大企業の労働分配率、昨年度は過去最低 内部留保は過去最高

企業がもうけの中から人件費にどのぐらい使ったかを示す「労働分配率」が、昨年度は大企業で過去最低の水準に落ちこんでいたことがわかった。 企業内に蓄積された利益を示す内部留保は過去最高額になっており、働き手への「還元」を求める動きが強まる可能性がある。 国内企業の通期決算を集計した財務省の法人企業統計調査(2023 年度)をもとに、記者が独自に分析した。 企業が生み出した付加価値(役員と従業員の人件費、経常利益、賃借料、一部の税金や利払い費、減価償却費の合計)のうち人件費が占める割合を、労働分配率として算出した。 金融・保険業をのぞく全産業では、前年度より約 1 ポイント下がって 52.5% となった。これは 1973 年度の 52.0% 以来の低さだ。

さらに企業の規模別に算出すると、資本金 10 億円以上の大企業の落ちこみが際立った。 前年度より約 2 ポイント下がって 34.7% となり、統計のある 1960 年度以降で最も低かった。 資本金 1 億円未満の中小企業は、前年度とほぼ同じ 66.2% だった。 大企業に比べると高水準で、下がり方もゆるやかだ。 労働分配率が下がるのは、企業の業績が好調で、分母に入る利益が増えたからでもある。

昨年度の売上高合計は前年度比 3.5% 増の 1,633 兆円で、16 年ぶりに過去最高となった。 経常利益も 3 年連続で過去最高を更新した。 企業内に蓄積された利益を示す内部留保も 12 年続けて最高額を塗りかえ、600 兆円に達した。 このうち大企業分は 303 兆円で、初めて300 兆円を超えた。製品やサービスの値上げが進み、円安で海外事業の収益もふくらんだことが大きい。 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングの小林真一郎氏は「大企業では賃上げの余力が生じているが、中小企業は人手不足への対応で人件費の負担感が高止まりし、一部の業種ではさらに高まっている」とみる。

厚生労働省の統計によると、物価高の影響で実質賃金は前年水準と比べて減り続けていたが、6 月と 7 月は増加した。 だが小林氏は「大企業は中小企業との取引価格を引き上げる余力もある。 こ の取引価格が上がってこなければ、中小企業では賃上げの継続が難しくなる可能性がある」と指摘している。 (内藤尚志、asahi = 9-6-24)


2023 年度の医療費は 47.3 兆円 過去最高を更新 厚労省

2023 年度に医療機関に支払われた医療費(概算)は 47 兆 3 千億円で、前年度より 1 兆 3 千億円 (2.9%) 増え、3 年連続で過去最高となった。 厚生労働省が 3 日発表した。 コロナ禍の影響が薄れる一方、インフルエンザをはじめ感染症の流行などが押し上げたとみられる。

厚労省によると、23 年度の 1 人あたりの医療費は 38 万円で、前年度より 1 万 2 千円 (3.4%) 増えた。 年齢別にみると、75 歳以上は 96 万 5 千円(前年度比 0.9% 増)だった。 75 歳未満は 25 万 2 千円(同 2.9% 増)で、うち未就学の子どもは 26 万 1 千円(同 6.7% 増)と伸びが目立った。 インフルエンザや RS ウイルスなどが流行し、若年層の医療費を押し上げる要因となった。 医療費の前年度と比べた増減率は、コロナ禍前の水準に戻りつつある。 20 年度はコロナ禍による受診控えの影響で急減。 21、22 両年度は反動もあって前年度比 4% 以上伸びたが、23 年度は 2% 台となった。 (吉備彩日、asahi = 9-3-24)


女性の「移住婚」支援 東京 23 区 → 地方で最大 60 万円 政府が検討

政府が、結婚をきっかけに東京 23 区から地方へ移住する女性に、最大 60 万円を支援する制度の新設を検討している。 岸田文雄政権が進める「デジタル田園都市国家構想」の一環という。 未婚女性に限定した内容に、すでに疑問の声が出ている。

新制度は、2019 年度から実施している「移住支援金」を拡充してつくる。 いまの制度は男女を問わず、東京 23 区に住む人や、東京圏から 23 区に通勤する人が地方に移住し、そこで就労や起業した場合に、自治体を通じて最大 60 万円(単身者)を支援する。 新たな制度は、対象を女性に限り、就労や起業を条件としない。 まず地方で開かれる婚活イベントに参加する交通費を支援し、実際に移住すればさらに上乗せするという。 支援額は最大 60 万円を軸に加算の可能性もある。 詳細は年末までに詰める。

ネット上などには批判の声

内閣府によると、近年は東京都への転入超過は女性の方が多い。 東京都を除く 46 道府県の未婚者(15 - 49 歳、20 年)は、男性が約 1,100 万人に対し、女性は約 910 万人。 未婚男性が 200 万人多い状態で、新制度は、このアンバランスを是正するために考えたという。 担当者は「地方への女性の流れを後押しする」と説明する。 自治体には先行事例がある。 たとえば北海道美幌町では、都市部から移住を希望する 20 - 50 歳の独身女性を対象に、結婚と地方移住を同時にする「移住婚」支援を実施。 町内の独身農家男性とのマッチングを進めている。 政府もこうした事例を参考にしたもようだ。

