雪国の太陽光パネルは「壁面」設置の時代 冬も発電し経済メリット増

札幌市に昨年新築された住宅の南側 2 階の壁には、15 枚の太陽光パネル(容量計 3.8 キロワット)が隙間なく敷き詰められていた。 パネルは全面真っ黒で住宅の外観になじみ、遠くから見るとパネルとは気づかないくらいだ。 北海道内でも太陽光パネルを設置する住宅が増えてきた。 なかでも最近注目されているのが、屋根ではなく、外壁に垂直に取り付ける事例だ。 工務店「拓友建設(札幌市)」は昨年初めて、壁面に太陽光パネルをつけた戸建て住宅を建てた。

壁面につけたのは、積雪のある冬でも発電が期待できるからだ。 道内では勾配のほぼない「無落雪屋根」が普及しており、11 月下旬 - 2 月ごろはパネルに雪が積もって、ほぼ発電できないという課題がある。 この住宅では今冬、太陽光パネルが毎日発電し、発電量は月平均 230 キロワット時だった。 このうち、約 200 キロワット時を自宅で使い、約 30 キロワット時を売電。電気代は 1 キロワット時約 38 円で、売電単価は 16 円のため、月約 8 千円の電気代削減効果と約 500 円の売電収入があった。 妻沼澄夫社長は「想定以上の発電量だった。 これなら十分メリットがある。」と手応えを話す。

屋根と壁面の発電量の差は

壁面に設置して年間の発電量は落ちないのか。 道立総合研究機構(道総研)の 2012 - 13 年度の実証実験では、建物の南壁にパネルを設置した場合、屋根にほぼ水平に設置した場合と比べて、春 - 秋の発電量は落ちたが、年間発電量では約 5% 少ないだけだった。 道総研の阿部佑平主査は「雪面からの太陽光の照り返しを受けて、冬の発電量が思ったより多くなっているからではないか」と分析する。

阿部さんの試算では、同じ容量の太陽光パネルを設置するなら、屋根だけよりも、屋根と壁面に分けて設置したほうが経済メリットが大きいという。 屋根だけの場合、春 - 秋は太陽光で作った電気の大半を使いきれず安く売電することになるが、屋根と壁面の両方に設置すると、年間で太陽光の電気を自宅で使う量が増え、電力会社から高い電気を買う量を減らす効果が大きくなるからだ。

背景には、電気代の高騰と売電価格の低下がある。 かつては売電価格のほうが電気代よりも高かったが、いまは逆転した。 太陽光発電の経済メリットを最大限生かすには、発電した電気の自宅での使用量をいかに増やせるかが大切になる。 初期費用も従来は回収に 10 年かかったが、いまはかなり短い期間で回収できるようになった。

工務店「藤城建設(同市)」は 17 年から、壁面と屋根の両方に太陽光パネルを設置した住宅を建て始め、いま年間数棟を建てる。 壁に設置する際はなるべく南面を選ぶが、川内玄太常務は「南面は窓もつけて室内に日光を取り入れたいので、細心の注意を払いながらパネルの位置を決めている。」 カーポートの壁に設置するケースもあるという。 壁面は屋根よりも近隣の家や電柱などの影がかかりやすい点にも注意が必要だ。 パネルの一部に影がかかっただけでも、全体の発電量に影響することがあるという。 パネルはやはり真っ黒なものを使い、住宅の外観との調和を意識している。

雪国での太陽光のポテンシャル

国の 18 年の住宅・土地統計調査によると、太陽光パネルを設置している住宅の割合は全国平均で 4.1%。 北海道は全国最下位の 1.3% だった。 「太陽光は冬の積雪で発電できなくなるから、メリットがない。」 道内ではそんなイメージが先行し、普及の壁になってきた。 同じく設置率下位の県には、秋田、新潟、青森など雪国が並ぶ。 冬も発電できる壁面太陽光はそんなイメージを取り払って、太陽光の普及に向けた突破口となるかもしれない。

実は屋根のみに設置した場合でも、北海道と本州で太陽光の年間発電量にはほぼ差がないことがわかっている。 国の補助金業務を受託する一般社団法人環境共創イニシアチブによると、省エネ住宅の 22 年度の 1 キロワットあたり年間発電量では、道内は 1,119 キロワット時で全国平均の 91% だった。 道内は梅雨がないため、6、7 月の発電量が全国より多くなるためだ。

壁面太陽光は脱炭素にも貢献

国は 50 年の脱炭素達成に向けて、30 年に新築戸建て住宅の 6 割に太陽光を設置する目標を掲げる。 壁面太陽光は脱炭素にも貢献する。 壁面設置で太陽光の電気を自宅で使う量が増えれば、その分、電力会社から買う電気の量を減らせる。 現状、電力会社の電気は火力発電の比率が高いため(北海道電力では 50% 以上)、二酸化炭素の排出削減につながるのだ。

