「物価水準が落ち着くのは今年の夏 - 秋とみられ、実質賃金がプラスに定着するのも早くてそのころまでかかるのではないか」と分析している。 (宮川純一、asahi = 4-7-25)

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1 月の実質賃金 1.8% 減 3 カ月ぶりマイナス 昨年 3 月来の下落幅

物価の上昇分を差し引いた働き手 1 人あたりの 1 月の「実質賃金」は、前年同月より 1.8% 減り、3 カ月ぶりのマイナスとなった。 基本給は 3.1% 増と約 32 年ぶりの高い伸びだが、物価の高騰には追いつかず、実質賃金の下落幅は昨年 3 月以来の大きさとなった。 厚生労働省が 10 日、毎月勤労統計調査(速報)の 1 月分として発表した。

労働者が実際に受け取った「名目賃金」にあたる現金給与総額は 2.8% 増の 29 万 5,505 円で、37 カ月連続のプラスだったが、実質賃金の計算に使う消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が 4.7% も上昇した。 米類が大幅に値上がりしたほか、キャベツやハクサイなどの生鮮食料品も高騰した。  現金給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は 3.1% 増の 26 万 3,710 円で、1992 年 10 月以来 32 年 3 カ月ぶりの伸び率だった。

一方、賞与を含む「特別に支払われた給与」は 3.7% 減の 1 万 2,317 円だった。 昨年 11、12 月の実質賃金は賞与などが大きく伸びた影響で 2 月連続のプラスに転じていたが、1 月はこれらもなくなったことで再びマイナスになった。

今春闘、2 日に大手が一斉回答

厚労省の担当者は「基本給などの賃上げは進んでいるが、食料品を中心とした物価の高騰が激しい。 3% を超える物価上昇では、実質賃金がプラスになるのはかなり難しい」と話す。 昨年の春闘での賃上げ率は、労働組合の中央組織・連合の集計で 33 年ぶりの 5% 台に達する高水準だったが、実質賃金はマイナス基調が続く。 今春闘では、連合傘下の賃上げ要求の平均が昨年を 0.24 ポイント上回る 6.09% となり、93 年以来 32 年ぶりに 6% を超えた。 春闘は 12 日に大企業の集中回答日を迎える。 (宮川純一、asahi = 3-10-25)

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昨年の実質賃金 0.2% 減でマイナス幅改善、名目賃金は 33 年ぶりの高い伸び

厚生労働省は 5 日午前、2024 年の毎月勤労統計調査(速報)を発表した。 労働者 1 人あたりの平均賃金を示す現金給与総額(名目賃金)に物価変動を反映した実質賃金は前年比 0.2% 減で、3 年連続のマイナスとなったが、マイナス幅は 23 年 (2.5%) から改善した。賃金上昇が物価高騰に追いつきつつある。

基本給と残業手当などを合わせた名目賃金は、賃上げや賞与の引き上げが影響し、月平均で前年比 2.9% 増の 34 万 8,182 円で、33 年ぶりの高い伸び率だった。 主に基本給を指す「所定内給与」は同 2.1% 増の 26 万 2,347 円で、30 年ぶりの伸び率となった。 賞与など「特別に支払われた給与」は同 6.9% 増の 6 万 6,192 円で、比較可能な 01 年以降で最も高い伸び率だった。 就業形態別でみると、正社員などの一般労働者の名目賃金は同 3.2% 増の 45 万 3,445 円、パートタイム労働者は同 3.8% 増の 11 万 1,842 円で、ともに統計を取り始めた 1993 年以降で最も高かった。

実質賃金の算出に用いる消費者物価指数は同 3.2% の上昇となった。 このため、名目賃金が上昇したにもかかわらず、実質賃金はマイナスとなった。 同時に発表された 2024 年 12 月分の毎月勤労統計調査(速報)は、名目賃金が前年同月比 4.8% 増の 61 万 9,580 円で、36 か月連続プラスだった。 実質賃金は同 0.6% 増で、冬の賞与増などを背景に 2 か月連続のプラスとなった。 (yoiuri = 2-5-25)


スポットワーク求人、応募時点で労働契約が成立 厚労省が指針素案

単発・短時間の仕事「スポットワーク(スキマバイト)」で起きている企業による一方的なキャンセルなどの問題を受け、厚生労働省が企業向けに作成した労務管理指針の素案が判明した。働き手と企業のマッチング時点で労働契約が成立するなどの見解を明示。成立後のキャンセルや通勤時のけがから、働き手を守る狙いがある。