だが、新たな制度については、「女性をなんだと思っているのか」、「地方から若い女性が流出している本当の理由を分かっていない」といった批判がインターネット上などで上がっている。 (岡林佐和、松山紫乃、asahi = 8-28-24)


「育休中も毎日仕事」、「人員補充なし」 男性育休 3 割超、厳しい現実

厚生労働省が 7 月末に発表した昨年度調査の結果によると、育児休業を取った民間企業の男性の割合は 30.1% で、前年度の 17.1% から急増した。 だが実際は、希望どおり休めていないという声もある。 取得を後押ししようと、企業も試行錯誤している。

同僚は「任せろ」と言うが…

「良い制度だと思うが、会社の態勢が整っていない。」 埼玉県の男性 (36) は、2022 年 10 月に始まった「産後パパ育休(出生時育児休業)」について、読者と SNS で双方向にやりとりする「#ニュース4U」取材班の LINE にそんな声を寄せた。 22 年春に第 3 子が誕生し、育休を取得した。 仕事の引き継ぎを済ませ、同僚から「大丈夫だから。 任せろ。」と送り出された。 だが、2 日に 1 回は顧客から問い合わせがあり、毎日 1 - 2 時間は仕事をせざるを得なかった。 制度上、労使の同意があれば休業中の仕事も可能だが、釈然としない。

そもそも、1 カ月という育休の期間も妥協の産物だった。 人事部門から「半年でも 1 年でも」と言われたが、職場の上司から「1 年休むなら営業をもう一人雇うか」と言われた。 そんなに休まれると困る、と遠回しに言われたと思った。 復帰後、管理部門から「どうだった?」と聞かれたが、「もう少し態勢を整えてほしい」と不満が残る育休になってしまった。 今年冬に第 4 子が誕生予定で、産後パパ育休を取得するつもりだが、「どうせまた仕事が入るので、少し諦めている」という。

育休取得をどう後押しするか。 記事後半では企業の取り組みも紹介します。 各国の子育て支援策を評価したユニセフの 21 年の報告書で、育休制度は日本が「1 位」だった。 男性が長期間、育休を取れる制度が評価された。 ただ、現実に制度どおり休めるとは限らない。 ある県庁の管理職を 2 年前に定年退職した男性は「一番良いのは、育休を見越して職員を補充することだ」との意見を取材班に寄せてくれた。

男性の職場では、職員に子どもが生まれると、知事から直接「ぜひ育休をとって」とメールが届いた。 だが、人員の補充を求めても「数カ月だけの手当ては難しい」と言われることが多く、補充されても経験の浅い職員で、「結局、一通りこなせる係長などにお願いせざるを得なかった。」 短縮勤務の取得者も増え、「他の人に分担をお願いするのも難しい。」 対策として例えば、応援の OB・OG のマッチング制度を充実させてほしいという。

取得後押しへ、企業の取り組み

育休の取得を後押ししようと、企業も取り組む。 アパレル大手・オンワードのダイバーシティー推進担当者は「特定の誰かのためではなく、会社が永続的に続き、皆が幸せに働くための取り組み。 育休を取れない会社に入社したいと思う学生はいない。」と語る。 同社では 2019 年から、働き方改革を進めている。 勤務時間を柔軟に決められるシフト制を導入。 チーム内の課題を整理して働き方を見直す「カエル会議」も各職場で始めた。 23 年度の 1 カ月の平均残業時間は 10.7 時間で、18 年度の 17.7 時間から大幅に減少。 育休取得を促す管理職研修なども進め、男性の育休取得率は 18 年度の 7.7% から 23 年度は 66.7% に急増した。

同社で昨秋 1 カ月の育休を取得したという杉本隼さん (38) は、18 年春の第 1 子誕生時に 1 週間の育休を取得。 「1 週間は短く、自分がやるべきことのリズムがつかめないまま終わった。」 当時は 1 週間の取得でも「会社がざわついた」が、第 2 子誕生後の昨秋は「男性育休をとるのが当たり前という文化が根付いていた」という。 カエル会議のおかげで「仕事の属人化」をなくすことができ、休みやすくなったと振り返る。 新潟県長岡市にある建築金具メーカー「サカタ製作所(社員 175 人)」では昨年、男性社員の育休取得率が 100%。 平均取得期間は 58.3 日だった。

子どもが生まれると報告を受けた時点で上司と育休の計画を立てることで、スムーズに休める態勢をつくっているという。 同社の働きやすさを知って転職してくる「第二新卒」の若者も相次いでいるという。 育休を取る人の周囲を気遣う企業もある。 三井住友海上は昨年、育休取得者の同僚に「育休職場応援手当(祝い金)」の支給を始めた。 同僚の数や育休の期間に応じ、1 人あたり 3 千 - 10 万円を支給する。

担当者によると、当初は育休取得者への手当を考えていたが、周りの同僚との間で分断が生じるのではないかと議論になり、「職場全体が取得者を応援できるように」と新制度を設計したという。 育休を取得する側からも気兼ねなく育休に入れるという声が上がっているという。 一方、代わりの人材を確保することについては、人手不足が深刻で、特に専門性のある人材を数カ月だけ確保するのは難しい状況だという。

