エピックゲームズ、EU で独自アプリストア開設 アップル規制受け

人気ゲーム「フォートナイト」を運営する米エピックゲームズは 16 日、米アップルの iPhone (アイフォーン)向けの独自のアプリストアを欧州連合 (EU) で開設したと発表した。 EUで本格運用が始まった「デジタル市場法 (DMA)」を受けた動きで、米アップルが囲い込んできたアプリ市場を変える動きが出てきた。 エピックが開設した「エピック・ゲームズ・ストア」では、フォートナイトなど三つのゲームを提供し、米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」向けは世界で使える。 エピックは iPhone 向けについて、EU 以外の各国当局にもこのアプリストアを利用できるよう働きかけているという。

アップルは安全性などを理由に、影響力のある自社の「アップストア」以外でのアプリ配信を認めてこなかった。 アプリ内での課金に対し最大 30% の手数料を取っており、アプリ業者から「高すぎる」と批判が出ていた。 EU で 3 月に本格運用が始まった DMA が、自社のアプリストアでアプリ配信を義務づけることを禁止したため、アップルは外部のアプリストアでの配信を認める方針に転じていた。

エピックは今後、自社のストアで扱うゲームを増やし、他社のゲームも扱う方針だという。 今回、同社のアプリストアで販売されたアプリ内での課金について手数料を 12% とする方針を示しており、ゲーム料金の低下につながる可能性がある。 日本でもアプリ事業者の課金に関する制限を禁止する法律が 6 月に成立。 エピックは日本でも来年後半に iPhone 向けのアプリストアを開設する方針を示している。 (サンフランシスコ・五十嵐大介、asahi = 8-17-24)


ユーチューバー「ばんばんざい」広報大使に SNS の悩み「相談を」

若者が SNS などから闇バイトに応募して犯罪に加担することがないよう、警視庁目黒署は夏休みを前に 12 日、地元の高校で防犯講話を行った。 登録者数 278 万人の 3 人組の人気ユーチューバー「ばんばんざい」が一日広報大使として参加し、SNS の使い方などについて語った。 講話は目黒日本大学高校(東京都目黒区)であり、3 年生約 300 人が参加した。 生徒からは SNS やアルバイトに関する質問が相次いだ。 知らない相手に学生証の写真を送ってしまったらどうすればいいかと聞かれたメンバーのるなさんは、「1 人で解決しようとせず、周りの大人や友人に相談して」とアドバイスしていた。 浜田勝行署長は「いま一度闇バイトの危険性を認識して。 安易な考えで犯罪に加担して夢や人生を台無しにしないでほしい。」と訴えた。 (御船紗子、asahi = 7-18-24)


もうすぐ夏休み 子どもの「ネット依存」低年齢化? 防ぐには

夏休みなど長期休業中は、子どもが情報端末に触れる機会や時間が増えがちだ。 仕事などで保護者が不在の自宅で、オンラインゲームや SNS をやり過ぎて生活リズムが崩れたり、学業に影響が出たりする「ネット依存」に陥る懸念もある。 厚生労働省の 2017 年度の調査では、ネット依存の疑いが強い中学生は 12.4%、高校生は 16.0%。 推計約 93 万人に上り、5 年前から約 40 万人増えた。 その後、コロナ禍によるオンライン授業の広がりや情報端末の急速な普及で、ネットやゲームはさらに身近になっている。

10 - 17 歳のネット利用、1 日 5 時間 5 年前の 1.6 倍

こども家庭庁が 23 年度に 10 - 17 歳計 5 千人に行った調査では、平日 1 日当たりのネットの平均利用時間は約 5 時間。 コロナ前の 19 年度の約 1.6 倍になった。 同じ調査で 0 - 9 歳計 3 千人について保護者に聞いたところ、23 年度で 2 時間超と、19 年度の約 1.5 倍になっていた。 ネット依存の子は低年齢化し、急増しているとの指摘もある。 防ぐ方法はあるのか。

国立病院機構「さいがた医療センター」の佐久間寛之院長と依存症治療チームによると、ゲームやネットを遠ざけることは解決策にならないという。 佐久間院長は「依存の本質は『苦痛の回避』にある。 現実世界がとても苦しいことが問題で、その苦しさがなくならない限り解決しない。」と指摘する。 ゲームやネットの仮想世界では苦しさを忘れられ、救われているとも言える。 無理に取り上げた場合、暴力を振るったり、命を失ったりするリスクもあるという。 保護者に必要なのは、「子どもへの干渉をやめ、ともに楽になること」だという。 「たわいのない雑談をしたり一緒に食事をしたり、家庭のあたたかさを取り戻してほしい。 そうすれば家庭が子どもにとって安心する場になり、ネット依存からの回復を促す。 普段からそのような雰囲気がつくれていれば、防止にもつながるだろう。」 「保護者は干渉やめ、楽になって。」(高浜行人、asahi = 7-15-24)