「スポットワーク」登録急増 2 千万人 労災や賃金「働き手にリスク」

スポットワークは、スマートフォンのアプリに企業が求人情報を登録し、働き手がそれに応募することで面接無しでマッチングが成立する。 ただ、主なアプリ事業者は、実際に働く直前まで労働契約が成立しないとの立場で、働き手が出勤時に QR コードを読み込むことで労働契約を締結するなどと定め、企業都合でキャンセルされても働き手が補償を受けられないなどの問題が起きていた。

こうした事態を受け、厚労省は企業向けに策定した労務管理指針で、アプリを通じて先着順で就労が決まるスポットワークの求人について、「働き手が応募した時点で労使双方の合意があったものとして、労働契約が成立するものと一般的には考えられる」との見解を初めて明示する方向で検討している。 マッチング時に労働契約が成立すれば、一方的なキャンセルはできないほか、通勤時にけがをした場合も労災保険の対象となることが明確になり、アプリ事業各社も運用の変更を迫られる。

また、厚労省は指針で、マッチング時に仕事を取り消せる条件を契約に盛り込む場合も、理由が合理的で、働き手に不利な内容にならないよう指摘。制服への着替えなど業務に必要な準備行為も労働時間に含まれることや、当初予定を超える労働時間となった場合も働いた分の賃金が支払われるよう求めることなどを検討している。 業界各社で作るスポットワーク協会によると 5 月時点でタイミーなど大手 3 社のサービスに登録している働き手の数は延べ約 3 千万人にのぼる。

急速に利用が拡大するスポットワークだが、労働組合の中央組織・連合が今年 1 月に公表したスポットワークで働いたことがある働き手 1 千人に対する調査では、トラブルを経験した人のうち 15.6% が「急に仕事が取り消しになった」と回答していた。 厚労省は今後、関係団体と調整した上で、6 月中の公表を目指す考えだ。 (北川慧一、集委員・沢路毅彦、asahi = 5-28-25)

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40 年変更なし「さすがにまずい」 厚労省が「労働者」の条件再検討

アマゾン配達員などネットを介して働くプラットフォーム (PF) ワーカーの権利保護を見据え、厚生労働省は 2 日、法律上の「労働者」として認める条件について、見直しを含めた議論を始める。 本格議論は 1985 年以来 40 年ぶり。 どう条件を見直し、新しい働き手の生活や権利を守るのか。 厚労省が 2 日午後に立ち上げるのは「労働基準法における『労働者』に関する研究会」。 議論の対象は 1985 年に労働法研究者がまとめた研究会報告だ。 労基法 9 条が定める「労働者(事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者)」と認めるための判断要素が示されている。

例えば、▽ 仕事の際に使用者の指揮監督がある、▽ 勤務場所や時間などが決まっている、▽ 一定時間労務を提供したことに対して報酬が決まる - - といった要素で、主に雇用契約を結ぶ会社員など、働き方の裁量や自由度が限定されている働き手が、こうした要素を参考に総合的に「労働者」と判断され、法律上の保護を受けてきた。

PF ワーカーも労働者に?

一方、近年は、ネット通販大手「アマゾン」や飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員など、スマートフォンのアプリなどを介して仕事を請け負う PF ワーカーが登場している。 比較的働き方の自由度が高い個人事業主で原則、「労働者」に適用される最低賃金や残業代という仕組みの対象外。 だが、アプリなどで使用者側から配送ルートなどの指示を受けつつ、GPS で働く状況の把握を逐次把握されながら指示を受けるなど、使用者側に「指揮監督」されている実態があり、「労働者」として労災が認められるケースも出てきた。

労働者とは何か?

