コンビニ大量出店時代の終わり 売上高は最高、でも店舗数の減少続く コンビニの国内店舗数の減少が止まらない。 前年同月を下回る状態が 1 年以上続いている。 過去にも一時的に前年割れしたことはあるが、年間を通じて前年を割り込むのは比較できる 2005 年以降では初めてだ。 何が起きているのか。 コンビニ店舗は長く「飽和状態」と言われながらコロナ下でも微増傾向だった。 だが、日本フランチャイズチェーン協会が発表した 1 月の統計では、国内のコンビニの全店舗数は前年同月より 0.2% (138 店)減の 5 万 5,657 店。 前年を下回るのは、これで 22 年 6 月から 20 カ月連続だ。 同協会に加盟するセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの大手 3 社にミニストップなどを加えた 7 社の店舗数。 ただしミニストップ以下は国内で 2 千店に満たず、1 万 - 2 万店台の大手 3 社が大半を占める。 大手で唯一増えているのは … 大手がホームページで公表している店舗数の推移を見ると、減少傾向なのはファミリーマートだ。 サークル K サンクスとの統合で 16 年に 1 万 8 千店を超えたが、不採算店の閉鎖も進めた。 コロナ禍前後は 1 万 6,500 店前後で推移していたが、23 年はその水準を下回る月が増え、今年 1 月は前年より 236 店減の 1 万 6,289 店だった。 ファミマによると建物の賃借権を失った店やフランチャイズ化が難しい直営店を閉鎖したことに伴うものだといい、「新陳代謝の一環」という。 既存店を好立地に移す「ビルド・アンド・スクラップ」を進め、「ただ数を追うのではなく、質を伴った出店を強化する(幹部)」方針だ。 最大手のセブン-イレブン・ジャパンの出店のペースも以前より緩やかになっている。 10 年前は年間 1 千店ペースで増えていたが、今年 1 月は前年より 178 店増の 2 万 1, 501 店だった。 永松文彦社長は「街の変化にあわせて既存店の好立地への移転を進める」との考えを示している。 業界全体の 23 年の国内年間売上高は 11 兆円を超えて過去最高を更新するなど一見、堅調だ。 それでも流通経済研究所の池田満寿次・上席研究員は「地方を中心に収益が見込める土地が減っている。 高齢化や人手不足も進み、加盟店が新規出店に二の足を踏む環境になっている」とみる。 7 社の店舗数は 19 年 11 月 - 20 年 3 月にも前年を割った。 このときは他業態との競争が激化したほか、人手不足に苦しみ 24 時間営業をやめた加盟店に社会の関心が集まるなどして大手が出店を抑えた影響が出た。 ここにきて加盟店は人件費や光熱費の上昇に直面し、経営環境は厳しさを増す。 コンビニに詳しい東レ経営研究所の永井知美・チーフアナリストは「本部側が大量出店で稼ぐビジネスモデルを転換せざるを得なくなった。 もう大量出店時代は終わった。」と指摘する。 食堂や休憩室にコンパクト店 国内では従来型の店舗を大量出店する将来像が描きにくく、質の強化を急ぐコンビニ。 流通経済研究所の池田さんは「これまでとは異なる客層を呼び込むような新たな店舗や商品、サービスを本部が開発できるかどうかが、今後の活路を開くカギになる」と話す。 池田さんが新たな需要を開拓する動きとして注目する一つが無人決済店だ。 セブンは今年から、食堂や休憩室の一角を利用して 50 平方メートル程度でも営業できるコンパクト店を本格展開する。 商品数は一般的な店の 3 分の 1 ほど。 客が自分のスマホで決済する「スマホレジ」で省人化を図り、営業時間も施設にあわせる。 「社員食堂代わり」としての需要を見込む。 無人決済店はファミマが先行している。 企業の福利厚生のニーズにも対応し、すでに商業施設や物流施設の社員の休憩スペースやオフィスビルなど 30 カ所以上に出店を広げている。 学食が撤退した学校からも引き合いがあるという。 KDDI と三菱商事の共同経営に移るローソンは、約 2,200 ある au ショップなどでローソン商品を販売することを検討するほか、デジタルや通信を生かした新サービスの開発も目指す。 竹増貞信社長は「目指すはアジアの『GAFA "L" (ガーファル)』だ」と巨大 IT 企業とローソンの頭文字をつないだ造語を強調。 ネット検索に欠かせないグーグルなどと並ぶ便利さを提供して生き残りを目指す。 (末崎毅、asahi = 3-21-24) 食料求め 700 人 … 生活保護申請、4 年連続で増加 物価高が追い打ち 2023 年の生活保護の利用申請は 25 万 5,079 件で、前年と比べて 1 万 8,123 件 (7.6%) 増えた。 申請件数の増加は 4 年連続。 厚生労働省はコロナ禍に加えて、物価高の影響が押し上げたとみている。 同省が 6 日、昨年 12 月分の利用状況(概数値)を明らかにした。 同時に公表された 22 年度分の確定値とあわせて、朝日新聞が集計した。 この 10 年で申請件数が最も多かったのは 14 年の 24 万 5,664 件。 その後は 5 年連続で減ったが、20 年から増加に転じた。 月別でみても、昨年 12 月の申請件数は 12 カ月連続で前年同月の水準を上回った。 