このため、道も 22 年度から掲げる独自基準「北方型住宅ゼロ」で壁面を含めた太陽光の設置を推奨している。 今後、南幌町には、北方型住宅ゼロのモデル住宅を並べた「ゼロカーボンビレッジ」を建設し、全棟で壁面に太陽光を設置する。 近い将来、壁面太陽光の様々なデザイン事例がお目見えする予定だ。 (新田哲史、asahi = 4-20-24)


中国の 2 億 7,000 万人、沈みゆく都市に居住 新研究

米学術誌「サイエンス」に 18 日に発表された研究によると、中国の人口の 29% にあたる 2 億 7,000 万人が居住する都市部の半数近くが年間 3 ミリ以上沈下しているという。 6,700 万人は毎年 10 ミリ以上沈下している土地に住んでいる。 研究者らは、中国の地下水汲み上げのまん延が地盤沈下の主な要因の一つだと指摘する。

都市では地下の帯水層から水を汲み上げているが、その速度は地下水がたまる速度を上回っている。  この状況は気候変動による干ばつで深刻化している。 過剰な汲み上げによって地下水位が下がり、その上にある土地が沈下する。 土地は、都市自体の重量の増加によっても沈下する。 長い年月をかけて堆積した土砂の重みや重い建物が地面を押し下げることによって、土壌は自然に圧縮され徐々に沈下していく。

地盤沈下は中国だけの問題ではない。 米国ではニューヨーク市を含む数十の沿岸都市が沈下している。 オランダでは国土の 25% が沈み、海面よりも低くなっている。 世界で最も急速に地盤沈下が進んでいるとみられるメキシコ市では、1 年で最大 50 センチメートル沈下している。 海岸沿いは地盤沈下の影響がより深刻なうえ、海面も上昇していることから、より多くの土地、人々、財産を破壊的な洪水にさらされている。

この研究は、中国の沿岸部のおよそ 4 分の 1 が地盤沈下と、予測される海面上昇によって海面より低くなり、甚大な被害を受け人命が危険にさらされることを示唆している。 天津市、上海市、広州市周辺地域は、この二つの問題にさらされている。 中国の一部の沿岸地域では増大する浸水リスクから物理的に地域を保護するための堤防がすでに建設されている。 研究者によると、例えば上海市は高さ数メートルの堤防を建設したという。

研究者は「このような巨大な海岸堤防システムは地盤沈下と海面上昇の両方を考慮しても浸水のリスクを大幅に軽減する」と CNN に語り、「このような巨大な堤防システムを建設した国を私はほかに知らない」と続けた。 同氏によると、中国政府はここ数年、地下水の汲み上げを規制する厳格な法律を施行するなど、いくつかの方法で地盤沈下に対処している。 上海とその周辺地域では地下水の汲み上げを制限した結果、地盤沈下の速度を抑えられているという。 (CNN = 4-19-24)


中東・ドバイで集中豪雨 空港が水没 「人工雨が原因?」と疑う声も

温暖化と異常気象

記事コピー (6-13-23〜4-18-24)


メガソーラー発電施設で火災 パネル下から炎が … 現在も消火活動中 宮城・仙台市

宮城・仙台市のメガソーラー発電所で火事があり、15 日午後 3 時 45 分現在も消火活動中。 上空からの映像では、ソーラーパネルの下から炎が上がっている様子が複数で確認できる。 15 日午後 1 時 40 分ごろ、仙台市青葉区の「西仙台ゴルフ場メガソーラー発電所」の管理会社から、「白煙が上がっている」と 119 番通報があった。 現在、消防がポンプ車など 20 台以上を出して消火中で、これまでのところ、けが人は確認されていないという。 この場所はもともとゴルフ場で、2016 年からメガソーラー事業を行う企業に貸しており、現在、発電稼働しているという。 (FNN = 4-15-24)

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全国にもまれ…蓄電施設が燃えたメガソーラー火災 国や蓄電池メーカーなど総勢 60 人が見分、数日間の予定

鹿児島県伊佐市大口大田の大規模太陽光発電所(メガソーラー)で 3 月 27 日に発生した火災の合同実況見分が 9 日、始まった。 伊佐湧水消防組合と伊佐湧水署を中心に、総務省消防庁の消防研究センター(東京)、経産省、蓄電池メーカーから総勢 60 人以上が参加。 ソーラーパネルや全焼した蓄電施設などの現状を確認しながら、火元や出火原因などを調べていた。 実況見分は数日にわたって行われる。 初日は午前 9 時ごろから午後 5 時半すぎまで実施。 蓄電施設の周囲を重機で片付け、消防隊員や専門家らが施設内に立ち入っていた。 パネル下ものぞき込むなど慎重に調査していた。

経済産業省九州産業保安監督部(福岡市)によると、メガソーラーの建物火災は全国的にも珍しい。 火災は、リチウムイオン蓄電池など蓄電設備が入った倉庫から出火し 1 棟全焼した。 当時、倉庫内は煙で視界が悪く、隊員が排煙機器のホースで煙を排出。 いったん止めて、ホース位置を調整していたところ爆発した。 燃え方が激しく、感電の恐れがあり放水できず鎮火まで 20 時間を要した。 消防隊員 4 人が負傷し、うち 2 人が顔や手に中等症のやけどを負い現在も入院中という。 (南日本新聞 = 4-9-24)