厚労省も 2023 年に労災認定の事例集で、個人事業主の配達員の実態を紹介。 「アプリを通じて、荷物・配送先・配送順・配送コース等が割り当てられる」、「荷物については配送を拒否することはできない」などと記し、PF ワーカー保護の必要性を示していた。 厚労省幹部は「一人一台のパソコンもない時代の働き方とスマートフォン片手に働く状況は全然異なる。 40 年も見直してこなかったのはさすがにまずい」と条件の見直しの必要性を強調した。

世界でも保護の動き

見直し議論は、国際的な PF ワーカー保護の動きに背中を押された側面もある。 すでに米労働省は 24 年 1 月、ネットを通じて仕事を請け負う働き手を、実質的に企業と雇用関係にある「労働者」とみなして保護しやすくする新規則をまとめ、欧州連合 (EU) も同年 10 月、PF ワーカーを原則として正式な雇用関係のある労働者と推定し、保護する指令を採択。 今年 6 月に開かれる国際労働機関 (ILO) 総会でも、議題として扱われる予定だ。

研究会では、現在の基準をベースにしつつ、裁判になった事例などを分析。 PF ワーカーをめぐっては、指揮命令関係だけでなく、PF やその下請けなど「使用者が誰なのか」といった論点や、使用者と働く人の経済的な依存や交渉力の差をどう考慮するかなどを議論。 来夏にも報告書を取りまとめる方向だ。 労働専門家は「こうした議論をすること自体、労働者保護の機運を醸成する」と強調。 見直し議論には、使用者側の労働者保護の意識を高め、労働関連法の順守を促す狙いもありそうだ。 (宮川純一、asahi = 5-2-25)


自公立 、年金底上げ策の修正協議で大筋合意 「今週中、衆院通過」

年金制度の未来

記事コピー (5-9-25〜5-26-25)


最賃 1,500 円へ政府が参考目標を提示 「データ先走り」経営側懸念

政府は 23 日、首相官邸で開いた経済政策に関する会合で、最低賃金を 2020 年代に全国平均 1,500 円に引き上げる目標に向けた参考の一つとして、欧州連合 (EU) 指令が掲げる「賃金分布の中央値の6割」という目標設定を示した。 具体的な参考モデルを明示し、政府目標の実現に道筋をつけたい考えだ。

この日の「新しい資本主義実現会議」では、人材育成などとならび、最低賃金の引き上げも議論。 政府は文書で「高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」とし、「EU 指令においては、賃金の中央値の 60% や平均値の 50% が最低賃金設定に当たっての参照指標として、加盟国に示されている」と強調。 「これらに比べて、我が国の最低賃金が低い水準となっていることも踏まえるべきではないか」として目標達成への参考になり得るとの認識を示した。

類似の指標としては、労働組合の中央組織・連合が 23 年、35 年ごろに中央値の 6 割まで引き上げる目標をまとめた。連合の試算では23年時点で日本の最低賃金は中央値の5割弱にとどまる。 経済協力開発機構 (OECD) のデータによると、「フルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金」は、23 年で中央値の 46.01% だった。

最低賃金の引き上げ幅は、日本では毎年、公労使で構成される審議会で「労働者の生計費」、「一般的な賃金水準」、「企業の支払い能力」の 3 要素に基づいて決まる。 近年は上げ幅が拡大し、昨年は過去最大の 51 円 (5.1%) 上昇し、全国平均は 1,055 円になった。 一方、労働政策研究・研修機構の調査によると、日本の最低賃金(昨年 1 月時点)はオーストラリア、ドイツ、英国、フランスの半分程度で、カナダ、米国、韓国などを下回っている。

石破政権はさらなる引き上げが必要だとして 1,500 円への目標を掲げるが、今後5年間で 445 円の引き上げが必要。 単純計算だと年平均 7.3% 増となり、使用者側からの反発も大きく、EU の目標設定の例示には、使用者側の理解を広げる狙いもありそうだ。 ただ、会合に出席した日本商工会議所の小林健会頭は朝日新聞の取材に、EUの目標設定について、「欧州の平均賃金は、若年層と非正規ワーカーは除外している。 データだけが先走ると変な形になってしまう」と話した。 (宮川純一、asahi = 4-23-25)


フライト後に清掃 … 「休憩なし」に賠償命令 問われる CA の働き方

格安航空会社 (LCC) 「ジェットスター・ジャパン」の客室乗務員 (CA) ら 35 人が、労働基準法に定められた休憩時間を与えられていないとして同社を訴えた訴訟で、東京地裁(高瀬保守裁判長)は 22 日、ジェットスターに休憩なしの勤務の禁止と賠償を命じる判決を言い渡した。 判決によると、原告らは国内線や国際線で、1 日に複数区間の乗務を担当。 到着後に次の便の搭乗が始まるまでの時間は最短 35 分に設定されていたが、その間に客室清掃などもこなしていた。