連続増加は 12 年度に調査結果を毎月公表し始めて以降で最長に。 生活保護を受けている世帯は昨年 12 月時点で 165 万 3,778 世帯と、過去最多を更新した。 同省によると、生活保護を始めた理由で最も多い「貯金等の減少・喪失」は 18 年度は 38.8% だったが、年々上昇。 21 年度は 44.1%、22 年度は 46.1% まで拡大した。 消費者物価指数の伸びも踏まえ、同省保護課は申請増の要因を「コロナ禍に加え、物価高の影響も加わった」と分析する。 困窮者の支援団体「勤め人や比較的若い人らも …」 困窮者の支援団体「新宿ごはんプラス」は、毎週土曜日に東京都庁前で食料品を配るが、この 1 年ほど 600 - 700 人が食料を求めて並ぶようになった。 コロナ禍の前は100 人弱だったといい、同団体共同代表の大西連さんは「人数が増えたのは明らかに物価高の影響。 生活保護を受けている人や高齢者のほか、勤め人、比較的若い人らも家計を助けるために来ている場合が多いようだ。」と話す。 2 月 24 日の配布にはアルファ米 2 食、薄焼きせんべい 1 袋、クラッカー、キュウリなどが入ったセットを求め、688 人が列をなした。 自宅から 30 分かけて歩いてきた 50 代女性は、約半年前まで企業の正社員だったが解雇されたという。 「今は収入がないので助かる」と話し、別の団体が JR 池袋駅近くで開く炊き出しへと向かった。 コロナ禍の影響も長引く。 コロナ禍で困窮した世帯に政府が無利子・保証人なしでお金を貸した「特例貸し付け」の返済は昨年 1 月から開始。 生活再建を支援する全国社会福祉協議会の担当者は「借り受けた世帯の多くはコロナ前からギリギリの生活水準にあり、物価高騰が追い打ちをかけている」と指摘する。 構造的な課題も残されたまま。 生活保護を受けるうち高齢者世帯は 23 年末時点で 55% と、20 年前から約 10 ポイント上昇し、今後もさらに膨らむ恐れがある。 公的年金は、将来世代の給付水準を確保するため、支給額を抑制する「マクロ経済スライド」という措置がとられている。 物価上昇により支給額は増えても、実質的な価値は目減りすることになり、現状のままでは将来的には基礎年金は約 3 割落ち込むと見込まれる。 今後、低年金者が生活に行き詰まれば生活保護の必要に迫られることになる。 (関根慎一、asahi = 3-6-24) 2023 年の出生数 75 万人 減少加速 婚姻は戦後初の 50 万人割れ 2023 年に生まれた子どもの数(外国人を含む出生数)は、75 万 8,631 人で 8 年連続で減り、過去最少となった。 婚姻数は 48 万 9,281 組で、戦後初めて 50 万組を割った。 出生数は前年に初めて 80 万人を下回ったが、減少スピードに拍車がかかっている。 厚生労働省が 27 日に公表した 23 年の人口動態統計(速報)で明らかになった。 出生数は、前年比で 4 万1,097 人減。 速報値ベースで出生数が 100 万人を切ったのが 17 年。 以来、3 - 5% 程度で減少し、22 年には 80 万人を割った。 23 年の減少率は前年比 5.14% で、22 年(同 5.12% 減)よりわずかに拡大した。 国立社会保障・人口問題研究所が昨年 4 月に公表した将来推計人口(外国人を含む)では、23 年は 76 万 2 千人。 30 年ごろまで横ばいで推移した後、緩やかに減少し、35 年に 76 万人を割って75 万 5 千人になると推計した。 今回の出生数は、推計より 12 年早い。 厚労省は、出生数の低下は複数の要因が絡み合っているとした上で、「コロナ禍の影響も考えられる」とした。 23 年の婚姻数は、前年比 3 万 542 組減。 減少率は 5.9% だった。 50 万組を下回るのは 1933 年以来となる。 コロナ禍の 20 年に 12.7% と大きく減った婚姻数は、22年に 1.1% 増となったが、再び減少に転じた形だ。 日本の場合、結婚と出産の結びつきが強いとされ、今後の出生数にも大きく影響しそうだ。 今回公表の速報値は、23 年 1 - 12 月に国内で生まれた日本人と、外国人の子ども、海外で生まれた日本人の子どもの合計。 国内で生まれた日本人に絞り込んだ出生数(概数)は例年 6 月に公表される。 同省の計算式に当てはめて算出すると 23 年は 72 万人台となる。 政府は少子化対策として「こども未来戦略」を昨年末に閣議決定。 児童手当の大幅な拡充や財源確保策を盛り込んだ法案を今国会に提出している。 (高橋健次郎、asahi = 2-27-24) ◇ ◇ ◇ 18 歳の新成人 106 万人、前年より 6 万人減 過去最少を更新 2024 年 1 月 1 日現在の新成人人口(05 年生まれの 18 歳)が 106 万人で、前年の 18 歳と比べると 6 万人減少したとの推計を総務省がまとめた。 新成人人口は過去最少を更新した。 また、24 年の「年男・年女」となる辰年生まれの人口は、推計 1,005 万人。 成人年齢は 22 年 4 月 1 日から 18 歳に引き下げられた。 新成人は男性 55 万人、女性 52 万人で、総人口(1 億 2,413 万人)に占める割合は 0.86%。 辰(たつ)年生まれは男性 488 万人、女性 517 万人。 