SNS 偽情報、プラットフォーム側の対応制度化提言へ 国有識者会議

インターネット上のウソや誤情報の対策を議論する総務省の有識者会議による提言案が判明した。 SNS を運営するプラットフォーム事業者の自主的な対策が不十分として、投稿の削除といった対応の迅速化や透明化などを事業者に求める制度づくりを政府に要請する。 有識者会議「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」が近く公表する。 これを受けて総務省は今後、法整備も視野に検討を進める。 偽・誤情報への対応は、事業者の自主的な取り組みに委ねられてきた。 1 月の能登半島地震で偽の救助要請の投稿があったことを政府は問題視。 総務省は、事業者に投稿の削除など適切な対応をとるよう要請したが、法律の裏付けはなかった。

提言案には、違法な偽・誤情報について、事業者に対応の迅速化のための申請窓口の整備、一定期間内の判断・通知や、発信を繰り返す人の投稿削除、アカウントの停止などを確実に実施する方策を求めることを盛り込んだ。 投稿をする人の「表現の自由」の制約にも配慮。 行政機関が事業者に削除などを求める際、申請状況がわかるよう、透明性を確保する仕組みが欠かせないとした。 違法ではないが有害と判断される投稿については、拡散しないよう収益化の停止などを確実に実施させるため、外部からの申請窓口の整備や一定期間内での判断が必要とした。

投稿の削除基準の策定や公表、人員体制に関する情報の公表も事業者に求める。 著名人らになりすました詐欺広告の被害が広がっていることを受け、事業者による広告の事前審査や掲載後の停止基準の公表・策定の必要性にも言及した。 投稿の削除やアカウント停止だけでなく、警告表示や表示順位の低下など段階的な対応も示す。 有識者会議は 2 月から、フェイスブックを運営する米メタやX (旧ツイッター)といった事業者への聞き取り調査を実施した。 提言案では、事業者から十分な回答が得られず、説明責任や透明性も不十分だと指摘。 過激な内容で利用者の関心を集めて収入につなげる「アテンション・エコノミー」が情報拡散の背景にあるとして、「情報流通の健全性確保のため総合的な対策が必要」とした。 (黒田健朗、奈良部健、asahi = 7-11-24)

有識者会議が提言するプラットフォーム事業者に求める主な対策
・ 投稿の削除などの申請を受ける窓口整備
・ 削除などの対応を一定期間内で判断し、申請者に通知
・ 投稿の削除基準の策定や公表
・ 削除などを行う人員体制の公表
・ 広告の事前審査や掲載後の停止基準の公表

◇ ◇ ◇

なりすまし広告、メタの審査体制に厳しい指摘 経産省がヒアリング

SNS 上で有名企業や著名人らになりすます広告が相次いでいる問題で、経済産業省は 28 日、グーグルや、フェイスブックを運営する米メタ、LINE ヤフーのプラットフォーム (PF) 事業者 3 社を対象としたヒアリング結果を公表した。 メタについては、広告の審査体制が十分ではないと指摘した。 この日開いた PF 事業者の透明性や公平性を監視する有識者会議で明らかにした。 11 月をめどに問題点を取りまとめ、パブリックコメントなどを経て、対象の事業者には改善を要請する。

なりすましをさせないためには、悪意のある広告主かどうかを事業者が確認する必要がある。 メタが会社の所在地や営業許可証といった情報を求めていたのは、社会問題や政治などに関わる広告のみで、限定的な範囲にとどまっていたという。 また、メタはなりすましの被害を受けた広告主からの連絡によって、初めて実害を認識している懸念があるという。 広告主へのヒアリングでは、メタに通報しても広告が停止されない事例が複数あった。 この日の会議で委員からは「メタが苦情に無反応なのは良くない。 警告などはできないか。」、「PF 事業者は広告の審査を徹底するべきだ」との意見が出た。 (長橋亮文、asahi = 6-29-24)

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SNS での誹謗中傷、削除してもらいやすくなる? 改正法成立 罰金も

インターネット上の誹謗中傷について、大手プラットフォーム (PF) 事業者に対応の迅速化を義務づける改正プロバイダー責任制限法が 10 日、参院本会議で可決、成立した。 削除指針の明示や、削除申請から 1 週間程度での対応などを義務づける。 改正法の対象となる事業者は、X (旧ツイッター)やフェイスブックを運営するメタなどを想定。 月間アクティブユーザー数などが多い企業を対象にする方針で、基準を近く総務省令で定める。

削除する場合の判断基準や手続きなどを定めた指針をつくるほか、削除申請を受ける窓口の整備を求める。 受け付けから 1 週間ほどで対応したうえで、申請者に通知することも義務づける。 事業者は、申請にどう対応したかを年 1 回公表することも必要となる。 対応が不十分な場合は総務相が勧告・命令を出し、従わない場合には最大 1 億円の罰金を科すことも定めた。 施行は公布から 1 年以内。

改正により、法律名が「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法)」に変更された。 誹謗中傷投稿の削除をめぐっては、これまで事業者の自主的な対応に委ねられてきた。 各社は利用規約にもとづき、投稿の削除やアカウントの停止などの対応をしている。 ただ、削除基準が明確でなく、どのように対応したのか不透明との指摘があった。