欧州で原発の運転停止相次ぐ、再生可能エネルギー急増で需要低下

→ フランスとスペインの電力価格、ほぼゼロに - 週末にはマイナスも
→ EDF は6カ所の原発を稼働停止、長期で締め出し進む見通し

再生可能エネルギーの促進が、欧州の原子力発電業界に追い打ちをかけている。 化石燃料に依存しない電力の生産はかつてないほど急がれ、欧州の一部では依然として原発を電力政策の中核に据えている。 だが、再生可能エネルギーの急増と電力価格の低下で、原発の運転にしわ寄せが及んでいる。 今後さらに厳しい時期が待ち受けている兆しもある。 エネルギー危機以来、需要は十分に回復せず、風力や太陽光の発電量は増加の一途をたどる。 これに押され、発電電力量に占める原子力と石炭火力のシェアはいずれも低下している。

エネルギー・電力市場分析会社ストームジオ・ネナのシニアアナリスト、シガード・ペデルセン・リエ氏は「太陽光と風力に極めて不利な状況が長期間続くか、強い熱波がない限り、現在の電力価格では従来型のベースロード電源は苦しいだろう」と指摘した。 フランスや英国などの国は地球温暖化対策の重要な要素として原子力技術を位置づけ、原発新設に巨額の資金を投じる計画だ。 昨年末にドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第 28 回締約国会議 (COP28) では、仏英のほか米国や日本、韓国、アラブ首長国連邦 (UAE) など 20 余りの国が、2050 年までに世界の原子力発電を 3 倍に増やすことを呼び掛けた。

それでも長期的に、原発はますます締め出されかねない警戒すべき兆しがある。 フランス電力 (EDF) は点検や修理のため長期にわたり運転を停止していた複数の原発を再稼働させつつあったが、既に出力の低下や運転の休止、停止期間の延長に迫られている。 週末には電力価格がマイナスとなる事態が発生、6 カ所の原発で運転を停止した。

スペインの電力価格は 5 日、2013 年以来の水準に低下した。 同国の電力取引価格は数週間にわたりゼロをかろうじて上回る水準が続き、アスコ原発 1 号機と 2 号機は過去 5 週間に通常ベースで出力を下げている。 北欧では、原発の出力低下はより頻繁だ。 (Lars Paulsson、Francois De Beaupuy、Thomas Gualtieri、Bloomberg = 4-9-24)


離島を覆う太陽光パネル 152 万枚 「日本一」のメガソーラー本格着工へ 佐世保・宇久島

長崎県の五島列島・宇久島(うくじま)と隣の寺島(いずれも佐世保市)で計画中の国内最大級の大規模太陽光発電所(メガソーラー)が、令和 7 (2025) 年末の運転開始を目指し 5 月末にも本格着工する。 完成すれば両島の面積の 1 割超は太陽光パネルに覆われる。 地元では景観の悪化や土砂崩れの発生を懸念する声も上がっている。

島の 1 割がパネルで

計画は「宇久島メガソーラーパーク」事業で、京セラや九電工などが計約 500 億円を出資する事業目的会社「宇久島みらいエネルギー(同市)」が、約 1,500 億円を資金調達して宇久島と寺島にメガソーラーを建設する。 同社によると、両島の面積計約 26 平方キロの約 3 割を占める事業用地のうち、約 2.8 平方キロに太陽光パネル 152 万 1,520 枚を設置するといい、両島の面積の 1 割以上がパネルで覆われることになる。 年間発電量は 51.5 万メガワット時で、一般家庭 17 万 3 千世帯分に相当するとし、電力は本土との間に延長約 64 キロの海底ケーブルを敷設して九州電力へ売電する。 住民説明会資料は「日本一の規模を誇る」とうたっている。

計画を巡っては、住民団体の全国組織「全国再エネ問題連絡会」と地元住民団体「宇久島の生活を守る会」が 2 月、県と佐世保市へ公開質問状を提出。 「環境面だけでなく防災の観点からも問題がある」として事業の中止を求めている。 出力 4 万キロワット以上のメガソーラーには令和 2 年から国の環境影響評価(アセスメント)が義務づけられたが、両島の事業は既に工事計画の届け出が済んでいたため対象外。 また県のアセスは太陽光発電所を対象事業としていない。 このため、地元市長や知事、環境相の意見を踏まえた経済産業相による勧告の機会がないまま、事業が進められている。

また、事業地のうち 0.68 平方キロについて同社は 4 年 8 月と 5 年 3 月、林地開発許可の変更許可申請をしているが、県の審査結果はまだ出ていない。 同社は、自主的に環境影響評価(自主アセス)を行ったとした上で、「反対活動を行っている団体には事業者として引き続き丁寧に対応していく」としている。 工事を担当する九電工によると、昨年 11 月から本格着工へ向けた住民説明会を始め、既に作業員宿舎や変電施設、寺島の仮設浮桟橋、資材置き場などの整備工事が進んでいる。 同社は「5 月末か 6 月初めには、パネルを置く架台の設置など本格着工の見通し」としている。