十二支別では申(さる)年と並んで 3 番目に少ない。 年代別では、48 歳になる人が 180 万人で最も多く、次いで 72 歳と 60 歳になる人が共に 163 万人となった。 (鈴木友里子、asahi = 12-31-23) ◇ ◇ ◇ 少子化加速 今年生まれた子ども 72 万 6 千人、最少に 朝日新聞推計 2023 年に国内で生まれた日本人の子どもは、推計で 72 万 6 千人程度になることがわかった。 国と同じ方法で朝日新聞が計算した。 22 年には統計のある 1899 年以降で初めて「80 万人割れ」したが、23 年も過去最少を更新する見通し。 少子化に歯止めがかからない状況だ。 厚生労働省が 1 年間の出生数の推計に使う計算式に、23 年 1 - 10 月の速報値などの統計をあてはめて算出した。 その結果、23 年の出生数は 72 万 6,416 人。 22 年の確定数は 77 万 759 人で、それより 5.8% 程度減る見通しだ。 22 年は前年比 5.0% (4 万 863 人)減ったが、減少幅はさらに広がることになる。 国立社会保障・人口問題研究所が 4 月に公表した将来推計人口は 23 年の出生数を 73 万 9 千人と見込むが、その水準も下回る。 将来推計ではコロナ禍の婚姻減などの影響が弱まり、24 年に 75 万 5 千人になった後、緩やかに減って 34 年に 72 万人台になるとみる。 日本の出生数は戦後の「ベビーブーム」で二つの山がみられる。 1971 - 74 年の 2 回目の山で 200 万人を上回り、その後は減少傾向だ。 2016 年に 100 万人の大台を割った後は、加速度的に減少している。 1 人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」は 22 年に 1.26 と、過去最低水準となった。 政府も危機感を強める。 2030 年までが「少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」と指摘。 22 日には児童手当の拡充や高等教育費の負担軽減策などを盛り込んだ年 3.6 兆円規模の少子化対策「こどもみらい戦略」を閣議決定した。 来年度からの 3 年間で充実策の大半を実施する方針だ。 (高橋健次郎、asahi = 12-24-23) 地震本部、「海底活断層」の評価公表を迅速化 能登半島地震を受けて 能登半島地震を受け、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は 19 日、海底活断層について、評価の公表の迅速化を決めた。 自治体の被害想定などに速やかに活用できるよう、すべての項目で評価が終わる前に公表する方針に改める。 今回の地震の震源とみられる能登半島沖の活断層は、研究機関の調査で存在が知られていたが、地震本部の評価が間に合わなかった。 このことが石川県の被害想定の見直しの遅れや、活断層の周知が行き届かなかった要因になった可能性があると指摘されている。 地震本部はこれまで、一定期間内に地震が発生する確率を予測した「長期評価」が固まるまで、活断層の存在も公表してこなかった。 だが今後、日本海側の海底活断層については、位置・形状やそこで発生する地震の規模が固まった時点で速やかに公表するよう改める。 能登半島の沿岸部については 2024 年度中の公表をめざすという。 地震本部・調査観測計画部会長の日野亮太・東北大教授は「(発生間隔の)評価という一段高いレベルの情報の前に、断層があるという情報を出すということが、地元の防災対策に役立つだろうと考えた」と話した。 また、マグニチュード 6.8 以上の地震を引き起こす陸域や沿岸の活断層を地域ごとに総合的に評価する「地域評価」がまだなされていない地域についても、簡易的な手法を用いて迅速に評価、公表することを決めた。 従来は過去の地震の数や規模などと活断層のデータを組み合わせていたが、まずは地震データのみで評価する。 地域評価はこれまで九州 → 関東 → 中国 → 四国の順で公表してきたが、能登半島を含む中部地方は手つかずとなっていた。 (佐々木凌、asahi = 2-19-24) 食品値上げが一段落、物価の伸び鈍化 「家計や景気には明るい材料」 1 月の東京都区部の消費者物価指数(速報値)は、値動きの大きい生鮮食品をのぞく総合指数(2020 年 = 100)が 105.8 となり、前年同月より 1.6% 上がった。 政府の補助金で電気代や都市ガス代が大幅に下がったうえ、食品の値上げが一段落。 伸び幅は 3 カ月連続で縮小し、20 カ月ぶりに 2% を割った。 専門家からは「予想以上に物価の伸びが鈍る動きが速まった」との指摘も出る。 総務省が 26 日発表した。 指数の伸びが鈍った理由は、光熱費の下落だ。 電気代は前年同月より 22.2%、都市ガス代は 24.7% 下がった。 補助金の効果で、指数の上昇率が 0.5% 分押し下げられた。 電気・都市ガス代に対する補助金は昨年 2 月の請求分から始まった。 来月からは補助金の効果が一巡するため、全体の指数はいったん上昇するとみられる。 ただ食品を中心に値上げの勢いは弱まっている。 新年度後半にかけて、物価の伸びは緩やかになりそうだ。 