「違法・有害情報相談センター」に寄せられたネット上の誹謗中傷をめぐる相談は、毎年 5 千件を超えている。 2022 年度の相談(5,745 件)のうち、「削除方法を知りたい」という内容が 7 割近くを占めた。 全体では X への投稿に関するものが最多だった。 今回の法改正では、肖像権などを侵害する恐れがある広告などにも対応する。 米メタが運営するフェイスブックなどで著名人になりすました投資詐欺広告がひろがっており、対策を求める声が高まっていた。

法規制で先行する欧州連合 (EU) には、事業者に社会的なリスクにつながる偽情報などの排除に取り組むよう義務づけるデジタルサービス法がある。 総務省幹部は「EU に近い仕組みがひとまずできた。 なりすまし広告対策にも一定の効果を見込める。」と話す。 ただ、限界はある。 表現の自由への配慮から、なにが誹謗中傷にあたるのかといったことを法律で明示することはせず、投稿の削除も義務づけてはいない。 さらに、なりすまし広告によってお金をだまし取る詐欺自体は、ネット上での権利侵害とは言えず、改正法の対象外となる。 (黒田健朗、asahi = 5-11-24)


子どもの SOS、ネット検索時にキャッチ 自殺対策に無償で提供

子どもたちの「生きる」を支えたい - -。 子どもたちが深刻な悩みに関連する言葉をネットで検索した場合に、画面に相談窓口やセルフケアの情報を表示する「SOS フィルター」を、自殺防止に取り組む NPO 法人「OVA (オーヴァ)」が開発した。 学校で 1 人 1 台支給されているタブレット端末への導入をめざし、全国の教育委員会に対して今月から無償で提供する。 SOS フィルターを導入すると、あらかじめ登録された言葉を検索した際に、悩みに即した情報をまとめたポップアップが画面に表示される。 例えば、「気持ちが少しでもやわらぐ方法」として、「家族や友達に話してみる」、「気持ちを書き出す」、「休みをとってみる」といった選択肢を示す。

いじめや性暴力に関する約 4,800 のキーワードを登録

昨年 11 月に、自殺に関連する 935 の言葉を登録した試作版を製作。 今年 3 月末まで、中高一貫校で生徒たちが使う端末で試験的に導入した。 生徒計約 980 人に対し、フィルターの表示回数は 134 回で、月平均では 27 回だった。 自殺に関連したニュースを検索したケースが多かったという。 今回提供する改良版には「自殺」のほか、「いじめ」、「虐待」、「性暴力」、「精神疾患」、「自傷」に関する計約 4,800 のキーワードを登録した。

職員の経験から生まれた

SOS フィルターが生まれるきっかけとなったのは、職員の立川花帆さん (21) 自身の経験だった。 自分に自信が持てず、将来に不安を感じ、高校 2 年の時には、スマートフォンを触る度に死ぬことについて検索していたという。 相談窓口がわかるサイトもあったが、誰でも投稿できる掲示板や SNS では、死にたい気持ちを否定したり、責めたりするような言葉を目にすることもあり、心をえぐられたように感じた。 高校の部活動で自殺対策についての解決策を考えることに取り組み、OVA の存在を知った。 伊藤次郎代表理事に提案したのが、子どもたちが悩みについて検索すると、AI チャットボットが登場し、相談窓口を紹介したり、話し相手になったりするサービスだった。 これが、今回のフィルターの開発につながったという。

「検索する行動を尊重し、受け止めることが大切」

立川さんは、専門学校でデザインを学んでいたことを生かして、フィルターが子どもたちにとってわかりやすく、親しみやすい雰囲気や文章になるように工夫した。 子どもたちが安心して利用できるように、個人が特定できる情報は収集せず、誰が検索したかといった通知が、学校や管理者に届くことはない。 立川さんは、「自分と同じような思いをもっている子どもがたくさんいると思う。 検索するという行動を尊重し、まずは受け止めることが大切。 悩みを抱える生徒に寄り添える機能にしたい。」と話す。 伊藤代表理事は、「端末を活用した自殺対策は、教育現場であまり進んでいない印象を受ける。 子どもたちが検索する言葉は、生きるために出している情報でもある。 それを幅広くキャッチして、適切な対応につなげていきたい」と言う。

要望があれば無償で提供

フィルターは、ウェブブラウザーの「グーグルクローム」や「マイクロソフトエッジ」などを利用する端末であれば、無償でインストールできる。 私立の学校からも要望があれば、提供するという。 問い合わせは、OVA の SOS フィルターについての サイト から。