識者「女性中心の発想変わらず」

甲南大学の中里英樹教授(家族社会学)の話 : 男性の育休取得を促す制度は整ってきたが、今は過渡期で、育休取得者も職場の上司も苦しんでいる。 企業としては、社員に子が生まれると分かれば、早々に育休の予定を話し合い、期間やカバー方法を検討するといい。 職場でも家庭でも、女性が家事・育児の中心だという発想を変えられていない。

女性が長く育休を取る前提を変えないまま男性も長く育休を取れば、職場の人手不足感は大きくなる。 解決策として、夫が単独で育休を取得してはどうか。 ドイツやノルウェー、スウェーデンでは、夫婦が交代で育休を取得すれば、手当の額や支給期間が手厚くなる仕組みがある。 (石田貴子、村井隼人、asahi = 8-24-24)


国家公務員の月給 2.76% 増、33 年ぶり上げ幅 1 万円 人事院勧告

人事院は 8 日、2024 年度の国家公務員の給与について、行政職で月給を 1 万 1,183 円 (2.76%) 引き上げるよう国会と内閣に勧告した。 月給の引き上げ幅が 1 万円を超えるのは 1991 年以来 33 年ぶり。 ボーナスは 0.10 カ月分多い 4.60 カ月分とした。 定期昇給分を合わせた賃上げ率は 4.4%。 民間企業の歴史的に高い賃上げが公務員にも波及する。

8 日午前、川本裕子人事院総裁が岸田文雄首相に勧告を手渡した。 対象は、検察官や自衛官らをのぞく国家公務員約 28.5 万人。 月給とボーナスの引き上げは 3 年連続。 今回の月給の引き上げ幅は、3,869 円 (0.96%) だった 23 年の勧告の約 3 倍となる。 勧告通りに引き上げられれば、行政職の平均月給は 41 万 6,561 円、ボーナスを含む平均年収は 22 万 8 千円 (3.4%) 増の 691 万 6 千円となる。

共働き世帯の増加を踏まえ、勧告には「配偶者手当」の廃止も盛り込まれた。 年収 130 万円未満の配偶者がいる職員に支給される月 3,500 - 6,500 円の扶養手当を 26 年度までに廃止し、代わりに子ども 1 人当たり月 1 万円の扶養手当は 3 千円増額する。 配偶者手当は、女性の就労を妨げる一因との指摘があり、人事院は「配偶者の働き方に中立な制度に向かう社会状況の変化に対応する」としている。

一方、優秀な人材を採用しやすくするため、大企業に比べて安いとされてきた初任給を大幅に引き上げる。 大学卒の総合職(本府省勤務)は 3 万 5,160 円増 (14.1%) 増の 28 万 4,800 円、高校卒の一般職では 2 万 5,680 円 (12.4%) 増の 23 万 2,800 円となる。 引き上げ幅が 2 万円を超えるのは初めてで、3 年連続で過去最高を更新する。 優秀な若手職員の早期昇格を促すため、昇格時に給与が大きく上昇するよう給与体系も改める。 成績優秀者に対するボーナスの金額の上限を引き上げ、能力や成果をより反映しやすくする。

国家公務員の給与は、従業員 50 人以上の民間企業約 1 万 1,700 事業所を対象に人事院が調査した給与水準と比較し、民間並みになるよう調整している。 労働組合の中央組織・連合の集計によると、今年の春闘での正社員の賃上げ率は平均 5.10% で、1991 年以来 33 年ぶりに 5% 台を記録した。 (千葉卓朗、asahi = 8-8-24)


高齢者にもスキマバイト、ほぼ毎日働く 70 歳 「あと 10 年続けたい」

好きな時間に、日替わりの現場で短時間働く「スキマバイト」が、高齢者にも広がっている。 背景には高齢者の「働きにくさ」と、社会の人手不足がある。

「働けて、うれしい。 あと 10 年は続けたい。」

東京都板橋区の女性 (70) は、約 1 年半前からほぼ毎日、スキマバイトのマッチングアプリ「タイミー」を使う。 既に出勤は 480 回。 5 万人いる 65 歳以上の登録者の中で、突出しているという。 仕事は、1 日平均 4 時間。 その都度、アプリ上で応募した職場に出勤し、飲食店の皿洗いやスーパーの品出し、野菜の袋詰めなどを担う。

見つからなかった仕事、家には飼い猫 1 匹

2 年ほど前、求人雑誌やシルバー人材センターで必死に仕事を探したが、数カ月間見つからなかったことがきっかけ。 年齢のせいなのか、面接に行っても採用されなかった。 若いころから仕事を転々としてきた。 今は一人暮らしで、家にいるのは飼い猫のみ。 何もしないでいると、社会からの疎外感を感じ、体が衰える不安もあった。 アプリを運営するタイミー(東京)が提供しているのは、飲食店などの雇い主と働く人をつなげるスキマバイトのマッチングサービス。 雇い主は働く人と雇用契約を結び、報酬の 3 割を「サービス利用料」として同社に払う。

女性は体調や都合に合わせて、勤務のタイミングを調整する。 毎回異なる職場に初対面の雇い主。 黙々と手を動かす仕事を中心に選んでいる。 ストレスは少ないというが、たまに 6、7 時間働くと、疲れで「よろよろになりながら」帰る日もある。 スキマバイトでの収入は月 10 万円程度。 卓球や多肉植物の栽培など、趣味もある。 稼いだお金は、生活費や猫のエサ代に。 「年金だけでは生活していけないですよ。」 より良い条件の仕事を見つけるため、他のマッチングサービスにも登録したいと話す。

リタイアを機にはじめた人もいる。 60 代男性は、体育教師を定年退職後、人との会話が減り、「自分と社会とのつながりを保ち続けたい」という思いでアプリの利用を始めた。 昔から好きだったバイクの運転技術を生かし、ファストフードのデリバリーなどで働いているという。

1 年で 2.1 倍、増える高齢登録者の背景は?