生鮮食品をのぞく食料は前年同月より 5.7% 上がったが、原料価格が上がった分を商品価格に転嫁する動きが徐々に進み、伸び率は 6 カ月連続で縮んだ。 とはいえ、タマゴは 24.3%、牛乳は 8.5% 上がるなど、食卓によく登場する品物の高値は続く。 これらの食品に加え、ポリ袋、ガソリンなど総務省が指定する「家計の購入頻度が高い 44 品目」の値動きをまとめたところ、5.4% 上がっていた。 前月よりは伸び率が 1.7 ポイント縮まったが、ふだんよく買う物だけに、家計の圧迫感は強い。 都区部の物価指数は全国の先行指標とされるため、全国でも 2% 割れとなるか注目が集まる。 昨年 12 月の全国の指数(生鮮食品をのぞく総合)は 2.3% の上昇と、4% 台をつけていた同 1 月に比べると落ち着いてきている。 民間シンクタンク、日本経済研究センターの予測では、24 年度は 2.19%、25 年度は 1.63% 上昇するとみる。 三菱 UFJ リサーチ & コンサルティングの小林真一郎氏は「1 月の都区部の物価は思ったよりも下げ幅が大きかった。 来月からいったん指数は上がっても、新年度後半にかけて緩やかに下がってゆく。 家計や景気にとっては明るい材料になる」と話す。 (米谷陽一、asahi = 1-26-24) ◇ ◇ ◇ 2023 年の値上げは記録的ラッシュ 2024 年は "6 割減ペース" に 帝国データバンクが、食品メーカー 195 社に調査したところ、2023 年の飲料や食品の値上げが 3 万 2,396 品目にのぼることがわかった。 年間 3 万品目を超える値上げは、バブル崩壊以降でも例を見ない規模となり、記録的値上げラッシュの 1 年となった。 一方、2024 年の値上げは、最大で 1 万から 1 万 5,000 品目になると予想され、2023 年と比べると小康状態となりそうだ。 1 月から 5 月までに値上げされるのは、オリーブオイルやゴマ製品など約 4,000 品目となる見込みで、2023 年に比べて 6 割減のペースだ。 値上げの要因は、食材価格や包装資材、物流費の上昇にあるとみられている。 さらに、円安に加え、人件費や電気ガス代などの動向次第では、値上げラッシュを再び誘発する懸念もある。 (FNN = 12-29-23) 日本旅券「世界最強」に復帰 ビザなし渡航先数、英調査 【ロンドン = 江渕智弘】 ビザ(査証)なしで渡航できる国と地域の数を示す「パスポート指数」で日本が首位に返り咲いた。 英コンサルティング会社、ヘンリー・アンド・パートナーズが 10 日発表した。 2023 年 7 月の前回公表時は 3 位に後退していた。 ヘンリー・アンド・パートナーズは国際航空運送協会 (IATA) のデータに基づくパスポート指数を毎年 2 回公表する。 日本は今回 194 となり、シンガポール、ドイツ、フランス、イタリア、スペインと並んで首位に立った。 世界 227 カ国・地域のうち 194 カ国・地域にビザなしで入国できるという。 韓国とフィンランド、スウェーデンが 193 で続いた。 前回の 23 年 7 月はシンガポールが単独首位となり、日本は韓国などとともに 3 位グループだった。 長年首位を守ってきた日本の陥落が話題を呼んだ。 指数は 06 年に公表を始めた。 世界平均は今回、06 年の 58 からほぼ倍の 111 に増えた。 全体として、以前より自由に渡航できるようになっている。 一方、最下位のアフガニスタンは 28 にとどまり、首位と最下位の差は過去最大の 166 に開いた。 (nikkei = 1-12-24) パソナ元社員の個人営業、国に衝撃「とんでもない事案」 危うさ露呈
記事コピー (4-29-20 〜 12-27-23) 2050 年、日本の将来推計人口は 1 億 468 万人に … 青森・秋田・岩手など 30% 以上減 国立社会保障・人口問題研究所は 22 日、2050 年までの「地域別将来推計人口」を公表した。 50 年に日本の総人口は 20 年比 2,146 万人減の 1 億 468 万人となり、東京都を除く 46 道府県で 20 年の人口を下回ると推計した。 地方の人口減少と高齢化が同時並行で加速度的に進行する一方、東京への一極集中は一層深刻化すると予想した。 推計によると、50 年に 20 年比で 30% 以上人口が減るのは秋田、青森、岩手など 11 県。 この 11 県を含む 25 道県では、50 年に 65 歳以上の人口割合が 4 割を超える。 20 年の人口を 100 とした場合の 50 年の人口指数が最も低かったのは秋田の 58.4 で、人口が 20 年の 6 割弱の規模に縮小することを意味している。 50 年の人口指数は青森 61、岩手 64.7、高知 65.2、長崎 66.2 の順に低かった。 5 年ごとに期間を区切った人口減少率を比較すると、秋田では 20 - 25 年の 7.4% が、45 - 50 年には 9.9% に拡大する。 地方では全国的に同様の傾向が見られ、時間の経過に伴い人口減のスピードは加速する。 一方、総人口に占める東京の人口割合は、20 年の 11.1% から 50 年には 13.8% に上がる。 東京は 50 年の人口が 20 年を上回るが、人口が増えるのは 40 年までで、それ以降は減少に転じると推計された。 