初期消火は消火器で

同事業はもともと、ドイツの開発会社と京セラ、九電工などが平成 26 (2014) 年に計画を発表したが、2 年後にドイツの会社が撤退した。 また両島では風力発電開発の「日本風力開発(東京)」などによる大規模陸上風力発電計画も進行。 風車を最大 50 基(出力最大 10 万キロワット)建てる計画で、平成 26 年に環境アセスの第 3 段階「準備書」が国に提出されている。 同社は昨年、洋上風力発電事業を巡って衆院議員の秋本真利被告 = 受託収賄罪などで起訴 = に多額の資金を提供したとして、前社長が贈賄罪で在宅起訴。 同社は準大手ゼネコンの前田建設工業の持ち株会社「インフロニア・ホールディングス」に買収された。

一方、メガソーラーを巡っては今年 1 月、和歌山県すさみ町の山林火災で太陽光発電所の発電設備が延焼したほか、3 月には鹿児島県伊佐市の太陽光発電所で火災が発生、消防隊員 4 人が負傷するなどした。 太陽光パネルの火災が発生した場合について、宇久島メガソーラーの事業目的会社は「島内に 400 カ所以上配置される変電設備付属の消火器を使って、50 人ほどの保守要員が初期消火するほか、水での消火は感電リスクがゼロではないため、対策を地元消防と協議している」としている。 (sankei = 4-8-24)


日本近海 海水温 3 季連続で過去最高 冬の仙台湾に南方系の魚

日本近海の海面水温が昨年 6 月から今年 2 月にかけて、3 季連続で過去最高を更新していることがわかった。 気象庁によると、3 季連続で更新するのは 1982 年の統計開始以降初めてという。 東北沿岸では関東沿岸が北限とされる魚も確認され、漁業への影響も懸念されている。 昨年は国内外で記録的な高温だった。 気象庁によると、北・東日本の年平均気温は 1946 年の統計開始以来最も高く、西日本も 1 位タイだった。 気象庁は今夏も昨夏並みか、それ以上の暑さになる可能性もあるとみており、海の高温も続く恐れがある。

気象庁によると、日本近海の平均海面水温は昨年 6 - 8 月が 1 度、9 - 11 月が 1.2 度、昨年 12 月 - 今年 2 月が 1.1 度、平年より高かった。 これまでの平年差の最高はそれぞれ 0.8 度(2022 年)、0.7 度(1998 年、99 年)、0.7 度(99 年)だった。

北海道で大量のフグ

本州の東側の高温が顕著で、地球温暖化や、黒潮の流れの変化が影響しているという。 暖流の黒潮は、例年「黒潮続流」として房総半島沖から東に流れ日本から離れるが、特に 23 年春以降、すぐに東に流れず三陸沖を北上した状態が続いているという。 気象庁の担当者は「ここまで北上し、その状態が続くのはとても珍しい」と言う。 宮城県水産技術総合センターの調査によると、宮城県石巻市の石巻魚市場では今年、ロウニンアジやハマフエフキなど、南日本を生息域とし、関東沿岸が北限とされる魚が初めて確認された。

仙台湾・田代島の観測器では 3 月中旬の平均の表面水温は 13.5度で昨年より 4.0 度、平年より 6.3 度高かったという。 同センターの担当者は「過去に例がない水温、今後どうなるか予測できない」と話している。 水産庁によると、近年の高水温で各地の漁業・養殖業に影響が出ているという。 北海道でブリやフグが大量に捕れており、東北では冷たい水を好むサケが激減している。 ノリやワカメなどの海藻は冷たい水で育つため育成が悪くなっているという。 (宮野拓也、座小田英史、asahi - 3-26-24)


過去最高に暑かった 10 年 2100 年までに 1 千兆ドル超の被害も

世界気象機関 (WMO) は 19 日、2023 年は世界の平均気温が産業革命前よりも 1.45 度上昇し、直近 10 年間も観測史上最も暑かったと発表した。 今後、気候変動対策を取らなければ被害は 2100 年までに 1 千兆ドル(約 15 京円)を超えるとし、対策をした方が費用を抑えられるとした。 WMO によると、2014 - 23 年の平均気温は、1850 - 1900 年より 1.2 度上回った。 大気中の温室効果ガス濃度が高まったことに加え、22 年から 23 年にかけては海面水温が上昇する「エルニーニョ現象」の発生で急激な気温上昇につながったという。