小中校生の自殺、2022 年に過去最多の 514 人

全国の小中高生の自殺者は、2022 年に 514 人と過去最多になった。 こども家庭庁は昨年 4 月、庁内に「自殺対策室」を設置。 文部科学省や厚生労働省など関係省庁と連絡会議を開き、対応策を協議してきた。 同年 6 月に政府が公表した「こどもの自殺対策緊急強化プラン」では、国の GIGA スクール構想で全国の児童生徒に配布されたタブレットなどの端末を活用し、自殺リスクを早期発見することなどが盛り込まれている。 今年 2 月には、文部科学省が全国の教育委員会などに対し、児童生徒の心身の変化を把握するためにも、GIGA 端末を活用した対策に積極的に取り組むように通達を出している。 (島崎周、asahi = 7-8-24)


米、ロシアのウイルス対策ソフト禁止へ カスペルスキー幹部の制裁も

米政府は 21 日、ロシアのサイバー対策企業「カスペルスキー」の幹部 12 人を、資産凍結などの制裁対象にすると発表した。 また、同社製のウイルス対策ソフトなどの米国内での販売も禁止する。 同社製品を通じて、米企業や米国民の情報がロシアに流れるといった「国家安全保障上のリスク」があるためという。 米財務省によると、制裁対象になったのは同社の最高執行責任者 (COO) や取締役会のメンバーら。 同省幹部は声明で、「悪意あるサイバー上の脅威から米国民を守る」と述べた。 ただ、ロイター通信によると、企業としてのカスペルスキーやユージン・カスペルスキー最高経営責任者 (CEO) は今回の制裁対象にはならなかった。

これに先立つ 20 日には、米商務省が同社による米国内での事業展開を禁止すると発表。 9 月 29 日までを猶予期間とし、米企業・国民に対して、同社製ではないウイルス対策ソフトへの乗り換えを推奨する。 同省によると、カスペルスキーは 31 カ国に拠点を持ち、約 2,000 カ国・地域で事業を展開。 4 億人以上のユーザーと 27 万社の法人顧客に、ウイルス対策ソフトなどを販売しているという。 同社のサイトによると、日本でも東京などに拠点を置き、事業展開している。 (ワシントン・榊原謙、asahi = 6-22-24)


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世界一有名なシバイヌ「かぼす」旅立つ お別れ会で各地から哀悼の声

「世界一有名なシバイヌ」が 24 日、天国に旅立った。 もとは殺処分される寸前だった保護犬で、千葉県佐倉市で暮らしていた 18 歳の雌犬の「かぼす」。 26 日、飼い主で保育士の佐藤敦子さん (62) が「かぼちゃんのお別れの会」を同県成田市の生花店で開き、多くのファンが悼んだ。 「人生のパートナーのような存在だった。」 お別れ会で、佐藤さんが 15 年余りのかぼすとの思い出を振り返った。 会が開かれたのは、成田市公津の杜にある「フラワー kaori」。 花に囲まれながら天国に旅立ってほしいと、お別れの会は飼い猫がいる自宅ではなく、生花店で開いたという。

会場近くでは、最後のお別れをしようと、会が始まった午後 1 時時点で、50 人を超すファンの列ができた。 UAE やドイツといった海外メディアの姿もあった。 かぼすのアルバムや手作りぬいぐるみ、写真パネルなどが設置され、かぼすの T シャツを着ていた人も。 ベルギー出身で、デザイナーのディオンさん (30) は、高校生くらいの時にネットで知ったという。 7 年前に来日後、かぼすの絵を佐藤さんにプレゼントしたこともあり、「高齢だし、介護をしていたのは知っていたが悲しい」と話した。 仮想通貨の関係者も集まった。 「SBIVC トレード(東京都港区)」のアナリスト、西山祥史さん (34) は「世界ではハチ公を超える知名度かもしれない。 100 年後日本昔話に載っている犬だと思う。」とたたえた。

かぼすは、殺処分予定の保護犬だったが、佐藤さんが 2008 年秋、里親に応募し、一緒に暮らすことになった。 運命が変わるきっかけは 10 年。 佐藤さんが、自宅ソファに前脚を交えて座りながら横目で何か考えているようなかぼすの写真をブログにあげた。 何げない 1 枚だった。 3 年後、その写真がネットで話題になっていると友人から連絡があった。 「Dog」をもじった「Doge(ドージ)」と呼ばれ、画像を使った洋服や財布が販売され、写真をロゴにした「Dogecoin (ドージコイン)」と呼ばれる仮想通貨まで登場した。

佐藤さん自ら写真 7 枚をチャリティーオークションに出品すると、落札額は計 5 億円超に。 経費を除いた全額を寄付。 国際 NGO を通じ、ベトナムやイラクなどに寄付した。 その後も、昨年 4 月にはイーロン・マスク氏が、ツイッター(現 X)のフォロワーの要望を受け、青い鳥のロゴをかぼすに変える出来事もあった。 どんどん有名になっていくかぼす。 だが、犬も老いは避けられない。 今年 1 月から体が思うように動かなくなり、介護が必要になった。

佐藤さんは、かぼすを車いすに乗せて子ども園に連れて行っていた。 園児たちが体をなでたり、頭におもちゃを乗せたりして遊んだ。 話すのが苦手だった園児が、触れ合いを通じてよく喋るようになるなど変化も見られたという。 23 日朝、意識がなくなり、全身けいれんを起こした。 23 分間続き、病院で薬をもらい飲ませた。 一命を取り留めたように見えたが、翌朝もけいれんが起き、息を深くしてから、引き取った。