同社によると、今年 3 月時点で 65 歳以上の登録者数は約 5.1 万人と、1 年間で 2.1 倍に増えた。 登録理由を複数回答で聞くと、「健康維持 (65%)」、「生活費を補う (59%)」、「空き時間の有効活用(同)」と回答した。 「人との交流を持ちたい (33%)」、「社会との接点づくり (27%)」との回答もあった。 リクルートワークス研究所は、2040 年に 1,100 万人の働き手が不足すると予測する。 民間調査機関矢野経済研究所の調査では、国内のスキマバイトに関連する仲介サービスの 23 年度の市場規模は、前年度比 27.2% 増の 824 億円となる見通し。

新規参入も相次ぐ。 フリマアプリ大手メルカリは 24 年 3 月から「メルカリハロ」を開始。 リクルートもスキマバイトに特化した求人サイトを今秋に立ち上げるという。 タイミー広報の加藤彩花さんは「社会とのつながりや健康維持への需要は、年を重ねるほど増すのではないか」と話す。 元気なシニア世代も増え、「年齢のみで判断される時代ではない。 雇用する企業側も意識変化を求められている。」 ただ、不安定な働き方が広がることを懸念する声もある。

大阪市立大学の木下秀雄名誉教授(社会保障法)は、厚生労働省が示す「モデル年金」が夫妻(夫が勤続 40 年の平均的会社員で、妻がその間専業主婦の場合を想定)で合計約 23 万円となっていることについて、「サラリーマン」が 40 年間、正規雇用で働き続けるという前提であることに留意すべきだと指摘する。 非正規雇用で働いてきた人の老後の生活を憂慮し、「スキマバイトをせざるを得ない高齢者が存在している。 その現状を認識することが重要だ。」と話した。 (小川聡仁、asahi = 8-4-24)


国家公務員の給与が最低賃金割れ 高卒初任給、全国 200 機関以上で

国家公務員の給与が、最低賃金を下回っている地域があることがわかった。 高卒一般職の初任給を時給に換算すると、地域の最賃を下回るのは少なくとも 8 都府県で 200 機関を超える。 公務員は最賃制度の適用は除外されているが、人事院は最賃を下回らないように対応を検討している。 最賃は都道府県ごとに時給で示されているが、正社員にも適用される。 現在、国家公務員の高卒一般職の初任給は 16 万 6,600 円。 前年から 1 万 2 千円引き上げられている。 国家公務員の給与を定める「給与法」では、超過勤務手当を算出するための「勤務 1 時間あたりの給与額」の計算方法が示されている。 これに基づいて計算すると高卒初任給の時給は約 992 - 1,191 円になる。 時給に幅があるのは、勤務先がある市町村ごとに 0 - 20% が加算される「地域手当」があるためだ。

兵庫県では 43 機関、神奈川県では 34 機関

日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)が、厚生労働省、国土交通省、法務省、国税庁の出先機関と裁判所について調べたところ、8 都府県の計 60 市町村にある 207 機関で高卒初任給が最賃を下回ったという。 8 都府県はいずれも最低賃金が 1 千円を超えている。 最も多いのは最賃が 1,001 円の兵庫県で 43 機関だった。 ハローワークが 10 カ所、税務署が 8 カ所など。 兵庫県は県域が広く、地域手当が付かない市町村も多いことが影響したとみられる。 神奈川県(最賃 1,112 円)の 34 機関、京都府(同 1,008 円)が 29 機関と続く。 東京都(同 1,113 円)は 12 機関だった。

省庁別では厚労省が 66 機関と最も多かった。 ハローワークの 43 カ所と労働基準監督署の 23 カ所だった。 河川や国道の管理事務所を抱える国交省も 38 機関あり、国税庁の出先機関となる税務署は 36 カ所あった。 公務員は毎年 1 月で昇給する。 現在の水準でみると、地域手当ゼロの地域では高卒で就職して最初の 1 月で時給が約 992 円から約 1,012 円へと上がる。 それでも千葉県など 6 都府県は最賃の方が上回っている。 東京都と神奈川県の地域手当がゼロの場所で勤めると、高卒 5 年目まで最賃より低い水準が続く計算だ。

人事院「最賃の動向を常に注視」

国家公務員の給与は民間事業者の水準などを考慮して毎年、決められている。 一方、最賃は昨年、全国加重平均で 4.5% 上がり、3 年連続で過去最高の上げ幅となった。 今年も春闘の大幅な賃上げを背景に大きく上がる可能性があり、公務員の給与の引き上げが十分ではない状況にある。 人事院によると、高卒の一般職は関東甲信越で約 800 人、近畿で約 100 人など、地方単位で採用され、全国で例年約 1,400 人が採用されている。 人事院は「公務員には最低賃金法の適用はないが、最賃の動向を常に注視している」と話す。