国際ルール「パリ協定」の下で世界が目指す、気温上昇を 1.5 度に抑える目標に近づく中、洪水や干ばつ、山火事など気候変動との関連が示唆される被害も広がっている。 10 月にメキシコのリゾート地アカプルコをハリケーンが直撃し、150 億ドル(約 2 兆 2,500 億円)、米ハワイで 8 月に 100 人以上の死者を出した山火事では 56 億ドル(約 8,400 億円)の経済的損失を生んだという。 WMO のセレステ・サウロ事務局長は「一時的とはいえ、1.5 度にこれほど近づいたことはない」と警鐘を鳴らした。

対策を進めなかった場合には、被害額は少なくとも 25 - 2100 年に 1,266 兆ドル(約 19 京円)に上ると試算した。 一方、対策のための資金は、21 - 22 年に 1.3 兆ドル(約 195 兆円)と、19 - 20 年の 2 倍になった。 ただ、1.5 度目標に沿うには、30 年までに 9 兆ドル(約 1,350 兆円)、50 年までにさらに 10 兆ドル(約 1,500 兆円)が必要とされる。 まだまだ不足しているが、試算された被害額よりも安上がりに済むという。 (市野塊、asahi = 3-19-24)


「もしトラ」でも温暖化対策「ひっくり返せない」 米大統領上級顧問

米バイデン政権のジョン・ポデスタ上級顧問が 13 日、都内で朝日新聞などのインタビューに応じた。 約 3,700 億ドル(約 55 兆円)を再生可能エネルギーや電気自動車の補助などに充てる「インフレ抑制法 (IRA)」に言及。 11 月の大統領選で気候変動対策に後ろ向きなトランプ元大統領が再選した場合でも「すべてをひっくり返すことは不可能だ」と述べた。 米国の新たな温室効果ガスの削減目標は、次の政権に持ち越さず年内に公表することも明らかにした。

ポデスタ氏は 2022 年 9 月から IRA など国内の温暖化対策を担当。 今月、ケリー気候変動担当大統領特使の退任に伴い、業務を引き継いだ。 ポデスタ氏は、IRA が、所得の低い地域に産業と雇用をもたらしており、共和党が優勢な地域も恩恵を受けていると強調。 「政治的議論がどうであれ、一般の人はクリーンエネルギー路線を支持している」と述べた。 米国は 30 年までに温室効果ガスを 05 年比で 50 - 52% 減らす目標を掲げている。 国連に提出することになっている新目標について「米国が早めに発表することによってほかの国を促せるか」を見極めた上で、「年末までには出せると思う」と話した。

世界の 3 割の排出量を占める中国について、ポデスタ氏は、新たな石炭火力発電の建設をやめるだけでなく、減らしていくよう求めることが必要だとし、「排出量を減らすため、圧力をかけ続ける」と述べた。 中国の担当者とすでにオンラインで会談しており、近く対面する合意をしたという。 また、充電池や重要鉱物などで、大きなシェアを占める中国に頼らないサプライチェーンを国内や日本を含めた友好国でつくると話した。

岸田政権や産業界は、二酸化炭素の回収・貯留や水素・アンモニアの活用などの新たな技術を強調している。 原発活用にもかじを切った。 ポデスタ氏は再エネや蓄電池と比べて経済性に疑問があるとし、「いつ実質排出ゼロの社会にたどり着けるか、スピードとスケールが問題だ。 すでに成熟して、拡大可能な技術がある」と話し、洋上風力などの再エネに力を入れるべきだとの考えを示した。 (香取啓介、asahi = 3-13-24)

John Podesta : 1949 年、米イリノイ州シカゴ生まれ。 クリントン政権で大統領首席補佐官、オバマ政権で気候変動問題担当の顧問。 2016 年の大統領選では、民主党候補のヒラリー・クリントン陣営の選挙対策本部長。 シンクタンク「米進歩センター」を創設し、所長を務めた。


マーシャル諸島の米実験場に高波 地球温暖化、全島浸水の予測も

米軍が核実験を繰り返した太平洋の島国マーシャル諸島で、核搭載可能な弾道ミサイルや迎撃システムの開発の中核となってきたクエゼリン環礁の米軍実験場が水害の危機に直面している。 1 月には同環礁ロイ・ナムル島の軍施設を高波が襲い、甚大な被害が出た。 将来の地球温暖化による海面上昇で地下水源の喪失や全島浸水に見舞われると予測されている。 米軍は同環礁で最大の南端のクエゼリン本島や 2 番目に大きい北端のロイ・ナムル島などから住民を締め出して租借。 環礁海域を利用し、米本土との間で長距離弾道ミサイルを発射し、迎撃する実験を繰り返してきた。

米軍によると、ロイ・ナムル島は 1 月 20 日の高波で軍施設や兵員宿舎を含む広範囲の浸水が起き、飛行場も閉鎖に追い込まれた。 本島に避難させた。復旧には「数カ月かかる可能性がある」という。 米地質調査所の論文では、悪いシナリオによればロイ・ナムル島で、今世紀中に高波で毎年、島全体が浸水すると予測した。 (クエゼリン環礁・Kyodo = 3-3-24)