ブログでかぼすの死を公表後、26 日夕までに X やインスタグラムに国内外から 1 万件以上の哀悼メッセージが届いた。 海外からのものは翻訳しながら、目を通していくという。 「亡くなったらどうなるんだろうと考えていた。 けど、今も胸のポケットに入っている感じがして、何か温かいものを感じる。」と佐藤さんは語った。 (マハール有仁州、asahi = 5-26-24)


巨大 IT 規制法が英国で成立、メタやグーグルなど指定へ … 制裁金は売上高の最大 10%

【ロンドン = 中西梓】 英国で巨大 IT 企業を規制する「デジタル市場・競争・消費者法」が 24 日成立した。 巨大 IT に対し、消費者や企業との間で公正で合理的な取引をするよう義務付け、違反すれば最大で世界の年間売上高の 10% を制裁金として科す。 今秋にも施行される見通しだ。

規制対象は世界売上高が 250 億ポンド(約 5 兆円)超か、英国内の売上高が 10 億ポンド(約 2,000 億円)を超える企業で、競争当局が指定する。 巨大 IT が守るべきルールを行動要件として定め、順守を求める。 当局は米メタ(旧フェイスブック)やグーグルなどを指定する方向だ。 消費者が不利となる定額制(サブスクリプション)の契約や自社サービスの優遇、偽の口コミ投稿などは禁止される。 記事などコンテンツ(情報の内容)使用に対する適正な対価支払いも義務付ける見通しだ。 (yomiuri = 5-25-24)


公取委がグーグルに初の行政処分、ヤフーの広告配信を約 7 年間制限

公正取引委員会は 22 日、米グーグルを対象に独占禁止法に基づく行政処分を行ったと発表した。 旧ヤフー(現 LINE ヤフー)とのネット広告関連の取引をめぐる独禁法違反(私的独占など)の疑いを、自主改善する計画がグーグルから提出されたため、計画の履行義務を科したとしている。 独禁法に基づくグーグルへの初の行政処分となる。

処分は同日付。 グーグルとヤフーは 2010 年、インターネット広告分野で事業提携。 ヤフーはグーグルの技術を使い、インターネット検索サイトの利用者が検索した内容に関連した広告を配信する「検索連動型広告」事業を展開している。 発表によると、グーグルは 14 年 11 月、ヤフーに対し、外部のスマートフォン向けサイトなどではグーグルの技術を使った検索連動型広告の配信をしないよう要求。 ヤフーは遅くとも 15 年 9 月以降、この広告配信ができなくなった。

公取委はグーグルの要求が、市場の公正な競争をゆがめ、独禁法が禁じる不公正な取引方法や私的独占に当たる疑いがあるとみて 22 年に調査を開始。 その後グーグルが要求を撤回したため、ヤフーは同年 11 月から広告配信を再開できたという。

グーグルが今月提出した自主改善計画の項目は、公取委が承認した場合を除き、▽ 今後 3 年間はヤフーへの技術提供を制限しない、▽ 外部専門家の定期監査を受ける、▽ 改善計画の履行状況を 3 年間公取委に報告する - - など。 公取委が実効性を認定したことで、グーグルには履行義務が生じる。 公取委は監視を続け、不履行があれば独禁法違反調査を再開するとしている。

今回の行政処分は独禁法の「確約手続き」に基づくもの。 公取委は、自主改善計画の実効性を「認定」して履行義務を科し、排除措置命令や課徴金納付命令は出さない。 不履行があれば認定を取り消し、調査を再開する。 確約手続きは、不当な競争のゆがみの疑いが生じた際に公正な競争環境を素早く取り戻す狙いで 18 年末に始まった。

ネット広告はグーグルの莫大な収益の源泉で、同社は日本市場でも大きなシェアを持つ。 検索連動型広告では 7 - 8 割を占め、ヤフーが唯一の競合相手。 グーグルやアップルなどの「GAFA」をはじめとするデジタルプラットフォーム事業者をめぐっては、各国の公取委に当たる競争当局が近年監視の目を強めている。 (増山祐史、田中恭太、asahi = 4-22-24)

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「全面的に協力」グーグル、公取委の調査認める ヤフー広告制限疑い

米グーグルがネットサービス大手の旧ヤフー(現 LINE ヤフー)との間で同社の検索連動型広告事業を制限する内容の契約を結んでいたことが、独占禁止法違反(私的独占など)に当たる疑いがあるとして公正取引委員会が水面下で調査していた問題で、グーグル広報部は 16 日、朝日新聞の取材に「本件に関して公正取引委員会の調査に全面的に協力して参りました」と調査を受けてきたことを認めた。