人事院は今年 8 月に予定される給与に関する勧告で、地域手当の「大くくり化」の見直しをする。 地域手当は現在、市町村単位で支給割合が変わり、「人事異動の支障になる」と評判が悪い。 市町村を越えた広域の地域分けを公表する見通しだ。 担当者は「初任給を上げるとともに、地域手当の『大くくり化』と合わせて最賃を下回らない水準にしたい」と話す。 (松浦新、asahi = 7-22-24)


シャープ、堺の液晶工場で 500 人規模の早期退職募集 生産停止で

シャープが大型液晶パネルを生産する堺市の工場の従業員を対象に、500 人規模の早期退職を募集していることが分かった。 工場は子会社の堺ディスプレイプロダクトが運営し、9 月末までに生産を停止することが決まっている。 工場で働く約 800 人のうち、主に生産に携わる人が対象という。 応募者には退職金に最大 24 カ月分の給与を加算し、再就職の支援もする。 シャープは液晶事業の不振が原因で、2年連続で巨額の最終赤字を計上した。 堺市の工場は AI (人工知能)向けのデータセンターに転用する方針を明らかにしており、KDDI やソフトバンクなどと協議を進めている。 (渡辺七海、asahi = 7-13-24)


介護職員、2040 年度に現状よりも 57 万人不足 厚労省が推計公表

2040 年度に必要な介護職員数は約 272 万人となり、現状と比べて約 57 万人不足するという推計を厚生労働省が 12 日公表した。前回 21 年度の推計よりも不足数は減ったが、40 年度は 65 歳以上の高齢者数がほぼピークとなると予測され、人材不足が深刻化しそうだ。 3 年ごとの介護保険制度の見直しに合わせ、必要と見込まれる介護サービスから各都道府県で推計し、同省がまとめた。 推計によると、26 年度に必要な介護職員数は約 240 万人で、22 年度時点の職員数約 215 万人と比べると約 25 万人が不足する。 40 年度は約 272 万人で、同じく約 57 万人足りなくなる。

前回 21 年度の推計では、必要な職員数は約 280 万人で、19 年度に比べて約 69 万人の不足を見込んでいた。 厚労省は、介護予防の取り組みなどによって、要介護認定を受ける高齢者の割合が下がり、必要な職員数の見通しも減少したとみる。 ただ、人手不足の問題は今後も解決が見通せない。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口などによると、生産年齢人口 (15 - 64 歳) は 23 年の 7,395 5万人が、40 年は 6,213 万人に減る。 一方、同時期に 65 歳以上は 3,323 万人から 3,928 万人に増える。

介護分野は、他産業より平均賃金が低く、人材が流出していることも問題に拍車をかけている。 東京都も大幅な人材不足になりそうだ。 都道府県別の推計によると、地域によっては、、要介護の高齢者数の増加に応じて必要な職員数が大幅に増える見通し。 東京都は、40 年度に 25 万 8 千人が必要となる見込みだが、22 年度時点の職員数は 18 万 2 千人で、1.5 倍ほど増やさなければならない計算だ。 厚労省は人材確保のため、介護職員の処遇改善や離職防止、外国人材を受け入れる環境整備といった取り組みを進めるとしている。 (吉備彩日、asahi = 7-12-24)


年金水準、見通し「やや改善」 現状維持だと「2 割減」 厚労省

公的年金の将来見通しを厚生労働省が 3 日、公表した。 女性と高齢者の就労が予想以上に進んだことなどを反映し、給付の見通しはやや改善した。 一方、労働参加や賃金上昇のペースが鈍ければ、給付水準は今より 2 割減となる。 将来は楽観できず、政府は対応策の検討を本格化させる。 5 年に 1 度の財政検証の結果を示した。 この検証は 100 年先までの財政状況をチェックする「定期健診」だ。 今の年金制度は、現役世代の負担が上がり過ぎないよう保険料の上限を固定。 収入の範囲内で将来世代の年金を確保するため、人口減少や長寿化に応じて、今の年金を抑える仕組みを発動させる。

給付水準を測る「ものさし」となる所得代替率は、平均的な会社員と配偶者の「モデル世帯」の年金が、現役の手取り収入に対しどの程度の割合かを示す。 2024 年度の所得代替率は 61.2% で、前回の 19 年度よりも 0.5 ポイント下がった。 そのうえで、「高成長」から「1 人あたりゼロ成長」まで、賃金上昇や労働参加の前提が異なる 4 ケースについて将来、年金を抑える仕組みを適用することで、給付をどこまで下げれば収支が均衡するかを試算した。 その結果、4 ケースの上から 2 番目の「成長型経済移行・継続ケース」では、労働参加がさらに進み、経済成長が軌道に乗る想定で、37  年度に所得代替率 57.6% で下げ止まる。