国内最大級の水素製造施設 脱炭素に向けサントリー白州工場で活用へ

山梨県北杜市白州町にある大手飲料メーカー・サントリーの天然水工場兼ウイスキー蒸溜(じょうりゅう)所に、再生可能エネルギーで製造した水素を供給する大型施設の起工式が20 日、工場の隣接地であった。 国内最大規模、世界でトップクラスの施設となり、水素を年間 2,200 トン製造する能力を持つ。 2025 年度の稼働をめざす。 使用するのは、山梨県などと進める「P2G システム」。 太陽光などの再生可能エネルギー由来の電力を活用し、水の電気分解によって二酸化炭素を出さずに水素を製造する技術だ。 県内で実証事業が続くなど、カーボンニュートラル社会の実現に向けて国内外から注目されている。

大型施設の建設地はサントリー工場に隣接する 3 千平方メートルの県有地。 県やサントリーホールディングス (HD)、東レ、東京電力 HD、日立造船などがプロジェクトに参加する。 総事業費約 170 億円のうち、国のグリーンイノベーション基金事業として約 110 億円の補助を受ける。 大型の建物を 2 棟建設し、ウイスキー蒸溜所と天然水工場につながる長さ約 2 キロのパイプラインで、製造した水素を有償で供給する。 当面は天然水工場で殺菌用の蒸気を発生させる燃料として使い、将来的にはウイスキー蒸溜所のボイラーでも使いたいという。 現在は燃料に液化天然ガスを使用しており、導入後は二酸化炭素を年間 1 万 6 千トン削減できる見込み。

サントリー HD の藤原正明常務執行役員は「お客様と直接接点のある商品を作る会社が、しっかり水素に取り組んでいることを社会にアピールできるチャンスになる」と話す。

世界トップクラスの水素利用エリアに

県によると、水素の製造に使うのは普通の水で、再生可能エネルギーを最大限活用するのにふさわしいシステムという。 地元の太陽光や水力による電力を活用し、エネルギーの「地産地消」につなげる計画だ。 長崎幸太郎知事は起工式のあいさつで「世界トップクラスの水素利用エリアが白州の地に生まれることになる。 このシステムが国内外に広がり、水素社会の実現につながるよう取り組みを進めたい。」と述べた。 出席した上月良祐経済産業副大臣は「世界各国ではカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速している。 中でも水素は必要不可欠なエネルギーであり、水素プロジェクトのまさに旗手として大きな一歩を踏み出した。」と評価した。 (羽場正浩、asahi = 2-21-24)


テスラが産廃の不法投棄でカリフォルニア 25 郡に訴えられる

罰金軽い〜。 Tesla (テスラ)が製造やメンテで出る有害物質を普通ゴミと混ぜて不法投棄していたことがわかり、シリコンバレーをはじめとするカリフォルニア州内 25 の郡に訴えられました。 何を捨ててたの? サンフランシスコ地方検察局が同社のゴミ出しを抜き打ちチェックしたところ、本来であれば危険物・有害物質として分けて保管し、専門の処理施設に移送しなければならないはずのゴミたちが一緒くたに出されていることが判明した次第です。

具体的には使用済みのバッテリー、オイル、ブレーキ液、鉛酸バッテリー 、エアロゾル、不凍液、洗浄液、プロパン、塗料、アセトン、液化石油ガス、接着剤、ディーゼル燃料などなど。 製造拠点のフリーモント工場からは自動車の金属パネル溶接スパッタ廃棄物(銅含有のおそれあり)、廃ペンキ混合カップ、下塗り塗料で汚れた拭き物やデブリなんてのも出てきて、ほかの郡でもサービスセンターや充電センターを調べてみたら、シリコンバレーのみならず、遠くはモントレー、オレンジカウンティ、プレイサー、リバーサイド、サンディエゴ、サンホアキンカウンティでも日常的に行なわれていたんですね。 (satomi、Gizmodo = 2-11-24)


「捨てた」再エネ電気、45 万世帯分 出力制御急増で 朝日新聞集計

太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」が 2023 年に急増し、1 年間に制御された電力量が全国で計約 19.2 億キロワット時に達したことが朝日新聞の集計でわかった。 過去最多だった 21 年の 3 倍超で、約 45 万世帯分の年間消費電力量に相当する。 再生可能エネルギーを生かし切れていない。

電気は発電量と使用量をそろえないと周波数が乱れて大停電になるおそれがある。 発電量が過剰になる時に、発電量と使用量のバランスを保つため大手電力が再エネの発電を一時停止するのが出力制御だ。 国のルールでは、まず二酸化炭素 (CO2) の排出量が多く、出力を上げ下げしやすい火力を減らし、余った電気を他の地域に送る。 次にバイオマス、太陽光・風力の順で再エネを抑える。 出力を簡単に調整できないとされる原発は最後となる。