市区町村別にみると、市区町村全体の 95.5% で 50 年の人口が 20 年に比べて減少し、19.7% は 20 年に比べて半数未満となる。 人口が 5,000 人未満となる市区町村も全体の 27.9% に上り、多くの自治体で社会基盤の維持がより困難になる可能性がある。 50 年時点での各市区町村の年齢構成の推計では、少子高齢化の進行が顕著に表れた。 0 - 14 歳が人口の 1 割未満となる市区町村は全体の 68.4%、経済活動を主に担う 15 - 64 歳の生産年齢人口の割合が半数を切るのは 71.1%、65 歳以上が半数以上を占めるのは 32.2% に上るとされる。 同研究所は 5 年に 1 度、国勢調査が行われた年から 30 年間の地域別将来推計人口を公表しており、今回は 20 年の調査に基づいて推計した。 (yomiuri = 12-22-23) 今年も食品値上げが 1 位、異常気象もランクイン 食の 10 大ニュース 「食生活ジャーナリストの会(畑中三応子代表幹事、会員数約 130 人)」は 15 日、2023 年の食の 10 大ニュースを発表した。 1 位には、「今年も続く、記録的な食品値上げラッシュ」が選ばれた。 食品値上げは昨年も 1 位だった。 会員の投票、各種メディアのニュースに登場した頻度、歴史的観点から見たニュースの価値・重要性を基準に選考した。 (大村美香、asahi = 12-15-23)
前代未聞、97% 後払いは「抜け道」か 大谷の規格外契約に全米注目 「僕の優先順位は、契約形態からわかるように、勝つことが一番大事なこと。」 14 日(日本時間 15 日)の会見で、大谷は言葉に力を込めた。 その契約には、二重の驚きがあった。 まず、額。9日(同10日)、大谷の所属事務所「CAA」が公表した内容は、10 年総額 7 億ドル(約 993 億円)。 米スポーツ界での史上最高額に衝撃が走った。 そして、大半が後払いだった。 AP 通信によると、プレーする 10 年間の年俸は 200 万ドル(約 2 億 8 千万円)。 残りの 6 億 8 千万ドル(約 965 億円)は、2034 年から 43 年に支払われる。 年俸の一部後払いは大リーグの労使協定で認められており、割合や期間に制限はない。 一部後払いによって、球団は総年俸額を抑えられ、選手は在籍期間終了後も長期間にわたって収入を得られるメリットがある。 大谷「僕は後払いでいいです」 大リーグには、戦力均衡を図る様々な規定がある。 特定球団に戦力が集中すると順位の固定化が生じ、ひいては大リーグ全体の魅力低下につながりかねないからだ。 年俸総額が規定額を超えた球団に発生する課徴金(ぜいたく税)はその一つ。 資金豊富な球団に有力選手が集まりすぎるのを防ぐのが目的だ。 来季の規定額は 2 億 3,700 万ドル(約 336 億円)。 規定額を超えると最初の年は超過額の 20%、2 年連続は 30%、3 年連続は 50% の課徴金を大リーグ機構 (MLB) に納めなければならない。 課徴金を算出するための年俸は、個々の選手の平均額で決まる。 大谷の年俸が 7 千万ドル(約 99 億円)だとすると、規定額の約 3 割を占めてしまう。 後払いにした場合、課徴金の対象額は物価上昇などを考慮した現在の価値で計算されるので、約 97% を後払いした今回は約 4,600 万ドル(約 65 億円)が対象になり、約 34 億円が浮く。 大谷は会見で、「いま受け取れる金額を我慢して、ペイロール(契約総額)に柔軟性を持たせるのであれば『僕は後払いでいいです』というのが始まり」と説明。 浮いた資金で、さらなる補強を球団に要望していた。 これまでも大型契約を結ぶ際に後払いがつくケースは多かった。 それでも、2015 年にナショナルズと 7 年 2 億 1 千万ドル(約 298 億円)で契約したマックス・シャーザーの 50% が最も割合が大きい。 無利子で約 97% の後払いは前代未聞だ。 この契約は大谷だから実現できたとも言える。 スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」によると、今季スポンサー料などグラウンド外の収入は 5 千万ドル(約 71 億円)近くといい、年俸にこだわる必要はなかった。 選手、球団にとっていいことずくめに見えるが、すでに物議を醸している。 資金豊富な球団が課徴金を逃れるための「抜け道」と一部から批判が続出。 全米で議論へと発展した。 資金が少ない球団は長期にわたり高額な金額を保証できないため、戦力均衡のためにできた課徴金制度の効果は薄れ、球団の格差が広がるとの懸念も出ている。 AP 通信によれば、前回の労使交渉で大リーグ機構は後払い制度の廃止を提案したが、選手会が拒否したという。 大谷の契約を受け、次の労使交渉では廃止に向けた動きが進む可能性もある。 (ニューヨーク = 遠田寛生、asahi = 12-15-23) 今年の漢字は「税」 京都・清水寺で日本漢字能力検定協会が発表 日本漢字能力検定協会(京都市東山区)が募集していた「今年の漢字」は「税」に決まり、12 日午後に清水寺(同)で発表された。 協会がウェブサイトなどで全国から募り、最も応募が多かった字が「今年の漢字」に選ばれた。 