5 年前の類似ケースでは 50.8 - 51.9% となり、年金水準は 2 割減だったのに比べ、6% ほどの減少にとどまり、やや改善した。 この 5 年間で、給付が手厚い厚生年金の加入者が約 260 万人増え、年金の積立金が約 70 兆円増加したこともプラスに影響した。  一方、3 番目の「過去 30 年投影ケース」では、労働参加が緩やかで賃金の上昇も小幅にとどまるため、年金を抑える仕組みは 57 年度まで続き、所得代替率は 50.4%。 現在よりも約 2 割下がる。 このうち、基礎年金は 36.2% から 25.5% まで落ち込む。 いずれのケースも、出生数が計算の仮定よりも減った場合は、給付水準は悪化する。

検証では、政策による年金の引き上げ効果も試算した。 パートなど短時間労働者への厚生年金の適用を拡大させた場合や、厚生年金のお金を使って基礎年金の給付を引き上げる方法など 5 パターン示した。 政府は、結果をもとに年末までに年金の制度改正の中身を検討し、来年の通常国会に関連法案を提出する。 (高絢実、asahi = 7-3-24)


「家政婦」に労働基準法を適用へ 労働者として保護 厚労省が調整

家庭に直接雇われて働く家政婦(夫)の「家事使用人」について、厚生労働省は、労働基準法を適用して「労働者」として保護するため、同法を改正する調整に入った。 労働条件が不明確で労災の対象外といった問題点の是正を図る。 労基法は企業などに雇われて働く労働者について、労働時間や賃金の最低条件を定める。 家庭と雇用契約を直接結ぶ家事使用人については、「家庭内の問題を国家が監督・規制するのは不適当」という考えに基づき、1947 年の労基法施行当初から適用を除外してきた。 当時は雇い主の家で住み込みで働く「女中」が念頭にあり、家族の一員とみなされていたことが背景にある。

一方、厚労省が昨年に実施した家事使用人の実態調査では、泊まり込みは 1 割に満たず、8 割強は通勤だった。 休憩時間や仕事の内容などの労働条件があいまいなケースが多い実態も判明した。 2015 年には 7 日間泊まり込みで家事や介護をした女性(当時 68)が急死。 労基法の除外規定によって労災申請は認められず、遺族が国を相手に裁判を続けている。

雇い主の家庭、使用者としての義務どこまで?

家事使用人と似た働き方として、共働き世帯の増加で広がる「家事代行サービス」がある。 スタッフは代行業者と雇用契約を結ぶため、労基法が適用され、家事使用人よりも労働者としての保護が手厚い。 27 日には労基法の抜本的な見直しを視野に入れた厚労省の「労働基準関係法制研究会」が開かれた。 家事使用人について、働き方の変化などを踏まえ、「労基法を適用する方向で具体的施策を検討すべきだ」との案が示された。 ただ、雇い主の家庭に企業と同様の使用者義務を課し、労災保険料を払わせて災害補償責任を負わせるかなどは、検討課題として残る。 研究会でさらに検討を重ねた上で、労使の代表らが参加する労働政策審議会で議論される見通しだ。

60 代以上が 8 割超

20 年の国勢調査によると、家事使用人とみられる「家政婦(夫)・家事手伝い」と回答したのは 7,250 人。 厚労省の昨年の実態調査に回答した約 2 千人でみると、99% は女性で、60 代以上が 8 割以上だった。 (宮川純一、楢崎貴司、asahi = 6-27-24)


女性の雇用促進と出生率上昇に関連 OECD、38 加盟国の動向分析

経済協力開発機構 (OECD) は 20 日、加盟国(38 カ国)などの出生動向などを分析したリポート「図表で見る社会 2024」を発表した。 日本は 1960 年以来、1 人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」が加盟国平均を下回っている。 女性の雇用促進と出生率の上昇に関連があると分析した。 リポートによると、合計特殊出生率は、80 年以降、ほぼ全ての加盟国で低下。 日本はその中でも平均を下回っている。 2022 年の日本の出生率は 1.26 で、加盟国平均の 1.51 を下回った。 最低は韓国の 0.78 だった。

一方、生涯子どもをもたない女性の割合は加盟国全体で増加傾向にある。 55 年生まれと 75 年生まれの女性の「生涯無子率」を比べると、日本、スペイン、イタリアなどで倍に。日本では 75 年生まれの女性の 28% に子どもがおらず、加盟国で最も高かった。 出生率との関連を分析したところ、女性の雇用や収入の確保や、育児休暇の取得や保育の提供などの支援について、出生率の上昇との関連がみられたという。 関連の程度は小さいが、児童手当などの現金給付や税制の優遇措置も出生率の上昇と関係があるとした。

一方で、住宅関連のコストや、出産後の復職しやすさなどの状況は、出生率とマイナスの関連があるとした。 このため、▽ 仕事と家庭の両立、▽ 住宅確保、▽ 若年層の雇用などを支援する政策が重要と位置づけた。 OECDは、こうした関連だけでは出生率低下は説明しきれないとし、パンデミックや紛争、気候変動などの「不確実性」や、親となることに価値を感じるかの考え方の変化なども影響していることが考えられるとした。 (川野由起、asahi = 6-20-24)


国際卓越大に東北大を正式認定へ 政府ファンドまず約 100 億円支援

世界トップレベルの研究力をめざす「国際卓越研究大学」に、東北大が正式に認定される見通しになった。 文部科学省の有識者会議が 14 日、同大の計画が認定の水準を満たすと認めた。 政府がつくった 10 兆円規模の大学ファンドから、初年度に約100億円の支援を受ける見通し。