労働基準法は、6 時間超の勤務で 45 分以上、8 時間超なら 1 時間以上の休憩を与えるよう企業側に義務づけている。 一方で同法の施行規則では、一定の場合に休憩なしを認める例外もあり、この例外があてはまるかが争点だった。 判決は、例外が認められるのは、勤務中であっても乗務していないときと同程度の「心身の緊張度が低い時間」が、休憩時間と同じ程度にある場合だと判断。 フライト外の時間に清掃業務などがあるため例外の水準に届かず、原告らには労基法通りの休憩が必要だとした。

その上で、ジェットスターが労基法違反の勤務をさせるのは人格権の侵害だとして、法定の休憩がとれない勤務命令を禁じ、慰謝料など計約 380 万円の支払いを命じた。 判決後に会見した原告代表で CA の木本薫子さんは「連続した乗務で体調不良になり、仕事を辞めた方をたくさん見てきた。 持続可能な働き方に変えるため、会社にはきちんと勤務を改善してほしい。」と話した。 ジェットスターは判決を不服として控訴したと明らかにし、「明日以降、従業員の勤務時間に変更はなく、運航に影響はない」とコメントした。

「格安」支える CA、各社の休憩の扱いは?

格安航空会社 (LCC) は、使用機材の種類を統一したり機内サービスを有料化したりして運航コストを削減し、安い運賃を実現している。 ジェットスターが客室乗務員 (CA) に機内清掃などを担わせるのもその一環とみられる。 国交省航空局によると、CA の働き方には国連の専門機関がもうけた国際標準があり、各国はそれに準拠し休憩時間などを定めている。 しかし日本では、1 カ月あたりの CA の乗務時間の上限規制などはあるが、1 日あたりの乗務時間や休憩時間は航空各社の判断に委ねられている。

ほかの LCC は、CA の休憩をどう扱っているのか。 ジェットスターと同じ日本航空傘下のスプリング・ジャパンでは、CA は原則 1 日 2 便に乗務する。 主力の国際線では、便と便の間は約 1 時間 - 1 時間 15 分。 機内清掃の外部委託を進める一方、半数ほどの便では CA が便間の 15 分程度を清掃にあて、残りの時間で休憩や出発準備を行っているという。

ジップエアでは、ソウル便とマニラ便で CA が日帰りで往復乗務をしている。便間は約 1 時間半だが、「客室乗務以外の業務は特にない。 休憩時間は適法に運用している。(同社広報)」 ピーチ・アビエーションは「乗務員の労働時間および休憩時間の管理は、法令にのっとって適切に対応している。 具体的な運用は戦略にも関わり、質問には答えかねる」という。

国交省は昨年から、CA の休憩時間などの実態調査をしており、休憩時間などのルールづくりを進めるという。 テレワークやリモート会議の定着を受け、航空各社はビジネス需要よりも観光需要が強まるとみて、個人利用客の多い LCC 事業を強化してきた。 今後、CA の休憩時間をめぐるルールづくりが進めば、各社の戦略に影響を与える可能性もある。 (黒田早織、asahi = 4-22-25)


カスハラ認定でディズニー「出禁」も オリエンタルランドが基本方針

東京ディズニーリゾート (TDR) を運営するオリエンタルランドは 18 日、カスタマーハラスメント(カスハラ)に対する基本方針を策定したと発表した。 カスハラに該当すると判断した場合、原則として施設やサービスの利用を断る方針で、いわゆる「出禁」になる可能性がある。

カスハラの定義は、厚生労働省が策定したマニュアルに準じ、妥当性を欠く要求や、要求を実現するための手段などが「社会通念上不相当なもの」などと定めた。 具体的には、▽ 居座りや必要以上の長時間の電話、▽ 従業員への盗撮やつきまとい、▽ グループ企業や従業員に対する SNS での誹謗中傷などを挙げ、カスハラと判断した場合、必要に応じて警察への通報や法的措置を講じることも明記した。

「これまでもキャストが苦慮することも」

広報担当者は「これまでにもキャスト(従業員)が対応に苦慮するような事案は発生していた。 キャストとゲストの安心・安全の確保と、体験価値を高めるため策定した。」と話した。 (若井琢水、asahi = 4-19-25)