出力制御は、太陽光の導入が早かった九州で 18 年秋に始まり、22 年春以降に東京電力管内を除く全国に広がった。 22 年は中国、四国、東北、北海道、23 年は沖縄、北陸、中部、関西の各電力エリアで始まった。 大手電力が 23 年末までの需給実績を公表したのを受けて、送電網が別の沖縄と未実施の東京を除く 8 社の太陽光と風力の制御量を集計した。 23 年 1 - 12 月の制御量は約 19.2 億キロワット時で、過去最多だった 21 年(約 5.8 億キロワット時)の約 3.3 倍、22 年(約 3.0 億キロワット時)の約 6.5 倍だった。 全体の 7 割を九州が占めた。 (asahi = 2-10-24)


木を植える遊牧民、支援する欧州 アフリカで「緑の長城」実現するか
- 「緑の長城」 アフリカの挑戦 -

温暖化が進むサハラ砂漠南部のサヘル地域に木々を植え、「緑の長城」をつくる - -。 サヘルでは、東西約 8 千キロにわたる「グレート・グリーン・ウォール (GGW)」構想が進んでいる。 はたして、実現できるのか。 構想の最西端の地セネガルで現状を探った。 セネガル北部ウィドウは、遊牧民たちが暮らす集落だ。 低木がまばらに並ぶサバンナで、家畜のウシやヤギが草をはむ。 この国で最初に GGW 構想の植林が始まった場所だ。 開始時の 2007 年に植えられた木は、4 メートルほどの高さに育っていた。 強さ増す熱風に、乾く大地。 遊牧民たちは木を植え始めた。

世界平均の 1.5 倍の速さで気温上昇

「雨が減り、草が生えなくなり、昔ほどウシを飼えなくなった。 だけど、植林事業があるから生活していける。」 遊牧民フラニのセイバン・ソウさん (64) は、そう言って笑った。 ウィドウでは遊牧民フラニの人たちが、木の世話や植林を手伝う。 植林されているアカシア・セネガルという木から樹脂「アラビアゴム」を採取し、市場で売って利益を得ている。地元では伝統薬などに利用されるが、日本でも絵の具や食品添加物としても使われているものだ。

サヘルは、もともと雨が少なく、農耕に適さない地域もある。 一方で、広大な草原が広がり、家畜を飼う遊牧民たちにとって重要な暮らしの場となってきた。 しかし、国連によると、サヘルは世界平均の 1.5 倍の速さで気温が上昇。 乾期にサハラ砂漠から吹く熱風「ハルマッタン」は強さを増し、雨が減っている。 セネガルで GGW の代表を務めるオマル・バー氏は「気候変動が移民や難民の問題につながっている」と指摘する。 温暖化により、遊牧民にとっての資源である草原が縮小。 農耕民も作物の収穫量が減り、生活の糧を失っている。 その結果、欧州への移民を試みたり、過激派組織にリクルートされたりする人たちが後を絶たない。

植林が仕事に 移民の震源地の変化

アフリカから押し寄せる移民の問題や、現地での過激派組織の台頭に頭を抱えるのが欧州諸国だ。 これらの問題の解決策として、GGW の支援に重点を置く。 多くのサヘル諸国の旧宗主国であるフランスのマクロン大統領は 21 年 1 月、気候変動をめぐる国際会議で国連や世界銀行などとともに、GGW 構想を加速させるために 143 億ドル(約 2 兆 970 億円)を支援すると表明。 また、欧州連合 (EU) は 21 年 11 月、毎年 7 億ユーロ(約 1,110 億円)の支援をすると発表した。

GGWは、単なる植林活動ではない。 植林を通して雇用を生み、地域経済の発展もめざす。 セネガル東部の小さな町バケルでは、18 - 45 歳の 115 人を雇用。 種から苗を作り、畑を耕し、木を植える活動に参加して、賃金を得ていた。 家族を養える分だけの安定した収入を得られるため、移民として欧州に渡った人が戻り、GGW に従事するケースもある。 シェイク・フェイさん (41) は 12 年間、移民としてギリシャに住んだ経験がある。

だが、定職に就けず、理想の生活とはほど遠かった。 「移民が成り上がるチャンスはなかった。 家族とも離ればなれで、二度と会えないと思った。」 そこで 3 年前に帰郷し、GGW の植林事業への参加を決めた。 いま、故郷で畑を耕し、汗を流す。 「今が一番充実している。 環境問題に貢献でき、子どもの教育費も稼げる。」と笑う。 元通りにならないこともある。 一度、欧州をめざした移民の出戻りは、親族にとっては「恥」とみなされる。 帰郷後は、両親と会えないままだという。

壮大な計画、資金難のおそれ

国連によると、GGW は当初、総額 80 億ドル(約 1 兆 1,730 億円)を投じて、植林する構想だった。 30 年までに 1 億ヘクタールの荒れ地を緑にし、その過程で 1 千万人の雇用を生む。 年間 2 億 5 千万トンの炭素を吸収することを見込む。 だが、07 年に始まった構想は想定通りに進んでいるわけではない。 予算は想定外に膨らみ、開始から 15 年が過ぎたが、全体の「15% ほどしか植林は進んでいない(オマル氏)」とみられる。 セネガルでも、果物畑をつくるために植林していた一部地域の木々が、水不足で枯れ果ててしまった。