卓越大の初の公募には東京大など 10 大学が応じ、昨年 9 月、東北大だけが候補に選ばれていた。 その際、条件付きの選定であるとして、有識者会議は「大学全体の研究力向上の道筋」などについて計画の見直しを要求。  東北大は「人文社会科学を中心とした価値創造戦略」、「ガバナンス進化」などの体制強化を盛り込んだ改訂版を示し、今回妥当と認められた。 東北大の冨永悌二総長は「社会の負託に応え日本を牽引する研究大学として、最終的な認定に向け、全学一丸となって引き続き取り組んで参ります」とのコメントを発表した。14 日に記者会見を開いて大学の取り組みについて公表する見通し。 卓越大の 2 回目の公募は、今年度中に始める予定だ。 (竹野内崇宏、asahi = 6-14-24)

初 報 (9-1-23)


男女平等、日本 118 位 「大幅進展」も先進国最下位 - 国際調査

【ロンドン】 世界経済フォーラム (WEF) は 12 日、世界各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」の 2024 年版を発表した。 日本は総合ランキングで 146 カ国中 118 位と、過去最低だった前年 (125 位) から順位を七つ上げた。 ただ、引き続き政治や経済の分野で遅れが目立ち、先進 7 カ国 (G7) では最下位だった。 WEF は日本について、「大幅な進展があった」と評価。 閣僚の 4 分の 1 を女性が占めるなど、政治分野(113 位、前年は 138 位)での改善が総合順位の上昇に寄与した。 経済分野(120 位、同 123 位)もわずかに改善したものの、幹部職の占有率や賃金面での男女格差は「引き続き顕著」だった。 (jiji = 6-12-24)


定額減税、年金受給者の場合は? 開始時期、所得税と住民税で異なる

6 月に始まった定額減税は、公的年金のうち老齢年金を受け取っている人も対象になる。 ただし、所得税や住民税(所得割)を納めていない人や、もともと税金がかからない遺族年金や障害者年金の受給者は対象外だ。 対象にならない人は、自治体からの給付で手当てされる。 年金にかかる所得税(1 人 3 万円)の減税は、6 月に受け取る分から始まる。2 カ月に 1 回、偶数月に支払われている年金で、毎回 3 万円を超える所得税を納めている場合、6 月の 1 回で減税が終わる。 毎回の納税額が 3 万円を下回る場合は、減税しきれなかった分を 8 月以降、順次減税する。 たとえば、毎回 1 万 2 千円の納税をしているケースでは、6 月と 8 月の所得税額がゼロになり、10 月に 6 千円を納税する。

扶養する家族がいる場合は、日本年金機構などに提出した昨年の申告書にもとづき、家族 1 人あたり 3 万円の減税を合わせて受けられる。 一方、住民税の減税(1 人あたり 1 万円、扶養する家族も対象)は、10 月から始まる。 6 月と 8 月の税額はすでに確定しているためだ。 税額が少なくて減税しきれない場合は、12 月と来年 2 月まで減税が続き、それでも引ききれないときは、差額が還付されるという。 今回の定額減税や還付の手続きは、受給者による申告は必要ない。 一方で、定額減税にまつわる詐欺も起きている。 たとえば、「定額減税の関係で還付が受けられる」といったうそをかたる電話で、銀行の口座情報を聞き出したり、ATM を操作させたりする事例が発生しているという。 そのため、自治体などが注意を呼びかけている。

詳しくは、日本年金機構のホームページ へ。 (岡林佐和、asahi = 6-10-24)


倒産件数が 11 年ぶりに 1,000 件超え 物価高・「ゼロゼロ融資」返済ピークで 全産業・全地区で増加

5 月の倒産件数は 11 年ぶりに 1,000 件を超えました。 物価高や、コロナ禍のいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済がピークを迎えていることが主な理由です。 東京商工リサーチによりますと、5 月の全国の企業倒産件数は 1,009 件となり、1 年前と比べて 42.9% 増えました。 月の倒産件数が 1,000 件を超えるのはおよそ 11 年ぶりです。

増加の主な理由は、▼ 物価高が長引く中で価格転嫁が遅れたことによる倒産や、▼ コロナ禍で業績が落ち込んだ企業に対する実質無利子・無担保のいわゆる「ゼロゼロ融資」の返済がピークを迎えたことによる倒産が増えているためです。 産業別では、327 件と過去最多となった「サービス業」など、7 か月ぶりに全ての産業で倒産件数が増加。 また、地域別でも 9 か月ぶりに全ての地区で上回りました。 東京商工リサーチは「『ゼロゼロ融資』の返済が 4 月から "後の山場" を迎えており、倒産件数は今後も増える可能性がある」とコメントしています。 (TBS = 6-10-24)


レジ打ち、座っちゃダメ? 8 時間立ちっぱなし、イスを置いたら …

2 階の免税レジカウンター前に、商品がいっぱいに入ったかごを持った外国人客が 10 組ほど、列をなしていた。 5 月下旬、ディスカウント店「ドン・キホーテ浅草店(東京都台東区)」。 立ったまま手早く商品のバーコードをスキャンしてレジを打っていた店員は、客の波が途切れると、イスにもたれかかるように腰掛けた。 座って商品を袋詰めする店員もいる。  イスは幅 40 センチ、高さは最大 75 センチで 4 段階に調節でき、中腰の姿勢でそっと腰掛けられる。 現場の負担を減らし、離職防止になればと 4 月上旬、導入された。

5 年ほど前から勤務するアルバイトの 40 代女性は、週 5 日、1 日 8 時間働く。 ほとんど立ちっぱなしで、腰や足のつま先が痛くなり、自宅でのストレッチは欠かせない。 「少し座れるだけで気持ちにも余裕ができ、良い接客につながる。 精神的、身体的にかなり楽になった。」と話す。

客からの反応は?