大谷翔平が「産休」 2011 年に制度導入、大リーグ特有の事情も

大リーグのドジャースは 18 日、大谷翔平 (30) を産休制度「父親休暇リスト」に入れたと発表した。 妻の真美子さん (28) の出産に付きそうためで、テキサス州アーリントンで行われたレンジャーズ戦には同行していない。 今季初の欠場で、いつ合流するかは未定。 大リーグには、スポーツ界では今も珍しい「父親の産休」が制度として 2011 年に導入された。 出産間近や 48 時間以内に生まれた子どもの父親であることが条件で、給与をもらいながら最短で 1 日、最長で 3 日連続取得できる。 養子縁組で父親になる場合も同様だ。

チームはコミッショナーなどに書面で申請することで、その間大リーグの出場が前提となる 40 人枠に入っている選手を代わりに出場登録できる。 日本選手では過去にパドレスのダルビッシュ有や、カブスの鈴木誠也らが利用してきた。 産休制度は選手会の要望を受けて導入された。 できる限り家族と大切な瞬間を過ごしてほしいと配慮された。 背景には大リーグ特有の事情がある。 レギュラーシーズンは半年以上続き、日本より 20 試合ほど多い 162 試合。 バスケットボール (NBA) やアイスホッケー (NHL) などほかの米プロスポーツと比べても圧倒的な試合数だ。

移籍が頻繁に起こるため、長期契約選手を除けばチームの本拠がある都市に自宅を構えない選手も多い。 単身やホテルで暮らす選手はキャンプ期間から年間約 200 日近く家族と過ごせないことも。 11 年の導入前にも出産に付きそうためチームを離脱する選手はいた。 ただ、当時は代わりの選手のベンチ入りが認められず、1 人少ない 24 人(当時のベンチ入りは 25 人。現在は 26 人)で試合に臨まないといけなかった。 優勝争いなどのタイミングでは戦力ダウンを避けるため、首脳陣が許可しないケースもみられた。

高い年俸をもらっている選手が、個人的な理由で大事な試合を休むことへの批判もあった。 同様の批判は他の競技でも起きている。 米 FOX スポーツなどによると、24 年 5 月には米プロバスケットボール NBA ティンバーウルブズの主力選手、ゴベアが出産に付きそうためにプレーオフの試合を欠場し一部から批判を浴びたという。 大リーグは産休とは別に、選手の近親者が重病になったり亡くなったりした場合などに 3 - 7 日間チームを離れられる「忌引休暇・家族医療緊急リスト」も制度として設けている。 (遠田寛生、asahi = 4-19-25)


博士学生の 290 万円支給「日本人を基本」で調整 留学生支援も継続

博士課程の学生に年間 290 万円を支給する文部科学省の支援制度について、現行では取り決めのない国籍の要件を加える方向で変更される見通しとなった。 日本の学生支援を基本とした上で、バランスに配慮しながら優秀な留学生支援との両立を目指す。 支援制度は「次世代研究者挑戦的研究プログラム (SPRING)」で、同省が 18 日、有識者による作業部会を立ち上げ、夏までに変更案をまとめる。 この制度をめぐっては 3 月の国会で、中国からの留学生が約 3 割を占めることを問題視する声が上がっていた。

制度は経済的な不安を和らげ、博士学生に進学して研究に専念してもらおうと、2021 年度に始まり、生活費と研究費の合計として年間 290 万円、博士課程の 3 年間支給する。 長年減少が続いていた博士課程への進学者数は、24 年度には前年度より 5% 増え 1 万 5,744 人となった。 24 年度は国内 80 大学の 1 万 564 人が受給。 同省によると、現在は国籍による支援の差や定員を設けておらず、受給者のうち 4 割にあたる 4,125 人が外国籍で、中国からの留学生が最多の 2,904 人だった。

この状況について 3 月の国会質疑で、有村治子参院議員(自民)が「国民生活が厳しさを増す中、日本の学生を支援する原則を明確に打ち出さなければ理解が得られない」と指摘。 同省の担当者は「優秀な日本人学生への支援充実など検討したい」と答弁し、国内の学生優先の方針で見直すとした。

同省によると、留学生の対応には大学側の事務負担が日本の学生に比べ元々多いことから、支援額に差を設ける対応は可能と考えているという。 一方、優秀な留学生が国内で学ぶ意義もあるため、支援は継続する方針案を 18 日の作業部会で提示。 支援額や基準の見直しなどを進めるとしている。 (竹野内崇宏、asahi = 4-18-25)