選ばれた理由は主に、▽ 1 年を通して増税議論が活発に行われた、▽ 所得税・住民税の 4 万円の定額減税が話題に、▽ インボイス制度やふるさと納税など、多岐にわたる税にまつわる話題が取りざたされた - - などだった。 投票数の 2 位は「暑」、3 位は「戦」、4 位は「虎」、5 位は「勝」だった。 「いいじいちじ」と読む 12 月 12 日の「漢字の日」に 1995 年から発表しており、今年で 29 回目。 昨年はロシアのウクライナ侵攻などを理由に「戦」だった。 (日比野容子、asahi = 12-12-23) 全国各地で今季一番の冷え込み 東京は 1 月中旬並みの寒さに 26 日 強い冬型の気圧配置の影響で、26 日は全国的に冬の寒さが広がった。 北海道を中心に積雪もみられた。 気象庁によると、26 日朝の最低気温は東京 5.3 度、大阪 5.2 度、福岡 6.1 度で、それぞれこの冬最低を記録した。 東京の日中の最高気温は 9.5 度で、1 月中旬並みの寒さだった。 北日本では特に冷え込み、北海道弟子屈町の川湯と同占冠村の最低気温はマイナス 13.1 度で、全国で最も低かった。 雪の深さは同日午後 5 時時点で、▽ 青森市の酸ケ湯で 55 センチ、▽ 北海道滝川市で 43 センチ、▽ 同幌加内町で 41 センチなどを観測した。 29 日から 12 月 3 日にかけても、北日本から西日本で冬型の気圧配置になる見込みという。 (asahi = 11-26-23) 家庭でできる「脱渋」の技 ドライアイスを入れ密封、渋柿が甘くなる 昨年の冬、取材先で自家製の「合わせ柿」をいただく機会があり、甘くやわらかな味わいに驚いた。 ドライアイスを使い、渋柿から渋を抜いたものだという。 どんな仕組みなんだろう。 柿の季節の到来に合わせて、作業を見学した。 11 月上旬に訪ねたのは、広島県福山市内で古書店を営み、朝日新聞の広島・備後版でコラムを書いている佐藤明久さん (74) の自宅だ。 庭に 2 階建ての家と同じくらいの高さの愛宕柿と西条柿の木があり、だいだい色に輝く柿が鈴なりに実っていた。 旧制中学で理科の教師をしていた、佐藤さんの妻・博子さんの祖父が戦前に植えたものだそうだ。 「戦時中の福山空襲で一部が焼けても、生き残ったと聞きました」と佐藤さん。 二つとも渋柿で、毎年、家庭で渋抜き作業を行っている。 使うのは新聞紙、段ボール紙 … 昨年、合わせ柿をいただいたお礼を兼ね、まずは記者 2 人で収穫を手伝った。普段から写真撮影のために脚立を利用してはいるものの、上段に上がり、腕を伸ばして枝切りばさみを操るのはバランスが難しい。 おっかなびっくり 1 時間半ほど作業をして、愛宕柿の木にぶら下がる半分ほどの収穫が終わった。 段ボール箱で 4 箱分、200 個くらいあるだろうか。 渋抜き作業を行ったのは、その 2 日後。 佐藤家流は、洗ってヘタを切りそろえた柿を、ドライアイスと一緒に厚手のポリ袋の中に入れ、空気が漏れないようにギュッと口をしばる。 水分が出ても吸収できるように袋の中に新聞紙を敷くほか、柿にじかに触れないよう、ドライアイスを段ボール紙で包むのがこつだ。 しばらくすると、ドライアイスが溶け、二酸化炭素 (CO2) が充満してポリ袋がふくらんでくる。愛宕柿の場合、そのまま 10 日間ほど放っておくだけで、柿が甘くなっているのだという。 佐藤さんに聞くと、「ドライアイスがどんな働きをするのか、私もよく知らないんです。 農家の人にやり方を聞いて、続けてきました。」とのこと。 なぜ甘くなるんだろう。 広島県の農業技術センター(東広島市)に電話をすると、果樹研究部の研究員が「柿の『脱渋(だつじゅう)』のことですね。 この季節になると問い合わせがあるんですよ。」と取材に応じてくれた。 解説によると、柿の渋みは果実に含まれる水溶性のタンニンに由来している。 だが、二酸化炭素で呼吸ができなくなり、果実の中にアセトアルデヒドが生成されると、タンニンが不溶性となる。 そうすると、人が食べても渋みを感じなくなるのだという。 こうしたドライアイスによる脱渋は、農家や柿の木のある家庭には知られており、福山市内で氷を扱う福山冷凍(福山市曙町 4 丁目)は秋になると、ドライアイスとポリ袋のセットを 330 円で販売している。 佐藤さんもここでドライアイスを買ったそうだ。 仕込んでから 10 日後、袋を開けて、脱渋をしたばかりの「合わせ柿」を分けていただいた。 その場でかぶりつく。 収穫を手伝ったからなのか、昨年よりさらにおいしく感じた。 (西本秀、asahi = 11-25-23) 香港の「鳥取食品」が宮崎和牛販売? 鳥取県章似たマーク、県が指摘 ![]() 鳥取県は 17 日、県のシンボルマーク「県章」によく似たデザインのマークを付けた食料品を、香港の企業がインターネットで販売しているとみられると発表した。 実害は確認されていないとしているが、無断使用に当たる可能性が高いと判断し、近く当該企業に対し使用中止を求める方針。 県によると、この企業は「鳥取食品有限公司」。 サイトには県章によく似たマークと「鳥取食品」と明記された「宮崎和牛」や「蒲焼うなぎ」などの商品が並ぶ。 県によると、この企業は食品の卸売りや小売りをしているが、鳥取県との関係はないという。 県章は飛ぶ鳥の姿とひらがなの「と」から造形し、1968 年から県の封筒や印刷物、施設などで使われている。 