店では以前から、足の負担軽減のため床にクッション性のシートを敷いてはいたが、従業員からは立ちっぱなしの負担が大きいと声が上がっていた。 長い人で 8 時間立つこともあるという。 外国人客の多い免税レジであればイスにもなじみがあるだろうと、試験的に導入。 今後は免税レジ以外にも広げる方向だという。 店長の花井章郎さんは「従業員にも好評で、お客からも苦情はない。 人手不足も続いており、働きやすい環境を作って、人材の定着につなげたい。」 全国で 600 店舗以上を展開するドン・キホーテでは、5 月時点で首都圏や中京圏などの計 11 店舗で試験導入した。

イス導入は、就職情報会社のマイナビが快適に働ける環境をつくろうと、今春から始めた「座ってイイッス PROJECT」 の一環だ。 オフィス用のイスなどを製造販売する「SANKEI (三重)」と、狭いレジでも置ける特製のイスを共同製作。 3 月から企業に提供を始め、ドラッグストア大手トモズや靴小売り大手 ABC マートなども試験導入し、5 月時点で 6 社、計 35 店舗で約 100 脚が設置された。 飲食店や小売店を中心に 120 社以上から問い合わせがあるという。

マイナビは今年 3 月、立ち仕事の接客業務のあるパート・アルバイトと雇用主の計 600 人を対象にネット上で調査した。 雇用主側で、座ったままの接客について、「原則許可していない」、「特にルールを決めていないが、座っていない」と答えたのは 44.3% で、「常時座れる」は 23.3% にとどまった。 許可していない理由では「お客からの印象の悪化を防ぐため」が 33.8% と最多だった。 一方、働き手側は、65% が「接客中に座りたい」と回答し、「立ち仕事からくる肉体的な要因で辞めてしまった経験がある」は 19.7% に上った。

プロジェクト以外でも、動きは広がる。 食品スーパーを展開するベルク(埼玉)では、独自に昨年 12 月からこれまでに 3 店舗でイスを導入。 社員が米国の大手スーパーを視察した際に、座ってレジを打つ姿を見て着想を得たという。 今後も導入店を増やす方針で、担当者は「『レジ業務は立ち仕事』という固定観念を壊し、負担軽減していきたい」とコメントした。

大学生、会社と交渉 国に要請も

働く側も声をあげている。 文教大 4 年の茂木楓さん (22) は 3 年前から、埼玉県内の大手スーパーの店舗で、レジ接客のアルバイトしている。 3 - 4 時間は立ちっぱなしで、足や腰の疲労を強く感じることもあり、「実際にやってみると、想像以上に大変だった」という。 「負担を減らすために、イスを置けないか。」 働き手が個人で入れる首都圏学生ユニオン(東京)に加入し、2 年ほど前、会社と交渉した。 2022 年に呼びかけたネット署名には、約 2 万 2 千筆の賛同も集まった。 会社は 23 年 9 月から約 1 カ月半、一部店舗で試験的に設置し、客がいない間は座れるようになったが、社内アンケートで反対意見が多く、結局見送られた。

個別交渉には限界を感じ、5 月にはユニオンの有志らで厚生労働省にも要請した。 厚労省の労働安全衛生規則では、就業中に座れる機会があるときはイスを置くことを事業者に義務づけるが、具体的に対象となる仕事の見解などは示されていない。 規則の解釈や、具体的な事例集の作成などを求めた。 厚労省は今後、スーパーの関係団体などからヒアリングし、立ち仕事の実態把握を進めるという。 英国やドイツ、韓国など、海外ではレジのイスは珍しくない。 「働き手の環境改善につなげるため、日本の当たり前を変えられないか、社会に問いたい」と茂木さんは願う。 (片田貴也、asahi - 6-8-24)


国家公務員採用、女性割合が過去最高 39.2% 6 年連続で更新

内閣人事局は 7 日、2024 年度の採用となった国家公務員のうち、女性の割合が 39.2% となり、05 年の調査開始以降、過去最高になったと発表した。 6 年連続の更新で、前年度から 0.5 ポイント増えた。 4 月 1 日付で採用された 8,997 人のうち、女性は 3,528 人。 このうち「キャリア官僚」として幹部候補となる総合職に占める女性割合は 35.7% (前年度比 0.2 ポイント減)で、政府が掲げる 35% 以上とする目標を上回った。

一方、一般職も含めた採用者のうち技術系区分(デジタル・工学など)の女性割合は 28.5% (同 1.3 ポイント増)だった。 技術系区分の女性割合の目標は「25 年度までに 30%」としている。 政府は女性受験者を増やすため、子育てとの両立支援や働き方改革の推進などの発信強化に取り組んでいる。 (神野勇人、asahi = 6-7-24)