構想を進める間も、気候変動は待ってくれない。 一進一退の状況のまま、資金不足に陥る可能性もある。 GGW 構想は支援によって成り立っており、それ自体がお金を生むわけではない。 援助がなくなれば、地域の雇用はなくなり、環境だけでなく、地域の不安定化にもつながる。 「たしかに壮大な構想かもしれない。 でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。 地球規模の危機を乗り越えるためにも、国際社会の支援が必要だ。」 オマル氏は、そう呼びかける。(セネガル北部ウィドウ・今泉奏、asahi = 2-4-24)

グレート・グリーン・ウォール (GGW) : アフリカ大陸のサハラ砂漠南部に広がるサヘルの砂漠化を止めるため、約 8 千キロにわたり植林する構想。 2007 年にアフリカ連合 (AU) が主導して始まり、サヘル諸国で進んでいる。


生態系、全国調査を 海藻・海草など、ためる炭素 - - ブルーカーボン 研究者ら寄付募る

地球温暖化の原因となる二酸化炭素 (CO2) を、海藻などの「藻場」がどのように吸収・貯留しているのか - -―。 海に取り込まれる炭素「ブルーカーボン」とその生態系を解明する全国調査に向けて、北海道大や筑波大の研究者らが、インターネットで寄付を募るクラウドファンディング (CF) を始めた。 沿岸の浅い海に広がる「藻場」では、海藻や海草が光合成をすることで、大気中の CO2 が吸収され、その一部は海底などに貯留される。 こうして海の生態系に取り込まれた炭素はブルーカーボンと呼ばれ、その働きが世界的に注目されている。

しかし、日本列島は南北に長く、沿岸には様々なタイプの藻場が存在する。 藻場を構成する生物の種類によって、炭素の吸収や貯留の仕組みはそれぞれ異なる。 その働きは季節によっても大きく変動するとみられている。 実態を明らかにするため、藻類学や生態学など様々な学問分野の研究者が集まり、日本の沿岸に広がる「ブルーカーボン生態系」の全国調査プロジェクトを昨年夏に立ち上げた。

計画では、北海道から沖縄まで全国の藻場を対象に、炭素循環のメカニズムについて実態解明を進める。 藻場は、さまざまな生き物を育む「海のゆりかご」としても重要で、生物多様性に関する調査も同時に進める方針だ。 CF は 1 千万円を目標額とし、フランスの海洋環境調査団体「タラ・オセアン財団」の日本支部が事務局をつとめる。 集めた資金は、調査の際に必要となる経費に使いたいという。

国内各地では、沿岸の藻場が消失する「磯焼け」と呼ばれる現象が深刻化している。 プロジェクトのメンバーの和田茂樹・筑波大助教(生態学)は「一連の調査・研究を通じて、磯焼けのメカニズムの解明も進めたい」と話している。 調査の実現に向けた CF は、2 月 16 日までの予定。 (山本智之、asahi = 1-17-24)

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海藻などの「ブルーカーボン」 CO2 吸収量に算定へ 政府方針

政府は、海藻や海草などに吸収された二酸化炭素 (CO2) 「ブルーカーボン」を正確に算定し、温室効果ガスの削減量として国連に報告する取り組みを本格化させる。 政府が認証する削減実績「クレジット」として民間投資を呼び込むことも狙う。 伊藤信太郎環境相が 9 日に中東ドバイで開催中の国連気候変動会議 (COP28) で表明する。

ブルーカーボンは、マングローブや海草・海藻などが光合成をすることで吸収・固定された CO2。 日本は温室効果ガスを 2030 年度に 13 年度比で 46% 削減する目標を掲げているが、排出量から森林の吸収量を差し引いている。 ここに海草などの分布状況から算定した吸収量も含める。 来年 4 月に国連に世界で初めて海草・海藻の吸収・固定量の算定結果を報告し、次の排出量公表から使う見込み。 30 年には吸収量のうちのブルーカーボンは 1 割程度になるとみている。 クレジットとして企業に買ってもらうことや、海外との算定方法の共有も目指す。 海洋生態系の保全や、漁業、観光などとの相乗効果も期待できるという。

また、世界の温暖化対策のため、人工衛星「いぶき」を使った温室効果ガスの排出量推計で、アジアやインド太平洋地域の国での削減目標づくりを支援する。 現在モンゴルと始めているが、30 年までに 6 カ国まで増やす。 気候変動で深刻化する災害に適応するための「早期警戒システム」も支援する。 ウェザーニューズや日立製作所などと連携し、高精度の気象や洪水予測を提供。 25 年までに東南アジア諸国連合 (ASEAN) の半数での導入を目指す。

COP28 は 8 日から閣僚級交渉が始まった。 成果文書案では「化石燃料の段階的廃止(フェーズアウト)」を打ち出すのか、「排出対策のない」と対象を限定する言葉を入れるのかが焦点になっている。 (ドバイ = 市野塊、asahi = 12-8-23)