県に申請し承認されれば誰でも使えるが、営利目的は認めていない。 香港の企業のマークは羽根の部分のデザインがやや違っているだけで酷似する。 県に対し使用の申請はないという。 県広報課の谷口健一課長は、「県章に類似したマークが無断で営利目的に使われており、非常に残念」と話している。 (清野貴幸 asahi = 11-19-23) ◇ ◇ ◇ 神戸ビーフ、宇治抹茶 … 海外での模倣品「情報提供を」、現地に窓口 神戸ビーフ、関サバ、宇治抹茶、長崎カステラ …。 海外で日本の農林水産物や食品をまねた商品が出回り、年間の推定被害額は 700 億円を超える。 模倣品の横行を防ごうと、農林水産省は主要国に相談窓口を設け、幅広く情報提供を求めていく。 農水省は 17 日、第 1 弾としてタイの日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所に相談窓口を設置し、メールで情報を受け付ける。 悪質なケースがあれば、現地の職員が出向いて確認し、タイ当局や権利を侵害されたと考えられる日本の事業者に連絡する。 生産者の名前から日本産ではないとみられるケースや、メニューに日本産の魚が使われていないと考えられるといった内容を想定している。 農水省の担当者は「現地の当局には言いづらいことも連絡してもらえるのでは」と期待する。 弁理士らへの相談も 来春までに中国やベトナムなど 8 カ国・地域に相談窓口を設ける予定だ。 このほか、日本の輸出事業者などを対象に、弁理士や弁護士による相談も受け付けている。 特許庁の調査では、海外の模倣品による食品業界の被害額は 741 億円(2020 年)に上る。 日本の農林水産物・食品の輸出額(22 年)は 1 兆 4,148 億円で、この 10 年で 3 倍になった。 農水省は 25 年に 2 兆円にする目標を示している。 (加藤裕則、asahi = 11-18-23) 北海道 168 円、九州 178 円 … ガソリン価格の地域差の謎探る ガソリンの高値が続いている。 だが、価格は全国一律ではなく、地域によって高かったり、安かったりと、差が生じている。 そこには、円安や紛争による原油高とは全く別の理由があった。 ガソリンが安いのは、北海道だ。 資源エネルギー庁が各経済産業局単位で調べた 11 月 6 日現在のレギュラーガソリン 1 リットルあたりの平均価格は 168.5 円。 最も高い九州より 9.8 円安かった。 輸送コストがかかるため「ガソリンは製油所から遠いほど高い」とされるが、北海道石油商業組合の三木一弘専務理事は「広い道内で運送費はかかるが、ガソリンスタンド (SS) の価格競争が激しい」と話す。 取扱量が多い大手 SS が設定する安値に、地場の SS が対抗する構図がある。 同じ理由で安いのが熊本県。 11 月 6 日のレギュラーの平均価格は九州で最も安かった。 熊本県石油商業組合は「どこの SS も安さを PR し価格が大きく見えるよう店頭に貼り出す。 競争原理が強く働いている。」と話す。 一方、輸送費がかかる地域は、価格に跳ね返る。 壱岐・対馬などの離島がある長崎県では、9 月に平均価格が日本一高い 192.5 円まで上がった。 長崎県石油商業組合の上野一茂専務理事は「島にはタンカーで運ぶしかない。 壱岐、対馬ではガソリンなどを貯留する油槽所の維持管理費も膨大」と説明する。 奄美大島などの離島が多い鹿児島県も、同様の事情で高い。 四国で最も高い高知県も、関西圏からタンカーで輸送する。高知県石油商業組合の藤井稔専務理事は「港が浅く小型タンカーしか接岸できず、少しずつ何度も運ぶため輸送費が高くなる。販売量も香川県の半分程度で薄利多売も無理。価格に関するクレームが来ても、事情を説明するとたいていの人が納得する」と話す。 そんな中、九州唯一の製油所がある大分県は輸送費が安いはずだが、価格は長年全国トップクラスだ。 「高すぎる」というドライバーの不満は、しばしば地元で話題となる。 エネ庁の都道府県別レギュラーガソリン価格調査によると、2004 年 6 月以降の 991 週のうち、大分県は 784 週で上位 5 位以内に入る。 人口 15 万人以上の都市の比較では、9 月の大分市は全国 1 位の 198 円だった。 大分県石油商業組合の関係者によると、県内の SS は家族内の小規模経営が多く、「販売量が少ないので単価を高くしないとやっていけない」という。 また、少人数経営のため洗車やオイル交換、タイヤ販売ができず、ガソリン以外の収入がない。 これが価格に跳ね返るという。 「掛け売り」という大分独特の商慣習もあり、ツケで給油し、月末に支払う仕組みが広く残るため現金より割高になるという。 さらに大分市内の多くの SS は、価格を店頭表示していない。 油種ごとの価格を示す電光掲示板は、多くが「777」や「888」といった数字が表示され、昨年末の県の調査では 75% が非表示だった。 県は適切に表示するよう業界団体に繰り返し要請しているが、従う SS はごく少ない。 石油流通システムに詳しい桃山学院大経営学部の小嶌正稔教授は、「同業者がいくらで販売しているか敏感になることで競争が生まれるが、表示をしないことで最初からそれ自体をしていないことになる。消費者側も表示していないSSでは給油しない、というぐらいの姿勢を示すことが健全な競争につながる」と指摘する。 (神崎卓征、asahi =11-12-23) 執拗なクレーム「かえってクマとの共存妨げる」 学会が緊急声明 北海道と本州で相次ぐクマの出没と被害について、「野生生物と社会」学会は 12 日、要因や対策などに関する緊急声明を出した。 自治体などに電話をしつこくかけて捕獲への抗議を続けるような行為については「かえって共存を妨げる」として、対策の必要性への理解を求めた。 環境省のまとめでは、2023 年度は 10 月末時点でヒグマとツキノワグマによる人身被害は 180 人で、統計を取り始めて以来最多。 死者も 5 人に上り、その後も被害が続いている。 声明ではこの秋の大量出没について「直接の要因は、ブナ科堅果類(どんぐり)の大凶作」としつつ、これまで数年おきに大量出没はあり、その規模も大きくなってきたと指摘。 過去 10 年ほどの間に個体数が増えたり、分布域が広がったりして、市街地の近くにすむクマも増え、集落の放置されたカキなどに味をしめたことや、00 年以降は捕獲が抑えられてきたことも大きいとした。 被害を防ぐにはまず、市街地周辺での捕獲を進めることや、不要な果樹を伐採してクマを引きつけるエサを取り除くことが必要だとした。 その上で中・長期的には、人とのトラブルを減らしつつ、クマも個体群が維持できるような分布範囲、個体数に向けた管理や、管理や被害の予測に必要なデータの蓄積といった対策を早急に検討するよう求めた。 また、対策にあたる人たちへの配慮も要望。 一部では、捕獲に関わった行政の窓口などに大量のクレームや中傷のような抗議が寄せられていることも報じられている。 声明は、クマについて「付き合い方を間違えれば人命を奪うこともあり、一定数の捕獲は欠かせない」とし、「関係者への配慮の無い電話や執拗なクレームは、関係者の努力をくじき、かえってクマとの共存を妨げる結果を招く」と訴えた。 緊急声明をまとめた同学会行政部会長の横山真弓・兵庫県立大教授(野生動物管理学)は「中傷で傷ついている職員らも少なくないと聞き、危機感を覚えている。 対策の現場では、共存に向けた苦渋の選択が行われていることを理解して欲しい。 人をしっかり守って初めてクマも守れる」と話した。 緊急声明は 会のページ から読める。 (小坪遊、asahi = 11-12-23) ◇ ◇ ◇ クマ被害が過去最悪 173 人 ブナ凶作、生息域拡大のデータ可視化 全国でクマによる被害が相次いでいる。 朝日新聞の集計では、今年に入って 29 日までの人身被害は少なくとも計 173 人。 統計がある 2006 年以降で過去最多となっている。 今年は東北地方を中心にブナなどのドングリが凶作で、環境省は 11 月も被害が続くおそれがあるとして注意を呼びかけている。 各都道府県の発表情報などから集計したところ、被害の最多は秋田の 59 人。 岩手 41 人、福島 13 人、青森 11 人と続き、18 道府県で被害が出ている。 死者も岩手で 2 人、北海道、富山、長野で各 1 人。 これまでの人身被害の最多は 20 年の 158 人だった。 被害が増えた理由について、環境省はブナなどの堅果が凶作で、えさを求めてクマが人里に出やすくなっていると分析する。 東北森林管理局の調査では、青森、岩手、宮城、秋田、山形の東北 5 県全てで「大凶作」と判定された。 堅果の豊凶は2 - 3 年の周期性があるとされる。 クマは 122月ごろから翌年の 3 - 5 月まで冬眠する。 この間を過ごすために秋に脂肪をたくわえる必要があり、えさを探して動き回る。 体格も夏より一回りも大きくなる。 「人里でえさを食べる成功体験ができた」 東京農工大の小池伸介教授(生態学)は「堅果の凶作が引き金」としつつ、背景に「クマが人里に出てきやすい環境」が生まれているとも指摘する。 人口減で耕作放棄地が増えたり、やぶ払いが行き届かず、柿や栗の木なども放置されたり。 「クマにとってはどこまでが森で、どこからが人里か分からないまま、えさを食べる成功体験ができてしまったのではないか」という。 実際に、環境省の全国のクマの生息域の調査によると、03 年度と比べて 18 年度時点では、目撃や捕獲情報が寄せられた地点が全国で 1.38 倍増加。 「生息域が拡大している傾向がみられる」とした。 至近距離で遭遇 → 顔と頭を防御 環境省は今月 24 日、クマの生息域に入る場合は単独行動を避け、▽ 鈴やクマ撃退スプレーを携帯する、▽ 遭遇しても慌てず後退、至近距離なら両腕で顔面や頭部を覆い、うつぶせになる、▽ 柿や果実、生ゴミなどを適切に処分する - - ことなどを求める大臣談話を発表した。 クマが冬眠する 12 月ごろまで呼びかける。 クマの捕獲や調査に関する自治体の事業にかかる費用を補助する方針も示した。 新潟大の箕口(みぐち)秀夫教授(森林生態学)は、ブナなどの凶作が予想できているのに、人身被害が繰り返されていることが課題だと強調する。 秋に堅果を食べられるかは「クマにとっての死活問題だ。」 ドングリの豊凶や、クマの生態について理解を深めることが、事故防止につながると指摘する。 植林によってスギなどの針葉樹が増えた森から、ブナなどの広葉樹を再び増やす森づくりも重要という。 (市野塊、石倉徹也、竹野内崇宏、asahi = 10-30-23) |