グーグルの圧倒的技術力、ゆがんだヤフーとの競争

グーグルは今月、自主的に改善し再発防止策を講じる計画を公取委に提出したという。 公取委が計画に実効性があると認定すれば、グーグルに履行義務が生じ、公取委によるグーグルへの初の行政処分となる。 同広報部は「現在公正取引委員会からの認定を待っている」としている。 国内の検索連動型広告の市場規模は 1 兆円超。 グーグルがシェアの 7 - 8 割を占め、ヤフーは追う立場にある。 グーグルは「今後も価値のある検索サービスを日本のユーザーや広告主の皆様に提供していけるよう、引き続き尽力して参ります」とコメントした。

今回公取委とグーグルの間で用いられている「確約手続き」は、独禁法違反の疑いで公取委から調査を受けている事業者が、違反の疑いがある行為の取りやめや再発防止などの自主改善策を盛り込んだ「確約計画」を公取委に提出できる制度。 公取委が実効性があると判断して計画を認めれば、計画の履行を条件に調査が終わる。 (増山祐史、asahi = 4-16-24)

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米グーグルに独禁法違反疑い、日本の公取委が調査 ヤフー広告を制限

米グーグルがネットサービス大手の旧ヤフー(現 LINE ヤフー)との間で同社の検索連動型広告事業を制限する内容の契約を結んでいたことが、独占禁止法違反(私的独占など)に当たる疑いがあるとして、公正取引委員会が調査を進めていたことがわかった。 調査を受けグーグルは今月、自主的に改善し再発防止策を講じる計画を公取委に提出した模様だ。 公取委が計画に実効性があると認定すれば、グーグルに履行義務が生じ、公取委によるグーグルへの初の行政処分となる。

関係者が取材に明かした。 国内の検索連動型広告の市場規模は 1 兆円超。 グーグルがシェアの 7 - 8 割を占め、ヤフーは追う立場にある。 圧倒的シェアのグーグルが技術力を背景に、市場の公正な競争をゆがめた疑いがあるとして公取委は調査していたという。

ヤフーへの技術提供が背景か

ヤフーは、自社サイト以外の検索ポータルサイトなどで検索内容に関連がある広告を配信する事業を、グーグルの広告配信技術を使って行っている。 関係者らによると、グーグルは 2010 年代半ばに、ヤフーに対し、スマートフォン向けにはこの広告配信をやめるよう要求。 技術面で全面的にグーグルに頼っている立場のヤフーが受け入れていたという。

ヤフーは 10 年から検索や広告配信の技術提供をグーグルから受け始めた。 当時業界には「グーグルの支配が強まり公正な競争が阻害される」との懸念があったが、ヤフーの事業は妨げないとの内容だったため公取委が「直ちに問題はない」と判断した。 しかし、10 年代半ばの契約内容変更後は独禁法違反の状態になった疑いがあるとみて 22 年から調査。 同年グーグルは要求を撤回したという。

独禁法の「確約手続き」制度を利用

今回グーグルが提出した改善計画は、違反の疑いがある行為を企業が自主的に取りやめ再発防止を確約する「確約手続き」という制度に基づくもの。 関係者によると公取委は近くグーグルの改善計画を認定し公表する方針という。 監視は続け、計画が実行されていないと判断すれば認定を取り消し調査を再開する。 巨大 IT 企業など、情報流通の場を支配するデジタルプラットフォーム事業者をめぐっては近年、世界各国の公取委に当たる「競争当局」が監視を強めている。 (増山祐史、高田正幸、田中恭太、asahi = 4-16-24)

〈確約手続き〉 独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から調査を受けている事業者が、違反の疑いがある行為の取りやめや再発防止などの自主改善策を盛り込んだ「確約計画」を公取委に提出できる制度。 公取委が実効性があると判断して計画を認めれば、計画の履行を条件に調査が終わる。 通常発出する排除措置命令や課徴金納付命令は出さず、違反認定もしない。 監視は続け、計画が実行されていないと判断すれば認定を取り消し、調査を再開する。 計画の認定は行政処分の一つ。

不当な競争のゆがみの疑いが生じた際、公正な競争環境を素早く取り戻す狙いで 18 年末に始まった。 調査対象の事業者が制度を利用できるかは、公取委が個別に判断する。 「行為のとりやめ」や「再発防止」など、通常の排除措置命令で命じられる項目を盛り込ませることで、命令と同等の効力を持たせている。 談合・カルテル事件は対象外。


悪い口コミ恐れ、患者の「言いなり」も 医師らグーグルマップ提訴

地図サイト「グーグルマップ」で、不当な口コミや間違った内容を投稿されるなどして、営業権を侵害されたとして、全国の医師や歯科医師、獣医師など 63 人が 18 日、運営する米グーグルに計約 145 万円の損害賠償を求める訴訟を、東京地裁に起こした。 原告らは「圧倒的なシェアをもつプラットフォーム事業者が、十分な対策を講じないのはおかしい」と訴える。

原告らは訴状で、同サイトには誰でも匿名で口コミを登録できる一方、間違った情報や悪意ある口コミを書かれても「医師らは守秘義務があるため公の場で反論が難しい」と主張する。 削除を求めても実際に対応されるのはごくわずかで、削除のためには被害者側が負担の大きい裁判を強いられている、とも指摘。 こうした問題は、サイトの性質上当然に発生するにもかかわらず、グーグルはコメントができない設定をするといった適切な対処をしないまま、営利目的でサイト運営を続けている、と訴えている。

代理人弁護士によると、医師が集団でプラットフォーム事業者に損害賠償を求めるのは初めてとみられる。 提訴後の会見で、原告の一人の開業医の男性は「悪い口コミを書かれることを恐れ、患者の言いなりになってしまう医療機関もある。 医療従事者として危機感を持っている」と話した。

グーグルは取材に対し「個別案件に関してはコメントを差し控える」とした上で、同サイトについては「様々な場所に関する信頼できる情報を見つけやすくし、不正確な内容や誤解を招く内容を減らすよう努めている。 人間のオペレーターと機械を組み合わせて、24 時間体制で企業プロフィールを保護し、不正なレビューを削除しています」とした。 (黒田早織、asahi = 4-18-24)

〈編者注〉 一般の人々からすれば、Google に頑張って欲しいと考えます。 医者を選ぶのは難しいことで、今は「口コミ」程度の不確かな情報で選択している状態です。


台湾東部の地震 SNS で誤情報や偽情報広がる 「インプ稼ぎ」も

3 日午前起きた台湾東部を震源とする地震で、SNS では能登半島地震などこれまでの災害の動画を今回のものだとする誤った情報や偽情報が広がっており、こうした情報を収益を得る目的で投稿する「インプ稼ぎ」も多く見られています。 安易に拡散しないよう注意が必要です。

"安易に拡散しないで"

3 日午前の地震発生直後から、旧ツイッターの X では台湾の被害を伝えたり、高い場所に避難するよう訴えたりする投稿が多く広がった一方、誤った情報や偽情報も多く投稿されました。 中には、能登半島地震の際に確認された津波の様子や、2 年前に台湾で起きた地震の際、地面が揺れる様子を撮影した動画を今回の地震によるものだとする投稿もあり、3 日午後 5 時時点で閲覧回数が 170 万回以上に上るものもありました。

また、空港で海上保安庁の航空機を写した写真とともに「お偉いさん達はプライベートジェットで緊急避難か」などと書き込んだ誤った情報の投稿は 70 万回以上閲覧されたほか、地震の原因が「人工地震」や「地震兵器」であるなどとする科学的根拠のない偽情報も出ています。 さらに、収益を得る目的で閲覧数 = インプレッションを稼ぐ「インプ稼ぎ」や、「インプレゾンビ」と呼ばれる海外のアカウントがこうした誤った情報や偽情報を投稿するケースも多く見られます。 災害時は特に政府や自治体などの公共機関や報道機関の情報を確認するなどして、不確かな情報を安易に拡散しないよう注意が必要です。 (NHK = 4-3-24)


EU 、アップルなど 3 社を DMA 違反で調査 本格運用後、初の措置

欧州連合 (EU) の行政を担う欧州委員会は 25 日、米グーグルの親会社アルファベットとアップル、メタ(旧フェイスブック)に対して、デジタル市場法 (DMA) の義務違反の疑いで調査を始めた、と発表した。 2022 年に発効し、今年 3 月 7 日から本格運用が始まった DMA に基づく調査は初めて。 DMA は自社サービスの優遇の禁止や、ターゲット広告のために有効な同意を得ずに、自社サービス外で利用者を追跡することを禁止している。

アップルとアルファベットに対しては、スマートフォンやタブレットで利用者がアプリをダウンロードする際、アプリ業者が自社サイトで提供する安価なプランに消費者を誘導できないよう制限していたと指摘。 アップルについてはさらに、iPhone や iPad に初期設定で入っている土台となる基本ソフト (OS) 「iOS」が、利用者が簡単に変更できないことを問題視。 アルファベットは、価格の比較ができる「グーグルショッピング」や「グーグルホテル」で、特定の業者を優遇することなく平等に扱っているかを調査する。

アマゾンも調査対象

メタは、昨年 11 月から欧州限定で始めた有料サービスが、有料と引き換えに利用者のデータをターゲティング広告に使わないとするのは、「支払うか、個人データの利用に同意するか」の選択を迫るものだと指摘した。 欧州委は 12 カ月以内に調査を終え、各社にとるべき措置を伝えるとしている。 ただ違反が認められた場合、世界総売上高の 10% を上限に制裁金を科す可能性がある。

欧州委はこのほか、米アマゾンが自社ブランドの商品を優遇していないか、アップルがアプリ業者に新たに導入した「技術手数料」がDMA の目的を逸脱していないか調査するという。 デジタル政策のトップを務めるベステアー上級副委員長はこの日の記者会見で、「いずれも深刻なケースで、話し合いで解決できるならばすでに解決している。 このままでは、消費者は DMA が保障する選択肢を得られなくなってしまう」と述べた。 (ブリュッセル・牛尾梓、asahi = 3-25-24)

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EU のデジタル市場法が本格運用 巨大企業を規制、義務の履行を評価

欧州連合 (EU) のデジタル市場法 (DMA) の本格的な運用が、7 日に始まった。 DMA は自社サービスの優遇の禁止や、ターゲット広告のために有効な同意を得ずに、自社サービス外で利用者を追跡することの禁止など、約 20 個の「すべきこと」、「してはいけないこと」を定めており、規制対象となる企業は対応を迫られる。

2022 年発効の DMA は、圧倒的な規模と資金力を持つ巨大 IT 企業による市場の独占を防ぐのが狙い。 巨大企業が法に基づく義務を履行しているか評価される。  EU 域内の月間利用者数が 4,500 万人以上、域内の年間売上高が 75 億ユーロ(約 1 兆 2,218 億円)以上などの条件を満たした巨大企業を「ゲートキーパー」として指定する。 今後、X (旧ツイッター)と旅行予約サイトのブッキングドットコムのブッキングも追加される見通しだ。

これまでに指定された米グーグルの親会社アルファベットやアップルなど 6 社が運営する 22 サービスは、今月 6 日までに対応策を講じる必要があった。 グーグルは 5 日、DMA への対応策を発表。 スマートフォン向けのゲームアプリを欧州で購入する際、他社の決済システムを使えるようにし、スマホの基本ソフト (OS) 「アンドロイド」の初期設定で入っている「グーグルクローム」を選択制にするなどの対策を打ち出した。 また、アップルは今年 1 月、iPhone (アイフォーン)向けのアプリについて、EU 域内を対象に、外部のアプリストアからのアプリ取得を認め、アプリ内課金への手数料を「最大 30%」から「最大 17%」に下げる方針を示した。

ただ欧州委は今月 4 日、高い手数料を課し、自社のアプリストア以外から音楽配信アプリが取得できないようにしたのは EU 競争法(独占禁止法)違反にあたるとして、アップルに 18 億 4 千万ユーロ(約 2,997 億円)の制裁金を科すと発表。 デジタル政策のトップを務めるベステアー上級副委員長は「7 日以降、アップルは音楽配信アプリだけでなく全てのアプリについて、囲い込むことができなくなる」と釘を刺した。

違反には売上高 10% の制裁金

今後、各社が提出した対応策が DMA に基づいているか調査され、違反と判断されれば、全世界売上高の最大 10% の制裁金が科される可能性がある。 TikTok (ティックトック)の中国の親会社、バイトダンスは昨年 11 月、ゲートキーパーに指定されれば、個人データを使って利用者の人物像を浮かび上がらせる「プロファイリング」など、ティックトックのビジネスの根幹に関わる戦略的な情報の開示が求められ、「収益に大きな損害を与えることになる」として、欧州第一審裁判所に指定の取り消しを申し立てている。 (ブリュッセル = 牛尾梓、asahi = 3-7-24)


自治体システム、標準化期限「困難」が 1 割 IT 事業者に依頼が集中

地方自治体の業務効率化のため、システムの標準化をめざす政府の取り組みで、全国の自治体の約 1 割が、期限とされる 2025 年度末までの対応が難しいことが分かった。 デジタル庁が 5 日発表した。 さらに増える恐れもあり、デジタル庁は自治体への支援を強化する方針だ。 全国の都道府県と市区町村計 1,788 団体のうち、移行が間に合わないシステムを抱える自治体は 171 団体あった。 6 府県や全 20 の政令指定市のほか、東京都の 10 特別区、一般市 71 団体などが含まれる。 期限内の移行が難しい可能性が高いものの「保留」とされた自治体も 50 団体あった。

河野太郎デジタル相は 5 日の閣議後会見で、「最終的にしっかり移行ができることが大事。 いまの段階で多い、少ないを言っても始まらない。」と述べた。 デジタル庁が自治体と事業者の間に入り、価格の適正化に努めるなどの支援を行う考えを示した。 戸籍や住民票、税や年金などの業務に使うシステムはこれまで、自治体が IT 事業者にそれぞれ委託するなどして独自の基準で仕組みを構築してきた。 政府は、基幹 20 業務の仕様を標準化することでコストの低減やデータ連携を円滑にすることをめざしている。 データを効率的に遠隔管理する「ガバメントクラウド」の推進とともにデジタル庁が担当する。

移行にかかる一時的な費用は総務省が設けた約 7 千億円の基金で手当てする一方、運用費用は基本的に自治体が負担する。 政府は、運用費は従来より 3 割削減できるとしている。 しかし、期限を一律で「25 年度末」としたことで、自治体から IT 事業者へ依頼が集中。 事業者の対応が間に合わなかったり、事業者が撤退を決めたりした自治体があることも分かり、政府は昨年 9 月、デジタル庁と総務省が「移行困難」と認めた場合には、期限に間に合わなくても容認する方針に転換した。(渡辺淳基、小手川太朗、asahi = 3-5-24)